Weierstrass方程式

同義語:Weierstrass equationWeierstrass形Weierstrass標準形

概要

Weierstrass方程式(Weierstrass equation)とは、体 $k$ 上の 3 次方程式 $y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6$ のことである。Riemann–Roch の定理により、体上の楕円曲線はどれもこの形で表され、方程式は座標の取り替え $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'+su^2x'+t$ を除いて一意である。係数から作る判別式 $\Delta$ について、曲線が滑らかであることは標数によらず $\Delta\ne0$ と同値で、$\Delta=0$ のときのただ 1 つの特異点は $c_4$ が $0$ かどうかで尖点か結節点かに分かれる。離散付値体の上では、係数が付値環に属し $\Delta$ の付値が最小の極小 Weierstrass 方程式が存在し、付値環の上の取り替えを除いて一意である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 楕円曲線, Riemann–Rochの定理, 射影空間, 特異点, 離散付値環

Weierstrass 方程式は、3 次方程式 $y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6$ のことで、楕円曲線 を射影平面の 3 次曲線として書き下すときの標準の形である。体上の楕円曲線はどれもこの形で表せ、方程式は座標の取り替え $(u,r,s,t)$ を除いて一意に決まる。係数が 5 つある一般の形を使うのは、標数 $2,3$ の体の上でも、離散付値環の上で $2,3$ を法とする還元を考えるときにも、同じ形で扱えるからである。
この記事では、存在と一意性、量の変換公式、標数によらない「滑らか $\Leftrightarrow\Delta\ne0$」、離散付値体の上の極小方程式の一意性を証明する。

定義

Weierstrass方程式とそれに付随する量

$k$ を体とする。$k$ 上の Weierstrass 方程式とは、射影空間 $\mathbb{P}^2$ の同次座標 $[X:Y:Z]$ についての 3 次方程式
$$ Y^2Z+a_1XYZ+a_3YZ^2=X^3+a_2X^2Z+a_4XZ^2+a_6Z^3\qquad(a_1,a_2,a_3,a_4,a_6\in k) $$
のことである。affine 座標 $x=X/Z$、$y=Y/Z$ では
$$ F(x,y):=y^2+a_1xy+a_3y-(x^3+a_2x^2+a_4x+a_6)=0 $$
と書く。この方程式が定める $\mathbb{P}^2$ の曲線を $C$ とし、$O:=[0:1:0]$ とおく。係数から次の量を定める。
$$ \begin{aligned} b_2&=a_1^2+4a_2,\quad b_4=2a_4+a_1a_3,\quad b_6=a_3^2+4a_6,\quad b_8=a_1^2a_6+4a_2a_6-a_1a_3a_4+a_2a_3^2-a_4^2,\\ c_4&=b_2^2-24b_4,\qquad c_6=-b_2^3+36b_2b_4-216b_6,\\ \Delta&=-b_2^2b_8-8b_4^3-27b_6^2+9b_2b_4b_6 . \end{aligned} $$
$\Delta$ を方程式の判別式という。$\Delta\ne0$ のとき $j:=c_4^3/\Delta$ を $j$ 不変量という(j不変量)。有理微分形式
$$ \omega:=\frac{dx}{2y+a_1x+a_3}=\frac{dy}{3x^2+2a_2x+a_4-a_1y} $$
を不変微分という(2 つの表示が等しいことは $dF=0$ からわかる)。

$C$ と直線 $Z=0$ の交点は $O$ ただ 1 点(重複度 $3$)である。$\mathbb{Z}[a_1,\dots,a_6]$ の等式として $4b_8=b_2b_6-b_4^2$ と $1728\Delta=c_4^3-c_6^2$ が成り立ち(展開して確かめられる)、$\eta:=2y+a_1x+a_3$、$g(x):=4x^3+b_2x^2+2b_4x+b_6$ とおくと
$$ \eta^2-g(x)=4F(x,y) $$
である(j不変量 の補題「平方完成の恒等式」)。3 次式 $g$ の判別式は $16\Delta$ に等しい(判別式 の定理「2 次式と 3 次式の判別式」の 3 の式に代入して $4b_8=b_2b_6-b_4^2$ を使えば $\mathbb{Z}[a_1,\dots,a_6]$ の等式として得られるので、どの体でも成り立つ)。

