Radoの定理(分割正則性)(Rado's theorem (partition regularity))とは、有理数係数の連立 1 次方程式 $Ax=0$ が分割正則である、すなわち正の整数をどのように有限個の色で塗り分けても成分がすべて同じ色の正の整数解をもつための必要十分条件は、係数行列 $A$ が列条件をみたすことである、という Ramsey 理論の定理である。1 本の方程式 $a_1x_1+\cdots+a_nx_n=0$($a_i\ne0$)では、係数のある空でない部分和が $0$ であることと同値になる。$x+y=z$ の場合が Schur の定理であり、公差まで同じ色にとれる形の van der Waerden の定理も特別な場合として含む。
前提知識: Schurの定理(和のない集合), van der Waerdenの定理, 線形部分空間, 合同式
正の整数をどのように有限個の色で塗り分けても、同じ色の $x,y,z$ で $x+y=z$ となるものがある(Schurの定理(和のない集合))。では $x+y=3z$ はどうだろうか。$x=2y$ は? 一般に、整数係数(あるいは有理数係数)の 1 次方程式や連立 1 次方程式について、「正の整数をどう有限個の色で塗っても、同じ色の数からなる解がある」という性質(分割正則性)がいつ成り立つかを、係数だけで判定する定理が Rado の定理 である。R. Rado が 1933 年の論文(ベルリン大学に提出した学位論文でもある)で証明した(Rad33)。
1 本の方程式 $a_1x_1+\cdots+a_nx_n=0$($a_i\ne0$)については答えが特に簡単で、分割正則であることと、係数のある空でない部分和が $0$ であることが同値である。たとえば $x+y-z=0$ は $1+(-1)=0$ なので分割正則であり、これが Schur の定理を含む。$x+y-3z=0$ はどの部分和も $0$ でないので分割正則でない。連立方程式については「列条件」とよばれる係数行列の列についての条件が答えになり、van der Waerdenの定理(公差まで同じ色にとれる強い形)もその特別な場合になる。
曲面の三角形分割についての Radóの定理(T. Radó)や、凸幾何の Radonの定理(凸幾何) とは別の定理である。
以下、正の整数全体を $\mathbb{Z}_{>0}$ と書き、$[N]:=\{1,\dots,N\}$ とおく。集合 $X$ の $r$ 色の塗り分け は写像 $\chi\colon X\to\{1,\dots,r\}$ である(van der Waerdenの定理 の記事と同じ)。
$A=(a_{ij})$ を有理数を成分とする $m\times n$ 行列とする。連立方程式 $Ax=0$、すなわち
$$
\sum_{j=1}^n a_{ij}x_j=0\qquad(i=1,\dots,m)
$$
が 分割正則(partition regular)であるとは、任意の $r\ge1$ と $\mathbb{Z}_{>0}$ の任意の $r$ 色の塗り分け $\chi$ について、$x=(x_1,\dots,x_n)\in\mathbb{Z}_{>0}^n$ で $Ax=0$ かつ $\chi(x_1)=\chi(x_2)=\cdots=\chi(x_n)$ となるもの(単色の解)が存在することをいう。$x_1,\dots,x_n$ は相異なる必要はない。
成分が等しくてもよいので、$A$ の各行の成分の和が $0$ なら、$x=(1,\dots,1)$ がいつも単色の解であり、$Ax=0$ は自明に分割正則である。たとえば $x+y-2z=0$ がそうである。Schurの定理(和のない集合) の記事も $x=y$ を許す約束で述べられており、ここでの定義と同じ約束である。
$A$ の第 $j$ 列を $c_j\in\mathbb{Q}^m$ と書く。$A$ が 列条件(columns condition)をみたすとは、$\{1,\dots,n\}$ を空でない集合 $I_1,\dots,I_t$ に分割して、
$$
\sum_{j\in I_1}c_j=0,\qquad \sum_{j\in I_s}c_j\in\operatorname{span}_{\mathbb{Q}}\{c_j\mid j\in I_1\cup\cdots\cup I_{s-1}\}\quad(s=2,\dots,t)
$$
とできることをいう。ここで $\operatorname{span}_{\mathbb{Q}}$ は有理数係数の線形結合全体(線形部分空間)である。
