Vakil "FOUNDATIONS OF ALGEBRAIC GEOMETRY" Exerciseに対する解答集

提供: Mathpedia


FOUNDATIONS OF ALGEBRAIC GEOMETRY, Ravi Vakil について、このテキストに含まれるいくつかのExerciseに対してその解答例を挙げる。

いくつかの解答例については、読み進めるにあたって可換環論についてのある程度の知識を要される箇所がある。

Chapter 3

3.1.

3.2.

3.2.A.

(a)

体 $k$ について、環 $k[\epsilon]/(\epsilon^2)$ の元は $a,b \in k$ によって $a+b\epsilon$ と表せる。このとき、$a\neq 0$ ならば $$(a+b\epsilon)(a^{-1}-a^{-2}b\epsilon)=1-a^{-2}b^2\epsilon^2=1$$ より $a+b\epsilon$ は単元となることがわかる。

$\epsilon \cdot \epsilon \in (0)\subset k[\epsilon]/(\epsilon^2)$ より、$(0)$ は $k[\epsilon]/(\epsilon^2)$ の素イデアルではない。よって $\mathfrak{p}$ は非零な元を含む。

よって、$k[\epsilon]/(\epsilon^2)$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ について、$\mathfrak{p}$ は $a\neq 0$ なる $a,b \in k$ によって $a+b\epsilon$ と表せるような元を含まない。従って $\mathfrak{p}\subset (\epsilon)$ が成り立つ。ここで、$\mathfrak{p}$ が非零な元を含むため、ある $b\neq 0$ なる $b \in k$ によって $b\epsilon \in \mathfrak{p}$ とできる。よって $b^{-1}\cdot b\epsilon = \epsilon \in \mathfrak{p}$ より $\mathfrak{p}=(\epsilon)$ が言える。

(b)

体 $k$ について、環 $k[x]_{(x)}$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ を任意に取る。このとき、ある $k[x]$ の素イデアル $\mathfrak{p}' \subset (x) \subset k[x]$ が存在し、$\mathfrak{p}=\mathfrak{p}'k[x]_{(x)}$ が成り立つ(これは局所化のイデアル論的な基本性質による)。

$\mathfrak{p}'\neq (0)$ であると仮定する。このとき、$\mathfrak{p}'$ の非零な元であって、最も次数が低いものを $f(x)$ とおく。このとき、$f(x)=x\cdot g(x)$ が成り立つような $g(x) \in k[x]$ が存在する。$g(x)$ の次数は $f(x)$ の次数より低いため、$g(x) \notin \mathfrak{p}'$ が言える。よって $x \in \mathfrak{p}'$ より $\mathfrak{p}'=(x)$ が示される。

$(0),(x) \subset k[x]$ はいずれも $k[x]$ の素イデアルであるため、$(0)k[x]_{(x)}=(0)$, $(x)k[x]_{(x)}=(x)$ は $k[x]_{(x)}$ における素イデアルであり、またこれらが $k[x]_{(x)}$ の素イデアルの全てである。

3.2.B.

実根を持たない実 $2$ 次式 $x^2+ax+b$ について、$$\mathbb{R}[x]/(x^2+ax+b)\cong \mathbb{R}[x+\frac{a}{2}]/(x^2+ax+b)\cong \mathbb{R}[y]/(y^2+(b-\frac{a^2}{4}))$$ が成り立つ。このとき、仮定より $b-\frac{a^2}{4}$ は正の数であるため、$b-\frac{a^2}{4}=c^2$ なる $0\neq c\in \mathbb{R}$ が存在する。このとき $$\mathbb{R}[y]/(y^2+(b-\frac{a^2}{4}))\cong \mathbb{R}[c^{-1}y]/(y^2+(b-\frac{a^2}{4})) \cong \mathbb{R}[z](z^2+1)\cong \mathbb{C}$$ が成り立つ。

3.2.C.

$\mathbb{Q}[x]$ は主イデアル整域であるため、その素イデアルは $(0)$ であるか、もしくは素元 $p$ に対し $(p)$ と表すことができる。ここで、$\mathbb{Q}[x]$ の素元とは、$\mathbb{Q}$-係数既約多項式のことである。既約多項式 $p,p'$ について $(p)=(p')$ であることとある非零な有理数 $q$ によって $p=qp'$ が成り立つことは同値であるため、$\mathrm{Spec}(\mathbb{Q}[x])$ の元は $(0)$, また既約なモニック多項式 $p$ についての $(p)$ なるイデアル全体として表すことができる。

3.2.D.

体 $k$ について、$k[x]$ の素イデアルが有限個しか存在しないならば、$k$-係数の既約なモニック多項式はたかだか有限個しか存在しない。これらを $p_1=x,\ldots, p_n$ とおき、また $p'=\prod_{1\leq i \leq n}p_i +1$ とおく。このとき、$p'$ は $k$ には属さず、よって $(p')$ はある極大イデアル $\mathfrak{m}$ に含まれなければならないが、$\mathfrak{m}$ は既約なモニック多項式により生成されなければならず、これは矛盾である。よって $k[x]$ には無限個の素イデアルが存在する。

3.2.E.

