円錐曲線(conic section)とは、体 $K$ 上の射影平面 $\mathbb{P}^2(K)$ で、3 変数の $0$ でない斉次 2 次式 $Q$ の零点として定まる曲線であり、実数の場合のアフィン平面での姿が楕円・放物線・双曲線である。標数が $2$ でなければ $Q$ は対角化でき、行列が正則な非退化な円錐曲線は、代数閉体の上ではすべて射影同値で、実数の上では実点をもつかどうかで 2 種類に分かれる。有理点を 1 つもつ非退化な円錐曲線は、その点を通る直線ともう 1 つの交点の対応で射影直線と 1 対 1 に対応し、$y^2=xz$ と射影同値になる。実アフィン平面の楕円・放物線・双曲線は無限遠直線との交点の個数 $0,1,2$ で区別され、どの 3 点も一直線上にない 5 点を通る円錐曲線はただ 1 つである。
楕円・放物線・双曲線は、円錐を平面で切った切り口として古代ギリシャで研究され、円錐曲線 と呼ばれた(高校数学では 円錐の切り口としての2次曲線)。座標で書けば、どれも $x,y$ の 2 次方程式 $ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+g=0$ で表される曲線である(2次曲線と2次形式)。大学の数学では、平面に無限遠直線を付け加えた 射影平面 の中で、斉次 2 次式の零点として円錐曲線を考える。すると 3 種類の曲線は 1 種類の曲線になり、違いは無限遠直線との交わり方だけになる。係数を一般の体にとると、円錐曲線は数論や代数幾何学の対象にもなる。
この記事では、体の上の円錐曲線を定義し、射影的な分類、有理点を 1 つもつ非退化な円錐曲線が射影直線と 1 対 1 に対応すること、実数の場合の楕円・放物線・双曲線の分類、5 点を通る円錐曲線の存在と一意性を証明する。
以下、$K$ は標数が $2$ でない体とする。$\mathbb{P}^2(K)$ の点を斉次座標 $[x:y:z]$ で表し、$0$ でない列ベクトル $X=(x,y,z)^{\top}\in K^3$ の表す点を $[X]$ と書く。
3 変数の斉次 2 次式(2次形式)$Q$ は、ただ 1 つの 3 次対称行列 $A$ によって $Q(X)=X^{\top}AX$ と書ける(2次形式 の記事の命題「2次形式と対称行列の対応」)。$F(X,Y):=X^{\top}AY$ を $Q$ に付随する対称な双線形形式という。$Q(X)=F(X,X)$ であり、
$$
Q(sX+tY)=s^2Q(X)+2st\,F(X,Y)+t^2Q(Y)
$$
が成り立つ。$Q(\lambda X)=\lambda^2Q(X)$ なので、$Q(X)=0$ かどうかは点 $[X]$ だけで決まる。
$0$ でない斉次 2 次式 $Q$ を、$0$ でない定数倍の違いを同一視して考えたものを、$\mathbb{P}^2(K)$ の 円錐曲線(conic)または 2 次曲線 という。体の拡大 $L\supset K$ について
$$
C(L):=\bigl\{[X]\in\mathbb{P}^2(L)\bigm|Q(X)=0\bigr\}
$$
を $C$ の $L$ 値点 の集合といい、$C(K)$ の元を $C$ の 有理点($K$ 有理点)という。行列 $A$ が正則なとき、すなわち $F$ が非退化なとき、$C$ は 非退化 であるといい、そうでないとき 退化 しているという。
点の集合 $C(K)$ ではなく式 $Q$ で円錐曲線を定めるのは、$C(K)$ が空になりうるからである(ex-con-examples の 3)。
正則行列 $M\in\mathrm{GL}_3(K)$ による写像 $[X]\mapsto[MX]$ を $\mathbb{P}^2(K)$ の 射影変換 という。2 つの円錐曲線 $Q$ と $Q'$ について、正則行列 $M$ と $c\in K^{\times}$ で $Q'(X)=c\,Q(MX)$ となるものがあるとき、$Q$ と $Q'$ は 射影同値 であるという。行列で書くと $A'=c\,M^{\top}AM$ である。
射影変換 $[X]\mapsto[M^{-1}X]$ は $Q$ の点を $Q'$ の点に移す。射影変換は斉次座標の取り替えと同じことである。
