演習問題解答:Engelking「General Topology」

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演習問題解答:Engelking「General Topology」

本稿では、位相空間論の教科書であるEngelking「General Topology」の演習問題の解答を掲載する。

Chapter 1

1.1 Topological spaces. Open and closed sets. Bases. Closure and interior

1.1.A

$A\cap B \subset A \subset \overline{A}$ かつ $A\cup B \subset B \subset \overline{B}$ より、$A \cap B \subset \overline{A} \cap \overline{B}$ が成り立つ。$\overline{A} \cap \overline{B}$ は閉集合であるため、$\overline{A\cap B} \subset \overline{A} \cap \overline{B}$ が成り立つ。

実数直線 $\mathbb{R}$ の部分集合 $A=(-1,0)$, $B=(0,1)$ について、$\overline{A\cap B}$ は空集合であるが、$\overline{A} \cap \overline{B}$ は $\{0\}$ と等しくなるため、一般に $\overline{A\cap B} \neq \overline{A} \cap \overline{B}$ である。

$A \subset \overline{A\setminus B} \cup \overline{B}$ かつ $\overline{A\setminus B} \cup \overline{B}$ は閉集合であるため、$\overline{A} \subset \overline{A\setminus B} \cup \overline{B}$ が成り立つ。従って、$\overline{A} \setminus \overline{B} \subset \overline{A\setminus B}$ が示される。

実数直線 $\mathbb{R}$ の部分集合 $A=[0,1]$, $B=(0,1)$ について、$\overline{A}\setminus \overline{B}$ は空集合であるが、$\overline{A\setminus B}$ は $\{0,1\}$ と等しくなるため、一般に $\overline{A} \setminus \overline{B} = \overline{A\setminus B}$ は成り立たない。

1.1.B

$x \in \overline{A_i}$ ならば $x \in \overline{\bigcup A_\bullet}$ が成り立つ。また、$x \in \overline{\bigcup{A_{i+\bullet}}}$ ならば $x \in \overline{\bigcup A_\bullet}$ が成り立つ。

逆に $x \in \overline{\bigcup A_\bullet}$ かつ $x \notin \bigcap_i \overline{\bigcup A_{i+\bullet}}$ ならば、ある $i$ について $x \notin \overline{\bigcup A_{i+\bullet}}$ となる。このとき、$x \in \overline{A_1 \cup \ldots \cup A_i}$ が成り立つ。従って $x \in \bigcup \overline{A_\bullet}$ となる。

1.1.C

ここでopen domainとは、開集合であって、その閉包の内部と一致するようなもののことをいう。正則開集合ともよばれる。

(a) 閉集合 $F$ の内部 $\mathrm{Int}(F)$ について、これがopen domainとなることを示す。まず $\mathrm{Int}(F)$ の閉包は $F$ よりも小さいため、$\mathrm{Int}(F)$ の閉包の内部は $\mathrm{Int}(F)$ より小さいが、明らかにこれは $\mathrm{Int}(F)$ を含む。よってopen domainとなる。

(b) open domain $U$, $U'$ をとる。このとき、$U \cap U'$ の閉包の内部に $U \cap U'$ は含まれる。また、$U \cap U'$ の閉包の内部は $U$ の閉包の内部に含まれ、また $U'$ の閉包の内部にも含まれるため、結局 $U \cap U'$ と一致する。unionとcompatibleでない例としては、$\mathbb{R}$ の開集合 $(-1,0)$ と $(0,1)$ の組などがある。

(c) $U \subset V$ ならば明らかに $\overline{U} \subset \overline{V}$ である。また $\overline{U} \subset \overline{V}$ のとき $\mathrm{Int}(\overline{U})\subset \mathrm{Int}(\overline{V})$ である。

(d) $U_\bullet$ を含むようなopen domainは $\bigcup U_\bullet$ を含む必要があるので $\mathrm{Int}(\overline{\bigcup U_\bullet})$ 以上の大きさである必要があるが、これ自身がopen domainである。また、$U_\bullet$ に含まれるようなopen domainは $\bigcap U_\bullet$ に含まれるため、さらには $\mathrm{Int}(\bigcap U_\bullet)$ に含まれる必要がある。ここで、$\mathrm{Int}(\bigcap U_\bullet)$ の閉包の内部は $\mathrm{Int}(\bigcap U_\bullet)$ を含むが、しかし $U_\bullet$ に含まれるため、結局 $\mathrm{Int}(\bigcap U_\bullet)$ 自身と一致する。従ってこれ自身がopen domainとなる。

(e) $A$ がopen domainであるとき、$A$ の補集合 $A^c$ の内部は $A$ の閉包の補集合であり、$A^c$ の内部の閉包は $A$ の閉包の内部の補集合であるため、$A^c$ はclosed domainである。逆も同様である。

1.1.D

位相 $\{\mathcal{O}_s\}$ について、$\bigcap \mathcal{O}_s$ は $\mathcal{O}_s$ よりも粗い最大の位相である。また $\bigcup \mathcal{O}_s$ で生成される位相は $\mathcal{O}_s$ よりも細かい最小の位相である。

Chapter 2

2.1.

