約数総和関数

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$\newcommand{\N}{\mathbb{N}}$ $\newcommand{\Z}{\mathbb{Z}}$ $\newcommand{\Q}{\mathbb{Q}}$ $\newcommand{\R}{\mathbb{R}}$ $\newcommand{\C}{\mathbb{C}}$ $\newcommand{\LCM}{\mathrm{LCM}}$ $\newcommand{\abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert}$ $\newcommand{\wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert}$ $\newcommand{\floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor}$ $\newcommand{\mathmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)}$


この記事では、自然数 $N$ の約数の総和 $$\sigma(N)=d_1(N)=\sum_{d\mid N} d$$ について詳しく解説する。

数論的関数:定理2.1ですでに述べたように $$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$ と素因数分解すると $$\sigma(N)=\prod_{i=1}^r \sigma(p_i^{e_i})=\prod_{i=1}^r \frac{p_i^{e_i+1}-1}{p_i-1} \quad\quad (0.1)$$ が成り立つ。また数論的関数:定理2.3ですでに述べたように $$\frac{\sigma(N)}{N}=d_{-1}(N)=\prod_{i=1}^r \left(1+\frac{1}{p_i}+\cdots +\frac{1}{p_i^{e_i}}\right)=\prod_{i=1}^r \frac{1-\frac{1}{p_i^{e_i+1}}}{1-\frac{1}{p_i}} \quad\quad (0.2)$$ が成り立つ。

基本的性質

定理 1

$k\in\Z$ とする。 $M\mid N$ かつ $M<N$ のとき $$\frac{\sigma(M)}{M}<\frac{\sigma(N)}{N}$$ が成り立つ。

Proof.

$(0.2)$ より両辺はそれぞれ $d_{-1}(M), d_{-1}(N)$ に一致するので数論的関数:定理2.4から従う。

定理 2

$$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$ と素因数分解すると $$\prod_{i=1}^r \frac{p_i+1}{p_i}\geq \frac{\sigma(N)}{N}<\prod_{i=1}^r \frac{p_i}{p_i-1}.$$ 左の等号は、$N$ が平方因数をもたないときに、かつそのときに限り成り立つ。

Proof.

左の不等号は定理 1から明らか。右の不等号は $$\frac{1-\frac{1}{p_i^{e_i+1}}}{1-\frac{1}{p_i}}<\frac{1}{1-\frac{1}{p_i}}=\frac{p_i}{p_i-1}$$ より従う。


完全数

$$6=1+2+3$$ のように、自分自身を除く約数の和が自分自身に等しくなる数を完全数という。$\sigma$ 関数を用いると、 $N$ が完全数であるとは $\sigma(N)-N=N$ つまり $$\sigma(N)=2N \quad\quad (2.1)$$ が成り立つということができる。これは $(0.2)$ より $$\prod_{i=1}^r \frac{1-\frac{1}{p_i^{e_i+1}}}{1-\frac{1}{p_i}=2 \quad\quad (2.2)$$ とも同値である。

$p$ が奇素数のとき $p^e\mid\mid N \Longleftrightarrow p^e\mid\mid\sigma(N)$ かつ $2^e\mid\mid N\Longleftrightarrow 2^{e+1}\mid\mid\sigma(N)$ となることがすぐにわかる。

偶数の完全数

$$6, 28, 496, \ldots$$ は完全数であることが古くから知られていた。すでにEuclidが偶数の完全数を求める方法を発見している。

定理 3

$2^m-1$ が素数ならば $$N=2^{m-1}(2^m-1)$$ が完全数である。

Proof.

$2^m-1$ が素数ならば $(0.1)$ より $$\sigma(N)=(2^m-1)\times 2^m=2N$$ となるから、$(2.1)$ より $N$ は完全数である。

その後、Eulerは偶数の完全数はすべてEuclidが示した形のものであることを示した。

定理 4

$N$ が偶数の完全数 $\Longleftrightarrow$ $N=2^{m-1}(2^m-1)$ かつ $2^m-1$ が素数。

Proof.

