連立不等式(system of inequalities)とは、いくつかの不等式を組にし、それらをすべて同時に満たす値を求めるものであり、その解全体は各不等式の解全体の共通部分である。$x$ の有限個の 1 次不等式の連立では、下に端のある条件の端の最大値 $p$ と、上に端のある条件の端の最小値 $q$ を比べればよく、両方の条件があれば、$p< q$ なら両端のある区間、$p=q$ なら 1 点か解なし、$p>q$ なら解なしとなる。文字が 2 つのときも、1 つの文字の下の端と上の端の組をすべて比べると、その文字を消してもう一方の文字の範囲が求まる。
いくつかの不等式を組にして、「それらを すべて同時に 満たす $x$」を求める問題がある。この組を 連立不等式 という。1 つずつ解き、解の重なる部分を数直線で読み取る。
$$
\begin{cases}2x-1< 5\\ 3x+2\ge-4\end{cases}
$$
を解く。
上から順に、x < 3 の解、x ≧ −2 の解、2 つの重なり −2 ≦ x < 3 を数直線に示した図
$$
\begin{cases}x+4>7\\ 2x< 2\end{cases}
$$
は、1 つ目が $x>3$、2 つ目が $x< 1$ である。$3$ より大きく、しかも $1$ より小さい実数はないので、解はない。数直線で 2 つの半直線が重ならないことからも読み取れる。
$x-1< 2x+1\le x+4$ は、「$x-1< 2x+1$ かつ $2x+1\le x+4$」という連立不等式である。
この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | ボックス |
|---|---|---|
| 解の重なりを読む | 解の集合の共通部分 | def-soi-system |
| 「大きいほうより大きい」 | 下の端の最大値 | lem-soi-lower |
| 「重ならないので解なし」 | 下の端が上の端を超える | lem-soi-meet |
| $A< B< C$ | $A< B$ かつ $B< C$ | ex-soi-chain |
いくつかの不等式を組にし、それらを すべて同時に満たす ことを求めるものを 連立不等式 という。連立不等式のすべての不等式を満たす $x$ を連立不等式の 解 という。
2 つの集合 $A$、$B$ の両方に属する要素全体を $A$ と $B$ の 共通部分 といい、$A\cap B$ と書く。3 つ以上のときも同じように、すべてに属する要素全体を共通部分という。連立不等式の解全体は、各不等式の解全体の共通部分である。
最後の文は定義を言いかえただけである。$x$ が連立不等式の解であることは、$x$ が 1 つ目の不等式の解であり、かつ 2 つ目の不等式の解であり、……ということだからである。$A< B< C$ という書き方は「$A< B$ かつ $B< C$」の意味で、2 つの不等式の連立である(ex-soi-chain。教科書での扱いの例は Abr21 の §2.7)。
1次不等式 の「1 次不等式の解」により、$x$ の 1 次不等式の解は、$x>p$、$x\ge p$(下に端がある半直線)か、$x< q$、$x\le q$(上に端がある半直線)である。前者を 下からの条件、後者を 上からの条件 と呼ぶことにする。連立不等式の解を求めるには、これらの共通部分を調べればよい。
2 つの下からの条件の共通部分は、端の大きいほうの条件になる。詳しくは、実数 $p$、$p'$ について
方針:端の大きいほうの条件を満たせば、端の小さいほうの条件は自動的に満たされることを示す。
1:$p< p'$ とする。$x\mathrel{\rho'}p'$ を満たす $x$ は、$x\ge p'$ を満たす($\rho'$ が $>$ なら $x>p'$ から $x\ge p'$)。$p'>p$ なので $x\ge p'>p$ で、$x>p$ であり、したがって $x\ge p$ でもある。よって $x\mathrel{\rho}p$ も満たす。逆に、両方を満たせば当然 $x\mathrel{\rho'}p'$ を満たす。
2:$p=p'$ とする。両方 $\ge$ なら条件は同じである。一方が $>$ のとき、$x>p$ なら $x\ge p$ も成り立つので、「$x>p$ かつ $x\ge p$」は $x>p$ と同値である。両方 $>$ なら条件は同じである。
上からの条件は、数直線の向きを逆にして同じ議論をすればよい($x< q$ は $-x>-q$ と同値なので、1次不等式 の「同値な変形」により下からの条件に直せる)。$\square$
実数 $p$、$q$ について、
方針:2 つの条件から $x$ についての 2 つの評価を作り、$p$ と $q$ の大小と比べる。