座標の取り替え

$u\in k^\times$、$r,s,t\in k$ とする。$F(x,y)$ に
$$ x=u^2x'+r,\qquad y=u^3y'+su^2x'+t $$
を代入すると、$y'^2$ と $x'^3$ の係数は $u^6$ と $-u^6$ で、ほかに現れるのは $x'y'$、$y'$、$x'^2$、$x'$、$1$ だけなので、$F(x,y)=u^6F'(x',y')$ となる Weierstrass 方程式 $F'$(係数 $a_i'$)が一つ定まる。$F'$ を $F$ から座標の取り替え $(u,r,s,t)$ で得た方程式という。

この取り替えは $\mathbb{P}^2$ の線形変換 $[X':Y':Z']\mapsto[u^2X'+rZ':u^3Y'+su^2X'+tZ':Z']$ から来ており、$F'$ の曲線 $C'$ を $C$ に同型に移し、$O$ を $O$ に移す。$(1,r,s,t)$ に続けて $(u,0,0,0)$ を施すと $(u,r,s,t)$ になる。

短い形

$k$ の標数が $2$ でも $3$ でもないとする。

  1. $X:=36x+3b_2$、$Y:=108(2y+a_1x+a_3)$ とおくと、$\mathbb{Z}[a_1,\dots,a_6,x,y]$ の等式として
    $$ Y^2-\bigl(X^3-27c_4X-54c_6\bigr)=6^6F(x,y) $$
    が成り立つ。これは座標の取り替え $(u,r,s,t)=\bigl(\tfrac16,\,-\tfrac{b_2}{12},\,-\tfrac{a_1}{2},\,\tfrac{a_1b_2}{24}-\tfrac{a_3}{2}\bigr)$ にあたる。したがって、どの Weierstrass 方程式も座標の取り替えで短い形 $y^2=x^3+Ax+B$ に移る。
  2. 短い形の方程式では $\Delta=-16(4A^3+27B^2)$、$c_4=-48A$ であり、短い形を短い形に移す座標の取り替えは $(u,0,0,0)$ だけで、$A'=u^{-4}A$、$B'=u^{-6}B$ となる。

1 は左辺を展開して得られる恒等式で、$X,Y$ を $x,y$ について解けば $(u,r,s,t)$ が読み取れる。2 の前半は定義に代入すればよい。後半は、prop-we-transformation の式で $a_1=a_2=a_3=a_1'=a_2'=a_3'=0$ とおくと $ua_1'=2s$、$u^3a_3'=2t$、$u^2a_2'=3r$ から $s=t=r=0$ となることによる。$\square$

標数 $2$ では短い形の判別式 $-16(4A^3+27B^2)$ が $0$ なので、thm-we-smooth によりこの曲線はつねに特異点をもつ。標数 $3$ では $c_4=-48A=0$ なので、短い形では $j=0$ の曲線しか表せない。

直感

種数 $1$ の曲線の上で基点 $O$ にだけ極をもつ関数を探すと、位数 $2$ の極の $x$ と位数 $3$ の極の $y$ が最初に現れ、極の位数 $6$ 以下の $7$ 個の関数 $1,x,y,x^2,xy,y^2,x^3$ の間の 1 次関係が Weierstrass 方程式になる(thm-we-existence)。
複素数体の上では、Weierstrassの楕円関数 $\wp$ が $x$ の役をし、$\wp'^2=4\wp^3-g_2\wp-g_3$ がその一例である。平面 3 次曲線の側からは、変曲点の接線を無限遠直線に移して同じ形に至る(平面3次曲線 の定理「Weierstrass 形への変形」)。

存在と一意性

以下、$(E,O)$ を体 $k$ 上の楕円曲線とし、$E$ の因子 $D$ に対して $L(D):=\{f\in k(E)^\times\mid\operatorname{div}(f)+D\ge0\}\cup\{0\}$、$\ell(D):=\dim_kL(D)$ とおく。種数 $1$ なので、Riemann–Roch の定理により $n\ge1$ について $\ell(n(O))=n$ である(Sil09 Corollary II.5.5、p. 35)。

存在と一意性

$(E,O)$ を体 $k$ 上の楕円曲線とする。

  1. $O$ にちょうど $2$ 位・$3$ 位の極をもち $O$ 以外で正則な関数 $x,y\in k(E)$ が存在する。このような $x,y$ を定数倍で取り直すと $k$ 係数のある Weierstrass 方程式を満たし、$\varphi:=[x:y:1]\colon E\to\mathbb{P}^2$ はその方程式の定める曲線 $C$ への同型で、$\varphi(O)=O$ である。
  2. 1 の極の条件と Weierstrass 方程式の両方を満たす 2 組 $(x,y)$、$(x',y')$ は、ある $u\in k^\times$、$r,s,t\in k$ で $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'+su^2x'+t$ と結ばれ、$(x',y')$ の方程式は $(x,y)$ の方程式から座標の取り替え $(u,r,s,t)$ で得られる。

