連立不等式

同義語:system of inequalities

概要

連立不等式(system of inequalities)とは、いくつかの不等式を組にし、それらをすべて同時に満たす値を求めるものであり、その解全体は各不等式の解全体の共通部分である。$x$ の有限個の 1 次不等式の連立では、下に端のある条件の端の最大値 $p$ と、上に端のある条件の端の最小値 $q$ を比べればよく、両方の条件があれば、$p< q$ なら両端のある区間、$p=q$ なら 1 点か解なし、$p>q$ なら解なしとなる。文字が 2 つのときも、1 つの文字の下の端と上の端の組をすべて比べると、その文字を消してもう一方の文字の範囲が求まる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 1次不等式, 数直線(高校数学)

高校での出発点:2 つの解の重なりを数直線で見る

いくつかの不等式を組にして、「それらを すべて同時に 満たす $x$」を求める問題がある。この組を 連立不等式 という。1 つずつ解き、解の重なる部分を数直線で読み取る。

2 つの 1 次不等式の連立

$$ \begin{cases}2x-1< 5\\ 3x+2\ge-4\end{cases} $$
を解く。

  1. $2x-1< 5$ は $2x< 6$ で、$x< 3$ である。
  2. $3x+2\ge-4$ は $3x\ge-6$ で、$x\ge-2$ である。
  3. 両方を満たすのは、$x\ge-2$ かつ $x< 3$、つまり $-2\le x< 3$ である(図 1)。端の $-2$ は 2 の解に含まれ、1 の解 $x< 3$ にも含まれるので、連立不等式の解に入る。$3$ は 1 の解に含まれないので入らない。
  4. 確かめ:$x=0$ では $-1< 5$、$2\ge-4$ で両方成り立つ。$x=3$ では $5< 5$ が成り立たない。

上から順に、x < 3 の解、x ≧ −2 の解、2 つの重なり −2 ≦ x < 3 を数直線に示した図 上から順に、x < 3 の解、x ≧ −2 の解、2 つの重なり −2 ≦ x < 3 を数直線に示した図

解がない連立不等式

$$ \begin{cases}x+4>7\\ 2x< 2\end{cases} $$
は、1 つ目が $x>3$、2 つ目が $x< 1$ である。$3$ より大きく、しかも $1$ より小さい実数はないので、解はない。数直線で 2 つの半直線が重ならないことからも読み取れる。

$A< B< C$ の形

$x-1< 2x+1\le x+4$ は、「$x-1< 2x+1$ かつ $2x+1\le x+4$」という連立不等式である。

  1. $x-1< 2x+1$ は $-2< x$。
  2. $2x+1\le x+4$ は $x\le3$。
  3. 解は $-2< x\le3$ である。$x=3$ では $2< 7\le7$ で、2 つ目は等号で成り立つ。

この記事では次の問いに答える。

  1. 連立不等式の解は、なぜ「各不等式の解の重なり」になるのか。→ def-soi-system
  2. 1 次の連立不等式の解は、どんな形の集合になるのか。いつ解がなくなるのか。→ thm-soi-main
  3. 「または」と「かつ」を取り違えると何が起こるか。連立方程式のように足し合わせてよいか。→ ex-soi-or、ex-soi-add
  4. 文字が 2 つの連立不等式から、1 つの文字の範囲を求めるにはどうするか。→ prop-soi-eliminate
    高校の計算この記事の言葉ボックス
    解の重なりを読む解の集合の共通部分def-soi-system
    「大きいほうより大きい」下の端の最大値lem-soi-lower
    「重ならないので解なし」下の端が上の端を超えるlem-soi-meet
    $A< B< C$$A< B$ かつ $B< C$ex-soi-chain

連立不等式とその解

連立不等式と共通部分

いくつかの不等式を組にし、それらを すべて同時に満たす ことを求めるものを 連立不等式 という。連立不等式のすべての不等式を満たす $x$ を連立不等式の 解 という。
2 つの集合 $A$、$B$ の両方に属する要素全体を $A$ と $B$ の 共通部分 といい、$A\cap B$ と書く。3 つ以上のときも同じように、すべてに属する要素全体を共通部分という。連立不等式の解全体は、各不等式の解全体の共通部分である。

最後の文は定義を言いかえただけである。$x$ が連立不等式の解であることは、$x$ が 1 つ目の不等式の解であり、かつ 2 つ目の不等式の解であり、……ということだからである。$A< B< C$ という書き方は「$A< B$ かつ $B< C$」の意味で、2 つの不等式の連立である(ex-soi-chain。教科書での扱いの例は Abr21 の §2.7)。

