位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理

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この章では、Fréchet空間における一様有界性定理、開写像定理、閉グラフ定理について述べる。これらの定理は多くのテキストではBanach空間において述べられるが、超関数とFourier変換、Sobolev空間における応用のため、より一般的なFréchet空間において述べている。 本稿においては、$\mathbb{F}$ により $\mathbb{R}$ か $\mathbb{C}$ を表すこととする。また $\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$ とする。

入門テキスト「位相線形空間」

15. Fréchet空間の定義、Fréchet空間に適合する完備平行移動不変距離

定義15.1(位相線形空間のCauchy列)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上の位相線形空間とする。$X$ の点列 $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ が $X$ のCauchy列であるとは、$0\in X$ の任意の近傍 $V$ に対し $n_0\in\mathbb{N}$ が存在し、 $$ x_n-x_m\in V\quad(\forall n,m\geq n_0) $$ が成り立つことを言う。

定義15.2(Fréchet空間)

$\mathbb{F}$ 上のセミノルム空間 $X$ が $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間であるとは、$X$ のセミノルム位相を誘導するセミノルムの分離族として可算なものが取れ、$X$ の任意のCauchy列が収束することを言う。

Banach空間はFréchet空間である。

定義15.3(Fréchet空間に適合する平行移動不変距離)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間とし、$\{p_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ を $X$ のセミノルム位相を誘導する可算分離族とする。$d\colon X\times X\rightarrow[0,\infty)$ を、 $$ d(x,y)\colon=\underset{n\in\mathbb{N}}{\text{max}}\frac{1}{n}\frac{p_n(x-y)}{1+p_n(x-y)}\quad(\forall x,y\in X)\quad\quad(*) $$ とおくと、次の命題15.4で見るように、$d$ は次を満たす。

  • $(1)$ $d$ は平行移動不変、すなわち任意の $x,y,z\in X$ に対し $d(x+z,y+z)=d(x,y)$.
  • $(2)$ $d$ は $X$ 上の距離である。
  • $(3)$ $d$ に関する $0\in X$ を中心とする任意の開球 $B(0,r)=\{x\in X:d(x,0)<r\}$ はFréchet空間の絶対凸な開集合である。
  • $(4)$ $d$ が誘導する距離位相はFréchet空間 $X$ の位相と一致する。特に $X$ は $d$ に関して完備距離空間である。

$d$ をFréchet空間 $X$ に適合する平行移動不変距離と呼ぶこととする。

命題15.4

定義15.3の $(*)$ によって定義される $d\colon X\times X\rightarrow[0,\infty)$ は $(1),(2),(3),(4)$ を満たす。

Proof.

$(1)$ は自明である。 $$ [0,\infty)\ni t\mapsto \frac{t}{1+t}=1-\frac{1}{1+t}\in [0,1)\quad\quad(*) $$ は狭義単調増加であるから、任意の $n\in \mathbb{N}$ と任意の $x,y,z\in X$ に対し、 $$ \frac{p_n(x-y)}{1+p_n(x-y)}\leq \frac{p_n(x-y)+p_n(y-z)}{1+p_n(x-y)+p_n(y-z)} \leq \frac{p_n(x-y)}{1+p_n(x-y)}+\frac{p_n(y-z)}{1+p_n(y-z)} $$ である。これより $(2)$ が成り立つことが分かる。 $$ B(0,r)=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}\left\{x\in X:\frac{1}{n}\frac{p_n(x)}{1+p_n(x)}<r\right\}=\bigcap_{n\in\mathbb{N},nr<1}\left\{x\in X:p_n(x)<\frac{nr}{1-nr}\right\} $$ であり、$nr<1$ を満たす $n\in\mathbb{N}$ は有限個で、各$\{x\in X:p_n(x)<\frac{nr}{1-nr}\}$ はFréchet空間 $X$の絶対凸な開集合であるから $(3)$ が成り立つ。
任意の $N\in \mathbb{N}$ と $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し、 $$ r\colon=\frac{1}{N}\frac{\epsilon}{1+\epsilon} $$ とおくと、$(*)$ が狭義単調増加であることから、 $$ B(0,r)\subset \bigcap_{n=1}^{N}\{x\in X:p_n(x)<\epsilon\} $$ が成り立つ。よって命題8.6の $(3)$ より $\{B(0,r)\}_{r\in (0,\infty)}$ はFréchet空間 $X$ における $0\in X$ の基本近傍系である。$d$ は平行移動不変であるから $d$ が誘導する距離位相とFréchet空間 $X$ の位相は一致する。

16. Baireのカテゴリ定理

定理16.1(Baireのカテゴリ定理)

$(X,d)$ を完備距離空間とし、$(V_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ において稠密な開集合からなる列とする。このとき $\bigcap_{n\in\mathbb{N}}V_n$ も $X$ において稠密である。

Proof.