1.$\ell((O))=1$(定数だけ)、$\ell(2(O))=2$、$\ell(3(O))=3$ なので、$x\in L(2(O))\setminus L((O))$、$y\in L(3(O))\setminus L(2(O))$ がとれ、それぞれ $O$ でちょうど $2$ 位・$3$ 位の極をもつ。$L(6(O))$ は $6$ 次元で、$7$ 個の関数 $1,x,y,x^2,xy,y^2,x^3$ を含むので、自明でない 1 次関係
$$ Ay^2+a_1xy+a_3y=Bx^3+a_2x^2+a_4x+a_6 $$
がある。$O$ での極の位数は順に $0,2,3,4,5,6,6$ なので、$A=0$ なら残りの $6$ 個は極の位数が相異なり 1 次独立で、関係が自明になる。よって $A\ne0$、同様に $B\ne0$ で、$x$ を $ABx$、$y$ を $AB^2y$ に替えて $A^3B^4$ で割れば $A=B=1$ となる。
$\varphi=[x:y:1]$ は有理写像で、$E$ は滑らかな曲線なので射である(Sil09 Proposition II.2.1、p. 19)。$\varphi=[x/y:1:1/y]$ で $x/y$、$1/y$ は $O$ で零なので $\varphi(O)=[0:1:0]$ である。$x$、$y$ は $O$ にだけ $2$ 位・$3$ 位の極をもつので $[k(E):k(x)]=2$、$[k(E):k(y)]=3$(Sil09 Proposition II.2.6、p. 23)で、$[k(E):k(x,y)]$ は $2$ と $3$ の公約数、すなわち $k(E)=k(x,y)$ であり、$\varphi\colon E\to C$ は次数 $1$ の射である。

$C$ が既約であることを開く

$F$ は $y$ についてモニックな 2 次式なので、$\bar k[x,y]$ で可約なら $F=(y-p(x))(y-q(x))$($p,q\in\bar k[x]$)と分かれる。$pq=-(x^3+a_2x^2+a_4x+a_6)$ から $\deg p+\deg q=3$ で、次数の大きいほうは $2$ 以上で他方より大きいので $\deg(p+q)\ge2$ となり、$p+q=-(a_1x+a_3)$ に反する。よって $C$ は幾何学的に既約な曲線で、$\varphi(E)=C$ である。


$C$ が滑らかであることを示す。$O$ は滑らかな点である(thm-we-smooth の 1)。$C$ が $\bar k$ 上の点 $P_0=(x_0,y_0)$ で特異であるとする。$h(X):=F(X,y_0+\tau(X-x_0))$ を $\tau$ を係数とする $X$ の 3 次式とみると、$X^3$ の係数は $-1$ で、$h(x_0)=F(P_0)=0$、$h'(x_0)=F_x(P_0)+\tau F_y(P_0)=0$ である。よって $h(X)=-(X-x_0)^2(X-\xi)$ と書け、$X^2$ の係数を比べると $\xi\in\bar k[\tau]$ である。$C$ の点 $(x,y)\ne P_0$ は $\tau=(y-y_0)/(x-x_0)$ について $x=\xi(\tau)$ を満たすので、$\bar k(C)=\bar k(\tau)$ は有理関数体である。$\bar k(E)=\bar k(C)$ より $E_{\bar k}$ は $\mathbb{P}^1$ と双有理同値、よって同型(Sil09 Corollary II.2.4.1、p. 21)で種数 $0$ となり、矛盾する。よって $C$ は滑らかで、次数 $1$ の射 $\varphi$ は同型である(同じ箇所)。
2.$L(2(O))$ の基底 $1,x'$ と $L(3(O))$ の基底 $1,x',y'$ により $x=\lambda x'+r$、$y=\mu y'+\sigma x'+t$($\lambda,\mu\in k^\times$)と書ける。$x,y$ の方程式に代入すると $O$ で $6$ 位の極をもつ項は $\mu^2y'^2$ と $\lambda^3x'^3$ だけで、$y'^2-x'^3$ の極は高々 $5$ 位なので $\mu^2=\lambda^3$ である。$u:=\mu/\lambda$ とおくと $u^2=\lambda$、$u^3=\mu$ で、$s:=\sigma/u^2$ とすれば主張の形になる。代入した $u^{-6}F(u^2x'+r,\dots)$ は $x',y'$ が満たす Weierstrass 方程式で、$1,x',y',x'^2,x'y',y'^2,x'^3$ の 1 次関係は $\ell(6(O))=6$ により定数倍を除いて一つなので、$x',y'$ の方程式に一致する。$\square$

