ブレイド群

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ブレイド群(braid group)とは、ブレイド(組紐)のなす群のことを指す。配位空間の基本群としても現れるブレイド群は、トポロジーにおいても重要性を増している対象である。

定義

位相多様体 $M$ とそのうえの相異なる $n$ 点 $x_1,\ldots, x_n$ を固定する(しばしば $M$ として曲面を考えることが多い)。このとき、$n$ 個の位相的埋込 $b_i\colon [0,1] \to M \times [0,1]$ であって以下の性質を充たすものをブレイドという。

  • $b_i(t) = ( ? , t )$
  • $i \neq j$ について $b_i$ の像と $b_j$ の像は交わらない
  • $b_i(0) = ( x_i , 0 )$
  • ある $n$ 次対称群の元 $\tau$ が存在して $b_i(1) = (x_{\tau(i)} , 1)$

ブレイド $b = (b_\bullet)$ と $b' = (b'_\bullet)$ がアイソトピックであるとは、$M \times [0,1]$ 上のブレイドの端点を固定するアイソトピーによって $b$ を $b'$ に移せることをいう。

ここで、ブレイド $b$, $b'$ について、「ブレイド $b$ と $b'$ とをつなげる操作」を考えることができる。すなわち、$(bb')_i$ として、$0 \leq x \leq \frac{1}{2}$ について $b_i(2x)$ をあて、$\frac{1}{2}$ について $b'_{\tau(i)}(2x - 1)$ をあてるようなブレイドを考えることができる。このアイソトピー類は $b$, $b'$ のアイソトピー類に依らず、さらにこの演算によってブレイドのアイソトピー類全体は群をなす。この群をブレイド群といい、$B(n ; M)$ と表記する。

純ブレイド群

位相多様体 $M$ 上のブレイド $b = (b_\bullet)$ について、以下の性質を充たすものを純ブレイド、もしくは色付きブレイドという。

  • $b_i(1) = (x_i , 1)$

このとき、純ブレイドとアイソトピー同値なブレイドは純ブレイドである。また、純ブレイドのアイソトピー類のなすブレイド群の部分集合は群をなす。この群を純ブレイド群といい、$H(n ; M)$ と表記する。

配位空間

位相空間 $X$ に対して、$X$ の順序付き $n$ 点の配位空間 $F_n(X)$ とは、$X^n$ の部分空間であって、すべての座標において異なる値を取るような点のなすもののことをいう。すなわち、$\Delta = \{(x_\bullet)\in X^n|\exists i \neq j \land x_i = x_j\}$ とおいたときの $X^n \setminus \Delta$ のことをいう。

$X$ の順序なし $n$ 点の配位空間 $C_n(X)$ とは、$F_n(X)$ に座標の入れ替えに関する $n$ 次対称群の作用を入れたときの商空間のことをいう。

このとき、位相多様体 $M$ について、$n$ 次ブレイド群 $B(n ; M)$ は $C_n(M)$ の基本群と一致する。また $n$ 次純ブレイド群$H(n ; M)$ は $F_n(M)$ の基本群と一致する。

またユークリッド平面 $\mathbb{E}^2$ について、$C_n(\mathbb{E}^2)$, $F_n(\mathbb{E}^2)$ の $2$ 次以上のホモトピー群は自明であるため、これらはそれぞれEilenberg-MacLane空間 $K(B(n),1)$, $K(H(n),1)$ と一致する。

表示

ブレイド群 $B(n) = B(n ; \mathbb{E}^2)$ は次の表示を持つ。

  • 生成系: $\sigma_1, \ldots, \sigma_{n-1}$
  • 関係式:
    • $|i - j| \gt 1$ なる $i, j$ について $\sigma_i\sigma_j = \sigma_j\sigma_i$
    • $\sigma_i\sigma_{i+1}\sigma_i = \sigma_{i+1}\sigma_i\sigma_{i+1}$

事実

  • 三葉結び目(trefoil knot)について、これを $T$ とよぶとき、$T$ の絡み目群($\pi_1(S^3\setminus T)$)は $3$ 次ブレイド群 $B(3)$ と同型となる。
  • $1 \to H(n) \to B(n) \to \Sigma_n \to 1$ なる群の完全系列が存在する。
  • $1 \to \mathbb{Z}^{*n} \to H(n) \to H(n-1) \to 1$ なる群の完全系列が存在する。ただし $\mathbb{Z}^{*m}$ とは $m$ 個の群 $\mathbb{Z}$ の自由積のことを指す。