連結空間

概要

連結空間 (connected space) とは、位相空間論において「空間が二つの交わらない空でない開集合に分割できない」という性質を持つ空間を指す。これは直感的には空間が「ひと塊」であることを定式化したものであるが、道で結べることを意味する「弧状連結性」とは異なる概念であり、より弱い条件である。解析学における中間値の定理の一般化や、空間の大域的な構造を理解する上で基礎となる重要な概念である。

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定義

連結性の定義は、逆説的ではあるが「分割できるか否か(非連結性)」を通して定義されるのが一般的である。
位相空間 $X$非連結(disconnected)であるとは、以下の条件を満たす $X$ の開集合 $A, B$ が存在することをいう。

  1. $X = A \cup B$
  2. $A \neq \emptyset, \quad B \neq \emptyset$
  3. $A \cap B = \emptyset$
    このとき、$X$ が非連結でないならば、その空間は連結であるという。
    定義をより直接的な表現に書き換えると以下のようになる。
連結空間の定義

位相空間 $X$連結(connected)であるとは、$X$ の部分集合で「開集合かつ閉集合」であるもの(開閉集合)が、全集合 $X$ と空集合 $\emptyset$ のみであることをいう。
すなわち、$\emptyset \subsetneq U \subsetneq X$ を満たす開かつ閉集合 $U$ が存在しないとき、$X$ は連結である。

写像による特徴づけ

連結性は、離散空間への連続写像を用いても簡潔に定義できる。これは証明において非常に有用な特徴づけである。

連続写像による判定

位相空間 $X$ が連結であるための必要十分条件は、任意の連続写像 $f: X \to \{0, 1\}$ が定値写像となることである。
ここで $\{0, 1\}$ は離散位相を入れた二点集合とする。

直感的理解と実数直線の例

連結性の概念を直感的に理解するために、最も基本的な空間である実数直線 $\mathbb{R}$ を考える。
$\mathbb{R}$ の部分集合において、連結性は「区間」という概念と完全に一致する。

実数上の連結集合

$\mathbb{R}$ の部分集合 $A$ が連結であるための必要十分条件は、$A$区間であることである。
ここで区間とは、$(a, b), [a, b], (a, b], [a, \infty)$ などの形状を持つ集合(一点集合や空集合も含む)を指す。

この事実は、解析学における中間値の定理の幾何学的な本質を表している。
「連結な空間 $X$ から $\mathbb{R}$ への連続写像による像 $f(X)$ は連結である(=区間である)」という事実は、中間値の定理そのものである。

弧状連結性との関係と反例

初学者が陥りやすい誤解として、「連結性」と「弧状連結性(道で結べること)」の混同がある。
一般に以下の包含関係が成り立つ。
$$\text{弧状連結} \implies \text{連結}$$
しかし、逆は必ずしも成立しない。ここが位相幾何学における微細かつ重要なポイントである。

連結だが弧状連結ではない例

「つながっている(分離できない)」が「道を通って移動できる」ことを保証しない代表的な例として、位相幾何学者の正弦曲線 (Topologist's sine curve) が挙げられる。
これは平面 $\mathbb{R}^2$ 上の部分集合で、以下の和集合で定義される。
$$S = \left\{ \left( x, \sin \frac{1}{x} \right) \;\middle|\; 0 < x \le 1 \right\} \cup \{ (0, y) \mid -1 \le y \le 1 \}$$
この空間は連結であるが、$x>0$ の部分(グラフ)と $y$ 軸上の区間を連続的な道で結ぶことはできないため、弧状連結ではない。

連結性の保存と演算

位相空間の操作において、連結性がどのように振る舞うか(保存されるか)を理解することは重要である。

連続写像による像

連結性は連続写像によって保存される「位相的性質」の代表格である。

連結性の保存

$X$ を連結空間、$f: X \to Y$ を連続写像とすると、像 $f(X)$ も($Y$ の部分空間として)連結である。

この定理の対偶を用いることで、空間の非連結性を示すことができる。すなわち、$X$ から離散空間への全射連続写像が構成できれば、$X$ は連結ではない。

部分空間と和集合・共通部分

  • 部分空間: 一般に、連結空間の部分空間は連結とは限らない(例: 円周 $S^1$ から1点除くと連結だが、2点除くと非連結になる)。
  • 共通部分: 連結集合同士の共通部分は、一般に連結ではない。
  • 和集合: 連結集合の族 $\{A_\lambda\}$ において、共通部分が空でなければ($\bigcap A_\lambda \neq \emptyset$)、その和集合 $\bigcup A_\lambda$ も連結である。

直積空間

直積の連結性

連結空間の族 $\{X_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ に対し、その直積空間 $\prod_{\lambda \in \Lambda} X_\lambda$ は連結である。

この定理は有限個の直積だけでなく、無限個の直積(Tychonoff位相)においても成立する。これにより、Hilbert立方体などの無限次元空間の連結性が保証される。

連結成分

非連結な空間であっても、その空間は「極大な連結部分集合」の集まりに分解できる。

連結成分

位相空間 $X$ の点 $x$ を含む最大の連結部分集合を、$x$連結成分(connected component)という。
連結成分は常に閉集合である(開集合であるとは限らない)。

  • 完全不連結: 連結成分がすべて一点集合であるような空間を完全不連結空間という。
    • : 有理数全体の集合 $\mathbb{Q}$、Cantor集合、$p$ 進数体 $\mathbb{Q}_p$ など。これらは位相的に「バラバラ」であるが、濃度などの観点では豊かな構造を持つ。

関連項目