座標の取り替えと量の変わり方

量の変換公式

Weierstrass 方程式 $F$ に座標の取り替え $(u,r,s,t)$ を施して $F'$ を得たとき、次が成り立つ。
$$ \begin{aligned} ua_1'&=a_1+2s,\qquad u^2a_2'=a_2-sa_1+3r-s^2,\qquad u^3a_3'=a_3+ra_1+2t,\\ u^4a_4'&=a_4-sa_3+2ra_2-(t+rs)a_1+3r^2-2st,\\ u^6a_6'&=a_6+ra_4+r^2a_2+r^3-ta_3-t^2-rta_1,\\ u^2b_2'&=b_2+12r,\qquad u^4b_4'=b_4+rb_2+6r^2,\qquad u^6b_6'=b_6+2rb_4+r^2b_2+4r^3,\\ u^8b_8'&=b_8+3rb_6+3r^2b_4+r^3b_2+3r^4,\\ u^4c_4'&=c_4,\qquad u^6c_6'=c_6,\qquad u^{12}\Delta'=\Delta,\qquad \omega'=u\,\omega . \end{aligned} $$
とくに $\Delta\ne0$ と $\Delta'\ne0$ は同値で、そのとき $j'=j$ である。

一般の場合への帰着。 $a_i,u,r,s,t$ を不定元とした整数係数の環 $\mathcal{R}:=\mathbb{Z}[a_1,\dots,a_6,r,s,t,u,u^{-1}]$ で示せば、環準同型 $\mathcal{R}\to k$ で特殊化してどの体でも成り立つ(j不変量 の定理「座標の取り替えと $c_4$・$\Delta$・$j$」の証明と同じ帰着)。$\mathcal{R}$ は標数 $0$ の整域なので、等式の両辺から整数の因子を約してよい。
要点:$F(u^2x'+r,\,u^3y'+su^2x'+t)=u^6F'(x',y')$ の係数を比べると $a_i'$ の式が出る。$a_1',a_3'$ の式から $\eta=2y+a_1x+a_3$ は $u^3\eta'$ に移り、$\eta^2-g(x)=4F$ を両方の方程式に当てると $g'(x')=u^{-6}g(u^2x'+r)$ となって $b_2',b_4',b_6'$ の式が出る。$b_8$ は $4b_8=b_2b_6-b_4^2$、$c_4,c_6$ は定義式に代入して得られ、$\Delta$ は $1728\Delta=c_4^3-c_6^2$ から従う。

計算を開く

$a_i'$:$y=u^3y'+su^2x'+t$、$x=u^2x'+r$ とおく。$y^2=u^6y'^2+2su^5x'y'+2tu^3y'+s^2u^4x'^2+2stu^2x'+t^2$、$a_1xy=a_1u^5x'y'+a_1su^4x'^2+a_1tu^2x'+a_1ru^3y'+a_1rsu^2x'+a_1rt$、$a_3y=a_3u^3y'+a_3su^2x'+a_3t$、$x^3=u^6x'^3+3ru^4x'^2+3r^2u^2x'+r^3$、$a_2x^2=a_2u^4x'^2+2a_2ru^2x'+a_2r^2$、$a_4x=a_4u^2x'+a_4r$ である。$x'y'$ の係数は $u^5(a_1+2s)$、$y'$ の係数は $u^3(a_3+ra_1+2t)$、$x'^2$ の係数は $u^4(s^2+a_1s-3r-a_2)$、$x'$ の係数は $u^2(2st+a_1t+a_1rs+a_3s-3r^2-2a_2r-a_4)$、定数項は $t^2+a_1rt+a_3t-r^3-a_2r^2-a_4r-a_6$ で、$u^6$ で割って符号を合わせると主張の 5 式になる。

$b_2,b_4,b_6$:$\eta=2y+a_1x+a_3$ に代入すると $\eta=2u^3y'+(a_1+2s)u^2x'+(a_3+ra_1+2t)=u^3\eta'$ である($a_1',a_3'$ の式による)。$\eta^2-g(x)=4F=4u^6F'=u^6(\eta'^2-g'(x'))$ と比べて$$g'(x')=u^{-6}g(u^2x'+r)$$を得る。$g(u^2x'+r)=4u^6x'^3+u^4(b_2+12r)x'^2+2u^2(b_4+rb_2+6r^2)x'+(b_6+2rb_4+r^2b_2+4r^3)$ なので、$g'(x')=4x'^3+b_2'x'^2+2b_4'x'+b_6'$ と係数を比べると $b_2',b_4',b_6'$ の式になる。