1:$p< q$ とする。解の集合は定義から $\{x\mid x\mathrel{\rho}p\ \text{かつ}\ x\mathrel{\sigma}q\}$ で、これは 数直線(高校数学) の「区間の記号」の 4 つの有界な区間のどれかである。$m:=\dfrac{p+q}2$ とおくと、$p< q$ の両辺に $p$ を足して $2p< p+q$、$\dfrac12$ を掛けて $p< m$ である。同じく $q$ を足すと $m< q$ である。よって $m>p$、$m< q$ で、$m$ は $\rho$、$\sigma$ がどちらでも条件を満たす。
2:$p=q$ とする。$x\ge p$ かつ $x\le p$ なら、$x>p$ でも $x< p$ でもないので $x=p$ であり、逆に $x=p$ は両方を満たす。一方が $>$ のときは $x>p$ と $x\le p$ が両立しないので解はない。$< $ のときも同じである。
3:$p>q$ とする。解 $x$ があったとすると、$x\ge p$ と $x\le q$ が成り立ち($>$、$< $ ならなおさら)、$q\ge x\ge p$ から $q\ge p$ となって $p>q$ に反する。よって解はない。$\square$
$x$ についての有限個の 1 次不等式の連立不等式の解全体は、次のどれかである。
方針:lem-soi-lower をくり返して、下からの条件を 1 つ、上からの条件を 1 つにまとめ、最後に lem-soi-meet を使う。
段 1(各不等式を条件に直す)。1次不等式 の「1 次不等式の解」により、連立不等式の各不等式は、同じ解をもつ下からの条件か上からの条件に直せる。連立不等式の解はそれらの共通部分である(def-soi-system)。
段 2(下からの条件をまとめる)。下からの条件が 2 つ以上あれば、lem-soi-lower により 2 つを、端の大きいほう(端が等しく一方が $>$ なら $>$)の 1 つの条件に替えても、共通部分は変わらない。これをくり返すと、条件は 1 つずつ減り、最後に 1 つになる。その端は、すべての下からの条件の端の最大値 $p$ で、$p$ を端とする条件のどれかが $>$ なら $>$、すべて $\ge$ なら $\ge$ である。上からの条件も同じように、端の最小値 $q$ をもつ 1 つの条件にまとまる。
段 3(場合を分ける)。下からの条件だけなら、解は段 2 の 1 つの条件の解で、半直線である。上からの条件だけでも同じである。両方あるときは、残った 2 つの条件に lem-soi-meet を使うと、$p< q$ なら両端のある区間、$p=q$ なら 1 点か空集合、$p>q$ なら空集合になる。$p=q$ のとき 1 点になるのは、まとめた 2 つの条件がどちらも等号つきのとき、つまり $p$ や $q$ を端とする条件がすべて等号つきのときである。$\square$
$$
\begin{cases}x>-1\\ 2x\ge4\\ x-3< 2\\ 3x\le18\end{cases}
$$
は、$x>-1$、$x\ge2$、$x< 5$、$x\le6$ である。下からの条件の端は $-1$、$2$ で最大は $2$($\ge$)、上からの条件の端は $5$、$6$ で最小は $5$($< $)である。$2< 5$ なので、解は $2\le x< 5$ である。
$A< B< C$ の形の連立不等式では、3 つの式すべてに同じ式を足したり、同じ正の数を掛けたりしてもよい。$x$ に数を 1 つ代入するごとに、1次不等式 の「同値な変形」を 2 つの不等式に同時に使うことになるからである。たとえば $x+1< 2x-3< x+5$ の各辺から $x$ を引くと $1< x-3< 5$、各辺に $3$ を足すと $4< x< 8$ である。
thm-soi-main の「端の最大値と最小値を比べる」という見方は、端に文字が入っても使える。
$a$ を定数として、連立不等式 $\begin{cases}x>2\\ x< a\end{cases}$ を考える。
$x$、$y$ の 1 次不等式を連立すると、解は座標平面の点の集まりになる。各不等式の表す半平面(1次不等式 の「2 つの文字の 1 次不等式」)の共通部分である(図で読む方法の例は MH20 の §4.7)。その図形の性質(凸であること、頂点での最大・最小)は 不等式の表す領域と線形計画法 で扱う。ここでは、1 つの文字を消して、もう 1 つの文字のとりうる範囲を求める方法を示す。
$x$ を固定するごとに、$y$ についての連立不等式が
$$
y\ge\ell_1,\ \dots,\ y\ge\ell_k,\qquad y\le u_1,\ \dots,\ y\le u_m
$$
の形($\ell_i$、$u_j$ は $x$ だけの式、$k\ge1$、$m\ge1$)になるとする。このとき、この連立不等式を満たす $y$ が存在することは、すべての $i$、$j$ について $\ell_i\le u_j$ が成り立つことと同値である。
方針:$x$ を 1 つ固定すれば $\ell_i$、$u_j$ はただの数なので、thm-soi-main の証明と同じく、下の端の最大値と上の端の最小値を比べる。
