アーベル圏論

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アーベル圏についての概念や道具は、いまやホモロジー代数の理論における基礎言語となっている。本記事においては、アーベル圏に関する諸々の数学的事項について解説を行う。

アーベル圏の導入

アーベル圏の定義

定義 1 (前加法圏)

$\mathcal{C}$ が前加法圏であるとは、$\mathsf{Ab}$-豊穣圏であることをいう。すなわち、$\mathcal{C}$ の対象 $x$, $y$ について $\mathrm{Hom}(x,y)$ がアーベル群の構造を持ち、かつ合成によって定まる写像 $\mathrm{Hom}(y,z)\times \mathrm{Hom}(x,y)\to \mathrm{Hom}(x,z)$ が双線型であることをいう。

定義 2 (ゼロ対象)

$\mathcal{C}$ の対象 $0$ がゼロ対象であるとは、$0$ が始対象かつ終対象であることをいう。

定義 3 (加法圏)

$\mathcal{C}$ が加法圏であるとは、$\mathcal{C}$ が前加法圏であってかつ以下の条件を持たすことをいう。

  • $\mathcal{C}$ はゼロ対象を持つ
  • $\mathcal{C}$ は任意の有限和を持つ
  • $\mathcal{C}$ は任意の有限積を持つ
定義 4 (ゼロ射)

圏 $\mathcal{C}$ の射 $f\colon x\to y$ がゼロ射であるとは、ある $\mathcal{C}$ のゼロ対象 $0$ が存在して、$f=x\to 0 \to y$ と $f$ の射分解ができることをいう。

命題 5 (ゼロ射の一意性)

圏 $\mathcal{C}$ の対象 $x$, $y$ について、$x$ をドメイン、$y$ をコドメインに持つゼロ射は高々ひとつである。

証明

$\mathcal{C}$ の対象 $x$, $y$ とゼロ対象 $0$, $0'$ について、以下の(可換とは限らない)図式 \begin{xy} \xymatrix { x \ar[d] \ar[r] & 0 \ar[d] \\ 0' \ar[r] & y } \end{xy} があるとする。このとき、$0'$ は終対象であるため、$0$ から $0'$ への射が一意的に存在する。このとき、$0'$ の終対象性と $0$ の始対象性より以下の図式 \begin{xy} \xymatrix { x \ar[d] \ar[r] & 0 \ar[ld] \\ 0' & } \end{xy} と \begin{xy} \xymatrix { & 0 \ar[ld] \ar[d] \\ 0' \ar[r] & y } \end{xy} は可換である。よって図式 \begin{xy} \xymatrix { x \ar[d] \ar[r] & 0 \ar[d] \\ 0' \ar[r] & y } \end{xy}

は可換であるため、$x$ から $y$ へのゼロ射は高々ひとつに限られることが示される。
命題 6 (ゼロ射の存在性)

圏 $\mathcal{C}$ がゼロ対象を持つならば、任意の対象 $x$, $y$ について、$x$ をドメイン、$y$ をコドメインに持つゼロ射が存在する。

証明

$\mathcal{C}$ はゼロ対象を持つ。これを $0$ とおく。このとき、射 $x\to 0$, $0\to y$ は存在するため、この合成はゼロ射となる。
系 7 (前加法圏におけるゼロ射)

前加法圏 $\mathcal{C}$ の任意の対象 $x$, $y$ について、$\mathrm{Hom}(x,y)$ にゼロ射は丁度ひとつ存在する。またゼロ射はアーベル群 $\mathrm{Hom}(x,y)$ の単位元である。この射を $0_{x\to y}$ と表記する。

証明

ゼロ射 $f\colon x\to y$ を任意に取る。またゼロ対象 $0$ に対して、$x$ から $0$ への射を $t_x$, $0$ から $y$ への射を $i_y$ と表記する。このとき、$f=i_y\circ \mathrm{id}_0 \circ t_x$ が成り立つ。

このとき、合成によって定まる写像 $$\mathrm{comp}\colon\mathrm{Hom}(0,y)\times \mathrm{Hom}(0,0)\times \mathrm{Hom}(x,0)\to \mathrm{Hom}(x,y)$$ は双線型である。ここで、$\mathrm{comp}$ は明らかに $$\mathrm{Hom}(0,y)\times \mathrm{Hom}(0,0)\times \mathrm{Hom}(x,0)$$ の元を $\mathrm{Hom}(x,y)$ の単位元に移すが、$\mathrm{comp}(i_y,\mathrm{id}_0,t_x)=f$ であるため、$f$ は $\mathrm{Hom}(x,y)$ の単位元である。
定義 8 (核)