接線と極線:非退化な円錐曲線 $C$ と点 $[P]\in\mathbb{P}^2(K)$ について、直線 $\{[X]\mid F(P,X)=0\}$ を $[P]$ の 極線(polar)という($F$ が非退化なので $F(P,-)$ は $0$ でない線形形式であり、この集合は直線である)。$[P]\in C(K)$ のとき、$F(P,P)=Q(P)=0$ なので極線は $[P]$ を通り、これを $[P]$ における $C$ の 接線 という。接線が $C$ と $[P]$ だけで交わることは、一般には thm-con-parametrization の証明の段 1 で示す($\mathbb{R}$ 上の円の場合は 双線形形式 の記事の例「円の極線と接線」で計算されている)。
アフィン平面の 2 次曲線:$K^2$ を $[x:y:1]$ によって $\mathbb{P}^2(K)$ から無限遠直線 $L_\infty=\{z=0\}$ を除いた部分とみなす(射影平面 の記事の命題「射影平面は平面と無限遠直線に分かれる」)。$Q$ の $z=1$ での値
$$
f(x,y):=Q(x,y,1)=ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+g
$$
の零点は $C(K)\cap K^2$ であり、逆に $K^2$ の 2 次方程式 $f=0$ から $Q(x,y,z)=z^2f(x/z,y/z)$ を作れば円錐曲線が得られる。$K=\mathbb{R}$ で、$f=0$ が適当な アフィン変換 によって
$$
x^2+y^2=1,\qquad y=x^2,\qquad x^2-y^2=1
$$
に移るとき、それぞれ 楕円・放物線・双曲線 という。高校数学の標準形 $\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$、$y^2=4px$、$\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1$ は座標の拡大・入れ替えでこれらに移るので、この定義は高校数学の定義(位置と大きさを除く)と一致する。
射影平面では、楕円・放物線・双曲線は「円をどこから見るか」の違いにすぎない。円錐の頂点に光源を置くと、円錐の切り口はどれも円の影であり(円錐の切り口としての2次曲線 の例「円を頂点から別の平面に映す」)、影を映す平面が円錐の母線と平行になる方向の分だけ、曲線は無限遠に逃げる。無限遠直線と交わらなければ楕円、接すれば放物線、2 点で交われば双曲線である(thm-con-affine)。
円錐曲線は 2 次式で定まるので、直線と高々 2 点で交わる。有理点 $P$ を 1 つ知っていれば、$P$ を通る直線にもう 1 つの交点を対応させて、円錐曲線の点を直線の傾きで数え上げられる(thm-con-parametrization)。
$\mathbb{Q}$ 上の円錐曲線 $x^2+y^2=3z^2$ は有理点をもたない。一方、$\mathbb{R}$ 上では $[\sqrt3:0:1]$ などの点をもつ。
有理点 $[x:y:z]$ があったとする。分母を払い、最大公約数で割って、$x,y,z$ は最大公約数が $1$ の整数としてよい。平方数を $3$ で割った余りは $0$ か $1$ なので、$x^2+y^2\equiv0\pmod 3$ となるのは $x\equiv y\equiv0\pmod3$ のときに限る。すると $9\mid x^2+y^2=3z^2$ なので $3\mid z^2$、したがって $3\mid z$ となり、最大公約数が $1$ であることに反する。$\square$
$a,b\in K^{\times}$ について、円錐曲線 $ax^2+by^2=z^2$ が有理点をもつことは、四元数環 $(a,b)_K$ が行列環 $M_2(K)$ と同型であることと同値である(四元数環 の記事の定理「分裂の判定」)。$x^2+y^2=3z^2$ は $\frac13x^2+\frac13y^2=z^2$ と同じ円錐曲線なので、prop-con-no-rational-point は $(\frac13,\frac13)_{\mathbb{Q}}$ が斜体であることを意味する。このように、有理点をもたない非退化な円錐曲線は、1 次元の Severi–Brauer多様体 の最初の例である。
4 の 2 つの標準形は、2次形式 の記事の定理「実2次形式の係数の符号の不変性」にいう符号数 $(3,0)$ と $(2,1)$ に当たる。$x^2+y^2-z^2$ は $u=z+x$、$w=z-x$ とおくと $uw=y^2$ になるので、ex-con-examples の 1 の円と 2 の放物線は射影同値である。代数閉体の場合も同じ置き換え($x^2+y^2+z^2$ で $z$ を $iz$ に替える)で $y^2=xz$ の形に移る。
