極座標(polar coordinates)とは、平面の点を原点からの距離 $r\ge0$ と $x$ 軸の正の向きからの角(偏角)$\theta$ の組で表す座標で、$x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$、$r=\sqrt{x^2+y^2}$ である。$\theta$ は原点以外では $2\pi$ の整数倍を除いて一つに決まり、原点では決まらない。$0\le r\le f(\theta)$、$\alpha\le\theta\le\beta$($f\ge0$ は連続、$\beta-\alpha\le2\pi$)の部分の面積は $\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2d\theta$ である。Jacobi 行列式が $r$ であることから $\int_{\mathbb{R}}e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}$ が導かれる。
平面の点を「原点からの距離」と「$x$ 軸の正の向きから測った角」で表すのが 極座標 である。たとえば点 $(1,\sqrt3)$ は原点から距離 $\sqrt{1^2+3}=2$ のところにあり、原点と結ぶ線分は $x$ 軸の正の向きと角 $\frac\pi3$($60^\circ$)をなす。そこでこの点の極座標は $(r,\theta)=(2,\frac\pi3)$ であり、実際 $2\cos\frac\pi3=1$、$2\sin\frac\pi3=\sqrt3$ である。極座標では、原点を中心とする円は $r=\text{一定}$、原点を通る半直線は $\theta=\text{一定}$ という簡単な式になる。曲線 $r=1+\cos\theta$(心臓形)が囲む部分の面積は $\frac12\int_0^{2\pi}(1+\cos\theta)^2\,d\theta=\frac{3\pi}{2}$ と、角についての 1 回の積分で求まる。
極座標は、回転に関係する図形・運動・積分を扱うときの基本的な道具である。本記事では平面の極座標を定義し、偏角が $2\pi$ の整数倍を除いて一つに決まること、直交座標から偏角を求める式、極方程式で表される曲線、極座標による面積の公式、変数変換の Jacobi 行列式 $r$ と Gauss 積分 $\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx=\sqrt\pi$ を扱う。空間の円柱座標と球座標にも触れる。
以下、$\cos$、$\sin$ は三角関数、$\pi$ は円周率であり、角は弧度法で測る。
平面の点 $P=(x,y)$ に対し、実数の組 $(r,\theta)$ で $r\ge0$ かつ
$$
x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta
$$
を満たすものを、$P$ の 極座標(polar coordinates)という。$r$ を 動径、$\theta$ を 偏角(argument)という。原点 $O=(0,0)$ を 極、$x$ 軸の正の部分を 始線 という。
$r$ は $P$ の原点からの距離 $\sqrt{x^2+y^2}$ に等しい(prop-polar-existence)。偏角は $2\pi$ の整数倍だけの任意性をもつ($(2,\frac\pi3)$ と $(2,\frac{7\pi}3)$ は同じ点を表す)ので、一つに決めたいときは $0\le\theta<2\pi$ または $-\pi<\theta\le\pi$ の範囲に制限する。後者の範囲の偏角を 偏角の主値 ということがある。
平面を複素数平面とみれば、$x+iy=r(\cos\theta+i\sin\theta)$ であり、これは 複素数 の記事の定義「偏角と極形式」の極形式そのものである。極座標は複素数の積の計算(絶対値は掛け、偏角は足す。同記事の命題「極形式での乗法」)と相性がよい(Hit §2.2、pp. 17–18)。
直交座標 $(x,y)$ は平面を縦横の格子で区切って点を指定するのに対し、極座標は平面を「原点を中心とする同心円」と「原点から出る半直線」の網で区切って点を指定する。レーダーの画面や、灯台から見た船の位置の言い方(方角と距離)がこれにあたる。この網の目は原点から離れるほど大きくなり、動径 $r$、角 $d\theta$ の網目の弧の長さは $r\,d\theta$ である。これが、極座標で面積を計算するときに $r\,dr\,d\theta$ の形で因子 $r$ が現れる理由であり、変数変換の Jacobi 行列式が $r$ になること(prop-polar-jacobian)の意味である。原点だけは角が決まらない特別な点である。
$P=(x,y)$ を原点と異なる平面の点とする。