$N$ は偶数なので $$N=2^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$ と素因数分解し、$m=e_1+1$ とおく。 $\sigma(2^{e_1})=2^m-1$ は $\sigma(N)=2N$ を割り切るが、 $2^m-1$ は奇数だから $N$ を割り切る。 $2^m-1$ が素数でないとし、素因数のひとつを $q$ とおくと $q<2^m-1$ かつ $q$ は $N$ を割り切る。よって 定理 1 より $$\frac{\sigma(N)}{N}\geq \frac{2^m-1}{2^{m-1}}\times \frac{q+1}{q}>\frac{2^m-1}{2^{m-1}}\times \frac{2^m}{2^m-1}=2$$ となって、$(2.1)$ が成り立たないので $N$ は完全数ではない。よって $2^m-1$ は素数であり、かつ $2^{m-1}(2^m-1)$ は $N$ を割り切る。 $N=2^{m-1}(2^m-1)$ ならば、先の定理で見たように $N$ は完全数である。 $N>2^{m-1}(2^m-1)$ ならば 定理 1 より $$\frac{\sigma(N)}{N}>\frac{\sigma(2^{m-1}(2^m-1))}{2^{m-1}(2^m-1)}=2$$ なので $N$ は完全数である。

よって、偶数の完全数を求める問題は $2^m-1$ の形の素数、すなわちMersenne素数を求める問題に帰着する。

奇数の完全数

一方、奇数の完全数は存在するか否かもわかっていない。Eulerは定理 4に対応して、奇数の完全数がどのような形をとらなければならないかも示している。

定理 5

$N$ が奇数の完全数ならば $$N=p^\alpha M^2, p\not\mid M$$ かつ $p\equiv\alpha\equiv 1\mathmod{4}$ である。

Proof.

$N$ は奇数だから $2\mid\mid 2N=\sigma(N)$ となる。 $$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$ と素因数分解する。各 $p_i$ は奇数だから $$\sigma(p_i^{e_i})=1+\cdots +p_i^{e_i}\equiv e_i+1\mathmod{2}$$ となる。$e_i$ がすべて偶数ならば $\sigma(N)=2N$ が奇数となって矛盾する。 また $j\neq k$ で $e_j, e_k$ がともに奇数ならば $\sigma(p_j^{e_j}), \sigma(p_k^{e_k})$ はともに偶数なので $$2^2\mid \sigma(p_j^{e_j})\sigma(p_k^{e_k})\mid \sigma(N)=2N$$ となって矛盾する。よって $e_j$ が奇数となる $j$ がちょうど$1$つ存在する。 $e_j=2m-1$ とおくと $$\sigma(p_j^{e_j})=1+p_j+\cdots +p_j^{2m-1}=(1+p_j)(1+p_j^2+\cdots+p_j^{2(m-1)})$$ となる。 $p_j\equiv 3\mathmod{4}$ のとき $$2^2\mid (1+p_j)\mid\sigma(p_j^{e_j})\mid \sigma(N)$$ となって矛盾する。また $e_j\equiv 3\mathmod{4}$ のとき $m$ は偶数なので $$(1+p_j^2)\mid(1+p_j^2+\cdots+p_j^{2(m-1)})$$ となるから、やはり $$2^2\mid (1+p_j)(1+p_j^2)\mid\sigma(p_j^{e_j})\mid \sigma(N)$$ となって矛盾する。

このことから $N$ が奇数の完全数ならば $$N=p^\alpha M^2=p^\alpha q_1^{2b_1} q_2^{2b_2} \cdots q_s^{2b_s}, p\equiv\alpha\equiv 1\mathmod{4}\quad\quad (3.1)$$ と素因数分解できることがわかる。 また $(0.1)$ より $\sigma(p^\alpha)$ および各 $\sigma(q_i^{2b_i})$ はいずれも $\sigma(N)=2N$ を割り切るが、 $\sigma(q_i^{2b_i})$ は奇数だから、$\sigma(p^\alpha)/2$ および各 $\sigma(q_i^{2b_i})$ はいずれも $N$ を割り切ることがわかる。

Sternは $N$ が奇数の完全数ならば $N\equiv 1\mathmod{4}$ となることを示した。 $N$ が奇数の完全数ならば $N\equiv 1\mathmod{12}$ または $N\equiv 9\mathmod{36}$ となることは TouchardによってJacobiの$\theta$関数の理論を用いて証明され、その後 Satyanarayana, Raghavachari, Holdenerにより独立に初等的に証明された。

定理 6 (Touchard, 1953, Roberts, 2008)

$N$ が奇数の完全数ならば $N\equiv 1\mathmod{12}$ または $N\equiv 9\mathmod{36}$ となる (Touchard, 1953)。 やや強く、$N$ が奇数の完全数ならば $N\equiv 1\mathmod{12}, N\equiv 81\mathmod{324},$ または $N\equiv 117\mathmod{468}$ である (Roberts, 2008)。

Proof.

