微分方程式の初歩

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本稿においては、関数解析の基礎(主に入門テキスト「測度と積分」超関数とFourier変換、Sobolev空間Hilbert空間上の作用素論ベクトル解析など)の内容を用いて、特に物理学の初歩的なところで現れる微分方程式の定性的側面について、数学的に厳密な裏付けを与えることを念頭に置き、微分方程式の初歩について論じる。(本稿の執筆者は専門的に微分方程式論に取り組んだ経験がある訳ではない。偏微分方程式論のより詳しい理論展開についてはHölder空間の基本事項やこれに関連する記事を参照されたい。)
具体的に扱う内容について述べる。まず第 $1$ 節では常微分方程式の初期値問題の解の一意性と解の初期値に対する滑らかさについて論じる。(なお、第 $1$ 節の内容は第 $2$ 節以降を読むのに特に必要ではない。)
第 $2$ 節では、第 $3$ 節以降で境界条件を扱う上で重要な役割を演じるGaussの発散定理(Greenの積分公式)のSobolev空間版の証明を行う。
第 $3$ 節ではEuclid空間の領域 $\Omega$ におけるDirichlet-Neumann混合境界条件付き一様楕円型偏微分作用素(主にラプラシアン)がHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非有界自己共役作用素として扱えることとそのスペクトル特性、及びそれに関する楕円型正則性定理を示す。
第 $4$ 節では、調和関数の球面平均、球平均の性質や最大値の原理について述べる。
第 $5$ 節では、第 $3$ 節、第 $4$ 節の内容を用いて、Laplace-Poisson方程式の境界値問題の解の一意性や正則性、Green関数による表現公式について述べる。
第 $6$ 節では、第 $3$ 節の内容を用いて境界条件付き波動方程式をHilbert空間上の作用素論の枠組みで論じ、その一般解がラプラシアンのスペクトル測度による積分(Borel汎関数計算(Hilbert空間上の作用素論の第 $8$ 節を参照))で表せることを示す。そしてその系として有界領域における一般解がラプラシアンの各離散固有値(モード)ごとの解の重ね合わせであることの導出や、$\mathbb{R}^3$ における波動方程式の一般解が平面波の波数ベクトルに関する積分と非斉次項による遅延解の和であることの導出を行う。
本稿を通して $\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$, $\mathbb{Z}_+=\{0,1,2,3,\ldots\}$ とし、$\mathbb{C}$ 上のHilbert空間の内積は第二変数に関して線形とする。また $a\in \mathbb{R}^N$ と $r\in (0,\infty)$ に対し $B(a,r)=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-a\rvert<r\}$, $\overline{B(a,r)}=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-a\rvert\leq r\}$ とする。


1. 常微分方程式の初期値問題の解の一意存在と初期値に対する滑らかさ

定義1.1(常微分方程式の初期値問題)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、 $$ f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N $$ を連続関数とする。$J$ に含まれる区間 $I$ 上で定義された $C^1$ 級関数 $x(t)\colon I\ni t\mapsto x(t)\in D$ で、 $$ \frac{d}{dt}x(t)=f(t,x(t))\quad(\forall t\in I) $$ を満たすものを常微分方程式 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x)\quad\quad(*) $$ の局所解と言う。また与えられた $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し、常微分方程式 $(*)$ の局所解 $x(t)\colon I\ni t\mapsto x(t)\in D$ で $\tau\in I$, $x(\tau)=\xi$ を満たすものを常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x),\quad x(\tau)=\xi $$ の局所解と言う。

定義1.2(Lipschitz連続性、局所Lipschitz連続性)

$\mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ の任意の元を $(t,x)\in\mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ と表すこととする。$U\subset \mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ 上で定義された連続関数 $f(t,x)\colon U\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ が $x$ に関してLipschitz連続であるとは、ある $L\in [0,\infty)$ が存在し、 $$ \lvert f(t,x)-f(t,y)\rvert\leq L\lvert x-y\rvert\quad(\forall (t,x),(t,y)\in U) $$ が成り立つことを言う。
$U\subset \mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ を開集合とする。連続関数 $f(t,x)\colon U\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ が $x$ に関して局所Lipschitz連続であるとは、任意の $(t_0,x_0)\in U$ に対し $(t_0,x_0)$ の近傍 $U_0\subset U$ が存在し、$f$ の $U_0$ 上への制限 $f\colon U_0\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ がLipschitz連続であることを言う。

命題1.3(局所Lipschitz連続な関数の典型例)

$\mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ の任意の元を $(t,x)\in\mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ と表すこととする。開集合 $U\subset \mathbb{R}^M\times \mathbb{R}^N$ 上で定義された連続関数 $f(t,x)\colon U\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in\mathbb{R}^N$ が $x$ に関して $1$ 階の偏導関数 $$ \frac{\partial f}{\partial x}(t,x)\colon U\ni (t,x)\mapsto \left(\frac{\partial f}{\partial x_1}(t,x),\ldots,\frac{\partial f}{\partial x_N}(t,x)\right)\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})\quad\quad(*) $$ を持ち、これが連続であるとする。このとき $f(t,x)\colon U\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ は $x$ に関して局所Lipschitz連続である。

Proof.

任意の $(t_0,x_0)\in U$ を取り、$(t_0,x_0)$ を中心とし $U$ に含まれる閉方体(有界閉区間の直積)$K$ を取る。$K$ はコンパクトであり $(*)$ は連続であるから、 $$ L\colon=\underset{(t,x)\in K}{\rm max}\left\lVert \frac{\partial f}{\partial x}(t,x)\right\rVert\in [0,\infty) $$ が存在する。任意の $(t,x),(t,y)\in K$ に対し、微積分学の基本定理より、 $$ f(t,y)-f(t,x)=\int_{0}^{1}\left(\frac{\partial f}{\partial x}(t, x+\theta(y-x))\right)(y-x)d\theta $$ であり、$(t,x+\theta(y-x))\in K$ $(\forall \theta\in [0,1])$ であるから、 $$ \begin{aligned} \lvert f(t,y)-f(t,x)\rvert&\leq \int_{0}^{1}\left\lvert \left(\frac{\partial f}{\partial x}(t, x+\theta(y-x))\right)(y-x)\right\rvert d\theta\\ &\leq \int_{0}^{1}\left\lVert \frac{\partial f}{\partial x}(t, x+\theta(y-x))\right\rVert\lvert y-x\rvert d\theta\\ &\leq L\lvert y-x\rvert \end{aligned} $$ が成り立つ。よって $f(t,x)\colon U\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ は局所Lipschitz連続である。

命題1.4(Gronwallの不等式)

$I\subset \mathbb{R}$ を区間、$u(t)\colon I\rightarrow [0,\infty)$ を連続関数とし、ある $C,L\in [0,\infty)$ と $\tau\in I$ に対し、 $$ u(t)\leq C+L\left\lvert \int_{\tau}^{t}u(s)ds\right\rvert\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つと仮定する。このとき、 $$ u(t)\leq Ce^{L\lvert t-\tau\rvert}\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。

Proof.

連続関数 $v(t)\colon I\rightarrow [0,\infty)$ を、 $$ v(t)\colon=C+L\left\lvert \int_{\tau}^{t}u(s)ds\right\rvert\quad(\forall t\in I) $$ として定義すると、$u(t)\leq v(t)$ $(\forall t\in I)$ であり、 $$ \frac{d}{dt}v(t)=Lu(t)\leq Lv(t)\quad(\tau <t), $$ $$ \frac{d}{dt}v(t)=-Lu(t)\geq -Lv(t)\quad(t<\tau) $$ である。よって連続関数 $w(t)\colon I\rightarrow [0,\infty)$ を、 $$ w(t)\colon=v(t)e^{-L\lvert t-\tau\rvert}\quad(\forall t\in I) $$ として定義すると、 $$ \frac{d}{dt}w(t)=(Lu(t)-Lv(t))e^{-L(t-\tau)}\leq0\quad(\tau<t), $$ $$ \frac{d}{dt}w(t)=(-Lu(t)+Lv(t))e^{L(t-\tau)}\geq0\quad(t<\tau) $$ であるから、平均値の定理より $w(t)\colon I\rightarrow [0,\infty)$ は $I\cap (-\infty,\tau]$ において単調増加であり、$I\cap [\tau,\infty)$ において単調減少である。ゆえに、 $$ v(t)e^{-L\lvert t-\tau\rvert}=w(t)\leq w(\tau)=v(\tau)=C\quad(\forall t\in I) $$ であるから、 $$ u(t)\leq v(t)\leq Ce^{L\lvert t-\tau\rvert}\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。

補題1.5(常微分方程式の初期値問題の局所解の存在と一意性)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、連続関数 $f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ が $x$ に関して局所Lipschitz連続であるとする。このとき任意の $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x),\quad x(\tau)=\xi\quad\quad(*) $$ の局所解(定義1.1)で $\tau$ を定義域区間の内部に含むものが存在する。また $\tau$ を定義域区間の内部に含む $(*)$ の任意の2つの局所解は $\tau$ を内部に含むある区間上で一致する。

Proof.

$f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ は $x$ に関して局所Lipischitz連続であるから、十分小さい $\delta\in (0,\infty)$ を取れば、ある $L\in [0,\infty)$ に対し、 $$ [\tau-\delta,\tau+\delta]\subset J,\quad \overline{B(\xi,\delta)}=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-\xi\rvert\leq\delta\}\subset D, $$ $$ \lvert f(t,y)-f(t,x)\rvert\leq L\lvert x-y\rvert\quad(\forall (t,x),(t,y)\in [\tau-\delta,\tau+\delta]\times \overline{B(\xi,\delta)})\quad\quad(**) $$ が成り立つ。$[\tau-\delta,\tau+\delta]\times \overline{B(\xi,\delta)}$ はコンパクト集合であり、$f$ は連続であるから、ある $M\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \lvert f(t,x)\rvert\leq M\quad(\forall (t,x)\in [\tau-\delta,\tau+\delta]\times \overline{B(\xi,\delta)})\quad\quad(***) $$ が成り立つ。 $$ \rho\colon={\rm min}\left(\delta,\frac{\delta}{M}\right),\quad I\colon=[\tau-\rho,\tau+\rho]\subset [\tau-\delta,\tau+\delta]\subset J\quad\quad(****) $$ とおく。そして、 $$ x_0(t)\colon I\rightarrow\overline{B(\xi,\delta)},\quad x_0(t)\colon=\xi\quad(\forall t\in I) $$ と定義する。今、ある $n\in \mathbb{Z}_+$ に対し連続関数 $x_n(t)\colon I\rightarrow \overline{B(\xi,\delta)}$ が定義されたとする。このとき連続関数 $$ x_{n+1}(t)\colon I\ni t\mapsto \xi+\int_{\tau}^{t}f(s,x_n(s))ds\in \mathbb{R}^N $$ を定義すれば、$(***),(****)$ より $x_{n+1}(t)\in \overline{B(\xi,\delta)}$ $(\forall t\in I)$ である。よって帰納法より $I\rightarrow\overline{B(\xi,\delta)}$ の連続関数の列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で、 $$ x_{n+1}(t)=\xi+\int_{\tau}^{t}f(s,x_n(s))ds\quad(\forall t\in I,\forall n\in \mathbb{Z}_+)\quad\quad(****) $$ を満たすものが定義される。$(**)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lvert x_{n+1}(t)-x_n(t)\rvert\leq \left\lvert \int_{\tau}^{t}\lvert f(s,x_n(s))-f(s,x_{n-1}(s))\rvert ds\right\rvert\\ &\leq L\left\lvert\int_{\tau}^{t}\lvert x_n(s)-x_{n-1}(s)\rvert ds\right\rvert\quad(\forall n\in \mathbb{N},\forall t\in I) \end{aligned} $$ であり、 $$ \lvert x_1(t)-x_0(t)\rvert\leq M\lvert t-\tau\rvert\quad(\forall t\in I) $$ であるから、帰納法より、 $$ \lvert x_n(t)-x_{n-1}(t)\rvert\leq \frac{M}{L}\frac{(L\lvert t-\tau\rvert)^n}{n!}\leq \frac{M}{L}\frac{(L\rho)^n}{n!}\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall t\in I) $$ が成り立つことが分かる。よって $\sup$ ノルムに関して、 $$ \sum_{n\in\mathbb{N}}\lVert x_n-x_{n-1}\rVert\leq \sum_{n\in\mathbb{N}}\frac{M}{L}\frac{(L\rho)^n}{n!}\leq\frac{M}{L}e^{L\rho}<\infty $$ となるから、連続関数の列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は一様Cauchy条件を満たすので、ある連続関数 $x(t)\colon I\rightarrow \overline{B(\xi,\delta)}$ に一様収束する。そして $(**)$ より、 $$ \lvert f(t,x(t))-f(t,x_n(t))\rvert \leq L\lvert x(t)-x_n(t)\rvert\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall t\in I) $$ であるから、 $$ \int_{\tau}^{t}f(s,x(s))ds=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\tau}^{t}f(s,x_n(s))ds\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。よって $(****)$ で $n\rightarrow\infty$ とすれば、 $$ x(t)=\xi+\int_{\tau}^{t}f(s,x(s))ds\quad(\forall t\in I) $$ を得る。$I\ni s\mapsto f(s,x(s))\in \mathbb{R}^N$ の連続性より $x(t)\colon I\rightarrow \overline{B(\xi,\delta)}\subset D$ は $C^1$ 級であり、 $$ \frac{d}{dt}x(t)=f(t,x(t))\quad(\forall t\in I),\quad x(\tau)=\xi $$ であるから、$x(t)\colon I\rightarrow D$ は常微分方程式の初期値問題 $(*)$ の局所解である。
今、$y_j\colon I_j\rightarrow D$ $(j=1,2)$ が常微分方程式の初期値問題 $(*)$ の局所解で $\tau$ が $I_1,I_2$ の内部に属するとする。このとき $y_1,y_2$ が $\tau$ を内部に含むある区間上で一致することを示す。$\tau$ を内部に含む十分小さい区間 $I_0\subset I_1\cap I_2$ を取れば、$y_1,y_2$ の連続性より、 $$ I_0\subset [\tau-\delta,\tau+\delta],\quad y_1(t),y_2(t)\in \overline{B(\xi,\delta)}\quad(\forall t\in I_0)\quad\quad(*****) $$ となる。微積分学の基本定理より、 $$ y_j(t)=\xi+\int_{\tau}^{t}f(s,y_j(s))ds\quad(\forall t\in I_0,j=1,2) $$ であるから、$(*****), (**)$ より、 $$ \lvert y_1(t)-y_2(t)\rvert\leq \left\lvert \int_{\tau}^{t}\lvert f(s,y_1(s))-f(s,y_2(s))\rvert ds\right\rvert \leq L\left\lvert \int_{\tau}^{t}\lvert y_1(s)-y_2(s)\rvert ds\right\rvert\quad(\forall t\in I_0) $$ となる。よってGronwallの不等式(命題1.4)より $y_1(t)=y_2(t)$ $(\forall t\in I_0)$ が成り立つ。

定理1.6(常微分方程式の初期値問題の解の一意存在)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、連続関数 $f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ が $x$ に関して局所Lipschitz連続であるとする。このとき任意の $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x),\quad x(\tau)=\xi\quad\quad(*) $$ の局所解で、$(*)$ の任意の局所解の拡張となっているものが唯一つ存在する。

Proof.

補題1.5より $(*)$ は局所解を持ち、また $(*)$ の任意の局所解は定義域が開区間の局所解に拡張できる。[1]そこで $(*)$ の局所解で定義域が開区間であるようなもの全体からなる集合を $\Lambda$ とおく。そして $x_1,x_2\in\Lambda$ に対し $x_2$ が $x_1$ の拡張になっているとき $x_1\leq x_2$ と表し、$\Lambda$ に順序 $\leq$ を導入する。このとき $\Lambda$ は帰納的順序集合となっている。[2]よってZornの補題より $\Lambda$ は極大元 $x_m(t)\colon (\alpha,\beta)\rightarrow D$ を持つ。この $x_m$ が $\Lambda$ の最大元であることを示せばよい。そこで $\Lambda$ の任意の元 $x(t)\colon (a,b)\rightarrow D$ を取り、$x\leq x_m$ が成り立つことを示す。 $$ s\colon=\sup\{t\in [\tau,{\rm min}(\beta,b)): \text{$x$ と $x_m$ は $[\tau,t]$ 上で一致する}\} $$ とおくと、補題1.5より $\tau<s$ であり、上限の定義より $x_m$ と $x$ は $[\tau,s)$ 上で一致する。もし $s<{\rm min}(\beta,b)$ ならば、$x_m,x$ の連続性より $x_m(s)=x(s)$ となるが、$x_m,x$ を $x_m(s)=x(s)$ を初期値とする初期値問題の局所解とみなすと、補題1.5より $x_m$ と $x$ は $s$ を含むある開区間上で一致することになるので $s$ の定義に矛盾する。よって $s={\rm min}(\beta,b)$ でなければならない。もし $\beta<b$ ならば、 $$ \widetilde{x_m}(t)\colon=\begin{cases}x_m(t)\quad&(t\in (\alpha,\beta))\\x(t)&(t\in [\beta,b))\end{cases} $$ とおけば、$x_m$ と $x$ が $[\tau,\beta)$ 上で一致することから $\widetilde{x_m}\in \Lambda$ であり、$x_m<\widetilde{x_m}$ である。しかしこれは $x_m$ の極大性に反する。よって $b\leq \beta$ であり、$x_m$ と $x$ は $[\tau,b)$ 上で一致する。全く同様の議論により $\alpha\leq a$ であることと $x_m$ と $x$ が $(a,\tau]$ 上で一致することが分かる。よって $x\leq x_m$ であるから、$x_m$ は $\Lambda$ の最大元である。

定義1.7(常微分方程式の初期値問題の一意解)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、連続関数 $f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ が $x$ に関して局所Lipschitz連続(定義1.2)であるとする。このとき任意の $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x),\quad x(\tau)=\xi\quad\quad(*) $$ の局所解 $x(t)\colon I\rightarrow D$ で、$(*)$ の任意の局所解の拡張となっているものが唯一つ存在する。この $x$ を $(*)$ の解と呼ぶ。(一意解、大域解とも呼ぶ。)

命題1.8(線形常微分方程式の初期値問題の解の定義域)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$A(t)\colon J\rightarrow\mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$, $B(t)\colon J\rightarrow\mathbb{R}^N$ をそれぞれ連続関数とする。このとき、 $$ J\times \mathbb{R}^N\ni (t,x)\mapsto A(t)x+B(t)\in \mathbb{R}^N\quad\quad(*) $$ は $x$ に関して局所Lipschitz連続な連続関数である。そして任意の $(\tau,\xi)\in J\times \mathbb{R}^N$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=A(t)x+B(t),\quad x(\tau)=\xi\quad\quad(**) $$ の一意解の定義域は $J$ である。

Proof.

$(*)$ が連続関数であることは自明であり、$x$ に関して局所Lipschitz連続であることは命題1.3による。$J=(\alpha,\beta)$ とおき、$x(t)\colon (a,b)\rightarrow D$ を $(**)$ の一意解とする。このとき微積分学の基本定理より、 $$ x(t)=\xi+\int_{\tau}^{t}(A(s)x(s)+B(s))ds\quad(\forall t\in (a,b))\quad\quad(***) $$ である。$b=\beta$ を示すため、$b<\beta$ と仮定して矛盾を導く。このとき $[\tau,b]\subset J$ であり、$A(t),B(t)$ は有界閉区間 $[\tau,b]$ 上で連続であるから、 $$ M_1\colon =\underset{t\in [\tau,b]}{\rm max}\lVert A(t)\rVert,\quad M_2\colon =\underset{t\in [\tau,b]}{\rm max}\lvert B(t)\rvert $$ が存在する。$(***)$ より、 $$ \lvert x(t)\rvert\leq \lvert \xi\rvert+M_2(b-\tau)+M_1\int_{\tau}^{t}\lvert x(s)\rvert ds\quad(\forall t\in [\tau,b)) $$ であるから、Gronwallの不等式(命題1.4)より、 $$ \begin{aligned} \lvert x(t)\rvert\leq (\lvert \xi\rvert+M_2(b-\tau))\exp(M_1(b-\tau))\quad(\forall t\in [\tau,b)) \end{aligned} $$ が成り立つ。よって $x(t)\colon (a,b)\rightarrow\mathbb{R}^N$ は $[\tau,b)$ 上で有界である。ゆえに、 $$ \eta\colon=\xi+\int_{\tau}^{b}(A(s)x(s)+B(s))ds\in \mathbb{R}^N $$ が存在する。そこで常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dy}{dt}=A(t)y+B(t),\quad y(b)=\eta $$ の解 $y(t)\colon (b-\delta,b+\delta)\rightarrow\mathbb{R}^N$ を考え、 $$ \widetilde{x}(t)\colon=\begin{cases}x(t)\quad&(t\in (a,b))\\y(t)&(t\in [b,b+\delta))\end{cases} $$ とおけば、$\widetilde{x}(t)\colon (a,b+\delta)\rightarrow \mathbb{R}^N$ は $(**)$ の局所解である。しかしこれは $(**)$ の解の一意性(定理1.6)に矛盾する。よって $b=\beta$ が成り立つ。全く同様の議論により $a=\alpha$ が成り立つことも示せる。

定理1.9(初期値とパラメータに関する解の連続性)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Lambda\subset \mathbb{R}^M$ を開集合とし、 $$ f(t,x,\lambda)\colon J\times D\times \Lambda\ni (t,x,\lambda)\mapsto f(t,x,\lambda)\in \mathbb{R}^N $$ を $x$ に関して局所Lpischitz連続な連続関数(定義1.2)とする。任意の $(\tau,\xi,\lambda)\in J\times D\times \Lambda$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x,\lambda),\quad x(\tau)=\xi $$ の一意解を、 $$ x(\cdot,\tau,\xi,\lambda)\colon I_{\tau,\xi,\lambda}\ni t\mapsto x(t,\tau,\xi,\lambda)\in D $$ と表す。また、 $$ \Omega\colon =\{(t,\tau,\xi,\lambda)\in J\times J\times D\times \Lambda: t\in I_{\tau,\xi,\lambda}\} $$ とおく。このとき $\Omega$ は $J\times J\times D\times \Lambda$ の開集合であり、 $$ \Omega\ni (t,\tau,\xi,\lambda)\mapsto x(t,\tau,\xi,\lambda)\in D $$ は連続である。

Proof.

任意の $(t_0,\tau_0,\xi_0,\lambda_0)\in \Omega$ を取り固定する。そして、 $$ t_0,\tau_0\in (a,b)\subset [a,b]\subset I_{\tau_0,\xi_0,\lambda_0} $$ を満たす有界閉区間 $I\colon=[a,b]$ を取り、 $$ x_0(t)\colon I=[a,b]\ni t\mapsto x(t,\tau_0,\xi_0,\lambda_0)\in D $$ とおく。また任意の $\gamma\in (0,\infty)$ に対し $(\tau_0,\xi_0,\lambda_0)\in J\times \mathbb{R}^N\times \mathbb{R}^N$ の近傍 $$ U_{\gamma}\colon=\{(\tau,\xi,\lambda)\in J\times \mathbb{R}^N\times \mathbb{R}^N: \tau\in I,\lvert \xi-x_0(\tau)\rvert\leq \gamma, \lvert\lambda-\lambda_0\rvert\leq \gamma\}\quad\quad(*) $$ を定義する。今、十分小さい $\gamma\in (0,\infty)$ を取れば、$U_{\gamma}\subset J\times D\times \Lambda$ となり、$f(t,x,\lambda)$ が $U_{\gamma}$ 上で $x$ に関してLipschitz連続(定義1.2)となることを示す。$f(t,x,\lambda)$ は $x$ に関して局所Lipschitz連続であることから、各 $\tau\in [a,b]$ に対し正実数 $\gamma_{\tau},L_{\tau}$ が存在し、 $$ [\tau-\gamma_{\tau},\tau+\gamma_{\tau}]\times \overline{B(x_0(\tau),\gamma_{\tau})}\times \overline{B(\lambda_0,\gamma_{\tau})}\subset J\times D\times \Lambda, $$ $$ \lvert f(t,x,\lambda)-f(t,y,\lambda)\rvert\leq L_{\tau}\lvert x-y\rvert\quad(\forall (t,x,\lambda),(t,y,\lambda)\in [\tau-\gamma_{\tau},\tau+\gamma_{\tau}]\times \overline{B(x_0(\tau),\gamma_{\tau})}\times \overline{B(\lambda_0,\gamma_{\tau})}) $$ が成り立つ。 $$ G\colon=\{(\tau,x_0(\tau),\lambda_0):\tau\in I\} $$ はコンパクトであるから、有限個の $\tau_1,\ldots,\tau_n\in I$ が取れて、 $$ G\subset \bigcup_{j=1}^{n}(\tau_j-\gamma_{\tau_j},\tau_j+\gamma_{\tau_j})\times B\left(x_0(\tau_j),\frac{\gamma_{\tau_j}}{2}\right)\times B(\lambda_0,\gamma_{\tau_j}) $$ となる。よって、 $$ \gamma\colon={\rm min}\left(\frac{\gamma_{\tau_1}}{2},\ldots,\frac{\gamma_{\tau_n}}{2}\right),\quad L\colon={\rm max}(L_{\tau_1},\ldots,L_{\tau_n}) $$ とおけば、 $$ U_{\gamma}\subset \bigcup_{j=1}^{n}[\tau_j-\gamma_{\tau_j},\tau_j+\gamma_{\tau_j}]\times \overline{B(x_0(\tau_j),\gamma_{\tau_j})}\times \overline{B(\lambda_0,\gamma_{\tau_j})}\subset J\times D\times \Lambda,\quad\quad(**) $$ $$ \lvert f(t,x,\lambda)-f(t,y,\lambda)\rvert\leq L\lvert x-y\rvert\quad (\forall (t,x,\lambda),(t,y,\lambda)\in U_{\gamma})\quad\quad(***) $$ が成り立つ。この正実数 $\gamma$ と $L$ を固定する。正実数 $\delta$ に対し、 $$ M_{\delta}\colon=\delta+\frac{1}{L}\sup_{t\in I,\lvert \lambda-\lambda_0\rvert\leq\delta}\lvert f(t,x_0(t),\lambda)-f(t,x_0(t),\lambda_0)\rvert\quad\quad(****) $$ とおけば、コンパクト距離空間上の連続関数の一様連続性(距離空間の位相の基本的性質定理7.3)より $\lim_{\delta\rightarrow0}M_{\delta}=0$ であるから、十分小さい正実数 $\delta$ を取れば、 $$ M_{\delta}e^{L(b-a)}\leq \gamma\quad\quad(*****) $$ となる。この $\delta$ を固定する。このとき $\delta<\gamma$ であるから、$(*),(**)$ より、 $$ U_{\delta}\subset U_{\gamma}\subset J\times D\times \Lambda $$ であり、$U_{\delta}$ は $(\tau_0,\xi_0,\lambda_0)\in J\times D\times \Lambda$ の近傍である。今、 $$ \begin{aligned} &y_0(t,\tau,\xi,\lambda)\colon I\times U_{\delta}\rightarrow \overline{B(0,\gamma)},\\ &y_0(t,\tau,\xi,\lambda)\colon=\xi-x_0(\tau) \end{aligned} $$ とおき、 $$ \begin{aligned} &y_1(t,\tau,\xi,\lambda)\colon I\times U_{\delta}\rightarrow\mathbb{R}^N,\\ &y_1(t,\tau,\xi,\lambda)\colon=\xi-x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_0(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds \end{aligned} $$ とおく。Lebesgue優収束定理より $y_1$ は連続関数であり $(***),(****)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lvert y_1(t,\tau,\xi,\lambda)-y_0(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert=\left\lvert \int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_0(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds\right\rvert\\ &\leq \left\lvert \int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_0(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda)ds\right\rvert +\left\lvert \int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds\right\rvert\\ &\leq L\lvert t-\tau\rvert\left(\lvert \xi-x_0(\tau)\rvert+\frac{1}{L}\sup_{s\in I,\lvert\lambda-\lambda_0\rvert\leq\delta}\lvert f(s,x_0(s),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)\right)\\ &\leq M_{\delta}L\lvert t-\tau\rvert\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) \end{aligned} $$ である。よって $(****), (*****)$ より、 $$ \begin{aligned} \lvert y_1(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert&\leq \lvert y_0(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert+M_{\delta}L\lvert t-\tau\rvert \leq M_{\delta}(1+L\lvert t-\tau\rvert)\leq M_{\delta}e^{L\lvert t-\tau\rvert}\\ &\leq M_{\delta}e^{L(b-a)}\leq \gamma\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) \end{aligned} $$ であるから、$y_1$ の値域は $\overline{B(0,\gamma)}$ に含まれる。そこで今、ある $n\in \mathbb{N}$ に対し連続関数 $y_0,y_1,\ldots,y_n\colon I\times U_{\delta}\rightarrow \overline{B(0,\gamma)}$ が定義されており、 $$ y_k(t,\tau,\xi,\lambda)=\xi-x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_{k-1}(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds\quad(k=1,\ldots,n,\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}), $$ $$ \lvert y_k(t,\tau,\xi,\lambda)-y_{k-1}(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert\leq M_{\delta}\frac{(L\lvert t-\tau\rvert)^k}{k!}\quad(k=1,\ldots,n,\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) $$ が成り立つとする。このとき $y_{n+1}(t,\tau,\xi,\lambda)\colon I\times U_{\delta}\rightarrow \mathbb{R}^N$ を、 $$ y_{n+1}(t,\tau,\xi,\lambda)\colon=\xi-x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_n(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds $$ とおけばLebesgue優収束定理より $y_{n+1}$ は連続関数である。そして $(***)$ より、 $$ \begin{aligned} \lvert y_{n+1}(t,\tau,\xi,\lambda)-y_n(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert&=\left\lvert \int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_n(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s)+y_{n-1}(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)ds\right\rvert\\ &\leq L\left\lvert \int_{\tau}^{t}\lvert y_n(s,\tau,\xi,\lambda)-y_{n-1}(s,\tau,\xi,\lambda)\rvert ds\right\rvert \leq L\left\lvert \int_{\tau}^{t}M_{\delta}\frac{(L\lvert t-\tau\rvert)^n}{n!}ds\right\rvert\\ &=M_{\delta}\frac{(L\lvert t-\tau\rvert)^{n+1}}{(n+1)!}\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) \end{aligned} $$ であり、$(*****)$ より、 $$ \begin{aligned} \lvert y_{n+1}(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert&\leq \sum_{k=1}^{n+1}\lvert y_k(t,\tau,\xi,\lambda)-y_{k-1}(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert+\lvert y_0(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert\\ &\leq M_{\delta}\sum_{k=1}^{n+1}\frac{(L\lvert t-\tau\rvert)^k}{k!}+\delta\leq M_{\delta}e^{L\lvert t-\tau\rvert}\\ &\leq M_{\delta}e^{L(b-a)}\leq \gamma\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) \end{aligned} $$ であるから、$y_{n+1}$ の値域は $\overline{B(0,\gamma)}$ に含まれる。よって帰納法より $I\times U_{\delta}\rightarrow \overline{B(0,\gamma)}$ の連続関数の列 $(y_n)_{n\in\mathbb{Z}_+}$ で、 $$ \begin{aligned} &y_n(t,\tau,\xi,\lambda)=\xi-x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_{n-1}(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds,\\ &\lvert y_n(t,\tau,\xi,\lambda)-y_{n-1}(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert\leq M_{\delta}\frac{(L\lvert t-\tau\rvert)^n}{n!}\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) \end{aligned} $$ を満たすものが定義できる。 $$ \lVert y_n-y_{n-1}\rVert=\sup_{(t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}}\lvert y_{n}(t,\tau,\xi,\lambda)-y_{n-1}(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert\leq M_{\delta}\frac{(L(b-a))^n}{n!}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ より、 $$ \sum_{n\in\mathbb{N}}\lVert y_n-y_{n-1}\rVert\leq \sum_{n\in\mathbb{N}}M_{\delta}\frac{(L(b-a))^n}{n!}=M_{\delta}e^{L(b-a)}<\infty $$ であるから $(y_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は一様Cauchy条件を満たす。ゆえに $(y_n)_{n\in\mathbb{Z}_+}$ はある連続関数 $y(t,\tau,\xi,\lambda)\colon I\times U_{\delta}\rightarrow \overline{B(0,\gamma)}$ に一様収束する。$(***)$ より、 $$ \begin{aligned} \sup_{(t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}}&\lvert f(t,x_0(t)+y(t,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(t,x_0(t)+y_n(t,\tau,\xi,\lambda),\lambda)\rvert\\ &\leq L\sup_{(t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}}\lvert y(t,\tau,\xi,\lambda)-y_n(t,\tau,\xi,\lambda)\rvert\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ であるから、 $$ y_n(t,\tau,\xi,\lambda)=\xi-x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y_{n-1}(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) $$ の両辺について $n\rightarrow\infty$ とすれば、 $$ y(t,\tau,\xi,\lambda)=\xi-x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)-f(s,x_0(s),\lambda_0)ds\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta})\quad\quad(******) $$ を得る。ここで微積分学の基本定理より、 $$ x_0(t)=x_0(\tau)+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s),\lambda_0)ds $$ であるから $(******)$ は、 $$ x_0(t)+y(t,\tau,\xi,\lambda)=\xi+\int_{\tau}^{t}f(s,x_0(s)+y(s,\tau,\xi,\lambda),\lambda)ds\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) $$ となる。よって $(\tau,\xi,\lambda)\in U_{\delta}$ に対し、 $$ I\ni t\mapsto x_0(t)+y(t,\tau,\xi,\lambda)\in D $$ は常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x,\lambda),\quad x(\tau)=\xi $$ の局所解である。ゆえに定理1.6より $I\times U_{\delta}\subset \Omega$ であり、 $$ x(t,\tau,\xi,\lambda)=x_0(t)+y(t,\tau,\xi,\lambda)\quad(\forall (t,\tau,\xi,\lambda)\in I\times U_{\delta}) $$ である。$I\times U_{\delta}\subset \Omega$ は $(t_0,\tau_0,\xi_0,\lambda_0)\in \Omega$ の近傍であり、 $$ I\times U_{\delta}\ni (t,\tau,\xi,\lambda)\mapsto x(t,\tau,\xi,\lambda)=x_0(t)+y(t,\tau,\xi,\lambda)\in D $$ は連続であるから、$(t_0,\tau_0,\xi_0,\lambda_0)\in \Omega$ の任意性より、$\Omega$ は開集合であり、$\Omega\ni (t,\tau,\xi,\lambda)\mapsto x(t,\tau,\xi,\lambda)\in D$ は連続関数である。

定理1.10(初期値に関する解の微分可能性)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N$ を連続関数で、$x$ に関して $1$ 階の偏導関数 $$ \frac{\partial f}{\partial x}(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto \left(\frac{\partial f}{\partial x_1}(t,x),\ldots,\frac{\partial f}{\partial x_N}(t,x)\right)\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R}) $$ を持ち、これが連続であるとする。(したがって命題1.3より $f(t,x)$ は $x$ に関して局所Lipschitz連続である。)任意の $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x),\quad x(\tau)=\xi $$ の一意解を、 $$ x(\cdot,\tau,\xi)\colon I_{\tau,\xi}\ni t\mapsto x(t,\tau,\xi)\in D $$ とおき、 $$ \Omega\colon=\{(t,\tau,\xi)\in J\times J\times D: t\in I_{\tau,\xi}\} $$ とおく。このとき $\Omega$ は開集合であり、 $$ \Omega\ni (t,\tau,\xi)\mapsto x(t,\tau,\xi)\in D\quad\quad(*) $$ は $\xi$ に関して $1$ 階の偏導関数 $$ \frac{\partial x}{\partial \xi}(t,\tau,\xi)\colon \Omega\ni (t,\tau,\xi)\mapsto \left(\frac{\partial x}{\partial \xi_1}(t,\tau,\xi),\ldots,\frac{\partial x}{\partial \xi_N}(t,\tau,\xi)\right)\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})\quad\quad(**) $$ を持ち、$(**)$ は $t$ に関する偏導関数 $$ \frac{\partial }{\partial t}\frac{\partial x}{\partial \xi}(t,\tau,\xi)\colon \Omega\ni (t,\tau,\xi)\mapsto \left(\frac{\partial}{\partial t}\frac{\partial x}{\partial \xi_1}(t,\tau,\xi),\ldots,\frac{\partial}{\partial t}\frac{\partial x}{\partial \xi_N}(t,\tau,\xi)\right)\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})\quad\quad(***) $$ を持つ。そして $(*),(**),(***)$ はそれぞれ連続である。さらに、 $$ \frac{\partial}{\partial t}\frac{\partial x}{\partial \xi}(t,\tau,\xi)=\frac{\partial f}{\partial x}(t,x(t,\tau,\xi))\frac{\partial x}{\partial \xi}(t,\tau,\xi)\quad(\forall (t,\tau,\xi)\in \Omega)\quad\quad(****) $$ が成り立つ。

Proof.