$b_8$:$4b_8'=b_2'b_6'-b_4'^2$ に上の式を代入して $u^8$ を掛けると、$4u^8b_8'=(b_2+12r)(b_6+2rb_4+r^2b_2+4r^3)-(b_4+rb_2+6r^2)^2$ である。右辺を展開して $4b_8=b_2b_6-b_4^2$ を使うと $4(b_8+3rb_6+3r^2b_4+r^3b_2+3r^4)$ になり、$4$ を約して主張を得る。

$c_4,c_6,\Delta$:$u^4c_4'=(b_2+12r)^2-24(b_4+rb_2+6r^2)=b_2^2-24b_4=c_4$ である。$c_6$ も同様に $b_2',b_4',b_6'$ の式を代入して展開すると、$r$ を含む項がすべて打ち消し合って $u^6c_6'=c_6$ となる。最後に $1728u^{12}\Delta'=(u^4c_4')^3-(u^6c_6')^2=c_4^3-c_6^2=1728\Delta$ から $u^{12}\Delta'=\Delta$ である。


$\omega$。 $dx=u^2dx'$、$\eta=u^3\eta'$ なので $\omega=dx/\eta=u^{-1}dx'/\eta'=u^{-1}\omega'$ である。$j'=c_4'^3/\Delta'=u^{-12}c_4^3/(u^{-12}\Delta)=j$ である。$\square$

滑らかさの判定

$C$ の $\bar k$ 上の点 $P$ が特異点であるとは、$P$ で方程式の偏微分がすべて $0$ になること(affine な点では $F=F_x=F_y=0$)をいう。特異点を原点に移したとき、$F$ の 2 次の部分が $\bar k$ 上で相異なる 2 つの 1 次式の積なら結節点(node)、1 次式の平方なら尖点(cusp、尖点(特異点))という。

滑らかさと判別式

$k$ を任意の体とし、$C$ を Weierstrass 方程式の定める曲線とする。

  1. $O=[0:1:0]$ はつねに $C$ の滑らかな点である。
  2. $C$ が滑らかであることと $\Delta\ne0$ とは同値である。
  3. $\Delta=0$ のとき、$C$ は $\bar k$ 上でちょうど 1 つの特異点をもち、それは $c_4\ne0$ なら結節点、$c_4=0$ なら尖点である。

1.$Y=1$ の座標 $(X,Z)$ で方程式は $Z+a_1XZ+a_3Z^2-X^3-a_2X^2Z-a_4XZ^2-a_6Z^3=0$ であり、$O=(0,0)$ での $Z$ についての偏微分は $1\ne0$ である。
2 と特異点の個数.$O$ 以外の点は affine である。$\bar k$ で考える。
標数が $2$ でないとき。 $4F=\eta^2-g(x)$ で、$(x,y)\mapsto(x,\eta)=(x,2y+a_1x+a_3)$ は $2$ が可逆なので affine 平面の座標の取り替えである。よって $C$ の affine な特異点は、曲線 $\eta^2=g(x)$ の特異点 $(x_0,0)$、すなわち $g(x_0)=g'(x_0)=0$ となる点に対応する。これは $x_0$ が 3 次式 $g$(最高次の係数 $4\ne0$)の重根であることにほかならない。重根が存在することは $g$ の判別式 $16\Delta$ が $0$ になることと同値であり(判別式 の命題「判別式が 0 になる条件」)、$16\ne0$ なので $\Delta=0$ と同値である。3 次式は相異なる 2 つの重根をもたないので、特異点は高々 1 つである。
標数が $2$ のとき。 $F_y=a_1x+a_3$、$F_x=a_1y+x^2+a_4$ であり($3=1$、$2=0$)、定義の式は $\Delta=a_1^6a_6+a_1^5a_3a_4+a_1^4a_2a_3^2+a_1^4a_4^2+a_1^3a_3^3+a_3^4$ となる。