$N$ を $(3.1)$ のように素因数分解する。 $p\equiv 1\mathmod{4}$ かつ $M^2\equiv 1\mathmod{4}$ だから $$N=p^e M^2\equiv 1\mathmod{4}\quad\quad (3.2)$$ が成り立つ。

$N$ が $3$ で割れないとする。$N$ の素因数はいずれも $3$ ではないから(あるいは $p\equiv 1\mathmod{4}$ だから)、$p\neq 3$ である。 $p\equiv 2\mathmod{3}$ ならば $$\sigma(p^\alpha)=(1+p)(1+p^2+\cdots +p^{\alpha-1})$$ より $$3\mid (p+1)\mid\sigma(N)=2N$$ より $3\mid N$ となって矛盾する。 よって $p\equiv 1\mathmod{3}$ である。$M$ も $3$ で割れないから $M^2\equiv 1\mathmod{3}$ なので $$N=p^e M^2\equiv 1\mathmod{3}$$ となって、$(3.2)$とあわせて $$N\equiv 1\mathmod{12}$ となる。

$N$ が $3$ で割り切れるとする。$p\equiv 1\mathmod{4}$ だから、$p\neq 3$ なので $3^{2b}\mid\mid N$ となる整数 $b\geq 1$ がとれる。

$b=1$ つまり $3^2\mid\mid N$ のとき、$13\mid\sigma(3^2)\mid\sigma(N)$ より $13$ は $N$ を割り切る。よって $N\equiv 0\mathmod{117}$ であるから $(3.2)$ とあわせて $N\equiv 117\mathmod{468}$ となる。

$b\geq 2$ つまり $3^4\mid N$ のとき、$N\equiv 0\mathmod{81}$ だから $(3.2)$ とあわせて $N\equiv 81\mathmod{324}$ となる。

定理 7

$N$ が奇数の完全数ならば $\omega(N)\geq 3$ である。 また $N$ は $105$ で割り切れない。すなわち $3, 5, 7$ が同時に $N$ を割り切ることはできない。

Proof.

$N$ を奇数とし $$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$ と素因数分解する。 $r=\omega(N)\leq 2$ のとき定理 2より $$\frac{\sigma(N)}{N}<\frac{p_1}{p_1-1}\times\frac{p_2}{p_2-1}\leq \frac{3}{2}\times\frac{5}{4}<2$$ だから $N$ は完全数ではない。

また $N$ が完全数で $105\mid N$ ならば定理 5より $N$ は $(3.1)$ のように素因数分解されなければならない。 $p\equiv 1\mathmod{4}$ だから $p\neq 3, 7$ なので $3^2\mid N, 7^2\mid N$ となる。よって定理 2より $$\frac{\sigma(N)}{N}\geq \frac{\sigma(3^2\times 5\times 7^2)}{3^2\times 5\times 7^2}=\frac{13\times 6\times 57}{9\times 5\times 49}>2$$ となって矛盾する。

  • $[$Touchard, 1953$]$ Jacques Touchard, On prime numbers and perfect numbers, Scripta Math. 19 (1953), 35--39.
  • $[$Satyanarayana, 1959$]$ M. Satyanarayana, Odd perfect numbers, Math. Student 27 (1959), 17--18.
  • $[$Raghavachari, 1966$]$ M. Raghavachari, On the form of odd perfect numbers, Math. Student 34 (1966), 85--86.
  • $[$Holdener, 2002$]$ Judy A. Holdener, A theorem of Touchard on odd perfect numbers, Amer. Math. Monthly 109 (2002), 661--663, doi:10.1080/00029890.2002.11919899 (Taylor and Francis Online), doi:10.2307/3072433 (JSTOR).
  • $[$Roberts, 2008$]$ Tim S. Roberts, On the form of an odd perfect number, Austral. Math. Soc. Gaz. 35 (2008), 244, [1]
  • $[$Stern, 1886$]$ M. M. Stern, Sur les nombres parfaits, Mathesis 6 (1886), 248--250, available from Google books.

素因数の個数

上記のように、$N$ が奇数の完全数ならば $\omega(N)\geq 3$ である。$(3.1)$ から $\Omega(N)\geq 5$ であることもわかる。

定理 8

$N$ が奇数の完全数で、$3$ で割り切れないならば $\omega(N)\geq 7$ である。 さらに $\gcd(N, 15)=1$ ならば $\omega(N)\geq 15$ である。

Proof.