任意の $x_0\in X$ と $r_0\in (0,\infty)$ に対し、 $$ B(x_0,r_0)\cap \bigcap_{n\in \mathbb{N}}V_n\neq\emptyset\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せばよい。$x_0\in X=\overline{V_1}$ より $B(x_0,r_0)\cap V_1\neq\emptyset$ である。よって、 $$ \overline{B}(x_1,r_1)\subset B(x_0,r_0)\cap V_1,\quad 0<r_1\leq\frac{r_0}{2} $$ なる閉球 $\overline{B}(x_1,r_1)=\{x\in X:d(x,x_1)\leq r_1\}$ が取れる。$x_1\in X=\overline{V_2}$ より $B(x_1,r_1)\cap V_2\neq\emptyset$ であるから、 $$ \overline{B}(x_2,r_2)\subset B(x_1,r_1)\cap V_2,\quad 0<r_2\leq\frac{r_0}{2^2} $$ なる閉球 $\overline{B}(x_2,r_2)$ が取れる。同様のことを繰り返せば閉球の列 $(\overline{B}(x_n,r_n))_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ \overline{B}(x_{n},r_{n})\subset B(x_{n-1},r_{n-1})\cap V_{n},\quad 0<r_n\leq\frac{r_0}{2^n}\quad(\forall n\in \mathbb{N})\quad\quad(**) $$ を満たすものが取れる。このとき、 $$ \bigcap_{n\in \mathbb{N}}\overline{B}(x_n,r_n)\subset B(x_0,r_0)\cap \bigcap_{n\in \mathbb{N}}V_n $$ である。よって $(*)$ を示すためには $\bigcap_{n\in \mathbb{N}}\overline{B}(x_n,r_n)\neq\emptyset$ を示せばよい。$m>n$ なる任意の $n,m\in \mathbb{N}$ に対し $(**)$ より、 $$ d(x_m,x_n)\leq d(x_m,x_{m-1})+\ldots+d(x_{n+1},x_n)\leq r_{m-1}+\ldots+r_n\leq2\frac{r_0}{2^n} $$ である。これより $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ はCauchy列であるので、完備性よりある $x\in X$ に収束する。$x\in \bigcap_{n\in \mathbb{N}}\overline{B}(x_n,r_n)$ が成り立つことを示せばよい。任意の $n\in \mathbb{N}$ と $\epsilon\in (0,\infty)$に対し、 $m\geq n$ かつ $d(x_m,x)<\epsilon$ を満たす $m\in \mathbb{N}$ を取れば、 $x_m\in B(x,\epsilon)\cap \overline{B}(x_n,r_n)\neq\emptyset$ である。よって $\epsilon$ の任意性より $x\in \overline{B}(x_n,r_n)$ であり、$n\in \mathbb{N}$ の任意性より $x\in \bigcap_{n\in \mathbb{N}}\overline{B}(x_n,r_n)$ である。

系16.2

$X$ を空でない完備距離空間、$(F_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ の閉集合からなる列とし、$X=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}F_n$ とする。 このときある $n\in \mathbb{N}$ に対し $F_n^{\circ}\neq\emptyset$ が成り立つ。

Proof.

任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $F_n^{\circ}=\emptyset$ であると仮定する。このとき $V_n:=X\backslash F_n$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ とおけば $(V_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $X$ において稠密な開集合からなる列である。よってBaireのカテゴリ定理より $\bigcap_{n\in\mathbb{N}}V_n$ は $X$ において稠密である。しかし $\bigcap_{n\in \mathbb{N}}V_n=X\backslash \bigcup_{n\in \mathbb{N}}F_n=\emptyset$ であるから $X$ が空でないことに矛盾する。

17. Fréchet空間における一様有界性定理

定義17.1(セミノルム空間の部分集合の有界性)

$X$ をセミノルム空間とする。 $B\subset X$ が有界であるとは、任意の絶対凸な開集合 $V$ に対し $r\in (0,\infty)$ が存在し $B\subset rV=\{rx:x\in V\}$ が成り立つことを言う。命題8.6の $(3)$ より $B$ が有界であることは、任意の連続なセミノルム $p\colon X\rightarrow[0,\infty)$ に対し $r\in(0,\infty)$ が存在し $B\subset \{x\in X:p(x)<r\}$ が成り立つことと同値である。

セミノルム空間の部分集合の有界性はノルム空間の部分集合の有界性と矛盾しない。

補題17.2

$X$ をセミノルム空間とする。$0\in X$ の任意の近傍 $V$ に対し、絶対凸開集合 $W$ で $\overline{W}\subset V$ を満たすものが取れる。

Proof.