  • $a_1=0$ のとき $\Delta=a_3^4$ である。$a_3\ne0$ なら $F_y=a_3\ne0$ で特異点はない。$a_3=0$ なら、$x_0^2=a_4$、$y_0^2=x_0^3+a_2x_0^2+a_4x_0+a_6$ となる $x_0,y_0\in\bar k$(ともにただ一つ)の点がただ 1 つの特異点である。
  • $a_1\ne0$ のとき、$F_y=F_x=0$ から特異点の候補は $x_0=a_3/a_1$、$y_0=(x_0^2+a_4)/a_1$ だけで、展開すると $a_1^6F(x_0,y_0)=\Delta$(標数 $2$)なので、特異点があることと $\Delta=0$ とは同値である。
    どの場合も、affine な特異点が存在することと $\Delta=0$ とは同値である。1 と合わせて 2 を得る。
    3.特異点 $P_0=(x_0,y_0)$ を $(1,x_0,0,y_0)$ で原点に移す(prop-we-transformation により $c_4,\Delta$ は不変)。移した後は $a_6=-F(0,0)=0$、$a_4=-F_x(0,0)=0$、$a_3=F_y(0,0)=0$ なので
    $$ F=y^2+a_1xy-a_2x^2-x^3 $$
    であり、$b_4=2a_4+a_1a_3=0$ から $c_4=b_2^2=(a_1^2+4a_2)^2$ である。2 次の部分を $\bar k$ 上で $y^2+a_1xy-a_2x^2=(y-\alpha x)(y-\beta x)$ と分解すると、$\alpha+\beta=-a_1$、$\alpha\beta=-a_2$ から $(\alpha-\beta)^2=a_1^2+4a_2$ である。したがって 2 つの 1 次式が相異なることは $a_1^2+4a_2\ne0$、すなわち $c_4\ne0$ と同値である。$\square$
判別式が 0 でない方程式

$\Delta\ne0$ の Weierstrass 方程式の曲線 $C$ について、$(C,O)$ は $k$ 上の楕円曲線である。よって $k$ 上の楕円曲線の同型類と、$\Delta\ne0$ の方程式の座標の取り替えによる類とは 1 対 1 に対応する。

thm-we-smooth により $C$ は $\bar k$ 上でも滑らかな平面 3 次曲線である。$C_{\bar k}$ が可約なら直線を成分にもち、その直線と残りの成分の交点(Bézoutの定理 により存在する)が特異点になるので、$C$ は幾何学的に既約である。$O\in C(k)$ である。

$O$ での位数の確かめを開く

$Y=1$ の座標 $(X,Z)$ では、thm-we-smooth の 1 の計算により $O$ での $Z$ についての偏微分が $1$ なので、$w:=X/Y$ は $O$ の一意化元であり、方程式を $Z(1+a_1X+a_3Z-a_2X^2-a_4XZ-a_6Z^2)=X^3$ と書くと $Z/Y=w^3\cdot(\text{単元})$ である。よって $x=w\cdot(Y/Z)$、$y=Y/Z$ は $O$ にちょうど $2$ 位・$3$ 位の極をもつ。標数 $2$ のときの $\operatorname{ord}_O(\omega)=0$ は次のとおりである。$x=w^{-2}f$、$y=w^{-3}h$($f,h$ は $O$ で単元)と書くと $\omega=dy/F_x$ であり、$h'=dh/dw$ は $O$ で正則なので(Sil09 Proposition II.4.3、p. 31)$dy=(w^{-4}h+w^{-3}h')\,dw$ の位数は $-4$、$F_x=a_1y+x^2+a_4=w^{-4}(f^2+a_1wh+a_4w^4)$ の位数も $-4$ である。

不変微分 $\omega$ の因子は $0$ で(不変微分(楕円曲線) の定理「不変微分の因子」。Sil09 Proposition III.1.5、p. 48)、$\operatorname{div}(\omega)$ は標準因子なので $2g-2=0$、$g=1$ である。1 対 1 の対応は thm-we-existence($C$ の座標関数 $x,y$ は上で見た極の条件を満たす)と、座標の取り替えが曲線の同型を与えることによる。$\square$

離散付値体の上の極小 Weierstrass 方程式

以下、$K$ を離散付値 $v\colon K^\times\to\mathbb{Z}$(全射)をもつ体、$R$ をその付値環、$\pi$ を一意化元($v(\pi)=1$)とする(離散付値環)。$E$ を $K$ 上の楕円曲線とする。$E$ を表す Weierstrass 方程式で係数がすべて $R$ に属するものを整な方程式という。

極小 Weierstrass 方程式

$E$ の整な方程式のうち $v(\Delta)$ が最小のものを、$v$ についての極小 Weierstrass 方程式(minimal Weierstrass equation)という。

$(u,0,0,0)$ は $a_i$ を $u^{-i}a_i$ に変えるので、どの方程式も $u=\pi^{-N}$($N\gg0$)で整な方程式に移る。整な方程式の $v(\Delta)$ は $0$ 以上の整数なので、極小方程式は存在する(半安定還元 の定義「極小Weierstrass方程式と還元の型」と同じ定義)。