$m=1$(方程式が 1 本)で係数 $a_1,\dots,a_n$ がどれも $0$ でないとき、列条件は「空でない $I\subset\{1,\dots,n\}$ で $\sum_{i\in I}a_i=0$ となるものがある」と同値である。実際、列条件の $I_1$ がそのような $I$ である。逆にそのような $I$ があれば、$I_1:=I$、($I$ の外に番号があれば)$I_2:=\{1,\dots,n\}\setminus I$ とおけばよい。$a_i\ne0$($i\in I_1$)なので $I_1$ の列の張る空間は $\mathbb{Q}$ 全体だからである。
$A$ を有理数を成分とする行列とする。連立方程式 $Ax=0$ が分割正則であるための必要十分条件は、$A$ が列条件をみたすことである。
thm-rado-main は Rad33 Satz IV(p. 445、証明 pp. 447–450)、cor-rado-single は同じ箇所の直後(pp. 445–446)にある。cor-rado-single は、上の注意により thm-rado-main の $m=1$ の場合である。この記事では、まず cor-rado-single を初等的に直接証明し(prf-rado-single)、次に thm-rado-main の証明を述べる(prf-rado-main)。どちらも、必要性は「$p$ 進の最後の桁」による塗り分けで、十分性は van der Waerdenの定理 を使って示す。
$a_1,\dots,a_n$ を $0$ でない有理数とする。方程式 $a_1x_1+\cdots+a_nx_n=0$ が分割正則であるための必要十分条件は、空でない $I\subset\{1,\dots,n\}$ で $\sum_{i\in I}a_i=0$ となるものが存在することである。
| 方程式 | 部分和が $0$ になる係数の組 | 分割正則か |
|---|---|---|
| $x+y-z=0$ | $\{1,-1\}$ | 正則(Schur の定理) |
| $x+ay-z=0$($a$ は $0$ でない整数) | $\{1,-1\}$ | 正則 |
| $x+y-2z=0$ | $\{1,1,-2\}$ | 正則(定数の解) |
| $x-2y=0$ | なし | 正則でない |
| $x+y-3z=0$ | なし | 正則でない |
| $x+y+z-4w=0$ | なし | 正則でない |
$x+ay-z=0$ の場合は A. Brauer が論じたものである(Rad33 p. 446)。$x+y-3z=0$ は Rad33 p. 446 が挙げている例で、同書は後の定理から、この方程式が 4 色では分割正則でない(単色の解のない 4 色の塗り分けがある)ことも導いている。
必要性には次の塗り分けを使う。素数 $p$ について、正の整数 $x$ を $x=p^{e}u$($e\ge0$、$p\nmid u$)と書き、$u$ を $p$ で割った余り $\chi_p(x)\in\{1,\dots,p-1\}$ で $x$ を塗る。$\chi_p(x)$ は $x$ を $p$ 進法で書いたときの $0$ でない最後の桁であり、$\chi_p$ は $p-1$ 色の塗り分けである。
$a_1,\dots,a_n$ を $0$ でない整数とし、どの空でない $I\subset\{1,\dots,n\}$ についても $\sum_{i\in I}a_i\ne0$ とする。このとき、$p>\lvert a_1\rvert+\cdots+\lvert a_n\rvert$ をみたす素数 $p$ について、方程式 $\sum_ia_ix_i=0$ は塗り分け $\chi_p$ について単色の解をもたない。とくに分割正則でない。係数が有理数の場合も、分母の公倍数を掛ければ解も部分和が $0$ かどうかも変わらないので、同じ結論が成り立つ。
単色の解 $x$ があって色が $c$ だったとする。$x_i=p^{e_i}u_i$($p\nmid u_i$)と書き、$e:=\min_ie_i$、$I:=\{i\mid e_i=e\}$(空でない)とおく。方程式を $p^e$ で割ると
$$
\sum_{i\in I}a_iu_i+\sum_{i\notin I}a_ip^{e_i-e}u_i=0
$$
である。$i\notin I$ では $e_i-e\ge1$ であり、$i\in I$ では $u_i\equiv c\pmod p$ なので、$p$ を法として $c\sum_{i\in I}a_i\equiv0$ である(合同式)。$c$ は $p$ と互いに素なので $p\mid\sum_{i\in I}a_i$ であり、$\bigl\lvert\sum_{i\in I}a_i\bigr\rvert\le\sum_i\lvert a_i\rvert< p$ から $\sum_{i\in I}a_i=0$ となる。これは仮定に反する。$\square$
十分性には、van der Waerdenの定理 を少し強めた次の補題を使う。$s=1$ の場合(等差数列とその公差が同じ色にとれること)は Schur による強めで、A. Brauer が発表した(Rad33 p. 425)。
