準同型

同義語:homomorphism準同型写像

概要

準同型(homomorphism)とは、同じ種類の二つの代数的構造の間で、定数を含むすべての基本演算を保つ写像である。群では積、単位的環では加法・乗法・単位元、加群では加法・スカラー倍を保ち、群では積を保てば単位元と逆元も保たれるが、モノイドや環では単位元の保存を条件に明記する。恒等写像と準同型の合成は準同型で、全単射な準同型の逆は準同型なので同型になり、像は部分代数をなす。同じ値に送る元を結ぶ核合同関係による商は像と同型で、群の $G/\ker f\cong f(G)$ や環の $R/\ker f\cong f(R)$ はその形であり、例えば指数関数は加法群 $\mathbb{R}$ から乗法群 $\mathbb{R}_{>0}$ への準同型である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 写像, 群, 環

準同型とは

準同型(homomorphism)は、二つの代数的構造の間で演算を保つ写像である。群なら積を、環なら加法・乗法・単位元を、ベクトル空間なら加法・スカラー倍を保つ。写像の前に演算してから値を取っても、値を取ってから演算しても同じになるという等式が中心にある。構造を保つので、ある対象で得た計算や等式を別の対象へ運ぶことができる(BS81 II §6)。
「準同型」という語だけでは、何の構造を保つかは決まらない。群準同型、環準同型、加群準同型では条件が違う。また同じ台集合の間の写像でも、注目する構造を変えれば準同型かどうかが変わり得る。本記事では共通の考え方を示し、それぞれの具体的な条件を並べて比較する。詳細な核や同型定理は群準同型と環準同型などの記事へつなぐ。

演算を保つとは

まず二項演算だけを持つ集合 $A,B$ を考え、それぞれの演算を $*_A,*_B$ と書く。写像 $f:A\to B$ が演算を保つとは、すべての $a,a'\in A$ について
$$ f(a*_A a')=f(a)*_B f(a') $$
が成り立つことである。左右の演算は異なる集合上にあるため、同じ記号で書いても型を意識する必要がある。

一つの二項演算に対する準同型

二項演算を備えた集合 $(A,*_A)$、$(B,*_B)$ の間の写像 $f:A\to B$ が、任意の $a,a'\in A$ について $f(a*_A a')=f(a)*_Bf(a')$ を満たすとき、この二項演算に関する準同型という。

一つの二項演算だけなら、この等式で条件は尽きる。しかし群には単位元と逆元が、環には加法・乗法と $1$ があり、それぞれどれを保つかが問題になる。多くの構造では、基本演算をすべて保つという規約を採る。定数記号は入力が零個の演算として扱えるので、単位元を保つ条件もこの規約に含まれる。

複数の演算に対する準同型

$A,B$ が同じ種類の基本演算 $\omega$ を持つとする。$\omega$ が $n$ 個の入力を取るなら、$f:A\to B$ がその演算を保つとは
$$ f\bigl(\omega_A(a_1,\ldots,a_n)\bigr) =\omega_B\bigl(f(a_1),\ldots,f(a_n)\bigr) $$
がすべての $a_i\in A$ に対して成り立つことである。すべての基本演算を保つ写像を、その種類の代数的構造の準同型という。$n=0$ の定数演算では、その指定された定数を送る条件になる。

これは普遍代数の定義である(BS81 II §6 Definition 6.1)。例えば環を二つの二項演算 $+$ と $\cdot$、定数 $0,1$ で記述すれば、準同型はそれらを保つ。群を積、逆元、単位元で記述してもよい。ただし群では積を保つだけで後の二条件が従うため、通常は積の等式一つで定義する。

群・環・加群での具体形

群の準同型の例

群 $(G,\cdot)$、$(H,*)$ の間の写像 $f:G\to H$ が群準同型であるとは、$f(gg')=f(g)*f(g')$ がすべての $g,g'\in G$ に成り立つことである。この式から $f(e_G)=e_H$ と $f(g^{-1})=f(g)^{-1}$ が従う。例えば指数関数 $\exp:(\mathbb R,+)\to(\mathbb R_{>0},\times)$ は $\exp(x+y)=\exp(x)\exp(y)$ により準同型である。