極小方程式の一意性
  1. $E$ の整な方程式 $F$ を座標の取り替え $(u,r,s,t)$ で極小方程式 $F'$ に移すとき、$u,r,s,t\in R$ である。とくに 2 つの極小方程式は $u\in R^\times$、$r,s,t\in R$ の取り替えで移り合い、不変微分は $R^\times$ の元倍だけ異なる。
  2. 整な方程式 $F$ が極小でなければ、ある $r,s,t\in R$ について $(\pi,r,s,t)$ で $F$ を移した方程式は整であり、その判別式の付値は $v(\Delta)-12$ である。

1.$u^{12}\Delta'=\Delta$ と $v(\Delta')\le v(\Delta)$ から $v(u)\ge0$、すなわち $u\in R$ である。prop-we-transformation の $b_6$ の式に $16$ を掛けると
$$ (4r)^3+b_2(4r)^2+8b_4(4r)+16(b_6-u^6b_6')=0, $$
$b_8$ の式に $27$ を掛けると
$$ (3r)^4+b_2(3r)^3+9b_4(3r)^2+27b_6(3r)+27(b_8-u^8b_8')=0 $$
となる。どちらも $R$ 係数のモニックな多項式なので、$4r$ と $3r$ は $R$ 上整である。離散付値環は整閉整域なので $4r,3r\in R$、よって $r=4r-3r\in R$ である。次に $a_2$ の式から $s^2+a_1s+(u^2a_2'-a_2-3r)=0$、$a_6$ の式から $t^2+(a_3+ra_1)t+(u^6a_6'-a_6-ra_4-r^2a_2-r^3)=0$ で、同じ理由で $s,t\in R$ である。2 つとも極小なら $v(\Delta')=v(\Delta)$ なので $v(u)=0$ である。不変微分については $\omega'=u\,\omega$ による。
2.極小方程式 $F'$ を 1 つとり、$F$ から $F'$ への取り替えを $(u,r,s,t)$ とする。1 により $u,r,s,t\in R$ で、$v(\Delta')< v(\Delta)$ から $v(u)\ge1$ である。$F$ に $(1,r,s,t)$ を施した $F_1$ は(変換公式で $u=1$ として)整である。$F'$ は $F_1$ に $(u,0,0,0)$ を施したものなので $a_i'=u^{-i}a_i(F_1)$ である。$F_1$ に $(\pi,0,0,0)$ を施した方程式の係数は $\pi^{-i}a_i(F_1)=(u/\pi)^ia_i'\in R$ で、これは $F$ に $(\pi,r,s,t)$ を施したものに等しい。判別式は $\pi^{-12}\Delta$ である。$\square$

2 から、$v(\Delta)<12$、$v(c_4)<4$、$v(c_6)<6$ のどれかを満たす整な方程式は極小である(新しい方程式の $c_4,c_6$ が整なので $c_4=\pi^4c_4''$、$c_6=\pi^6c_6''$ となるから。半安定還元 の補題「極小性と型の判定」)。剰余体の標数が $2,3$ でなければ逆も成り立つ(Tateのアルゴリズム の命題「剰余標数が 2, 3 でないときの極小性」)が、剰余体の標数が $2$ のときは一般には成り立たない(ex-we-two-adic)。極小方程式を $\pi$ を法として還元した曲線は 1 により座標の取り替えを除いて決まり、thm-we-smooth を当てると還元の型が $v(\Delta)$ と $v(c_4)$ で読める(半安定還元)。

例と反例

曲線 $y^2+y=x^3-x^2$

$\mathbb{Q}$ 上の $F\colon y^2+y=x^3-x^2$($a_1=0$、$a_2=-1$、$a_3=1$、$a_4=a_6=0$)では
$$ b_2=-4,\quad b_4=0,\quad b_6=1,\quad b_8=-1,\quad c_4=16,\quad c_6=-152,\quad \Delta=-11,\quad j=-\tfrac{4096}{11} $$
である。どの素数 $p$ でも $v_p(\Delta)\le1<12$ なので、$\mathbb{Q}_p$ 上の極小方程式である。
$2$ を法とすると $\Delta\equiv1$ で、$\mathbb{F}_2$ 上の楕円曲線 $y^2+y=x^3+x^2$ を得る(標数 $2$ なので短い形には直せない)。$11$ を法とすると $\Delta\equiv0$、$c_4\not\equiv0$ なので、thm-we-smooth により結節点がちょうど 1 つある。$g(x)=4x^3-4x^2+1$ の $\mathbb{F}_{11}$ での重根は $x_0=8$($g'(8)=4\cdot8\cdot22\equiv0$、$g(8)=1793=11\cdot163$)で、結節点は $2y+1=0$ の点 $(8,5)$ である。