$N$ が $3$ で割り切れない奇数で、$\omega(N)\leq 6$ ならば $$\frac{\sigma(N)}{N}<\frac{5}{4}\times \frac{7}{6}\times\cdots\times\frac{19}{18}=1.949\cdots<2$$ となり、 $N$ が $3$ でも $5$ でも割り切れない奇数で、$\omega(N)\leq 14$ ならば $$\frac{\sigma(N)}{N}<\frac{7}{6}\times \frac{11}{10}\times\cdots\times\frac{59}{58}=1.9933\cdots<2$$ となるから、いずれの場合も $N$ は完全数ではありえない。

さらに、Nielsen, 2015 は $\omega(N)\geq 10$ を示した。また、Nielsen, 2007 は $N$ が $3$ で割り切れないとき $\omega(N)\geq 12$ となることを示している。 一方、Ochem and Rao, 2012 は重複も含めると $N$ は少なくとも$101$個の素因数を持たなければならないことが知られている。

なお、$\Omega(N)$ と $\omega(N)$ の間には、次のような関係が成り立つ。

  • Ochem and Rao, 2014: $\Omega(N)\geq \max\{(18\omega(N)-31)/7, 2\omega(N)+51\}$.
  • Zelinsky, 2018: $3\not\mid N$ のとき $\Omega(N)\geq (8\omega(N)-7)/3$, $3\mid N$ のとき $\Omega(N)\geq (21\omega(N)-39)/8$.
  • Zelinsky, 2021: $3\not\mid N$ のとき $\Omega(N)\geq (302\omega(N)-286)/113$, $3\mid N$ のとき $\Omega(N)\geq (66/25)\omega(N)-5$.

このことから、素因数の指数の平均値は $103/41=2.512\cdots$ 以上でならなければならないことがわかる。

  • $[$Nielsen, 2007$]$ Pace P. Nielsen, Odd perfect numbers have at least nine distinct prime factors, Math. Comp. 76 (2007), 2109--2126, doi:10.1090/S0025-5718-07-01990-4.
  • $[$Nielsen, 2015$]$ Pace P. Nielsen, Odd perfect numbers, diophantine equations, and upper bounds, Math. Comp. 84 (2015), 2549--2567, doi:10.1090/S0025-5718-2015-02941-X.
  • $[$Ochem and Rao, 2014$]$ Pascal Ochem and Michaël Rao, On the number of prime factors of an odd perfect number, Math. Comp. 83 (2014), 2435--2439, doi:10.1090/S0025-5718-2013-02776-7.
  • $[$Zelinsky, 2018$]$ Joshua Zelinsky, An improvement of an inequality of Ochem and Rao concerning odd perfect numbers, INTEGERS 18 (2018), A48.
  • $[$Zelinsky, 2021$]$ Joshua Zelinsky, On the total number of prime factors of an odd perfect number, INTEGERS 21 (2021), A76.


$N$ の大きさ

Ochem and Rao, 2012 は奇数の完全数は $10^{1500}$ より大きくなければならないことを示した。 一方、奇数の完全数は無限個か有限個かもわかっていないが、素因数の個数が限られた奇数の完全数は有限個であることが知られている。これについては後の節を参照。

  • $[$Ochem and Rao, 2012$]$ Pascal Ochem and Michaë Rao, Odd perfect numbers are greater than $10^{1500}$, Math. Comp. 81 (2012), 1869--1877, doi:10.1090/S0025-5718-2012-02563-4.


素因数の大きさ

$N$ が奇数の完全数とし、 $$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}, p_1<p_2<\cdots <p_r$$ と素因数分解する。大きい素因数については次のような結果が知られている。

  • Goto and Ohno, 2007: $p_r>10^8$.
  • Iannucci, 1999: $p_{r-1}>10000$.
  • Iannucci, 2000: $p_{r-2}>100$.
  • Acquaah and Konyagin, 2012: $p_r<(3N)^{1/3}$, また $(3.1)$ のように素因数分解したとき $q_i<(2N)^{1/4}$.
  • Zelinsky, 2019: $p_{r-1}<(2N)^{1/5}$ かつ $p_r p_{r-1}<6^{1/4}N^{1/2}$. また $p_r<p_{r-1}+\sqrt{3p_{r-1}}-2$ のとき $p_{r-1}<(2N)^{1/6}$.