定理1.9より $\Omega$ は開集合であり、$(*)$ は連続である。任意の $(t_0,\tau_0,\xi_0)\in \Omega$ を取り固定し、 $$ t_0,\tau_0\in (a,b)\subset [a,b]\subset I_{\tau_0,\xi_0} $$ を満たす有界閉区間 $I\colon=[a,b]$ を取る。 $$ \{(t,x(t,\tau_0,\xi_0)):t\in I\} $$ は開集合 $J\times D$ に含まれるコンパクト集合であるから、超関数の定義と基本操作命題2.2の $(4)$ より十分小さい $\gamma\in (0,\infty)$ を取れば、 $$ U_{\gamma}\colon=\{(t,\xi)\in J\times \mathbb{R}^N:t\in I,\lvert \xi-x(t,\tau_0,\xi_0)\rvert\leq \gamma\}\subset J\times D $$ となる。また、 $$ I\times \{\tau_0\}\times \{\xi_0\} $$ は開集合 $\Omega$ に含まれるコンパクト集合であるから、超関数の定義と基本操作命題2.2の $(4)$ より十分小さい $\delta\in (0,\infty)$ を取れば、 $$ I\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,2\delta)\subset \Omega $$ となる。そして $(*)$ の連続性とコンパクト距離空間上の連続関数の一様連続性(距離空間の位相の基本的性質定理7.3)より $\delta\in (0,\infty)$ を十分小さく取っておけば、 $$ \lvert x(t,\tau,\xi)-x(t,\tau_0,\xi_0)\rvert\leq \gamma\quad(\forall (t,\tau,\xi)\in I\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,2\delta)) $$ となる。よってこのような $\delta$ に対し、 $$ (t,x(t,\tau,\xi))\in U_{\gamma}\subset J\times D\quad(\forall (t,\tau,\xi)\in I\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,2\delta)) $$ が成り立つ。今、$(e_1,\ldots,e_N)$ を $\mathbb{R}^N$ の標準基底とし、各 $j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し、 $$ \varphi_j(t,\tau,\xi,h)=\frac{1}{h}(x(t,\tau,\xi+he_j)-x(t,\tau,\xi)) $$ として、 $$ \varphi_j(t,\tau,\xi,h)\colon (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\backslash \{0\}\rightarrow \mathbb{R}^N $$ を定義する。このとき、 $$ \varphi_j(\tau,\tau,\xi,h)=e_j\quad(\forall (\tau,\xi,h)\in (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\backslash \{0\}) $$ である。そして任意の $(t,\tau,\xi,h)\in (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\backslash \{0\}$ に対し、 $$ (t,x(t,\tau,\xi)+\theta(x(t,\tau,\xi+he_j)-x(t,\tau,\xi)))\in U_{\gamma}\subset J\times D\quad(\forall \theta\in [0,1]) $$ であることに注意して、微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} &\frac{\partial\varphi_j}{\partial t}(t,\tau,\xi,h)=\frac{1}{h}(f(t,x(t,\tau,\xi+he_j))-f(t,x(t,\tau,\xi)))\\ &=\left(\int_{0}^{1}\frac{\partial f}{\partial x}(t,x(t,\tau,\xi)+\theta(x(t,\tau,\xi+he_j)-x(t,\tau,\xi)))d\theta\right)\varphi_j(t,\tau,\xi,h) \end{aligned} $$ となる。よって、 $$ A(t,\tau,\xi,h)=\int_{0}^{1}\frac{\partial f}{\partial x}(t,x(t,\tau,\xi)+\theta(x(t,\tau,\xi+he_j)-x(t,\tau,\xi)))d\theta $$ として連続関数 $$ A(t,\tau,\xi,h)\colon (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\rightarrow \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R}) $$ を定義すると、任意の $(t,\tau,\xi,h)\in (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\backslash \{0\}$ に対し、 $$ \frac{\partial\varphi_j}{\partial t}(t,\tau,\xi,h)=A(t,\tau,\xi,h)\varphi_j(t,\tau,\xi,h) $$ が成り立つ。そこで $(\tau,\xi,h)\in (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)$ をパラメータとする線形常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dy_j}{dt}=A(t,\tau,\xi,h)y_j,\quad y_j(\tau)=e_j $$ の一意解を $y_j(\cdot,\tau,\xi,h)$ とおくと、命題1.8より $y_j(\cdot,\tau,\xi,h)$ は $(a,b)$ 上で定義され、解の一意性より、 $$ y_j(t,\tau,\xi,h)=\varphi_j(t,\tau,\xi,h)\quad(\forall (t,\tau,\xi,h)\in (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\backslash \{0\}) $$ である。そして定理1.9より、 $$ y_j(t,\tau,\xi,h)\colon (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\times (-\delta,\delta)\rightarrow \mathbb{R}^N $$ は連続関数であるから、 $$ y_j(t,\tau,\xi,0)=\lim_{h\rightarrow0}\varphi_j(t,\tau,\xi,h)=\lim_{h\rightarrow0}\frac{\partial x}{\partial \xi_j}(t,\tau,\xi)\quad(\forall (t,\tau,\xi)\in (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)) $$ である。よって $(t_0,\tau_0,\xi_0)$ の開近傍 $(a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\subset \Omega$ 上で、 $$ \frac{\partial x}{\partial \xi_j}(t,\tau,\xi)\colon (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)\rightarrow\mathbb{R}^N $$ が定義でき、これは連続である。そして任意の $(t,\tau,\xi)\in (a,b)\times (\tau_0-\delta,\tau_0+\delta)\times B(\xi_0,\delta)$ に対し、 $$ \frac{\partial y_j}{\partial t}(t,\tau,\xi,0)=A(t,\tau,\xi,0)y_j(t,\tau,\xi,0)=\frac{\partial f}{\partial x}(t,x(t,\tau,\xi))y_j(t,\tau,\xi,0) $$ であるから、 $$ \frac{\partial }{\partial t}\frac{\partial x}{\partial \xi_j}(t,\tau,\xi)=\frac{\partial f}{\partial x}(t,x(t,\tau,\xi))\frac{\partial x}{\partial \xi_j}(t,\tau,\xi) $$ が成り立つ。よって $(**),(***)$ は連続関数であり、$(****)$ が成り立つ。

定理1.11(初期値に対する解の滑らかさ)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$D\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$k\in \mathbb{N}$ とする。そして連続関数 $$ f(t,x)\colon J\times D\ni (t,x)\mapsto f(t,x)\in \mathbb{R}^N $$ が $x$ に関して $k$ 階の偏導関数を持ち、それらが全て連続であるとする。(特に命題1.3より $f(t,x)$ は $x$ に関して局所Lipschitz連続である。)任意の $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=f(t,x),\quad x(\tau)=\xi $$ の一意解を、 $$ x(\cdot,\tau,\xi)\colon I_{\tau,\xi}\ni t\mapsto x(t,\tau,\xi)\in D $$ とおき、 $$ \Omega\colon=\{(t,\tau,\xi)\in J\times J\times D: t\in I_{\tau,\xi}\} $$ とおく。このとき $\Omega$ は開集合であり、 $$ \Omega\ni (t,\tau,\xi)\mapsto x(t,\tau,\xi)\in D $$ は $\xi$ に関して $k$ 階までの偏導関数を持ち、それらは全て $\Omega$ 上で連続である。

Proof.

$k\in \mathbb{N}$ に関する帰納法で示す。$k=1$ の場合は定理1.10より成り立つ。$k-1\in \mathbb{N}$ に対して成り立つと仮定して $k$ の場合も成り立つことを示す。 $$ F(t,z)=F(t,x,y_1,\ldots,y_N)\colon J\times D\times (\mathbb{R}^N)^N\rightarrow \mathbb{R}^N\times (\mathbb{R}^N)^N, $$ を、 $$ F(t,z)=F(t,x,y_1,\ldots,y_N)=\left(f(t,x), \frac{\partial f}{\partial x}(t,x)y_1,\ldots,\frac{\partial f}{\partial x_N}(t,x)y_N\right)\in \mathbb{R}^N\times (\mathbb{R}^N)^N $$ と定義すると、$F$ は $z=(x,y_1,\ldots,y_N)$ に関して $k-1$ 階までの偏導関数を持ち、それらは全て連続である。そして定理1.10より任意の $(\tau,\xi)\in J\times D$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dz}{dt}=F(t,z),\quad z(\tau)=(\xi,e_1,\ldots,e_N) $$ の一意解は、 $$ I_{\tau,\xi}\ni t\mapsto \left(x(t,\tau,\xi),\frac{\partial x}{\partial \xi_1}(t,\tau,\xi),\ldots,\frac{\partial x}{\partial \xi_N}(t,\tau,\xi)\right)\in \mathbb{R}^N\times (\mathbb{R}^N)^N $$ である。よって帰納法の仮定より、 $$ \Omega\ni (t,\tau,\xi)\mapsto \left(x(t,\tau,\xi),\frac{\partial x}{\partial \xi_1}(t,\tau,\xi),\ldots,\frac{\partial x}{\partial \xi_N}(t,\tau,\xi)\right)\in \mathbb{R}^N\times (\mathbb{R}^N)^N $$ は $\xi$ に関して $k-1$ 階までの偏導関数を持ち、それらは全て $\Omega$ 上で連続である。ゆえに、 $$ \Omega\ni (t,\tau,\xi)\mapsto x(t,\tau,\xi)\in D $$ は $\xi$ に関して $k$ 階までの偏導関数を持ち、それらは全て $\Omega$ 上で連続である。

定理1.12(線形常微分方程式の解空間)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$A(t)\colon J\ni t\mapsto \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$ を連続関数とする。このとき、 $$ \left\{x\in C^1(J,\mathbb{R}^N):\frac{d}{dt}x(t)=A(t)x(t)\right\}\quad\quad(*) $$ は各点ごとの演算で $\mathbb{R}$ 上の $N$ 次元線形空間である。そして任意の $\tau\in J$ と任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=A(t)x,\quad x(\tau)=e_j $$ の一意解を、 $$ \varphi_j(\cdot,\tau)\colon J\ni t\mapsto \varphi_j(t,\tau)\in \mathbb{R}^N $$ とおけば、$\varphi_1(\cdot,\tau),\ldots,\varphi_N(\cdot,\tau)$ は $(*)$ の基底である。

Proof.

$(*)$ が各点ごとの演算で $\mathbb{R}$ 上の線形空間であることは自明である。任意の $\xi=(\xi_1,\ldots,\xi_N)\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ J\ni t\mapsto \sum_{j=1}^{N}\xi_j\varphi_j(t,\tau)\in \mathbb{R}^N $$ は常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=A(t)x,\quad x(\tau)=\xi $$ の一意解である。よって $(*)$ の任意の元は $\varphi_1(\cdot,\tau),\ldots,\varphi_N(\cdot,\tau)$ の線形結合で表せる。また $\xi=(\xi_1,\ldots,\xi_N)\in \mathbb{R}^N$ が、 $$ \sum_{j=1}^{N}\xi_j\varphi_j(\cdot,\tau)=0 $$ を満たすならば、特に $\xi=\sum_{j=1}^{N}\xi_j\varphi_j(\tau,\tau)=0$ であるから $\varphi_1(\cdot,\tau),\ldots,\varphi_N(\cdot,\tau)$ は線形独立である。よって $\varphi_1(\cdot,\tau),\ldots,\varphi_N(\cdot,\tau)$ は $(*)$ の基底である。

定理1.13($N$ 階線形常微分方程式)

$N\in \mathbb{N}$、$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$a_0(t),a_1(t),\ldots,a_{N-1}(t)\colon J\rightarrow\mathbb{R}$ をそれぞれ連続関数とし、 $$ V\colon =\left\{x(t)\in C^N(J,\mathbb{R}):\sum_{k=0}^{N-1}a_k(t)x^{(k)}(t)+x^{(N)}(t)=0\right\} $$ (ただし $x^{(k)}(t)=\frac{d^kx}{dt^k}(t)$, $x^{(0)}(t)=x(t)$ )とおく。このとき $V$ は各点ごとの演算で $\mathbb{R}$ 上の線形空間であり、任意の $\tau\in J$、任意の $\xi=(\xi_0,\xi_1,\ldots,\xi_{N-1})\in \mathbb{R}^N$ に対し $x(t)\in V$ で、 $$ (x^{(0)}(\tau),x^{(1)}(\tau),\ldots,x^{(N-1)}(\tau))=(\xi_0,\xi_1,\ldots,\xi_{N-1}) $$ を満たすものが唯一つ存在する。そして $x_1(t),\ldots,x_N(t)\in V$ が線形独立であるための必要十分条件は、ある一点 $\tau\in J$ に対し $\mathbb{R}^N$ の $N$ 本のベクトル $$ (x_j^{(0)}(\tau),x_j^{(1)}(\tau,),\ldots,x_j^{(N-1)}(\tau))\in\mathbb{R}^N\quad(j=1,\ldots,N)\quad\quad(*) $$ が線形独立であることである。

Proof.

$V$ が各点ごとの演算で $\mathbb{R}$ 上の線形空間であることは自明である。 $$ A(t)\colon=\begin{pmatrix}0&1&0&\cdots &0\\0&0&1&\cdots &0\\\vdots&\vdots&\ddots&\ddots&\vdots\\0&0&0&\cdots&1\\-a_0(t)&-a_1(t)&-a_2(t)&\cdots& -a_{N-1}(t)\end{pmatrix}\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})\quad(\forall t\in J) $$ とおけば $A(t)\colon J\rightarrow \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$ は連続関数である。そこで $\mathbb{R}$ 上の $N$ 次元線形空間(定理1.12) $$ W\colon=\left\{y(t)\in C^1(J,\mathbb{R}^N):\frac{dy}{dt}(t)=A(t)y(t)\quad(\forall t\in J)\right\} $$ を考える。任意の $y(t)=(y_0(t),y_1(t),\ldots,y_{N-1}(t))\in W$ に対し、$x(t)\colon=y_0(t)\colon J\rightarrow\mathbb{R}$ とおけば、 $$ x^{(1)}(t)=\frac{dy_0}{dt}(t)=y_1(t),\ldots,x^{(N-1)}(t)=\frac{dy_{N-2}}{dt}(t)=y_{N-1}(t)\quad(\forall t\in J) $$ であり、 $$ x^{(N)}(t)=\frac{dy_{N-1}}{dt}(t)=-\sum_{k=0}^{N-1}a_k(t)y_k(t)=-\sum_{k=0}^{N-1}a_k(t)x^{(k)}(t) \quad(\forall t\in J) $$ であるから $x(t)\in V$ である。逆に任意の $x(t)\in V$ に対し、 $$ y(t)=(y_0(t),y_1(t),\ldots,y_{N-1}(t))=(x^{(0)}(t),x^{(1)}(t),\ldots,x^{(N-1)}(t))\quad(\forall t\in J) $$ とおけば $y(t)\in W$ である。よって線形写像 $$ W\ni (y_0(t),y_1(t),\ldots,y_{N-1}(t))\mapsto y_0(t)\in V $$ と線形写像 $$ V\ni x(t)\mapsto (x^{(0)}(t),x^{(1)}(t),\ldots,x^{(N-1)}(t))\in W $$ が定義でき、これらは互いに逆写像である。ゆえに $V$ と $W$ は線形同型なので $V$ は $N$ 次元である。定理1.12より任意の $\tau\in J$ と任意の $\xi=(\xi_0,\xi_1,\ldots,\xi_{N-1})\in \mathbb{R}^N$ に対し $C^1$ 級関数 $y(t)=(y_0(t),y_1(t),\ldots,y_{N-1}(t))\colon J\rightarrow \mathbb{R}^N$ で、 $$ \frac{dy}{dt}(t)=A(t)y(t),\quad y(\tau)=\xi $$ を満たすものが唯一つ存在する。よって上で述べたことから、任意の $\tau\in J$ と任意の $\xi=(\xi_0,\xi_1,\ldots,\xi_{N-1})\in \mathbb{R}^N$ に対し $x(t)\in V$ で、 $$ (x^{(0)}(\tau),x^{(1)}(\tau),\ldots,x^{(N-1)}(\tau))=(\xi_0,\xi_1,\ldots,\xi_{N-1}) $$ を満たすものが唯一つ存在する。また定理1.12の証明より $y_1(t),\ldots,y_N(t)\in W$ が線形独立であることは、ある一点 $\tau\in J$ に対し $y_1(\tau),\ldots,y_N(\tau)\in \mathbb{R}^N$ が線形独立であることと同値である。よって $x_1(t),\ldots,x_N(t)\in V$ が線形独立であることは、ある $\tau\in J$ に対し $(*)$ が線形独立であることと同値である。

定理1.14(非斉次線形常微分方程式の解)

$J\subset \mathbb{R}$ を開区間、$A(t)\colon J\ni t\mapsto \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$, $b(t)\colon J\rightarrow \mathbb{R}^N$ を連続関数とする。任意の $\tau\in J$, $j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=A(t)x,\quad x(\tau)=e_j $$ の一意解を $\varphi_j(\cdot,\tau)\colon J\ni t\mapsto \varphi_j(t,\tau)\in \mathbb{R}^N$ とおき、行列の列ベクトル表記により、 $$ \Phi(t,\tau)\colon=(\varphi_1(t,\tau),\cdots,\varphi_N(t,\tau))\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})\quad(\forall t\in J) $$ とおく。このとき任意の $(\tau,\xi)\in J\times \mathbb{R}^N$ に対し、常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{dx}{dt}=A(t)x+b(t),\quad x(\tau)=\xi\quad\quad(*) $$ の一意解 $x(t)\colon J\rightarrow \mathbb{R}^N$ は、 $$ x(t)=\Phi(t,\tau)\xi+\int_{\tau}^{t}\Phi(t,s)b(s)ds\quad(\forall t\in J) $$ である。

Proof.

初期値に関する解の連続性(定理1.9)より、 $$ J\times J\ni (t,\tau)\mapsto \Phi(t,\tau)=(\varphi_1(t,\tau),\ldots,\varphi_N(t,\tau))\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R}) $$ は連続である。また、 $$ \frac{\partial}{\partial t}\Phi(t,\tau)=A(t)\Phi(t,\tau)\quad(\forall (t,\tau)\in J\times J), $$ $$ \Phi(\tau,\tau)=(e_1,\ldots,e_N)=1\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R}) $$ である。よって任意の $\tau\in J$ を取り固定し、 $$ x_0(t)\colon=\int_{\tau}^{t}\Phi(t,s)b(s)ds\quad(\forall t\in J) $$ とおくと、Lebesgue優収束定理より任意の $t\in J$ に対し、 $$ \begin{aligned} \frac{x_0(t+h)-x_0(t)}{h}&=\int_{\tau}^{t+h}\frac{\Phi(t+h,s)b(s)-\Phi(t,s)b(s)}{h}ds+\frac{1}{h}\int_{t}^{t+h}\Phi(t,s)b(s)ds\\ &\rightarrow\int_{\tau}^{t}A(t)\Phi(t,s)b(s)ds+\Phi(t,t)b(t)=A(t)x_0(t)+b(t)\quad(h\rightarrow0) \end{aligned} $$ となるので、 $$ \frac{d}{dt}x_0(t)=A(t)x_0(t)+b(t)\quad(\forall t\in J) $$ が成り立つ。そこで任意の $\xi\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ x(t)\colon=\Phi(t,\tau)\xi+x_0(t)\quad(\forall t\in J)\quad\quad(**) $$ とおけば、 $$ x(\tau)=\Phi(\tau,\tau)\xi+x_0(\tau)=\xi $$ であり、 $$ \frac{d}{dt}x(t)=A(t)\Phi(t,\tau)\xi+A(t)x_0(t)+b(t)=A(t)x(t)+b(t)\quad(\forall t\in J) $$ である。ゆえに $(**)$ は $(*)$ の一意解である。


2. Gaussの発散定理のSobolev空間版

定義2.1(基本的な微分作用素の記号)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。勾配、発散、ラプラシアン(ベクトル解析3:Euclid空間内の多様体の計量12,13を参照)を $\Omega$ 上の超関数(超関数の定義と基本操作を参照)に対して作用するように拡張する。すなわち $\Omega$ 上の任意の超関数 $u\in D'(\Omega)$ に対し $u$ の勾配を、 $$ \nabla u\colon={\rm grad}(u)\colon=(\partial_1u,\ldots,\partial_Nu)\in (D'(\Omega))^N, $$ $u$ のラプラシアンを、 $$ \Delta u\colon=\partial_1^2u+\cdots+\partial_N^2u\in D'(\Omega) $$ と定義する。そして任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (D'(\Omega))^N$ に対し $u$ の発散を、 $$ {\rm div}(u)\colon=\partial_1u_1+\cdots+\partial_Nu_N\in D'(\Omega) $$ と定義する。
任意の $u\in D'(\Omega)$ に対し、 $$ {\rm div}\nabla u=\Delta u $$ であることに注意する。

定義2.2(外向き法線微分)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合とし、$\nu=(\nu_1,\ldots,\nu_N)\colon \partial\Omega\rightarrow \mathbb{R}^N$ を外向き単位法線ベクトル場(ベクトル解析5:多様体の向き21,22を参照)、$\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項37を参照)とする。任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$ に対し、 $$ \gamma(u)\colon =(\gamma(u_1),\ldots,\gamma(u_N))\in (L^2(\partial\Omega))^N $$ と定義する。そして任意の $u\in H^2(\Omega)$ に対し、その勾配 $\nabla u=(\partial_1u,\ldots,\partial_Nu)\in (H^1(\Omega))^N$ を考え、 $$ \frac{\partial u}{\partial \nu}\colon=\gamma(\nabla u)\cdot \nu=\gamma(\partial_1u)\nu_1+\cdots+\gamma(\partial_Nu)\nu_N\in L^2(\partial\Omega) $$ を定義する。$\frac{\partial u}{\partial\nu}$ を $u$ の外向き法線微分と言う。

定理2.3(Gaussの発散定理のSobolev空間版(内部領域))

$\Omega\subset\mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合とし、$\nu\colon \partial\Omega\rightarrow \mathbb{R}^N$ を外向き単位法線ベクトル場(ベクトル解析5:多様体の向き21,22を参照)、$\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項37を参照)とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$ に対し、

$$ \int_{\Omega}{\rm div}(u)(x)dx=\int_{\partial\Omega}\gamma(u)(x)\cdot \nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ (ただし $\mu_{\partial\Omega}$ は $\partial\Omega$ の面積測度)が成り立つ。

  • $(2)$ 任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$ と任意の $v\in H^1(\Omega)$ に対し、

$$ \int_{\Omega} (\Delta u(x)v(x)+u(x)\cdot \nabla u(x))dx=\int_{\partial\Omega}(\gamma(u)(x)\cdot \nu(x))\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。

  • $(3)$ 任意の $u\in H^2(\Omega)$, $v\in H^1(\Omega)$ に対し、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。

  • $(4)$ 任意の $u,v\in H^2(\Omega)$ に対し、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)-u(x)\Delta v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)-\gamma(u)(x)\frac{\partial v}{\partial\nu}(x)\right)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ 任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$ に対しSobolevの拡張作用素の存在定理(Sobolev空間の基本事項系35.2)より、$(D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega})^N$ の列 $(u^{(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ で、

$$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u^{(n)}\rVert_{2,1}=0 $$ [3] を満たすものが取れる。このとき、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert {\rm div}(u)-{\rm div}(u^{(n)})\rVert_2=0\quad\quad(*) $$ であるから、$\Omega$ が有界であることとHölderの不等式より、 $$ \int_{\Omega}{\rm div}(u)(x)dx=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\Omega}{\rm div}(u^{(n)})(x)dx $$ が成り立つ。また $\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ は有界線形作用素であり、$\partial\Omega$ のコンパクト性より面積測度 $\mu_{\partial\Omega}$ は有限測度であるから、$(*)$ とHölderの不等式より、 $$ \int_{\partial\Omega}\gamma(u)(x)\cdot \nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}\gamma(u^{(n)})(x)\cdot\nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) =\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}u^{(n)}(x)\cdot\nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。各 $n\in \mathbb{N}$ について $u^{(n)}\in D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}$ に対してGaussの発散定理(ベクトル解析6:Stokesの定理定理24.2)を適用すれば、 $$ \int_{\Omega}{\rm div}(u^{(n)})(x)dx=\int_{\partial\Omega}u^{(n)}(x)\cdot \nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ となるから、 $$ \begin{aligned} \int_{\Omega}{\rm div}(u)(x)dx&=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\Omega}{\rm div}(u^{(n)})(x)dx =\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}u^{(n)}(x)\cdot\nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) =\int_{\partial\Omega}\gamma(u)(x)\cdot\nu(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) \end{aligned} $$ を得る。

  • $(2)$ 任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$, $v\in H^1(\Omega)$ に対しSobolevの拡張作用素の存在定理(Sobolev空間の基本事項系35.2)より、$(D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega})^N$ の列 $(u^{(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ で、

$$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u^{(n)}\rVert_{2,1}=0,\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert v-v^{(n)}\rVert_{2,1}=0 $$ を満たすものが取れ、Hölderの不等式より、 $$ \int_{\Omega}({\rm div}(u)(x)v(x)+u(x)\cdot\nabla v(x))dx=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx $$ が成り立つ。またトレース作用素 $\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ が有界線形作用素であることから、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \gamma(u)\cdot \nu-u^{(n)}\cdot \nu\rVert_2=0,\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \gamma(v)-v^{(n)}\rVert_2=0 $$ となるので、Hölderの不等式より、 $$ \int_{\partial\Omega}(\gamma(u)(x)\cdot\nu(x))\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) =\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot\nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。そして各 $n\in \mathbb{N}$ について $u^{(n)}v^{(n)}\in (D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega})^N$ に対してGaussの発散定理(ベクトル解析6:Stokesの定理定理24.2)を適用すれば、 $$ \int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx =\int_{\Omega}{\rm div}(u^{(n)}v^{(n)})(x)dx =\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot\nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ となるから、 $$ \begin{aligned} &\int_{\Omega}({\rm div}(u)(x)v(x)+u(x)\cdot \nabla v(x))dx =\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx\\ &=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot\nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) =\int_{\partial\Omega}(\gamma(u)(x)\cdot\nu(x))\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) \end{aligned} $$ を得る。

  • $(3)$ 任意の $u\in H^2(\Omega)$ に対し $\nabla u=(\partial_1u,\ldots,\partial_Nu)\in (H^1(\Omega))^N$ であるから、$\nabla u\in (H^1(\Omega))^N$ と任意の $v\in H^1(\Omega)$ に対し $(2)$ を適用すれば、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x) v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ を得る。

  • $(4)$ 任意の $u,v\in H^2(\Omega)$ に対し $(3)$ より、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x), $$ $$ \int_{\Omega}(u(x)\Delta v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\gamma(u)(x)\frac{\partial v}{\partial \nu}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ である。これらを辺々引くと、 $$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)-u(x)\Delta v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)-\gamma(u)(x)\frac{\partial v}{\partial \nu}(x)\right)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ を得る。

定理2.4(Gaussの発散定理のSobolev空間版(外部領域))

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合で、$\mathbb{R}^N\backslash \Omega$ が有界であるものとする(したがって $\Omega$ は有界ではない)。そして $\nu\colon \partial\Omega\rightarrow \mathbb{R}^N$ を $\Omega$ の外向き単位法線ベクトル場(ベクトル解析5:多様体の向き21,22を参照)、$\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項37を参照)とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$ と任意の $v\in H^1(\Omega)$ に対し、

$$ \int_{\Omega} (\Delta u(x)v(x)+u(x)\cdot \nabla u(x))dx=\int_{\partial\Omega}(\gamma(u)(x)\cdot \nu(x))\gamma(v) (x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ (ただし $\mu_{\partial\Omega}$ は $\partial\Omega$ の面積測度)が成り立つ。

  • $(2)$ 任意の $u\in H^2(\Omega)$, $v\in H^1(\Omega)$ に対し、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。