段 1。$x$ を固定し、$L:=\max\{\ell_1,\dots,\ell_k\}$、$U:=\min\{u_1,\dots,u_m\}$ とおく。lem-soi-lower をくり返し使うと(prf-thm-soi-main の段 2 と同じ)、$y$ の条件は「$y\ge L$ かつ $y\le U$」とまとまる(等号つきの条件だけなので、端が等しくなっても等号つきのまま)。
段 2。lem-soi-meet により、これを満たす $y$ があることは $L\le U$ と同値である($L< U$ なら区間、$L=U$ なら 1 点)。
段 3。$L\le U$ は、すべての $i$、$j$ で $\ell_i\le u_j$ が成り立つことと同値である。実際、$L\le U$ なら $\ell_i\le L\le U\le u_j$ である。逆に、すべての $\ell_i\le u_j$ が成り立てば、最大値 $L$ もある $\ell_i$ に等しく、最小値 $U$ もある $u_j$ に等しいので、$L\le U$ である。$\square$
$$
\begin{cases}y\ge x-1\\ y\ge0\\ x+y\le3\end{cases}
$$
を満たす点 $(x,y)$ があるような $x$ の範囲を求める。3 つ目は $y\le3-x$ である。下からの条件は $y\ge x-1$、$y\ge0$、上からの条件は $y\le3-x$ なので、prop-soi-eliminate により、条件は
$$
x-1\le3-x\quad\text{かつ}\quad0\le3-x
$$
で、$x\le2$ かつ $x\le3$、つまり $x\le2$ である。
連立不等式の解き方の前提を外したり、取り違えたりすると、解が変わる。
| 外した前提・取り違え | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 条件を「かつ」で結ぶ | 解は 1 つの区間か 1 点か空集合(thm-soi-main) | ex-soi-or |
| 端を比べるときに等号の有無を区別する | 端が等しいときの解の有無(lem-soi-meet の 2) | ex-soi-point |
| 各不等式を同値な変形で解く | 得た範囲がちょうど解になる | ex-soi-add |
| 文字を消すとき、下の端と上の端の組をすべて比べる | 文字の範囲が正しく求まる(prop-soi-eliminate) | ex-soi-pairs |
「$x< 1$ または $x>3$」を満たす $x$ 全体は、2 つの解の 和集合(少なくとも一方に属する要素全体)で、$1$ 以上 $3$ 以下の数だけが外れた集合である。これは 1 つの区間ではない。たとえば $0$ と $4$ は入るが、その間の $2$ は入らない。連立不等式は「かつ」で結んだものなので、thm-soi-main は「または」で結んだ条件には使えない。2 次不等式 $x^2-4x+3>0$ の解はこの形になる(2次不等式)。
$$
\begin{cases}x+y>2\\ x-y>0\\ y< -5\end{cases}
$$
の 1 つ目と 2 つ目を辺ごとに足すと $2x>2$、つまり $x>1$ となる。これは「解ならば $x>1$」という正しい結論だが、解をもつ $x$ の範囲ではない。たとえば $x=2$ のとき、$y$ の条件は $y>0$、$y< 2$、$y< -5$ で両立せず、解になる点はない。
正しい範囲は、prop-soi-eliminate と同じく $y$ の下の端と上の端の組をすべて比べて求める(等号のない不等式なので、lem-soi-meet により「$<$」で比べる)。$y$ の条件は $y>2-x$、$y< x$、$y< -5$ なので、
$$
2-x< x\quad\text{かつ}\quad2-x< -5
$$
で、$x>1$ かつ $x>7$、つまり $x>7$ である。$x=8$ なら $-6< y< -5$ の点、たとえば $(8,-5.5)$ が 3 つの不等式を満たす($2.5>2$、$13.5>0$、$-5.5< -5$)。足し合わせは同値な変形ではなく、必要条件を取り出すだけである。
ex-soi-eliminate で、下の端 $x-1$ と上の端 $3-x$ だけを比べて $0\le3-x$ を忘れても、この例では $x\le2$ から $x\le3$ が出るので答えは変わらない。しかし、$\begin{cases}y\ge x-1\\ y\ge5\\ x+y\le3\end{cases}$ で $x-1\le3-x$($x\le2$)だけを比べると誤りになる。$x=0$ は $x\le2$ を満たすが、$y\ge5$ と $y\le3$ は両立しない。もう 1 つの組 $5\le3-x$ から $x\le-2$ が必要で、正しい範囲は $x\le-2$ である($x=-2$ では $y=5$ で、$5\ge-3$、$5\ge5$、$-2+5=3\le3$ を満たす)。
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