射影錐

同義語:projective cone

概要

射影錐(projective cone)とは、射影多様体 $V\subset\mathbb{P}^n$ の斉次イデアル $I$ が $\mathbb{P}^{n+1}$ で定める閉集合のことで、頂点 $(0:\dots:0:1)$ と $V$ の点を結ぶ直線の和集合である。次元は $\dim V+1$、次数は $V$ の次数に等しく、無限遠の超平面を除くとアフィン錐 $\operatorname{Spec}S(V)$ が残る。$V$ が次元 $1$ 以上で余次元 $1$ で正則なら、射影錐の因子類群は $V$ の類群と同型であり、アフィン錐の類群は $V$ の類群を超平面切断の類で割ったものになる。たとえば円錐曲線の上のアフィン錐 $x_0x_2=x_1^2$ の類群は $\mathbb{Z}/2$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影多様体, Hilbert多項式, Weil因子

射影空間 $\mathbb{P}^n$ の中の射影多様体 $V$ に対し、$V$ の各点と 1 点 $P$ を結ぶ直線をすべて集めると、$\mathbb{P}^{n+1}$ の中に次元が $1$ だけ大きい射影多様体ができる。これを $V$ の上の射影錐(projective cone)といい、$P$ をその頂点という。頂点を除くと射影錐は $V$ の上の直線の族であり、無限遠の超平面で切ると $V$ 自身が現れ、無限遠を除くと $V$ のアフィン錐が残る。この構造から、射影錐の次数は $V$ の次数に等しく、$V$ が次元 $1$ 以上で余次元 $1$ で正則なら因子類群について $\operatorname{Cl}(\overline{C}(V))\cong\operatorname{Cl}(V)$ と、アフィン錐の類群が「$V$ の類群を超平面切断の類で割ったもの」であることが従う。2 次錐 $x_0x_1=x_2^2$ の類群が $\mathbb{Z}/2$ になるのは、円錐曲線の超平面切断が点の $2$ 倍だからである。

定義

以下 $k$ を代数閉体とし、多様体は $k$ 上の整な分離的有限型スキームとみなす(Har77 II.4 の終わり、p. 105)。点の記述では閉点を座標で書く。$S:=k[x_0,\dots,x_n]$、$S':=S[x_{n+1}]$ とし、$\mathbb{P}^n$ を $\mathbb{P}^{n+1}$ の超平面 $H_\infty:=V_+(x_{n+1})$ と同一視する。

射影錐とアフィン錐

$Y\subset\mathbb{P}^n$ を射影多様体、$I=I(Y)\subset S$ をその斉次イデアル(斉次素イデアル)、$S(Y):=S/I$ を斉次座標環とする。

  1. $\mathbb{P}^{n+1}$ の閉集合 $\overline{C}(Y):=V_+(IS')$ を $Y$ の上の射影錐(projective cone)という。点 $P:=(0:\dots:0:1)$ を頂点という。
  2. $\mathbb{A}^{n+1}=\operatorname{Spec}S$ の閉集合 $C(Y):=V(I)=\operatorname{Spec}S(Y)$ を $Y$ のアフィン錐(affine cone)という。
    $S(Y)$ はアフィン錐の座標環でもある。Hartshorne Har77 I 演習 2.10(p. 12)はアフィン錐を $\{0\}$ と「$Y$ の点の座標ベクトル全体」の和集合として導入し、その射影閉包を射影錐と呼んでいる。下の命題でこれらが一致することを見る。
射影錐の構造

$Y\subset\mathbb{P}^n$ を射影多様体、$r:=\dim Y$ とする。

  1. $\overline{C}(Y)$ の閉点は $P$ と、$(a_0:\dots:a_n)\in Y$ なる点 $(a_0:\dots:a_n:b)$ である。とくに $\overline{C}(Y)$ は $P$ と $Y$ の点を結ぶ直線の和集合であり、$\overline{C}(Y)\cap H_\infty=Y$ である。
  2. $D_+(x_{n+1})=\mathbb{A}^{n+1}$ と同一視すると $\overline{C}(Y)\cap D_+(x_{n+1})=C(Y)$ である。
  3. $IS'$ は斉次素イデアルで $I(\overline{C}(Y))=IS'$、$\overline{C}(Y)$ の斉次座標環は多項式環 $S(Y)[x_{n+1}]$ である。$\overline{C}(Y)$ は射影多様体であり、$C(Y)$ の閉包である。
  4. $\dim\overline{C}(Y)=\dim C(Y)=r+1$ であり、$\deg\overline{C}(Y)=\deg Y$ である。
斉次元の形と Hilbert 関数の和