また、Ochem and Rao, 2012 は、奇数の完全数は $10^{62}$ より大きい素数冪で割り切れなければならないことを示している。

一方、Grün, 1952 は、$p_1<(2/3)r+2$、すなわち奇数の完全数は $(2/3)r+2$ より小さい素因数をもたなければならないことを示している。 また、Kishore, 1977a/1981 は $2\leq i\leq 6$ のとき $$p_i<2^{2^{i-1}}(r-i+1)$$ となることを示した。 さらに Pomerance, 1977 は $N$ が奇数で $p_1<p_2<\cdots<p_r$ が $N$ の素因数、$\sigma(N)/N=n/d, \omega(N)=r$ ならば $$p_k<(2nr)^{2^{k(k+1)/2}}$$ となることを示している。

また、Norton, 1961 は、$N$ の最小の素因数が $n$ 番目の素数であるとき $$\omega(N)>n^2-2n-\frac{n+1}{\log n}-\frac{5}{4}-\frac{1}{2n}-\frac{1}{4n\log n}$$ であることを示している。

  • $[$Acquaah and Konyagin, 2012$]$ Peter Acquaah and Sergei Konyagin, On prime factors of odd perfect numbers, Int. J. Number Theory 8 (2012), 1537--1540, doi:10.1142/S1793042112500935.
  • $[$Goto and Ohno, 2008$]$ Takashi Goto and Yasuo Ohno, Odd perfect numbers have a prime factor exceeding $10^8$, Math. Comp. 77 (2008), 1859--1868, doi:10.1090/S0025-5718-08-02050-4.
  • $[$Grum, 1952$]$ Otto Grün, Über ungerade vollkommene Zahlen, Math. Z. 55 (1952), 353--354, doi:10.1007/BF01181133.
  • $[$Iannucci, 1999$]$ Douglas E. Iannucci, The second largest prime divisor of an odd perfect number exceeds ten thousand, Math. Comp. 68 (1999), 1749--1760, doi:10.1090/S0025-5718-99-01126-6.
  • $[$Iannucci, 2000$]$ Douglas E. Iannucci, The third largest prime divisor of an odd perfect number exceeds one hundred, Math. Comp. 69 (2000), 867--879, doi:10.1090/S0025-5718-99-01127-8.
  • $[$Kishore, 1981$]$ Masao Kishore, On odd perfect, quasiperfect, and odd almost perfect numbers, Math. Comp. 36 (1981), 583--586, doi:10.1090/S0025-5718-1981-0606516-3.
  • $[$Norton, 1961$]$ Karl K. Norton, Remarks on the number of factors of an odd perfect number, Acta Arith. 6 (1961), 365--374.
  • $[$Pomerance, 1977$]$ Carl Pomerance, Multiply perfect numbers, Mersenne primes and effective computability, Math. Ann. 226 (1977), 195--206, doi:10.1007/BF01362422, available from author's cite.
  • $[$Zelinsky, 2019$]$ Joshua Zelinsky, Upper bounds on the second largest prime factor of an odd perfect number, Int. J. Number Theory 15 (2019), 1183--1189, doi:10.1142/S1793042119500659.


素因数の個数が限られた奇数の完全数

奇数の完全数は無限個か有限個かもわかっていないが、素因数の個数が限られた奇数の完全数は有限個であることが知られている。

Dickson, 1913 は $\omega(N)$ が与えられた数以下になる奇数の完全数は有限個しか存在しないことを証明した。 Dicksonはより強く、$\sigma(N)/N\geq 2$ となるが、$N$ の約数 $M<N$ に対しては $\sigma(M)/M<2$ となるような奇数 $N$ で $\omega(N)$ が与えられた数以下になるものは 有限個しか存在しないことを証明した。 Dicksonの証明はThue方程式の解の有限性を用いるものであったが、Shapiro, 1949 これに初等的な証明を与えている。

Pomerance, 1977 は初等的な方法で、$N$ が奇数で $\sigma(N)/N=n/d, \omega(N)=r$ ならば $$N<(2nr)^{(2nr)^{2^{r^2}}}$$ となることを証明した($N$ が偶数の場合も一定の条件下で $N$ が $n, r$ の関数として定まる値以下であることを示しているが、その証明は対数の一次形式に関する下からの評価を用いた複雑なものとなる)。

Heath-Brown, 1994 はPomerance とは別の初等的な方法で、$N$ が奇数で $\sigma(N)/N=n/d, \omega(N)=r$ ならば $$N<(4d)^{4^r}$$ となることを示した。Nielsen, 2015 は、Heath-Brownの方法に基づいて、$N$ が奇数で $\sigma(N)/N=n/d, \omega(N)=r$ ならば $$N<(d(d+1))^{(2^r-1)^2}$$ となることを示した。 とくに $N$ が奇数の完全数ならば $$N<2^{(2^{\omega(N)}-1)^2}$$ が成り立つ。