群の単位元と逆元の保存

$f(e_G)=f(e_Ge_G)=f(e_G)*f(e_G)$ なので、$H$ の群演算について一方の $f(e_G)$ を消去すると $f(e_G)=e_H$。また $e_H=f(e_G)=f(gg^{-1})=f(g)*f(g^{-1})$ であり、同様に $f(g^{-1})*f(g)=e_H$ だから $f(g^{-1})$ は $f(g)$ の逆元である。

環の準同型の例

単位元を持つ環 $R,S$ の間では、$f(a+b)=f(a)+f(b)$、$f(ab)=f(a)f(b)$、$f(1_R)=1_S$ を満たす写像を環準同型とする。加法の群構造から $f(0_R)=0_S$ と $f(-a)=-f(a)$ は自動的に従う。一方 $1$ の保存は、加法と乗法の保存だけからは一般に従わないので条件に明記する。例えば $n\ge2$ に対する $\mathbb Z\to\mathbb Z/n\mathbb Z$ の剰余類写像は環準同型である。

加群と線形写像

同じ環 $R$ 上の加群 $M,N$ の間で $f(m+m')=f(m)+f(m')$ と $f(rm)=rf(m)$ を満たす写像を $R$ 加群準同型という。$R$ が体なら、これは線形写像である。例えば行列 $A\in K^{m\times n}$ が与える $f:K^n\to K^m$、$v\mapsto Av$ は、行列積の分配律から $f(v+w)=f(v)+f(w)$ と $f(av)=af(v)$ を満たす。

構造を複数同時に持つときには、指定した構造に応じて準同型の意味が変わる。環準同型は加法群の準同型でもあるが、加法群の準同型は必ずしも乗法を保たない。例えば $f:\mathbb Z\to\mathbb Z$、$f(n)=2n$ は加法を保つが $f(1)=2\ne1$ なので単位的環の準同型ではない。さらに $f(1\cdot1)=2$ に対し $f(1)f(1)=4$ だから、乗法の保存も失敗する。

保存条件を誤りやすい写像

写像 $q:(\mathbb Z,+)\to(\mathbb Z,+)$、$q(n)=n^2$ は準同型ではない。$q(1+1)=4$ だが $q(1)+q(1)=2$ だからである。同じ式 $x\mapsto x^2$ でも、零以上の実数を乗法について見れば $(xy)^2=x^2y^2$ なので乗法の準同型になる。式の形ではなく、定義域と終域の演算を指定してから判定する。

準同型から新しい準同型を作る

恒等写像と合成

同じ種類の代数的構造 $A,B,C$ に対し、恒等写像 $\operatorname{id}_A:A\to A$ は準同型である。また $f:A\to B$ と $g:B\to C$ が準同型なら、合成 $g\circ f:A\to C$ も準同型である。

恒等写像と合成

$A$ の $n$ 項演算 $\omega_A$ について、$\operatorname{id}_A(\omega_A(a_1,\ldots,a_n))=\omega_A(a_1,\ldots,a_n)$ であり、右辺は $\omega_A(\operatorname{id}_A(a_1),\ldots,\operatorname{id}_A(a_n))$ でもある。次に $f,g$ が演算を保つとき、
$$ (g\circ f)(\omega_A(a_1,\ldots,a_n)) =g(\omega_B(f(a_1),\ldots,f(a_n))) =\omega_C(g(f(a_1)),\ldots,g(f(a_n))) $$
となる。これは $g\circ f$ が $\omega$ を保つ式である。各基本演算について同じ計算ができ、定数演算も含まれる。

この性質により、群と群準同型、環と環準同型、加群と加群準同型は、それぞれ対象と射を持つ圏になる。合成が可能で、各対象には恒等準同型があるからである。どの構造を「同じ」とみなすかも、それらの間の準同型を指定して初めて明確になる。

全単射な準同型の逆

同じ種類の代数的構造の間の準同型 $f:A\to B$ が全単射なら、集合としての逆写像 $f^{-1}:B\to A$ も準同型である。従って $f$ は同型である。