$C$ を $K$ 上の非退化な円錐曲線($Q$、$F$ は上のとおり)とし、有理点 $[P]\in C(K)$ を 1 つとる。
段 1(交点の計算)。$[P]$ を通る直線は、$[D]\ne[P]$ となる点を 1 つとれば $\{[sP+tD]\mid[s:t]\in\mathbb{P}^1(K)\}$ と書け、$[s:t]$ と直線上の点が 1 対 1 に対応する。$Q(P)=0$ なので
$$
Q(sP+tD)=t\bigl(2s\,F(P,D)+t\,Q(D)\bigr)
$$
である。$F(P,D)=Q(D)=0$ とすると、$F$ は $P$ と $D$ の張る 2 次元部分空間 $U$ の上で恒等的に $0$ になり $U\subset U^{\perp}$ となるが、$F$ は非退化なので 双線形形式 の記事の定理「直交補空間と直和分解」により $\dim U^{\perp}=3-2=1$ であり、矛盾する。よって $\bigl(F(P,D),Q(D)\bigr)\ne(0,0)$ で、上の 2 次式の根は $t=0$(点 $[P]$)と $[s:t]=[-Q(D):2F(P,D)]$ の 2 つ(重複を込めて)であり、後者は点
$$
R:=-Q(D)\,P+2F(P,D)\,D
$$
を表す。$R$ は $K$ の元で書けるので有理点である。$[R]=[P]$ となるのは $F(P,D)=0$、すなわち $D$ が $[P]$ の極線の上にあり、直線が接線 $T_P$ であるときに限る。これで 1 が示せた。
段 2(全単射)。$[R]\in C(K)$、$[R]\ne[P]$ に対し直線 $PR$ は $T_P$ と異なり($T_P\cap C=\{[P]\}$ だから)、段 1 によりこの直線に対応する点は $[R]$ である。$[P]$ には $T_P$ を対応させる。この対応が 2 の写像の逆写像になるので、2 の写像は全単射である。$[P]$ を通る直線の全体は、$[P]$ を通らない 1 本の直線 $m$ との交点によって $m$ の点の全体、すなわち $\mathbb{P}^1(K)$ と 1 対 1 に対応する。
段 3(標準形)。$T_P$ と異なる $[P]$ を通る直線($\mathbb{P}^1(K)$ は 3 点以上を含むのでとれる)に段 1 を使い、$[P]$ と異なる有理点 $[P']$ をとる。$[P']\notin T_P$ なので $c:=F(P,P')\ne0$ である。2 つの 1 次方程式 $F(P,U)=F(P',U)=0$ の $0$ でない解 $U\in K^3$ をとる。$U=\alpha P+\beta P'$ と書けたとすると $0=F(P,U)=\beta c$、$0=F(P',U)=\alpha c$ となって $U=0$ となるので、$P,U,P'$ は $K^3$ の基底である。$d:=Q(U)$ が $0$ なら $U$ は $P,U,P'$ のすべてと直交し、$F$ の核に入るので、$d\ne0$ である。この基底では $F$ の行列は
$$
\begin{pmatrix}0&0&c\\0&d&0\\c&0&0\end{pmatrix},\qquad Q(xP+yU+zP')=dy^2+2cxz
$$
であり、$P'$ を $-\frac{d}{2c}P'$ に替えると $Q(xP+yU+zP')=d(y^2-xz)$ となる。基底の取り替えは射影変換なので、$C$ は $y^2=xz$ と射影同値である。
最後に、$y^2=xz$ の点 $[x:y:z]$ で $x\ne0$ なら $[x:y:z]=[x^2:xy:xz]=[x^2:xy:y^2]$ で $s=x$、$t=y$ とおけばよく、$x=0$ なら $y=0$ で、点は $[0:0:1]$($s=0$、$t=1$)である。逆に $[s^2:st:t^2]$ から、$s\ne0$ なら $[s:t]=[s^2:st]$、$s=0$ なら $[0:1]$ として $[s:t]$ が復元できる。$\square$
円 $x^2+y^2=z^2$ と点 $P=[-1:0:1]$ に段 1 を使うと、$P$ を通る傾き $t$ の直線 $y=t(x+1)$ との交点は
$$
\Bigl(\frac{1-t^2}{1+t^2},\ \frac{2t}{1+t^2}\Bigr)
