超平面配置

同義語:超平面アレンジメントhyperplane arrangement

概要

超平面配置(hyperplane arrangement)とは、体 $K$ 上のベクトル空間 $K^n$ の有限個のアフィン超平面の集まりである。超平面の交わりのなす半順序集合の Möbius 関数から特性多項式 $\chi_{\mathcal{A}}(t)$ を作ると、Whitney の公式により交わりが空でない部分集合の和で表され、$K$ が $q$ 元体なら $\chi_{\mathcal{A}}(q)$ はどの超平面にものらない点の個数に等しい。実数体上では、補集合の連結成分(領域)の個数が $(-1)^n\chi_{\mathcal{A}}(-1)$ に等しい(Zaslavsky の定理)。グラフから作る配置では特性多項式は彩色多項式で、領域は非巡回な向き付けに対応する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 超平面, アフィン部分空間, 半順序集合, 包除原理, 有限体, 連結成分

超平面配置とは、ベクトル空間の中の有限個のアフィン超平面の集まりである。平面の有限個の直線は平面をいくつかの領域に分け、空間の有限個の平面は空間を分ける。その領域の個数は直線・平面の位置関係だけで決まり、交わりの組合せから作る 特性多項式 $\chi_{\mathcal{A}}(t)$ の $t=-1$ での値で与えられる(Zaslavsky の定理)。同じ多項式は、有限体の上では超平面にのらない点の個数を数え、グラフから作る配置では彩色多項式に一致する。
この記事では、交わりの半順序集合と特性多項式を定義し、特性多項式を部分集合の和で表す Whitney の公式、有限体の上の点の数え上げ、削除と制限の漸化式、領域の個数についての Zaslavsky の定理を証明する。例として一般の位置にある配置、組紐配置、グラフの配置を扱い、領域と非巡回な向き付けの対応を示す。

定義

以下 $K$ を体、$V=K^n$ とする。

超平面配置

$\alpha\in K^n\setminus\{0\}$ と $a\in K$ によって $H=\{x\in V\mid\alpha\cdot x=a\}$ と書ける集合を アフィン超平面 といい、$\alpha$ をその法線ベクトルという($\alpha\cdot x=\sum_i\alpha_ix_i$)。$V$ のアフィン超平面の有限集合 $\mathcal{A}$ を 超平面配置(hyperplane arrangement)という。

  1. $\bigcap_{H\in\mathcal{A}}H\neq\emptyset$ のとき $\mathcal{A}$ は 中心的 であるという($\mathcal{A}=\emptyset$ も中心的とする)。部分集合 $\mathcal{B}\subset\mathcal{A}$ についても同様にいう。
  2. 法線ベクトルが張る部分空間の次元を $\mathcal{A}$ の 階数 $\operatorname{rank}\mathcal{A}$ という。
  3. $M(\mathcal{A}):=V\setminus\bigcup_{H\in\mathcal{A}}H$ を $\mathcal{A}$ の 補集合 という。$K=\mathbb{R}$ のとき、$M(\mathcal{A})$ の 連結成分 を $\mathcal{A}$ の 領域 といい、その個数を $r(\mathcal{A})$ と書く。
交わりの半順序集合と特性多項式

$\mathcal{A}$ の部分集合の交わりのうち空でないものの全体(空集合の交わり $V$ を含む)を $L(\mathcal{A})$ とし、$X\le Y\iff X\supset Y$(逆向きの包含)で 半順序集合 とみる。これを 交わりの半順序集合 という。$L(\mathcal{A})$ の元はアフィン部分空間なので次元 $\dim X$ をもつ。関数 $\mu:L(\mathcal{A})\to\mathbb{Z}$ を
$$ \mu(V)=1,\qquad\sum_{Y\in L(\mathcal{A}),\ Y\supset X}\mu(Y)=0\quad(X\neq V) $$
で定める($\dim X$ の大きい順に一意に決まる)。これは $L(\mathcal{A})$ の Möbius 関数 $\mu(V,X)$ である。
$$ \chi_{\mathcal{A}}(t):=\sum_{X\in L(\mathcal{A})}\mu(X)\,t^{\dim X} $$
を $\mathcal{A}$ の 特性多項式 という。