全単射な準同型の逆

$B$ の任意の元 $b_i$ を $b_i=f(a_i)$ と一意に書く。$f$ は演算を保つから $\omega_B(b_1,\ldots,b_n)=f(\omega_A(a_1,\ldots,a_n))$ である。両辺に $f^{-1}$ を作用させると
$$ f^{-1}(\omega_B(b_1,\ldots,b_n)) =\omega_A(f^{-1}(b_1),\ldots,f^{-1}(b_n)) $$
を得る。全ての基本演算について成立するので逆写像も準同型である。

「全単射」という集合としての性質だけでは同型は得られない。例えば $\mathbb Z$ の集合上で $n\mapsto n+1$ は全単射だが、加法を保たない。逆に、準同型であるというだけでは全単射とは限らない。剰余類写像 $\mathbb Z\to\mathbb Z/n\mathbb Z$ は全射だが $n>1$ なら単射でなく、積への対角写像 $G\to G\times G$、$g\mapsto(g,g)$ は単射だが非自明な $G$ では全射でない。

像と核に残る構造

準同型 $f:A\to B$ の像 $f(A)$ は単なる部分集合ではなく、$B$ の基本演算で閉じている。$b_i=f(a_i)$ を像から取ると、$\omega_B(b_1,\ldots,b_n)=f(\omega_A(a_1,\ldots,a_n))$ が再び像に入るからである。定数演算の値も、対応する $A$ の定数の像として含まれる。したがって像は $B$ の部分代数になる。群では部分群、環では単位元を含む部分環、加群では部分加群という具体的な言葉で現れる。

像の閉性

同じ種類の代数的構造の準同型 $f:A\to B$ の像 $f(A)$ は、$B$ の基本演算を制限して同じ種類の代数的構造になる。$f:A\to f(A)$ は全射準同型であり、$f(A)\hookrightarrow B$ は包含準同型である。

像の閉性

像の元 $b_i=f(a_i)$ に演算を施すと、保存式により $\omega_B(b_1,\ldots,b_n)=f(\omega_A(a_1,\ldots,a_n))\in f(A)$ である。よって基本演算を像へ制限できる。$A$ と $B$ が満たす演算の恒等式は、像の元についても $B$ の中でそのまま成り立つ。したがって像は同じ種類の構造を持つ。$f$ の終域を像に狭めれば全射であり、像の包含は演算の制限から準同型である。

「核」はどの構造でも同じ形の部分集合とは限らない。群準同型なら単位元の逆像 $f^{-1}(e_H)$、環準同型なら零元の逆像 $f^{-1}(0)$ が核である。前者は正規部分群、後者はイデアルとなる。だが単位元や零元がない一般の代数では、どの元の逆像を核と呼ぶかは決められない。普遍代数では代わりに、同じ値へ送られる元の組全体を核とする(BS81 II §6 Definition 6.7)。

準同型の核合同関係

準同型 $f:A\to B$ に対し、$A$ 上の関係 $\sim_f$ を
$$ a\sim_f a'\quad\Longleftrightarrow\quad f(a)=f(a') $$
で定める。これは同値関係であり、各基本演算と両立する。このような関係を合同関係といい、$\sim_f$ を準同型の核合同関係という。

核関係が演算と両立すること

等号の反射律・対称律・推移律を $f$ で引き戻せば $\sim_f$ は同値関係である。各 $i$ について $a_i\sim_f a_i'$ なら $f(a_i)=f(a_i')$。保存式を二回使えば
$$ f(\omega_A(a_1,\ldots,a_n)) =\omega_B(f(a_1),\ldots,f(a_n)) =\omega_B(f(a_1'),\ldots,f(a_n')) =f(\omega_A(a_1',\ldots,a_n')) $$
となる。よって演算した結果どうしも $\sim_f$ で結ばれる。

この合同関係で $A$ を割ると、準同型が区別しない元どうしを一つにまとめられる。群では $a\sim_f a'$ は $a^{-1}a'\in\ker f$ と同値であり、核の正規部分群の剰余類と一致する。環では $a\sim_f a'$ は $a-a'\in\ker f$ と同値で、核イデアルによる剰余類になる。異なる分野の準同型定理が共通の仕組みを持つ理由はここにある。