$r,L,s\ge1$ とする。ある正の整数 $N$ があって、$[N]$ の任意の $r$ 色の塗り分けについて、正の整数 $a,d$ で
$$
\{a,a+d,a+2d,\dots,a+Ld\}\cup\{sd\}\subset[N]
$$
が単色になるものがある。
$L,s$ を固定し、色の数 $r$ に関する帰納法で示す。$r=1$ では $N:=\max\{L+1,s\}$、$a=d=1$ とすればよい。
$r\ge2$ とし、$r-1$ 色(任意の $r-1$ 元集合に値をとる塗り分け)について主張が成り立つとして、そのときの $N$ を $n$ とする。$M:=W(r,nL+1)$(van der Waerden 数)、$N:=sM$ とおき、$\chi$ を $[N]$ の $r$ 色の塗り分けとする。$\chi$ を $[M]$ に制限すると、単色の $nL+1$ 項の等差数列 $b,b+D,\dots,b+nLD\subset[M]$($D\ge1$)がある。その色を $c$ とする。$i\in[n]$ について $siD\le snD\le s\cdot nLD\le sM=N$ である。
必要性は prop-rado-single-necessity である。十分性を示す。係数に分母の公倍数を掛けて $a_i$ は整数としてよい。番号を付け替えて $a_1+\cdots+a_k=0$($1\le k\le n$)とする。$a_1\ne0$ なので $k\ge2$ である。$B:=a_{k+1}+\cdots+a_n$($k=n$ なら $B:=0$)、$s:=\lvert a_1\rvert$、$L:=\max\{1,2\lvert B\rvert\}$ とおく。
$\mathbb{Z}_{>0}$ の $r$ 色の塗り分けを、lem-rado-ap-multiple の $N$ について $[N]$ に制限すると、正の整数 $h,d$ で $\{h+jd\mid0\le j\le L\}\cup\{sd\}$ が単色なものがある。$h_0:=h+\lvert B\rvert d$、$\varepsilon:=a_1/\lvert a_1\rvert\in\{1,-1\}$ とおき、
$$
x_1:=h_0-\varepsilon Bd,\qquad x_i:=h_0\ (2\le i\le k),\qquad x_i:=sd\ (k< i\le n)
$$
と定める。$x_1$ は $h+jd$($j=\lvert B\rvert-\varepsilon B\in\{0,2\lvert B\rvert\}$)、$x_2,\dots,x_k$ は $h+\lvert B\rvert d$ の形なので、すべて同じ色の正の整数であり、$x_i=sd$ もその色である。さらに
$$
\sum_{i=1}^na_ix_i=h_0\sum_{i=1}^ka_i-a_1\varepsilon Bd+Bsd=0-\lvert a_1\rvert Bd+B\lvert a_1\rvert d=0
$$
である。よって $x$ は単色の解である。$\square$
prf-rado-single では、等差数列 $\{a+jd\}$ と公差の倍数 $sd$ という 2 段の形の単色の集合の中に解を見つけた。一般の場合は、これを多段にした集合を使う。
$t,p,c$ を正の整数とし、$y_1,\dots,y_t\in\mathbb{Z}_{>0}$ とする。$u=1,\dots,t$ について
$$
R_u:=\Bigl\{cy_u+\sum_{s=u+1}^{t}\lambda_sy_s\ \Bigm|\ \lambda_s\in\mathbb{Z},\ \lvert\lambda_s\rvert\le p\Bigr\}
$$
とおき($R_t=\{cy_t\}$)、$S:=R_1\cup\cdots\cup R_t$ を $y_1,\dots,y_t$ の生成する $(t,p,c)$-集合、$R_u$ をその 第 $u$ 段 という。
たとえば $t=2$ なら、$R_1=\{cy_1+\lambda y_2\mid\lvert\lambda\rvert\le p\}$ は公差 $y_2$ の $2p+1$ 項の等差数列、$R_2=\{cy_2\}$ はその公差の $c$ 倍であり、lem-rado-ap-multiple の集合と同じ形である。
$A$ が列条件を $t$ 個の集合 $I_1,\dots,I_t$ への分割でみたすとする。このとき正の整数 $p,c$ があって、正の整数からなるどの $(t,p,c)$-集合 $S$ についても、$Ax=0$ の解 $x$ で成分がすべて $S$ に属するものがある。
