交差数(グラフ)

同義語:グラフの交差数crossing number交差数補題crossing lemma

概要

交差数(グラフ)(crossing number)とは、グラフ $G$ を平面に良い描画(辺は頂点を通らず、端点を共有する 2 辺は端点のほかで交わらず、2 辺の共有点は有限個である描画)で描いたときの、辺どうしの交差の個数の最小値 $\operatorname{cr}(G)$ であり、$0$ になるのは平面グラフのときに限る。頂点が $n\ge3$ 個、辺が $m$ 本の単純グラフでは平面グラフの辺数の上界から $\operatorname{cr}(G)\ge m-3n+6$ が出て、$m\ge4n$ なら頂点を無作為に残す確率の議論で $\operatorname{cr}(G)\ge m^3/(64n^2)$ が示される(交差数補題)。完全グラフ $K_n$ の交差数は $n^4$ の程度で増え、交差数補題は平面の点と直線の接続の個数の評価に応用される。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 平面グラフ, 単純グラフ, 完全グラフ, 期待値の線形性と数え上げ

平面グラフでないグラフを紙に描くと、辺どうしの交差がどうしても生じる。交差数(crossing number)は、描き方を工夫したときに残る交差の最小個数である。交差数が $0$ であることは平面グラフであることにほかならず、交差数は「平面グラフからどれだけ遠いか」を測る量とみなせる。
単純な平面グラフの辺は頂点の個数の 3 倍未満しかないので、辺が多いグラフは交差をもつ。この記事では、まずこのことから交差数の下界 $\operatorname{cr}(G)\ge m-3n+6$ を導き、$K_5$・$K_{3,3}$・$K_6$ の交差数を決める。次に、頂点を無作為に選んで小さなグラフにこの下界を当てはめる確率の議論で、辺が多いグラフでは交差数が辺の本数の 3 乗に比例して増えるという 交差数補題 を証明する。完全グラフと完全二部グラフについては具体的な描画から上界も与え、交差数補題の下界が完全グラフについて定数倍を除いて最良であることを確かめる。最後に、交差数補題が平面の点と直線の配置の問題に応用されることを述べる。

定義

この記事のグラフは、特に断らない限り有限の単純グラフとし、頂点の個数を $n$、辺の本数を $m$ で表す。平面の 弧 とは、閉区間 $[0,1]$ からの連続な単射の像のことであり、両端を除いた部分を弧の 内部 という。

良い描画と交差数

グラフ $G=(V,E)$ の平面への 良い描画 $D$ とは、各頂点 $v$ に相異なる点 $p_v\in\mathbb R^2$ を、各辺 $uv$ に $p_u$ と $p_v$ を両端とする弧を対応させたもので、次の 3 条件を満たすものをいう。
(D1) どの辺の弧の内部も、頂点に対応する点を通らない。
(D2) 端点を共有する 2 辺の弧は、共有する端点のほかに共有点をもたない。
(D3) 端点を共有しない 2 辺の弧の共有点は有限個である。
辺 $e$ の弧の内部を $e^\circ$ と書き、
$$ \operatorname{cr}(D):=\sum_{\{e,e'\}}\lvert e^\circ\cap e'^\circ\rvert $$
(和は相異なる 2 辺の組の全体にわたる)を $D$ の 交差の個数 という。$G$ の良い描画すべてにわたる $\operatorname{cr}(D)$ の最小値を $G$ の 交差数 といい、$\operatorname{cr}(G)$ と書く。

交差の個数は、2 辺の内部の共有点を、辺の組ごとに数えたものである。3 本以上の辺が同じ点を通れば、その点は通る辺の組の個数だけ数える。交差数の定義には、端点を共有する辺の交差を許すもの、交差する辺の組の個数を数えるもの、辺を線分に限るものなどの流儀があり、一般には値が異なりうる。以下の結果は上の定義についてのものである。

交差数の基本性質

$G$ をグラフとする。

  1. $G$ には良い描画があり、$\operatorname{cr}(G)$ は端点を共有しない辺の組の個数以下の、$0$ 以上の整数として定まる。
  2. $H$ が $G$ の部分グラフなら $\operatorname{cr}(H)\le\operatorname{cr}(G)$ である。
  3. $\operatorname{cr}(G)=0$ であることと、$G$ が 平面グラフ であることは同値である。