さらに、Yuan and Zhang, 2014 は $\omega(N)\leq r, N\mid\sigma(N), N>1$ となる $N$ の個数は $4^{r^2}/(2^{r+2}(r-1)!)$ より小さく、 $\omega(N)\leq r, N\mid\sigma(N), 1<N\leq x$ となる $N$ の個数は $$\binom{\floor{\log_3 x}+r-1}{r-1} 2^{r-2}$$ より小さいことを示した。

  • $[$Dickson, 1913$]$ Leonard Eugene Dickson, Finiteness of the odd perfect and primitive abundant numbers with $n$ distinct prime factors, Amer. J. Math. 35 (1913), 413--422, doi:10.2307/2370405 (JSTOR).
  • $[$Heath-Brown, 1994$]$ D. R. Heath-Brown, Odd perfect numbers, Math. Proc. Cambridge Phil. Soc. 115 (1994), 191--196, doi:10.1017/S0305004100072030.
  • $[$Nielsen, 2003$]$ Pace P. Nielsen, An upper bound for odd perfect numbers, INTEGERS 3 (2003), A14.
  • $[$Shapiro, 1949$]$ Harold N. Shapiro, Note on a theorem of Dickson, Bull. Amer. Math. Soc. 55 (1949), 450--452, doi:10.1090/S0002-9904-1949-09238-8.
  • $[$Yuan and Zhang, 2014$]$ Pingzhi Yuan and Zhongfeng Zhang, Addition to `An upper bound for the number of odd multiperfect numbers', Bull. Austral. Math. Soc. 89 (2014), 5--7, doi:10.1017/S000497271200113X.


与えられた数以下の奇数の完全数の個数

Kanold, 1956b は $x$ 以下の奇数の完全数の個数が $o(\sqrt{x})$ であることを示した。 さらに一般に、Wirsing, 1959 は、どのような有理数 $k$ に対しても、$\sigma(N)=kN$ となる整数 $N\leq x$ の個数は $\exp O(\log x/\log\log x)$ であることを示した。

  • $[$Kanold, 1956b$]$ Hans-Joachim Kanold, Eine Bemerkung über die Menge der vollkommenen Zahlen, Math. Ann. 131 (1956), 390--392, doi:10.1007/BF01350108.
  • $[$Wirsing, 1959$]$ Eduard Wirsing, Bemerkung zu der Arbeit über vollkommene Zahlen in Math. Ann. Bd. 133, S. 431--438 (1957), Math. Ann. 137 (1959), 316--318, doi:10.1007/BF01360967.

素因数の指数

指数 $b_1, b_2, \ldots, b_s$ についても多くの結果が示されている。 Steuerwald, 1937 は $b_i$ がすべて $1$ となることはありえないことを示した。

Kanold, 1941 は、$b_i$ がすべて $2$ となることはありえないことを示し、さらに一般の場合に関する結果として、 $t$ が $2b_i+1 (i=1, 2, \ldots, s)$ の公約数であるとき $t^4$ が $N$ を割り切らなければならず、 また $\ell$ が素数で、各 $i$ について $2b_i+1=\ell^{g_i}$ となるとき、 $$p\equiv 1\mathmod{\ell}, \frac{\alpha+1}{2}\equiv 0, 1\mathmod{\ell}$$ となる(特に $p\neq \ell$ である)ことを示した。 さらに、つぎのようなことが知られている。

  • Kanold, 1942, Brauer, 1943a/1943b, Kanold, 1950c, McDaniel, 1970, Cohen and Williams, 1985: $b_2=\cdots =b_s=1$ ならば $b_1\geq 8$ でなければならない
  • McDaniel, 1970: $b_i\not\equiv 1\mathmod{3}$ となる $i$ が存在する。
  • Kanold, 1953: $b_1=b_2=2, b_3=\cdots =b_s=1$ ではない。また、各 $i$ について $b_i\leq 2$ のとき $\alpha\neq 5$.
  • Hagis and McDaniel, 1972, McDaniel and Hagis, 1975, Cohen and Williams, 1985: $b_1=b_2=\cdots =b_s=b$ のとき $b=3, 5, 6, 8, 11, 12, 14, 17, 18, 24, 62$ ではない。
  • Fletcher, Nielsen and Ochem, 2012: $b_i\not\equiv 2\mathmod{5}$ となる $i$ が存在する。