$\mathbb{C}[x,y]$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ について、$\mathfrak{p}$ が非零であるとして、非零な元 $f$ をひとつ取る。このとき、$\mathbb{C}[x,y]$ は一意分解整域であるため、$f$ は素元の積に分解される。よって $\mathfrak{p}$ は $f$ の約数であるような素元のいずれかを含む。この素元を $p$ とおくと、$(p)\subset \mathfrak{p}$ が成り立つ。$\mathfrak{p}$ が主イデアルでないとすると、$(p)\subsetneq \mathfrak{p}$ より、$\mathfrak{p}$ の高さは $2$ 以上となるが、$\mathbb{C}[x,y]$ のKrull次元は $2$ であるため、$\mathfrak{p}$ は極大イデアルである。このとき、零点定理より $\mathfrak{p}$ はある複素数 $a,b \in \mathbb{C}$ について $\mathfrak{p}=(x-a,y-b)$ と表せる。

3.2.F.

$k[x_1,\ldots,x_n]$ の極大イデアル $\mathfrak{m}$ について、$k[x_1,\ldots,x_n]/\mathfrak{m}$ は $k$ 上有限型な体であるため、$k$ 上有限次拡大体である。このとき $k$ が代数的閉体ならば、$k$ 上有限次拡大体はすべて $k$ と同型であるため、$k$ 代数の同型 $\varphi\colon k[x_1,\ldots,x_n]/\mathfrak{m}\cong k$ が存在する。このとき $(x_1-\varphi(x_1),\ldots, x_n-\varphi(x_n)) \subset \mathfrak{m}$ が成り立つ。しかし $(x_1-\varphi(x_1),\ldots, x_n-\varphi(x_n))$ は $k[x_1,\ldots , x_n]$ の極大イデアルであるため、$(x_1-\varphi(x_1),\ldots, x_n-\varphi(x_n)) = \mathfrak{m}$ が成り立つ。

3.2.G.

体 $k$ 上加群として有限次元な整域 $A$ と $A$ の非零な元 $x$ について、$x$ 倍写像 $[x]\colon A\to A$ は単射であり、また $k$ 線形写像である。このとき $[x]$ は同型であるため、$y \in [x]^{-1}(1)$ が存在する。$y$ は $x$ の逆元である。よって $A$ は体である。

3.2.H.

点 $(\sqrt{2},\sqrt{2})$ もしくは $(-\sqrt{2},-\sqrt{2})$ を表す $\mathbb{Q}[x,y]$ の極大イデアルとして、$(x-y,x^2-2)$ が挙げられる。また点 $(-\sqrt{2},\sqrt{2})$ もしくは $(\sqrt{2},-\sqrt{2})$ を表す $\mathbb{Q}[x,y]$ の極大イデアルとして、$(x+y,x^2-2)$ が挙げられる。これらの剰余体は $\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ と同型である。

3.2.I.

3.2.J.

可換環の剰余に関する基礎的な性質による。

3.2.K.

可換環の局所化に関する基礎的な性質による。

3.2.L.

3.2.M.

環の射 $\varphi\colon B\to A$ について、$A$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ を任意に取ったとき、$\varphi$ によって誘導される射 $\tilde{\varphi}\colon B/\varphi^{-1}(\mathfrak{p})\to A/\mathfrak{p}$ は単射である。よって $B/\varphi^{-1}(\mathfrak{p})$ は整域であり、$\varphi^{-1}(\mathfrak{p})$ は $B$ の素イデアルである。

3.2.N.

可換環の剰余と局所化に関する基礎的な性質による。

3.2.O.

3.2.P.

3.2.Q.

3.2.R.

3.2.S.

環 $A$ の冪零元は任意の素イデアルに含まれる。

環 $A$ の非冪零元 $x$ について、$A_x$ は非零な環であるため、$A_x$ は素イデアル $\mathfrak{p}$ を持つ。このとき $\mathfrak{p}\cap A$ は $A$ の素イデアルであって $x$ を含まないものである。したがって、$A$ のnilradicalは $A$ の素イデアル全体の共通集合と一致する。

3.2.T.

3.3.

No Problem.

3.4.

3.4.A.

3.4.B.

3.4.C.

3.4.D.

3.4.E.

3.4.F.

3.4.G.

3.4.H.

3.4.I.

3.4.J.

3.4.K.

#3.2.A.より、体 $k$ について $k[x]_{(x)}$ の素イデアルは $(0)$ または $(x)$ のみであった。このとき、$(0)$ を含む閉集合は $(x)$ を常に含むこと、$V((x))=\{(x)\}$ であることに注意すると、$k[x]_{(x)}$ は $\{\emptyset, \{(0)\}, \mathrm{Spec}(k[x]_{(x)})\}$ を開集合系として持つ位相空間であることがわかる。

3.5.

3.6.

3.7.