準同型の像と商

準同型 $f:A\to B$ の核合同関係を $\sim_f$ とすると、商集合 $A/{\sim_f}$ には、$[a_i]$ に演算を施して $[\omega_A(a_1,\ldots,a_n)]$ とする構造が入り、
$$ A/{\sim_f}\longrightarrow f(A),\qquad [a]\longmapsto f(a) $$
は同型である。

像と商

核合同関係が演算と両立するため、代表元 $a_i$ を同じ同値類の別の元へ取り替えても、演算結果の同値類は変わらない。よって商の演算は定義できる。写像 $[a]\mapsto f(a)$ が代表元に依存しないのは、$[a]=[a']$ と $f(a)=f(a')$ が同値だからである。同じ理由でこの写像は単射であり、値域を $f(A)$ としたので全射である。さらに
$$ f(\omega_A(a_1,\ldots,a_n)) =\omega_B(f(a_1),\ldots,f(a_n)) $$
だから演算を保つ。全単射な準同型の逆も準同型であることから同型になる。

この定理は「まず核により識別できない元を潰し、その後に像へ同型に写す」という準同型の構造を示す。環なら $R/\ker f\cong f(R)$、群なら $G/\ker f\cong f(G)$ という形になる。各分野で商を定義する際の細部は違うが、商が像と同じ情報を持つという結論は共通する。

具体的な写像で見分ける

多項式の評価

可換環 $R$ と $c\in R$ に対し、$R[t]\to R$、$p(t)\mapsto p(c)$ は環準同型である。$(p+q)(c)=p(c)+q(c)$、$(pq)(c)=p(c)q(c)$、$1(c)=1$ を満たすからである。像は $R$ 全体で、核は $c$ を根とする多項式のイデアル $(t-c)$ になる。剰余環 $R[t]/(t-c)$ が $R$ と同型になるのは、上の像と商の定理の具体例である。

評価写像の核

多項式 $p(t)=\sum_{j=0}^m a_jt^j$ について $p(t)-p(c)=\sum_{j=1}^m a_j(t^j-c^j)$ と書ける。各 $t^j-c^j$ は $t-c$ で割り切れるため、$p(t)-p(c)\in(t-c)$。従って $p(c)=0$ なら $p(t)\in(t-c)$。逆に $(t-c)q(t)$ は $t=c$ で値 $0$ になる。よって核は $(t-c)$ である。

積からの射影

二つの群 $G,H$ の直積から第一成分への射影 $\pi_G:G\times H\to G$、$(g,h)\mapsto g$ は群準同型である。直積の演算は成分ごとだから、$\pi_G((g,h)(g',h'))=gg'=\pi_G(g,h)\pi_G(g',h')$ である。核は $\{e_G\}\times H$、像は $G$ 全体であり、$(G\times H)/(\{e_G\}\times H)\cong G$ を得る。同じ射影は環や加群の直積でも準同型になる。

零写像の扱い

加法群または加群の間の零写像 $z(x)=0$ は準同型である。和やスカラー倍の結果を零へ送っても、零ベクトルどうしの演算結果と一致する。一方、$1\ne0$ の単位的環 $R,S$ の間の零写像 $R\to S$ は $1_R$ を $0_S$ へ送るので、ここでの規約では環準同型ではない。どの定数を保つべきかを忘れると、この例で判定を誤る。

代数的な準同型に連続性を加える場合もある。位相群の準同型、位相環の準同型、ノルム空間間の連続線形写像では、演算の保存と位相的な連続性は別々の条件である。準同型という語が連続性まで含むかは、対象と射を定める文脈で確かめる。例えば単なるベクトル空間の間の線形写像には連続性を要求しないが、ノルム空間の解析で扱う線形作用素には連続性を課すことが多い。

用語と関連項目

準同型の定義域と終域が同じとき自己準同型、全単射で逆も準同型のとき同型という。自己同型は、同じ対象の対称性を表す。準同型をただの関数として見ると値の対応だけが残るが、準同型として見ると演算の情報を保つため、核・像・商を通して構造を比較できる。
「準同型」という語は演算を保つ一般概念の名前である。実際の計算では、群準同型なら積、環準同型なら加法・乗法・$1$、加群準同型なら加法・スカラー倍という条件を明示する。記事中の $f$ が何を保つのかを最初に書けば、同じ記号の計算を異なる構造へ誤って持ち込まずに済む。