加法の連続性と命題8.6の $(3)$ より絶対凸な開集合 $W$ で、 $$ W+W=\{x+y:x,y\in W\}\subset V $$ なるものが取れる。このとき、 $$ W\cap ((X\backslash V)-W)=\emptyset $$ であり、$(X\backslash V)-W=\{x-y: x\in X\backslash V,y\in W\}=\bigcup_{x\in X\backslash V}(x-W)$ は開集合であるから、 $$ \overline{W}\cap ((X\backslash V)-W)=\emptyset $$ である。よって $\overline{W}\cap (X\backslash V)=\emptyset$ であるから、$\overline{W}\subset V$ である。

定理17.3(一様有界性定理)

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間、$Y$ を $\mathbb{F}$ 上のセミノルム空間とし、$J$ を空でない集合とし、各 $j\in J$ に対し連続線形写像 $T_j\colon X\rightarrow Y$ が与えられているとする。そして各 $x\in X$ に対し $\{T_jx\}_{j\in J}$ が $Y$ の有界集合であるとする。このとき $0\in Y$ の任意の開近傍 $V$ に対し、$0\in X$ の開近傍 $U$ で $T_j(U)\subset V$ $(\forall j\in J)$ を満たすものが存在する。

Proof.

補題17.2より $Y$ の絶対凸開集合 $W$ で $\overline{W}\subset V$ なるものが取れる。このとき $\overline{W}$ は絶対凸閉集合[1]である。各 $T_j\colon X\rightarrow Y$ は連続線形写像であるので、 $$ F\colon=\bigcap_{j\in J}T_j^{-1}(\overline{W}) $$ は $X$ の絶対凸閉集合である。任意の $x\in X$ に対し、$\{T_jx\}_{j\in J}$ は $Y$ の有界集合であるから、ある $n\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ \{T_jx\}_{j\in J}\subset nW, $$ すなわち、 $$ \frac{1}{n}x\in \bigcap_{j\in J}T_j^{-1}(W)\subset F $$ が成り立つ。これより、 $$ X=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}nF $$ であるので、Baireのカテゴリ定理(系16.2)より、 $F^{\circ}\neq\emptyset$ が成り立つ。$F$ は絶対凸なので、任意の $x\in F^{\circ}$ に対し、 $$ 0=\frac{1}{2}x-\frac{1}{2}x\in \frac{1}{2}F^{\circ}-\frac{1}{2}x\subset F $$ であり、$\frac{1}{2}F^{\circ}-\frac{1}{2}x$ は開集合なので、$0\in F^{\circ}$ である。そして任意の $j\in J$ に対し $T_j(F^{\circ})\subset\overline{W}\subset V$ であるから、$U$ を $F^{\circ}$ とすればよい。

系17.4

$X$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間、$Y$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム空間とし、各 $n\in \mathbb{N}$ に対し連続線形写像 $T_n\colon X\rightarrow Y$ が与えられているとする。そして各 $x\in X$ に対し $(T_nx)_{n\in \mathbb{N}}$ は収束するとする。このとき、 $$ Tx\colon=\lim_{n\rightarrow\infty} T_nx\quad(\forall x\in x) $$ として定義される線形写像 $T\colon X\rightarrow Y$ は連続である。

Proof.

$T$ の連続性を示すには $0\in X$ における連続性を示せば十分である。$0\in Y$ の任意の近傍 $V$ を取る。任意の $x\in X$ に対し $\{T_nx\}_{n\in \mathbb{N}}$ は有界なので、一様有界性定理より、$0\in X$ の近傍 $U$ で $T_n(U)\subset V$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ を満たすものが取れる。よって $T(U)\subset \overline{V}$ であるから $T$ は $0\in X$ において連続である。

18. Fréchet空間における開写像定理

定義18.1(開写像)

$X,Y$ を位相空間とする。写像 $f\colon X\rightarrow Y$ が開写像であるとは、$X$ の任意の開集合 $U$ に対し $f(U)$ が $Y$ の開集合であることを言う。

定理18.2(開写像定理)

$X,Y$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間とし、$T\colon X\rightarrow Y$ を全射連続線形写像とする。このとき $T$ は開写像である。

Proof.