$b_i\leq 2$ のときについては、つぎのようなことが知られている。

  • McDaniel, 1971: $N$ は $101$ より小さな素因数をもたず、$N>10^{9118}$ でなければならない。
  • Cohen, 1987: $N$ は $739$ より小さな素因数をもたず、$b_i=1 (i=1, 2, \ldots, t), b_i=2 (i=t+1, \ldots, s)$ とおくと $(t-1)/4\leq s-t\leq 2t+\sqrt{\alpha}$ となる。
  • Fletcher, Nielsen and Ochem, 2012: $N$ は $10^8$ より小さな素因数をもたないが、$10^{1000}$ より小さな素因数を持たなければならない(下記を参照)。

Yamada, 2005a はより一般的に $b_1=b_2=\cdots=b_s=b$ のとき $$s\leq 4b^2+2b+2, N<2^{4^{s+1}}=2^{4^{4b^2+2b+3}}$$ を示した($N<2^{4^{s+1}}$ は上記のNielsen, 2003による)。Yamada, 2021 は $4b^2+2b+2$ を $2b^2+6b+2$ に改良した。 すなわち、与えられた $b$ に対して、$b_1=b_2=\cdots=b_s=b$ となる奇数の完全数は有限個しか存在しない。

Yamada, 2005b はさらに一般的に $N=\prod_{i=1}^s p_i^{a_i} \prod_{j=1}^t q_j^{b_j}, \sigma(N)/N=n/d, b_i\leq c$ ならば $N$ は $s, n, c$ のみで定まる定数 $C$ より小さな素因数をもつことを示した。 さらに Fletcher, Nielsen and Ochem, 2012 は $S$ が素数の有限集合で $$N=\prod_{i=1}^s p_i^{a_i} \prod_{j=1}^t q_j^{b_j}, \frac{\sigma(N)}{N}=\frac{n}{d}$$ かつ、各 $2b_j+1$ は $S$ に属する素因数をもつとき、 $N$ は $s, n, S$ のみで定まる定数 $C=C(s, n, S)$ より小さな素因数をもつことを示した。 $b_i\not\equiv 2\mathmod{5}$ となる $i$ が存在することを示した。 さらに各 $i$ について $\gcd(2b_i+1, 15)>1$ となるとき $N$ の最小の素因数 $p_1$ は $10^8<p_1<10^{1000}$ となることを示した。 Yamada, 2020a は $C=C(s, n, S)$ を具体的な形で与えている。

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多倍完全数

完全数の概念は、 $$\sigma(N)=kN$$ となる $N$ に一般化される。このような数を多倍完全数という。 たとえば $$\sigma(120)=15\times 4\times 6=360$$ は$3$倍完全数である。 $120$ が $3$ 倍完全数であることは、1557年にRobert Recordeによって発見され、その後、1631年にMersenneが$3$倍完全数を発見する問題を提示し、 つぎの$6$つがMersenne, Descartes, Fermat により発見されている。 $$\begin{split} 120= & 2^3\times 3\times 5, \\ 672= & 2^5\times 3\times 7, \\ 523776= & 2^9\times 3\times 11\times 31, \\ 459818240= & 2^8\times 5\times 7\times 19\times 37\times 73, \\ 1476304896= & 2^{13}\times 3\times 11\times 43\times 127, \\ 51001180160= & 2^{14}\times 5\times 7\times 19\times 31\times 151. \end{split}$$ これらは、1643年までに発見されたもので、現在、他の$3$倍完全数は知られていない。これ以外に$3$倍完全数が存在しないと予想されているが、偶数についても奇数についても未だ証明されていない。

知られている多倍完全数
$k$ 知られている個数 最初の数個の $N$ OEIS
$1$ $1$ $1$ N/A
$2$ $51$ $6, 28, 496, 8128, 33550336, 8589869056,\ldots$ A000396
$3$ $6$ $120, 672, 523776, 459818240, 1476304896, 51001180160$ A005820
$4$ $36$ $30240, 32760, 2178540, 23569920, 45532800, \ldots$ A027687
$5$ $65$ $14182439040, 31998395520, \ldots$ A046060
$6$ $245$ $154345556085770649600, \ldots$ A046061
$7$ $516$ $141310897947438348259849402738485523264343544818565120000, \ldots$ N/A
$8$ $1135$ $2^{62}\times 3^{15}\times\cdots\times 92737\times 649657, \ldots$ N/A
$9$ $2095$ $2^{104}\times 3^{43}\times\cdots\times 570461\times 16148168401$ N/A
$10$ $1164$ $2^{175}\times 3^{69}\times\cdots\times 374857981681\times 4534166740403$ N/A
$11$ $1$ $2^{468}\times 3^{140}\times\cdots\times 628683\cdots 330241$ N/A