$(r,\theta)$ が $P$ の極座標なら、$x^2+y^2=r^2(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=r^2$(三角関数 の記事の系「余弦と正弦の平方の和」)であり、$r\ge0$ なので $r=\sqrt{x^2+y^2}$ である。$P\neq O$ なので $r>0$ である。これで 2 の $r=r'$ と、1 の $r$ の値が分かる。
$r:=\sqrt{x^2+y^2}>0$ とおき、$a:=x/r$、$b:=y/r$ とすると $a^2+b^2=1$ である。三角関数 の記事の定理「単位円の媒介変数表示」により、$(\cos t,\sin t)=(a,b)$ となる $t\in[0,2\pi)$ がただ一つ存在し、実数 $s$ について $(\cos s,\sin s)=(a,b)$ となるのは $s-t$ が $2\pi$ の整数倍のときに限る。$\theta$ が $P$ の偏角であることは $(\cos\theta,\sin\theta)=(x/r,y/r)=(a,b)$ と同値なので、1・2・3 の残りの主張はすべてこれから従う。$\square$
以上から、写像
$$
\Phi\colon(0,\infty)\times[0,2\pi)\to\mathbb{R}^2\setminus\{O\},\qquad\Phi(r,\theta)=(r\cos\theta,r\sin\theta)
$$
は全単射である(Leb2 の Exercise 8.5.8 (f)、p. 59)。$\Phi$ を $\mathbb{R}^2$ 全体で考えると、各点の逆像は無限集合になる(同 (d))。偏角の範囲を $-\pi<\theta\le\pi$ にしても同じである。
$P=(x,y)\neq O$ の偏角のうち $-\pi<\theta\le\pi$ を満たすもの(主値)は
$$
\theta=\begin{cases}
\arctan(y/x) & (x>0),\\
\arctan(y/x)+\pi & (x<0,\ y\ge0),\\
\arctan(y/x)-\pi & (x<0,\ y<0),\\
\pi/2 & (x=0,\ y>0),\\
-\pi/2 & (x=0,\ y<0)
\end{cases}
$$
で与えられる。ここで $\arctan\colon\mathbb{R}\to(-\frac\pi2,\frac\pi2)$ は正接の逆関数である。
$r:=\sqrt{x^2+y^2}$ とし、各場合に示す $\theta$ について $(\cos\theta,\sin\theta)=(x/r,y/r)$ かつ $-\pi<\theta\le\pi$ を確かめる。偏角は $2\pi$ の整数倍を除いて一つ(prop-polar-existence)で、長さ $2\pi$ の区間 $(-\pi,\pi]$ にはそのうちちょうど一つが入るので、これで十分である。
$x>0$ の場合:$\varphi:=\arctan(y/x)\in(-\frac\pi2,\frac\pi2)$ とおく。三角関数 の記事の命題「正接と逆正接・逆正弦」により $\tan\varphi=y/x$ であり、同記事の定理「周期と零点」の 3 により $\cos\varphi>0$ である。$\cos^2\varphi+\sin^2\varphi=1$ を $\cos^2\varphi$ で割ると $1+\tan^2\varphi=1/\cos^2\varphi$ なので
$$
\cos\varphi=\frac{1}{\sqrt{1+(y/x)^2}}=\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}=\frac xr,\qquad\sin\varphi=\tan\varphi\cos\varphi=\frac yx\cdot\frac xr=\frac yr
$$
である($x>0$ を使った)。よって $\theta=\varphi$ である。
$x<0$ の場合:点 $(-x,-y)$ は $-x>0$ なので、前段により $\varphi:=\arctan(y/x)=\arctan((-y)/(-x))$ は $(\cos\varphi,\sin\varphi)=(-x/r,-y/r)$ を満たす。同記事の定理「周期と零点」の 2 により $\cos(\varphi\pm\pi)=-\cos\varphi=x/r$、$\sin(\varphi\pm\pi)=-\sin\varphi=y/r$ なので、$\varphi+\pi$ と $\varphi-\pi$ はどちらも $P$ の偏角である。$y\ge0$ なら $\sin\varphi=-y/r\le0$ で $\varphi\in(-\frac\pi2,0]$ なので $\varphi+\pi\in(\frac\pi2,\pi]$ であり、$y<0$ なら $\sin\varphi>0$ で $\varphi\in(0,\frac\pi2)$ なので $\varphi-\pi\in(-\pi,-\frac\pi2)$ である。いずれも $(-\pi,\pi]$ に入る。