  • $(3)$ 任意の $u,v\in H^2(\Omega)$ に対し、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)-u(x)\Delta v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)-\gamma(u)(x)\frac{\partial v}{\partial\nu}(x)\right)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ 任意の $u=(u_1,\ldots,u_N)\in (H^1(\Omega))^N$, $v\in H^1(\Omega)$ に対しSobolevの拡張作用素の存在定理(Sobolev空間の基本事項系35.2)より、$(D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega})^N$ の列 $(u^{(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ で、

$$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u^{(n)}\rVert_{2,1}=0,\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert v-v^{(n)}\rVert_{2,1}=0 $$ を満たすものが取れ、Hölderの不等式より、 $$ \int_{\Omega}({\rm div}(u)(x)v(x)+u(x)\cdot\nabla v(x))dx=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx $$ が成り立つ。またトレース作用素 $\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ が有界線形作用素であることから、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \gamma(u)\cdot \nu-u^{(n)}\cdot \nu\rVert_2=0,\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \gamma(v)-v^{(n)}\rVert_2=0 $$ となるので、Hölderの不等式より、 $$ \int_{\partial\Omega}(\gamma(u)(x)\cdot\nu(x))\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) =\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot\nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ が成り立つ。今、任意の $n\in \mathbb{N}$ を取り固定する。$u^{(n)}v^{(n)}\in (D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega})^N$ の台と $\mathbb{R}^N\backslash \Omega$ は有界であるから、十分大きい $R\in (0,\infty)$ を取れば、 $$ {\rm supp}(u^{(n)}v^{(n)}),\quad \mathbb{R}^N\backslash \Omega\subset B(0,R)=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert<R\} $$ となり、$\partial\Omega$ は 滑らかでコンパクトな境界であることから $\Omega\cap B(0,R)$ も滑らかでコンパクトな境界を持ち、その境界は、 $$ \partial(\Omega\cap B(0,R))=\partial\Omega\cup \partial B(0,R) $$ である。そこで $u^{(n)}v^{(n)}\in (D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega})^N$ に対してGaussの発散定理(ベクトル解析6:Stokesの定理定理24.2)を適用すれば、 $$ \begin{aligned} &\int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx\\ &=\int_{\Omega}{\rm div}(u^{(n)}v^{(n)})(x)dx=\int_{\Omega\cap B(0,R)}{\rm div}(u^{(n)}v^{(n)})(x)dx\\ &=\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot \nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) +\int_{\partial B(0,R)}(u^{(n)}(x)\cdot \nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial B(0,R)}(x)\\ &=\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot \nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) \end{aligned} $$ を得る。ゆえに、 $$ \int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx=\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot \nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x)\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ が成り立つ。よって、 $$ \begin{aligned} &\int_{\Omega}({\rm div}(u)(x)v(x)+u(x)\cdot\nabla v(x))dx=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\Omega}({\rm div}(u^{(n)})(x)v^{(n)}(x)+u^{(n)}(x)\cdot \nabla v^{(n)}(x))dx\\ &=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\partial\Omega}(u^{(n)}(x)\cdot \nu(x))v^{(n)}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) =\int_{\partial\Omega}(\gamma(u)(x)\cdot\nu(x))\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) \end{aligned} $$ を得る。

  • $(2)$ 任意の $u\in H^2(\Omega)$ に対し $\nabla u=(\partial_1u,\ldots,\partial_Nu)\in (H^1(\Omega))^N$ であるから、$\nabla u\in (H^1(\Omega))^N$ と任意の $v\in H^1(\Omega)$ に対し $(1)$ を適用すれば、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x) v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ を得る。

  • $(3)$ 任意の $u,v\in H^2(\Omega)$ に対し $(2)$ より、

$$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)d\mu_{\partial\Omega}(x), $$ $$ \int_{\Omega}(u(x)\Delta v(x)+\nabla u(x)\cdot \nabla v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\gamma(u)(x)\frac{\partial v}{\partial \nu}(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ である。これらを辺々引くと、 $$ \int_{\Omega}(\Delta u(x)v(x)-u(x)\Delta v(x))dx=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(x)\gamma(v)(x)-\gamma(u)(x)\frac{\partial v}{\partial \nu}(x)\right)d\mu_{\partial\Omega}(x) $$ を得る。

3. 境界条件付き一様楕円型微分作用素、楕円型正則性

定義3.1(一様楕円型微分作用素)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$a_{i,j},b_j\in C^\infty(\Omega)$ $(i,j\in \{1,\ldots,N\})$ を全ての偏導関数が有界な関数とする。そして、 $$ b(x)\in \mathbb{R}\quad (\forall x\in \Omega)\quad\quad(*) $$ であり、ある正実数 $C$ に対し、 $$ \sum_{i,j=1}^{N}a_{i,j}(x)\overline{\xi_i}\xi_j\geq C\sum_{j=1}^{N}\lvert \xi_j\rvert^2=C\lvert \xi\rvert^2\quad(\forall \xi=(\xi_1,\ldots,\xi_N)\in \mathbb{C}^N, \forall x\in \Omega)\quad\quad(**) $$ が成り立つとする。[4] このとき、 $$ \mathcal{A}\colon D'(\Omega)\ni v\mapsto -\sum_{i,j=1}^{N}\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+bv\in D'(\Omega)\quad\quad(***) $$ と表される線形作用素は、$\Omega$ 上の $2$ 階の一様楕円型微分作用素と呼ばれるものの一種であり、$(**)$ を一様楕円性条件と言う。以後、$\Omega$ 上の一様楕円型微分作用素と言えば、上の $(*),(**)$ の条件を満たす $(***)$ を指すこととする。

例3.2(ラプラシアン)

開集合 $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ 上のラプラシアン $-\Delta\colon D'(\Omega)\rightarrow D'(\Omega)$ は $\Omega$ 上の一様楕円型微分作用素である。実際、定義3.1において $a_{i,j}(x)=\delta_{i,j}$, $b(x)=0$ $(\forall i,j\in \{1,\ldots,N\},\forall x\in \Omega)$ として得られる $\mathcal{A}$ は $-\Delta$ である。

補題3.3(Poincaréの不等式)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、ある正実数 $C$ に対し、 $$ \Omega\subset \mathbb{R}^{N-1}\times [-C,C] $$ が成り立つとする。このとき、 $$ \lVert u\rVert_2\leq 2C\lVert \partial_Nu\rVert_2\quad(\forall u\in H^1_0(\Omega)) $$ が成り立つ。

Proof.

任意の $u\in D(\Omega)\subset D(\mathbb{R}^N)$ に対し微積分学の基本定理とHölderの不等式より、 $$ \lvert u(x)\rvert^2=\left\lvert\int_{-C}^{x_N}\partial_Nu(x_1,\ldots,x_{N-1},t)dt\right\rvert^2\leq 2C\int_{\mathbb{R}}\lvert \partial_Nu(x_1,\ldots,x_{N-1},t)\rvert^2dt\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ が成り立つので、任意の $(x_1,\ldots,x_{N-1})\in \mathbb{R}^{N-1}$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\int_{\mathbb{R}}\lvert u(x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)\rvert^2dx_N=\int_{-C}^{C}\lvert u(x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)\rvert^2dx_N\\ &\leq 2C\int_{-C}^{C}\left(\int_{\mathbb{R}}\lvert \partial_Nu(x_1,\ldots,x_{N-1},t)\rvert^2dt\right)dx_N =(2C)^2\int_{\mathbb{R}}\lvert \partial_Nu(x_1,\ldots,x_{N-1},t)\rvert^2dt\\ &=(2C)^2\int_{\mathbb{R}}\lvert\partial_Nu(x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)\rvert^2dx_N \end{aligned} $$ となる。よってTonelliの定理より、 $$ \begin{aligned} \lVert u\rVert_2^2&=\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\left(\int_{\mathbb{R}}\lvert u(x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)\rvert^2dx_N\right)dx_1\cdots dx_{N-1}\\ &\leq(2C)^2\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\left(\int_{\mathbb{R}}\partial_Nu(x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)\rvert^2dx_N\right)dx_1\cdots dx_{N-1}\\ &=(2C)^2\lVert \partial_Nu\rVert_2^2 \end{aligned} $$ が成り立つ。ゆえに、 $$ \lVert u\rVert_2\leq C\lVert \partial_Nu\rVert_2\quad(\forall u\in D(\Omega)) $$ が成り立つ。$H^1_0(\Omega)=\overline{D(\Omega)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,1}}$ であるから、任意の $u\in H^1_0(\Omega)$ に対し $D(\Omega)$ の列 $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u_n\rVert_{2,1}=0$ を満たすものが取れるので、 $$ \lVert u\rVert_{2}=\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u_n\rVert_2\leq 2C\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \partial_Nu_n\rVert_2=2C\lVert \partial_Nu\rVert_2 $$ が成り立つ。

定理3.4(Lax-Milgramの定理)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、 $$ \mathcal{A}\colon D'(\Omega)\ni v\mapsto -\sum_{i,j=1}^N\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+bv\in D'(\Omega) $$ を一様楕円型微分作用素(定義3.1)とし、 $$ p_{\mathcal{A}}(u,v)\colon=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iu(x)}\partial_jv(x)dx +\int_{\Omega}b(x)\overline{u(x)}v(x)dx\quad(\forall u,v\in H^1(\Omega)) $$ とおく。そして $H^1_0(\Omega)\subset \mathcal{V}\subset H^1(\Omega)$ を満たす $H^1(\Omega)$ の閉部分空間 $\mathcal{V}$ に対し、 $$ D(A)\colon=\{v\in \mathcal{V}: \mathcal{A}v\in L^2(\Omega),p_{\mathcal{A}}(u,v)=(u\mid \mathcal{A}v)_2\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\}, $$ $$ A\colon D(A)\ni v\mapsto \mathcal{A}v\in L^2(\Omega) $$ とおく。また、 $$ \lambda_0\colon=\inf_{x\in\Omega}b(x)\in \mathbb{R} $$ とおく。このとき、

  • $(1)$ $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の下に有界な自己共役作用素(Hilbert空間上の作用素論定義4.1定義14.7)であり、$A$ のスペクトル $\sigma(A)$ は $\sigma(A)\subset [\lambda_0,\infty)$ を満たす。また任意の $\lambda\in (-\infty,\lambda_0)$ に対し、

$$ (A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})\subset \mathbb{B}(L^2(\Omega)) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ が有界で $\mathcal{V}=H^1_0(\Omega)$ ならば $\sigma(A)\subset (\lambda_0,\infty)$ であり、

$$ (A-\lambda_0)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),H^1_0(\Omega))\subset \mathbb{B}(L^2(\Omega)) $$ が成り立つ。

  • $(3)$ $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ は有界開集合であるとし、$\Omega$ が滑らかな境界を持つか $\mathcal{V}=H^1_0(\Omega)$ のいずれかであるとすると、Hilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の自己共役作用素 $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ のスペクトルは純粋に離散的(Hilbert空間上の作用素論定義14.3)である。
  • $(4)$ $\lambda_0\geq0$ ならば $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素であり、

$$ \mathcal{V}=D(\sqrt{A}),\quad p_{\mathcal{A}}(u,v)=(\sqrt{A}u\mid \sqrt{A}v)_2\quad(\forall u,v\in \mathcal{A}) $$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ 任意の $\lambda\in (-\infty,\lambda_0)$ を取り固定する。

$$ p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,v)=p_{\mathcal{A}}(u,v)-\lambda(u\mid v)_2\quad(\forall u,v\in \mathcal{V}) $$ とおくと、一様楕円性条件よりある正実数 $C$ が存在し、 $$ \begin{aligned} p_{\mathcal{A}-\lambda}(v,v)&=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iv(x)}\partial_jv(x)dx+\int_{\Omega}(b(x)-\lambda)\lvert v(x)\rvert^2dx\\ &\geq C\sum_{j=1}^{N}\lVert \partial_jv\rVert_2^2+(\lambda_0-\lambda)\lVert v\rVert_2^2\geq C'\lVert v\rVert_{2,1}^2 \quad(\forall v\in \mathcal{V})\quad\quad(*) \end{aligned} $$ が成り立つ(ただし $C'\colon={\rm min}(C,\lambda_0-\lambda)>0$とおいた)。また $a_{i,j},b$ の有界性より、 $$ p_{\mathcal{A}-\lambda}\colon \mathcal{V}\times \mathcal{V}\ni (u,v)\mapsto p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,v)\in \mathbb{C} $$ はHilbert空間 $(\mathcal{V},(\cdot\mid \cdot)_{2,1})$ 上の有界準双線形汎関数であるから、位相線形空間1:ノルムと内積定理7.1より $T\in \mathbb{B}(\mathcal{V})$ で、 $$ p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,v)=(u\mid Tv)_{2,1}\quad(\forall u,v\in \mathcal{V}) $$ を満たすものが定まる。$(*)$ とHilbert空間上の作用素論命題1.3命題1.4より $T^{-1}\in \mathbb{B}(\mathcal{V})$ が存在し、$T,T^{-1}\in \mathbb{B}(\mathcal{V})$ は $\mathcal{V}$ 上の有界非負自己共役作用素である。今、任意の $f\in L^2(\Omega)$ に対し、 $$ \mathcal{V}\ni u\mapsto (f\mid u)_2\in \mathbb{C} $$ はHilbert空間 $(\mathcal{V},(\cdot\mid\cdot)_{2,1})$ 上の有界線形汎関数であるから、Rieszの表現定理より $Rf\in \mathcal{V}$ で、 $$ (Rf\mid u)_{2,1}=(f\mid u)_2\quad(\forall u\in \mathcal{V}) $$ を満たすものが定まる。こうして線形作用素 $R\colon L^2(\Omega)\ni f\mapsto Rf\in \mathcal{V}$ で、 $$ (Rf\mid u)_{2,1}=(f\mid u)_{2}\quad(\forall f\in L^2(\Omega),\forall u\in \mathcal{V}) $$ なるものが定義でき、 $$ \lVert Rf\rVert_{2,1}^2=(Rf\mid Rf)_{2,1}=(f\mid Rf)_2\leq\lVert f\rVert_2\lVert Rf\rVert_2\leq \lVert f\rVert_2\lVert Rf\rVert_{2,1}\quad(\forall f\in L^2(\Omega)) $$ より $R\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})$ である。 $$ (u\mid f)_2=(u\mid Rf)_{2,1}=(u\mid TT^{-1}Rf)_{2,1}=p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,T^{-1}Rf)\quad(\forall f\in L^2(\Omega),\forall u\in \mathcal{V}) $$ であり、$D(\Omega)\subset H^1_0(\Omega)\subset \mathcal{V}$ であるから、$D'(\Omega)$ において、 $$ f=(\mathcal{A}-\lambda)T^{-1}Rf\quad(\forall f\in L^2(\Omega)) $$ が成り立つ。よって、 $$ \mathcal{A}T^{-1}Rf=f+\lambda T^{-1}Rf\in L^2(\Omega)\quad(\forall f\in L^2(\Omega)) $$ であるから、 $$ \begin{aligned} (u\mid \mathcal{A}T^{-1}Rf)_2&=(u\mid f)_2+\lambda(u\mid T^{-1}Rf)_2=(u\mid Rf)_{2,1}+\lambda(u\mid T^{-1}Rf)_2= (u\mid TT^{-1}Rf)_2+\lambda(u\mid T^{-1}Rf)_2\\ &=p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,T^{-1}Rf)+\lambda(u\mid T^{-1}Rf)_2 =(u\mid \mathcal{A}T^{-1}Rf)_2\quad(\forall f\in L^2(\Omega),\forall u\in \mathcal{V}) \end{aligned} $$ である。これより、 $$ T^{-1}Rf\in D(A),\quad (A-\lambda)T^{-1}Rf=f\quad(\forall f\in L^2(\Omega)) $$ が成り立つ。また任意の $v\in D(A)$ に対し、 $$ \begin{aligned} p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,v)&=p_{\mathcal{A}}(u,v)-\lambda(u\mid v)_2=(u\mid Av)_2-\lambda(u\mid v)_2 =(u\mid (A-\lambda)v)_2 =(u\mid R(A-\lambda)v)_{2,1}\\ &=(u\mid TT^{-1}R(A-\lambda)v)_{2,1}=p_{\mathcal{A}-\lambda}(u,T^{-1}R(A-\lambda)v)\quad(\forall u\in \mathcal{V}) \end{aligned} $$ であるから、$(*)$ より、 $$ v=T^{-1}R(A-\lambda)v\quad(\forall v\in D(A)) $$ が成り立つ。よって $A-\lambda\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ は全単射であり、 $$ (A-\lambda)^{-1}=T^{-1}R\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})\subset \mathbb{B}(L^2(\Omega)) $$ が成り立つ。$T\in \mathbb{B}(\mathcal{V})$ は $(\mathcal{V},(\cdot\mid \cdot)_{2,1})$ 上の非負自己共役作用素であるから、 $$ (f\mid (A-\lambda)^{-1}f)_2=(f\mid T^{-1}Rf)_2=(Rf\mid T^{-1}Rf)_{2,1}\geq0\quad(\forall f\in L^2(\Omega)) $$ である。よって $(A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega))$ は $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素であるので、$A-\lambda\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ も $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素である(Hilbert空間上の作用素論命題8.10を参照)。以上より $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の下に有界な自己共役作用素であり、$\sigma(A)\subset [\lambda_0,\infty)$ を満たし、任意の $\lambda\in (-\infty,\lambda_0)$ に対し $(A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})$ が成り立つ。

  • $(2)$ 

$$ p_{\mathcal{A}-\lambda_0}(u,v)\colon=p_{\mathcal{A}}(u,v)-\lambda_0(u\mid v)_2\quad(\forall u,v\in H^1_0(\Omega)) $$ とおくと、一様楕円性条件よりある正実数 $C$ が存在し、 $$ \begin{aligned} p_{\mathcal{A}-\lambda_0}(v,v)&=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iv(x)}\partial_jv(x)dx+\int_{\Omega}(b(x)-\lambda_0)\lvert v(x)\rvert^2dx\\ &\geq \sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iv(x)}\partial_jv(x)dx\geq C\sum_{j=1}^{N}\lVert \partial_jv\rVert_2^2\quad(\forall v\in H^1_0(\Omega)) \end{aligned} $$ が成り立つ。ここでPoincaréの不等式(補題3.3)よりある正実数 $C'$ が存在し、 $$ C\sum_{j=1}^{N}\lVert \partial_jv\rVert_2^2\geq C'\left(\sum_{j=1}^{N}\lVert \partial_jv\rVert_2^2+\lVert v\rVert_2^2\right)=C'\lVert v\rVert_{2,1}^2\quad(\forall v\in H^1_0(\Omega)) $$ が成り立つ。後は $(1)$ の証明と全く同様にして $A-\lambda_0\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ が全単射であり、$(A-\lambda_0)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),H^1_0(\Omega))$ が成り立つことを示せる。

  • $(3)$ 任意の $\lambda\in (-\infty,\lambda_0)$ を取る。$(1)$ より $(A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})$ であるから、

$$ (L^2(\Omega))_1\colon=\{v\in L^2(\Omega):\lVert v\rVert_2\leq 1\} $$ の任意の列 $(v_n)_{n\in\mathbb{N}}$ に対し $((A-\lambda)^{-1}v_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $\mathcal{V}$ の有界列である。よってRellich-Kondrachovの定理(Sobolev空間の基本事項定理39.4命題39.5)より $((A-\lambda)^{-1}v_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで収束する部分列を持つ。 ゆえに $(A-\lambda)^{-1}((L^2(\Omega))_1)$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで(点列)コンパクトであるから、Hilbert空間上の作用素論定理13.10より $(A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega))$ は $L^2(\Omega)$ 上のコンパクト作用素である。ゆえにHilbert空間上の作用素論命題14.5より、$L^2(\Omega)$ 上の自己共役作用素 $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ のスペクトルは純粋に離散的である。

  • $(4)$ $(1)$ より $\sigma(A)\subset [\lambda_0,\infty)\subset [0,\infty)$ であるから $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ は非負自己共役作用素である。$(1)$ における $T\in \mathbb{B}(\mathcal{V})$ と $R\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})$ を考えると、

$$ D(A)={\rm Ran}((A-\lambda)^{-1})=T^{-1}R(L^2(\Omega)) $$ である。 $$ (u\mid Rf)_{2,1}=(u\mid f)_2\quad(\forall u\in \mathcal{V},\forall f\in L^2(\Omega)) $$ であるから、$R(L^2(\Omega))\subset \mathcal{V}$ のHilbert空間 $(\mathcal{V},(\cdot\mid\cdot)_{2,1})$ における直交補空間は $\{0\}$ である。よって $R(L^2(\Omega))$ は $(\mathcal{V},(\cdot\mid\cdot)_{2,1})$ において稠密であるから、$T^{-1}\in \mathbb{B}(\mathcal{V})$ より $D(A)=T^{-1}R(L^2(\Omega))$ も $(\mathcal{V},(\cdot\mid\cdot)_{2,1})$ において稠密である。ゆえに任意の $u,v\in \mathcal{V}$ に対し $D(A)$ の列 $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}, (v_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u_n\rVert_{2,1}=0,\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert v-v_n\rVert_{2,1}=0 $$ を満たすものが取れる。$p_{\mathcal{A}}\colon \mathcal{V}\times \mathcal{V}\rightarrow\mathbb{C}$ は有界準双線形汎関数であるから、 $$ \lVert \sqrt{A}u_n-\sqrt{A}u_m\rVert_2^2=(u_n-u_m\mid A(u_n-u_m))_2=p_{\mathcal{A}}(u_n-u_m,u_n-u_m)\rightarrow0\quad(n,m\rightarrow\infty) $$ となり、$\sqrt{A}$ がHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の閉線形作用素であることから、 $$ u\in D(\sqrt{A}),\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \sqrt{A}u_n-\sqrt{A}u\rVert_2=0 $$ が成り立つ。同様に、 $$ v\in D(\sqrt{A}),\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \sqrt{A}v_n-\sqrt{A}v\rVert_2=0 $$ も成り立つので、$p_{\mathcal{A}}\colon \mathcal{V}\times \mathcal{V}\rightarrow\mathbb{C}$ の有界準双線形性より、 $$ p_{\mathcal{A}}(u,v)=\lim_{n\rightarrow\infty}p_{\mathcal{A}}(u_n,v_n)=\lim_{n\rightarrow\infty}(u_n\mid Av_n)_2 =\lim_{n\rightarrow\infty}(\sqrt{A}u_n\mid \sqrt{A}v_n)_2=(\sqrt{A}u\mid \sqrt{A}v)_2 $$ が成り立つ。以上で、 $$ \mathcal{V}\subset D(\sqrt{A}),\quad p_{\mathcal{A}}(u,v)=(\sqrt{A}u\mid \sqrt{A}v)_2\quad(\forall u,v\in \mathcal{V}) $$ が示された。後は $D(\sqrt{A})\subset \mathcal{V}$ を示せばよい。任意の $u\in D(\sqrt{A})$ を取る。Hilbert空間上の作用素論定理3.10より $D(A)$ は $\sqrt{A}$ の芯であるから、$D(A)$ の列 $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u_n\rVert_2=0,\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \sqrt{A}u-\sqrt{A}u_n\rVert_2=0 $$ を満たすものが取れる。ここで一様楕円性条件よりある正実数 $C$ に対し、 $$ \lVert \sqrt{A}u_n-\sqrt{A}u_m\rVert_2^2=p_{\mathcal{A}}(u_n-u_m,u_n-u_m)\geq C\lVert \nabla(u_n-u_m)\rVert_{2}^2\quad(\forall n,m\in \mathbb{N}) $$ となるので、 $$ \lVert u_n-u_m\rVert_{2,1}^2=\lVert u_n-u_m\rVert_2^2+\lVert \nabla(u_n-u_m)\rVert_2^2\rightarrow0\quad(n,m\rightarrow\infty) $$ が成り立つ。よって $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ はHilbert空間 $(\mathcal{V},(\cdot\mid\cdot)_{2,1})$ において収束するので $u\in \mathcal{V}$ である。ゆえに $D(\sqrt{A})\subset \mathcal{V}$ が成り立つ。

定義3.5(差分商)

任意の $h\in \mathbb{R}\backslash\{0\}$, $j\in \{1,\ldots,N\}$, $u\colon \mathbb{R}^N\rightarrow \mathbb{C}$ に対し、 $$ \tau_{j,h}u\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C},\quad \partial_{j,h}u\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C} $$ を、 $$ \tau_{j,h}u(x)\colon=u(x+he_j),\quad \partial_ju(x)\colon=\frac{1}{h}(u(x+he_j)-u(x))\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する(ただし $(e_1,\ldots,e_N)$ は $\mathbb{R}^N$ の標準基底である)。また任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$, $u\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ に対し、 $$ \tau_{h}^{\alpha}u\colon=\tau_{1,h}^{\alpha_1}\cdots\tau_{N,h}^{\alpha_N}u,\quad \partial_h^{\alpha}u\colon=\partial_{1,h}^{\alpha_1}\cdots\partial_{N,h}^{\alpha_N}u $$ と定義する。

命題3.6(差分商に関するLeibnizルール)

任意の $u,v\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$、任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$、任意の $h\in \mathbb{R}\backslash\{0\}$ に対し、 $$ \partial_{h}^{\alpha}(uv)=\sum_{\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}(\partial_h^{\beta}u)(\tau_h^{\beta}\partial_{h}^{\alpha-\beta}v) $$ が成り立つ。

Proof.

任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ を取り固定する。任意の $n\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ \partial_{j,h}^n(uv)=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}(\partial_{j,h}^{k}u)(\tau_{j,h}^{k}\partial_{j,h}^{n-k}v)\quad\quad(*) $$ が成り立つことを帰納法により示す。$n=0,1$ の場合に成り立つことは明らかである。$(*)$ がある $n\in \mathbb{N}$ について成り立つと仮定する。 $$ \begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix} =\frac{n!}{(k-1)!(n+1-k)!}+\frac{n!}{k!(n-k)!}=\frac{(n+1)!}{k!(n+1-k)!}=\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} \partial_{j,h}^{n+1}(uv)&=\partial_{j,h}\partial_{j,h}^n(uv)=\partial_{j,h}\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}(\partial_{j,h}^{k}u)(\tau_{j,h}^{k}\partial_{j,h}^{n-k}v)\\ &=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}(\partial_{j,h}^{k+1}u)(\tau_{j,h}^{k+1}\partial_{j,h}^{n-k}v)+\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}(\partial_{j,h}^ku)(\tau_{j,h}\partial_{j,h}^{n+1-k}v)\\ &=(\partial_{j,h}^{n+1}u)(\tau_{j,h}^{n+1}v)+u(\partial_{j,h}^{n+1}v)+\sum_{k=1}^{n}\left(\begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}\right) (\partial_{j,h}^{k}u)(\tau_{j,h}^k\partial_{j,h}^{n+1-k}v)\\ &=\sum_{k=0}^{n+1}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}(\partial_{j,h}^{k}u)(\tau_{j,h}^k\partial_{j,h}^{n+1-k}v) \end{aligned} $$ となる。よって $(*)$ は $n+1$ の場合も成り立つので、帰納法より $(*)$ は任意の $n\in\mathbb{Z}_+$ に対して成り立つ。これより、 $$ \begin{aligned} \partial_{h}^{\alpha}(uv)&=\partial_{1,h}^{\alpha_1}\cdots\partial_{N,h}^{\alpha_N}(uv) =\partial_{1,h}^{\alpha_1}\cdots\partial_{N-1,h}^{\alpha_{N-1}}\sum_{\beta_N\leq \alpha_N}\begin{pmatrix}\alpha_N\\\beta_N\end{pmatrix}(\partial_{N,h}^{\beta_N}u)(\tau_{N,h}^{\beta_N}\partial_{N,h}^{\alpha_N-\beta_N}v)\\ &=\cdots=\sum_{\beta\leq \alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}(\partial_h^{\beta}u)(\tau_h^{\beta}\partial_h^{\alpha-\beta}v) \end{aligned} $$ となる。

補題3.7

任意の $u,v\in L^2(\mathbb{R}^N)$、任意の $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$、任意の $j\in\{1,\ldots,N\}$ に対し、 $$ \int_{\mathbb{R}^N}\partial_{j,h}u(x)v(x)dx=-\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial_{j,-h}v(x)dx $$ が成り立つ。

Proof.

Lebesgue測度の平行移動不変性より、 $$ \begin{aligned} \int_{\mathbb{R}^N}\partial_{j,h}u(x)v(x)dx &=\int_{\mathbb{R}^N}\frac{u(x+he_j)-u(x)}{h}v(x)dx=-\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\frac{v(x-he_j)-v(x)}{-h}dx\\ &=\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial_{j,-h}v(x)dx. \end{aligned} $$

補題3.8

$u\in L^2(\mathbb{R}^N)$ とする。

  • $(1)$ ある $m\in \mathbb{N}$ に対し $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ ならば、$\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、

$$ \lVert \partial_h^{\alpha}u\rVert_2\leq \lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2\quad(\forall h\in\mathbb{R}\backslash \{0\}) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ ある多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、$C\in [0,\infty)$ と $\delta\in (0,\infty)$ が存在し、

$$ \lVert \partial_h^{\alpha}u\rVert_2\leq C\quad(\forall h\in \mathbb{R}:0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つならば、$\partial^{\alpha}u\in L^2(\mathbb{R}^N), \lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2\leq C$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ $\lvert \alpha\rvert\leq m$ なる多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ を取り、

$$ \partial^{\alpha}=\partial_{j_1}\cdots\partial_{j_{\lvert\alpha\rvert}} $$ なる $j_1,\ldots,j_{\lvert\alpha\rvert}\in \{1,\ldots,N\}$ を取る。このとき任意の $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ と任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し微積分学の基本定理より、 $$ \partial_{-h}^{\alpha}\varphi(x)=\partial_{j_1,-h}\cdots\partial_{j_N,-h}\varphi(x) =\int_{[0,1]^{\lvert\alpha\rvert}}\partial^{\alpha}\varphi\left(x-\sum_{k=1}^{\lvert\alpha\rvert}t_kh_ke_{j_k}\right)dt_{1}\cdots dt_{\lvert\alpha\rvert}\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ と表せるから、補題3.7とFubiniの定理より、 $$ \begin{aligned} &\left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}\partial_h^{\alpha}u(x)\varphi(x)dx\right\rvert=\left\lvert \int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial_{-h}^{\alpha}\varphi(x)dx\right\rvert\\ &=\left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\left(\int_{[0,1]^{\lvert\alpha\rvert}}\partial^{\alpha}\varphi\left(x-\sum_{k=1}^{\lvert\alpha\rvert}t_kh_ke_{j_k}\right)dt_{1}\cdots dt_{\lvert\alpha\rvert}\right)dx\right\rvert\\ &=\left\lvert \int_{[0,1]^{\lvert\alpha\rvert}}\left(\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial^{\alpha}\varphi\left(x-\sum_{k=1}^{\lvert\alpha\rvert}t_kh_ke_{j_k}\right)dx\right)dt_1\cdots dt_{\lvert\alpha\rvert}\right\rvert\\ &=\left\lvert \int_{[0,1]^{\lvert\alpha\rvert}}\left(\int_{\mathbb{R}^N}\partial^{\alpha}u(x)\varphi\left(x-\sum_{k=1}^{\lvert\alpha\rvert}t_kh_ke_{j_k}\right)dx\right)dt_1\cdots dt_{\lvert\alpha\rvert}\right\rvert\\ &\leq \lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2\lVert\varphi\rVert_2\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\},\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N))\quad\quad(*) \end{aligned} $$ となる。そしてRieszの定理と $D(\mathbb{R}^N)$ の $L^2(\mathbb{R}^N)$ における稠密性より、 $$ \lVert \partial^{\alpha}_hu\rVert_2=\sup\left\{\left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}\partial_h^{\alpha}u(x)\varphi(x)dx\right\rvert:\varphi\in D(\mathbb{R}^N),\lVert \varphi\rVert_2\leq1\right\}\leq \lVert\partial^{\alpha}u\rVert_2 $$ が成り立つ。

  • $(2)$ 任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し補題3.7と $(*)$、Lebesgue優収束定理より、

$$ \begin{aligned} &\left\lvert \int_{\mathbb{R}^N}\partial_h^{\alpha}u(x)\varphi(x)dx\right\rvert=\left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial_{-h}^{\alpha}\varphi(x)dx\right\rvert\\ &=\left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\left(\int_{[0,1]^{\lvert\alpha\rvert}}\partial^{\alpha}\varphi\left(x-\sum_{k=1}^{\lvert\alpha\rvert}t_kh_ke_{j_k}\right)dt_{1}\cdots dt_{\lvert\alpha\rvert}\right)dx\right\rvert\\ &\rightarrow \left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial^{\alpha}\varphi(x)dx\right\rvert\quad(\lvert h\rvert\rightarrow0) \end{aligned} $$ となる。よって仮定より、 $$ \left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial^{\alpha}\varphi(x)dx\right\rvert =\lim_{\lvert h\rvert\rightarrow0}\left\lvert \int_{\mathbb{R}^N}\partial_h^{\alpha}u(x)\varphi(x)dx\right\rvert\leq C\lVert \varphi\rVert_2\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)) $$ であるから、 $$ (D(\mathbb{R}^N),\lVert \cdot\rVert_2)\ni \varphi\mapsto (-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial^{\alpha}\varphi(x)dx\in \mathbb{C} $$ はノルムが $C$ 以下の有界線形汎関数である。$D(\mathbb{R}^N)$ の $L^2(\mathbb{R}^N)$ における稠密性よりこれはHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上のノルムが $C$ 以下の有界線形汎関数に一意拡張できるので、Rieszの定理より $f\in L^2(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ (-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\partial^{\alpha}\varphi(x)dx= \int_{\mathbb{R}^N}f(x)\varphi(x)dx\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)),\quad \lVert f\rVert_2\leq C $$ を満たすものが定まる。よって $\partial^{\alpha}u=f\in L^2(\mathbb{R}^N)$ であり、$\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2=\lVert f\rVert_2\leq C$ である。

定理3.9(全空間上の一様楕円型微分作用素の基本的性質)

$\mathbb{R}^N$ 上の一様楕円型微分作用素(定義3.1) $$ \mathcal{A}\colon D'(\mathbb{R}^N)\ni v\mapsto -\sum_{i,j=1}^{N}\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+bv\in D'(\mathbb{R}^N) $$ に対し、 $$ p_{\mathcal{A}}(u,v)=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iu(x)}\partial_jv(x)dx+\int_{\mathbb{R}^N}b(x)\overline{u(x)}v(x)dx\quad(\forall u,v\in H^1(\mathbb{R}^N)) $$ とおき、 $$ D(A)\colon=\{v\in H^1(\mathbb{R}^N):\mathcal{A}v\in L^2(\mathbb{R}^N), (u\mid Av)_2=p_{\mathcal{A}}(u,v)\text{ }(\forall u\in H^1(\mathbb{R}^N))\}, $$ $$ A\colon D(A)\ni v\mapsto \mathcal{A}v\in L^2(\mathbb{R}^N) $$ とおく。また $\lambda_0\colon=\inf_{x\in \mathbb{R}^N}b(x)\in \mathbb{R}$ とおく。このとき、

  • $(1)$ $A$ はHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上の下に有界な自己共役作用素であり、$\sigma(A)\subset [\lambda_0,\infty)$ が成り立つ。また任意の $\lambda\in (-\infty,\lambda_0)$ に対し、

$$ (A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\mathbb{R}^N),H^1(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $\lambda_0\geq0$ の場合は $A$ はHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上の非負自己共役作用素であり、

$$ D(\sqrt{A})=H^1(\mathbb{R^N}),\quad p_{\mathcal{A}}(u,v)=(\sqrt{A}u\mid\sqrt{A}v)_2\quad(\forall u,v\in H^1(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つ。

  • $(3)$ $v\in D(A)$ がある $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し $Av\in H^m(\mathbb{R}^N)$ を満たすならば、$v\in H^{m+2}(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。さらに $A,m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、

$$ \lVert v\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_2) $$ が成り立つ。

  • $(4)$ $D(A)=H^2(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。
Proof.