要点:$IS'$ の元は $x_{n+1}$ を含まない方程式で生成されるので、点の条件は最初の $n+1$ 座標だけで決まる。斉次座標環 $S(Y)[x_{n+1}]$ の次数 $l$ の部分の次元は $\psi_Y(0)+\dots+\psi_Y(l)$ で、この和の主要項から次元と次数が読める。

詳しい証明を開く

1・2:$IS'$ の斉次元は $\sum_jF_jx_{n+1}^j$($F_j\in I$ は斉次)の形だから、点 $(a:b)$($a\in k^{n+1}$、$b\in k$)が $V_+(IS')$ に属することは、すべての斉次 $F\in I$ について $F(a)=0$ となることと同値である。$I$ は $0$ でない定数を含まないので $a=0$(点 $P$)はこれをみたし、$a\ne0$ のときこれは $(a_0:\dots:a_n)\in Y$ と同値である。点 $(a:0)\in Y$ と $P$ を結ぶ直線は $\{(\lambda a:\mu)\}$ であり、1 の主張が従う。$b=1$ とおけば 2 を得る。

3:$S'/IS'\cong S(Y)[x_{n+1}]$ は整域上の多項式環だから整域であり、$IS'$ は素イデアルである。$x_{n+1}\notin IS'$ だから $IS'$ は $S'_+$ を含まない。1 により $V_+(IS')\ne\emptyset$ なので、射影多様体 の定理「射影零点定理」の 2 により $I(\overline{C}(Y))=\sqrt{IS'}=IS'$ であり、同記事の命題「閉部分多様体と斉次素イデアル」により $\overline{C}(Y)=V_+(IS')$ は射影多様体(とくに既約)である。$C(Y)$ は既約な $\overline{C}(Y)$ の空でない開集合なので稠密である。

4:$\psi_Y(j):=\dim_kS(Y)_j$ とおく。$S(Y)[x_{n+1}]$ の次数 $l$ の部分は $\bigoplus_{j=0}^lS(Y)_j\,x_{n+1}^{l-j}$ だから、その Hilbert 関数は $\psi'(l)=\sum_{j=0}^l\psi_Y(j)$ である。$Y$ の Hilbert多項式 を $p_Y(z)=\frac{d}{r!}z^r+(\text{低次})$($d=\deg Y$)とすると、$j\ge j_0$ で $\psi_Y(j)=p_Y(j)$ だから、$l\ge j_0$ で $\psi'(l)=c+\sum_{j=j_0}^{l}p_Y(j)$($c$ は定数)であり、$\sum_{j\le l}j^r=\frac{l^{r+1}}{r+1}+(\text{低次})$ から、これは主要項が $\frac{d}{(r+1)!}\,l^{r+1}$ の $l$ の多項式である。Hilbert–Serre の定理(Har77 Theorem I.7.5、p. 51)により Hilbert 多項式の次数は次元に等しく、次数の定義(同 p. 52)により $\dim\overline{C}(Y)=r+1$、$\deg\overline{C}(Y)=(r+1)!\cdot\frac{d}{(r+1)!}=d$ である。$C(Y)$ は $\overline{C}(Y)$ の部分空間なので $\dim C(Y)\le r+1$ である。逆に $Y$ の既約閉集合の列 $W_0\subsetneq\dots\subsetneq W_r=Y$ をとると、アフィン錐の列 $\{0\}\subsetneq C(W_0)\subsetneq\dots\subsetneq C(W_r)=C(Y)$ は既約閉集合の長さ $r+1$ の列である($C(W_j)$ は素イデアル $I(W_j)$ の零点集合で、$W_j$ を定める)。よって $\dim C(Y)=r+1$ である。$\square$

たとえば $\mathbb{P}^2$ の次数 $d$ の既約曲線 $V_+(F)$ の上の射影錐は、同じ多項式 $F$ が $\mathbb{P}^3$ で定める次数 $d$ の曲面である。