2.2.

2.2.A

$\mathbb{R}$ は連結であるため、その像も連結である。

2.2.B

離散空間の直和は離散空間である。

Chapter 3

この本においてはcompactという用語にHausdorff性を課している。

3.1 Compact Spaces

3.1.B

Sorgenfrey直線 $\mathbb{S}$ の部分集合 $K$ であってコンパクトかつ非可算なものが存在したと仮定して矛盾を導く。

$\mathbb{S}$ において $\{[n,n+1)|n\in\mathbb{Z}\}$ は $K$ の開被覆であるため、有限個の要素で覆われる。よって $K$ は有界である。$\mathbb{S}$ の適当な位相同型 $f$ によって $f(K) \subset [0,1)$ を成り立たせるようにできる。

以下 $K\subset [0,1)$ を仮定する。このとき、$[0,\frac{1}{2}]$ または $[\frac{1}{2},1]$ の少なくともいずれか一方は、$K$ の要素を非可算個含む。そのような区間をひとつ選び、同様に半分に分けて、そのうち $K$ の元を非可算個含むようなものを選ぶという操作を繰り返すと、有理数の列 $0=q_1,\ldots, q_n,\ldots$ であって $[q_{n+1},q_{n+1}+\frac{1}{2^{n+1}}]\subset[q_n,q_n+\frac{1}{2^n}]$ が成り立ち、かつ任意の $n$ について $[q_n,q_n+\frac{1}{2^n}] \cap K$ が非可算集合となるものを取れる。

このとき、$\mathbb{R}$ における $[0,1]$ のコンパクト性より、$X=\bigcap [q_n,q_n+\frac{1}{2^n}]$ は要素を持つ。$X$ の要素をひとつ選び $x$ とおく($X$ は実際のところ一元集合である)。

任意の正実数 $t$ について、$(x-t,x+t)$ はある $[q_n, q_n+\frac{1}{2^n}]$ を含むので、$K$ と非可算個の点で交わる。

任意の正実数 $t$ について、$(y-t,y+r)$ が $K$ と非可算個の点で交わるような $y$ を、この証明のあいだ良い実数であると呼ぶ。また、任意の正実数 $t$ について、$(y,y+r)$ が $K$ と非可算個の点で交わるような $y$ を、この証明のあいだ非常に良い実数であると呼ぶ。

ある正実数 $t$ について $[x,x+t) \cap K$ が可算集合となるものがある場合について、$(x-t,x] \cap K$ は常に非可算となる。特に $[0,x]\cap K$ は非可算であるため、$0<r_1<x$ であって $[0,r_1)\cap K\neq \emptyset$ なるものが取れる。同様に $r_1<r_2<\ldots<x$ であって $[r_i,r_{i+1})\cap K\neq \emptyset$ であるようなものが取れる。

$r_1,r_2,\ldots$ は上に有界であるため、$r=\sup_{n\in \mathbb{N}} r_n$ は存在する。このとき、$\{[0,r_1)\}\cup\{[r_i,r_{i+1})|i \in \mathbb{N}\}\cup \{[r,1)\}$ は $K$ の開被覆であるが、これは有限細分を持たない。よってこの場合は仮定に反する。

任意の正実数 $t$ について $[x,x+t)\cap K$ が非可算集合であるとする。このとき、$(x,1)\cap K = \bigcup_{i\in \mathbb{N}}([x+\frac{1-x}{2^n},1)\cap K)$ は非可算集合であるため、鳩の巣原理よりある $n\in \mathbb{N}$ について $(x+\frac{1-x}{2^n},1)\cap K$ は非可算集合である。特に、$x<s_1<1$ であって $[s_1,1)\cap K$ が非可算となるものが取れる。

このとき、ここまでの議論により $s_1<r_1<1$ なる良い実数が取れる。同様の議論により良い実数 $r_1<r_2\ldots < 1$ を取ることができる。またいずれかが非常に良い実数でなければ、先ほどの議論により $K$ のコンパクト性に反するので、$r_i$ は非常に良い実数であるとしてよいm。$r=\sup_{i\in \mathbb{N}} r_i$ とおくと、$\{[0,r_1)\}\cup \{[r_i,r_{i+1}|i\in \mathbb{N}\}\cup \{[r,1)\}$ は有限細分を持たない $K$ の開被覆となる。よって仮定に反する。

したがって $K$ は可算集合である。$\Box$

3.1.F

参考文献