  • $(1),(2)$ 定理3.4による。
  • $(3)$ $m\in \mathbb{Z}_+$ に関する帰納法より $v\in D(A)$ が $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し、

$$ Av\in H^m(\mathbb{R}^N),\quad v\in H^{m+1}(\mathbb{R}^N) $$ を満たすと仮定して、$v\in H^{m+2}(\mathbb{R}^N)$ であることと、$a_{i,j},b,m$ のみによるある正実数 $C$ で、 $$ \lVert v\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ を満たすものが存在することを示せば十分である。 $$ p(u,v)\colon=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iu(x)}\partial_jv(x)dx\quad(\forall u,v\in H^1(\mathbb{R}^N)) $$ とおく。$\lvert\alpha\rvert\leq m+1$ なる任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ を取り固定する。任意の $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ と任意の $u\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し、補題3.7命題3.6より、 $$ \begin{aligned} p(u,\partial_h^{\alpha}v)&=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}a_{i,j}(x) \partial_i \overline{u}(x)\partial_h^{\alpha}\partial_jv(x)dx=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}\partial_{-h}^{\alpha}(a_{i,j}\partial_i\overline{u})(x)\partial_jv(x)dx\\ &=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u,v)+(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\int_{\mathbb{R}^N}\partial_{-h}^{\beta}a_{i,j}(x)\partial_{-h}^{\alpha-\beta}\tau_{-h}^{\beta}\partial_i\overline{u}(x)\partial_jv(x)dx\\ &=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\mathbb{R}^N}\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}(x)(Av-bv)(x)dx +\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}(-1)^{\lvert\beta\rvert}\int_{\mathbb{R}^N}\tau_{-h}^{\beta}\partial_i\overline{u}(x)\partial_h^{\alpha-\beta}(\partial_{-h}^{\beta}a_{i,j}\partial_jv)(x)dx \end{aligned} $$ となるから、補題3.7補題3.8より、$a_{i,j},b,\alpha$ のみによる正実数 $C_1$ が存在し、 $$ \lvert p(u,\partial_h^{\alpha}v)\rvert\leq C_1(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert u\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash\{0\},\forall u\in D(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つことが分かる。そして $\partial_h^{\alpha}v\in H^{m+1}(\mathbb{R}^N)\subset H^1(\mathbb{R}^N)=\overline{D(\mathbb{R}^N)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,1}}$ である(Sobolev空間の基本事項定理32.2)から、上式より、 $$ p(\partial_h^{\alpha}v,\partial_h^{\alpha}v)\leq C_1(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}) $$ が成り立つ。また補題3.8より、 $$ (\partial_h^{\alpha}v\mid \partial_h^{\alpha}v)_2=\lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert_2^2\leq \lVert \partial^{\alpha}v\rVert_{2}\lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert_2\leq \lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}) $$ であるから、$a_{i,j},b,\alpha$ のみによる正実数 $C_2$ が存在し、 $$ p(\partial_h^{\alpha}v,\partial_h^{\alpha}v)+(\partial_h^{\alpha}v\mid \partial_h^{\alpha}v)_2 \leq C_2(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}) $$ が成り立つ。ここで一様楕円性条件(定義3.1)より $a_{i,j}$ のみによる正実数 $C_3$ が存在し、 $$ C_3\lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert_{2,1}^2\leq p(\partial_h^{\alpha}v,\partial_h^{\alpha}v)+(\partial_h^{\alpha}v\mid \partial_h^{\alpha}v)_2 $$ が成り立つので、上式と合わせて、$a_{i,j},b,\alpha$ のみによる正実数 $C_4$ が存在し、 $$ \lVert \partial_h^{\alpha}v\rVert_{2,1}\leq C_4(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}) $$ が成り立つことが分かる。これより、 $$ \lVert \partial_h^{\alpha}\partial_jv\rVert_2\leq C_4(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}, \forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ であるから、補題3.8の $(2)$ より $\partial^{\alpha}\partial_jv\in L^2(\mathbb{R}^N)$ $(j=1,\ldots,N)$ であり、 $$ \lVert \partial^{\alpha}\partial_jv\rVert_2\leq C_4(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ が成り立つ。よって $\alpha$ の任意性より $v\in H^{m+2}(\mathbb{R}^N)$ であり、求める結果を得る。

  • $(4)$ $(3)$ より $D(A)\subset H^2(\mathbb{R}^N)$ である。逆に $v\in H^2(\mathbb{R}^N)$ ならば、

$$ \mathcal{A}v=-\sum_{i,j=1}^{N}\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+bv\in L^2(\mathbb{R}^N) $$ であり、任意の $u\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} p_{\mathcal{A}}(u,v)&=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}a_{i,j}(x)\partial_i\overline{u}(x)\partial_jv(x)dx+\int_{\mathbb{R}^N}b(x)\overline{u}(x)v(x)dx\\ &=-\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}\overline{u}(x)\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)(x)dx+\int_{\mathbb{R}^N}b(x)\overline{u}(x)v(x)dx\\ &=(u\mid \mathcal{A}v)_2 \end{aligned} $$ である。よって $H^1(\mathbb{R}^N)=\overline{D(\mathbb{R}^N)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,1}}$(Sobolev空間の基本事項定理32.2)より、 $$ p_{\mathcal{A}}(u,v)=(u\mid \mathcal{A}v)_{2}\quad(\forall u\in H^1(\mathbb{R}^N)) $$ であるから $v\in D(A)$ である。ゆえに $D(A)=H^2(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。

補題3.10(内部正則性)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$\Omega$ 上の一様楕円型微分作用素(定義3.1) $$ \mathcal{A}\colon D'(\Omega)\ni v\mapsto -\sum_{i,j=1}^{N}\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+bv\in D'(\Omega) $$ を考える。そして $v$ が $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ v\in H^{m+1}(\Omega),\quad \mathcal{A}v\in H^m(\Omega) $$ を満たすとする。このとき、 $$ d(\Omega_0,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)>0 $$ を満たす任意の開集合 $\Omega_0\subset \Omega$ に対し、$v$ の $\Omega_0$ 上への制限 $v|_{\Omega_0}$ は、 $$v|_{\Omega_0}\in H^{m+2}(\Omega_0)$$ を満たし、$a_{i,j},b,m,\Omega_0$ のみによる正実数 $C$ が存在し、 $$ \lVert v|_{\Omega_0}\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。

Proof.

$$ r\colon=d(\Omega_0,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)>0 $$ とおき、 $$ 0\colon=r_0<r_1<r_2<r_3\leq r,\quad \Omega_k\colon=\{x\in \mathbb{R}^N:d(x,\Omega_0)<r_k\}\quad(k=1,2,3), $$ $$ \delta\colon=\frac{1}{m+1}{\rm min}(r_1-r_0,r_2-r_1,r_3-r_2)>0\quad\quad(1) $$ とおく。このとき $\Omega_1,\Omega_2,\Omega_3$ は開集合であり(超関数の定義と基本操作命題2.2)、 $$ \Omega_0\subset \Omega_1\subset \Omega_2\subset \Omega_3\subset \Omega, $$ $$ d(\Omega_{k-1},\mathbb{R}^N\backslash \Omega_k)\geq r_k-r_{k-1}>0\quad(k=1,2,3)\quad\quad(2) $$ である。特に $d(\Omega_0,\mathbb{R}^N\backslash \Omega_1)>0$ であるから Sobolev空間の基本事項補題33.1より全ての偏導関数が有界な $C^\infty$ 級関数 $\rho\colon\mathbb{R}^N\rightarrow [0,\infty)$ で、 $$ \rho|_{\Omega_0}=1,\quad {\rm supp}(\rho)\subset \Omega_1\quad\quad(3) $$ を満たすものが取れる。$\rho v\in H^{m+1}(\Omega)$ に対し ${\rm supp}(\rho v)\subset {\rm supp}(\rho)\subset \Omega_1$ より、 $$ d({\rm supp}(\rho u), \mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq d(\Omega_1,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq r-r_1>0 $$ であるから、Sobolev空間の基本事項定理33.3より $\rho v$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張を $w$ とおくと、 $$ w\in H^{m+1}(\mathbb{R}^N),\quad {\rm supp}(w)={\rm supp}(\rho v)\subset {\rm supp}(\rho)\subset \Omega_1,\quad \lVert w\rVert_{2,m+1}=\lVert\rho v\rVert_{2,m+1}\quad\quad(4) $$ が成り立つ。今、 $$ p(u_1,u_2)\colon=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_i\overline{u_1}(x)\partial_ju_2(x)dx\quad(\forall u_1,u_2\in H^1(\Omega)) $$ とおき、$a_{i,j}\colon \Omega\rightarrow \mathbb{C}$ を $\mathbb{R}^N$ 上へ $0$ 拡張したものを $\widetilde{a_{i,j}}\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ とおく。そして $\lvert\alpha\rvert\leq m+1$ を満たす任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ を取り固定する。$0<\lvert h\rvert <\delta$ を満たす任意の $h\in \mathbb{R}$ と任意の $u\in D(\Omega)\subset D(\mathbb{R}^N)$ に対し、補題3.7命題3.6より、 $$ \begin{aligned} &p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_i\overline{u}(x)\partial_h^{\alpha}\partial_jw(x)dx=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N}\partial_jw(x)\partial_{-h}^{\alpha}(\widetilde{a_{i,j}}\partial_i\overline{u})(x)dx\\ &=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}\partial_jw(x)\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u}(x)dx+\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\int_{\mathbb{R}^N}\partial_jw(x)\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_{-h}^{\alpha-\beta}\tau_{-h}^{\beta}\partial_i\overline{u}(x)dx\right)\\ &=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)+\sum_{i,j=1}^{N}\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}(-1)^{\lvert\beta\rvert}\int_{\mathbb{R}^N}\partial_h^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})(x)\tau_{-h}^{\beta}\partial_i\overline{u}(x)dx\quad\quad(5) \end{aligned} $$ となる。$(5)$ の右辺の第二項の評価を考える。$(4)$ より ${\rm supp}(w)\subset \Omega_1$ であるから、$0<\lvert h\rvert<\delta$ であることと $(1),(2)$ より $0<\beta\leq \alpha$ なる任意の多重指数 $\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial_{h}^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})$ の台は $\Omega_2$ に含まれるので、命題3.6補題3.8の $(1)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lVert \partial_{h}^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})\rVert_2 =\lVert (\partial_{h}^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}}))|_{\Omega_2}\rVert_2\leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert (\partial_h^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_jw)|_{\Omega_2}(\tau_h^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_h^{\gamma}\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})|_{\Omega_2}\rVert_2\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert (\partial_h^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_jw)|_{\Omega_2}\rVert_2\lVert (\partial_h^{\gamma}\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})|_{\Omega_3}\rVert_{\infty} \leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert (\partial^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_jw)\rVert_2\lVert (\partial^{\gamma}\partial^{\beta}a_{i,j})|_{\Omega_3}\rVert_{\infty}\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert w\rVert_{2,m+1}\lVert \partial^{\gamma}\partial^{\beta}a_{i,j}\rVert_{\infty}= \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert \rho v\rVert_{2,m+1}\lVert \partial^{\gamma}\partial^{\beta}a_{i,j}\rVert_{\infty} \end{aligned} $$ となる。よって $\rho,a_{i,j},\alpha$ のみによる正数 $C_1$ が存在し、 $$ \begin{aligned} &\lvert\lvert p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})-(-1)^{\lvert\alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)\rvert=(\text{$(5)$ の右辺の第二項})\\ &\leq C_1\lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert u\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R}:0<\lvert h\rvert<\delta,\forall u\in D(\Omega))\quad\quad(6) \end{aligned} $$ が成り立つ。今、 $$ \begin{aligned} p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})&=\{p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})-(-1)^{\lvert\alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)\}\\ &+(-1)^{\lvert\alpha\rvert}(p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)-p(\rho\partial_h^{\alpha}u,v))\\ &+(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\Omega}(\mathcal{A}v-bv)(x)\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}(x)dx\\ &(\forall h\in \mathbb{R}:0<\lvert h\rvert<\delta,\forall u\in D(\Omega))\quad\quad(7) \end{aligned} $$ [5]であり、$(6)$ は $(7)$ の右辺の第一項の評価を与えている。$(7)$ の右辺の第三項の評価を考える。$(\mathcal{A}v-bv)\rho\in H^m(\Omega)$ であり、$(3)$ より、 $$ d({\rm supp}((\mathcal{A}v-bv)\rho),\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq d(\Omega_1,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq r-r_1>0 $$ であるから、Sobolev空間の基本事項定理33.3より、$(\mathcal{A}v-bv)\rho\in H^m(\Omega)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(\mathcal{A}v-bv)\rho}$ は、 $$ \widetilde{(\mathcal{A}v-bv)\rho}\in H^m(\mathbb{R}^N),\quad \lVert \widetilde{(\mathcal{A}v-bv)\rho}\rVert_{2,m}=\lVert (\mathcal{A}v-bv)\rho\rVert_{2,m} $$ を満たす。よって補題3.7補題3.8の $(2)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lvert \text{$(7)$ の右辺の第三項}\rvert=\left\lvert \int_{\Omega}(\mathcal{A}v-bv)(x)\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}(x)dx\right\rvert =\left\lvert\int_{\mathbb{R^N}}\widetilde{(\mathcal{A}v-bv)\rho}(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}(x)dx\right\rvert\\ &\leq \lVert \widetilde{(\mathcal{A}v-bv)\rho}\rVert_{2,m}\lVert u\rVert_{2,1}=\lVert(\mathcal{A}v-bv)\rho\rVert_{2,m}\lVert u\rVert_{2,1}\leq C_3(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m})\lVert u\rVert_{2,1}\quad\quad(8) \end{aligned} $$ と評価できる(ただし $C_3$ は $\rho,b,m$ のみによる正実数である)。$(7)$ の右辺の第二項の評価を考える。 $$ \begin{aligned} &\lvert \text{$(7)$ の右辺の第二項}\rvert=\lvert p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)-p(\rho\partial_h^{\alpha}u,v)\rvert\\ &=\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_j(\rho v)(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u}(x)dx-\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_jv(x)(\partial_i(\rho\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}))(x)dx\right)\right\rvert\\ &=\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{\Omega}a_{i,j}(x)v(x)\partial_j\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u}(x)dx-\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_jv(x)\partial_i\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}(x)dx\right)\right\rvert\quad\quad(9) \end{aligned} $$ であり、$(3)$ より、 $$ a_{i,j}v\partial_j\rho \in H^{m+1}(\Omega),\quad d({\rm supp}(a_{i,j}v\partial_j\rho,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq d({\rm supp}(\rho),\mathbb{R}^N\backslash \Omega)>0, $$ $$ a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\in H^{m}(\Omega),\quad d({\rm supp}(a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho),\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq d({\rm supp}(\rho),\mathbb{R}^N\backslash \Omega)>0 $$ であるから、$a_{i,j}v\partial_j\rho \in H^{m+1}(\Omega)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho $ と、$a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\in H^m(\Omega)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho$ は、Sobolev空間の基本事項定理33.3より、 $$ \widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho \in H^{m+1}(\mathbb{R}^N),\quad \lVert \widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho \rVert_{2,m+1}=\lVert a_{i,j}v\partial_j\rho \rVert_{2,m+1}, $$ $$ \widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho\in H^m(\mathbb{R}^N),\quad \lVert \widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho\rVert_{2,m}=\lVert a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\rVert_{2,m} $$ を満たす。よって $(9)$ の右辺は補題3.7補題3.8の $(1)$ より、 $$ \begin{aligned} &\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_j(\rho v)(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u}(x)dx-\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_jv(x)(\partial_i(\rho\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}))(x)dx\right)\right\rvert\\ &=\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}\widetilde{(a_{i,j}v)}(x)\partial_j\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u}(x)dx-\int_{\mathbb{R}^N}\widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)} (x)\partial_i\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}(x)dx\right)\right\rvert\\ &\leq \sum_{i,j=1}^{N}(\lVert\widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho\rVert_{2,m+1}+\lVert \widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho\rVert_{2,m})\lVert u\rVert_{2,1}\\ &\leq \sum_{i,j=1}^{N}(\lVert a_{i,j}v\partial_j\rho\rVert_{2,m+1}+\lVert a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\rVert_{2,m})\lVert u\rVert_{2,1}\\ &\leq C_2\lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert u\rVert_{2,1} \end{aligned} $$ (ただし $C_2$ は $a_{i,j},\rho,m$ のみによる正実数である)となるので、 $$ \lVert (\text{$(7)$ の右辺の第二項})\rVert\leq C_2\lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert u\rVert_{2,1}\quad\quad(10) $$ と評価できる。こうして $(7)$ の右辺の第一項、第二項、第三項はそれぞれ $a_{i,j},b,\rho,\alpha,m$ のみによる正実数 $C_1,C_2,C_3$ により $(6),(10),(8)$ によって評価されるので、$a_{i,j},b,\rho,\alpha,m$ のみによる正実数 $C_4$ が存在し、 $$ \lvert p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})\rvert\leq C_4(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert u\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta,\forall u\in D(\Omega))\quad\quad(11) $$ が成り立つ。ここで ${\rm supp}(\omega)\subset \Omega_1$ であることと $(1)$ より、 $$ d({\rm supp}(\partial_h^{\alpha}w),\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq d(\Omega_2,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq r-r_2>0\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta) $$ であるので、Sobolev空間の基本事項系33.5より、 $$ (\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega}\in H^1_0(\Omega)=\overline{D(\Omega)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,1}},\quad \lVert \partial_h^{\alpha}w\rVert_{2,1}=\lVert (\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega}\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta)\quad\quad(12) $$ が成り立つ。よって $(12)$ の左の式と $(11)$ より、 $$ p((\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega},(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})\leq C_4(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert (\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega}\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in\mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つので、一様楕円性条件(定義3.1)より、$a_{i,j},b,\rho,\alpha,m$ のみによる正実数 $C_5$ が存在し、 $$ \lVert (\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega}\rVert_{2,1}^2\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert (\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega}\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つ。よって $(12)$ の右の式より、 $$ \lVert \partial_h^{\alpha}w\rVert_{2,1}\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つ。これより、 $$ \lVert \partial_h^{\alpha}\partial_jw\rVert_{2}\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta,\forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ であるから、補題3.8の $(2)$ より $\partial^{\alpha}\partial_jw\in L^2(\mathbb{R}^N)$ $(j=1,\ldots,N)$ であり、 $$ \lVert \partial^{\alpha}\partial_jw\rVert_2\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ が成り立つ。よって $\alpha$ の任意性より $w\in H^{m+2}(\mathbb{R}^N)$ であり、$a_{i,j},b,\rho,m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、 $$ \lVert w\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。$(3)$ より $v|_{\Omega_0}=w|_{\Omega_0}$ であるから、 $$ v|_{\Omega_0}=w|_{\Omega_0}\in H^{m+2}(\Omega_0),\quad \lVert v|_{\Omega_0}\rVert_{2,m+2}\leq \lVert w\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。

定義3.11

$Q,Q_+\subset \mathbb{R}^N$ を、 $$ Q\colon=(-1,1)^N,\quad Q_+\colon =(-1,1)^{N-1}\times (0,1) $$ と定義する。また任意の $\epsilon\in (0,1)$ に対し、 $$ Q_{\epsilon}\colon=(-\epsilon,\epsilon)^N,\quad Q_{\epsilon,+}\colon=(-\epsilon,\epsilon)^{N-1}\times (0,\epsilon) $$ と定義する。

補題3.12

$Q_+\subset \mathbb{R}^N_+=\mathbb{R}^{N-1}\times (0,\infty)$ 上の一様楕円型微分作用素(定義3.1) $$ \mathcal{A}\colon D'(Q_+)\ni v\mapsto -\sum_{i,j=1}^{N}-\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)\in D'(Q_+) $$ を考え、 $$ p(u,v)\colon=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{Q_+}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iu(x)}\partial_jv(x)dx\quad(\forall u,v\in H^1(Q_+)) $$ とおく。そして $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ v\in H^{m+1}(Q_+),\quad \mathcal{A}v\in H^{m}(Q_+) $$ が成り立つとし、さらに次のうちのいずれかが成り立つと仮定する。

  • $({\rm a})$ 任意の $\rho\in D(Q)|_{Q_+}$ に対し $\rho v\in H^1_0(Q_+)$.
  • $({\rm b})$ 任意の $u\in D(Q)|_{Q_+}$ に対し $p(u,v)=(u\mid \mathcal{A}v)_2$. 

このとき任意の $\epsilon\in (0,1)$ に対し $v|_{Q_{\epsilon,+}}\in H^{m+2}(Q_{\epsilon,+})$ が成り立ち、$\epsilon,a_{i,j},m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、 $$ \lVert v|_{Q_{\epsilon,+}}\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。

Proof.

任意の $\epsilon\in (0,1)$ を取り固定する。 $$ \epsilon_0\colon=\epsilon<\epsilon_1<\epsilon_2<\epsilon_3\leq 1 $$ とおき、 $$ \delta\colon=\frac{1}{m+1}{\rm min}(\epsilon_1-\epsilon_0,\epsilon_2-\epsilon_1,\epsilon_3-\epsilon_2)>0\quad\quad(1) $$ とおく。Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より非負値の $\rho\in D( \mathbb{R}^N)$ で、 $$ \rho|_{Q_{\epsilon}}=1,\quad {\rm supp}(\rho)\subset Q_{\epsilon_1}\quad\quad(2) $$ を満たすものが取れる。$\rho v\in H^{m+1}(Q_+)$ に対し、 $$ {\rm supp}(\rho v)\subset {\rm supp}(\rho) \cap Q_+\subset Q_{\epsilon_1,+} $$ より、 $$ d({\rm supp}(\rho v),\mathbb{R}^N_+\backslash Q_{+})\geq d(Q_{\epsilon_1,+},\mathbb{R}^N_+\backslash Q_+)\geq 1-\epsilon_1>0 $$ であるから、Sobolev空間の基本事項定理33.3より $\rho v\in H^{m+1}(Q_+)$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への $0$ 拡張を $w$ とおくと、 $$ w\in H^{m+1}(\mathbb{R}^N_+),\quad {\rm supp}(w)={\rm supp}(\rho v)\subset Q_{\epsilon_1,+},\quad \lVert w\rVert_{2,m+1}=\lVert \rho v\rVert_{2,m+1}\quad\quad(3) $$ が成り立つ。今、 $$ \lvert \alpha\rvert\leq m+1,\quad \alpha_N=0\quad\quad(4) $$ を満たす任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ を取り固定する。$a_{i,j}\colon Q_+\rightarrow\mathbb{C}$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張を $\widetilde{a_{i,j}}\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ とおく。$0<\lvert h\rvert<\delta$ を満たす任意の $h\in \mathbb{R}$ と任意の $u\in D(Q)|_{Q_+}$ に対し、補題3.7命題3.6より、 $$ \begin{aligned} &p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+})=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\mathbb{R}^N_+}\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_i\overline{u}(x)\partial_h^{\alpha}\partial_jw(x)dx=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\sum_{i,j=1}^N\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_{-h}^{\alpha}(\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_i\overline{u})(x)\partial_jw(x)dx\\ &=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\left(\int_{\mathbb{R}^N_+}\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u}(x)\partial_jw(x)dx+\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}}(x)\partial_{-h}^{\alpha-\beta}\tau_{-h}^{\beta}\partial_i\overline{u}(x)\partial_jw(x)dx\right)\\ &=(-1)^{\lvert \alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)+\sum_{i,j=1}^{N}\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}(-1)^{\lvert\beta\rvert}\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_h^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})\tau_{-h}^{\beta}\partial_i\overline{u}(x)dx\quad\quad(5) \end{aligned} $$ となる。$(5)$ の右辺の第二項の評価を考える。$(3)$ より ${\rm supp}(w)\subset Q_{\epsilon_1,+}$ であるから $(1),(4)$ より $0<\beta\leq \alpha$ なる任意の $\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial_h^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})$ の台は $Q_{\epsilon_2,+}$ に含まれるので命題3.6補題3.8の $(1)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lVert \partial_h^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})\rVert_2 =\lVert (\partial_h^{\alpha-\beta}(\partial_jw\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})|_{Q_{\epsilon_{2,+}}}\rVert_2\\ &\leq \sum_{\gamma\leq \alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}(\partial_h^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_jw)|_{Q_{\epsilon_{2,+}}}(\tau_h^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_h^{\gamma}\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})|_{Q_{\epsilon_{2,+}}}\rVert_2\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert (\partial_h^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_jw)|_{Q_{\epsilon_{2,+}}}\rVert_2\lVert (\partial_h^{\gamma}\partial_{-h}^{\beta}\widetilde{a_{i,j}})|_{Q_{\epsilon_{3,+}}}\rVert_{\infty}\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert (\partial^{\alpha-\beta-\gamma}\partial_jw)\rVert_2\lVert (\partial^{\gamma}\partial^{\beta}a_{i,j})|_{Q_{\epsilon_{3,+}}}\rVert_{\infty}\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert w\rVert_{2,m+1}\lVert \partial^{\gamma}\partial^{\beta}a_{i,j}\rVert_{\infty}= \sum_{\gamma\leq\alpha-\beta}\begin{pmatrix}\alpha-\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lVert \rho v\rVert_{2,m+1}\lVert \partial^{\gamma}\partial^{\beta}a_{i,j}\rVert_{\infty} \end{aligned} $$ となる。よって $\rho,a_{i,j},\alpha$ のみによる正数 $C_1$ が存在し、 $$ \begin{aligned} &\lvert\lvert p(u,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})-(-1)^{\lvert\alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u,\rho v)\rvert=(\text{$(5)$ の右辺の第二項})\\ &\leq C_1\lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert u\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R}:0<\lvert h\rvert<\delta,\forall u\in D(Q)|_{Q_+})\quad\quad(6) \end{aligned} $$ が成り立つ。今、$({\rm a})$ が成り立つ場合は任意の $u_{\rm a}\in D(Q_+)$ を取り、$({\rm b})$ が成り立つ場合は任意の $u_{\rm b}\in D(Q)|_{Q_+}$ を取る。このとき $$ \begin{aligned} p(u_k,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})&=\{p(u_k,(\partial_h^{\alpha}w)|_{\Omega})-(-1)^{\lvert\alpha\rvert}p(\partial_{-h}^{\alpha}u_k,\rho v)\}\\ &+(-1)^{\lvert\alpha\rvert}(p(\partial_{-h}^{\alpha}u_k,\rho v)-p(\rho\partial_h^{\alpha}u_k,v))\\ &+(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\Omega}\mathcal{A}v(x)\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}(x)dx\\ &(\forall h\in \mathbb{R}:0<\lvert h\rvert<\delta,k={\rm a}, {\rm b})\quad\quad(7) \end{aligned} $$ ($k={\rm a}$ の場合、$\rho\partial_{-h}^{\alpha}u_{\rm a}\in D(Q_+)$ であることに注意)であり、$(6)$ は $(7)$ の右辺の第一項の評価を与えている。$(7)$ の右辺の第三項の評価を考える。$\mathcal{A}v\rho\in H^m(Q_+)$ であり、$(2)$ より、 $$ d({\rm supp}(\mathcal{A}v\rho),\mathbb{R}^N_+\backslash Q_+)\geq d(Q_{\epsilon_1,+},\mathbb{R}^N_+\backslash Q_+)\geq 1-\epsilon_1>0 $$ であるから、Sobolev空間の基本事項定理33.3より、$\mathcal{A}v\rho\in H^m(Q_+)$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{\mathcal{A}v\rho}$ は、 $$ \widetilde{\mathcal{A}v\rho}\in H^m(\mathbb{R}^N_+),\quad \lVert \widetilde{\mathcal{A}v\rho}\rVert_{2,m}=\lVert \mathcal{A}v\rho\rVert_{2,m} $$ を満たす。よって $(4)$ と補題3.7補題3.8 より、 $$ \begin{aligned} &\lvert \text{$(7)$ の右辺の第三項}\rvert=\left\lvert \int_{Q_+}\mathcal{A}v(x)\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}(x)dx\right\rvert =\left\lvert\int_{\mathbb{R^N}_+}\widetilde{\mathcal{A}v\rho}(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}(x)dx\right\rvert\\ &\leq \lVert \widetilde{\mathcal{A}v\rho}\rVert_{2,m}\lVert u_k\rVert_{2,1}=\lVert\mathcal{A}v\rho\rVert_{2,m}\lVert u_k\rVert_{2,1}\leq C_3(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m})\lVert u_k\rVert_{2,1}\quad\quad(8) \end{aligned} $$ (ただし $C_3$ は $\rho,m$ のみによる正実数)と評価できる。$(7)$ の右辺の第二項の評価を考える。 $$ \begin{aligned} &\lvert \text{$(7)$ の右辺の第二項}\rvert=\lvert p(\partial_{-h}^{\alpha}u_k,\rho v)-p(\rho\partial_h^{\alpha}u,v)\rvert\\ &=\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{Q_+}a_{i,j}(x)\partial_j(\rho v)(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u_k}(x)dx-\int_{Q_+}a_{i,j}(x)\partial_jv(x)(\partial_i(\rho\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}))(x)dx\right)\right\rvert\\ &=\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{Q_+}a_{i,j}(x)v(x)\partial_j\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u_k}(x)dx-\int_{Q_+}a_{i,j}(x)\partial_jv(x)\partial_i\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}(x)dx\right)\right\rvert\quad\quad(9) \end{aligned} $$ であり、$(2)$ より、 $$ a_{i,j}v\partial_j\rho \in H^{m+1}(Q_+),\quad d({\rm supp}(a_{i,j}v\partial_j\rho,\mathbb{R}^N_+\backslash Q_+)\geq d(Q_{\epsilon_1,+},\mathbb{R}^N_+\backslash Q_+)\geq 1-\epsilon_1>0, $$ $$ a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\in H^{m}(Q_+),\quad d({\rm supp}(a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho),\mathbb{R}^N_+\backslash Q_+)\geq d(Q_{\epsilon_1,+},\mathbb{R}^N_+\backslash Q_{+})\geq1-\epsilon_1>0 $$ であるから、$a_{i,j}v\partial_j\rho \in H^{m+1}(Q_+)$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho $ と、$a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\in H^m(Q_+)$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho$ は、Sobolev空間の基本事項定理33.3より、 $$ \widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho \in H^{m+1}(\mathbb{R}^N_+),\quad \lVert \widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho \rVert_{2,m+1}=\lVert a_{i,j}v\partial_j\rho \rVert_{2,m+1}, $$ $$ \widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho\in H^m(\mathbb{R}^N_+),\quad \lVert \widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho\rVert_{2,m}=\lVert a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\rVert_{2,m} $$ を満たす。よって $(9)$ の右辺は補題3.7補題3.8の $(1)$ より、 $$ \begin{aligned} &\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{Q_+}a_{i,j}(x)\partial_j(\rho v)(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u_k}(x)dx-\int_{Q_+}a_{i,j}(x)\partial_jv(x)(\partial_i(\rho\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}))(x)dx\right)\right\rvert\\ &=\left\lvert \sum_{i,j=1}^{N}\left(\int_{\mathbb{R}^N_+}\widetilde{(a_{i,j}v)}(x)\partial_j\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\partial_i\overline{u_k}(x)dx-\int_{\mathbb{R}^N_+}\widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)} (x)\partial_i\rho(x)\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u_k}(x)dx\right)\right\rvert\\ &\leq \sum_{i,j=1}^{N}(\lVert\widetilde{(a_{i,j}v)}\partial_j\rho\rVert_{2,m+1}+\lVert \widetilde{(a_{i,j}\partial_jv)}\partial_i\rho\rVert_{2,m})\lVert u_k\rVert_{2,1}\\ &\leq \sum_{i,j=1}^{N}(\lVert a_{i,j}v\partial_j\rho\rVert_{2,m+1}+\lVert a_{i,j}\partial_jv\partial_i\rho\rVert_{2,m})\lVert u_k\rVert_{2,1}\\ &\leq C_2\lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert u_k\rVert_{2,1} \end{aligned} $$ (ただし $C_2$ は $a_{i,j},\rho,m$ のみによる正実数である)となるので、 $$ \lVert (\text{$(7)$ の右辺の第二項})\rVert\leq C_2\lVert v\rVert_{2,m+1}\lVert u_k\rVert_{2,1}\quad\quad(10) $$ と評価できる。こうして $(7)$ の右辺の第一項、第二項、第三項はそれぞれ $a_{i,j},b,\rho,\alpha,m$ のみによる正実数 $C_1,C_2,C_3$ により $(6),(10),(8)$ によって評価されるので、$a_{i,j},b,\rho,\alpha,m$ のみによる正実数 $C_4$ が存在し、 $$ \lvert p(u_k,(\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+})\rvert\leq C_4(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert u_k\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta,k={\rm a},{\rm b})\quad\quad(11) $$ が成り立つ。ここで $(1),(3),(4)$ より $0<\lvert h\rvert<\delta$ なる任意の $h\in \mathbb{R}$ に対し、$\partial_h^{\alpha}w\in H^{m+1}(\mathbb{R}^N_+)$ の台は $Q_{\epsilon_2,+}$ に含まれる。そこでUrysohnの補題より $\varphi\in D(Q)$ で $\varphi|_{Q_{\epsilon_2,+}}=1$ なるものを取ると、$({\rm a})$ が成り立つ場合は $w\in H^1_0(\mathbb{R}^N_+)$(Sobolev空間の基本事項命題32.3)より $\partial_h^{\alpha}w\in H^1_0(\mathbb{R}^N_+)$ であるから、 $$ (\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+}=(\varphi\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+}\in H^1_0(Q_+) $$ が成り立ち、$({\rm b})$ が成り立つ場合はSobolev空間の基本事項命題34.3より $\partial_h^{\alpha}w\in H^1(\mathbb{R}^N_+)=\overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}}^{\lVert \cdot\rVert_{2,1}}$ であるから、 $$ (\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+}=(\varphi\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+}\in \overline{D(Q)|_{Q_+}}^{\lVert \cdot\rVert_{2,1}} $$ が成り立つ。よって $u_{\rm a}\in D(Q_+), u_{\rm b}\in D(Q)|_{Q_+}$ であることに注意して $(11)$ より、 $$ p((\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+},(\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+})\leq C_4(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert (\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+}\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in\mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つ。よって一様楕円性条件(定義3.1)より、$a_{i,j},b,\rho,\alpha,m$ のみによる正実数 $C_5$ が存在し、 $$ \lVert \partial_h^{\alpha}w\rVert_{2,1}^2=\lVert (\partial_h^{\alpha}w)|_{Q_+}\rVert_{2,1}^2\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\lVert \partial_h^{\alpha}w\rVert_{2,1}\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つ。これより、 $$ \lVert \partial_h^{\alpha}\partial_jw\rVert_{2}\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall h\in \mathbb{R},0<\lvert h\rvert<\delta,\forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ が成り立つので、$(4)$ と補題3.8の $(2)$ より $\partial^{\alpha}\partial_jw\in L^2(\mathbb{R}^N_+)$ $(j=1,\ldots,N)$ であり、 $$ \lVert \partial^{\alpha}\partial_jw\rVert_2\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ が成り立つ。$(2)$ より、 $$ \partial^{\alpha}\partial_jv|_{Q_{\epsilon,+}}=\partial^{\alpha}\partial_jw|_{Q_{\epsilon,+}}\in L^2(Q_{\epsilon,+})\quad(j=1,\ldots,N) $$ であるから、 $$ \lVert \partial^{\alpha}\partial_jv|_{Q_{\epsilon,+}}\rVert_2\leq \lVert \partial^{\alpha}\partial_jw\rVert_2\leq C_5(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall j\in \{1,\ldots,N\})\quad\quad(12) $$ が成り立つ。ここで $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ は $(4)$ を満たす範囲で任意であるので、$(12)$ より、 $$ \lvert \alpha\rvert\leq m+2,\quad \alpha_N\leq 1 $$ を満たす任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}^N_+$ に対し $\partial^{\alpha}v|_{Q_{\epsilon,+}}\in L^2(Q_{\epsilon,+})$ であり、$\epsilon,a_{i,j},\alpha,m$ のみによる正実数 $C^{(1)}$ が存在し、 $$ \lVert \partial^{\alpha}v|_{Q_{\epsilon,+}}\rVert_2\leq C^{(1)}(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。
今、$n\in \{1,\ldots,m+1\}$ について、 $$ \lvert \alpha\rvert\leq m+2,\quad \alpha_N\leq n $$ を満たす任意の多重指数 $\alpha\in\mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}v|_{Q_{+,\epsilon}}\in L^2(Q_{\epsilon,+})$ であり、$\epsilon,a_{i,j},\alpha,m$ のみによるある正実数 $C^{(n)}$ が存在し、 $$ \lVert \partial^{\alpha}v|_{Q_{\epsilon,+}}\rVert_2\leq C^{(n)}(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つと仮定する。一様楕円性条件(定義3.1)よりある正実数 $c$ が存在し、 $$ a_{N,N}(x)\geq c\quad(\forall x\in Q_+) $$ が成り立つから、$\frac{1}{a_{N,N}}\colon Q_+\rightarrow \mathbb{R}$ は全ての偏導関数が有界な $C^\infty$ 級関数である。そして $D'(Q_+)$ において、 $$ \partial_N^2v=-\frac{1}{a_{N,N}}\left(\mathcal{A}v+\sum_{(i,j)\neq (N,N)}\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+(\partial_Na_{N,N})\partial_Nv\right) $$ であるから、仮定より、 $$ \lvert \beta\rvert\leq m,\quad \beta_N\leq n-1 $$ を満たす任意の多重指数 $\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\beta}\partial_N^2v|_{Q_{\epsilon,+}}\in L^2(Q_{\epsilon,+}) $$ が成り立ち、$\epsilon,a_{i,j},\beta,m$ のみによる正実数 $C^{(n+1)}$ が存在し、 $$ \lVert \partial^{\beta}\partial_N^2v|_{Q_{\epsilon,+}}\rVert_2\leq C^{(n+1)}(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。よって帰納法より $v|_{Q_{\epsilon,+}}\in H^{m+2}(Q_{\epsilon,+})$ であり、$\epsilon,a_{i,j},m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、 $$ \lVert \partial^{\alpha}v|_{Q_{\epsilon,+}}\rVert_2\leq C(\lVert \mathcal{A}v\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert \alpha\rvert\leq m+2) $$ が成り立つ。