$\mu$ は数論の Möbius関数 とは別の関数だが、正の整数の整除関係の半順序で同じ形の漸化式を解くと、数論の Möbius 関数が得られる。

直線上の点と平面の直線
  1. $n=1$ で $\mathcal{A}$ が $K$ の相異なる $k$ 点のとき、$L(\mathcal{A})$ は $K$ と $k$ 個の点からなり、$\mu(\text{点})=-1$ なので $\chi_{\mathcal{A}}(t)=t-k$ である。$K=\mathbb{R}$ なら直線は $k+1$ 個の区間に分かれ、$r(\mathcal{A})=k+1=-\chi_{\mathcal{A}}(-1)$ である。
  2. $\mathbb{R}^2$ の 3 直線 $x=0$、$y=0$、$x+y=1$ では、$L(\mathcal{A})$ は平面・3 直線・3 交点で、交点 $X$ では $\mu(X)=-(1-1-1)=1$ である。$\chi_{\mathcal{A}}(t)=t^2-3t+3$ で、$\chi_{\mathcal{A}}(-1)=7$ は領域の個数(三角形の内部と外側の 6 つ)に等しい。
  3. 原点を通る 3 直線 $x=0$、$y=0$、$x+y=0$ では、交点は原点だけで $\mu(\{0\})=-(1-3)=2$、$\chi_{\mathcal{A}}(t)=t^2-3t+2$ で、$\chi_{\mathcal{A}}(-1)=6$ が領域の個数である。

Whitney の公式

Whitneyの公式

任意の体 $K$ 上の超平面配置 $\mathcal{A}$ について
$$ \chi_{\mathcal{A}}(t)=\sum_{\substack{\mathcal{B}\subset\mathcal{A}\\ \mathcal{B}\text{ は中心的}}}(-1)^{\lvert\mathcal{B}\rvert}\,t^{\dim\bigcap\mathcal{B}} $$
が成り立つ($\bigcap\emptyset=V$)。

交わりごとに部分集合をまとめる

$X\in L(\mathcal{A})$ について $\nu(X):=\sum_{\mathcal{B}:\,\bigcap\mathcal{B}=X}(-1)^{\lvert\mathcal{B}\rvert}$ とおくと、右辺は $\sum_X\nu(X)t^{\dim X}$ である。$\nu=\mu$ を示せばよい。$\mathcal{A}_X:=\{H\in\mathcal{A}\mid H\supset X\}$ とおく。$\bigcap\mathcal{B}\supset X$ は $\mathcal{B}\subset\mathcal{A}_X$ と同値で、そのとき $\bigcap\mathcal{B}$ は $X$ を含むので空でなく $L(\mathcal{A})$ に属する。よって
$$ \sum_{Y\supset X}\nu(Y)=\sum_{\mathcal{B}\subset\mathcal{A}_X}(-1)^{\lvert\mathcal{B}\rvert} $$
である。右辺は $\mathcal{A}_X=\emptyset$ なら $1$、そうでなければ二項定理により $(1-1)^{\lvert\mathcal{A}_X\rvert}=0$ である。$X=V$ なら $\mathcal{A}_X=\emptyset$(超平面は $V$ を含まない)で、$X\neq V$ なら $X$ は空でない $\mathcal{B}$ の交わりなので $\mathcal{A}_X\neq\emptyset$ である。こうして $\nu$ は $\mu$ と同じ漸化式をみたし、$\nu=\mu$ である。$\square$

係数の初めの 2 つ

$\chi_{\mathcal{A}}(t)=t^n-\lvert\mathcal{A}\rvert t^{n-1}+(\text{次数 }n-2\text{ 以下の項})$ である。

thm-ha-whitney で $\mathcal{B}=\emptyset$ は $t^n$ を、$\lvert\mathcal{B}\rvert=1$ は $-t^{n-1}$ を 1 つずつ与える。相異なる 2 つ以上の超平面の空でない交わりの次元は $n-2$ 以下である。$\square$

中心的な配置とマトロイド

$\mathcal{A}$ が中心的で $\operatorname{rank}\mathcal{A}=r$ のとき、$\mathcal{A}$ を台集合とし、$\mathcal{B}\subset\mathcal{A}$ の階数を法線ベクトルの張る空間の次元とする マトロイド を $\mathsf{M}_{\mathcal{A}}$ とすると、
$$ \chi_{\mathcal{A}}(t)=t^{\,n-r}\chi_{\mathsf{M}_{\mathcal{A}}}(t) $$
である。ここで $\chi_{M}$ は Heron–Rota–Welsh予想 の定義「マトロイドの特性多項式」の多項式である。