  • $(1)$ $0\in X$ の任意の近傍 $U$ に対し $T(U)$ が $0\in Y$ の近傍であることを示す。$d\colon X\times X\rightarrow[0,\infty)$ をFréchet空間 $X$ に適合する平行移動不変距離(定義15.3)とし、

$$ \{x\in X:d(x,0)\leq r\}\subset U $$ なる $r\in (0,\infty)$ を取る。そして、 $$ U_0\colon=\{x\in X:d(x,0)\leq r\},\quad U_n:=\{x\in X:d(x,0)<\frac{r}{2^n}\}\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ とおく。各 $n\in \mathbb{N}$ に対し $U_n$ は $0\in X$ の開近傍であるから、スカラー倍の連続性より、 $$ X=\bigcup_{k\in\mathbb{N}}kU_n $$ である。$T\colon X\rightarrow Y$ は全射線形写像であるから、 $$ Y=T(X)=\bigcup_{k\in\mathbb{N}}kT(U_n)=\bigcup_{k\in\mathbb{N}}k\overline{T(U_n)} $$ である。よってBaireのカテゴリ定理(系16.2)より $(\overline{T(U_n)})^{\circ}\neq\emptyset$ であり、$\overline{T(U_n)}$ は絶対凸であるから、 $$ 0\in (\overline{T(U_n)})^{\circ}\quad(\forall n\in \mathbb{N})\quad\quad(*) $$ が成り立つ。[2]これより $T(U)$ が $0\in Y$ の近傍であることを示すには、 $$ \overline{T(U_1)}\subset T(U_0)\quad\quad(**) $$ が成り立つことを示せばよい。任意の $y_1\in \overline{T(U_1)}$ を取る。$(*)$ より $y_1-\overline{T(U_2)}$ は $y_1$ の近傍であるから、 $$ (y_1-\overline{T(U_2)}))\cap T(U_1)\neq\emptyset $$ が成り立つ。よって $y_2\in \overline{T(U_2)}$ と $x_1\in U_1$ で、 $$ y_1-y_2=Tx_1 $$ なるものが取れる。また $(*)$ より $y_2-\overline{T(U_3)}$ は $y_2$ の近傍であるから、 $$ (y_2-\overline{T(U_3)})\cap T(U_2)\neq\emptyset $$ が成り立つ。よって $y_3\in \overline{T(U_3)}$ と $x_2\in U_2$ で、 $$ y_2-y_3=Tx_2 $$ なるものが取れる。同様のことを繰り返すことで $X$ の点列 $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ と $Y$ の点列 $(y_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ y_n-y_{n+1}=Tx_n,\quad y_n\in\overline{T(Y_n)},\quad x_n\in U_n\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ なるものが取れる。$\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ は $0\in X$ の基本近傍系であり、 $(U_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は単調減少列で、 $T$ は連続であるから、 $y_n\in \overline{T(U_n)}$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ は、$\lim_{n\rightarrow\infty}y_n=0$ を意味する。よって、 $$ y_1=\lim_{N\rightarrow\infty}(y_1-y_{N+1})=\lim_{N\rightarrow\infty}\sum_{n=1}^{N}Tx_n\quad\quad(***) $$ である。$d$ は平行移動不変距離であるから $M>N$ なる任意の $N,M\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ d\left(\sum_{n=1}^{M}x_n,\text{ }\sum_{n=1}^{N}x_n\right) =d\left(\sum_{n=N+1}^{M}x_n,\text{} 0\right)\leq \sum_{n=N+1}^{M}d(x_n,0)<2\frac{r}{2^N} $$ である。((平行移動不変性と三角不等式より任意の $u,v\in X$ に対し $d(u+v,0)=d(u+v,v)+d(v,0)=d(u,0)+d(v,0)$ となることに注意。))よって $(\sum_{n=1}^{N}x_n)_{N\in \mathbb{N}}$ はFréchet空間 $X$ のCauchy列であるから、 $$ x:=\lim_{N\rightarrow\infty}\sum_{n=1}^{N}x_n\in X $$ が存在する。$T$ の連続性と $(***)$ より $y_1=Tx$ である。$d$ の平行移動不変性より、 $$ d\left(\sum_{n=1}^{N}x_n,\text{ } 0\right)\leq \sum_{n=1}^{N}d(x_n,0)\leq r\quad(\forall N\in \mathbb{N}) $$ であり、 $$ \left\lvert d(x,0)-d\left(\sum_{n=1}^{N}x_n,\text{ }0\right)\right\rvert\leq d\left(x,\sum_{n=1}^{N}x_n\right)\rightarrow0\quad(N\rightarrow\infty) $$ であるので $d(x,0)\leq r$ である。よって $x\in U_0$ であるから、 $y_1=Tx\in T(U_0)$ である。これで $(**)$ が示された。