前加法圏 $\mathcal{C}$ の射 $f\colon x\to y$ について、$f$ の核とは、$f$ と $0_{x\to y}$ とのイコライザのことをいう。$f$ の核について、これを $\mathrm{ker}(f)$ と表記し、またこのドメインについて、$\mathrm{Ker}(f)$ と表記する。

定義 9 (余核)

前加法圏 $\mathcal{C}$ の射 $f\colon x\to y$ について、$f$ の余核とは、$f$ と $0_{x\to y}$ とのコイコライザのことをいう。$f$ の余核について、これを $\mathrm{cok}(f)$ と表記し、またこのコドメインについて、$\mathrm{Cok}(f)$ と表記する。

定義 10 (前アーベル圏)

$\mathcal{C}$ が前アーベル圏であるとは、$\mathcal{C}$ が加法圏であって、かつ以下の条件をみたすことをいう。

  • 任意の射は核を持つ
  • 任意の射は余核を持つ
注意 11 (核・余核の非一意性)

射 $f$ を任意に取ったとき、一般には(前アーベル圏においても) $f$ の核・余核を選ぶ方法は一意的でない。

定義 12 (アーベル圏)

$\mathcal{C}$ がアーベル圏であるとは、$\mathcal{C}$ が前アーベル圏であって、かつ以下の条件をみたすことをいう。

  • 任意の射 $f$ について、誘導される自然な射 $\mathrm{Cok}(\mathrm{ker}(f))\to \mathrm{Ker}(\mathrm{cok}(f))$ は同型

技術的補題・補足

ゼロ対象

補題 13 (ゼロ対象の特徴付け)

前加法圏 $\mathcal{C}$ とその対象 $x$ において、以下は同値である。

  • $x$ はゼロ対象
  • $\mathrm{Hom}(x,x)$ は自明なアーベル群
証明

$\mathrm{Hom}(x,x)$ が自明なアーベル群であるような対象 $x$ を取る。合成によって定まる写像 $\mathrm{comp}\colon\mathrm{Hom}(x,y)\times \mathrm{Hom}(x,x)\to \mathrm{Hom}(x,y)$ が双線型であることに注意すると、任意の射 $f\colon x\to y$ について、$\mathrm{comp}(f,\mathrm{id}_x)$ の像は $0_{x\to y}$ と一致することがわかる。従って $f=0_{x\to y}$ が成り立つ。よって $x$ は始対象である。

同様の議論によって $x$ の終対象性も示される。
補題 14 (ゼロ対象の特徴付け)

前加法圏 $\mathcal{C}$ とその対象 $x$ において、以下は同値である。

  • $x$ はゼロ対象
  • $x$ は始対象
  • $x$ は終対象
証明

$x$ が始対象であるなら、$\mathrm{Hom}(x,x)$ は自明群であるため、補題 14 より $x$ はゼロ対象である。同様に $x$ が終対象ならばゼロ対象であることも示される。
補題 15 (ゼロ射との合成)

前加法圏 $\mathcal{C}$ と射 $f\colon x\to y$ と対象 $w$, $z$ について、以下が成り立つ。

  • $f\circ 0_{w\to x}=0_{w\to y}$
  • $0_{y\to z}\circ f=0_{x\to z}$
証明

$f\circ 0_{w\to x}=w\to 0\to x\to y$ より $f\circ 0_{w\to x}$ はゼロ射である。$0_{y\to z}\circ f$ についても同様である。

双積

補題 16 (和と積の一致)

前加法圏 $\mathcal{C}$ の有限個の対象 $x_1$, $\ldots$, $x_n$ について、$x_1$, $\ldots$, $x_n$ に関する双積図式とは、対象 $s$ と射 $i_1\colon x_1\to s$, $p_1\colon s\to x_1$, $\ldots$, $i_n\colon x_n\to s$, $p_n\colon s\to x_n$ であって、以下の条件をみたすものをいう。