定義3.13(Dirichret-Neumann混合境界条件付き一様楕円型微分作用素)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合で、$\Omega$ か $\mathbb{R}^N\backslash \Omega$ のうちのいずれかが有界であるものとする。そして $\partial\Omega$ は互いに交わらないコンパクト集合 $\partial\Omega_{\rm d}$ と $\partial\Omega_{\rm n}$ の合併(どちらかが空であってもよい)とする。 $$ \gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega) $$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項定理37.1)とし、 $$ \mathcal{V}\colon=\{v\in H^1(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0\} $$ とおく。Sobolev空間の基本事項定理37.2より $H^1_0(\Omega)\subset \mathcal{V}\subset H^1(\Omega)$ であり、$\gamma$ が有界線形作用素であることから $\mathcal{V}$ は $H^1(\Omega)$ の閉部分空間である。そこで今、$\Omega$ 上の一様楕円型微分作用素(定義3.1) $$ \mathcal{A}\colon D'(\Omega)\ni v\mapsto -\sum_{i,j=1}^{N}\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)+bv\in D'(\Omega) $$ に対し、 $$ p_{\mathcal{A}}(u,v)\colon=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\overline{\partial_iu(x)}\partial_jv(x)dx+\int_{\Omega}b(x)\overline{u(x)}v(x)dx\quad(\forall u,v\in \mathcal{V}) $$ とおき、 $$ D(A)\colon=\{v\in \mathcal{V}: \mathcal{A}v\in L^2(\Omega),p_{\mathcal{A}}(u,v)=(u\mid \mathcal{A}v)_2\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\}, $$ $$ A\colon D(A)\ni v\mapsto \mathcal{A}v\in L^2(\Omega) $$ とおく。このとき定理3.4より $A$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の下に有界な自己共役作用素(Hilbert空間上の作用素論定義4.1定義14.7)である。$A$ をDirichlet-Neumann混合境界条件付き一様楕円型微分作用素と言う。特に $\partial\Omega=\partial\Omega_{\rm d}$, すなわち $\mathcal{V}=H^1_0(\Omega)$(Sobolev空間の基本事項定理37.2)であるとき $A$ をDirichlet境界条件付き一様楕円型微分作用素と言い、$\partial\Omega=\partial\Omega_{\rm n}$, すなわち $\mathcal{V}=H^1(\Omega)$ であるとき $A$ をNeumann境界条件付き一様楕円型微分作用素と言う。

定理3.14(Dirichret-Neumann混合境界条件付き一様楕円型微分作用素の基本性質)

定義3.13におけるDirichret-Neumann混合境界条件付き一様楕円型微分作用素 $A\colon D(A)\rightarrow L^2(\Omega)$ を考える。$\lambda_0\colon=\inf_{x\in \Omega} b(x)\in \mathbb{R}$ とおく。このとき、

  • $(1)$ $A$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の下に有界な自己共役作用素であり、そのスペクトル $\sigma(A)$ は $\sigma(A)\subset [\lambda_0,\infty)$ を満たす。また任意の $\lambda\in (-\infty,\lambda_0)$ に対し、

$$ (A-\lambda)^{-1}\in \mathbb{B}(L^2(\Omega),\mathcal{V})\subset \mathbb{B}(L^2(\Omega)) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $\Omega$ が有界ならば、$A$ のスペクトル $\sigma(A)$ は純粋に離散的(Hilbert空間上の作用素論定義14.3)である。また $\Omega$ が有界で $A$ がDirichlet境界条件付き一様楕円型微分作用素ならば、$\sigma(A)\subset (\lambda_0,\infty)$ である。
  • $(3)$ $\lambda_0\geq0$ ならば $A$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素であり、

$$ \mathcal{V}=D(\sqrt{A}),\quad p_{\mathcal{A}}(u,v)=(\sqrt{A}u\mid \sqrt{A}v)_2 $$ が成り立つ。

  • $(4)$ $v\in D(A)$ が $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し $Av\in H^m(\Omega)$ を満たすならば、$v\in H^{m+2}(\Omega)$ が成り立つ。さらに $A$ と $m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、

$$ \lVert v\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_2) $$ が成り立つ。

  • $(5)$ $\nu=(\nu_1,\ldots,\nu_N)\colon \partial\Omega\rightarrow\mathbb{R}^N$ を外向き単位法線ベクトル場とすると、

$$ D(A)=\left\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\left(\sum_{i,j=1}^{N}\nu_i\gamma(a_{i,j}\partial_jv)\right)\Big|_{\partial\Omega_{\rm n}}=0\right\} $$ が成り立つ。特に $\mathcal{A}=-\Delta$(ラプラシアン)の場合は、 $$ D(A)=\left\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0, \frac{\partial v}{\partial\nu}\Big|_{\partial\Omega_{\rm n}}=0\right\} $$ が成り立つ。ただし $\frac{\partial v}{\partial\nu}$ は外向き法線微分(定義3.2)である。

  • $(6)$ $v\in D(A)$ が $A$ の固有ベクトルならば、

$$ v\in \bigcap_{m\in\mathbb{N}}H^m(\Omega) $$ が成り立ち、$v$ は全ての偏導関数が有界な $C^\infty$ 級関数である。

Proof.

$(1),(2),(3)$ は 定理3.4による。
$(4)$ を示す。$m\in \mathbb{Z}_+$ に関する帰納法より $v\in D(A)$ が $m\in \mathbb{Z}_+$ に対して、 $$ Av\in H^m(\Omega),\quad v\in H^{m+1}(\Omega) $$ を満たすと仮定して $v\in H^{m+2}(\Omega)$ が成り立つことと、$A,m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、 $$ \lVert v\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せば十分である。滑らかな境界を持つ開集合の定義(ベクトル解析5:多様体の向き定義21.3)と $\partial\Omega$ のコンパクト性より、$\mathbb{R}^N$ の有限個の局所座標 $( (U_i,\Phi_i))_{i=1,\ldots,\ell}$ で次を満たすものが取れる。

  • $({\rm a})$ $\partial\Omega\subset \bigcup_{i=1}^{\ell}U_i$.
  • $({\rm b})$ 各$i\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し、$U_i$ は $\partial\Omega_{\rm d}$ か $\partial\Omega_{\rm n}$ のうちのいずれか一方としか交わらず、

$$ \Phi_i(U_i)=Q,\quad\Phi_i(U_i\cap\Omega)=Q_+,\quad \Phi_i(U_i\cap\partial\Omega)=(-1,1)^{N-1}\times\{0\}. $$

  • $({\rm c})$ 各 $i\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し $\Phi_i,\Phi_i^{-1}$ の全ての偏導関数は有界。

$({\rm a})$ の左辺はコンパクト集合、右辺は開集合であるから閉包がコンパクトな開集合 $D$ で、 $$ \partial\Omega\subset D\subset \overline{D}\subset \bigcup_{i=1}^{\ell}U_i $$ を満たすものが取れる。よって $1$ の分割(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系15.6)より $h_i\in D(U_i)$ $(i=1,\ldots,\ell )$ で、 $$ \sum_{i=1}^{\ell}h_i(x)=1\quad(\forall x\in D)\quad\quad(**) $$ を満たすものが取れる。 $$ h_0\colon=1-\sum_{i=1}^{\ell}h_i\in C^\infty(\mathbb{R}^N) $$ とおく。 $\partial\Omega$ は開集合 $D$ に含まれるコンパクト集合なので超関数の定義と基本操作命題2.2の $(4)$ より、 $$ d(\partial\Omega,\text{ }\mathbb{R}^N\backslash D)>0 $$ であり、${\rm supp}(h_0)\subset \mathbb{R}^N\backslash D$ であるから、 $$ d({\rm supp}(h_0),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash\Omega)=d({\rm supp}(h_0),\text{ }\partial\Omega)\geq d(\mathbb{R}^N\backslash D,\text{ }\partial\Omega)>0 $$ である。よって補題3.10より $h_0v\in H^{m+2}(\Omega)$ であり、$h_0,\mathcal{A},m$ のみによる正実数 $C_0$ が存在して、 $$ \lVert h_0v\rVert_{2,m+2}\leq C_0(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad\quad(***) $$ が成り立つ。任意の $i\in \{1,\ldots,\ell\}$ を取り固定する。以後、しばらく $\Phi_i,U_i,h_i$ などは $\Phi,U,h$ と表す。$\Psi\colon U\cap\Omega\rightarrow Q_+$ を $\Phi$ の $U\cap\Omega$ 上への制限とし、$({\rm c})$ とSobolev空間の基本事項命題31.2に注意して、 $$ v^*\colon=v\circ\Psi^{-1}\in H^{m+1}(Q_+), $$ $$ c_{k,l}\colon=\left(\sum_{i,j}(a_{i,j}\partial_j\Psi_l\partial_i\Psi_k)\circ\Psi^{-1}\right)\lvert {\rm det}{\Psi^{-1}}'\rvert \in C^\infty(Q_+)\quad(\forall k,l\in \{1,\ldots,N\}), $$ $$ f\colon=(Av-bv)\circ\Psi^{-1}\lvert {\rm det}{\Psi^{-1}}'\rvert\in H^m(Q_+) $$ と定義する。このとき $({\rm c})$ より $\Psi, \Psi^{-1}$ の全ての偏導関数は有界であるから、 $$ \mathcal{B}\colon D'(Q_+)\ni u\mapsto -\sum_{k,l}\partial_k(c_{k,l}\partial_lu)\in D'(Q_+) $$ は一様楕円型作用素(定義3.1)であることが分かる。 $$ q(u,w)\colon=\sum_{k,l}\int_{Q_+}c_{k,l}(x)\partial_k\overline{u}(x)\partial_lw(x)dx\quad(\forall u,w\in H^1(Q_+)) $$ とおく。$U$ が $\partial\Omega_{\rm d}$ と交わらない場合、任意の $u\in D(Q)|_{Q_+}$ に対し $u\circ\Psi\in D(U)|_{\Omega}\subset \mathcal{V}$[6]であるから、変数変換公式(測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質補題40.3)より、 $$ \begin{aligned} q(u,v^*)&=\sum_{i,j}\int_{U\cap \Omega}a_{i,j}(x)\partial_i(\overline{u}\circ\Psi)(x)\partial_jv(x)dx =\sum_{i,j}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_i(\overline{u}\circ\Psi)(x)\partial_jv(x)dx\\ &=p_{\mathcal{A}-b}(u\circ\Psi,v)=\int_{\Omega}(\overline{u}\circ\Psi)(x)(Av-bv)(x)dx=\int_{Q_+}\overline{u}(x)f(x)dx \end{aligned} $$ となる。よってこのとき $v^*$ は補題3.12の条件 $({\rm b})$ を満たす。一方、$U$ が $\partial\Omega_{\rm d}$ と交わるとき、任意の $\rho\in D(U)\subset D(\mathbb{R}^N)$ に対し $\gamma(\rho v)=\rho \gamma(v)=0$ であるのでSobolev空間の基本事項定理37.2より $\rho v\in H^1_0(\Omega)$ であり、$\rho v$ は $(\rho v)|_{U\cap \Omega}$ の $\Omega$ 上への $0$ 拡張で、 $$ d({\rm supp}(\rho v),\text{ }\Omega\backslash (U\cap \Omega))\geq d({\rm supp}(\rho),\text{ }\Omega\backslash U)\geq d({\rm supp}(\rho),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash U)>0 $$ であるから、Sobolev空間の基本事項定理33.3より、$(\rho v)|_{U\cap \Omega}\in H^1_0(\Omega)$ である。よって任意の $\rho^*\in D(Q)$ に対し $\rho^*v^*\in H^1_0(Q_+)$ であるから、$v^*$ は補題3.12の条件 $({\rm a})$ を満たす。${\rm supp}(h)\subset U$ のコンパクト性よりある $\epsilon\in (0,1)$ に対し ${\rm supp}(h\circ \Psi^{-1})\subset Q_{\epsilon,+}$ となるから、補題3.12より $(h\circ\Psi^{-1})v^*\in H^{m+2}(Q_+)$ であり、$h,\Psi,c_{k,l},m$ のみによるある正実数 $C$ が存在して、 $$ \lVert (h\circ\Psi^{-1})v^*\rVert_{2,m+2}\leq C(\lVert f\rVert_{2,m}+\lVert v^*\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。よってSobolev空間の基本事項命題31.2より $hv\in H^{m+2}(U\cap\Omega)$ であり、$h,\Psi,a_{i,j},m$ のみによる正実数 $C'$ が存在して、 $$ \lVert (hv)|_{U\cap\Omega}\rVert_{2,m+2}\leq C'(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。${\rm supp}(h)\subset U$ のコンパクト性より、 $$ d({\rm supp}((hv)|_{U\cap\Omega}),\text{ }\Omega\backslash (U\cap \Omega))\geq d({\rm supp}(h),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash U)>0 $$ であるから、Sobolev空間の基本事項定理33.3より $(hv)|_{U\cap\Omega}$ の $\Omega$ 上への $0$ 拡張である $hv$ は $H^{m+2}(\Omega)$ に属し、 $$ \lVert hv\rVert_{2,m+2}=\lVert (hv)|_{U\cap\Omega}\rVert_{2,m+2}\leq C'(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1}) $$ が成り立つ。よって任意の $i\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し $h_iv\in H^{m+2}(\Omega)$ であり、$h_i,\Phi_i,\mathcal{A},m$ のみによる正実数 $C_i$ が存在し、 $$ \lVert h_iv\rVert_{2,m+2}=\leq C_i(\lVert Av\rVert_{2,m}+\lVert v\rVert_{2,m+1})\quad\quad(****) $$ が成り立つ。以上より $h_0v, h_1v,\ldots,h_{\ell}v\in H^{m+2}(\Omega)$ であるから、$(**)$ より、 $$ v=\sum_{i=1}^{\ell}h_iv\in H^{m+2}(\Omega) $$ であり、$(***),(****)$ より、$\Omega,\mathcal{A},m$ のみによる正実数 $C$ が存在し、$(*)$ が成り立つ。
$(5)$ を示す。$(4)$ より $D(A)\subset H^2(\Omega)$ であるから、 $$ \begin{aligned} D(A)&=\{v\in \mathcal{V}:\mathcal{A}v\in L^2(\Omega), \text{ }p(u,v)=(u\mid \mathcal{A}v)_2\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\}\\ &=\left\{v\in H^2(\Omega): \gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_i\overline{u}(x)\partial_jv(x)+\overline{u}(x)\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)(x)dx=0\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\right\} \end{aligned} $$ であり、$v\in H^2(\Omega)$ と $u\in\mathcal{V}$ に対しGaussの発散定理のSobolev空間版(定理2.3の $(2)$ と定理2.4の $(1)$)より、 $$ \begin{aligned} \sum_{i,j=1}^{N}\int_{\Omega}a_{i,j}(x)\partial_i\overline{u}(x)\partial_jv(x)+\overline{u}(x)\partial_i(a_{i,j}\partial_jv)(x)dx=\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\partial\Omega}\gamma(\overline{u})(x)\gamma(a_{i,j}\partial_jv)(x)\nu_i(x)d\mu_{\partial\Omega}(x) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} D(A)&=\left\{v\in H^2(\Omega): \gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\partial\Omega}\gamma(\overline{u})(x)\gamma(a_{i,j}\partial_jv)(x)\nu_i(x)d\mu_{\partial\Omega}(x)=0\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\right\}\\ &=\left\{v\in H^2(\Omega): \gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\partial\Omega_{\rm n}}\gamma(\overline{u})(x)\gamma(a_{i,j}\partial_jv)(x)\nu_i(x)d\mu_{\partial\Omega}(x)=0\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\right\} \end{aligned} $$ である。$\partial\Omega_{\rm d}$ と $\partial\Omega_{\rm n}$ は互いに交わらないコンパクト集合であるから、Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より、 $$ \{\gamma(u):u\in \mathcal{V}\} $$ は $\partial\Omega_{\rm n}$ 上の全ての多項式を含む。よってStone-Weierstrassの定理(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理35.4)と $L^2(\partial\Omega_{\rm n},\mu_{\partial\Omega})$ における $C(\partial\Omega_{\rm n})$ の稠密性(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系16.12の $(3)$ )より、 $$ \begin{aligned} D(A)&=\left\{v\in H^2(\Omega): \gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\partial\Omega}\gamma(\overline{u})(x)\gamma(a_{i,j}\partial_jv)(x)\nu_i(x)d\mu_{\partial\Omega_{\rm n}}(x)=0\text{ }(\forall u\in \mathcal{V})\right\}\\ &=\left\{v\in H^2(\Omega): \gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\sum_{i,j=1}^{N}\int_{\partial\Omega_{\rm n}}f(x)\gamma(a_{i,j}\partial_jv)(x)\nu_i(x)d\mu_{\partial\Omega}(x)=0\text{ }(\forall f\in C(\partial\Omega_{\rm n}))\right\}\\ &=\left\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\left(\sum_{i,j=1}^{N}\gamma(a_{i,j}\partial_jv)\nu_i\right)\Big|_{\partial\Omega_{\rm n}}=0\right\} \end{aligned} $$ を得る。$\mathcal{A}=-\Delta$ の場合は $a_{i,j}=\delta_{i,j}$ であるから、 $$ \sum_{i,j=1}^{N}\gamma(a_{i,j}\partial_jv)\nu_i=\sum_{j=1}^{N}\gamma(\partial_jv)\nu_j=\gamma(\nabla v)\cdot \nu=\frac{\partial v}{\partial\nu} $$ であるので、 $$ D(A)=\left\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\text{ }\left(\frac{\partial v}{\partial\nu}\right)\Big|_{\partial\Omega_{\rm n}}=0\right\} $$ である。
$(6)$ を示す。$v\in D(A)$ が固有値 $\lambda$ の固有ベクトルならば $(4)$ より、 $$ Av=\lambda v\in D(A)\subset H^2(\Omega) $$ であるから、再び $(4)$ より $v\in H^4(\Omega)$ を得る。さらに $(4)$ より $v\in H^6(\Omega)$ を得る。同様に $(4)$ を繰り返し適用すれば、 $$ v\in \bigcap_{m\in \mathbb{N}}H^m(\Omega) $$ を得る。Sobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.4)より $v$ は全ての偏導関数が有界な $C^\infty$ 級関数である。

4. 調和関数の球面平均、球平均の性質と最大値の原理

定義4.1(球面平均と球平均)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$u\colon\Omega\rightarrow\mathbb{R}^N$ を連続関数とする。$x\in \Omega$ と $r\in (0,\infty)$ で、 $$ \overline{B(x,r)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq r\}\subset \Omega $$ を満たすものを対し、 $$ S(u,x,r)\colon=\frac{1}{\lvert\partial B(x,r)\rvert}\int_{\partial B(x,r)}u(y)d\mu_{\partial B(x,r)}(y) $$ を $u$ の球面 $\partial B(x,r)$ における球面平均と言う。ただし $\mu_{\partial B(x,r)}$ は超曲面 $\partial B(x,r)=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert=r\}$ の面積測度(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定義16.8)であり、$\lvert \partial B(x,r)\rvert=\mu_{\partial B(x,r)}(\partial B(x,r))$ である。また、 $$ K(u,x,r)\colon=\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}u(y)dy $$ を $u$ の球 $B(x,r)$ における球平均と言う。

注意4.2

任意の $x\in \mathbb{R}^N$ と $r\in (0,\infty)$ に対し 測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質命題7.3より、 $$ \lvert B(x,r)\rvert=r^{N}\lvert B(0,1)\rvert $$ であり、 $$ K(u,x,r)=\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}u(y)dy=\frac{1}{\lvert B(0,1)\rvert}\int_{B(0,1)}u(x+ry)dy, $$ である。また超曲面間の $C^\infty$ 級同相写像 $\partial B(0,1)\ni y\mapsto x+ry\in \partial B(x,r)$ に対する変数変換公式(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分補題17.4)より、 $$ \lvert \partial B(x,r)\rvert=r^{N-1}\lvert \partial B(0,1)\rvert $$ であり、 $$ S(u,x,r)=\frac{1}{\lvert \partial B(x,r)\rvert}\int_{\partial B(x,r)}u(y)d\mu_{\partial B(x,r)}(y) =\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\int_{\partial B(0,1)}u(x+ry)d\mu_{\partial B(0,1)}(y) $$ である。そして極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)より、 $$ \lvert B(0,1)\rvert=\int_{0}^{1}\int_{\partial B(0,1)}r^{N-1}d\mu_{\partial B(0,1)}(y)dr=\frac{1}{N}\lvert \partial B(0,1)\rvert $$ である。

命題4.3(球面平均と球平均の基本性質)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$u\colon \Omega\rightarrow \mathbb{C}$ を連続関数とし、$x\in \Omega$ と $r\in (0,\infty)$ を $\overline{B(x,R)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq R\}\subset \Omega$ を満たすものとする。このとき、

  • $(1)$ $(0,R]\ni r\mapsto S(u,x,r)\in \mathbb{C}$, $(0,R]\ni r\mapsto K(u,x,r)\in \mathbb{C}$ は連続関数であり、

$$ \lim_{r\rightarrow+0}S(u,x,r)=u(x),\quad \lim_{r\rightarrow+0}K(u,x,r)=u(x) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ 任意の $r_0\in (0,R]$ に対し、

$$ K(u,x,r_0)=\frac{N}{r_0^N}\int_{0}^{r_0}r^{N-1}S(u,x,r)dr $$ が成り立つ。また、 $$ \frac{d}{dr}K(u,x,r)=\frac{N}{r}(S(u,x,r)-K(u,x,r))\quad(\forall r\in (0,R]) $$ が成り立つ。

  • $(3)$ $u\in C^1(\Omega)$ ならば、任意の $r\in (0,R]$ に対し、

$$ \frac{d}{dr}S(u,x,r)=\frac{1}{\lvert \partial B(x,r)\rvert}\int_{\partial B(x,r)}\nabla u(y)\cdot\frac{y-x}{r}d\mu_{\partial B(x,r)}(y) $$ が成り立つ。

  • $(4)$ $u\in C^2(\Omega)$ ならば、

$$ \frac{d}{dr}S(u,x,r)=\frac{r}{N}K(\Delta u,x,r)\quad(\forall r\in (0,R]) $$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ 

$$ K(u,x,r)=\frac{1}{\lvert B(0,1)\rvert}\int_{B(0,1)}u(x+ry)dy, $$ $$ S(u,x,r)=\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\int_{\partial B(0,1)}u(x+ry)d\mu_{\partial B(0,1)}(y) $$ であることとLebesgue優収束定理による。

  • $(2)$ 極座標変換と注意4.2より、

$$ \begin{aligned} K(u,x,r_0)&=\frac{1}{\lvert B(x,r_0)\rvert}\int_{0}^{r_0}\int_{\partial B(0,1)}r^{N-1}u(x+ry)d\mu_{\partial B(0,1)}(y)dr\\ &=\frac{N}{r_0^N}\int_{0}^{r_0}\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\int_{\partial B(0,1)}u(x+ry)d\mu_{\partial B(0,1)}(y)dr\\ &=\frac{N}{r_0^N}\int_{0}^{r_0}r^{N-1}S(u,x,r)dr \end{aligned} $$ である。右辺の被積分関数 $(0,R]\ni r\mapsto r^{N-1}S(u,x,r)\in \mathbb{C}$ は $(1)$ より連続なので、 $$ \begin{aligned} \frac{d}{dr}K(u,x,r_0)&=\frac{N}{r_0^N}(r_0^{N-1}S(u,x,r_0))-\frac{N^2}{r_0^{N+1}}\int_{0}^{r_0}r^{N-1}S(u,x,r)dr\\ &=\frac{N}{r_0}(S(u,x,r_0)-K(u,x,r_0)) \end{aligned} $$ となる。

  • $(3)$ 注意4.2とLebesgue優収束定理より、

$$ \frac{d}{dr}S(u,x,r)=\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\int_{\partial B(0,1)}(\nabla u(x+ry)\cdot y)d\mu_{\partial B(0,1)}(y) $$ であり、$C^\infty$ 級同相写像 $\partial B(x,r)\ni y\mapsto \frac{y-x}{r}\in\partial B(0,1)$ に関する変数変換公式(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分補題17.4)より、 $$ \frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\int_{\partial B(0,1)}(\nabla u(x+ry)\cdot y)d\mu_{\partial B(0,1)}(y) =\frac{1}{\lvert \partial B(x,r)\rvert}\int_{\partial B(x,r)}\nabla u(y)\cdot \frac{y-x}{r}d\mu_{\partial B(x,r)}(y) $$ であるから成り立つ。

  • $(4)$ $\partial B(x,r)\ni y\mapsto \frac{y-x}{r}\in \mathbb{R}^N$ は $B(x,r)$ の境界上の外向き単位法線ベクトル場(ベクトル解析5:多様体の向き定義22.1)であるから、Gaussの発散定理(定理2.3の $(1)$ )と $(3)$、および注意4.2より、

$$ \begin{aligned} K(\Delta u,x,r)&=\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}\Delta u(y)dy=\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{\partial B(x,r)}\nabla u(y)\cdot \frac{y-x}{r}d\mu_{\partial B(0,1)}(y)\\ &=\frac{\lvert \partial B(x,r)\rvert}{\lvert B(x,r)\rvert}\frac{d}{dr}S(u,x,r) =\frac{N}{r}\frac{d}{dr}S(u,x,r) \end{aligned} $$ となる。

定義4.4(調和関数)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。$u\in C^\infty(\Omega)$ で $\Delta u=0$ を満たすものを $\Omega$ 上の調和関数と言う。

注意4.5(正則関数の実部と虚部は調和関数)

$\Omega\subset \mathbb{C}$ を開集合、$u\colon \Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を正則関数とする。$u$ の実部と虚部 $u_1,u_2\colon \Omega\rightarrow\mathbb{R}$ は、$\mathbb{C}=\mathbb{R}^2$ とみなしたとき、それぞれ調和関数である。実際、Cauchy-Riemannの関係式(複素解析の初歩定理1.6)より、 $$ \partial_1u_1=\partial_2u_2,\quad \partial_1 u_2=-\partial_2u_1 $$ であり、正則関数は何回でも複素微分可能である(複素解析の初歩定理6.1)から $u\in C^\infty(\Omega)$ で、 $$ \Delta u_1=\partial_1^2u_1+\partial_2^2u_1=\partial_1\partial_2u_2-\partial_2\partial_1u_2=0, $$ $$ \Delta u_2=\partial_1^2u_2+\partial_2^2u_2=-\partial_1\partial_2u_1+\partial_2\partial_1u_1=0 $$ である。

定理4.6(調和関数の球面平均、球平均による特徴付け)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$u\colon \Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を連続関数とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\overline{B(x,r)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq r\}\subset \Omega$ なる任意の $x\in \Omega$ と $r\in (0,\infty)$ に対し $u(x)=S(u,x,r)$ が成り立つ。
  • $(2)$ $\overline{B(x,r)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq r\}\subset \Omega$ なる任意の $x\in \Omega$ と $r\in (0,\infty)$ に対し $u(x)=K(u,x,r)$ が成り立つ。
  • $(3)$ $u$ は $\Omega$ 上の調和関数である。
  • $(4)$ $\Omega$ 上の超関数($D'(\Omega)$ の元)として $\Delta u=0$ が成り立つ。
Proof.