1:頂点を円周上の相異なる点に置き、各辺を両端を結ぶ線分で描く。円周上の 3 点は一直線上にないので、線分の内部は円周上の点を通らず (D1)、端点を共有する 2 本の線分は共有する端点でだけ交わり (D2)、端点を共有しない 2 本の線分の共有点は高々 1 個である (D3)。よって良い描画であり、交差の個数は端点を共有しない辺の組の個数以下である。
2:$G$ の良い描画から $H$ の頂点と辺だけを残すと $H$ の良い描画になり、交差の個数は増えない。$\operatorname{cr}(D)=\operatorname{cr}(G)$ となる $D$ に当てればよい。
3:交差の個数が $0$ の良い描画では、(D1)・(D2) と交差がないことから、相異なる辺の弧は共有する端点のほかに共有点をもたず、弧の内部は頂点を通らない。これは 平面グラフ の定義「平面グラフ・平面埋め込み」の平面埋め込みである。逆に、平面埋め込みは (D1)〜(D3) を満たし、交差の個数が $0$ の良い描画である。$\square$

辺の本数による下界

辺の本数による交差数の下界

頂点が $n\ge3$ 個、辺が $m$ 本の単純グラフ $G$ について
$$ \operatorname{cr}(G)\ge m-3n+6 $$
である。$G$ が 二部グラフ なら $\operatorname{cr}(G)\ge m-2n+4$ である。

交差のある辺を除く

$\operatorname{cr}(D)=\operatorname{cr}(G)=:c$ となる良い描画 $D$ をとる。交差の個数が正である限り、交差に関わる辺(内部がほかの辺の内部と共有点をもつ辺)を 1 本選び、描画から除く。残りは、除いた辺をもたないグラフの良い描画であり、除いた辺が関わっていた交差がなくなるので、交差の個数は $1$ 以上減る。したがって、高々 $c$ 本の辺を除けば交差の個数は $0$ になる。
除いた辺の本数を $k\le c$ とすると、残りは頂点 $n$ 個、辺 $m-k$ 本の単純グラフ $G'$ の、交差の個数が $0$ の良い描画である。prop-cr-basic の 3 により $G'$ は平面グラフであり、平面グラフ の系「単純平面グラフの辺数の上界」により $m-k\le3n-6$ である。$G$ が二部グラフなら $G'$ も二部グラフなので、同じ系により $m-k\le2n-4$ である。$c\ge k$ と合わせて結論を得る。$\square$

$K_5$・$K_{3,3}$・$K_6$ の交差数

thm-cr-edge-bound から $\operatorname{cr}(K_5)\ge10-15+6=1$、二部グラフの評価から $\operatorname{cr}(K_{3,3})\ge9-12+4=1$、$\operatorname{cr}(K_6)\ge15-18+6=3$ である。どれも等号が成り立つ。

  • $K_5$:頂点を $a,b,c,d,e$ とする。三角形 $abc$ を描き、内側に $d$、外側に $e$ を置いて、$d$ と $e$ をそれぞれ $a,b,c$ と交差なく結ぶ。これは $K_5$ から辺 $de$ を除いたグラフの平面埋め込みで、面は 6 つの三角形 $dab,dbc,dca,eab,ebc,eca$ である。辺 $de$ を、面 $dab$ の中を通って辺 $ab$ を 1 回横切り、面 $eab$ の中を通って $e$ に至る弧で描くと、交差が $1$ 個の良い描画になる。
  • $K_{3,3}$:正六角形の頂点に $a_1,b_1,a_2,b_2,a_3,b_3$ をこの順に置き、六角形の 6 辺と、六角形の内側の対角線 $a_1b_2$、$a_3b_1$ を線分で描き、$a_2b_3$ を六角形の外側を回る弧で描く。交差は 2 本の対角線の 1 個だけである(円周上で端点が交互に並ぶ弦だけが交わる)。
  • $K_6$:$K_6$ から 3 本の辺 $11'$、$22'$、$33'$ を除くと正八面体のグラフになる。外側の三角形 $123$ の内側に三角形 $1'2'3'$ を、$1'$ が辺 $23$ の側、$2'$ が辺 $31$ の側、$3'$ が辺 $12$ の側に来るように置いて八面体を平面に描くと、面は $\{1,1'\}$、$\{2,2'\}$、$\{3,3'\}$ から 1 つずつ選んだ 3 頂点の三角形 8 つになる(外面は三角形 $123$)。辺 $11'$ を面 $123$(外面)と面 $1'23$ を通して辺 $23$ を 1 回横切るように、$22'$ を面 $1'23'$ と面 $1'2'3'$ を通して辺 $1'3'$ を横切るように、$33'$ を面 $12'3$ と面 $12'3'$ を通して辺 $12'$ を横切るように描く。3 本の新しい弧は互いに別の面を通るので交わらず、交差は $3$ 個である。