頂点の外での座標

$\overline{C}(Y)\setminus\{P\}$ の点 $(a:b)$ は $a\ne0$ をみたすので、射影
$$ \pi\colon\overline{C}(Y)\setminus\{P\}\longrightarrow Y,\qquad(a:b)\longmapsto a $$
が定まる。$Y_i:=Y\cap D_+(x_i)$($0\le i\le n$)、$A_i:=S(Y)_{(x_i)}$ をその座標環($S(Y)[x_i^{-1}]$ の次数 $0$ の部分)とし、$U_i:=\overline{C}(Y)\cap D_+(x_i)$ とおく。$\overline{C}(Y)\setminus\{P\}=\bigcup_{i=0}^nU_i$ である。

直線束としての局所座標

$t_i:=x_{n+1}/x_i$ とおくと、$U_i$ の座標環は多項式環 $A_i[t_i]$ であり、$\pi|_{U_i}$ は射影 $U_i\cong Y_i\times\mathbb{A}^1\to Y_i$ である。$U_i\cap U_j$ の上で $t_j=(x_i/x_j)\,t_i$ で、$x_i/x_j$ は $Y_i\cap Y_j$ の上の単元である。とくに $\overline{C}(Y)$ の関数体は $K(Y)(t_i)$($t_i$ は $K(Y)$ 上超越的)である。

次数0の部分を書き下す

要点:$U_i$ の座標環は斉次座標環の $x_i$ による局所化の次数 $0$ の部分で、$x_{n+1}$ の冪を $t_i$ の冪に書き換える。

詳しい証明を開く

prop-projective-cone-structure の 3 により $U_i$ の座標環は $S(Y)[x_{n+1}][x_i^{-1}]$ の次数 $0$ の部分である。次数 $m$ の元 $G=\sum_jG_jx_{n+1}^j$($G_j\in S(Y)_{m-j}$)について $G/x_i^m=\sum_j(G_j/x_i^{m-j})\,t_i^j$ だから、この環は $A_i[t_i]$ であり、$x_{n+1}$ が $S(Y)$ 上超越的だから $t_i$ は $A_i$ 上超越的である。残りは $t_j=x_{n+1}/x_j=(x_i/x_j)t_i$ からわかる。$\square$

ファイバー座標 $t_i$ が $\mathcal{O}_Y(1)$ の切断と同じ規則 $t_j=(x_i/x_j)t_i$ で変わるので、頂点の外の射影錐は $\mathcal{O}_Y(1)$ の直線束としての全空間であり、その零切断が $t_i=0$、すなわち $\overline{C}(Y)\cap H_\infty$ である。頂点 $P$ はすべての $U_i$ の外にあり、各ファイバーの直線の無限遠の点を 1 点につぶしたものにあたる。

因子類群

以下、$V\subset\mathbb{P}^n$ を $\dim V\ge1$ の射影多様体で余次元 $1$ で正則なもの(Weil因子 の記事の条件 $(*)$ をみたすもの)とし、$\overline{X}:=\overline{C}(V)$、$X:=C(V)$、$P$ を頂点、$K:=K(V)$ とする。$V_i\ne\emptyset$ となる添字 $i_0$ を 1 つ固定し、$A:=A_{i_0}$、$t:=t_{i_0}$ と書く。lem-projective-cone-chart により $K(\overline{X})=K(t)$ である。
超平面切断の因子を次のように定める。$V\not\subset V_+(\ell)$ となる $1$ 次形式 $\ell$ をとる。$V$ の素因子 $W$ に対し $W\cap V_i\ne\emptyset$ となる $i$ を選び、
$$ V.H:=\sum_W\operatorname{ord}_W(\ell/x_i)\,W $$
とおく。$(\ell/x_i)/(\ell/x_j)=x_j/x_i$ は $V_i\cap V_j$ の単元なので係数は $i$ によらず、$\ell/x_i$ は $V_i$ の正則関数だから $V.H\ge0$ である。別の $\ell'$ では $V.H$ が $\operatorname{div}(\ell/\ell')$ だけ変わるので、類 $[V.H]\in\operatorname{Cl}(V)$ は $\ell$ によらない。

射影錐とアフィン錐の類群

上の仮定のもとで次が成り立つ。

  1. $\overline{X}$ と $X$ は条件 $(*)$ をみたす。
  2. $V$ の素因子 $W$ について $\overline{C}(W)$ は $\overline{X}$ の素因子であり、$W\mapsto\overline{C}(W)$ は同型 $\operatorname{Cl}(V)\xrightarrow{\sim}\operatorname{Cl}(\overline{X})$ を誘導する。
  3. 列
    $$ \mathbb{Z}\xrightarrow{\ 1\mapsto[V.H]\ }\operatorname{Cl}(V)\xrightarrow{\ [W]\mapsto[C(W)]\ }\operatorname{Cl}(X)\longrightarrow0 $$
    は完全である。
  4. $V$ が正規なら、3 の左の写像は単射である。
水平な素因子と垂直な素因子に分ける

