基数関数

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基数関数

基数関数とは、なんらかの数学的対象に対して基数のひとつを割り当てる対応のことである。特に、位相空間について無限基数を割り当てる基数関数を考えることが多いため、本稿ではそのようなものに限って解説を行う。

濃度

位相空間 $X$ について、$\mathrm{card}(X)$ を $\max\{|X|\, , \, \aleph_0\}$ として定義すると、対応 $\mathrm{card}$ は基数関数となる。ここで、有限位相空間 $X$ について、$\mathrm{card}(X)$ は $\aleph_0$となることを注意しておく。混乱が生じない場合、$\mathrm{card}(X)$ のことを指して$|X|$と表記することがある。

対応 $\mathrm{card}$ は、位相空間の大きさを測るもっとも基本的な道具である。例えば、$|\mathbb{R}|=2^{\aleph_0}$ である。

開集合の個数

位相空間 $X$ の開集合系を $\mathcal{O}$ とするとき、$o(X)$ を $\max\{|\mathcal{O}|\, , \, \aleph_0\}$ として定義する。

(無限集合上の)離散空間においては、明らかに $o(X)=2^{|X|}$ が成立する。逆に、$\mathcal{O}\subset \mathcal{P}(X)$ であるため、一般に $o(X)\leq 2^{|X|}$ が成り立つ。また、$T_0$-空間においては$|X|\leq o(X)$が成り立つことが知られている。

weight

位相空間 $X$ の基底とは、開集合よりなる集合 $B$ であって、以下の性質を満たすものである。

  • 任意の点 $x$ と開集合 $x\in U$ について、$B$ の要素 $V$ であって $x\in V \subset U$ が成り立つものが存在する。

$X$ の基底の濃度として最小のものを $\kappa$ とおく。このとき、$w(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $w$ は基数関数となる。

$w(X)=\aleph_0$ を満たす位相空間 $X$ について、第二可算空間であるという。

network weight

位相空間 $X$ のネットワークとは、$X$ の部分集合よりなる集合 $\mathcal{N}$ であって、以下の性質を満たすものである。

  • 任意の点 $x$ と開集合 $x\in U$ について、$\mathcal{N}$ の要素 $N$ であって $x\in N\subset U$ が成り立つものが存在する。

$X$ のネットワークの濃度として最小のものを $\kappa$ とおく。このとき、$nw(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $nw$ は基数関数となる。

density

位相空間 $X$ の部分空間 $Y$ について、$Y$ が $X$ で稠密であるとは $\overline{Y}=X$ が成り立つことを言う。

$X$ の稠密な部分空間の濃度として最小のものを $\kappa$ とおく。このとき、$d(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $d$ は基数関数となる。

$d(X)=\aleph_0$ を満たす位相空間 $X$ について、可分空間であるという。

Lindelöf度数

位相空間 $X$ について、以下の性質を充たす最小の基数を $\kappa$ とおく。

  • $X$ の開被覆 $\{U_i\}_{i \in \Lambda}$ について、濃度 $\kappa$ 以下の集合 $\Lambda ' \subset \Lambda$ が存在して、$\{U_i\}_{i \in \Lambda '}$ が $X$ の開被覆となるようにできる。

このとき、$L(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $L$ は基数関数となる。

$L(X)=\aleph_0$ を満たす位相空間 $X$ について、Lindelöf空間であるという。

弱被覆度数

位相空間 $X$ について、以下の性質を充たす最小の基数を $\kappa$ とおく。

  • $X$ の開被覆 $\{U_i\}_{i \in \Lambda}$ について、濃度 $\kappa$ 以下の集合 $\Lambda ' \subset \Lambda$ が存在して、$X=\overline{\bigcup_{i \in\Lambda '} U_i}$が成り立つようにできる。

このとき、$wc(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $wc$ は基数関数となる。定義より明らかに、$wc(X)\leq L(X)$ が成り立つ。

cellularity

位相空間 $X$ について、以下の性質を充たす最小の基数を $\kappa$ とおく。

  • $X$ の開集合の族 $\{U_i\}_{ i \in \Lambda }$ であって、相異なる $i,j \in \Lambda$ について $U_i \cup U_j = \emptyset$ が成り立つようなものを取ったとき、$|\Lambda| \leq \kappa$ が成り立つ。

このとき、$c(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $c$ は基数関数となる。

spread

位相空間 $X$ について、以下の性質を充たす最小の基数を $\kappa$ とおく。

  • $X$ の離散な部分空間 $Y$ について、$|Y| \leq \kappa$ が成り立つ。

このとき、$s(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $s$ は基数関数となる。

extent

位相空間 $X$ について、以下の性質を充たす最小の基数を $\kappa$ とおく。

  • $X$ の離散な閉部分空間 $Y$ について、$|Y| \leq \kappa$ が成り立つ。

このとき、$e(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $e$ は基数関数となる。定義より明らかに、$e(X) \leq s(X)$が が成り立つ。

character

位相空間 $X$ と点 $x \in X$ について、$X$ の $x$ 上の基底とは、開集合よりなる集合 $B$ であって、以下の性質を満たすものである。

  • 開集合 $x\in U$ について、$B$ の要素 $V$ であって $x\in V \subset U$ が成り立つものが存在する。

点 $x \in X$ について、$X$ の $x$ 上の基底の濃度として最小のものを $\kappa$ とおく。このとき、$\chi(X,x)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定め、また $\chi(X)$ を $\sup_{x \in X}\chi(X,x)$ として定める。

$\chi(X)=\aleph_0$ を満たす位相空間 $X$ について、第一可算空間であるという。

tightness

位相空間 $X$ について、以下の性質を充たす最小の基数を $\kappa$ とおく。

  • $X$ の任意の部分集合 $Y$ と点 $x\in\overline{Y}$ に対し、濃度 $\kappa$ 以下の集合 $A\subset Y$ が存在して $x\in \overline{A}$ が成り立つようにできる。

このとき、$t(X)$ を $\max\{\kappa\, , \, \aleph_0\}$ として定めると、対応 $t$ は基数関数となる。

性質

  • $wc(X)\leq d(X)\leq w(X)\leq o(X)$ が成り立つ。
  • $wc(X)\leq c(X)$ が成り立つ。
  • $t(X)\leq \chi(X) \leq w(X)$が成り立つ。
  • $cf(\kappa)>t(X)$ なる基数 $\kappa$ と、閉集合の昇鎖列 $\{A_\alpha\,|\,0\leq \alpha <\kappa\}$ について、$\bigcup_{0\leq \alpha <\kappa} A_\alpha$ は閉集合である。
  • $nw(X)\leq \mathrm{card}(X)$ が成り立つ。
  • $nw(X)\leq w(X)$ が成り立つ。さらに、局所コンパクトHausdorff空間については $nw(X)=w(X)$ が成り立つ。

有名な結果

関連項目