$x=0$ の場合:$r=|y|$ であり、$\cos\frac\pi2=0$、$\sin\frac\pi2=1$(同記事の定理「周期と零点」の 1)から $y>0$ なら $\theta=\frac\pi2$、$y<0$ なら $\sin(-\frac\pi2)=-1$ から $\theta=-\frac\pi2$ である。$\square$
この場合分けを 1 つの関数にまとめたものは、多くのプログラミング言語で $\operatorname{atan2}(y,x)$ という名前で用意されている。ex-polar-counterexamples の 2 の点 $(-1,-1)$ では、$x<0$、$y<0$ なので $\theta=\frac\pi4-\pi=-\frac{3\pi}4$ となる。
$\theta$ の関数 $f$ を使って $r=f(\theta)$ の形で表される曲線を 極方程式 の曲線という。直交座標では複雑な曲線が、極座標では簡単な式になることがある。
以下 $a>0$ とする。
本記事では動径を $r\ge0$ に限っている。$r<0$ も許し、$(r,\theta)$ で点 $(-r)\cdot(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi))$、すなわち同じ式 $(r\cos\theta,r\sin\theta)$ の点を表す流儀もある。その流儀では $r=\cos2\theta$ を $|\cdot|$ なしで 4 枚の葉の曲線として書ける。どちらの流儀かによって、同じ極方程式が表す点の集合が変わりうるので注意する。
極座標での面積の公式を、扇形の面積から導く。ここでは面積について次の 3 つを認める。
$\alpha<\beta$、$\beta-\alpha\le2\pi$ とし、$f\colon[\alpha,\beta]\to[0,\infty)$ を連続関数とする。
$$
D:=\{(r\cos\theta,r\sin\theta)\mid\alpha\le\theta\le\beta,\ 0\le r\le f(\theta)\}
$$
の面積は
$$
\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta
$$
に等しい。
$g(\theta):=\frac12f(\theta)^2$ とおく。$g$ は連続なので、Riemann積分 の記事の定理「連続関数の可積分性」により $[\alpha,\beta]$ 上で Riemann 積分可能であり、下限和の上限と上限和の下限はともに $\int_\alpha^\beta g$ に等しい(同記事の定義「Riemann積分可能性と積分の値」)。
$[\alpha,\beta]$ の分割 $P\colon\alpha=\theta_0<\theta_1<\cdots<\theta_m=\beta$ をとる。各 $k$ について、$f$ の $[\theta_{k-1},\theta_k]$ での最小値を $m_k$、最大値を $M_k$ とし(連続関数なので存在する)、
$$
D_k:=\{(r\cos\theta,r\sin\theta)\mid\theta_{k-1}\le\theta\le\theta_k,\ 0\le r\le f(\theta)\}
$$
とおく。$D=D_1\cup\cdots\cup D_m$ であり、$\beta-\alpha\le2\pi$ なので、$D_k$ どうしは原点から出る線分(偏角 $\theta_k$ の方向、$\beta-\alpha=2\pi$ なら偏角 $\alpha$ の方向も)だけを共有する。$D_k$ は半径 $m_k$、中心角 $\theta_k-\theta_{k-1}$ の扇形を含み、半径 $M_k$ の同じ中心角の扇形に含まれる。(i)・(ii)・(iii) により
$$
\sum_{k=1}^m\frac12m_k^2(\theta_k-\theta_{k-1})\le(D\text{ の面積})\le\sum_{k=1}^m\frac12M_k^2(\theta_k-\theta_{k-1})
$$
である。$f\ge0$ なので、$[\theta_{k-1},\theta_k]$ での $g$ の最小値は $\frac12m_k^2$、最大値は $\frac12M_k^2$ であり、左辺と右辺は $g$ の分割 $P$ についての下限和と上限和である。分割 $P$ は任意なので、$D$ の面積は下限和の上限以上かつ上限和の下限以下であり、$\int_\alpha^\beta g$ に等しい。$\square$
写像 $\Phi(r,\theta)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ を 2 変数の写像として微分する。
$\Phi\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2$、$\Phi(r,\theta)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ の Jacobi行列 と Jacobi 行列式は