要点:列条件の係数の分母を払って整数 $\mu_{sj}$ を作り、$j\in I_u$ の未知数を第 $u$ 段の元 $x_j:=cy_u-\sum_{s>u}\mu_{sj}y_s$ にとると、$Ax$ を $y_s$ ごとにまとめた係数が列条件の式そのものになって消える。
$J_s:=I_1\cup\cdots\cup I_{s-1}$ とおく。列条件により、$s\ge2$ について有理数 $q_{sj}$($j\in J_s$)で $\sum_{j\in I_s}c_j=\sum_{j\in J_s}q_{sj}c_j$ となるものがある。$s=1$ では $J_1=\emptyset$ で $\sum_{j\in I_1}c_j=0$ である。すべての $q_{sj}$ の分母の公倍数である正の整数を $c$ とし、$\mu_{sj}:=cq_{sj}\in\mathbb{Z}$、$p:=\max\{1,\max_{s,j}\lvert\mu_{sj}\rvert\}$ とおく。すると $s=1,\dots,t$ について $c\sum_{j\in I_s}c_j=\sum_{j\in J_s}\mu_{sj}c_j$ である。
$S$ を $y_1,\dots,y_t$ の生成する $(t,p,c)$-集合とし、$j\in I_u$ について $x_j:=cy_u-\sum_{s=u+1}^{t}\mu_{sj}y_s$ とおく。$\lvert\mu_{sj}\rvert\le p$ なので $x_j\in R_u\subset S$ である。和の順序を入れ替えると($j\in I_u$ と $s>u$ の組は、$s$ を固定すると $j\in J_s$ の全体を動く)$$Ax=\sum_{u=1}^t\sum_{j\in I_u}c_jx_j=\sum_{s=1}^t y_s\Bigl(c\sum_{j\in I_s}c_j-\sum_{j\in J_s}\mu_{sj}c_j\Bigr)=0$$ である。$\square$
$t,p,c,r$ を正の整数とする。$\mathbb{Z}_{>0}$ の任意の $r$ 色の塗り分けについて、正の整数からなる単色の $(t,p,c)$-集合がある。
要点:まず各段が(段ごとに別の色でもよいので)単色な $(t',p,c)$-集合を、段の数についての帰納法で作る。第 1 段は van der Waerdenの定理 による等差数列に収め、第 2 段以降は公差で縮めた塗り分けに帰納法の仮定を当てる。次に $t'=r(t-1)+1$ 段のうち同じ色の $t$ 段を鳩の巣原理で選ぶ。
段 1(各段が単色)。$p,c,r$ を固定し、次の主張を $t'$ についての帰納法で示す:ある $N_{t'}$ があって、$[N_{t'}]$ の任意の $r$ 色の塗り分けについて、$y_1,\dots,y_{t'}$ の生成する $(t',p,c)$-集合で、$[N_{t'}]$ に含まれ、各段が単色なものがある。$t'=1$ では $N_1:=c$、$y_1:=1$ とすればよい。$t'\ge2$ とし、$t'-1$ で $N_{t'-1}=:n$ として成り立つとする。$\Lambda:=p(t'-1)n$、$M:=W(r,2\Lambda+1)$、$N_{t'}:=cMn$ とおく。$[N_{t'}]$ の塗り分け $\chi$ に対し、$[M]$ の塗り分け $i\mapsto\chi(ci)$ に van der Waerden の定理を使うと、$b,D\ge1$ で $\{b+jD\mid0\le j\le2\Lambda\}\subset[M]$ が $\chi(c\,\cdot)$ について単色なものがある。$[n]$ の塗り分け $\chi'(i):=\chi(cDi)$ に帰納法の仮定を使い、$z_1,\dots,z_{t'-1}$ の生成する $(t'-1,p,c)$-集合で $[n]$ に含まれ各段が $\chi'$ について単色なものをとる。$y_1:=b+\Lambda D$、$y_{s+1}:=cDz_s$($1\le s\le t'-1$)とおく。第 $u\ge2$ 段の元は $cy_u+\sum_{s>u}\lambda_sy_s=cD\bigl(cz_{u-1}+\sum_{s>u}\lambda_sz_{s-1}\bigr)$ で、括弧の中は $z$ の集合の第 $u-1$ 段の元なので、色は $\chi'$ のその段の色に等しく、値は $cDn\le cMn$ 以下の正の整数である。第 1 段の元は $$cy_1+\sum_{s=2}^{t'}\lambda_sy_s=c\Bigl(b+\bigl(\Lambda+\textstyle\sum_{s=1}^{t'-1}\lambda_{s+1}z_s\bigr)D\Bigr)$$ である。$cz_s$ は $z$ の集合の元なので $z_s\le n$ であり、$\bigl\lvert\sum\lambda_{s+1}z_s\bigr\rvert\le p(t'-1)n=\Lambda$ である。よって括弧の中は $b+jD$($0\le j\le2\Lambda$)の形で、第 1 段は単色であり、値は $cM$ 以下である。