$4$倍完全数のうちいくつかはDescartes, Fermat, Mersenneらによって古くから知られており、Lehmer, Carmichael, Poulet が1929年までに現在知られているものをすべて発見した。 そのため$4$倍完全数も、現在知られている$36$個のもの以外に存在しないと予想されているが、偶数についても奇数についても未だ証明されていない。古い発見の歴史については Leonard Eugene Dickson, History of the theory of numbers, volume I, divisibility and primality, Chapter I を参照。

$k>1$ のとき、奇数の $k$ 倍完全数があるかどうかはわかっていない。$N, k$ がともに奇数で $N$ が $k$ 倍完全数のとき数論的関数:定理2.5より、$N$ は平方数でなければならない。とくに奇数の$3$倍完全数は平方数でなければならない。

Steuerwald, 1954 は、$N$ が $6$ で割り切れる $3$倍完全数ならば、$N$ は $12$ または $18$ で割り切れるが、$36$ で割り切れないことを示した。 Reidling, 1983, Kishore, 1987 および Hagis, 1993 はそれぞれ独立に、奇数の$3$倍完全数は少なくとも $12$ 個の相異なる素因数をもつことを示した。 Cohen and Hagis, 1985 は奇数の$3$倍完全数は $10^{70}$ より大きく、最大の素因数は $100109$ より大きく、 $2$番目に大きい素因数は $1000$ より大きいことを示し、 Hagis, 1986 は奇数の$3$倍完全数の$3$番目に大きい素因数は $100$ より大きいことを示した。

$k=4$ 以上の、$k$ 倍完全数について、Cohen and Hendy, 1980, 1981/1982 は $\omega(N)\geq (k^5+387)/70$ を示し、 さらに $N$ が偶数のとき $$\omega(N)>\max\{k^3/81+5/3, k^5/200+29/10, k^{10}/(14\times 10^8)+3-1/10^4\},$$ $N$ が奇数のとき $$\omega(N)>\max\{k^5/60+47/12, k^5/50-104/5, 737k^{10}/10^9+23/2\}$$ となることを示した。 Nakamura, 1984 は $\sigma(N)=7N$ ならば $\omega(N)\geq 15$, また $N$ が奇数で $\sigma(N)=kN$ ならば $k=4, 5, 6, 7$ のとき、 それぞれ $\omega(N)\geq 23, 56, 142, 373$ となることを示した。

素因数の個数が制限された多倍完全数は偶数のものを含めても、通常の完全数から生成されるものを除けば有限個しか存在しない。 Kanold, 1956c は、与えられた正の整数 $s, k$ に対して、$\sigma(N)=sN, \omega(N)=k$ となる整数 $N$ は $N=MQ$(ただし $M, Q$ は $\sigma(Q)=2Q, \sigma(M)=(s/2)M$ となる互いに素な整数とする)の形のものを除いては有限個しか存在しないことを示した。 Kanold, 1956cはDickson, 1913と同様にThue方程式の解の有限性を用いるものであったが、Artuhov, 1973 はより広い範囲の数論的関数についても同様の結果が成り立つことの初等的な証明を与えている。 一方、Pomerance, 1977は対数の一次形式を用いて、$N$ に対する計算可能な上界を与えた。 Kanold, 1959はShapiro, 1949の結果を約数の和に関する比 $\sigma(N)/N=d_{-1}(N)$ から、一般の正の整数 $r\geq 1$ について、約数の $r$ 乗和に関する比 $d_r(N)/N=d_{-r}(N)$ に拡張している。 なお、$N$ が奇数の場合、完全数の項で記したように、$\sigma(N)/N=n/d, \omega(N)=r$ ならば $$N<(d(d+1))^{(2^r-1)^2}$$ となることが Nielsen, 2015 によって示されている。

完全数の項で記したように、Wirsing, 1959 は、どのような有理数 $k$ に対しても、$\sigma(N)=kN$ となる整数 $N\leq x$ の個数は $\exp O(\log x/\log\log x)$ であることを示した。 さらに、Yuan and Zhang, 2014 は $\omega(N)\leq r, N\mid\sigma(N), N>1$ となる $N$ の個数は $4^{r^2}/(2^{r+2}(r-1)!)$ より小さく、 $\omega(N)\leq r, N\mid\sigma(N), 1<N\leq x$ となる $N$ の個数は $$\binom{\floor{\log_3 x}+r-1}{r-1} 2^{r-2}$$ より小さいことを示した。

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