交差数補題

thm-cr-edge-bound の下界は、辺の本数が頂点の個数の 3 倍を少し超える程度のグラフにはよく効くが、辺がもっと多いと弱い。たとえば $K_n$ では $n^2$ の程度の下界しか与えない。次の補題は、辺の多いグラフについて辺の本数の 3 乗に比例する下界を与える。証明では、頂点を無作為に選んで小さなグラフを作り、そこに thm-cr-edge-bound を当てはめて期待値をとる。

交差数補題

頂点が $n\ge1$ 個、辺が $m$ 本の単純グラフ $G$ が $m\ge4n$ を満たすなら
$$ \operatorname{cr}(G)\ge\frac{m^3}{64n^2} $$
である。

頂点を無作為に残す

段 1(すべてのグラフでの弱い下界)。 すべての単純グラフ $H$(頂点 $n_H$ 個、辺 $m_H$ 本)について $\operatorname{cr}(H)\ge m_H-3n_H$ である。$n_H\ge3$ なら thm-cr-edge-bound による。$n_H\le2$ なら $m_H\le1$ であり、$n_H\ge1$ なら $m_H-3n_H\le1-3<0$、$n_H=0$ なら $m_H-3n_H=0$ なので、右辺は $0$ 以下である。
段 2(無作為な部分グラフ)。 $\operatorname{cr}(D)=\operatorname{cr}(G)=:c$ となる良い描画 $D$ をとり、$p:=4n/m$ とおく。仮定から $0< p\le1$ である。各頂点を独立に確率 $p$ で残し($2^n$ 通りの残し方からなる有限確率空間)、残った頂点の集合を $V'$、両端が $V'$ に属する $G$ の辺の全体からなるグラフを $H$ とする。$D$ から $H$ の頂点と辺だけを残した描画 $D_H$ は $H$ の良い描画である。$n_H$、$m_H$ と $X:=\operatorname{cr}(D_H)$ はこの確率空間の上の確率変数で、段 1 により、どの場合にも
$$ X\ge\operatorname{cr}(H)\ge m_H-3n_H $$
である。
段 3(期待値の計算)。 各頂点は確率 $p$ で残るので $\mathbb E[n_H]=pn$ であり、各辺は両端が残るとき残るので $\mathbb E[m_H]=p^2m$ である。$X$ は、$D$ の 2 辺 $\{e,e'\}$ と共有点 $x\in e^\circ\cap e'^\circ$ の組のうち、$e,e'$ がともに $H$ に残るものの個数である。(D2) により $e$ と $e'$ は端点を共有しないので、両方が残るのは相異なる 4 頂点がすべて残るときで、その確率は $p^4$ である。期待値の線形性と数え上げ の定理「期待値の線形性」により $\mathbb E[X]=p^4c$ である。段 2 の不等式の期待値をとって
$$ p^4c\ge p^2m-3pn,\qquad\text{すなわち}\qquad c\ge\frac{m}{p^2}-\frac{3n}{p^3} $$
を得る。$p=4n/m$ を代入すると
$$ c\ge\frac{m^3}{16n^2}-\frac{3m^3}{64n^2}=\frac{m^3}{64n^2} $$
である。$\square$

$p=4n/m$ は計算が簡単になるように選んだ。$\frac{m}{p^2}-\frac{3n}{p^3}$ を最大にするのは $p=\frac{9n}{2m}$ である。$p=\frac{9n}{2m}$($m\ge\frac92n$ のとき)とおくと、同じ議論から $\operatorname{cr}(G)\ge\frac{4m^3}{243n^2}$ が得られ、定数が少しよくなる。同じ筋の証明は Zha23 Theorem 8.2.3(p. 276)にある(そこでは交差数を連続な曲線による描画で定め、定数を明示しない形で述べている)。

完全グラフの交差数の下界

$n\ge9$ なら $\operatorname{cr}(K_n)\ge\dfrac{n(n-1)^3}{512}$ である。

$m=\frac{n(n-1)}2$ であり、$m\ge4n$ は $n\ge9$ と同値である。thm-cr-crossing-lemma により $\operatorname{cr}(K_n)\ge\frac{n^3(n-1)^3}{8\cdot64n^2}=\frac{n(n-1)^3}{512}$ である。$\square$