$(1)\Leftrightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つならば、任意の $\overline{B(x,r_0)}\subset \Omega$ に対し、命題4.3の $(2)$ の上の式より、 $$ K(u,x,r_0)=\frac{N}{r_0^N}\int_{0}^{r_0}r^{N-1}S(u,x,r)dr=\frac{N}{r_0^N}\int_{0}^{r_0}r^{N-1}u(x)dr=u(x) $$ であるから $(2)$ が成り立つ。逆に $(2)$ が成り立つならば、任意の $\overline{B(x,r)}\subset \Omega$ に対し、命題4.3の $(2)$ の下の式より、 $$ 0=\frac{d}{dr}K(u,x,r)=\frac{N}{r}(S(u,x,r)-K(u,x,r))=\frac{N}{r}(S(u,x,r)-u(x)) $$ であるから $(1)$ が成り立つ。
$(1)\Rightarrow(3)$ を示す。$(1)$ が成り立つとする。 $$ \overline{B(x_0,r_0+\epsilon_0)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq r_0+\epsilon_0\}\subset \Omega\quad\quad(*) $$ なる任意の $x_0\in\Omega$ と $r_0,\epsilon_0\in (0,\infty)$ を取り固定する。$(3)$ が成り立つことを示すには $B(x_0,r_0)$ 上で $u$ が $C^\infty$ 級であることと $\Delta u(x_0)=0$ が成り立つことを示せば十分である。Urysohnの補題より連続関数 $v\colon \mathbb{R}^N\rightarrow \mathbb{C}$ で、 $$ v(x)=u(x)\quad(\forall x\in \overline{B(x_0,r_0+\epsilon_0)})\quad\quad(**) $$ を満たすものが取れる。$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子(合成積とFourier変換定義26.1)とし、 $$ \rho(r)\colon=\psi_{\epsilon_0}(r\omega)\quad(\forall r\in (0,\infty),\omega\in \partial B(0,1)) $$ と表すこととすると[7]、任意の $x\in B(x_0,r_0)$ に対し、極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)より、 $$ \begin{aligned} (2\pi\epsilon)^{\frac{N}{2}}(\psi_{\epsilon_0}*v)(x)&=\int_{\mathbb{R}^N}\psi_{\epsilon_0}(y)v(x-y)dy =\int_{\lvert y\rvert\leq\epsilon_0}\psi_{\epsilon_0}(y)u(x-y)dy\\ &=\int_{0}^{\epsilon_0}r^{N-1}\rho(r)\int_{\partial B(0,1)}u(x-r\omega)d\mu_{\partial B(0,1)}(\omega)dr\\ &=\int_{0}^{\epsilon_0}r^{N-1}\rho(r)u(x)\lvert \partial B(0,1)\rvert dr\\ &=\int_{0}^{\epsilon_0}r^{N-1}u(x)\int_{\partial B(0,1)}\psi_{\epsilon_0}(r\omega)d\mu_{\partial B(0,1)}(\omega)dr\\ &=\int_{\lvert y\rvert\leq\epsilon_0}\psi_{\epsilon_0}(y)u(x)dy=(2\pi)^{\frac{N}{2}}u(x) \end{aligned} $$ となる。ここで $4$ 番目の等号において $(1)$ が成り立つことを用いた。よって、 $$ u(x)=(\psi_{\epsilon_0}*v)(x)\quad(\forall x\in B(x_0,r_0)) $$ であり、$\psi_{\epsilon_0}*v\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ である(合成積とFourier変換命題23.3)から、$u$ は $B(x_0,r_0)$ 上で $C^\infty$ 級である。$(1)$ が成り立つことと命題4.3の $(4)$ より、 $$ 0=\frac{d}{dr}S(u,x_0,r)=\frac{r}{N}K(\Delta u,x_0,r)\quad(\forall r\in (0,r_0)) $$ であるから、命題4.3の $(1)$ より、 $$ \Delta u(x_0)=\lim_{r\rightarrow+0}K(\Delta u,x_0,r)=0. $$ ゆえに $(3)$ が成り立つ。
$(3)\Rightarrow(4)$ は自明である。
$(4)\Rightarrow(1)$ を示す。$(4)$ が成り立つとする。$(*)$ を満たす任意の $x_0\in \Omega$ と $r_0,\epsilon_0\in (0,\infty)$ を取り、 $$ u(x_0)=S(u,x_0,r_0) $$ が成り立つことを示せばよい。$(**)$ を満たす連続関数 $v\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を取り、$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子とすると、合成積とFourier変換命題23.5 より、 $$ {\rm supp}(\psi_{\epsilon}*\varphi)\subset {\rm supp}(\psi_{\epsilon})+{\rm supp}(\varphi)\subset B(x_0,r_0+\epsilon_0)\quad(\forall \epsilon\in (0,\epsilon_0],\forall \varphi\in D(B(x_0,r_0))) $$ であるから、任意の $\epsilon\in (0,\epsilon_0]$, 任意の $\varphi\in D(B(x_0,r_0))$ に対し、$v, \psi_{\epsilon}*\varphi$ を超関数とみなして、 $$ \begin{aligned} &\Delta(\psi_{\epsilon}*v)(\varphi)=(\psi_{\epsilon}*v)(\Delta \varphi)=v(\psi_{\epsilon}*\Delta \varphi)=v(\Delta(\psi_{\epsilon}*\varphi))\\ &=u(\Delta (\psi_{\epsilon}*\varphi))=\Delta u(\psi_{\epsilon}*\varphi)=0 \end{aligned} $$ となる。ただし $2$ 番目と $3$ 番目の等号でそれぞれ合成積とFourier変換命題23.8命題23.3を用いた。よって $\psi_{\epsilon}*v\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ は、 $$ \Delta(\psi_{\epsilon}*v)(x)=0\quad(\forall \epsilon\in (0,\epsilon_0],\forall x\in B(x_0,r_0)) $$ を満たすので、命題4.3の $(4)$ より、 $$ \frac{d}{dr}S((\psi_{\epsilon}*v),x_0,r)=\frac{r}{N}K(\Delta(\psi_{\epsilon}*v),x_0,r)=0\quad(\forall \epsilon\in (0,\epsilon_0],\forall r\in (0,r_0)) $$ となる。したがって命題4.3の $(1)$ と平均値の定理より、 $$ (\psi_{\epsilon}*v)(x_0)=S((\psi_{\epsilon}*v),x_0,r_0)\quad(\forall \epsilon\in (0,\epsilon_0]) $$ が成り立つ。そして $v\colon \mathbb{R}^N\rightarrow \mathbb{C}$ は連続関数であるから、合成積とFourier変換命題26.2の $(1)$ より、$\partial B(x_0,r_0)$ 上で一様収束で、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}(\psi_{\epsilon}*v)=v $$ が成り立つ。よって、 $$ u(x_0)=v(x_0)=\lim_{\epsilon\rightarrow+0}(\psi_{\epsilon}*v)(x_0)=\lim_{\epsilon\rightarrow+0}S((\psi_{\epsilon}*v),x_0,r_0)=S(v,x_0,r_0)=S(u,x_0,r_0) $$ を得る。

定理4.7(強最大値の原理)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を連結開集合、$u\colon \Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を調和関数とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $u$ は定数関数である。
  • $(2)$ 実数値調和関数 ${\rm Re}(u)\colon \Omega\ni x\mapsto {\rm Re}(u(x))\in\mathbb{R}$ と ${\rm Im}(u)\colon \Omega\ni x\mapsto {\rm Im}(u(x))\in \mathbb{R}$ はそれぞれ $\Omega$ 上で最大値か最小値を取る。
  • $(3)$ $\lvert u\rvert\colon \Omega\ni x\mapsto \lvert u(x)\rvert \in [0,\infty)$ が $\Omega$ 上で最大値を取る。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$, $(1)\Rightarrow(3)$ は自明である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。そのためには実数値調和関数 $v\colon\Omega\rightarrow \mathbb{R}$ が $\Omega$ 上で最大値を取ると仮定して $v$ が定数関数であることを示せば十分である。 $$ M\colon=\underset{x\in \Omega}{\rm max} v(x)\in \mathbb{R} $$ とおき、 $$ \Omega_0\colon=\{x\in \Omega: v(x)=M\} $$ とおくと、$\Omega_0$ は $\Omega$ の空でない閉集合である。任意の $x_0\in \Omega_0$ を取り、$\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-x_0\rvert\leq r\}\subset \Omega$  なる正実数 $r$ を取る。このとき定理4.6の $(2)$ より、 $$ M=v(x_0)=\frac{1}{\lvert B(x_0,r)\rvert}\int_{B(x_0,r)}v(x)dx\leq \frac{1}{\lvert B(x_0,r)\rvert}\int_{B(x_0,r)}Mdx=M $$ であるから、非負値連続関数 $B(x_0,r)\ni x\mapsto M-v(x)\in [0,\infty)$ は、 $$ \int_{B(x_0,r)}M-v(x)dx=0 $$ を満たす。よって $M-v(x)=0$ $(\forall x\in B(x_0,r))$ であるから $B(x_0,r)\subset \Omega_0$ である。ゆえに $\Omega_0$ は $\Omega$ の開集合でもあるから、$\Omega$ の連結性より $\Omega=\Omega_0$ である。よって $v$ は定数関数である。
$(3)\Rightarrow(1)$ を示す。$(3)$ が成り立つとする。 $$ M\colon =\underset{x\in \Omega}{\rm max}{\lvert u(x)\rvert}\in [0,\infty) $$ とおき、 $$ \Omega_0\colon=\{x\in \Omega:\lvert u(x)\rvert=M\} $$ とおくと、$\Omega_0$ は $\Omega$ の空でない閉集合である。任意の $x_0\in \Omega_0$ を取り、$\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-x_0\rvert\leq r\}\subset \Omega$  なる正実数 $r$ を取る。このとき定理4.6の $(2)$ より、 $$ M=\lvert u(x_0)\rvert=\frac{1}{\lvert B(x_0,r)\rvert}\left\lvert\int_{B(x_0,r)}u(x)dx\right\rvert\leq \frac{1}{\lvert B(x_0,r)\rvert}\int_{B(x_0,r)}\lvert u(x)\rvert dx\leq M $$ であるから、非負値連続関数 $B(x_0,r)\ni x\mapsto M-\lvert u(x)\rvert\in [0,\infty)$ は、 $$ \int_{B(x_0,r)}M-\lvert u(x)\rvert dx=0 $$ を満たす。よって $M-\lvert u(x)\rvert=0$ $(\forall x\in B(x_0,r))$ であるから、$B(x_0,r)\subset \Omega_0$ である。ゆえに $\Omega_0$ は $\Omega$ の開集合でもあるから、$\Omega$ の連結性より $\Omega=\Omega_0$ である。よって $\lvert u\rvert$ は定数関数である。

定理4.8(弱最大値の原理)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を有界開集合とし、$u\colon \overline{\Omega}\rightarrow\mathbb{C}$ を連続関数で $\Omega$ 上で調和関数であるものとする。このとき、 $$ \underset{x\in \overline{\Omega}}{\rm max}\lvert u(x)\rvert=\underset{x\in \partial\Omega}{\rm max}\lvert u(x)\rvert\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

Proof.

$M\colon ={\rm max}_{x\in \overline{\Omega}}\lvert u(x)\rvert$ とおく。もし $\lvert u(x)\rvert=M$ を満たす $x\in \Omega$ が存在しないならば、$\lvert u(x)\rvert=M$ を満たす $x\in \partial\Omega$ が存在するので $(*)$ が成り立つ。よって $\lvert u(x_0)\rvert=M$ を満たす $x_0\in \Omega$ が存在するとして $(*)$ が成り立つことを示せばよい。$x_0$ を含む $\Omega$ の連結成分を $U$ とおく。$\Omega$ の任意の点は連結な開近傍を持つので $U$ は開集合であり、$u$ は $U$ 上で調和関数であるから、強最大値の原理(定理4.7)より、$\lvert u(x)\rvert=M$ $(\forall x\in U)$ が成り立つ。よって $U$ の $\mathbb{R}^N$ における閉包を $\overline{U}\subset \overline{\Omega}$ とおくと、$u\colon\overline{\Omega}\rightarrow\mathbb{C}$ の連続性より $\lvert u(x)\rvert=M$ $(\forall x\in \overline{U})$ が成り立つ。これよりもし $\overline{U}\cap \partial\Omega\neq\emptyset$ ならば $(*)$ は成り立つ。そこで今、$\overline{U}\cap \partial\Omega=\emptyset$ であると仮定して矛盾を導く。このとき $\overline{U}\subset \Omega$ であり、$\overline{U}$ は $x_0$ を含む $\Omega$ の連結集合であるから、$U$ が $\Omega$ の連結成分であることから $U=\overline{U}$ である。$U\subset \Omega$ で $U=\overline{U}$ はコンパクト、$\Omega$ は開集合であるから、超関数の定義と基本操作命題2.2の $(4)$ とSobolev空間の基本事項注意33.4より、 $$ 0<d(U,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)=d(U,\partial\Omega)=\inf\{\lvert x-y\rvert :x\in U,y\in \partial\Omega\}\quad\quad(**) $$ である。$U\times \partial\Omega\ni (x,y)\mapsto \lvert x-y\rvert\in [0,\infty)$ はコンパクト空間上の連続関数であるから $(**)$ の右辺の $\inf$ は実際は ${\rm min}$ であるので、 $$ \lvert a-b\rvert=d(U,\partial\Omega)>0 $$ を満たす $a\in U$, $b\in \partial\Omega$ が取れる。 $$ L\colon=\{a+t(b-a):t\in [0,1)\} $$ とおくと、任意の $x\in L$ に対し $\lvert x-a\rvert =t\lvert b-a\rvert<\lvert b-a\rvert=d(U,\partial\Omega)$ であるので、$x\in \Omega$ である。よって $L\subset \Omega$ であり、$L$ は $a$ を含む $\Omega$ の連結集合で、$U$ は $a$ を含む $\Omega$ の連結成分であるので、$L\subset U$ である。これより、 $$ b\in \overline{L}\subset \overline{U}=U\subset \Omega $$ となるが、これは $b\in \partial\Omega$ であることに矛盾する。よって $\overline{U}\cap \partial\Omega\neq\emptyset$ であるから $(*)$ が成り立つ。

命題4.9(調和関数に関するLiouvilleの定理)

$\mathbb{R}^N$ 上で定義された有界な調和関数は定数関数である。

Proof.

$u\colon\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を有界な調和関数とする。$x_1\neq x_2$ なる任意の $x_1,x_2\in \mathbb{R}^N$ を取り、$u(x_1)=u(x_2)$ が成り立つことを示せばよい。 $$ M\colon=\sup_{x\in \mathbb{R}^N}\lvert u(x)\rvert<\infty,\quad d\colon=\lvert x_1-x_2\rvert>0 $$ とおく。$r>d$ なる任意の正実数 $r$ に対し、定理4.6の $(2)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lvert u(x_1)-u(x_2)\rvert=\frac{1}{\lvert B(0,r)\rvert}\left\lvert\int_{B(x_1,r)}u(x)dx-\int_{B(x_2,r)}u(x)dx\right\rvert\\ &\leq \frac{1}{r^N\lvert B(0,1)\rvert}\left(\int_{B(x_1,r)\backslash B(x_2,r)}\lvert u(x)\rvert dx+\int_{B(x_2,r)\backslash B(x_1,r)}\lvert u(x)\rvert dx\right)\\ &\leq \frac{2M}{r^N\lvert B(0,1)\rvert}(r^N-(r-d)^N)\lvert B(0,1)\rvert=2M\left(1-\left(1-\frac{d}{r}\right)^N\right) \end{aligned} $$ であり、$r\rightarrow\infty$ とすれば右辺は $0$ に収束する。よって $u(x_1)=u(x_2)$ が成り立つ。

5. Laplace-Poisson方程式の境界値問題の解の一意存在と正則性、Green関数による表現公式

定義5.1(Laplace方程式、Poisson方程式)

$\Delta u=0$ を満たす関数 $u$ を求める微分方程式をLaplace方程式と言う。また、与えられた関数 $\rho$ に対し $\Delta u=\rho$ を満たす関数 $u$ を求める微分方程式をPoisson方程式と言う。

定義5.2($C^k(\overline{\Omega})$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$k\in \mathbb{N}$ とする。$C^k(\overline{\Omega})$ を $\overline{\Omega}$ を含むある開集合上で定義された $C^k$ 級関数の $\overline{\Omega}$ 上への制限で表される関数全体とする。

定理5.3(Laplace方程式の境界値問題の解の一意存在と解の正則性)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合、$m\in \mathbb{N}$ を $m>\frac{N}{2}$ を満たすものとし、$f\colon\partial\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を $H^m(\mathbb{R}^N)\subset C_0(\mathbb{R}^N)$ [8]の元の $\partial\Omega$ 上への制限であるとする。また $\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項定理37.1)とする。このとき $v\in H^2(\Omega)$ で、 $$ \Delta v=0,\quad \gamma(v)=f $$ を満たすものが唯一つ存在する。そして $v\in H^m(\Omega)$ が成り立つ。

Proof.

$f\colon\partial\Omega\rightarrow \mathbb{C}$ の $H^m(\mathbb{R}^N)$ の元への拡張をそのまま $f$ で表す。Sobolev空間の基本事項定理32.2より $H^m(\mathbb{R}^N)=\overline{D(\mathbb{R}^N)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}}$ であるから $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f-f_n\rVert_{2,m}=0\quad\quad(*) $$ を満たすものが取れる。$m>\frac{N}{2}$ であるからSobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.3)より $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $f$ に一様収束する。定理3.14の $(2),(5)$ より、 $$ \Delta\colon H^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega)=\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)=0\}\rightarrow L^2(\Omega)\quad\quad(**) $$ は全単射であるから、各 $n\in \mathbb{N}$ について $\Delta u_n=\Delta f_n|_{\Omega}$ を満たす $u_n\in H^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega)$ が取れる。そして、 $$ \Delta^ku_n=\Delta^kf_n|_{\Omega}\in D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}\subset L^2(\Omega)\quad(\forall n,k\in\mathbb{N}) $$ であるから、楕円型正則性(定理3.14の $(4)$)とSobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.4)より、 $$ u_n\in \bigcap_{k\in \mathbb{N}}H^k(\Omega)\subset \bigcap_{k\in \mathbb{N}}C^k(\overline{\Omega})\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ が成り立つ。そこで、 $$ v_n\colon =f_n-u_n\in \bigcap_{k\in \mathbb{N}}C^k(\overline{\Omega})\subset C^\infty(\Omega)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ とおくと、 $$ \Delta v_n=\Delta f_n-\Delta u_n=0,\quad v_n|_{\partial\Omega}=f_n|_{\partial\Omega}-u_n|_{\partial\Omega}=f_n|_{\partial\Omega}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ であるから、弱最大値の原理(定理4.8)より、 $$ \underset{x\in \overline{\Omega}}{\rm max}\lvert v_n(x)-v_k(x)\rvert=\underset{x\in \partial\Omega}{\rm max}\lvert v_n(x)-v_k(x)\rvert=\underset{x\in \partial\Omega}{\rm max}\lvert f_n(x)-f_k(x)\rvert\quad(\forall n,k\in \mathbb{N}) $$ であり、$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $f$ に一様収束するので、$(v_n)_{n\in \mathbb{N}}$ もある連続関数 $v\colon \overline{\Omega}\rightarrow\mathbb{C}$ に一様収束する。よって、 $$ v(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}v_n(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(x)=f(x)\quad(\forall x\in \partial\Omega) $$ が成り立ち、$\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq r\}\subset \Omega$ なる任意の $x\in \Omega$ と $r\in (0,\infty)$ に対し、定理4.6の $(1)$ より、 $$ S(v,x,r)=\lim_{n\rightarrow\infty}S(v_n,x,r)=\lim_{n\rightarrow\infty}v_n(x)=v(x) $$ となるので、再び定理4.6より $v$ は $\Omega$ 上で $\Delta v=0$ を満たす。今、$v\in H^m(\Omega)$ が成り立つことを示す。 $$ u_n-u_k\in H^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega),\quad \Delta (u_n-u_k)=\Delta(f_n-f_k)|_{\Omega}\quad(\forall n,k\in \mathbb{N}) $$ であるから、定理3.14の $(4)$ より、$\Omega, m$ のみによる正実数 $C,C'$ が存在して、 $$ \lVert u_n-u_k\rVert_{2,m}\leq C(\lVert \Delta(f_n-f_k)\rVert_{2,m-2}+\lVert u_n-u_k\rVert_2) \leq C'(\lVert f_n-f_k\rVert_{2,m}+\lVert u_n-u_k\rVert_{\infty})\quad(\forall n,k\in \mathbb{N})\quad\quad(***) $$ が成り立つ。ここで $u_n=f_n-v_n$ $(\forall n\in\mathbb{N})$ であり、$(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$, $(v_n)_{n\in\mathbb{N}}$ はそれぞれ一様収束するので $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ も一様収束する。よって $(*),(***)$ より $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $H^m(\Omega)$ において収束する。そして、 $$ \lVert v_n-v_k\rVert_{2,m}\leq \lVert u_n-u_k\rVert_{2,m}+\lVert f_n-f_k\rVert_{2,m}\quad(\forall n,k\in\mathbb{N}) $$ であるから $(v_n)_{n\in \mathbb{N}}$ も $H^m(\Omega)$ において収束する。ゆえに $v\in H^m(\Omega)$ である。
一意性を示す。$v_1,v_2\in H^2(\Omega)$ が、 $$ \Delta v_k=0,\quad \gamma(v_k)=f\quad(k=1,2) $$ を満たすとする。このとき、 $$ v_1-v_2\in \{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)=0\}=H^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega) $$ であり、$\Delta(v_1-v_2)=0$ であるから、$(**)$ の単射性より $v_1=v_2$ である。

定理5.4(Poisson方程式の境界値問題の解の一意存在と解の正則性)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合、$m\in \mathbb{N}$ を $m>\frac{N}{2}$ を満たすものとし、$f\colon\partial\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を $H^m(\mathbb{R}^N)\subset C_0(\mathbb{R}^N)$ の元の $\partial\Omega$ 上への制限であるとする。また $\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項定理37.1)とする。このとき任意の $m'\in \mathbb{Z}_+$, $\rho\in H^{m'}(\Omega)$ に対し、$v\in H^2(\Omega)$ で、 $$ \Delta v=\rho,\quad \gamma(v)=f $$ を満たすものが唯一つ存在する。そして $m' '\colon={\rm min}(m,m'+2)$ に対し $v\in H^{m' '}(\Omega)$ が成り立つ。

Proof.

定理5.3より $v_0\in H^m(\Omega)$ で、 $$ \Delta v_0=0,\quad \gamma(v_0)=f $$ を満たすものが取れる。そして定理3.14の $(2),(5)$ より、 $$ \Delta\colon H^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega)=\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)=0\}\rightarrow L^2(\Omega)\quad\quad(*) $$ は全単射であるから、$\rho\in H^{m'}(\Omega)$ に対し $\Delta v_1=\rho$ を満たす $\rho_1\in H^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega)$ が取れて、楕円型正則性(定理3.14の $(4)$)より $v_1\in H^{m'+2}(\Omega)$ である。よって $v\colon=v_0+v_1\in H^{m' '}(\Omega)$ とおけば、 $$ \Delta v=\Delta v_0+\Delta v_1=\Delta v_1=\rho,\quad \gamma(v)=\gamma(v_0)+\gamma(v_1)=\gamma(v_0)=f $$ である。これで存在が言えた。一意性を示す。今、$v,u\in H^2(\Omega)$ が、 $$ \Delta v=\Delta u=\rho,\quad \gamma(v)=\gamma(u)=f $$ を満たすとすると、 $$ \Delta(v-u)=0,\quad \gamma(v-u)=0 $$ であるから、$(*)$ の単射性より $v-u=0$ である。これで一意性が言えた。

定義5.4(ラプラシアンの基本解)

$N$ を $2$ 以上の自然数とし、$\lvert \partial B(0,1)\rvert$ を $N-1$ 次元単位球面の面積とする。$\mathbb{R}^N$ 上の関数 $G\colon\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}$ で次を満たすものをラプラシアンの基本解と言う。$N\geq3$ の場合、 $$ G(x)=\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\frac{\lvert x\rvert^{2-N}}{2-N}\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N\backslash \{0\}), $$ $N=2$ の場合、 $$ G(x)=\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\log(\lvert x\rvert)=\frac{1}{2\pi}\log(\lvert x\rvert)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N\backslash\{0\}). $$ 便宜上、ラプラシアンの基本解 $G$ に対し、$G(x)$ は $G(\lvert x\rvert)$ とも表す。

命題5.5(ラプラシアンの基本解の基本性質)

$\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解 $G\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}$ に対し次が成り立つ。

  • $(1)$ $G$ の勾配は、

$$ \nabla G(x)=\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\frac{x}{\lvert x\rvert^N}\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N\backslash \{0\}) $$ を満たし、$G$ のラプラシアンは、 $$ \Delta G(x)=0\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N\backslash \{0\}) $$ を満たす。

  • $(2)$ $G,\lvert \nabla G\rvert\in L^1_{\rm loc}(\mathbb{R}^N)$ であり、

$$ \int_{\lvert x\rvert\leq R}\lvert \nabla G(x)\rvert dx=R\quad(\forall R\in (0,\infty)) $$ が成り立つ。

Proof.

$$ \nabla G(x)=\frac{\partial G}{\partial r}(r)\frac{\partial}{\partial r}x=\frac{1}{\lvert\partial B(0,1)\rvert}\frac{1}{r^{N-1}}\frac{x}{r}=\frac{1}{\lvert\partial B(0,1)\rvert}\frac{x}{\lvert x\rvert^N}\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N\backslash \{0\}) $$ であり、ベクトル解析3:Euclid空間内の多様体の計量命題13.10より、 $$ \Delta G(x)=\frac{1}{r^{N-1}}\frac{\partial}{\partial r}\left(r^{N-1}\frac{\partial G}{\partial r}\right)(x) =\frac{1}{r^{N-1}}\frac{\partial}{\partial r}\left(r^{N-1}\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\frac{1}{r^{N-1}}\right)(x)=0 $$ である。

  • $(2)$ $G,\lvert \nabla G\rvert$ は $\mathbb{R}^N\backslash \{0\}$ 上で連続であるから、$G,\lvert\nabla G\rvert$ が $\mathbb{R}^N$ 上で局所可積分であることを示すには、$0\in \mathbb{R}^N$ を中心とする任意の球 $\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq R\}$ 上で $G,\lvert \nabla G\rvert$ が可積分であることを示せば十分である。極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)より、

$$ \int_{\lvert x\rvert\leq R}\lvert G(x)\rvert dx=\lvert \partial B(0,1)\rvert \int_{0}^{R}r^{N-1}\lvert G(r)\rvert dr =\begin{cases}\frac{1}{N-2}\int_{0}^{R}rdr<\infty&\quad(N\geq 3)\\ \int_{0}^{R}r\lvert \log(r)\rvert dr<\infty &(N=2)\end{cases} $$ であり、 $$ \int_{\lvert x\rvert\leq R}\lvert \nabla G(x)\rvert dx=\lvert \partial B(0,1)\rvert \int_{0}^{R}r^{N-1}\lvert \nabla G(r)\rvert dr =\int_{0}^{R}r^{N-1}\frac{1}{r^{N-1}}dr=R<\infty $$ である。

定理5.6(Greenの表現公式)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合、$G$ を $\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解、$u\in C^2(\overline{\Omega})$ とする。このとき任意の $x\in \Omega$ に対し、 $$ u(x)=\int_{\Omega}\Delta u(y)G(x-y)dy+\int_{\partial\Omega}\left(u(y)\frac{\partial G}{\partial \nu_y}(x-y)-\frac{\partial u}{\partial \nu}(y) G(x-y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y) $$ が成り立つ。ただし $\mu_{\partial\Omega}$ は $\partial\Omega$ 上の面積測度(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定義16.8)、$\frac{\partial}{\partial\nu}$ は外向き法線微分(定義2.2) である。

Proof.

任意の $x\in \Omega$ を取り固定する。十分小さい $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り、 $$ \overline{B(x,\epsilon)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq \epsilon\}\subset \Omega $$ となるようにする。このとき $\Omega\backslash \overline{B(x,\epsilon)}\subset \mathbb{R}^N$ は滑らかな境界 $\partial\Omega\cup \partial B(x,\epsilon)$ を持つ開集合であり、その境界上の外向き単位法線ベクトル場(ベクトル解析5:多様体の向き定義22.1) $\widetilde{\nu}\colon \partial\Omega\cup \partial B(x,\epsilon)\rightarrow\mathbb{R}^N$ は、$\Omega$ の境界上の外向き単位法線ベクトル場 $\nu\colon \partial\Omega\rightarrow\mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \widetilde{\nu}(y)=\nu(y)\quad(\forall y\in \partial\Omega),\quad \widetilde{\nu}(y)=-\frac{y-x}{\epsilon}\quad(\forall y\in \partial B(x,\epsilon)) $$ である。命題5.5の $(1)$ より任意の $y\in \partial B(x,\epsilon)$ に対し、 $$ \begin{aligned} \frac{\partial G}{\partial \widetilde{\nu}_y}(x-y)&=-\frac{y-x}{\epsilon}\cdot \nabla_yG(x-y)=-\frac{1}{\lvert\partial B(0,1)\rvert}\frac{y-x}{\epsilon}\cdot \frac{y-x}{\epsilon^N}\\ &=-\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\frac{1}{\epsilon^{N-1}} =\frac{1}{\lvert \partial B(x,\epsilon)\rvert} \end{aligned} $$ であることと、$\Omega\backslash \overline{B(x,\epsilon)}\ni y\mapsto G(x-y)\in \mathbb{R}$ は調和関数であることに注意して、Gaussの発散定理(定理2.3の $(4)$ )を用いると、 $$ \begin{aligned} \int_{\Omega\backslash \overline{B(x,\epsilon)}}\Delta u(y)G(x-y)dy&=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(y)G(x-y)-u(y)\frac{\partial G}{\partial\nu_y}(x-y)\right)d\mu_{\partial \Omega}(y)\\ &-\int_{\partial B(x,\epsilon)}\left(\nabla u(y)\cdot \frac{y-x}{\epsilon}\right)G(x-y)d\mu_{\partial B(0,1)}(y)\\ &+\frac{1}{\lvert \partial B(x,\epsilon\rvert}\int_{\partial B(x,\epsilon)}u(y)d\mu_{\partial B(x,\epsilon)}(y)\quad\quad(*) \end{aligned} $$ となる。ここで命題5.5の $(2)$ より $G\in L^1_{\rm loc}(\mathbb{R}^N)$ であるから、Lebesgue優収束定理より、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}\int_{\Omega\backslash \overline{B(x,\epsilon)}}\Delta u(y)G(x-y)dy=\int_{\Omega}\Delta u(y)G(x-y)dy\quad\quad(**) $$ が成り立ち、命題4.3の $(1)$ より、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}\frac{1}{\lvert \partial B(x,\epsilon)\rvert}\int_{\partial B(x,\epsilon)}u(y)d\mu_{\partial B(x,\epsilon)}(y)=u(x)\quad\quad(***) $$ が成り立つ。そして、 $$ \begin{aligned} &\left\lvert \int_{\partial B(x,\epsilon)}\left(\nabla u(y)\cdot \frac{y-x}{\epsilon}\right)G(x-y)d\mu_{\partial B(x,\epsilon)}(y)\right\rvert\\ &\leq \underset{x\in \overline{\Omega}}{\rm max}\lvert \nabla u(x)\rvert \begin{cases}\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\int_{\partial B(x,\epsilon)}\frac{\epsilon^{2-N}}{N-2}d\mu_{\partial B(x,\epsilon)}(y)\quad&(N\geq 3)\\ \frac{1}{2\pi}\int_{\partial B(x,\epsilon)}\lvert \log(\epsilon)\rvert d\mu_{\partial B(x,\epsilon)}(y)&(N=2)\end{cases}\\ &=\underset{x\in\overline{\Omega}}{\rm max}\lvert \nabla u(x)\rvert\begin{cases}\frac{\epsilon}{N-2}\quad&(N\geq 3)\\\epsilon\lvert \log(\epsilon)\rvert&(N=2)\end{cases}\\ &\rightarrow0\quad(\epsilon\rightarrow+0)\quad\quad(****) \end{aligned} $$ である。よって $(*)$ の両辺について $\epsilon\rightarrow+0$ とすれば、$(**),(***),(****)$ より、 $$ \int_{\Omega}\Delta u(y)G(x-y)dy=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(y)G(x-y)-u(y)\frac{\partial G}{\partial \nu_y}(x-y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y)+u(x) $$ となる。これで求める等式が得られた。

命題5.7(滑らかな境界を持つ有界開集合上のラプラシアンのGreen関数の一意存在)

$\Omega\subset \mathbb{R^N}$ を滑らかな境界を持つ有界開集合、$\gamma\colon H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(Sobolev空間の基本事項定理37.1)、$G$ を $\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解とする。このとき任意の $x\in \Omega$ に対し $h_x\in H^2(\Omega)$ で、 $$ \Delta h_x=0,\quad \gamma(h_x)=G(x-y)\quad(\forall y\in \partial\Omega)\quad\quad(1) $$ を満たすものが唯一つ存在する。そして、 $$ h_x\in \bigcap_{m\in \mathbb{N}}H^m(\Omega)\subset \bigcap_{m\in \mathbb{N}}C^m(\overline{\Omega})\quad\quad(2) $$ が成り立ち、任意の $u\in C^2(\overline{\Omega})$ に対し、 $$ \int_{\Omega}\Delta u(y)h_x(y)dy=\int_{\partial \Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(y)G(x-y)-u(y)\frac{\partial h_x}{\partial\nu}(y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y)\quad\quad(3) $$ が成り立つ。ただし $\frac{\partial}{\partial\nu}$ は外向き法線微分(定義2.2)である。

Proof.