$$
であり、$t=n/m$($m,n$ は整数)とおいて分母を払うと、$(m^2-n^2)^2+(2mn)^2=(m^2+n^2)^2$ が得られる。2 により、単位円の有理点はすべてこの形(と $P$ 自身)で尽くされる。整数の解の分類は ピタゴラス数 の記事の定理「原始ピタゴラス数の分類」で扱う。3 の全単射は代数多様体としての同型 $C\cong\mathbb{P}^1$ を与える(Severi–Brauer多様体 の記事の命題「有理点をもつ滑らかな円錐曲線」)。とくに $K$ が代数閉体なら非退化な円錐曲線はつねに有理点をもち、$\mathbb{P}^1$ と同型である。有限体 $\mathbb{F}_q$($q$ は奇数)の上でも、非退化な円錐曲線はつねに有理点をもつ。thm-con-classification の 1 で対角化し、定数倍して $ax^2+by^2=z^2$ の形にすると、集合 $\{ax^2\mid x\in\mathbb{F}_q\}$ と $\{1-by^2\mid y\in\mathbb{F}_q\}$ はどちらも $\frac{q+1}2$ 個の元をもつ($0$ と $\frac{q-1}2$ 個の平方数)ので共通の元があり、有理点 $[x:y:1]$ が得られるからである(GS06 Example 1.3.6、p. 8)。このとき 2 により $|C(\mathbb{F}_q)|=q+1$ である。
実数の場合、thm-con-classification の 4 により、実点をもつ非退化な円錐曲線は射影平面ではすべて同じ形をしている。アフィン平面 $\mathbb{R}^2$ に見える部分の違いは、無限遠直線 $L_\infty$ との交わり方だけで決まる。
$C$ を $\mathbb{R}$ 上の非退化な円錐曲線で、$C(\mathbb{R})\cap\mathbb{R}^2\ne\emptyset$ を満たすものとし、$f(x,y)=Q(x,y,1)$ とする。$C(\mathbb{R})\cap L_\infty$ の点の個数を $k$ とすると $k\in\{0,1,2\}$ であり、曲線 $f=0$ は、$k=0$ なら楕円 $x^2+y^2=1$、$k=1$ なら放物線 $y=x^2$、$k=2$ なら双曲線 $x^2-y^2=1$ に、アフィン変換で移る。この 3 つは互いにアフィン変換で移り合わない。
$f(v)=v^{\top}A_0v+2\beta^{\top}v+g$($v=(x,y)^{\top}$、$A_0$ は 2 次の対称行列、$\beta\in\mathbb{R}^2$)と書くと、$Q$ の行列は $A=\begin{pmatrix}A_0&\beta\\\beta^{\top}&g\end{pmatrix}$ である。
段 1(不変性)。アフィン変換 $v\mapsto Mv+w$ は射影変換 $\begin{pmatrix}M&w\\0&1\end{pmatrix}$ の $\mathbb{R}^2$ への制限であり(アフィン変換 の記事の命題「アフィン群は半直積」の後の行列表示)、この射影変換は $L_\infty$ を $L_\infty$ に移す。よって $k$ はアフィン変換で変わらない。$C(\mathbb{R})\cap L_\infty$ は $Q(x,y,0)=v^{\top}A_0v=0$ の解であり、$x^2+y^2=z^2$、$yz=x^2$、$x^2-y^2=z^2$ ではそれぞれ $x^2+y^2=0$(解なし)、$x^2=0$($[0:1:0]$ だけ)、$x^2=y^2$($[1:1:0]$ と $[1:-1:0]$)なので、3 つの標準形の $k$ は $0,1,2$ であり、互いに移り合わない。
段 2($A_0\ne0$)。$A_0=0$ なら $Q=z(2\beta^{\top}v+gz)$ は 2 つの 1 次式の積で、行列の階数は $2$ 以下になり非退化性に反する。