上界:凸位置の描画

凸位置に置いた完全グラフの描画

$n\ge4$ とする。$K_n$ の頂点を円周上に置き、辺を線分で描くと、交差の個数はちょうど $\binom n4$ である。したがって $\operatorname{cr}(K_n)\le\binom n4$ である。

円の 2 本の弦は、端点が円周上で交互に並ぶとき 1 点で交わり、そうでなければ交わらない。円周上の相異なる 4 点を 2 組に分ける 3 通りのうち、端点が交互に並ぶのはちょうど 1 通り(四角形の 2 本の対角線)である。よって交差する辺の組は 4 頂点の集合と 1 対 1 に対応し、各組は 1 点で交わる。prop-cr-basic の 1 の証明により、これは良い描画である。$\square$

cor-cr-complete と合わせると $\frac{n(n-1)^3}{512}\le\operatorname{cr}(K_n)\le\frac{n^4}{24}$ であり、$\operatorname{cr}(K_n)$ は $n^4$ の程度で増える。$K_n$ では $m^3/n^2$ も $n^4$ の程度なので、交差数補題の下界は $K_n$ について定数倍を除いて最良である。thm-cr-edge-bound から出る $\frac{(n-3)(n-4)}2$ と比べると、cor-cr-complete の下界は $n\ge14$ で上回る($n=14$ で $60.07\ldots>55$)。

上界:完全二部グラフの描画

完全二部グラフ $K_{a,b}$ についても、座標軸を使った描画で上界が得られる。$\lfloor x\rfloor$ は $x$ 以下の最大の整数である。

完全二部グラフの交差数の上界

$a,b\ge1$ について
$$ \operatorname{cr}(K_{a,b})\le\Bigl\lfloor\frac a2\Bigr\rfloor\Bigl\lfloor\frac{a-1}2\Bigr\rfloor\Bigl\lfloor\frac b2\Bigr\rfloor\Bigl\lfloor\frac{b-1}2\Bigr\rfloor $$
である。

座標軸の上に置く描画

一方の側の $a$ 頂点を $x$ 軸上の $0$ でない相異なる点に、正の側に $\lceil a/2\rceil$ 個、負の側に $\lfloor a/2\rfloor$ 個置く。もう一方の側の $b$ 頂点を $y$ 軸上に同様に置き、辺を線分で描く。線分の内部は開いた象限の中にあるので頂点を通らない (D1)。端点を共有する 2 本の線分は、共有する端点と残りの 2 つの端点が、一方の軸の上の 2 点と他方の軸の上の原点でない 1 点なので一直線上になく、共有する端点でだけ交わる (D2)。端点を共有しない 2 本の線分の共有点は高々 1 個である (D3)。よって良い描画である。
端点を共有しない 2 辺 $(s,0)$–$(0,u)$ と $(t,0)$–$(0,w)$ を考える。2 本の線分の内部はそれぞれ 1 つの開いた象限にあるので、交わるのは $s,t$ が同符号かつ $u,w$ が同符号のときに限る。座標の符号を変えて第 1 象限で考え、$0< s< t$ とする。直線 $\frac xs+\frac yu=1$ に対して、点 $(t,0)$ は原点と反対側にあり、点 $(0,w)$ は $w< u$ なら原点の側、$w>u$ なら反対側にある。直線 $\frac xt+\frac yw=1$ に対して、点 $(s,0)$ は原点の側にあり、点 $(0,u)$ は $u>w$ なら反対側、$u< w$ なら原点の側にある。2 本の線分が交わるのは、どちらの線分の両端も他方の直線の両側にあるときに限るので、交わるのは $u>w$ のときで、そのとき交点は 1 個である。よって、ある象限に $x$ 軸側の頂点が $\alpha$ 個、$y$ 軸側の頂点が $\beta$ 個あれば、その象限の交差は $\binom\alpha2\binom\beta2$ 個である。4 つの象限で足すと、交差の個数は
$$ \Bigl(\binom{\lceil a/2\rceil}2+\binom{\lfloor a/2\rfloor}2\Bigr)\Bigl(\binom{\lceil b/2\rceil}2+\binom{\lfloor b/2\rfloor}2\Bigr) $$
である。$a=2r$ なら第 1 因子は $2\binom r2=r(r-1)$、$a=2r+1$ なら $\binom{r+1}2+\binom r2=r^2$ で、どちらも $\lfloor\frac a2\rfloor\lfloor\frac{a-1}2\rfloor$ に等しい。$b$ についても同様である。$\square$