  • $p_1i_1$, $\ldots$, $p_ni_n$ は恒等射
  • $i_1p_1+\ldots +i_np_n=\mathrm{id}_s$

このとき、以下は同値である。

  1. $x_1$, $\ldots$, $x_n$ の和が存在する
  2. $x_1$, $\ldots$, $x_n$ の積が存在する
  3. $x_1$, $\ldots$, $x_n$ に関する双積図式が存在する

核・余核

補題 17 (核・イコライザ)

前加法圏 $\mathcal{C}$ の射 $f,g\colon x\to y$ について、以下は同値である。

  1. $f$ と $g$ のイコライザが存在する
  2. $f-g$ の核が存在する
補題 18 (余核・コイコライザ)

前加法圏 $\mathcal{C}$ の射 $f,g\colon x\to y$ について、以下は同値である。

  1. $f$ と $g$ のコイコライザが存在する
  2. $f-g$ の余核が存在する
観察 19 (前アーベル圏と極限・余極限)

以上の議論により、$\mathcal{C}$ が前アーベル圏であることは、有限完備かつ有限余完備な前加法圏であることと同値であることがわかる。

像・余像

完全列

定義 20 (完全列)

アーベル圏の射 $f\colon a\to b$ と $g\colon b\to c$ について図式 $$ a\to b\to c$$ が $b$ において完全であるとは、$gf=0$ かつ $\mathrm{Ker}(g)=\mathrm{Im}(f)$ が成り立つことをいう。

メンバ

一般のアーベル圏においては、もちろん対象に対して「その元を取る」ような操作を行うことはできない。しかし、メンバの概念を導入することで、類似した議論を展開することができる。本節においてはメンバを導入し、そしてその基本的な性質を示す。

定義 21 (メンバ)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ と $\mathcal{A}$ の対象 $a$ と射 $f$ について、$f$ が $a$ のメンバであるとは、$f$ のコドメインが $a$ であることをいう。このことを指して $f\in_m a$ と表記する。

定義 22 (メンバ同値)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ と $\mathcal{A}$ の対象 $a$ と $a$ のメンバ $x$, $y$ について、エピ射 $u$, $v$ であって $xu=yv$ なるものが存在するとき、$x$ と $y$ をメンバ同値[1]であるといい、$x \equiv y$ と表記する。

命題 23 (メンバ同値の同値性)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ と $\mathcal{A}$ の対象 $a$ と $\mathcal{A}$ のメンバ $x$, $y$, $z$ について、以下が成り立つ。

  1. $x\equiv x$
  2. $x\equiv y$ ならば $y \equiv x$
  3. $x\equiv y$ かつ $y \equiv z$ ならば $x\equiv z$
証明

注意 24 (メンバ同値は関係クラス)

$\equiv$ は厳密な(集合論的な)意味においては同値関係ではない。なぜならば、そもそも $\equiv$ はメンバ全体にわたって定義されており、そのため集合として表示することができないからである。

命題 25 (メンバによる言い換え)


図式追跡

この節においては、アーベル圏論を展開する上でしばしば用いられる「五項補題」や「蛇の補題」など、図式と完全列に関する補題について、先ほど導入したメンバの概念を用いて証明を行うことを目的としている。

五項補題

定理 26 (五項補題)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ 上の図式 \begin{xy} \xymatrix { A_1 \ar[d]_{t_1} \ar[r]^{p} & A_2 \ar[d]_{t_2} \ar[r]^{q} & A_3 \ar[d]_{t_3} \ar[r]^{r} & A_4 \ar[d]_{t_4} \ar[r]^{s} & A_5 \ar[d]_{t_5} \\ B_1 \ar[r]_{p'} & B_2 \ar[r]_{q'} & B_3 \ar[r]_{r'} & B_4 \ar[r]_{s'} & B_5 } \end{xy} について、以下の列 \begin{xy} \xymatrix { A_1 \ar[r]^{p} & A_2 \ar[r]^{q} & A_3 \ar[r]^{r} & A_4 \ar[r]^{s} & A_5 } \end{xy} と \begin{xy} \xymatrix { B_1 \ar[r]^{p'} & B_2 \ar[r]^{q'} & B_3 \ar[r]^{r'} & B_4 \ar[r]^{s'} & B_5 } \end{xy} が完全列であるとする。このとき、以下が成り立つ。

  1. $t_2$, $t_4$ がエピ射であり、かつ $t_5$ がモノ射であるとき、$t_3$ はエピ射である。
  2. $t_2$, $t_4$ がモノ射であり、かつ $t_1$ がエピ射であるとき、$t_3$ はモノ射である。
  3. $t_2$, $t_4$ が同型射であり、かつ $t_5$ がモノ射であってかつ $t_1$ がエピ射であるとき、$t_3$ は同型射である。
証明

  • 1.