共通部分を求める
  1. $A$ を区間 $[-2,\infty)$、$B$ を区間 $(-\infty,3)$ とすると、$A\cap B=[-2,3)$ である(ex-soi-first)。
  2. $A=(1,5)$、$B=[3,8]$ なら $A\cap B=[3,5)$ である。$3$ は $A$ にも $B$ にも入り、$5$ は $A$ に入らない。
  3. $A=(-\infty,1)$、$B=(3,\infty)$ なら、共通部分に要素はない。要素をもたない集合を 空集合 といい、$\emptyset$ と書く(ex-soi-empty)。

主定理:1 次の連立不等式の解の形

1次不等式 の「1 次不等式の解」により、$x$ の 1 次不等式の解は、$x>p$、$x\ge p$(下に端がある半直線)か、$x< q$、$x\le q$(上に端がある半直線)である。前者を 下からの条件、後者を 上からの条件 と呼ぶことにする。連立不等式の解を求めるには、これらの共通部分を調べればよい。

下からの条件を 1 つにまとめる

2 つの下からの条件の共通部分は、端の大きいほうの条件になる。詳しくは、実数 $p$、$p'$ について

  1. $p< p'$ なら、「$x\mathrel{\rho}p$ かつ $x\mathrel{\rho'}p'$」は「$x\mathrel{\rho'}p'$」と同値である。ここで $\rho$、$\rho'$ は $>$ か $\ge$ のどちらかを表す。
  2. $p=p'$ なら、「$x\ge p$ かつ $x\ge p$」は $x\ge p$ と、2 つのうち少なくとも一方が $>$ なら $x>p$ と同値である。
    上からの条件についても、$>$、$\ge$、「大きいほう」を $< $、$\le$、「小さいほう」に替えて同じことが成り立つ。
端の大きいほうが小さいほうを含む

方針:端の大きいほうの条件を満たせば、端の小さいほうの条件は自動的に満たされることを示す。
1:$p< p'$ とする。$x\mathrel{\rho'}p'$ を満たす $x$ は、$x\ge p'$ を満たす($\rho'$ が $>$ なら $x>p'$ から $x\ge p'$)。$p'>p$ なので $x\ge p'>p$ で、$x>p$ であり、したがって $x\ge p$ でもある。よって $x\mathrel{\rho}p$ も満たす。逆に、両方を満たせば当然 $x\mathrel{\rho'}p'$ を満たす。
2:$p=p'$ とする。両方 $\ge$ なら条件は同じである。一方が $>$ のとき、$x>p$ なら $x\ge p$ も成り立つので、「$x>p$ かつ $x\ge p$」は $x>p$ と同値である。両方 $>$ なら条件は同じである。
上からの条件は、数直線の向きを逆にして同じ議論をすればよい($x< q$ は $-x>-q$ と同値なので、1次不等式 の「同値な変形」により下からの条件に直せる)。$\square$

下からの条件と上からの条件の共通部分

実数 $p$、$q$ について、

  1. $p< q$ なら、「$x\mathrel{\rho}p$ かつ $x\mathrel{\sigma}q$」($\rho$ は $>$ か $\ge$、$\sigma$ は $< $ か $\le$)の解は、端を $p$、$q$ とする区間で、少なくとも $\dfrac{p+q}2$ を含む。
  2. $p=q$ なら、解は「$x\ge p$ かつ $x\le p$」のとき $x=p$ の 1 点だけで、少なくとも一方が $>$ か $< $ なら解はない。
  3. $p>q$ なら、解はない。
端の大小で 3 つに分ける

方針:2 つの条件から $x$ についての 2 つの評価を作り、$p$ と $q$ の大小と比べる。
1:$p< q$ とする。解の集合は定義から $\{x\mid x\mathrel{\rho}p\ \text{かつ}\ x\mathrel{\sigma}q\}$ で、これは 数直線(高校数学) の「区間の記号」の 4 つの有界な区間のどれかである。$m:=\dfrac{p+q}2$ とおくと、$p< q$ の両辺に $p$ を足して $2p< p+q$、$\dfrac12$ を掛けて $p< m$ である。同じく $q$ を足すと $m< q$ である。よって $m>p$、$m< q$ で、$m$ は $\rho$、$\sigma$ がどちらでも条件を満たす。
2:$p=q$ とする。$x\ge p$ かつ $x\le p$ なら、$x>p$ でも $x< p$ でもないので $x=p$ であり、逆に $x=p$ は両方を満たす。一方が $>$ のときは $x>p$ と $x\le p$ が両立しないので解はない。$< $ のときも同じである。
3:$p>q$ とする。解 $x$ があったとすると、$x\ge p$ と $x\le q$ が成り立ち($>$、$< $ ならなおさら)、$q\ge x\ge p$ から $q\ge p$ となって $p>q$ に反する。よって解はない。$\square$

