連結空間 (connected space) とは、位相空間論において「空間が二つの交わらない空でない開集合に分割できない」という性質を持つ空間を指す。これは直感的には空間が「ひと塊」であることを定式化したものであるが、道で結べることを意味する「弧状連結性」とは異なる概念であり、より弱い条件である。解析学における中間値の定理の一般化や、空間の大域的な構造を理解する上で基礎となる重要な概念である。
連結性の定義は、逆説的ではあるが「分割できるか否か(非連結性)」を通して定義されるのが一般的である。
位相空間 $X$ が非連結(disconnected)であるとは、以下の条件を満たす $X$ の開集合 $A, B$ が存在することをいう。
位相空間 $X$ が連結(connected)であるとは、$X$ の部分集合で「開集合かつ閉集合」であるもの(開閉集合)が、全集合 $X$ と空集合 $\emptyset$ のみであることをいう。
すなわち、$\emptyset \subsetneq U \subsetneq X$ を満たす開かつ閉集合 $U$ が存在しないとき、$X$ は連結である。
連結性は、離散空間への連続写像を用いても簡潔に定義できる。これは証明において非常に有用な特徴づけである。
位相空間 $X$ が連結であるための必要十分条件は、任意の連続写像 $f: X \to \{0, 1\}$ が定値写像となることである。
ここで $\{0, 1\}$ は離散位相を入れた二点集合とする。
連結性の概念を直感的に理解するために、最も基本的な空間である実数直線 $\mathbb{R}$ を考える。
$\mathbb{R}$ の部分集合において、連結性は「区間」という概念と完全に一致する。
$\mathbb{R}$ の部分集合 $A$ が連結であるための必要十分条件は、$A$ が区間であることである。
ここで区間とは、$(a, b), [a, b], (a, b], [a, \infty)$ などの形状を持つ集合(一点集合や空集合も含む)を指す。
この事実は、解析学における中間値の定理の幾何学的な本質を表している。
「連結な空間 $X$ から $\mathbb{R}$ への連続写像による像 $f(X)$ は連結である(=区間である)」という事実は、中間値の定理そのものである。
初学者が陥りやすい誤解として、「連結性」と「弧状連結性(道で結べること)」の混同がある。
一般に以下の包含関係が成り立つ。
$$\text{弧状連結} \implies \text{連結}$$
しかし、逆は必ずしも成立しない。ここが位相幾何学における微細かつ重要なポイントである。
「つながっている(分離できない)」が「道を通って移動できる」ことを保証しない代表的な例として、位相幾何学者の正弦曲線 (Topologist's sine curve) が挙げられる。
これは平面 $\mathbb{R}^2$ 上の部分集合で、以下の和集合で定義される。
$$S = \left\{ \left( x, \sin \frac{1}{x} \right) \;\middle|\; 0 < x \le 1 \right\} \cup \{ (0, y) \mid -1 \le y \le 1 \}$$
この空間は連結であるが、$x>0$ の部分(グラフ)と $y$ 軸上の区間を連続的な道で結ぶことはできないため、弧状連結ではない。
位相空間の操作において、連結性がどのように振る舞うか(保存されるか)を理解することは重要である。
連結性は連続写像によって保存される「位相的性質」の代表格である。
$X$ を連結空間、$f: X \to Y$ を連続写像とすると、像 $f(X)$ も($Y$ の部分空間として)連結である。
この定理の対偶を用いることで、空間の非連結性を示すことができる。すなわち、$X$ から離散空間への全射連続写像が構成できれば、$X$ は連結ではない。
連結空間の族 $\{X_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ に対し、その直積空間 $\prod_{\lambda \in \Lambda} X_\lambda$ は連結である。
この定理は有限個の直積だけでなく、無限個の直積(Tychonoff位相)においても成立する。これにより、Hilbert立方体などの無限次元空間の連結性が保証される。
非連結な空間であっても、その空間は「極大な連結部分集合」の集まりに分解できる。
位相空間 $X$ の点 $x$ を含む最大の連結部分集合を、$x$ の連結成分(connected component)という。
連結成分は常に閉集合である(開集合であるとは限らない)。