段 3($\det A_0\ne0$ の場合)。$v=u-A_0^{-1}\beta$ と平行移動すると、$f=u^{\top}A_0u+g'$($g':=g-\beta^{\top}A_0^{-1}\beta$)となる。この平行移動の行列 $N=\begin{pmatrix}I&-A_0^{-1}\beta\\0&1\end{pmatrix}$ について $N^{\top}AN=\operatorname{diag}(A_0,g')$ なので、$\det A=g'\det A_0$ であり、$g'\ne0$ である。$A_0$ を 2次形式 の記事の定理「平方完成による対角化」で対角化すると、線形変換の後で $f=\lambda_1u_1^2+\lambda_2u_2^2+g'$($\lambda_1\lambda_2\ne0$)となる。$-g'$ で割り、$|\lambda_i/g'|$ の平方根で座標を拡大すると、$f=0$ は $\pm u_1^2\pm u_2^2=1$ になる。実点があるので符号は $(+,+)$、$(+,-)$、$(-,+)$ のどれかで、最後の 2 つは座標の入れ替えで移り合う。前者が楕円、後者が双曲線である。
段 4($\det A_0=0$ の場合)。段 2 により $A_0$ の階数は $1$ で、線形変換により $v^{\top}A_0v=\lambda x^2$($\lambda\ne0$)としてよい。このとき $f=\lambda x^2+2\beta_1x+2\beta_2y+g$ で、$\det A=-\lambda\beta_2^2$ なので非退化性から $\beta_2\ne0$ である。$x':=x+\beta_1/\lambda$、$y':=-\bigl(2\beta_2y+g-\beta_1^2/\lambda\bigr)/\lambda$ とおくと、$(x,y)\mapsto(x',y')$ は $\beta_2\ne0$ によりアフィン変換であり、$f=\lambda(x'^2-y')$ となる。よって $f=0$ は放物線 $y'=x'^2$ に移る。
段 1 により、段 3 の楕円・双曲線と段 4 の放物線の場合の $k$ はそれぞれ $0,2,1$ であり、定理の主張が従う。$\square$
無限遠点の個数 $k$ は、2 次の部分 $ax^2+bxy+cy^2$ が $\mathbb{P}^1(\mathbb{R})$ にもつ零点の個数なので、判別式 $b^2-4ac$ が負・$0$・正に応じて $0,1,2$ である。高校数学の「判別式による 2 次曲線の分類」(2次曲線と2次形式)は、こうして射影平面での交わりの数として読める。双曲線の 2 つの無限遠点は漸近線の方向であり、放物線は無限遠直線に軸の方向で接している。
斉次 2 次式は 6 個の係数をもつので、円錐曲線の全体は $\mathbb{P}^5(K)$ と 1 対 1 に対応し、1 点を通るという条件は係数についての 1 次方程式である。したがって 5 点を通る円錐曲線はつねに存在する。一般の位置の 5 点ではそれがただ 1 つに決まる。
$\mathbb{P}^2(K)$ の 5 点で、どの 3 点も一直線上にないものを通る円錐曲線は、ただ 1 つ存在し、それは非退化である。
段 1(座標の取り替え)。5 点を $[v_1],\dots,[v_5]$ とする。$v_1,v_2,v_3$ は同じ直線上にないので $K^3$ の基底であり、$v_4=\alpha v_1+\beta v_2+\gamma v_3$ と書ける。$\alpha=0$ なら $[v_4]$ は $[v_2]$ と $[v_3]$ を通る直線上にあるので、仮定から $\alpha\beta\gamma\ne0$ である。基底 $\alpha v_1,\beta v_2,\gamma v_3$ を座標に使う射影変換で、4 点は $[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[0:0:1]$、$[1:1:1]$ に移る。$[v_5]$ の移った先を $[p:q:r]$ とする。$[p:q:r]$ は直線 $x=0$、$y=0$、$z=0$(最初の 3 点のうち 2 点を通る直線)の上になく、直線 $y=z$、$x=z$、$x=y$($[1:1:1]$ と最初の 3 点の 1 つを通る直線)の上にもないので、$p,q,r$ は $0$ でなく、どの 2 つも等しくない。
段 2(一意性と存在)。$Q=\sum_{i\le j}a_{ij}x_ix_j$ が $[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[0:0:1]$ で $0$ になることは $x^2,y^2,z^2$ の係数が $0$ であることと同値なので、$Q=\alpha yz+\beta xz+\gamma xy$ である。$[1:1:1]$ と $[p:q:r]$ を通る条件は
$$