1 次の連立不等式の解の形

$x$ についての有限個の 1 次不等式の連立不等式の解全体は、次のどれかである。

  1. 空集合(解なし)
  2. 1 点だけ
  3. 半直線(下からの条件だけ、または上からの条件だけのとき)
  4. 両端のある区間($[p,q]$、$[p,q)$、$(p,q]$、$(p,q)$、$p< q$)
    さらに、下からの条件の端のうち最大のものを $p$、上からの条件の端のうち最小のものを $q$ とすると、両方の条件があるとき、解があることは、$p< q$ であるか、または $p=q$ で、端が $p$ の条件(下からの条件も上からの条件も)がすべて等号つき($\ge$、$\le$)であることと同値である。
条件を下と上の 1 つずつにまとめる

方針:lem-soi-lower をくり返して、下からの条件を 1 つ、上からの条件を 1 つにまとめ、最後に lem-soi-meet を使う。
段 1(各不等式を条件に直す)。1次不等式 の「1 次不等式の解」により、連立不等式の各不等式は、同じ解をもつ下からの条件か上からの条件に直せる。連立不等式の解はそれらの共通部分である(def-soi-system)。
段 2(下からの条件をまとめる)。下からの条件が 2 つ以上あれば、lem-soi-lower により 2 つを、端の大きいほう(端が等しく一方が $>$ なら $>$)の 1 つの条件に替えても、共通部分は変わらない。これをくり返すと、条件は 1 つずつ減り、最後に 1 つになる。その端は、すべての下からの条件の端の最大値 $p$ で、$p$ を端とする条件のどれかが $>$ なら $>$、すべて $\ge$ なら $\ge$ である。上からの条件も同じように、端の最小値 $q$ をもつ 1 つの条件にまとまる。
段 3(場合を分ける)。下からの条件だけなら、解は段 2 の 1 つの条件の解で、半直線である。上からの条件だけでも同じである。両方あるときは、残った 2 つの条件に lem-soi-meet を使うと、$p< q$ なら両端のある区間、$p=q$ なら 1 点か空集合、$p>q$ なら空集合になる。$p=q$ のとき 1 点になるのは、まとめた 2 つの条件がどちらも等号つきのとき、つまり $p$ や $q$ を端とする条件がすべて等号つきのときである。$\square$

3 つ以上の不等式の連立

$$ \begin{cases}x>-1\\ 2x\ge4\\ x-3< 2\\ 3x\le18\end{cases} $$
は、$x>-1$、$x\ge2$、$x< 5$、$x\le6$ である。下からの条件の端は $-1$、$2$ で最大は $2$($\ge$)、上からの条件の端は $5$、$6$ で最小は $5$($< $)である。$2< 5$ なので、解は $2\le x< 5$ である。

解が 1 点になる場合とならない場合
  1. $\begin{cases}2x-1\ge5\\ x+2\le5\end{cases}$ は $x\ge3$ かつ $x\le3$ で、解は $x=3$ だけである。
  2. $\begin{cases}2x-1>5\\ x+2\le5\end{cases}$ は $x>3$ かつ $x\le3$ で、解はない。端は同じ $3$ でも、一方が等号を含まないと解がなくなる。

$A< B< C$ の形の連立不等式では、3 つの式すべてに同じ式を足したり、同じ正の数を掛けたりしてもよい。$x$ に数を 1 つ代入するごとに、1次不等式 の「同値な変形」を 2 つの不等式に同時に使うことになるからである。たとえば $x+1< 2x-3< x+5$ の各辺から $x$ を引くと $1< x-3< 5$、各辺に $3$ を足すと $4< x< 8$ である。