$t_3$ がエピ射であることを示すためには、任意の $B_3$ のメンバ $x$ に対して、$t_3(y)=x$ をみたすような $A_3$ のメンバが存在することを示せばよい。

$t_4$ はエピ射であるため、任意の $x \in B_3$ について $t_4(z)\equiv r'(x)$ を充たすような $A_4$ のメンバ $z$ が存在する。このような $z$ を任意に取る。このとき、$t_5(s(z))\equiv s'(t_4(z))\equiv s'(r'(x))\equiv 0$ が成り立つ。従って、$t_5$ はモノ射であったため、$s(z)\equiv 0$ が成り立つ。ここで \begin{xy} \xymatrix { A_1 \ar[r]^{p} & A_2 \ar[r]^{q} & A_3 \ar[r]^{r} & A_4 \ar[r]^{s} & A_5 } \end{xy} の完全性より、$A_3$ のメンバ $w$ であって、$r(w)\equiv z$ をみたすものが存在する。

$r(w)\equiv z$ であるため、$r'(t_3(w))\equiv t_4(r(w))\equiv t_4(z)\equiv r'(x)$ が成立する。したがって $r'(x-t_3(w))\equiv 0$ である。よって \begin{xy} \xymatrix { B_1 \ar[r]^{p'} & B_2 \ar[r]^{q'} & B_3 \ar[r]^{r'} & B_4 \ar[r]^{s'} & B_5 } \end{xy} の完全性より、$B_2$ のメンバ $v$ であって $q'(v)\equiv x-t_3(w)$ なるものが存在する。$t_2$ のエピ性より、$t_2(u)\equiv v$ なる $A_2$ のメンバが存在する。

このとき、$$t_3(w+q(u))\equiv t_3(w)+t_3(q(u))\equiv t_3(w)+q'(t_2(u))\equiv t_3(w)+q'(v)=t_3(w)+x-t_3(w)=x$$ が成り立つ。したがって $t_3$ のエピ性が示された。

  • 2.

2. はアーベル圏 $\mathcal{A}^{op}$ において 1. を適用すればよい。

  • 3.
1. と 2. の結果により、$t_3$ はエピ射かつモノ射であることが示される。よってアーベル圏においてエピ射かつモノ射は同型であるため、3. が示された。

九項補題

定理 27 (五項補題)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ 上の図式 \begin{xy} \xymatrix { & 0 \ar[d] & 0 \ar[d] & 0 \ar[d] & \\ 0 \ar[r] & A_1 \ar[d]_{f_1} \ar[r]^{p_a} & A_2 \ar[d]_{f_2} \ar[r]^{q_a} & A_3 \ar[d]_{f_3} \ar[r] & 0 \\ 0 \ar[r] & B_1 \ar[d]_{g_1} \ar[r]^{p_b} & B_2 \ar[d]_{g_2} \ar[r]^{q_b} & B_3 \ar[d]_{g_3} \ar[r] & 0 \\ 0 \ar[r] & C_1 \ar[d] \ar[r]^{p_c} & C_2 \ar[d] \ar[r]^{q_c} & C_3 \ar[d] \ar[r] & 0 \\ & 0 & 0 & 0 & } \end{xy} について、以下の図式 \begin{xy} \xymatrix { 0 \ar[r] & A_\bullet \ar[r]^{f_\bullet} & B_\bullet \ar[r]^{g_\bullet} & C_\bullet \ar[r] & 0 \\ } \end{xy} と \begin{xy} \xymatrix { 0 \ar[r] & A_1 \ar[r]^{p_a} & A_2 \ar[r]^{q_a} & A_3 \ar[r] & 0 \\ } \end{xy} と \begin{xy} \xymatrix { 0 \ar[r] & C_1 \ar[r]^{p_c} & C_2 \ar[r]^{q_c} & C_3 \ar[r] & 0 \\ } \end{xy} が完全であるとする。このとき、 \begin{xy} \xymatrix { 0 \ar[r] & B_1 \ar[r]^{p_b} & B_2 \ar[r]^{q_b} & B_3 \ar[r] & 0 \\ } \end{xy} が複体であるならば、これは完全列である。