中心的な配置ではどの $\mathcal{B}$ も中心的で、$\bigcap\mathcal{B}$ は空でない連立 1 次方程式の解の集合なので $\dim\bigcap\mathcal{B}=n-\operatorname{rank}\mathcal{B}$ である。thm-ha-whitney の右辺は $\sum_{\mathcal{B}}(-1)^{\lvert\mathcal{B}\rvert}t^{n-\operatorname{rank}\mathcal{B}}=t^{n-r}\sum_{\mathcal{B}}(-1)^{\lvert\mathcal{B}\rvert}t^{r-\operatorname{rank}\mathcal{B}}$ となる。$\square$

この系と Heron–Rota–Welsh予想 の定理「Adiprasito–Huh–Katz の定理」から、中心的な配置の特性多項式の係数の絶対値の列は対数凹である。

有限体の上の点の個数

有限体の方法

$K=\mathbb{F}_q$ を $q$ 元体とし、$\mathcal{A}$ を $\mathbb{F}_q^n$ の超平面配置とすると
$$ \#M(\mathcal{A})=\#\Bigl(\mathbb{F}_q^n\setminus\bigcup_{H\in\mathcal{A}}H\Bigr)=\chi_{\mathcal{A}}(q) $$
である。

包除原理と Whitney の公式

包除原理 により $\#M(\mathcal{A})=\sum_{\mathcal{B}\subset\mathcal{A}}(-1)^{\lvert\mathcal{B}\rvert}\#\bigcap\mathcal{B}$ である。$\bigcap\mathcal{B}$ は空か、$\mathbb{F}_q$ 上の $\dim\bigcap\mathcal{B}$ 次元のアフィン部分空間なので $q^{\dim\bigcap\mathcal{B}}$ 個の点をもつ。よって右辺は thm-ha-whitney の右辺に $t=q$ を代入したものである。$\square$

$\mathbb{Q}$ 上の配置の係数を整数にそろえて素数 $p$ で還元すると、有限個の $p$ を除いて交わりの半順序集合は変わらず、その $p$ について $\chi_{\mathcal{A}}(p)$ は還元した配置の補集合の点の個数に等しい(Sta11 Proposition 3.11.9・Theorem 3.11.10)。特性多項式を計算するには、多くの素数 $p$ で点を数えれば足りる。

組紐配置とグラフの配置

有限グラフ $G=(\{1,\dots,n\},E)$(ループなし)について、超平面 $x_i=x_j$($\{i,j\}\in E$)の配置を $\mathcal{A}_G$ と書く。$G$ が完全グラフのとき 組紐配置 といい $\mathcal{B}_n$ と書く。

  1. $\chi_{\mathcal{A}_G}(t)=\sum_{F\subset E}(-1)^{\lvert F\rvert}t^{c(F)}=P_G(t)$ である。ここで $c(F)$ は $(\{1,\dots,n\},F)$ の連結成分の個数、$P_G$ は $G$ の 彩色多項式 である。とくに $\chi_{\mathcal{A}_G}$ は体 $K$ によらない。
  2. $\chi_{\mathcal{B}_n}(t)=t(t-1)(t-2)\cdots(t-n+1)$ である。

1:$\mathcal{A}_G$ は原点を含むので中心的で、$F\subset E$ に対応する交わりは「$F$ の各辺の両端で座標が等しい」点の集合、すなわち $F$ の各連結成分の上で座標が一定の点の集合で、次元は $c(F)$ である。thm-ha-whitney から 1 つめの等号を得る。右辺は $K$ によらないので $K=\mathbb{F}_p$($p$ は素数)で計算してよく、thm-ha-finite-field により $\chi_{\mathcal{A}_G}(p)$ は、隣接する頂点で値が異なる写像 $\{1,\dots,n\}\to\mathbb{F}_p$、すなわち $p$ 色の正しい塗り分けの個数 $P_G(p)$ である。2 つの多項式が無限個の素数で一致するので $\chi_{\mathcal{A}_G}=P_G$ である。
2:完全グラフの $p$ 色の正しい塗り分けは相異なる $n$ 個の値の列なので $p(p-1)\cdots(p-n+1)$ 個あり、1 と同じ理由で多項式として等しい。$\square$