任意の $x\in \Omega$ に対し、$\partial\Omega\ni y\mapsto G(x-y)\in \mathbb{R}$ はUrysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $D(\mathbb{R}^N)\subset \bigcap_{m\in \mathbb{N}}H^m(\mathbb{R}^N)$ の元に拡張できるので、定理5.3より、$(1)$ を満たす $h_x\in H^2(\Omega)$ が唯一つ存在し、$(2)$ が成り立つ。任意の $u\in C^2(\overline{\Omega})$ に対し、Gaussの発散定理(定理2.3の $(4)$ )より、 $$ \begin{aligned} \int_{\Omega}\Delta u(y)h_x(y)dy&=\int_{\Omega}(\Delta u(y)h_x(y)-u(y)\Delta h_x(y))dy =\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(y)h_x(y)-u(y)\frac{\partial h_x}{\partial \nu}(y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y)\\ &=\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial \nu}(y)G(x-y)-u(y)\frac{\partial h_x}{\partial \nu}(y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y) \end{aligned} $$ であるから、$(3)$ が成り立つ。

定義5.8(滑らかな境界を持つ有界開集合上のラプラシアンのGreen関数)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合、$G$ を $\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解とする。任意の $x\in \Omega$ に対し命題5.7の $(1)$ によって一意的に定まる $h_x\in \bigcap_{m\in \mathbb{N}}H^m(\Omega)\subset \bigcap_{m\in \mathbb{N}}C^m(\overline{\Omega})$ を考え、 $$ G_{\Omega}(x,y)\colon =G(x-y)-h_x(y)\quad(\forall y\in \overline{\Omega}) $$ とおく。$G_{\Omega}(x,y)$ を $\Omega$ 上のラプラシアンのGreen関数と言う。

定理5.9(Poisson方程式の境界値問題の一意解のGreen関数による表現)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合、$m\in \mathbb{N}$ を $m>\frac{N}{2}+2$ を満たすものとし、$f\colon \partial\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を $H^m(\mathbb{R}^N)$ の元の $\partial\Omega$ 上への制限、また $\rho\in H^{m-2}(\Omega)$ とする。このとき定理5.4におけるPoisson方程式の境界値問題 $$ \Delta u=\rho,\quad \gamma(u)=f $$ の一意解 $u\in H^2(\Omega)$ は、$\Omega$ 上のラプラシアンのGreen関数 $G_{\Omega}(x,y)$ $(x\in \Omega,y\in\overline{\Omega})$ を用いて、 $$ u(x)=\int_{\Omega}\rho(y)G_{\Omega}(x,y)dy+\int_{\partial\Omega}f(y)\frac{\partial G_{\Omega}}{\partial\nu_y}(x,y)d\mu_{\partial\Omega}(y)\quad(\forall x\in \Omega) $$ と表される。

Proof.

Sobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.4)より、$u\in H^m(\Omega)\subset C^2(\overline{\Omega})$ であるから、Greenの表現公式(定理5.6)より、任意の $x\in \Omega$ に対し、 $$ u(x)=\int_{\Omega}\rho(y)G(x-y)dy+\int_{\partial\Omega}\left(f(y)\frac{\partial G}{\partial \nu_y}(x-y)-\frac{\partial u}{\partial\nu}(y)G(x-y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y)\quad\quad(*) $$ ($\Delta u=\rho$, $u|_{\partial\Omega}=f$ に注意)が成り立つ。また命題5.7より、 $$ 0=-\int_{\Omega}\rho(y)h_x(y)dy+\int_{\partial\Omega}\left(\frac{\partial u}{\partial\nu}(y)G(x-y)-f(y)\frac{\partial h_x}{\partial\nu}(y)\right)d\mu_{\partial\Omega}(y)\quad\quad(**) $$ であるから、$(*),(**)$ を足せば、 $$ u(x)=\int_{\Omega}\rho(y)G_{\Omega}(x,y)dy+\int_{\partial\Omega}f(y)\frac{\partial G_{\Omega}}{\partial\nu_y}(x,y)d\mu_{\partial\Omega}(y) $$ を得る。

定理5.10(ラプラシアンの基本解の本義)

$G$ を $\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解とし、$\delta_0$ を $\{0\}$ を台とするDiracのデルタ超関数(緩増加超関数とFourier変換定義20.5)とする。このとき、

  • $(1)$ $G\in L^1_{\rm loc}(\mathbb{R}^N)\subset D'(\mathbb{R}^N)$ として $\Delta G=\delta_0$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の台がコンパクトな超関数 $v\in \mathcal{E}_N'$(緩増加超関数とFourier変換定義20.3)に対し、$(2\pi)^{\frac{N}{2}}\Delta (v*G)=v$ が成り立つ。
Proof.

  • $(1)$ 任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し ${\rm supp}(\varphi)\in B(0,R)=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert<R\}$ を満たす $R\in (0,\infty)$ を取れば、Greenの表現公式(定理5.6)より、

$$ \begin{aligned} \delta_0(\varphi)&=\varphi(0)=\int_{B(0,R)}G(y)\Delta \varphi(y)dy+\int_{\partial B(0,R)} \left(\varphi(y)\frac{\partial G}{\partial \nu}(y)-\frac{\partial\varphi}{\partial\nu}(y)G(y)\right)d\mu_{\partial B(0,R)}(y)\\ &=\int_{\mathbb{R}^N}G(y)\Delta \varphi(y)dy=\Delta G(\varphi) \end{aligned} $$ となる。よって $\Delta G=\delta_0$ が成り立つ。

$$ \Delta(v*G)=v*\Delta G=v*\delta_0=\delta_0*v=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}v $$ となる。

定義5.11(Newtonポテンシャル)

$G$ を $\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解、$\rho\in L^\infty(\mathbb{R}^N)$ を ${\rm supp}(\rho)$ がコンパクトであるものとする。命題5.5の $(2)$ より $G\in L^1_{\rm loc}(\mathbb{R}^N)$ だから任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し $\mathbb{R}^N\ni y\mapsto \rho(y)G(x-y)\in \mathbb{C}$ は可積分である。よって $\mathbb{R}^N$ 上の関数 $u\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ として、 $$ u(x)=\int_{\mathbb{R}^N}\rho(y)G(x-y)dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ なるものが定義できる。$u$ を $\rho$ を密度関数とするNewtonポテンシャルと言う。

定理5.12(Newtonポテンシャルと全空間におけるPoisson方程式)

$G$ を $\mathbb{R}^N$ 上のラプラシアンの基本解、$\rho\in L^\infty(\mathbb{R}^N)$ を ${\rm supp}(\rho)$ がコンパクトであるものとする。そして $u\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を $\rho$ を密度関数とするNewtonポテンシャルとする。このとき、

  • $(1)$ $u\in C^1(\mathbb{R}^N)$ であり、

$$ \nabla u(x)=\int_{\mathbb{R}^N}\rho(y)\nabla G(x-y)dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $N\geq 3$ の場合、$\lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}u(x)=0$ が成り立つ。
  • $(3)$ 

$$ \Delta u=\rho $$ が成り立つ。そして $N\geq 3$ の場合、$\Delta w=\rho$ を満たす任意の有界連続関数 $w\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ に対し $u-w$ は定数関数である。

Proof.

  • $(1)$ $v\colon\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}^N$ を、

$$ v(x)\colon=\int_{\mathbb{R}^N}\rho(y)\nabla G(x-y)dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ として定義する。まず $v$ が連続であることを示す。任意の $a\in \mathbb{R}^N$ を取り $a$ において $v$ が連続であることを示せばよい。任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り、$B(a,\epsilon)=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-a\rvert<\epsilon\}$ に対し、 $$ \begin{aligned} &v_1(x)\colon=\int_{B(a,\epsilon)}\rho(y)\nabla G(x-y)dy,\\ &v_2(x)\colon=\int_{{\rm supp}(u)\backslash B(a,\epsilon)}\rho(y)\nabla G(x-y)dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N)\quad\quad(**) \end{aligned} $$ とおく。$v(x)=v_1(x)+v_2(x)$ $(\forall x\in \mathbb{R}^N)$ である。任意の $x\in B(a,\epsilon)$ に対し、変数変換と命題5.5の $(2)$ より、 $$ \lvert v_1(x)\rvert\leq \lVert \rho\rVert_{\infty}\int_{B(a,\epsilon)}\lvert \nabla G(x-y)\rvert dy\leq \lVert \rho\rVert_{\infty}\int_{B(0,2\epsilon)}\lvert \nabla G(y)\rvert dy=2\lVert \rho\rVert_{\infty}\epsilon\quad\quad(***) $$ であり、 $$ \lvert v_1(a)\rvert\leq \lVert \rho\rVert_{\infty}\int_{B(a,\epsilon)}\lvert \nabla G(x-y)\rvert dy=\lVert \rho\rVert_{\infty}\int_{B(0,\epsilon)}\lvert \nabla G(y)\rvert dy=\lVert \rho\rVert_{\infty}\epsilon $$ であるから、 $$ \lvert v_1(x)-v_1(a)\rvert\leq \lvert v_1(x)\rvert+\lvert v_1(a)\rvert\leq 3\lVert \rho\rVert_{\infty}\epsilon\quad(\forall x\in B(a,\epsilon)) $$ となる。またLebesgue優収束定理より $B(a,\epsilon)\ni x\mapsto v_2(x)\in \mathbb{C}^N$ は連続であるので、十分小さい $\delta\in (0,\epsilon)$ を取れば、 $$ \lvert v_2(x)-v_2(a)\rvert<\epsilon\quad(\forall x\in B(a,\delta)) $$ となる。よって任意の $x\in B(a,\epsilon)$ に対し、 $$ \lvert v(x)-v(a)\rvert \leq \lvert v_1(x)-v_1(a)\rvert+\lvert v_2(x)-v_2(a)\rvert\leq (3\lVert \rho\rVert_{\infty}+1)\epsilon $$ となり、$\epsilon\in (0,\infty)$ は任意なので、$v\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}^N$ は連続である。
次に $u$ が $a\in \mathbb{R}^N$ において微分可能であることと $\nabla u(a)=v(a)$ が成り立つことを示す。再び任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り、 $$ \begin{aligned} &u_1(x)\colon=\int_{B(a,\epsilon)}\rho(y)G(x-y)dy,\\ &u_2(x)\colon=\int_{{\rm supp}(u)\backslash B(a,\epsilon)}\rho(y)G(x-y)dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ とおく。$u(x)=u_1(x)+u_2(x)$ $(\forall x\in \mathbb{R}^N)$ である。$0<\lvert h\rvert<\epsilon$ なる任意の $h\in \mathbb{R}^N$ に対し、線分 $$ L\colon=\{a+\theta h:\theta\in [0,1]\}\subset \mathbb{R}^N $$ のLebesgue測度が $0$ であることに注意して微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} u_1(a+h)-u_1(a)&=\int_{B(a,\epsilon)\backslash L}\rho(y)(G(a+h-y)-G(a-y))dy\\ &=h\cdot \int_{B(a,\epsilon)\backslash L}\rho(y)\left(\int_{0}^{1}\nabla G(a+\theta h-y)d\theta\right)dy \end{aligned} $$ となる。よって $(**)$ の $v_1$ に対しFubiniの定理より、 $$ \begin{aligned} u_1(a+h)-u_1(a)-h\cdot v_1(a)&=h\cdot \int_{B(a,\epsilon)}\rho(y)\left(\int_{0}^{1}\nabla G(a+\theta h-y)-\nabla G(a-y)d\theta\right)dy\\ &=h\cdot \int_{0}^{1}\left(\int_{B(a,\epsilon)}\rho(y)(\nabla G(a+\theta h-y)-\nabla G(a-y))dy\right)d\theta \end{aligned} $$ となるので、$(***)$ と同様の評価により、 $$ \frac{\lvert u_1(a+h)-u_1(a)-h\cdot v_1(a)\rvert}{\lvert h\rvert}\leq 3\lVert \rho\rVert_{\infty}\epsilon\quad(\forall h\in \mathbb{R}^N:0<\lvert h\rvert<\epsilon) $$ を得る。またLebesgue優収束定理より $B(a,\epsilon)\ni x\mapsto u_2(x)\in \mathbb{C}$ は微分可能であり、$(**)$ の $v_2$ に対し、 $$ \nabla u_2(x)=v_2(x)\quad(\forall x\in B(a,\epsilon)) $$ であるから、十分小さい $\delta\in (0,\epsilon)$ を取れば、 $$ \frac{\lvert u_2(a+h)-u_2(a)-h\cdot v_2(a)\rvert}{\lvert h\rvert}<\epsilon\quad(\forall h\in \mathbb{R}^N:0<\lvert h\rvert<\delta) $$ となる。よって、 $$ \frac{\lvert u(a+h)-u(a)-h\cdot v(a)\rvert}{\lvert h\rvert}<(3\lVert \rho\rVert_{\infty}+1)\epsilon\quad(\forall h\in \mathbb{R}^N:0<\lvert h\rvert<\delta) $$ が成り立つ。$\epsilon\in (0,\infty)$ は任意なので $u$ は $a$ において微分可能であり $\nabla u(a)=v(a)$ が成り立つ。$a\in \mathbb{R}^N$ は任意なので $(*)$ が成り立ち、前段より $v=\nabla u$ は連続であるから $u\in C^1(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。

  • $(2)$ ラプラシアンの基本解 $G$ の定義(定義5.4)より $N\geq 3$ の場合、

$$ u(x)=\frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\frac{1}{2-N}\int_{\mathbb{R}^N}\frac{\rho(y)}{\lvert x-y\rvert^{N-2}}dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから、${\rm supp}(\rho)\subset \{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y\rvert\leq R\}$ なる $R\in (0,\infty)$ と $\lvert x\rvert>R$ なる任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \lvert u(x)\rvert\leq \frac{1}{\lvert \partial B(0,1)\rvert}\frac{\lVert \rho\rVert_{\infty}}{N-2}\int_{{\rm supp}(\rho)}\frac{1}{(\lvert x\rvert-R)^{N-2}}dy $$ となる。よって $\lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}\lvert u(x)\rvert=0$ が成り立つ。

  • $(3)$ $\rho\in \mathcal{E}_N'$(台がコンパクトな超関数)であり、任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対しFubiniの定理より、

$$ \begin{aligned} u(\varphi)&=\int_{\mathbb{R}^N}u(x)\varphi(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}\rho(y)G(x-y)dy\right)\varphi(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}\rho(x-y)G(y)\varphi(x)dy\right)dx\\ &=\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}\varphi(x)\rho_{-1}(y-x)dx\right)G(y)dy =(2\pi)^{\frac{N}{2}}G(\varphi*\rho_{-1}) \end{aligned} $$ であるから、$\rho*G$ の定義(合成積とFourier変換定義27.2)より、 $$ u(\varphi)=(2\pi)^{\frac{N}{2}}G(\varphi*\rho_{-1})=(2\pi)^{\frac{N}{2}}(\rho*G)(\varphi) $$ である。よって $u=(2\pi)^{\frac{N}{2}}(\rho*G)$ が成り立つので、定理5.10の $(2)$ より $\Delta u=\rho$ が成り立つ。$w\colon \mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ が有界連続関数で $\Delta w=\rho$ を満たすとする。$(1)$ より $u-w\colon\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ は連続関数であり、$\Delta (u-w)=\rho-\rho=0$ であるから、定理4.6の $(4)$ より $u-w$ は調和関数である。$N\geq 3$ の場合、$(2)$ より $u-w$ は $\mathbb{R}^N$ 上の有界調和関数であるから、Liouvilleの定理(命題4.9)より $u-w$ は定数関数である。

6. 境界条件付き波動方程式の初期値問題の一意解

定義6.1(境界条件付きラプラシアンの設定)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を、

  • 全空間:$\Omega=\mathbb{R}^N$.
  • 内部領域:$\Omega$ は滑らかな境界 $\partial\Omega$ を持つ開集合。
  • 外部領域:$\Omega$ は滑らかでコンパクトな境界 $\partial\Omega$ を持つ開集合で、$\mathbb{R}^N\backslash \Omega$ は有界。

のうちのいずれかであるとし、$\partial\Omega$ は互いに交わらないコンパクト集合 $\partial\Omega_{\rm d}$ と $\partial\Omega_{\rm n}$(どちらかが空であってもよい)の合併であるとする。そして定理3.9の $(4)$ と定理3.14の $(5)$ によりHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素としてのラプラシアン $$ D(-\Delta)\colon=\left\{v\in H^2(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0,\frac{\partial v}{\partial \nu}\Big|_{\partial\Omega_{\rm n}}=0 \right\}, $$ $$ -\Delta \colon D(-\Delta)\ni v\mapsto -\Delta v\in L^2(\Omega) $$ を考える。定理3.9の $(2)$ と定理3.14の $(3)$ より、 $$ D(\sqrt{-\Delta})=\{v\in H^1(\Omega):\gamma(v)|_{\partial\Omega_{\rm d}}=0\} $$ であり、 $$ (\sqrt{-\Delta}u\mid \sqrt{-\Delta v})_2=\int_{\Omega}\nabla \overline{u}(x)\cdot\nabla v(x)dx=(u\mid v)_{2,1}-(u,v)_2\quad(\forall u,v\in D(\sqrt{-\Delta}))\quad\quad(*) $$ が成り立つ。$\Omega$ が内部領域、外部領域の場合、$-\Delta$ をDirichlet-Neumann境界条件付きラプラシアンと言うこととする。$\Omega$ が内部領域である場合は定理3.14の $(2)$ より、Hilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素 $-\Delta$ のスペクトルは純粋に離散的(Hilbert空間上の作用素論定義14.3)である。

定理6.2(波動方程式の初期値問題の一意解)

$-\Delta \colon D(-\Delta)\rightarrow L^2(\Omega)$ を定義6.1におけるHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素とする。$I\subset \mathbb{R}$ を $0$ を含む区間とし、$f(t)\colon I\ni t\mapsto f(t)\in D(\sqrt{-\Delta})$ を $H^1(\Omega)$ のノルムで連続な関数とする。そして $c$ を正実数、$u\in D(-\Delta)$, $v\in D(\sqrt{-\Delta})$ とする。このとき次を満たす $u(t)\colon I\ni t\mapsto u(t)\in D(-\Delta)$ が唯一つ存在する。

  • $(1)$ $u(t)\colon I\ni t\mapsto u(t)\in D(-\Delta)$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで $C^2$ 級、$H^1(\Omega)$ のノルムで $C^1$ 級である。
  • $(2)$ 

$$ \frac{du}{dt}(t)\in D(\sqrt{-\Delta})\quad(\forall t\in I). $$

  • $(3)$ 

$$ \frac{d^2u}{dt^2}(t)=c^2\Delta u(t)+f(t)\quad(\forall t\in I). $$

  • $(4)$ 

$$ u(0)=u,\quad \frac{du}{dt}(0)=v. $$ そしてこれは、 $$ \frac{c^2}{2}\lVert \nabla u(t)\rVert_2^2+\frac{1}{2}\left\lVert \frac{du}{dt}(t)\right\rVert_2^2=\frac{c^2}{2}\lVert \nabla u\rVert_2^2+\frac{1}{2}\lVert v\rVert_2^2+\int_{0}^{t}{\rm Re}\left(f(s)\mid \frac{du}{dt}(s)\right)ds\quad(\forall t\in I)\quad\quad(*) $$ を満たし、 $$ u(t)=\cos(ct\sqrt{-\Delta})u+\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}v+\int_{0}^{t}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(s)ds\quad(\forall t\in I)\quad\quad(**) $$ によって表される。ただし $\cos(ct\sqrt{-\Delta})$, $\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素 $-\Delta$ に関するBorel汎関数計算(Hilbert空間上の作用素論定義8.5)である。すなわち $-\Delta$ のスペクトル測度 $E\colon \mathcal{B}_{\sigma(-Delta)}\rightarrow \mathbb{P}(L^2(\Omega))$ に対し、 $$ \cos(ct\sqrt{-\Delta})=\int_{\sigma(-\Delta)}\cos(ct\sqrt{\lambda})dE(\lambda),\quad \frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}=\int_{\sigma(-\Delta)}\frac{\sin(ct\sqrt{\lambda})}{c\sqrt{\lambda}}dE(\lambda)\quad(\forall t\in I) $$ である。(射影値測度による積分の定義やその基本的性質についてはHilbert空間上の作用素論定義6.7命題6.8などを参照。)

Proof.

  •  $u(t)\colon I\ni t\mapsto u(t)\in D(-\Delta)$ が $(1)\sim (4)$ を満たすとき $(*)$ が成り立つことを示す。まず $(1),(2)$ より、

$$ \left\lVert \frac{1}{h}(\nabla u(t+h)-\nabla u(t))-\nabla \frac{du}{dt}(t)\right\rVert_2^2\leq \left\lVert \frac{1}{h}(u(t+h)-u(t))-\frac{du}{dt}(t)\right\rVert_{2,1}^2\rightarrow0\quad(h\rightarrow0) $$ であるから、 $$ \frac{d}{dt}\nabla u(t)=\nabla \frac{du}{dt}(t)\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。これと定義6.1の $(*)$ より、 $$ \begin{aligned} &\frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}\lVert \nabla u(t)\rVert_2^2\right)={\rm Re}\left(\nabla u(t)\mid \frac{d}{dt}\nabla u(t)\right)_2={\rm Re}\left(\nabla u(t)\mid \nabla \frac{du}{dt}(t)\right)_2\\ &={\rm Re}\left(\sqrt{-\Delta}u(t)\mid \sqrt{-\Delta}\frac{du}{dt}(t)\right)_2 ={\rm Re}\left(-\Delta u(t)\mid \frac{du}{dt}(t)\right)_2\quad(\forall t\in I) \end{aligned} $$ であるから、$(3)$ より、 $$ \begin{aligned} \frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}\left\lVert \frac{du}{dt}(t)\right\rVert_2^2\right) &={\rm Re}\left(\frac{d^2u}{dt^2}(t)\mid \frac{du}{dt}(t)\right) =-c^2{\rm Re}\left(-\Delta u(t)\mid \frac{du}{dt}(t)\right)_2+{\rm Re}\left(f(t)\mid \frac{du}{dt}(t)\right)_2\\ &=-c^2\frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}\lVert \nabla u(t)\rVert_2^2\right) +{\rm Re}\left(f(t)\mid \frac{du}{dt}(t)\right)_2\quad(\forall t\in I) \end{aligned} $$ となる。よって、 $$ \frac{d}{dt}\left(\frac{c^2}{2}\lVert \nabla u(t)\rVert_2^2+\frac{1}{2}\left\lVert \frac{du}{dt}(t)\right\rVert_2^2\right)={\rm Re}\left(f(t)\mid \frac{du}{dt}(t)\right)_2\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つので、これを積分すれば、$(4)$ より、$(*)$ を得る。

  •  次に $(1)\sim(4)$ を満たす $u(t)\colon I\ni t\mapsto D(-\Delta)$ の一意性を示す。$u_1,u_2\colon I\rightarrow D(-\Delta)$ が共に $(1)\sim(4)$ を満たすとすると、

$$ u(t)\colon I\ni t\mapsto u_1(t)-u_2(t)\in D(-\Delta) $$ は $u=0$, $v=0$, $f(t)=0$ $(\forall t\in I)$ とした場合の $(1)\sim (4)$ を満たす。よって前段の結果から、 $$ \frac{c^2}{2}\lVert \nabla u(t)\rVert_2^2+\frac{1}{2}\left\lVert \frac{du}{dt}(t)\right\rVert_2^2=0\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つので、特に、 $$ \frac{du}{dt}(t)=0\quad(\forall t\in I) $$ である。よって微積分学の基本定理より $u(t)=u(0)=0$ $(\forall t\in I)$ であるから、$u_1(t)=u_2(t)$ $(\forall t\in I)$ が成り立つ。これで一意性が示せた。

  •  後は $(**)$ が $(1)\sim(4)$ を満たすことを示せばよい。(以後の議論は長くなっているが、Lebesgue優収束定理による単純な議論である。)そのために、

$$ u_1(t)\colon=\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}v,\quad u_2(t)\colon=\cos(ct\sqrt{-\Delta})u,\quad u_3(t)\colon=\int_{0}^{t}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(s)ds\quad(\forall t\in I) $$ と分解して考える。$u_1(t)$ について考える。Lebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} &\left\lVert \frac{1}{h}(u_1(t+h)-u_1(t))-\cos(ct\sqrt{-\Delta})v\right\rVert_2^2\\ &=\left\lVert \frac{1}{h}\left(\frac{\sin(c(t+h)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}-\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}\right)v-\cos(ct\sqrt{-\Delta})v\right\rVert_2^2\\ &=\int_{\sigma(-\Delta)}\left\lvert \frac{\sin(c(t+h)\sqrt{\lambda})-\sin(ct\sqrt{\lambda})}{ch\sqrt{\lambda}}-\cos(ct\sqrt{\lambda})\right\rvert^2dE_{v,v}(\lambda)\\ &\rightarrow0\quad(h\rightarrow0,\forall t\in I) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \frac{du_1}{dt}(t)=\cos(ct\sqrt{-\Delta})v\in D(\sqrt{-\Delta}) $$ であり、Lebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} &\left\lVert \frac{1}{h}\left(\frac{du_1}{dt}(t+h)-\frac{du_1}{dt}(t)\right)-(-c\sqrt{-\Delta}\sin(ct\sqrt{-\Delta}))v\right\rVert_2^2\\ &=\left\lVert \frac{1}{h}(\cos(c(t+h)\sqrt{-\Delta})-\cos(ct\sqrt{-\Delta}))v-(-c\sqrt{-\Delta}\sin(ct\sqrt{-\Delta})v)\right\rVert_2^2\\ &=\int_{\sigma(-\Delta)}\left\lvert \frac{\cos(c(t+h)\sqrt{\lambda})-\cos(ct\sqrt{\lambda})}{h}-(-c\sqrt{\lambda}\sin(ct\sqrt{\lambda}))\right\rvert^2dE_{v,v}(\lambda)\\ &\rightarrow0\quad(h\rightarrow0,\forall t\in I) \end{aligned} $$ であるから、$L^2(\Omega)$ のノルムで、 $$ \frac{d^2u_1}{dt^2}(t)=-c\sqrt{-\Delta}\sin(ct\sqrt{-\Delta})v=c^2\Delta u_1(t)\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。さらにLebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} \left\lVert \frac{d^2u_1}{dt^2}(t+h)-\frac{d^2u_1}{dt^2}(t)\right\rVert_2 &=\left\lVert \sqrt{-\Delta}\sin(c(t+h)\sqrt{-\Delta})v-\sqrt{-\Delta}\sin(ct\sqrt{-\Delta})v\right\rVert_2^2\\ &=\int_{\sigma(-\Delta)}\left\lvert \sqrt{\lambda}\sin(c(t+h)\sqrt{\lambda})-\sqrt{\lambda}\sin(ct\sqrt{\lambda})\right\rvert^2dE_{v,v}(\lambda)\\ &\rightarrow0\quad(h\rightarrow0, \forall t\in I) \end{aligned} $$ であるから、 $$ I\ni t\mapsto \frac{d^2u_1}{dt^2}(t)\in L^2(\Omega) $$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで連続である。ゆえに $u_1(t)\colon I\ni t\mapsto u_1(t)\in D(-\Delta)$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで $C^2$ 級である。また $v\in D(\sqrt{-\Delta})=D_E(\sqrt{\lambda})$ であることとLebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} &\left\lVert \frac{1}{h}\left(\sqrt{-\Delta}u_1(t+h)-\sqrt{-\Delta}u_1(t)\right)-\sqrt {-\Delta}\cos(ct\sqrt{-\Delta})v\right\rVert_2^2\\ &=\left\lVert \frac{\sin(c(t+h)\sqrt{-\Delta})-\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{ch}v-\sqrt{-\Delta}\cos(ct\sqrt{-\Delta})v\right\rVert_2^2\\ &=\int_{\sigma(-\Delta)}\left\lvert \frac{\sin(c(t+h)\sqrt{\lambda})-\sin(ct\sqrt{\lambda})}{ch}-\sqrt{\lambda}\cos(ct\sqrt{\lambda})\right\rvert^2dE_{v,v}(\lambda)\\ &\rightarrow0\quad(h\rightarrow0,\forall t\in I) \end{aligned} $$ であるから、$L^2(\Omega)$ のノルムに関して、 $$ \frac{d}{dt}\sqrt{-\Delta}u_1(t)=\sqrt{-\Delta}\cos(ct\sqrt{-\Delta})v =\sqrt{-\Delta}\frac{du_1}{dt}(t)\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。よって定義6.1の $(*)$ より $u_1(t)\colon I\ni t\mapsto u_1(t)\in D(-\Delta)$ は $H^1(\Omega)$ のノルムで微分可能である。そしてLebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} &\left\lVert \sqrt{-\Delta}\frac{du_1}{dt}(t+h)-\sqrt{-\Delta}\frac{du_1}{dt}(t)\right\rVert_2^2\\ &=\left\lVert \sqrt{-\Delta}\cos(c(t+h)\sqrt{-\Delta})v-\sqrt{-\Delta}\cos(ct\sqrt{-\Delta})v\right\rVert_2^2\\ &=\int_{\sigma(-\Delta)}\lvert \sqrt{\lambda}\cos(c(t+h)\sqrt{\lambda})-\sqrt{\lambda}\cos(ct\sqrt{\lambda})\rvert^2dE_{v,v}(\lambda)\rightarrow0\quad(h\rightarrow0) \end{aligned} $$ であるから、 $$ I\ni t\mapsto \sqrt{-\Delta}\frac{du_1}{dt}(t)\in L^2(\Omega) $$ は $L^2(\Omega)$ のノルムに関して連続なので、定義6.1の $(*)$ より $u_1(t)\colon I\ni t\mapsto u_1(t)\in D(-\Delta)$ は $H^1(\Omega)$ のノルムに関して $C^1$ 級である。全く同様にして $u_2(t)\colon I\ni t\mapsto u_2(t)\in D(-\Delta)$ が $L^2(\Omega)$ のノルムで $C^2$ 級、$H^1(\Omega)$ のノルムで $C^1$ 級であり、 $$ \frac{du_2}{dt}(t)=-c\sqrt{-\Delta}\sin(ct\sqrt{-\Delta})u\in D(\sqrt{-\Delta}),\quad \frac{d^2u_2}{dt^2}(t)=c^2\Delta u_2(t)\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つことが分かる。よって、 $$ I\ni t\mapsto u_1(t)+u_2(t)\in D(-\Delta) $$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで $C^2$ 級、$H^1(\Omega)$ のノルムで $C^1$ 級であり、 $$ \frac{d}{dt}(u_1+u_2)(t)\in D(\sqrt{-\Delta}),\quad \frac{d^2}{dt^2}(u_1+u_2)(t)=c^2\Delta(u_1+u_2)(t)\quad(\forall t\in I), $$ $$ (u_1+u_2)(0)=u,\quad \frac{d}{dt}(u_1+u_2)(0)=v $$ が成り立つ。$u_3(t)\colon I\ni t\mapsto u_3(t)\in L^2(\Omega)$ について考える。定義6.1の $(*)$ より $I\ni t\mapsto \sqrt{-\Delta}f(t)\in L^2(\Omega)$ は連続であり、$\sqrt{-\Delta}$, $-\Delta$ は閉線形作用素であるから、 $$ -\Delta u_3(t)=\int_{0}^{1}\frac{1}{c}\sqrt{-\Delta}\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds\quad(\forall t\in I), $$ $$ \sqrt{-\Delta}u_3(t)=\int_{0}^{t}\frac{1}{c}\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds\quad(\forall t\in I) $$ である。 $$ \begin{aligned} &\frac{1}{h}(u_3(t+h)-u_3(t))\\ &=\int_{0}^{t+h}\frac{1}{h}\left(\frac{\sin(c(t+h-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}-\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}\right)f(s)ds\\ &+\frac{1}{h}\int_{t}^{t+h}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(s)ds \end{aligned} $$ であるから、$u_1(t)=\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}v$ の微分可能性の議論により、$L^2(\Omega)$ のノルムに関して $u_3(t)$ は微分可能であり、 $$ \frac{du_3}{dt}(t)=\int_{0}^{t}\cos(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つことが分かる。そして、 $$ \begin{aligned} &\frac{1}{h}\left(\frac{du_3}{dt}(t+h)-\frac{du_3}{dt}(t)\right)\\ &=\int_{0}^{t+h}\frac{1}{h}\left(\cos(c(t+h-s)\sqrt{-\Delta})-\cos(c(t-s)\sqrt{-\Delta})\right)f(s)ds\\ &+\frac{1}{h}\int_{t}^{t+h}\cos(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds \end{aligned} $$ であるから、$\frac{du_1}{dt}(t)=\cos(ct\sqrt{-\Delta})v$ の微分可能性の議論より、$L^2(\Omega)$ のノルムに関して、 $$ \begin{aligned} \frac{d^2u_3}{dt^2}(t)&=\int_{0}^{t}(-c\sqrt{-\Delta})\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds+f(t)\\ &=\int_{0}^{t}c^2\Delta\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(s)ds+f(t)\\ &=c^2\Delta u_3(t)+f(t)\quad(\forall t\in I) \end{aligned} $$ が成り立つことが分かる。Lebesgue優収束定理より、 $$ I\ni t\mapsto \frac{d^2u_3}{dt^2}(t)=\int_{0}^{t}(-c\sqrt{-\Delta})\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds+f(t)\in L^2(\Omega) $$ は $L^2(\Omega)$ のノルムに関して連続であるので、$u_3(t)\colon I\ni t\mapsto u_3(t)\in D(-\Delta)$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで $C^2$ 級である。また、 $$ \begin{aligned} &\frac{1}{h}(\sqrt{-\Delta}u_3(t+h)-\sqrt{-\Delta}u_3(t))\\ &=\int_{0}^{t+h}\frac{\sin(c(t+h-s)\sqrt{-\Delta})-\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{ch}f(s)ds\\ &+\frac{1}{h}\int_{t}^{t+h}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c}f(s)ds \end{aligned} $$ であるから $\sqrt{-\Delta}u_1(t)=\sin(ct\sqrt{-\Delta})v$ の微分可能性の議論より $L^2(\Omega)$ のノルムに関して、 $$ \frac{d}{dt}\sqrt{-\Delta}u_3(t)=\int_{0}^{t}\sqrt{-\Delta}\cos(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds=\sqrt{-\Delta}\frac{du_3}{dt}(t)\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つことが分かる。よって定義6.1の $(*)$ より $u_3(t)\colon I\ni t\mapsto u_3(t)\in D(-\Delta)$ は $H^1(\Omega)$ のノルムで微分可能である。そしてLebesgue優収束定理より、 $$ I\ni t\mapsto \sqrt{-\Delta}\frac{du_3}{dt}(t)=\int_{0}^{t}\sqrt{-\Delta}\cos(c(t-s)\sqrt{-\Delta})f(s)ds\in L^2(\Omega) $$ は $L^2(\Omega)$ のノルムにより連続であるから、定義6.1の $(*)$ より $u_3(t)\colon I\ni t\mapsto u_3(t)\in D(-\Delta)$ は $H^1(\Omega)$ のノルムで $C^1$ 級である。以上より $u_3(t)\colon I\ni t\mapsto u_3(t)\in D(-\Delta)$ は $L^2(\Omega)$ のノルムで $C^2$ 級、$H^1(\Omega)$ のノルムで $C^1$ 級であり、 $$ \frac{du_3}{dt}(t)\in D(\sqrt{-\Delta}),\quad \frac{d^2u_3}{dt^2}(t)=c^2\Delta u_3(t)+f(t)\quad(\forall t\in I) $$ が成り立つ。以上より、 $$ u(t)\colon I\ni t\mapsto u_1(t)+u_2(t)+u_3(t)\in D(-\Delta) $$ は $(1)\sim (4)$ を満たす。