1:$\overline{X}$ は射影多様体なので Noether・整・分離的である。頂点 $P$ の余次元は $\dim\overline{X}=\dim V+1\ge2$ だから、余次元 $1$ の点はある $U_i\cong V_i\times\mathbb{A}^1$ にあり、$V_i$ が $(*)$ をみたすので $V_i\times\mathbb{A}^1$ も $(*)$ をみたす(Har77 Proposition II.6.6、p. 134)。$X$ は $\overline{X}$ の開集合である。
2:$\overline{X}\setminus\{P\}$ の素因子 $Z$ を、$\pi(Z)$ が $V$ で稠密なもの(水平)とそうでないもの(垂直)に分ける。
垂直な素因子:$V$ の素因子 $W$ について $\pi^{-1}(W)=\overline{C}(W)\setminus\{P\}$ は既約で次元 $\dim W+1=\dim V$ だから素因子である(prop-projective-cone-structure を $W$ に使う)。逆に $\pi(Z)$ の閉包 $W$ が $V$ と異なれば、$Z\subset\pi^{-1}(W)$ と $\dim Z=\dim V\ge\dim W+1=\dim\pi^{-1}(W)$ から $Z=\pi^{-1}(W)$ で、$W$ は素因子である。$\pi^{-1}(W)$ の生成点の局所環は、$W\cap V_i\ne\emptyset$ なる $i$ について $\mathcal{O}_{V,W}[t_i]$ をその極大イデアルの $t_i$ 係数への延長 $\mathfrak{m}_W[t_i]$ で局所化したものであり、$\mathcal{O}_{V,W}$ の素元がその素元になる。よって
$$ \operatorname{ord}_{\pi^{-1}(W)}(g)=\operatorname{ord}_W(g)\quad(g\in K^\times),\qquad\operatorname{ord}_{\pi^{-1}(W)}(t_i)=0 $$
である($t_i\notin\mathfrak{m}_W[t_i]$)。
水平な素因子:生成点 $\eta_Z$ は $V$ の生成点に移るので $\eta_Z\in U_{i_0}$ であり、$\eta_Z$ は $A[t]$ の高さ $1$ の素イデアル $\mathfrak{q}$ で $\mathfrak{q}\cap A=0$ なるものに対応する。$A\setminus\{0\}$ で局所化すると、これは単項イデアル整域 $K[t]$ の $0$ でない素イデアル $(h)$($h$ は既約多項式)と 1 対 1 に対応し、$\mathcal{O}_{\overline{X},Z}=K[t]_{(h)}$ である。したがって水平な素因子 $Z_h$ は $K[t]$ の既約多項式 $h$($K^\times$ 倍を除く)と 1 対 1 に対応し、$\operatorname{ord}_{Z_h}$ は $h$ 進付値 $v_h$ である。$g\in K^\times$ はすべての $v_h$ で $0$ である。
以上から、$\pi^*\colon\operatorname{Div}(V)\to\operatorname{Div}(\overline{X}\setminus\{P\})$、$W\mapsto\pi^{-1}(W)$ は単射で、$g\in K^\times$ について $\pi^*\operatorname{div}_V(g)=\operatorname{div}(g)$ をみたす。