1 の 1 つめの等号は Heron–Rota–Welsh予想 の定理「彩色多項式と特性多項式」の式と同じ形で、グラフ的マトロイドについての cor-ha-matroid にあたる。

削除と制限

$H_0\in\mathcal{A}$ を 1 つ選ぶ。$\mathcal{A}':=\mathcal{A}\setminus\{H_0\}$ を 削除、
$$ \mathcal{A}'':=\{H\cap H_0\mid H\in\mathcal{A}',\ H\cap H_0\neq\emptyset\} $$
を 制限 という。$H\neq H_0$ で $H\cap H_0\neq\emptyset$ なら $H\cap H_0$ は $H_0$ の中のアフィン超平面なので、$H_0$ をアフィン座標で $K^{n-1}$ と同一視すると、$\mathcal{A}''$ は $K^{n-1}$ の超平面配置である。異なる $H$ が同じ $H\cap H_0$ を与えることがあり、$\mathcal{A}''$ はその重なりを 1 つと数えた集合である。

削除と制限の漸化式

任意の体の上で $\chi_{\mathcal{A}}(t)=\chi_{\mathcal{A}'}(t)-\chi_{\mathcal{A}''}(t)$ である。

部分集合の和を 2 つに分ける

thm-ha-whitney の和を、$H_0\notin\mathcal{B}$ の部分と $H_0\in\mathcal{B}$ の部分に分ける。前者は $\chi_{\mathcal{A}'}(t)$ である。後者で $\mathcal{B}=\{H_0\}\cup\mathcal{C}$($\mathcal{C}\subset\mathcal{A}'$)と書く。$\mathcal{B}$ が中心的なら $\mathcal{C}$ の各元は $H_0$ と交わり、$\varphi(H):=H\cap H_0$ として $\bigcap\mathcal{B}=\bigcap_{H\in\mathcal{C}}\varphi(H)$ である。したがって後者は
$$ -\sum_{\substack{\mathcal{D}\subset\mathcal{A}''\\ \mathcal{D}\text{ は中心的}}}\Bigl(\sum_{\mathcal{C}:\ \varphi(\mathcal{C})=\mathcal{D}}(-1)^{\lvert\mathcal{C}\rvert}\Bigr)t^{\dim\bigcap\mathcal{D}} $$
となる($\mathcal{C}$ は $\varphi$ の定義される元からなる $\mathcal{A}'$ の部分集合、$\bigcap\mathcal{D}$ は $H_0$ の中でとり、$\bigcap\emptyset=H_0$)。$\varphi(\mathcal{C})=\mathcal{D}$ となる $\mathcal{C}$ は、各 $E\in\mathcal{D}$ について $\varphi^{-1}(E)$ の空でない部分集合を選んで合わせたものなので、内側の和は $\prod_{E\in\mathcal{D}}\bigl(\sum_{\emptyset\neq S\subset\varphi^{-1}(E)}(-1)^{\lvert S\rvert}\bigr)=\prod_{E\in\mathcal{D}}(0-1)=(-1)^{\lvert\mathcal{D}\rvert}$ である。よって後者は、$H_0\cong K^{n-1}$ の配置 $\mathcal{A}''$ に thm-ha-whitney を当てた $-\chi_{\mathcal{A}''}(t)$ である。$\square$

実超平面配置の領域

この節では $K=\mathbb{R}$ とする。各 $H\in\mathcal{A}$ に $H=\{\ell_H=0\}$ となる 1 次関数 $\ell_H(x)=\alpha\cdot x-a$ を 1 つ固定する。

領域は符号で決まる

$\sigma\in\{+1,-1\}^{\mathcal{A}}$ について $C_\sigma:=\{x\mid\sigma_H\ell_H(x)>0\ (H\in\mathcal{A})\}$ とおく。$\mathcal{A}$ の領域は、空でない $C_\sigma$ にちょうど一致する。とくに領域は凸な開集合である。

$C_\sigma$ は開半空間の共通部分なので凸な開集合で、とくに連結である。$M(\mathcal{A})$ は空でない $C_\sigma$ の非交和で、各 $C_\sigma$ の補集合($M(\mathcal{A})$ の中での)はほかの $C_\tau$ の和なので開である。よって各 $C_\sigma$ は $M(\mathcal{A})$ の中で開かつ閉な連結集合であり、連結成分である。$\square$