反例:条件を外すと何が崩れるか

群・環で成り立つ事実のうち、仮定を一つ外すと崩れるものを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
逆元の存在(群をモノイドに弱める)$(\mathbb Z,\times)\to(\mathbb Z,\times)$、$n\mapsto0$積を保てば単位元も保つこと
$1$ を保つ条件(環)$\mathbb Z\to\mathbb Z\times\mathbb Z$、$n\mapsto(n,0)$加法と乗法を保てば $1$ も保つこと
逆元の存在(核による判定)$(\mathbb Z_{\ge0},+)\to(\{0,1\},\times)$単位元の逆像が一点なら単射であること
構造が演算だけであること(位相を加える)離散位相の $\mathbb R$ から通常の位相の $\mathbb R$ への恒等写像全単射な準同型の逆が準同型であること
反例:モノイドでは単位元の保存が従わない

$(\mathbb Z,\times)$ は $1$ を単位元とするモノイドである。$f(n)=0$ と定めると $f(mn)=0=f(m)f(n)$ で積を保つが、$f(1)=0\ne1$ である。ex-homomorphism-groupの証明では $f(e_G)=f(e_G)*f(e_G)$ の両辺に $f(e_G)^{-1}$ を掛けて消去したが、$(\mathbb Z,\times)$ では $0$ に逆元がないので消去できない。破る仮定は「逆元の存在」、崩れる結論は「積を保てば単位元を保つ」である。そのためモノイドの準同型では単位元の保存を条件に明記する。

反例:加法と乗法を保つが $1$ を保たない写像

直積環 $\mathbb Z\times\mathbb Z$(成分ごとの演算、単位元 $(1,1)$)への写像 $f(n)=(n,0)$ は、$f(m+n)=(m+n,0)=f(m)+f(n)$、$f(mn)=(mn,0)=(m,0)(n,0)=f(m)f(n)$ を満たす。しかし $f(1)=(1,0)\ne(1,1)$ である。乗法についての群ではないので、群の場合の消去は使えない($(1,0)$ は $\mathbb Z\times\mathbb Z$ で可逆でない)。ex-homomorphism-ringで $1$ の保存を条件に明記した理由がこれである。

反例:核が自明でも単射でないモノイド準同型

$f:(\mathbb Z_{\ge0},+)\to(\{0,1\},\times)$ を $f(0)=1$、$n\ge1$ で $f(n)=0$ と定める。$a=b=0$ なら $f(0)=1=f(0)f(0)$、$a,b$ の一方が正なら $a+b\ge1$ なので $f(a+b)=0=f(a)f(b)$ であり、単位元 $0\mapsto1$ も保つのでモノイドの準同型である。単位元の逆像 $f^{-1}(1)=\{0\}$ は一点だが、$f(1)=f(2)=0$ で単射でない。群では $f(a)=f(a')\iff a^{-1}a'\in\ker f$ なので核が自明なら単射だが、この書き換えは逆元を使う。定義「準同型の核合同関係」が単位元の逆像ではなく元の組で核を定めるのは、このような場合も扱うためである。

反例:位相を加えると全単射な準同型の逆が準同型でない

$\mathbb R_{\mathrm{d}}$ を離散位相を入れた加法群 $\mathbb R$、$\mathbb R$ を通常の位相の加法群とする。恒等写像 $\operatorname{id}:\mathbb R_{\mathrm{d}}\to\mathbb R$ は加法を保ち、離散空間からの写像なので連続であり、位相群の準同型である。全単射だが、逆写像 $\mathbb R\to\mathbb R_{\mathrm{d}}$ は一点集合 $\{0\}$($\mathbb R_{\mathrm{d}}$ の開集合)の逆像 $\{0\}$ が $\mathbb R$ で開でないので連続でない。命題「全単射な準同型の逆」は構造が演算だけから成ることを使っており、連続性のような演算でない条件を加えると成り立たない。

関連項目

参考文献

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