  • $(2)$ $X$ の開集合 $U$ に対し $T(U)$ が $Y$ の開集合であることを示す。そのためには任意の $x_0\in U$ に対し $Tx_0\in T(U)^{\circ}$ が成り立つことを示せばよい。$0\in X$ の近傍 $U_0$ で $x_0+U_0\subset U$ なるものを取る。$(1)$ より $T(U_0)$ は $0\in Y$ の近傍であるから $Tx_0+T(U_0)$ は $Tx_0\in Y$ の近傍である。$Tx_0+T(U_0)=T(x_0+U_0)\subset T(U)$ であるから $Tx_0\in T(U)^{\circ}$ である。

系18.3

$X,Y$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間、$T\colon X\rightarrow Y$ を連続な線形同型写像とする。このとき $T^{-1}\colon Y\rightarrow X$ は連続である。

19. Fréchet空間における閉グラフ定理

注意19.1(Fréchet空間の閉部分空間)

Fréchet空間 $X$ の閉部分空間 $M\subset X$ は自然にFréchet空間である。実際、$\{p_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ のセミノルム位相を誘導するセミノルムの可算分離族とすると、$\{p_n|_M\}_{n\in \mathbb{N}}$ は $M$ 上のセミノルムの可算分離族であり、これが $M$ に誘導するセミノルム位相は $X$ の相対位相である。そして $M\subset X$ は閉であるから、 $M$ の元からなるCauchy列は $M$ の元に収束するので、$M$ はFréchet空間である。

注意19.2(Fréchet空間の直積はFréchet空間)

$X,Y$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間とすると、直積線形空間 $X\times Y$ は直積位相によりFréchet空間である。実際、$\{p_{X,n}\}_{n\in \mathbb{N}}, \{p_{Y,n}\}_{n\in \mathbb{N}}$ をそれぞれ $X,Y$ のセミノルム位相を誘導するセミノルムの可算分離族とし、 $$ p_n\colon X\times Y\ni (x,y)\mapsto p_{X,n}(x)+p_{Y,n}(y)\in [0,\infty)\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ として $X\times Y$ 上のセミノルムの可算分離族 $\{p_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ を定義すれば、これが $X\times Y$ に誘導するセミノルム位相は直積位相であり、これにより $X\times Y$ はFréchet空間である。

定理19.3(閉グラフ定理)

$X,Y$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間、$T\colon X\rightarrow Y$ を線形写像とし、$T$ のグラフ $$ G(T)=\{(x,Tx):x\in X\}\subset X\times Y $$ を考える。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $T$ は連続である。
  • $(2)$ $G(T)$ は直積位相に関して閉である。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ は自明である。$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つとする。注意19.1注意19.2より $G(T)$ はFréchet空間である。射影 $$ \pi_1:G(T)\ni (x,Tx)\mapsto x\in X,\quad \pi_2:G(T)\ni (x,Tx)\mapsto Tx\in Y $$ はそれぞれ連続線形写像であり、$\pi_1$ は全単射であるから、系18.3より、$\pi_1^{-1}\colon X\rightarrow G(T)$ は連続である。よって $T=\pi_2\pi_1^{-1}\colon X\rightarrow Y$ は連続である。

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関連項目

脚注

  1. $\overline{W}$の点は $W$ のネットの収束点によって表されることに注意。ネットによる位相空間論命題2.4を参照。
  2. 実際、任意の $y\in (\overline{T(U_n)})^{\circ}$ に対し $0=\frac{1}{2}y-\frac{1}{2}y=\frac{1}{2} (\overline{T(U_n)})^{\circ}-\frac{1}{2}y\subset \overline{T(U_n)}$ であり、$\frac{1}{2} (\overline{T(U_n)})^{\circ}-\frac{1}{2}y$ は開集合であるので、$0\in (\overline{T(U_n)})^{\circ}$ である。