$$
\begin{pmatrix}\partial x/\partial r&\partial x/\partial\theta\\\partial y/\partial r&\partial y/\partial\theta\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\theta&-r\sin\theta\\\sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix},\qquad\det=r
$$
である。とくに $\Phi$ の Jacobi 行列は $r\neq0$ で正則であり、$r=0$ で正則でない。
$\theta$ を止めて $r$ で微分すると $\frac{\partial x}{\partial r}=\cos\theta$、$\frac{\partial y}{\partial r}=\sin\theta$ である。$r$ を止めて $\theta$ で微分すると、三角関数 の記事の定理「正弦と余弦の導関数」により $\frac{\partial x}{\partial\theta}=-r\sin\theta$、$\frac{\partial y}{\partial\theta}=r\cos\theta$ である。行列式は $r\cos^2\theta-(-r\sin\theta)\sin\theta=r(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=r$ である。$\square$
Jacobi 行列式 $r$ は、$(r,\theta)$ の平面の小さな長方形が $\Phi$ で写る図形の面積の拡大率を表す(Leb2 の §8.3.4、p. 42)。実際、$0\le r_0$、$\Delta r>0$、$0<\Delta\theta\le2\pi$ について、長方形 $[r_0,r_0+\Delta r]\times[\theta_0,\theta_0+\Delta\theta]$ の像を $A$ とすると、中心角 $\Delta\theta$、半径 $r_0+\Delta r$ の扇形は、同じ中心角で半径 $r_0$ の扇形と $A$ との和であり、この 2 つは円弧だけを共有する。したがって (ii)・(iii) により $A$ の面積は
$$
\frac12\bigl((r_0+\Delta r)^2-r_0^2\bigr)\Delta\theta=\Bigl(r_0+\frac{\Delta r}2\Bigr)\Delta r\,\Delta\theta
$$
である。長方形の面積 $\Delta r\,\Delta\theta$ に、動径の中間の値 $r_0+\frac{\Delta r}2$ を掛けたものになっている。$r=0$ で行列式が $0$ になるのは、$r=0$ の線分全体が原点 1 点に写ることに対応する。
この拡大率を積分に移したものが、次の変数変換の公式である。
$R>0$ とし、$f$ を閉円板 $\overline{D}_R:=\{(x,y)\mid x^2+y^2\le R^2\}$ 上の連続関数とする。このとき
$$
\iint_{\overline{D}_R}f(x,y)\,dx\,dy=\int_0^{2\pi}\Bigl(\int_0^Rf(r\cos\theta,r\sin\theta)\,r\,dr\Bigr)d\theta
$$
が成り立つ。左辺は 2 変数の Riemann 積分(重積分)である。
本記事ではこの定理を証明せず、一般の変数変換の公式から導かれるものとして引用する。Leb2 の Theorem 10.7.2(p. 134)は、開集合 $U\subset\mathbb{R}^n$、$U$ に含まれるコンパクトな Jordan 可測集合 $S$、$U$ 上の単射な $C^1$ 写像 $g$ で Jacobi 行列式が $S$ 上で $0$ にならないものについて $\int_Sf(g(x))|J_g(x)|\,dx=\int_{g(S)}f$ を述べている。極座標の写像 $\Phi$ は $r=0$ で Jacobi 行列式が $0$ になり、$\theta=0$ と $\theta=2\pi$ で同じ点に写るので、$[0,R]\times[0,2\pi]$ にそのまま適用することはできない。$U=(0,\infty)\times(0,2\pi)$、$S=[\varepsilon,R]\times[\delta,2\pi-\delta]$($\varepsilon,\delta>0$ は小さい)に適用し、$\varepsilon,\delta\to0$ とすると上の公式が得られる。このとき $\overline{D}_R\setminus\Phi(S)$ は半径 $\varepsilon$ の円板と、始線のまわりの中心角 $2\delta$ の細い扇形に含まれ、その面積は $0$ に近づく。右辺の累次積分は、長方形上の連続関数の重積分に等しい(Leb2 §10.2、p. 106 の連続関数の場合の Fubini の定理)。$n$ 次元の極座標による変数変換は、参考書「ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分」の定理「極座標変換」で扱われている。