$K_{3,3}$ ではこの上界は $1$ で、ex-cr-small と一致する。一方 thm-cr-edge-bound の二部グラフの評価は $\operatorname{cr}(K_{a,b})\ge ab-2(a+b)+4=(a-2)(b-2)$ を与え、$a=b$ のとき上界が $a^4/16$ の程度なのに対し下界は $a^2$ の程度である。交差数補題($m=a^2$、$n=2a$、$a\ge8$)は $\frac{a^6}{256a^2}=\frac{a^4}{256}$ を与え、$a^4$ の程度まで届く。

応用:点と直線の接続

交差数補題は、平面の幾何的な配置の問題に、グラフの描画を通して応用される。平面の $n$ 個の点の集合 $P$ と $l$ 本の直線の集合 $\mathcal L$ について、点が直線の上にある組 $(p,\ell)$ の個数を $I(P,\mathcal L)$ と書く。離散幾何学 の定理「Szemerédi–Trotter の定理」は
$$ I(P,\mathcal L)\le4(nl)^{2/3}+4n+l $$
を主張し、その記事で交差数補題を使って証明されている。
証明の考え方は次のとおりである。点を頂点とし、各直線の上で隣り合う 2 点を線分で結ぶと良い描画が得られ、辺の本数は $I(P,\mathcal L)-l$ 以上である。2 本の直線は高々 1 点で交わるので、交差の個数は直線の組の個数 $\binom l2$ 以下である。辺が多ければ交差数補題により交差が多くなければならないので、接続の個数が上から抑えられる。直線の代わりに半径 $1$ の円を使うと、平面の $n$ 点のうち距離がちょうど $1$ の対の個数を抑える問題(単位距離グラフ)にも同じ考え方が使える。ただし円は 2 点で交わるので、描画を良い描画に直す調整が要る。

反例:条件を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
thm-cr-edge-bound の $n\ge3$$K_2$($n=2$、$m=1$)$\operatorname{cr}(G)\ge m-3n+6$(右辺は $1$)
thm-cr-edge-bound の 2 つ目の不等式の「二部グラフ」$K_5$$\operatorname{cr}(G)\ge m-2n+4$(右辺は $4$)
単純グラフであること道 $u\,v\,w$ の各辺を $k\ge2$ 本ずつにした多重グラフ$\operatorname{cr}(G)\ge m-3n+6$(右辺は $2k-3$)
thm-cr-crossing-lemma の $m\ge4n$$K_4$($n=4$、$m=6$)$\operatorname{cr}(G)\ge\frac{m^3}{64n^2}$(右辺は $\frac{27}{128}$)
反例の確かめ

1 行目。 $K_2$ は平面グラフなので交差数は $0$ である。
2 行目。 $K_5$ は二部グラフでなく、ex-cr-small により交差数は $1$ であり、$10-10+4=4$ より小さい。
3 行目。 良い描画の定義は多重辺にもそのまま使える。$u,v,w$ を一直線上に置き、$u$ と $v$ を結ぶ $k$ 本の辺を、互いに入れ子になった弧(線分 $uv$ を弦とする高さの異なる円弧)で描き、$v$ と $w$ についても同様にすると、交差のない良い描画になる。よって交差数は $0$ だが、$n=3$、$m=2k$ で $m-3n+6=2k-3\ge1$ である。単純性は、thm-cr-edge-bound の証明で使った平面グラフの辺数の上界 $m\le3n-6$ に必要である。
4 行目。 $K_4$ は平面グラフ(三角形の内側に 1 点を置いて結ぶ)なので交差数は $0$ だが、$\frac{6^3}{64\cdot16}=\frac{27}{128}>0$ である。

補足

交差数のいろいろな形
  • 各辺を線分で描いた良い描画だけを考えたときの交差の個数の最小値を 直線交差数(rectilinear crossing number)という。最小をとる範囲が狭いので、直線交差数は交差数以上である。prop-cr-convex と prop-cr-bipartite の描画は線分によるものなので、それらの上界は直線交差数についても成り立つ。
  • 平面の代わりに閉曲面に描いて交差の個数を数えることもできる。交差なしに閉曲面に描けるかどうか、その面の数え方は 位相的グラフ理論 で扱う。

関連項目

参考文献

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