文字を含む連立不等式

thm-soi-main の「端の最大値と最小値を比べる」という見方は、端に文字が入っても使える。

解をもつ条件と、整数の解の個数

$a$ を定数として、連立不等式 $\begin{cases}x>2\\ x< a\end{cases}$ を考える。

  1. 解をもつ条件:lem-soi-meet により、解があるのは $2< a$ のときに限る。$a\le2$ なら解はない。
  2. 整数の解がちょうど 3 個になる条件:$a>2$ のとき解は $2< x< a$ である。整数の解が $3$、$4$、$5$ の 3 個だけになるのは、$5$ が解に入り($5< a$)、$6$ が入らない($6\ge a$)とき、つまり $5< a\le6$ のときである。たとえば $a=6$ なら解は $2< x< 6$ で、整数は $3$、$4$、$5$ である。$a=5$ なら $5$ が入らず、整数は $3$、$4$ の 2 個になる。

文字が 2 つの連立不等式

$x$、$y$ の 1 次不等式を連立すると、解は座標平面の点の集まりになる。各不等式の表す半平面(1次不等式 の「2 つの文字の 1 次不等式」)の共通部分である(図で読む方法の例は MH20 の §4.7)。その図形の性質(凸であること、頂点での最大・最小)は 不等式の表す領域と線形計画法 で扱う。ここでは、1 つの文字を消して、もう 1 つの文字のとりうる範囲を求める方法を示す。

1 つの文字を消す

$x$ を固定するごとに、$y$ についての連立不等式が
$$ y\ge\ell_1,\ \dots,\ y\ge\ell_k,\qquad y\le u_1,\ \dots,\ y\le u_m $$
の形($\ell_i$、$u_j$ は $x$ だけの式、$k\ge1$、$m\ge1$)になるとする。このとき、この連立不等式を満たす $y$ が存在することは、すべての $i$、$j$ について $\ell_i\le u_j$ が成り立つことと同値である。

端の最大値と最小値で比べる

方針:$x$ を 1 つ固定すれば $\ell_i$、$u_j$ はただの数なので、thm-soi-main の証明と同じく、下の端の最大値と上の端の最小値を比べる。
段 1。$x$ を固定し、$L:=\max\{\ell_1,\dots,\ell_k\}$、$U:=\min\{u_1,\dots,u_m\}$ とおく。lem-soi-lower をくり返し使うと(prf-thm-soi-main の段 2 と同じ)、$y$ の条件は「$y\ge L$ かつ $y\le U$」とまとまる(等号つきの条件だけなので、端が等しくなっても等号つきのまま)。
段 2。lem-soi-meet により、これを満たす $y$ があることは $L\le U$ と同値である($L< U$ なら区間、$L=U$ なら 1 点)。
段 3。$L\le U$ は、すべての $i$、$j$ で $\ell_i\le u_j$ が成り立つことと同値である。実際、$L\le U$ なら $\ell_i\le L\le U\le u_j$ である。逆に、すべての $\ell_i\le u_j$ が成り立てば、最大値 $L$ もある $\ell_i$ に等しく、最小値 $U$ もある $u_j$ に等しいので、$L\le U$ である。$\square$

$y$ を消して $x$ の範囲を求める

$$ \begin{cases}y\ge x-1\\ y\ge0\\ x+y\le3\end{cases} $$
を満たす点 $(x,y)$ があるような $x$ の範囲を求める。3 つ目は $y\le3-x$ である。下からの条件は $y\ge x-1$、$y\ge0$、上からの条件は $y\le3-x$ なので、prop-soi-eliminate により、条件は
$$ x-1\le3-x\quad\text{かつ}\quad0\le3-x $$
で、$x\le2$ かつ $x\le3$、つまり $x\le2$ である。

  1. $x=2$ のとき、$y$ の条件は $y\ge1$、$y\ge0$、$y\le1$ で、$y=1$ だけが入る。点 $(2,1)$ は 3 つの不等式を満たす。
  2. $x=2.5$ のとき、$y\ge1.5$ と $y\le0.5$ が両立せず、点はない。
  3. $x=-10$ のとき、$y$ の条件は $y\ge-11$、$y\ge0$、$y\le13$ で、$0\le y\le13$ の点がある。$x$ をいくら小さくしても点があり、この 3 つの不等式の表す領域は左へ限りなく広がっている。右の端は点 $(2,1)$ である。

例と反例

連立不等式の解き方の前提を外したり、取り違えたりすると、解が変わる。

外した前提・取り違え崩れる主張ボックス
条件を「かつ」で結ぶ解は 1 つの区間か 1 点か空集合(thm-soi-main)ex-soi-or
端を比べるときに等号の有無を区別する端が等しいときの解の有無(lem-soi-meet の 2)ex-soi-point
各不等式を同値な変形で解く得た範囲がちょうど解になるex-soi-add
文字を消すとき、下の端と上の端の組をすべて比べる文字の範囲が正しく求まる(prop-soi-eliminate)ex-soi-pairs
反例:「かつ」と「または」