$f=1$ とおくと、$\overline{D}_R$ の面積が $\int_0^{2\pi}\int_0^Rr\,dr\,d\theta=\pi R^2$ となり、thm-polar-area と同じ結果を与える。
広義積分 $\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx$ は収束し、その値は $\sqrt\pi=1.7724538\ldots$ である。
$R>0$ について $I(R):=\int_{-R}^Re^{-x^2}\,dx$ とおき、正方形 $Q_R:=[-R,R]^2$ をとる。長方形上の連続関数に Fubini の定理(Leb2 §10.2、p. 106)を使うと
$$
I(R)^2=\int_{-R}^R\Bigl(\int_{-R}^Re^{-x^2}e^{-y^2}\,dy\Bigr)dx=\iint_{Q_R}e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy
$$
である。
閉円板について、$\overline{D}_R\subset Q_R\subset\overline{D}_{\sqrt2R}$ である($Q_R$ の点は $x^2+y^2\le2R^2$ を満たす)。有界な集合 $A$ 上の積分は、$A$ を含む長方形の上で $A$ の外では $0$ とした関数の積分として定められる(Leb2 の Definition 10.5.4、p. 124)ので、被積分関数が $0$ 以上なら、積分する集合が大きいほど積分の値は大きい。よって
$$
\iint_{\overline{D}_R}e^{-(x^2+y^2)}\le I(R)^2\le\iint_{\overline{D}_{\sqrt2R}}e^{-(x^2+y^2)}
$$
である。thm-polar-change-of-variables により、$\rho>0$ について
$$
\iint_{\overline{D}_\rho}e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy=\int_0^{2\pi}\Bigl(\int_0^\rho e^{-r^2}r\,dr\Bigr)d\theta=2\pi\Bigl[-\frac{e^{-r^2}}2\Bigr]_0^\rho=\pi\bigl(1-e^{-\rho^2}\bigr)
$$
である($-\frac12e^{-r^2}$ は $re^{-r^2}$ の原始関数であり、微分積分学の基本定理 の記事の定理「原始関数による積分の計算」を使った)。したがって
$$
\pi\bigl(1-e^{-R^2}\bigr)\le I(R)^2\le\pi\bigl(1-e^{-2R^2}\bigr)
$$
であり、$R\to\infty$ で両側は $\pi$ に収束するので $I(R)^2\to\pi$、$I(R)>0$ なので $I(R)\to\sqrt\pi$ である。
最後に広義積分との関係を確かめる。$e^{-x^2}$ は偶関数なので、$x\mapsto-x$ の置換により $\int_{-R}^0e^{-x^2}\,dx=\int_0^Re^{-x^2}\,dx=\frac12I(R)$ である。したがって $\int_0^Re^{-x^2}\,dx$ と $\int_{-R}^0e^{-x^2}\,dx$ はともに $R\to\infty$ で $\frac{\sqrt\pi}2$ に収束し、広義積分 $\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx$ と $\int_{-\infty}^0e^{-x^2}\,dx$ はともに収束して値は $\frac{\sqrt\pi}2$ である。その和が $\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}\,dx=\sqrt\pi$ である。$\square$
この証明では $e^{-x^2}$ の原始関数を使っていない。2 乗して平面の積分に直すと、極座標で因子 $r$ が現れて $re^{-r^2}$ の積分になり、原始関数 $-\frac12e^{-r^2}$ で計算できる。これが極座標の典型的な使い方である。変数を $x=t/\sqrt2$ と置換すると $\int_{-\infty}^\infty e^{-t^2/2}\,dt=\sqrt{2\pi}$ となり、これは正規分布の密度 $\frac1{\sqrt{2\pi}}e^{-t^2/2}$ の全積分が $1$ であることを意味する。
空間 $\mathbb{R}^3$ でも、極座標と同じ考え方の座標がある。
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