  • 全射性:$D\in\operatorname{Div}(\overline{X}\setminus\{P\})$ の水平部分を $\sum_hn_hZ_h$ とし、$f:=\prod_hh^{n_h}$ とおくと、$D-\operatorname{div}(f)$ は水平部分をもたず、$\pi^*E$ の形である。
  • 単射性:$\pi^*E=\operatorname{div}(f)$($f\in K(t)^\times$)なら、すべての $v_h(f)=0$ だから、$K[t]$ の一意分解性により $f\in K^\times$ である。すると $\pi^*E=\pi^*\operatorname{div}_V(f)$ で、$\pi^*$ の単射性から $E=\operatorname{div}_V(f)$ である。
    ゆえに $\operatorname{Cl}(V)\cong\operatorname{Cl}(\overline{X}\setminus\{P\})$ である。$P$ の余次元は $2$ 以上なので、Weil因子 の定理「開集合への制限の完全列」により $\operatorname{Cl}(\overline{X})\cong\operatorname{Cl}(\overline{X}\setminus\{P\})$ であり、$\pi^{-1}(W)$ の閉包は $\overline{C}(W)$ である。
    3:$V_\infty:=\overline{X}\cap H_\infty$ は $U_{i_0}$ で $t=0$ と書ける水平な素因子 $Z_t$ で、$X=\overline{X}\setminus V_\infty$ である(prop-projective-cone-structure の 2)。定理「開集合への制限の完全列」により $\mathbb{Z}\to\operatorname{Cl}(\overline{X})\to\operatorname{Cl}(X)\to0$($1\mapsto[V_\infty]$)は完全であり、$\overline{C}(W)\cap X=C(W)$ である。有理関数 $x_{n+1}/\ell=t_i\cdot(x_i/\ell)$ の因子を計算すると、水平部分は $v_h(t)$ だけから来て $V_\infty$、垂直部分は $\pi^{-1}(W)$ で $\operatorname{ord}_W(x_i/\ell)=-\operatorname{ord}_W(\ell/x_i)$ だから
    $$ \operatorname{div}(x_{n+1}/\ell)=V_\infty-\pi^*(V.H)\quad(\overline{X}\setminus\{P\}\ \text{の上で}) $$
    である。よって 2 の同型で $[V_\infty]$ は $[V.H]$ に対応し、3 の完全性が従う。
    4:$m>0$ について $m\,V.H=\operatorname{div}_V(g)$ と仮定して矛盾を導く。$\ell=x_{i_0}$ ととってよい。$\operatorname{div}(g)\ge0$ と正規性から $g$ は各 $V_i$ の正則関数(正規 Noether 整域は高さ $1$ の素イデアルでの局所化の共通部分。Mat86 Theorem 11.5 (ii)、p. 81)、したがって $g\in\Gamma(V,\mathcal{O}_V)=k$(射影多様体の大域正則関数は定数。Har77 Theorem I.3.4 (a)、p. 18)であり、$V.H=0$ となる。すると同じ理由で各 $x_{i_0}/x_i$ は $V_i$ の単元で、$x_{i_0}$ は $V$ のどの点でも $0$ にならず、$V\subset D_+(x_{i_0})$ である。このとき $x_j/x_{i_0}$ は $V$ の大域正則関数なので定数になり、$V$ は 1 点となって $\dim V\ge1$ に反する。$\square$

2 の証明は、直積 $V\times\mathbb{A}^1$ の類群の計算(Weil因子 の定理「直線との積の因子類群」)を、貼り合わせのある直線束に広げたものである。

斉次座標環の一意分解性

$V\subset\mathbb{P}^n$ を $\dim V\ge1$ の射影多様体とする。斉次座標環 $S(V)$ が一意分解整域であることは、次の 2 条件がともに成り立つことと同値である。

  1. $S(V)$ は整閉である($V$ は射影正規である。Har77 II 演習 5.14、p. 126 の定義)。
  2. $\operatorname{Cl}(V)\cong\mathbb{Z}$ で、$[V.H]$ がその生成元である。
アフィン錐の類群が消える条件

$S(V)$ はアフィン錐 $X$ の座標環だから、Weil因子 の命題「一意分解性と因子類群」により、$S(V)$ が一意分解整域であることは、$S(V)$ が整閉かつ $\operatorname{Cl}(X)=0$ であることと同値である。
$S(V)$ が整閉なら $V$ は正規である。実際、$K$ の元 $a$ が $A_i$ 上整なら、整閉整域の局所化 $S(V)[x_i^{-1}]$ 上整だから $a=F/x_i^m$($F\in S(V)$)と書ける。一方 $a=G/G'$($G,G'$ は同じ次数の斉次元、$G'\ne0$)だから $G'F=Gx_i^m$ であり、斉次成分を比べると $F$ は次数 $m$ の斉次元である。よって $a\in A_i$ である。
したがって 1 のもとで $V$ は正規であり、thm-projective-cone-class-group の 3 と 4 により、$\operatorname{Cl}(X)=0$ であることは $\mathbb{Z}\to\operatorname{Cl}(V)$($1\mapsto[V.H]$)が同型であること、すなわち 2 と同値である。$S(V)$ が一意分解整域なら 1 が成り立つので、以上で両方向が示された。$\square$