証明

  • $B_1$ における完全性

$p_b$ がモノ射であることを示す。$x \in B_1$ であって、$p_b(x)\equiv 0$ なる $x$ を任意に取る。このとき、$x\equiv 0$ であることを示せばよい。

$p_c(g_1(x))\equiv g_2(p_b(x))\equiv 0$ より、$p_c$ はモノ射であったため、$g_1(x)=0$ が成り立つ。従って、$f_1(y)=x$ なる $y \in A_1$ なるメンバ $y$ が存在する。よって $f_2(p_a(y))\equiv p_b(f_1(y))\equiv p_b(x)\equiv 0$ が成り立つ。ここで、$f_2$, $p_a$ はモノ射であったため、$y\equiv 0$ が成り立つ。よって $x\equiv 0$ が示される。

  • $B_3$ における完全性

($B_1$ における議論を $\mathcal{A}^{op}$ において適用することで $B_3$ における完全性を示すことができることをここに述べておく。以下では、直接 $\mathcal{A}$ のなかでメンバを用いて $B_3$ の完全性を示す。)

$B_3$ の任意のメンバ $z$ について、$q_b(w)\equiv z$ なる $B_2$ のメンバ $w$ が存在することを示す。

$q_c$, $g_2$ はエピ射であるため、$q_c(g_2(w'))\equiv g_3(z)$ なる $B_2$ のメンバ $w'$ が存在する。このとき $g_3(z-q_b(w'))\equiv g_3(z)-g_3(q_b(w'))\equiv g_3(z)-q_c(g_2(w'))\equiv 0$ が成り立つため、$A_3$ のメンバ $v$ であって $f_3(v)\equiv z-q_b(w')$ なるものが存在する。$q_a$ はエピ射であるため、$A_2$ のメンバ $u$ であって $q_a(u)\equiv v$ なるものが存在する。このとき、$q_b(f_2(u))\equiv f_3(q_a(u))\equiv f_3(v)\equiv z-q_b(w')$ が成り立つ。従って $q_b(w'+f_2(u))\equiv z$ が示される。

  • $B_2$ における完全性

$q_b(x)\equiv 0$ なる $B_2$ のメンバ $x$ について、$p_b(y)\equiv x$ なる $B_1$ のメンバ $y$ が存在することを示せばよい。

$g_3(p_b(x))\equiv 0$ であるため、$q_c(g_2(x))\equiv 0$ が成り立つ。よって、$C_2$ における完全性より、$C_1$ のメンバ $z$ であって、$p_c(z)\equiv g_2(x)$ を充たすものが存在する。このとき、$g_1$ はエピ射であるため、$g_1(w)\equiv z$ を充たすような $B_1$ のメンバ $w$ が存在する。このとき、$g_2(p_b(w))\equiv p_c(g_1(w))\equiv p_c(z)\equiv g_2(x)$ が成り立つため、$g_2(x-p_b(w))\equiv 0$ が成り立つ。従って $f_2(v)\equiv x-p_b(w)$ なる $A_2$ のメンバ $v$ が存在する。

このとき、$f_3(q_a(v))\equiv q_b(f_2(v))\equiv q_b(z-p_b(w))\equiv q_b(z)-q_b(p_b(w))\equiv 0$ であり、かつ $f_3$ はモノ射であるため、$q_a(v)\equiv 0$ が成り立つ。従って、$p_a(u)\equiv v$ なる $A_1$ のメンバ $u$ が存在する。このとき、$y=w+f_1(u)$ とおくと、$$p_b(y)\equiv p_b(w+f_1(u))\equiv p_b(w)+p_b(f_1(u))\equiv p_b(w)+f_2(p_a(u))\equiv p_b(w)+f_2(v)\equiv p_b(w)+x-p_b(w)\equiv x$$ が成り立つ。

蛇の補題

複体のホモロジー

  1. この記事独自の語法である