領域の個数の漸化式

$H_0\in\mathcal{A}$ について $r(\mathcal{A})=r(\mathcal{A}')+r(\mathcal{A}'')$ である。

$\mathcal{A}'$ の領域 $R$ が $H_0$ と交わらなければ、$R$ は $\mathcal{A}$ の領域でもある(lem-ha-regions-convex で $\ell_{H_0}$ の符号は $R$ の上で一定)。$R$ が $H_0$ と交われば、$R$ は凸な開集合なので $\ell_{H_0}>0$ の部分と $\ell_{H_0}< 0$ の部分はどちらも空でなく、$R$ は $\mathcal{A}$ の 2 つの領域に分かれる。よって $r(\mathcal{A})=r(\mathcal{A}')+N$ で、$N$ は $H_0$ と交わる $\mathcal{A}'$ の領域の個数である。
一方 $H_0\setminus\bigcup_{E\in\mathcal{A}''}E=H_0\setminus\bigcup_{H\in\mathcal{A}'}H$ は、$H_0$ と交わる $\mathcal{A}'$ の領域 $R$ についての $R\cap H_0$ の非交和である。各 $R\cap H_0$ は $H_0$ の中の凸な開集合なので、prf-lem-ha-regions-convex と同じ議論でこれらがちょうど $\mathcal{A}''$ の領域である。よって $N=r(\mathcal{A}'')$ である。$\square$

Zaslavskyの定理

$\mathbb{R}^n$ の超平面配置 $\mathcal{A}$ について
$$ r(\mathcal{A})=(-1)^n\chi_{\mathcal{A}}(-1) $$
が成り立つ。とくに領域の個数は交わりの半順序集合 $L(\mathcal{A})$ だけで決まる。

超平面の個数についての帰納法

$\mathcal{A}=\emptyset$ なら $r=1$、$\chi_{\mathcal{A}}(t)=t^n$ で成り立つ。$\lvert\mathcal{A}\rvert\ge1$ とし、超平面の個数がより少ない配置(次元は問わない)で主張が成り立つとする。$H_0\in\mathcal{A}$ をとると、$\mathcal{A}'$ と $H_0\cong\mathbb{R}^{n-1}$ の配置 $\mathcal{A}''$ はどちらも $\lvert\mathcal{A}\rvert$ より少ない超平面からなる。prop-ha-deletion-restriction と帰納法の仮定から
$$ (-1)^n\chi_{\mathcal{A}}(-1)=(-1)^n\chi_{\mathcal{A}'}(-1)+(-1)^{n-1}\chi_{\mathcal{A}''}(-1)=r(\mathcal{A}')+r(\mathcal{A}'') $$
で、lem-ha-region-recursion によりこれは $r(\mathcal{A})$ に等しい。$\square$

有界な領域の個数 $b(\mathcal{A})$ についても、$\mathcal{A}$ の法線ベクトルが $\mathbb{R}^n$ を張るとき $b(\mathcal{A})=(-1)^n\chi_{\mathcal{A}}(1)$ が成り立つ(Sta11 Theorem 3.11.7。法線ベクトルが張らないときは法線の張る部分空間に制限した領域で数える)。この記事では証明しない。

例

一般の位置にある配置

$\mathbb{R}^n$ の $m$ 個の超平面が 一般の位置 にある、すなわち $p\le n$ 個の交わりは常に $n-p$ 次元で、$p>n$ 個の交わりは空であるとする。thm-ha-whitney で中心的な $\mathcal{B}$ はちょうど $\lvert\mathcal{B}\rvert\le n$ のものなので
$$ \chi_{\mathcal{A}}(t)=\sum_{p=0}^n(-1)^p\binom mp t^{n-p},\qquad r(\mathcal{A})=\sum_{p=0}^n\binom mp $$
である。平面の $m$ 本の直線(どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない)は平面を $1+m+\binom m2$ 個の領域に分ける。$n=1$ なら ex-ha-small の 1 になる。

