正規/全体正規空間はパラコンパクトハウスドルフ空間

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位相空間 $X$ について、以下が同値であることを示す。

  • $X$ は全体正規かつ $T_1$-空間
  • $X$ はパラコンパクトハウスドルフ空間
  • $X$ はハウスドルフでありかつ任意の開被覆は、局所有限かつ $\sigma$-疎な細分を持つ

$X$ がパラコンパクトハウスドルフであるとする。このとき、まず正則性を示す。

交わらない閉集合 $F$ と点 $x$ をとる。このとき、ハウスドルフ性により、$y \in F$ に対して、開近傍 $U_y$ であって、$\overline{U_y} \notin x$ なるものをとることができる。このとき、$\{U_y\}_{y \in F} \cup \{X \setminus F\}$ は開被覆であるから、その局所有限な細分 $\{V_y\}_{y \in F} \cup \{X \setminus F\}$ をとることができる。このとき、局所有限性より $\overline{\bigcup_{y \in F}V_y} = \bigcup_{y \in F} \overline{V_y}$ が成り立つ。従って、$\bigcup_{y \in F}V_y$ は $F$ と $x$ を分離する開集合である。

同様の方法で、正規性を示すことができる。

次に、全体正規性を示す。まず任意に開被覆 $\mathcal{U}$ をとってくると、これを局所有限な開被覆 $\mathcal{V}$ で細分することができる。特に点有限な開被覆であるが、これを超限帰納的に収縮させることにより、コゼロ集合による被覆 $\mathcal{W}$ によって $\mathcal{V}$ を細分することができる。局所有限なコゼロ被覆は正規であるから、$\mathcal{U}$ は正規となる。よって全体正規性が示された。


次に、全体正規 $T_1$-空間 $X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ をとる。

このとき、全体正規性より正規列 $\mathcal{U}, \mathcal{U}_1, \mathcal{U}_2, \ldots$ をとることができる。ここで、$\mathcal{U} = \{U_\alpha\}$ と整列しておく。

  • $V_{\alpha, 1} = \{x \in X|\mathcal{U}_1(x) \subset U_\alpha\}$
  • $V_{\alpha, n} = \mathcal{U}_n(V_{\alpha, n - 1})$, $n \geq 2$
  • $V_\alpha = \bigcup_{n \in \mathbb{N}} V_{\alpha, n}$

このとき、$V_\alpha$ は開集合となる。また、任意の $x \in X$ について $\mathcal{U}_1(x)$ はある $U \in \mathcal{U}$ に含まれるため、$V_{\alpha, 1}$ 全体は被覆となり、特に $\{V_\alpha\}$ は開被覆となる。

次に、$V_\alpha \subset U_\alpha$ を示す。このためには、$V_{\alpha, n} \subset U_\alpha$ を示せばよい。まず $\mathcal{U}_1(V_{\alpha, 1}) \subset U_\alpha$ については定義より明らかである。次に、$\mathcal{U}_n(V_{\alpha, n}) \subset U_\alpha$ が示されたとすると、$\mathcal{U}_{n + 1}(V_{\alpha, n + 1}) = \mathcal{U}_{n + 1}(\mathcal{U}_{n + 1}(V_{\alpha, n})) \subset \mathcal{U}_{n + 1}^2(V_{\alpha, n}) \subset \mathcal{U}_n(V_{\alpha, n}) \subset U_\alpha$ が成り立つため、特に $V_{\alpha, n} \subset U_\alpha$ が成り立つ。

  • $H_{\alpha, n} = \{x \in X| \mathcal{U}_n(x) \subset V_\alpha\} \setminus \bigcup_{\beta \lt \alpha} V_\beta$
  • $W_{\alpha, n} = \mathcal{U}_{n + 2}(H_{\alpha, n})$

このとき、$H_{\alpha, n}$ は閉集合である。実際、補集合を考えると開集合となることがわかるであろう。ここで、任意の点 $x \in X$ について、$\mathcal{U}_{n + 2}(x)$ は高々ひとつの $W_{\alpha, n}$ にしか交わらないことを示す。

もし $\alpha \lt \beta$ について $y \in W_{\alpha, n} \cap \mathcal{U}_{n + 2}(x)$ かつ $z \in W_{\beta, n} \cap \mathcal{U}_{n + 2}(x)$ とする。このとき、$\mathcal{U}_{n + 2}(y) \subset V_y \in \mathcal{U}_{n + 1}$ なる $V_y$, $\mathcal{U}_{n + 2}(z) \subset V_z \in \mathcal{U}_{n + 1}$ なる $V_z$ が存在する。さらに、$V_y \cup V_z \subset \mathcal{U}_{n + 1}(x)$ より、$V \in \mathcal{U}_n$ であって $\mathcal{U}_{n + 2}(y) \cup \mathcal{U}_{n + 2}(z) \subset V_y \cup V_z \subset V$ なるものが存在する。このような $V$ を固定する。

このとき、$V \cap H_{\alpha, n}$, が非空であることに注意すると、$V \subset V_\alpha$ が成り立つが、これは $V \cap H_{\beta, n}$ が非空であることに矛盾する。よって、任意の点 $x \in X$ について、$\mathcal{U}_{n + 2}(x)$ は高々ひとつの $W_{\alpha, n}$ にしか交わらないことが示された。

ここから、$\{W_{\alpha, n}\}$ の局所有限性は明らかである。また、$x \in \overline{W_{\alpha, n}} \cap \overline{W_{\beta, n}}$ ならば、$\mathcal{U}_{n + 2}(x)$ が $W_{\alpha, n}$ と $W_{\beta, n}$ と交わってしまうため、矛盾する。よって $\{W_\alpha, n\}$ は疎である。

  • $H_n = \bigcup_{\alpha}H_{\alpha, n}$
  • $W_n = \bigcup_{\alpha}W_{\alpha, n}$

$\{H_n\}$ は開被覆である。実際、$x \in X$ について、$x \in V_\alpha$ となる最小の $\alpha$ をとってくる。このとき $x \in H_\alpha$ を示す。このためにはある $n$ について $\mathcal{U}_n(x) \subset V_\alpha$ ならばよい。ここで $x \in V_{\alpha, n - 1}$ となるような $n$ を選ぶと、$\mathcal{U}_n(x) \subset \mathcal{U}_n(V_{\alpha, n - 1}) \subset V_\alpha$ が成り立つ。

$X$ の正規性より、$H_n \subset D_n \subset W_n$ なるコゼロ集合 $D_n$ が存在する。このとき、$\{D_n\}$ は可算なコゼロ被覆となるが、可算なコゼロ被覆は星有限な可算コゼロ被覆による細分を持つため、$\{E_n\}$ であって $E_n \subset D_n$ なる局所有限なコゼロ被覆による細分が存在する。

このとき、$\{E_n \cap W_{\alpha, n}\}_{n \in \mathbb{N}, \alpha}$ は局所有限被覆である。また、$n \in \mathbb{N}$ を固定したとき、$\{E_n \cap W_{\alpha, n}\}_\alpha$ は疎である。

最後に、$W_{\alpha, n} \subset U_\alpha$ を示す。これは $\mathcal{U}_{n + 2}(H_{\alpha, n}) \subset \mathcal{U}_n(H_{\alpha, n}) \subset V_\alpha \subset U_\alpha$ であるため成り立つ。

よってこれが求める $\mathcal{U}$ の細分である。


系として、距離空間は全体正規であるため、距離空間のパラコンパクト性が主張される。

証明の詳細は

  • 児玉之宏・永見啓応, 『位相空間論』

などを参考にした。