この系は Har77 II 演習 6.3 (c)(p. 147)の主張である。

例と反例

有理正規曲線の上の錐

$d\ge1$ とし、Veronese埋め込み $\nu_d\colon\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^d$、$(s:t)\mapsto(s^d:s^{d-1}t:\dots:t^d)$ の像を $V_d$ とする。$\nu_d$ は像への同型だから(Veronese埋め込み の定理「Veronese 埋め込みは像への同型」)、$V_d$ は正規で、$\operatorname{Cl}(V_d)\cong\operatorname{Cl}(\mathbb{P}^1)\cong\mathbb{Z}$ は 1 点の類で生成される(Weil因子 の定理「射影空間の因子類群」)。$\ell=x_0$ とする。$Q:=\nu_d(0:1)$ は $V_d\cap D_+(x_d)$ にあり、そこで $x_0/x_d=(s/t)^d$ は $Q$ で位数 $d$、他の点で単元である。$D_+(x_d)$ の外の唯一の点 $\nu_d(1:0)$ では $x_0\ne0$ である。よって $V_d.H=d\,Q$ であり、thm-projective-cone-class-group から
$$ \operatorname{Cl}(\overline{C}(V_d))\cong\mathbb{Z},\qquad\operatorname{Cl}(C(V_d))\cong\mathbb{Z}/d $$
を得る。前者の生成元は頂点を通る直線 $\overline{C}(Q)$ の類で、$[V_\infty]$ はその $d$ 倍である。$d=2$ では $V_2$ は円錐曲線 $x_0x_2=x_1^2$、$C(V_2)$ は 2 次錐で、$\operatorname{Cl}\cong\mathbb{Z}/2$ は Weil因子 の例「2次錐の因子類群」の結果と一致する。$d=3$ はねじれ 3 次曲線で、アフィン錐の類群は $\mathbb{Z}/3$ である。$d\ge2$ なら cor-projective-cone-ufd の条件 2 が破れるので、$S(V_d)$ は一意分解整域でない。

非特異2次曲面の上の錐

$Q_2:=V_+(x_0x_1-x_2x_3)\subset\mathbb{P}^3$ は $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ と同型で、$\operatorname{Cl}(Q_2)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}$、超平面切断の類は $(1,1)$ である(Har77 Example II.6.6.1・6.6.2、pp. 135–136。この記事では証明しない)。thm-projective-cone-class-group により、3 次元のアフィン錐 $C(Q_2)=\operatorname{Spec}k[x_0,x_1,x_2,x_3]/(x_0x_1-x_2x_3)$ の類群は $\mathbb{Z}^2/\mathbb{Z}(1,1)\cong\mathbb{Z}$ であり、この環は一意分解整域でない。

外す条件反例成り立たなくなること
$\dim V\ge1$$V=\{(1:0)\}\subset\mathbb{P}^1$(1 点)$\overline{C}(V)$ は直線 $V_+(x_1)\subset\mathbb{P}^2$ で、$\operatorname{Cl}(V)=0$ だが $\operatorname{Cl}(\overline{C}(V))\cong\mathbb{Z}$(頂点の余次元が $1$)
$[V.H]$ が $\operatorname{Cl}(V)$ を生成すること(系の 2)円錐曲線 $V_2$$S(V_2)=k[x_0,x_1,x_2]/(x_0x_2-x_1^2)$ は整閉(Weil因子 の補題「2次錐の正規性」)だが一意分解整域でない

補足

2 次錐の頂点を通る直線 $C(Q)$ は Weil 因子だが頂点の近くで Cartier 因子でなく、アフィン錐の類群 $\mathbb{Z}/2$ に対して Picard 群は $0$ である(局所分解的スキーム の例「2次錐:正規だが局所分解的でない」)。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II.4 の終わりの多様体の定義(p. 105)、I 演習 2.10(p. 12)、Theorem I.3.4(p. 18)、Theorem I.7.5 と次数の定義(pp. 51–52)、Proposition II.6.6(p. 134)、Example II.6.6.1・6.6.2(pp. 135–136)、II 演習 5.14(p. 126)、II 演習 6.3 (c)(p. 147)
[2]
Hideyuki Matsumura, Commutative Ring Theory, Cambridge University Press, 1986, Theorem 11.5 (ii)(p. 81、正規 Noether 整域は高さ 1 の素イデアルでの局所化の共通部分)

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