\alpha+\beta+\gamma=0,\qquad qr\,\alpha+pr\,\beta+pq\,\gamma=0
$$
である。係数のベクトル $(1,1,1)$ と $(qr,pr,pq)$ が比例するのは $qr=pr=pq$、すなわち $p=q=r$ のときに限るので、2 つの方程式は独立であり、解 $(\alpha,\beta,\gamma)$ の全体は 1 次元である。よって 5 点を通る円錐曲線はただ 1 つ存在する。
段 3(非退化)。この円錐曲線が退化していれば、thm-con-classification の 2 により $\overline K$ 上で 2 本以下の直線の和であり、5 点のうち 3 点が同じ直線上にあることになって仮定に反する。$\square$
条件を外すと結論が崩れる。各行は 1 つの条件だけを破る。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 5 点(thm-con-five-points) | 4 点 $[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[0:0:1]$、$[1:1:1]$ | 通る円錐曲線は $\alpha yz+\beta xz+\gamma xy$($\alpha+\beta+\gamma=0$)の全体で、ただ 1 つに決まらない |
| どの 3 点も一直線上にない(thm-con-five-points) | $[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[1:1:0]$、$[0:0:1]$、$[1:1:1]$(最初の 3 点が $z=0$ 上) | 通る円錐曲線は $z(x-y)$ だけで、退化している |
| 非退化(thm-con-parametrization) | $x^2-y^2$ と $[P]=[0:0:1]$ | $[P]$ を通る直線は $C$ に含まれるか $[P]$ だけで交わり、直線と点の対応は全単射にならない |
| 有理点をもつ(thm-con-parametrization) | $\mathbb{Q}$ 上の $x^2+y^2=3z^2$ | $C(\mathbb{Q})=\emptyset$ で、$\mathbb{P}^1(\mathbb{Q})$ と 1 対 1 に対応しない(prop-con-no-rational-point) |
2 行目で円錐曲線が $z(x-y)$ だけであることは、$Q(x,y,0)$ が $z=0$ 上の 3 点で $0$ になるので恒等的に $0$ になり、$Q=z\cdot(\text{1 次式})$ となって、その 1 次式が $[0:0:1]$ と $[1:1:1]$ を通ることから分かる。
非退化な円錐曲線では、点にその極線を対応させる写像は点の全体から直線の全体への全単射である($P\mapsto F(P,-)$ が双対空間への同型だから)。$F$ は対称なので、「$[R]$ が $[P]$ の極線上にある」ことと「$[P]$ が $[R]$ の極線上にある」ことは同じ条件 $F(P,R)=0$ である。とくに $[R]\in C(K)$ での接線が $[P]$ を通ることは、$[R]$ が $[P]$ の極線上にあることと同値であり、外の点 $[P]$ から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ直線が $[P]$ の極線である(円の接線と極線 の一般化)。
平面曲線としての円錐曲線と、円錐曲線の全体が $\mathbb{P}^5$ をなすことは Ful08 §5.1–5.2(pp. 53–55)、非退化な円錐曲線が代数閉体上で $YZ=X^2$ に限ることは同 Problem 5.9(pp. 54–55)、5 点を通る円錐曲線は Problems 5.17–5.18(p. 57)、円錐曲線が $\mathbb{P}^1$ と同型であることとピタゴラス数は Problem 6.37(p. 78)にある。円錐曲線 $ax^2+by^2=z^2$ と四元数環の分裂の関係は GS06 §1.3、Proposition 1.3.2(p. 7)、有理点をもつ滑らかな円錐曲線が $\mathbb{P}^1$ と同型であることは同 Remark 1.3.5(p. 8)にある。
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