注意6.3(内部領域におけるDirichlet-Neumann境界条件付き波動方程式の初期値問題の一意解の形)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を定義6.1における内部領域とし、Dirichlet-Neumann境界条件付きラプラシアン $-\Delta\colon D(-\Delta)\rightarrow L^2(\Omega)$ を考える。このとき $-\Delta$ のスペクトル $\sigma(-\Delta)$ は定理3.14の $(2)$ より純粋に離散的(Hilbert空間上の作用素論定義14.3)である。そこで、 $$ \sigma(-\Delta)=\{\lambda_n\}_{n\in\mathbb{N}} $$ とし、各離散固有値 $\lambda_n\in \sigma(-\Delta)$ の固有空間のCONSを $\{\varphi_{n,1},\ldots,\varphi_{n,m(n)}\}\subset \bigcap_{m\in \mathbb{N}}H^m(\Omega)\subset \bigcap_{m\in\mathbb{N}}C^m(\overline{\Omega})$(定理3.14の $(6)$ を参照)とおく。今、$I\subset \mathbb{R}$ を $0$ を含む区間、$f(t)\colon I\ni t\mapsto f(t)\in D(\sqrt{-\Delta})$ を $H^1(\Omega)$ のノルムに関する連続関数、$c\in (0,\infty)$, $u\in D(-\Delta)$, $v\in D(\sqrt{-\Delta})$ とし、定理6.2の $(1)\sim (4)$ を満たす一意解を $u(t)\colon I\ni t\mapsto D(-\Delta)$ とする。そして任意の $n\in \mathbb{N}$, $k\in \{1,\ldots,m(n)\}$ に対し $C^2$ 級関数 $$ u_{n,k}(t)\colon I\ni t\mapsto (\varphi_{n,k}\mid u(t))_2\in \mathbb{C} $$ を定義する。また、 $$ u_{n,k}\colon =(\varphi_{n,k}\mid u)_{2}\in \mathbb{C},\quad v_{n,k}\colon =(\varphi_{n,k}\mid v)_2\in \mathbb{C},\quad f_{n,k}(t)\colon I\ni t\mapsto (\varphi_{n,k}\mid f(t))_2\in \mathbb{C} $$ とおく。このとき、 $$ \begin{aligned} &\frac{d^2u_{n,k}}{dt^2}(t)=\left(\varphi_{n,k}\mid \frac{d^2u}{dt^2}(t)\right)_2 =(\varphi_{n,k}\mid c^2\Delta u(t))_2+(\varphi_{n,k}\mid f(t))_2\\ &=c^2(\Delta \varphi_{n,k}\mid u(t))_2+(\varphi_{n,k}\mid f(t))_2 =-c^2\lambda_{n}u_{n,k}(t)+f_{n,k}(t)\quad(\forall t\in I) \end{aligned} $$ であり $u_{n,k}(0)=u_{n,k},\quad \frac{du_{n,k}}{dt}(0)=v_{n,k}$ であるから、$u_{n,k}(t)\colon I\ni t\mapsto \mathbb{C}$ は常微分方程式の初期値問題 $$ \frac{d^2u_{n,k}}{dt^2}(t)=-c^2\lambda_nu_{n,k}(t)+f(t),\quad u_{n,k}(0)=u_{n,k},\quad \frac{du_{n,k}}{dt}(0)=v_{n,k} $$ の一意解である。Hilbert空間 $L^2(\Omega)$ 上の非負自己共役作用素 $-\Delta\colon D(-\Delta)\rightarrow L^2(\Omega)$ のスペクトル測度を $E\colon \mathcal{B}_{\sigma(-\Delta)}\rightarrow \mathbb{P}(L^2(\Omega))$ とすると、Hilbert空間上の作用素論命題8.7の $(6)$ より、 $$ {\rm Ran}E(\{\lambda_n\})={\rm Ker}(\lambda_n+\Delta)={\rm span}\{\varphi_{n,1},\ldots,\varphi_{n,m(n)}\} $$ であるから、定理6.2より、$u_{n,k}(t)\colon I\ni t\mapsto u_{n,k}(t)\in \mathbb{C}$ は、 $$ \begin{aligned} u_{n,k}(t)&=(\varphi_{n,k}\mid \cos(ct\sqrt{-\Delta})u)_2+\left(\varphi_{n,k}\mid \frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}v\right)_2 +\int_{0}^{t}\left(\varphi_{n,k}\mid \frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(s)\right)ds\\ &=\cos(ct\sqrt{\lambda_n})(\varphi_{n,k}\mid u)_2+\frac{\sin(ct\sqrt{\lambda_n})}{c\sqrt{\lambda_n}}(\varphi_{n,k}\mid v)_2+\int_{0}^{t}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{\lambda_n})}{c\sqrt{\lambda_n}}(\varphi_{n,k}\mid f(s))ds\\ &=\cos(ct\sqrt{\lambda_n})u_{n,k}+\frac{\sin(ct\sqrt{\lambda_n})}{c\sqrt{\lambda_n}}v_{n,k}+\int_{0}^{t}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{\lambda_n})}{c\sqrt{\lambda_n}}f_{n,k}(s)ds\quad(\forall t\in I) \end{aligned} $$ と表すことができる。Hilbert空間上の作用素論命題14.4より、 $$ \{\varphi_{n,1},\ldots,\varphi_{n,m(n)}:n\in \mathbb{N},k=1,\ldots,m(n)\} $$ は $L^2(\Omega)$ のCONSであるから、 $$ u(t)=\sum_{n\in \mathbb{N}}\sum_{k=1}^{m(n)}(\varphi_{n,k}\mid u(t))_2\varphi_{n,k}=\sum_{n\in\mathbb{N}}\sum_{k=1}^{m(n)}u_{n,k}(t)\varphi_{n,k}\quad(\forall t\in I) $$ となる。よって波動方程式の一意解 $u(t,x)$ は、$-\Delta$ の各離散固有値(モード)$\lambda_n$ ごとの波 $u_{n,k}(t)\varphi_{n,k}(x)\in C^2(I)\otimes C^\infty(\Omega)$ $(n\in \mathbb{N},k=1,\ldots,m(n))$(それぞれ時間変数 $t\in I$ と空間変数 $x\in \Omega$ で変数分離されている)の重ね合わせである。

補題6.4

定義6.1の $\Omega=\mathbb{R}^3$ の場合のラプラシアン $-\Delta\colon H^2(\mathbb{R}^3)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^3)$ と任意の $u\in H^2(\mathbb{R}^3)\subset C_0(\mathbb{R}^3)$[9], $c\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u\right)(x)=tS(u,x,c\lvert t\rvert)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^3,\forall t\in \mathbb{R}) $$ が成り立つ。ただし右辺の $S(u,x,c\lvert t\rvert)$ は中心 $x\in\mathbb{R}^3$, 半径 $c\lvert t\rvert$ の球面 $\{y\in \mathbb{R}^3:\lvert y-x\rvert =c\lvert t\rvert\}$ における $u\colon \mathbb{R}^3\rightarrow\mathbb{C}$ の球面平均(定義4.1)である。

Proof.

$t\in \mathbb{R}$ は固定する。まず $u\in D(\mathbb{R}^3)$ の場合を示す。Hilbert空間上の作用素論命題17.1と合成積のFourier変換の性質(合成積とFourier変換定理24.3)より、 $$ \frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u=\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(ct\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}u=u*\left(\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(ct\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id\rvert}}\right)=u*v\in C^\infty(\mathbb{R}^3)\quad\quad(*) $$ となる。ただし、 $$ v\colon=\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(ct\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\in \mathcal{S}_3' $$ とおいた。 $$ v_n(y)\colon=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\lvert x\rvert<n}\frac{\sin(ct\lvert x\rvert)}{c\lvert x\rvert}e^{ix\cdot y}dx\quad(\forall y\in \mathbb{R}^3,\forall n\in \mathbb{N}) $$ とおけば、任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^3)$ に対しFubiniの定理とLebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} \int_{\mathbb{R}^3}\varphi(y)v_n(y)dy&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}\int_{\lvert x\rvert<n}\varphi(y)\frac{\sin(ct\lvert x\rvert)}{c\lvert x\rvert}e^{ix\cdot y}dydx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\lvert x\rvert<n}\int_{\mathbb{R}^3}\varphi(y)\frac{\sin(ct\lvert x\rvert)}{c\lvert x\rvert}e^{ix\cdot y}dxdy\\ &=\int_{\lvert x\rvert<n}(\mathcal{F}^{-1}\varphi)(x)\frac{\sin(ct\lvert x\rvert)}{c\lvert x\rvert}dx\\ &\rightarrow \int_{\mathbb{R}^N}(\mathcal{F}^{-1}\varphi)(x)\frac{\sin(ct\lvert x\rvert)}{c\lvert x\rvert}dx=v(\varphi)\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ となるから、超関数空間 $D'(\mathbb{R}^3)$ の位相(超関数の定義と基本操作定義4.1)で $\lim_{n\rightarrow\infty}v_n=v$ が成り立つ。よって $u\in D(\mathbb{R}^3)$ より、 $$ (u*v_n)(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}v_n(T_xu_{-1})\rightarrow \frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}v(T_xu_{-1})=(u*v)(x)\quad(n\rightarrow\infty,\forall x\in \mathbb{R}^3)\quad\quad(**) $$ が成り立つ。任意の $n\in \mathbb{N}$ と任意の $y\in \mathbb{R}^3\backslash \{0\}$ を取る。$\mathbb{R}^3$ の正規直交基底 $e_1,e_2,e_3$ で $y=\lvert y\rvert e_1$ を満たすものを取り、 $$ (0,n)\times (0,\pi)\times (0,2\pi)\ni (r,\theta,\theta')\mapsto r\cos(\theta)e_1+r\sin(\theta)\cos(\theta')e_2+r\sin(\theta)\sin(\theta')e_3\in \{x\in \mathbb{R}^3:\lvert x\rvert<n\} $$ なる極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)を考えれば、 $$ \begin{aligned} v_n(y)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\lvert x\rvert<n}\frac{\sin(ct\lvert x\rvert)}{c\lvert x\rvert}e^{ix\cdot y}dx=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{0}^{n}\int_{0}^{\pi}2\pi r^2\sin(\theta)\frac{\sin(ctr)}{cr}e^{ir\lvert y\rvert\cos(\theta)}d\theta dr\\ &=\frac{1}{c(2\pi)^{\frac{1}{2}}}\int_{0}^{n}\int_{0}^{\pi}r\sin(\theta)\sin(ctr)e^{ir\lvert y\rvert \cos(\theta)}d\theta dr=\frac{1}{c(2\pi)^{\frac{1}{2}}}\int_{0}^{n}r\int_{-1}^{1}\sin(ctr)e^{i\lvert y\rvert rs}dsdr\\ &=\frac{1}{c\lvert y\rvert (2\pi)^{\frac{1}{2}}}\int_{0}^{n}2\sin(ctr)\frac{e^{i\lvert y\rvert r}-e^{-i\lvert y\rvert r}}{2i}dr=\frac{1}{c\lvert y\rvert (2\pi)^{\frac{1}{2}}}\int_{0}^{n}2\sin(ctr)\sin(\lvert y\rvert r)dr\\ &=\frac{1}{c\lvert y\rvert (2\pi)^{\frac{1}{2}}}\int_{0}^{n}(\cos((ct-\lvert y\rvert)r)-\cos((ct+\lvert y\rvert)r))dr\\ &=\frac{1}{2c\lvert y\rvert(2\pi)^{\frac{1}{2}}}\int_{-n}^{n}(\cos((ct-\lvert y\rvert)r)-\cos((ct+\lvert y\rvert)r))dr \end{aligned} $$ となる。よって $u\in D(\mathbb{R}^3)$ であることに注意して、任意の $x\in \mathbb{R}^3$ に対し、さらに極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)より、 $$ \begin{aligned} (u*v_n)(x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}u(x-y)v_n(y)dy\\ &=\frac{1}{2c(2\pi)^2}\int_{\mathbb{R}^3}\int_{-n}^{n}\frac{u(x-y)}{\lvert y\rvert}(\cos((ct-\lvert y\rvert)r)-\cos((ct+\lvert y\rvert)r))drdy\\ &=\frac{1}{2c(2\pi)^2}\int_{0}^{\infty}\int_{S_2}\int_{-n}^{n}u(x-\rho \omega)\rho(\cos((ct-\rho)r)-\cos(ct+\rho)r))drd\mu_{S_2}(\omega)d\rho\\ &=\frac{1}{4c(2\pi)^2}\int_{-\infty}^{\infty}\int_{S_2}\int_{-n}^{n}u(x-\rho\omega)\rho(\cos((ct-\rho)r)-\cos((ct+\rho)r))dr d\mu_{S_2}(\omega)d\rho\\ &=\frac{1}{4c(2\pi)^2}\int_{-n}^{n}\int_{-\infty}^{\infty}\int_{S_2}u(x+\rho \omega)\rho(\cos((ct-\rho)r)-\cos((ct+\rho)r))d\mu_{S_2}(\omega)d\rho dr\\ &=\frac{1}{4c\pi}\left\{\int_{-n}^{n}\int_{-\infty}^{\infty}S(u,x,\lvert \rho+ct\rvert)(\rho+ct)\cos(\rho r)d\rho dr-\int_{-n}^{n}\int_{-\infty}^{\infty}S(u,x,\lvert \rho-ct\rvert)(\rho-ct)\cos(\rho r)d\rho dr\right\}\\ &\rightarrow \frac{1}{2c}(S(u,x,c\lvert t\rvert)ct+S(u,x,c\lvert t\rvert)ct)=tS(u,x,c\lvert t\rvert)\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ となる。最後はFourier変換とFourier逆変換による($\cos(\rho r)=\frac{e^{i\rho r}+e^{-i\rho r}}{2}$ に注意)。ゆえに、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}(u*v_n)(x)=tS(u,x,c\lvert t\rvert)\quad(\forall u\in D(\mathbb{R}^3),\forall x\in \mathbb{R}^3) $$ が成り立つ。これと $(*),(**)$ より、 $$ \left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u\right)(x) =(u*v)(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}(u*v_n)(x)=tS(u,x,c\lvert t\rvert)\quad(\forall u\in D(\mathbb{R}^3),\forall x\in \mathbb{R}^3)\quad\quad(***) $$ を得る。任意の $u\in H^2(\mathbb{R}^3)\subset C_0(\mathbb{R}^3)$ を取る。Sobolev空間の基本事項定理32.2より $D(\mathbb{R}^3)$ の列 $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u-u_n\rVert_{2,2}=0$ なるものが取れて、Sobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.3)より $(u_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $u$ に一様収束する。よって $(***)$ より、 $$ tS(u,x,c\lvert t\rvert)=\lim_{n\rightarrow\infty}tS(u_n,x,c\lvert t\rvert)=\lim_{n\rightarrow\infty}\left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u_n\right)(x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^3)\quad\quad(****) $$ が成り立つ。一方、Plancherelの定理(緩増加超関数とFourier変換定理19.1)より $L^2$ ノルムで、 $$ \left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u\right)=\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(ct\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}u=\lim_{n\rightarrow\infty}\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(ct\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}u_n=\lim_{n\rightarrow\infty}\left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u_n\right) $$ であるから、$\left(\left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u_n\right)\right)_{n\in\mathbb{N}}$ のある部分列は a.e. $x\in \mathbb{R}^3$ で $\left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u\right)(x)$ に収束する。よって $(****)$ より、 $$ \left(\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}u\right)(x)=tS(u,x,c\lvert t\rvert)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^3) $$ が成り立つ。

補題6.5

$\mathcal{F}\colon L^2(\mathbb{R}^3)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^3)$ をFourier変換とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $v\in H^1(\mathbb{R}^3)$ に対し、$\frac{1}{\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}v\in L^1(\mathbb{R}^3)$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $u\in H^2(\mathbb{R}^3)$ に対し、$\mathcal{F}u\in L^1(\mathbb{R}^3)$ が成り立つ。
Proof.

$$ \int_{\mathbb{R}^3}\frac{1}{\lvert x\rvert^2(1+\lvert x\rvert^2)}dx =4\pi\int_{0}^{\infty}\frac{1}{1+r^2}dr\leq 4\pi \left(\int_{0}^{1}\frac{1}{1+r^2}dr+\int_{1}^{\infty}\frac{1}{r^2}dr\right)<\infty $$ であるから、 $$ \frac{1}{\lvert {\rm id}\rvert (1+\lvert {\rm id}\rvert)^{\frac{1}{2}}}\in L^2(\mathbb{R}^3) $$ である。よってHölderの不等式より、 $$ \frac{1}{\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}v=\frac{1}{\lvert {\rm id}\rvert (1+\lvert {\rm id}\rvert^2)^{\frac{1}{2}}}\mathcal{F}v\in L^1(\mathbb{R}^3) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ Sobolev空間の基本事項命題38.1より $(1+\lvert {\rm id}\rvert^2)\mathcal{F}u\in L^2(\mathbb{R}^3)$ である。また極座標変換より、

$$ \int_{\mathbb{R}^3}\frac{1}{(1+\lvert x\rvert^2)^2}dx=4\pi \int_{0}^{\infty}\frac{r^2}{(1+r^2)^2}dr\leq 4\pi \left(\int_{0}^{1}\frac{1}{(1+r^2)^2}dr+\int_{1}^{\infty}\frac{1}{r^2}dr\right)<\infty $$ であるから、 $$ \frac{1}{1+\lvert {\rm id}\rvert^2}\in L^2(\mathbb{R}^3) $$ である。よってHölderの不等式より、 $$ \mathcal{F}u=\frac{1}{(1+\lvert {\rm id}\rvert^2)}(1+\lvert {\rm id}\rvert^2)\mathcal{F}u\in L^1(\mathbb{R}^3) $$ が成り立つ。

定理6.6(全空間における $3$ 次元波動方程式の初期値問題の一意解の形)

$f(t)\colon \mathbb{R}\rightarrow H^2(\mathbb{R}^3)$ を $H^2(\mathbb{R}^3)$ のノルムで連続な関数、$c\in (0,\infty)$, $u\in H^2(\mathbb{R}^3)$, $v\in H^1(\mathbb{R}^3)$ とする。そして定理6.2で $\Omega=\mathbb{R}^3$ とした場合の $(1)\sim (4)$ を満たす一意解を $u(t)\colon \mathbb{R}\ni t\mapsto H^2(\mathbb{R}^3)$ とする。このとき、 $$ a\colon=\frac{1}{2}\mathcal{F}u+\frac{1}{2ic\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}v,\quad b\colon=\frac{1}{2}\mathcal{F}u-\frac{1}{2ic\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}v $$ とおけば、$a,b\in L^1(\mathbb{R}^3)$ であり、 $$ \begin{aligned} u(t,x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}a(k)e^{i(k\cdot x+ct\lvert k\rvert)}dk+\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}b(k)e^{i(k\cdot x-ct\lvert k\rvert)}dk\\ &+\frac{1}{4\pi c^2}\int_{\lvert y-x\rvert\leq c\lvert x\rvert}\frac{f\left(t\pm \frac{\lvert y-x\rvert}{c}, y\right)}{\lvert y-x\rvert}dy\quad(\forall t\in \mathbb{R},\forall x\in \mathbb{R}^3) \end{aligned} $$ が成り立つ。ただし $\mp$ は $t>0$ のときは $-$ で、$t<0$ のときは $+$ である。すなわち $\mathbb{R}^3$ における波動方程式の一意解は、平面波の波数ベクトル $k$ に関する積分と非斉次項による遅延解の和である。

Proof.

$a,b\in L^1(\mathbb{R}^3)$ であることは補題6.5による。定理6.2より、 $$ u(t)=\cos(ct\sqrt{-\Delta})u+\frac{\sin(ct\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}v+\int_{0}^{t}\frac{\sin(c(t-s)\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(s)ds\quad(\forall t\in \mathbb{R}) $$ であるから、Hilbert空間上の作用素論命題17.1より、 $$ \begin{aligned} u(t)&=\mathcal{F}^{-1}\cos(ct\lvert {\rm id}\rvert)\mathcal{F}u+\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(ct\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}v +\int_{0}^{t}\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)ds\\ &=\mathcal{F}^{-1}(ae^{ict\lvert {\rm id}\rvert}+be^{-ict\lvert {\rm id}\rvert})+\int_{0}^{t}\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)ds\quad(\forall t\in \mathbb{R})\quad\quad(*) \end{aligned} $$ となる。$a,b\in L^1(\mathbb{R}^3)$ より $(*)$ の右辺の第一項は、任意の $t\in \mathbb{R}$, $x\in \mathbb{R}^3$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\mathcal{F}^{-1}\left(ae^{ict\lvert {\rm id}\rvert}+be^{-ict\lvert {\rm id}\rvert}\right)(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}\left(a(k)e^{ict\lvert k\rvert}+b(k)e^{-ict\lvert k\rvert}\right)e^{ik\cdot x}dk\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}a(k)e^{i(k\cdot x+ct\lvert k\rvert)}dk+\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}b(k)e^{i(k\cdot x-ct\lvert k\rvert)}dk\quad\quad(**) \end{aligned} $$ と表される。今、$(*)$ の右辺の第二項を考える。Hilbert空間上の作用素論命題17.1より、 $$ \frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)=\mathcal{F}^{-1}\frac{\sin(cs\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}f(t-s)\quad(\forall t,s\in \mathbb{R}) \quad\quad(***) $$ である。$\mathbb{R}\ni t\mapsto f(t)\in H^2(\mathbb{R}^3)$ は $H^2(\mathbb{R}^3)$ のノルムで連続であるので、Sobolev空間の基本事項命題38.1より、 $$ \mathbb{R}\ni t\mapsto (1+\lvert {\rm id}\rvert^2)\mathcal{F}f(t)\in L^2(\mathbb{R}^3) $$ は $L^2(\mathbb{R}^3)$ のノルムで連続である。よって任意の $t\in \mathbb{R}$ に対し、 $$ \mathbb{R}\ni s\mapsto (1+\lvert {\rm id}\rvert^2)\frac{\sin(cs\lvert {\rm id}\rvert)}{c\lvert {\rm id}\rvert}\mathcal{F}f(t-s)=(1+\lvert {\rm id}\rvert^2)\mathcal{F}\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)\in L^2(\mathbb{R}^3) $$ は $L^2(\mathbb{R}^3)$ のノルムで連続であるから、Sobolev空間の基本事項命題38.1より $(***)$ は $H^2(\mathbb{R}^3)$ に属し、 $$ \mathbb{R}\ni s\mapsto \frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)\in H^2(\mathbb{R}^3)\quad\quad(****) $$ は $H^2(\mathbb{R}^3)$ のノルムで連続である。Sobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.3)より $(****)$ は $\sup$ ノルムによるBanach空間 $C_0(\mathbb{R}^3)$ 値の連続関数である。よって $(*)$ の右辺の第二項はBanach空間 $C_0(\mathbb{R}^3)$ 値のBochner積分(測度と積分9:Bochner積分定義44.1)とみなせる。任意の $x\in \mathbb{R}^3$ に対し、 $$ \delta_x\colon C_0(\mathbb{R}^3)\ni h\mapsto h(x)\in \mathbb{C} $$ は $C_0(\mathbb{R}^3)$ 上の連続線形汎関数であるから、Bochner積分の性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)より、任意の $t\in \mathbb{R}$, $x\in \mathbb{R}^3$ に対し、 $$ \left(\int_{0}^{t}\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)ds\right)(x) =\int_{0}^{t}\left(\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)\right)(x)ds $$ となる。補題6.4より、 $$ \left(\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)\right)(x) =sS(f(t-s,\cdot),x,c\lvert s\rvert)=\frac{s}{4\pi}\int_{S_2}f(t-s,x+cs\omega)d\mu_{S_2}(\omega) $$ であるから、 $$ \begin{aligned} &\left(\int_{0}^{t}\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)ds\right)(x) =\int_{0}^{t}\left(\frac{\sin(cs\sqrt{-\Delta})}{c\sqrt{-\Delta}}f(t-s)\right)(x)ds\\ &=\frac{1}{4\pi}\int_{0}^{t}s\int_{S_2}f(t-s, x+cs\omega)d\mu_{S_2}(\omega)ds =\frac{1}{4\pi c^2}\int_{0}^{c\lvert t\rvert}\int_{S_2}s^2\frac{f\left(t\mp\frac{s}{c}, x+s\omega\right)}{\lvert s\rvert}d\mu_{S_2}(\omega)ds\\ &=\frac{1}{4\pi c^2}\int_{\lvert y-x\rvert\leq c\lvert t\rvert}\frac{f\left(t\mp\frac{\lvert y-x\rvert}{c}, y\right)}{\lvert y-x\rvert}dy\quad(\forall t\in \mathbb{R},\forall x\in \mathbb{R}^3) \end{aligned} $$ ($4$ 番目の等号で極座標変換を用いた)となる。よって $(*),(**)$ より、 $$ \begin{aligned} u(t,x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}a(k)e^{i(k\cdot x+ct\lvert k\rvert)}dk+\frac{1}{(2\pi)^{\frac{3}{2}}}\int_{\mathbb{R}^3}b(k)e^{i(k\cdot x-ct\lvert k\rvert)}dk\\ &+\frac{1}{4\pi c^2}\int_{\lvert y-x\rvert\leq c\lvert t\rvert}\frac{f\left(t\mp \frac{y-x}{c},y\right)}{\lvert y-x\rvert}dy\quad(\forall t\in \mathbb{R},\forall x\in \mathbb{R}^3) \end{aligned} $$ が成り立つ。

参考文献

注釈

  1. $(*)$ の局所解で定義域が端点を持つものは、端点における値を初期値とした初期値問題の局所解を考え、それを繋ぎ合わせればよい。
  2. $\Lambda$ が $\leq$ により順序集合であることは自明である。$\Lambda$ が帰納的順序集合であることは次のようにして分かる。$\{x_j\colon (a_j,b_j)\rightarrow D\}_{j\in J}\subset \Lambda$ を $\Lambda$ の全順序部分集合とすると、全順序性より、$x(t)\colon (\inf_{j\in J}a_j,\sup_{j\in J}b_j)=\bigcup_{j\in J}(a_j,b_j)\rightarrow D$ を $x(t)=x_j(t)$ $(\forall j\in J,\forall t\in (a_j,b_j))$ となるように定義できる。このとき明らかに $x\in \Lambda$ であり、$x$ は $\{x_j\colon (a_j,b_j)\rightarrow D\}_{j\in J}$ の上界である。ゆえに $\Lambda$ は帰納的順序集合である。
  3. ただし $v=(v_1,\ldots,v_N)\in (H^1(\Omega))^N$ に対し $\lVert v\rVert_{2,1}=\sqrt{\sum_{j=1}^{N}\lVert v_j\rVert_{2,1}^2}$ である。
  4. $(**)$ は任意の $x\in \Omega$ に対し $C^*$-環 $\mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{C})$ の自己共役部分における順序に関して $(a_{i,j}(x))_{i,j}\geq C$ が成り立つと言うことである(Hilbert空間上の作用素論命題1.4を参照)。
  5. $\rho$ は滑らかで ${\rm supp}(\rho)\subset \Omega_1$ であるから、$\rho\partial_{-h}^{\alpha}\overline{u}\in D(\Omega)$ であること、任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し $p(\varphi,v)=\int_{\Omega}(\mathcal{A}v-bv)(x)\overline{\varphi}(x)dx$ であることに注意。
  6. $D(U)\subset D(\mathbb{R}^N)$ に注意。
  7. Friedrichsの軟化子の定義(合成積とFourier変換定義26.1)より、$\lvert x\rvert=\lvert y\rvert$ ならば $\psi_{\epsilon_0}(x)=\psi_{\epsilon_0}(y)$ であることに注意。
  8. $m>\frac{N}{2}$ であるから Sobolev空間の基本事項Sobolevの埋め込み定理(定理38.3)より $H^m(\mathbb{R}^N)\subset C_0(\mathbb{R}^N)$ である。
  9. Sobolevの埋め込み定理(Sobolev空間の基本事項定理38.3)を参照)