領域と非巡回な向き付け

ループのない有限グラフ $G$ の配置 $\mathcal{A}_G\subset\mathbb{R}^n$(ex-ha-braid-graphic)の領域は、$G$ の非巡回な向き付け(有向閉路のない辺の向き付け)と 1 対 1 に対応する。したがって非巡回な向き付けの個数は $(-1)^nP_G(-1)$ である。とくに $r(\mathcal{B}_n)=n!$ である。

lem-ha-regions-convex により、領域は $x_i-x_j$($\{i,j\}\in E$)の符号の組で決まる。領域 $R$ に、$R$ の上で $x_i< x_j$ なら辺を $i\to j$ と向ける向き付け $o(R)$ を対応させる。$o(R)$ に有向閉路 $i_1\to i_2\to\cdots\to i_k\to i_1$ があれば $x_{i_1}< x_{i_2}< \cdots< x_{i_1}$ となり矛盾するので、$o(R)$ は非巡回的である。異なる領域は符号の組が異なるので $o$ は単射である。逆に非巡回な向き付けには、すべての辺が番号の小さい頂点から大きい頂点へ向くような頂点の番号づけ(位相的整列)がある(有向非巡回グラフ の定理「有向非巡回グラフの言い換え」)。頂点 $i$ の番号を $x_i$ とした点は、その向きに対応する符号の組の領域に属するので、$o$ は全射である。後半は thm-ha-zaslavsky と ex-ha-braid-graphic の 1 から従う。完全グラフの非巡回な向き付けは頂点の全順序と 1 対 1 に対応するので $n!$ 個である。$\square$

この個数の公式は Stanley による(Sta73 Corollary 1.3)。削除と縮約による別の証明は 彩色多項式 の定理「非巡回な向き付けの個数(Stanley の定理)」にある。$\chi_{\mathcal{B}_n}(-1)=(-1)^nn!$ と合っている。

反例と注意

外す条件反例成り立たなくなること
体が $\mathbb{R}$$\mathbb{C}$ の 1 点 $\{0\}$補集合 $\mathbb{C}\setminus\{0\}$ は連結だが $(-1)^1\chi(-1)=2$。Zaslavsky の定理の「領域の個数」の読みは成り立たない
還元で交わりが変わらない$\mathbb{Q}$ の 2 点 $\{0,10\}$ を $p=5$ で還元$\chi(t)=t-2$ だが $\mathbb{F}_5$ では $0=10$ で、補集合は $4\neq\chi(5)=3$ 点
超平面(余次元 1)$\mathbb{R}^3$ の直線 $\ell$ 1 本交わりの半順序集合 $\{\mathbb{R}^3,\ell\}$ から同じ式で $\chi(t)=t^3-t$ とすると $(-1)^3\chi(-1)=0$ だが、補集合は連結で領域は 1 つ
反例の確認

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1 行目:$\mathcal{A}=\{\{0\}\}$ は $\mathbb{C}$ の超平面配置で、$\chi(t)=t-1$、$-\chi(-1)=2$ である。$\mathbb{C}\setminus\{0\}$ は弧状連結なので連結成分は 1 つである。thm-ha-finite-field と thm-ha-whitney は任意の体で成り立つが、lem-ha-regions-convex は実数の順序を使う。

2 行目:$\mathbb{Q}$ 上で $L(\mathcal{A})=\{\mathbb{Q},\{0\},\{10\}\}$、$\chi(t)=t-2$ である。$\mathbb{F}_5$ に還元すると 2 点が重なり、配置は 1 点だけになる(Sta11 §3.11.4 の例)。補集合は $5-1=4$ 点である。thm-ha-finite-field は還元した配置の特性多項式 $t-1$ については成り立っている。

3 行目:$\mu(\mathbb{R}^3)=1$、$\mu(\ell)=-1$ なので $\chi(t)=t^3-t$、$(-1)^3\chi(-1)=-(-1+1)=0$ である。一方 $\mathbb{R}^3\setminus\ell$ は弧状連結である(2 点を、$\ell$ を避ける折れ線で結べる)。lem-ha-regions-convex と lem-ha-region-recursion は、超平面が空間を 2 つの側に分けることを使っている。

補足

  • 係数の符号.$\chi_{\mathcal{A}}$ の係数の符号は交互に変わる(Sta11 §3.11.2)。したがって thm-ha-zaslavsky は、係数の絶対値の和が領域の個数であることを言っている。
  • 数え上げの相反.$\chi_{\mathcal{A}}$ の正の整数での値(有限体の上の点の個数)と $-1$ での値(領域の個数)が両方意味をもつことは、Ehrhart多項式 の相反定理とよく似た現象である。

関連項目

参考文献

[2]
Richard P. Stanley, Acyclic orientations of graphs, Discrete Mathematics 5 (1973), 1973, Corollary 1.3(非巡回な向き付けの個数)。再録版 p. 907

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