段 2(同じ色の段を選ぶ)。$t':=r(t-1)+1$ とし、塗り分けを $[N_{t'}]$ に制限して段 1 の $y_1,\dots,y_{t'}$ をとる。$t'$ 個の段の色は $r$ 通りなので、ある色の段が $t$ 個以上ある。その番号を $u_1<\cdots< u_t$ とし、$y'_v:=y_{u_v}$ とおく。$y'$ の生成する $(t,p,c)$-集合の第 $v$ 段の元 $cy'_v+\sum_{w>v}\lambda_wy'_w$ は、$s=u_w$ の係数を $\lambda_w$、それ以外の $s>u_v$ の係数を $0$ とすれば $y$ の集合の第 $u_v$ 段の元である。よって $y'$ の集合は同じ色の段の和集合に含まれ、単色である。$\square$
有理数を成分とする行列 $A$ について $Ax=0$ が分割正則なら、$A$ は列条件をみたす。
要点:素数 $p$ ごとに塗り分け $\chi_p$ の単色の解をとり、成分を $p$ で割り切れる回数の小さい順に分けると、未知数の番号の分割が得られる。分割は有限通りなので、無限に多くの $p$ で同じ分割が現れる。それが列条件をみたすことを、prop-rado-single-necessity と同じ合同式の議論で示す。
各行に分母の公倍数を掛けて、$A$ の成分は整数としてよい(解は変わらず、各行を $0$ でない数倍しても列の間の 1 次関係は変わらないので、列条件をみたすかどうかも変わらない)。素数 $p$ ごとに、$\chi_p$ について単色の解 $x$ をとり、その色を $c_p$ とする。$x_j=p^{e_j}u_j$($p\nmid u_j$)と書き、$e_j$ のとる相異なる値を $\eta_1<\cdots<\eta_t$、$I_s:=\{j\mid e_j=\eta_s\}$ とおく。順序付きの分割 $(I_1,\dots,I_t)$ は有限通りしかないので、無限個の素数からなる集合 $Q$ で、$p\in Q$ について同じ分割が現れるものがある。この分割が列条件をみたすことを示す。
$s$ を固定し、$J_s:=I_1\cup\cdots\cup I_{s-1}$、$V:=\operatorname{span}_{\mathbb{Q}}\{c_j\mid j\in J_s\}$($s=1$ なら $V=\{0\}$)、$w:=\sum_{j\in I_s}c_j$ とおく。$w\notin V$ と仮定すると、$\mathbb{Q}^m$ 上の線形形式で $V$ 上で $0$、$w$ で $1$ となるものがあり、その係数の分母を払えば、$v\in\mathbb{Z}^m$ で $v\cdot c_j=0$($j\in J_s$)かつ $v\cdot w\ne0$ となるものが得られる($\cdot$ は標準内積)。$p\in Q$ を $p>\lvert v\cdot w\rvert$ にとる。$Ax=0$ と $v$ の内積をとると $\sum_{j}(v\cdot c_j)x_j=0$ で、$j\in J_s$ の項は消える。残りの $j$ では $e_j\ge\eta_s$ なので両辺を $p^{\eta_s}$ で割ると、$j\in I_s$ では $x_j/p^{\eta_s}=u_j\equiv c_p$、$I_s$ より後の $j$ では $x_j/p^{\eta_s}\equiv0\pmod p$ だから、$c_p\,(v\cdot w)\equiv0\pmod p$ を得る。$p\nmid c_p$ なので $p\mid v\cdot w$ となり、$0<\lvert v\cdot w\rvert< p$ に反する。よって $w\in V$ である。$s=1$ では $V=\{0\}$ なので $w=0$ である。これは列条件にほかならない。$\square$
必要性は prop-rado-necessity である。十分性を示す。$A$ が列条件を $I_1,\dots,I_t$ でみたすとし、lem-rado-tpc-solution の $p,c$ をとる。$\mathbb{Z}_{>0}$ の $r$ 色の塗り分けについて、lem-rado-tpc-mono により正の整数からなる単色の $(t,p,c)$-集合 $S$ があり、lem-rado-tpc-solution により成分がすべて $S$ に属する解 $x$ がある。この $x$ は単色の解である。$\square$
Ramsey 理論の古典的な定理の多くは、ある行列について $Ax=0$ が分割正則であるという主張として読める(Hal12 p. 264 の関連する結果 78)。