「$x< 1$ または $x>3$」を満たす $x$ 全体は、2 つの解の 和集合(少なくとも一方に属する要素全体)で、$1$ 以上 $3$ 以下の数だけが外れた集合である。これは 1 つの区間ではない。たとえば $0$ と $4$ は入るが、その間の $2$ は入らない。連立不等式は「かつ」で結んだものなので、thm-soi-main は「または」で結んだ条件には使えない。2 次不等式 $x^2-4x+3>0$ の解はこの形になる(2次不等式)。

反例:連立方程式のように足し合わせる

$$ \begin{cases}x+y>2\\ x-y>0\\ y< -5\end{cases} $$
の 1 つ目と 2 つ目を辺ごとに足すと $2x>2$、つまり $x>1$ となる。これは「解ならば $x>1$」という正しい結論だが、解をもつ $x$ の範囲ではない。たとえば $x=2$ のとき、$y$ の条件は $y>0$、$y< 2$、$y< -5$ で両立せず、解になる点はない。
正しい範囲は、prop-soi-eliminate と同じく $y$ の下の端と上の端の組をすべて比べて求める(等号のない不等式なので、lem-soi-meet により「$<$」で比べる)。$y$ の条件は $y>2-x$、$y< x$、$y< -5$ なので、
$$ 2-x< x\quad\text{かつ}\quad2-x< -5 $$
で、$x>1$ かつ $x>7$、つまり $x>7$ である。$x=8$ なら $-6< y< -5$ の点、たとえば $(8,-5.5)$ が 3 つの不等式を満たす($2.5>2$、$13.5>0$、$-5.5< -5$)。足し合わせは同値な変形ではなく、必要条件を取り出すだけである。

反例:端の組を比べ忘れる

ex-soi-eliminate で、下の端 $x-1$ と上の端 $3-x$ だけを比べて $0\le3-x$ を忘れても、この例では $x\le2$ から $x\le3$ が出るので答えは変わらない。しかし、$\begin{cases}y\ge x-1\\ y\ge5\\ x+y\le3\end{cases}$ で $x-1\le3-x$($x\le2$)だけを比べると誤りになる。$x=0$ は $x\le2$ を満たすが、$y\ge5$ と $y\le3$ は両立しない。もう 1 つの組 $5\le3-x$ から $x\le-2$ が必要で、正しい範囲は $x\le-2$ である($x=-2$ では $y=5$ で、$5\ge-3$、$5\ge5$、$-2+5=3\le3$ を満たす)。

大学数学で見る:凸集合の共通部分

区間と凸集合
  1. 実数の集合 $S$ が「$S$ の 2 点 $s< t$ と $s< x< t$ を満たす $x$ について、つねに $x\in S$」を満たすとき、$S$ を(数直線の)凸集合 と呼ぶ。2 点以上を含む凸集合は区間と同じものである(Leb の Proposition 1.4.1(p. 41)。この記事では証明しない)。凸集合の共通部分はまた凸集合なので($S$、$T$ の両方で間の点が入れば、共通部分でも入る)、連立不等式の解が区間・1 点・空集合のどれかになること(thm-soi-main)は、この性質からも読み取れる。
  2. 平面や空間でも、1 次不等式の解(半平面・半空間)は 凸集合 で、その共通部分である連立 1 次不等式の解も凸集合である。有限個の 1 次不等式の解全体を 凸多面体(有界でなくてもよい)といい、線形計画法の舞台になる(線形計画法)。
  3. prop-soi-eliminate の「下の端と上の端の組をすべて比べて 1 つの文字を消す」考え方は、文字がいくつあっても使える。消すたびに不等式の個数は増えうるが、最後に 1 つの文字の範囲が残る。

さらに先へ

  • 連立不等式の端の比べ方は、2 次不等式を含む連立(2次不等式 の「連立不等式と文字を含む不等式」)でも同じである。
  • 文字が 2 つの連立 1 次不等式の領域で 1 次式の最大・最小を求める方法は 不等式の表す領域と線形計画法 で、領域を使った最大・最小の別の例は 領域を使った最大・最小 で扱う。
  • 絶対値の不等式 $|x-c|< r$ は、連立不等式 $c-r< x< c+r$ と同じである(数直線(高校数学) の「1 点からの距離が $r$ より小さい点」)。

関連項目

参考文献

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