$\mathbb{F}_2$ 上の曲線

$\mathbb{F}_2$ 上の $y^2+y=x^3$ は $a_1=0$、$a_3=1$ なので $\Delta=a_3^4=1\ne0$ で、楕円曲線である($c_4=0$、$j=0$)。標数 $2$ の短い形 $y^2=x^3+Ax+B$ は $a_1=a_3=0$ なので $\Delta=0$ で、$y^2+y=x^3$ は座標の取り替え($\Delta\ne0$ を保つ)で短い形に移らない。$j\ne0$ の曲線には $a_1\ne0$ が要る。たとえば $y^2+xy=x^3+a_6$($a_6\ne0$)は $b_2=1$、$b_4=b_6=0$、$b_8=a_6$ から $\Delta=a_6$、$c_4=1$、$j=1/a_6$ である。

極小でない方程式

$\mathbb{Q}_5$ 上の $y^2=x^3-625x$ は $\Delta=2^6\cdot5^{12}$、$c_4=2^4\cdot3\cdot5^4$ である。$(5,0,0,0)$ で $a_4'=5^{-4}(-625)=-1$ となり、整な $y^2=x^3-x$($\Delta=64$)を得るので、元の方程式は極小でなく、$y^2=x^3-x$ が極小方程式である。

剰余標数 2 での極小方程式

$\mathbb{Q}_2$ 上の $F\colon y^2=x^3-8x$ は $c_4=384=2^7\cdot3$、$c_6=0$、$\Delta=2^{15}$ で、$v_2(\Delta)\ge12$ かつ $v_2(c_4)\ge4$ であるが、極小である。極小でないとして thm-we-minimal の 2 の $(2,r,s,t)$ を考えると矛盾が出る。

確かめを開く

実際、極小でなければ thm-we-minimal の 2 により $r,s,t\in\mathbb{Z}_2$ があって $(2,r,s,t)$ で整な方程式に移る。prop-we-transformation の式($a_1=a_2=a_3=a_6=0$、$a_4=-8$)から、次の 3 つが $\mathbb{Z}_2$ に属さなければならない。$$a_2'=\frac{3r-s^2}{4},\qquad a_3'=\frac{2t}{8},\qquad a_4'=\frac{-8+3r^2-2st}{16}.$$$a_3'$ から $4\mid t$ で、$2st\equiv0\pmod 8$ となる。$a_4'$ から $3r^2\equiv8+2st\equiv0\pmod8$ で $4\mid r$、よって $r^2\equiv0\pmod{16}$ である。$a_2'$ から $s^2\equiv3r\equiv0\pmod4$ で $s$ は偶数、よって $st\equiv0\pmod8$、$2st\equiv0\pmod{16}$ である。すると $a_4'$ の分子は $-8+0-0\equiv8\pmod{16}$ で $16$ で割れず、矛盾する。

次の表は、主張の仮定を 1 つずつ外した反例である。

外す条件反例成り立たなくなること
$\Delta\ne0$$y^2=x^3$($\Delta=c_4=0$)$(C,O)$ が楕円曲線であること(原点は尖点)
標数が $2,3$ でない$\mathbb{F}_2$ 上の $y^2+y=x^3$(ex-we-char-two)短い形 $y^2=x^3+Ax+B$ に移せること(prop-we-short)
係数が $R$ に属する$y^2=x^3-x$ を $(\pi^n,0,0,0)$ で移した $y^2=x^3-\pi^{-4n}x$$v(\Delta)$ の最小値の存在($v(\Delta)=6v(2)-12n$)
剰余体の標数が $2,3$ でない$\mathbb{Q}_2$ 上の $y^2=x^3-8x$(ex-we-two-adic)極小であることと「$v(\Delta)<12$ または $v(c_4)<4$」の同値

関連項目

参考文献

[1]
Joseph H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, Springer, 2009, Proposition II.2.1(p. 19)、Corollary II.2.4.1(p. 21)、Proposition II.2.6(p. 23)、Proposition II.4.3(p. 31)、Corollary II.5.5(p. 35)、III.1(Weierstrass 方程式、Table 3.1 と Proposition III.1.4、pp. 42–47)、Proposition III.1.5(p. 48)、Proposition III.3.1(p. 59)、Remark VII.1.1 と Proposition VII.1.3(pp. 186–187)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する