方程式 $x+y-z=0$ の係数 $1,1,-1$ では $1+(-1)=0$ なので、cor-rado-single によりこの方程式は分割正則である。すなわち $\mathbb{Z}_{>0}$ を有限個の色で塗ると、同じ色の $x,y$ と $x+y$($x=y$ でもよい)がある。これは Schurの定理(和のない集合) の、$[N]$ を $\mathbb{Z}_{>0}$ に替えた形である。$[N]$ の形も rem-rado-finite から従う。
$k\ge2$ とし、未知数 $x_1,\dots,x_k,y$ の連立方程式
$$
x_{i+1}-x_i-y=0\qquad(i=1,\dots,k-1)
$$
を考える。単色の解は、公差 $y\ge1$ の $k$ 項の等差数列 $x_1,x_1+y,\dots,x_1+(k-1)y$ で、公差 $y$ まで同じ色のものである。係数行列の $x_j$ の列を $c_j$、$y$ の列を $c_y$ とすると、$c_j$ の第 $i$ 成分は $j=i+1$ なら $1$、$j=i$ なら $-1$、ほかは $0$ であり、$c_y$ の成分はすべて $-1$ である。$I_1:=\{x_1,\dots,x_k\}$ の列の和は各行で $1+(-1)=0$ である。さらに
$$
\sum_{j=1}^k(-j)\,c_j=c_y
$$
である(第 $i$ 成分は $-(i+1)+i=-1$)。よって $I_1$、$I_2:=\{y\}$ で列条件がみたされ、thm-rado-main によりこの系は分割正則である。これは van der Waerdenの定理 を、公差も同じ色にとれる形に強めたもの(lem-rado-ap-multiple の $s=1$ の場合)である。ただし thm-rado-main の証明は van der Waerden の定理を使っているので、これは van der Waerden の定理の新しい証明ではない。
次の表の各行は、条件を 1 つだけ外すと結論が成り立たなくなる例である(確かめは ex-rado-counterexamples)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| cor-rado-single の「空でない部分和が $0$」 | $x-2y=0$ | 分割正則 |
| def-rado-pr の「色の数が有限」 | $x+y-z=0$ で、正の整数ごとに相異なる色を塗る | 単色の解がある |
| def-rado-pr の「成分が等しくてもよい」(相異なる成分の解に強める) | $x-y=0$ | 成分が相異なる単色の解がある |
| thm-rado-main の「列条件を系全体の行列に課す」(各方程式ごとに確かめるだけにする) | $x+y-z=0$ と $x-y=0$ の連立 | 分割正則 |
1 行目:正の整数 $x$ を、$x$ を割り切る $2$ の冪の指数 $v_2(x)$ の偶奇で 2 色に塗る。$x=2y$ なら $v_2(x)=v_2(y)+1$ なので $x$ と $y$ の色は異なる。係数 $1,-2$ の空でない部分和 $1,-2,-1$ はどれも $0$ でない。
2 行目:$x+y=z$ の解では $z>x$ なので $x\ne z$ であり、$x$ と $z$ の色は異なる。
3 行目:$x-y=0$ の解は $x=y$ だけである。係数の和は $0$ なので、成分が等しくてもよい約束では自明に分割正則である(def-rado-pr の後の注意)。
4 行目:各方程式は単独では分割正則である($1+(-1)=0$)。連立させると解は $y=x$、$z=2x$ だけであり、1 行目の塗り分けで $x$ と $2x$ の色が異なるので単色の解はない。実際、係数行列の列 $(1,1)$、$(1,-1)$、$(-1,0)$ のどの空でない部分集合の和も $0$ にならないので、列条件はみたされない。
$Ax=0$ が分割正則なら、各 $r$ についてある $N$ があって、$[N]$ のどの $r$ 色の塗り分けにも、成分がすべて $[N]$ に属する単色の解がある(Rad33 Satz III、p. 439。この記事では証明しない)。列条件をみたす系については、この記事の証明からも直接に分かる。prf-rado-tpc-mono の段 1 は $[N_{t'}]$ の塗り分けだけを使って単色の $(t,p,c)$-集合を $[N_{t'}]$ の中に見つけており、lem-rado-tpc-solution の解の成分はその集合に属するからである。成分が相異なる単色の解の存在を問う問題も、同じ論文で扱われている(Rad33 p. 427 の §7 の紹介)。
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