Stein多様体

同義語:シュタイン多様体Stein manifold

概要

Stein多様体(Stein manifold)とは、正則凸であり、大域正則関数が点を分離し、各点で大域正則関数が局所座標を与える複素多様体のことで、$\mathbb{C}^n$ の正則領域を一般化したものである。Stein 多様体は、大域正則関数の絶対値の 2 乗の和として、強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数をもち、逆にそのような関数をもつ複素多様体は Stein である(Grauert)。このため正の次元のコンパクトな複素部分多様体を含まない。連接解析層の高次コホモロジーが消え(Cartan の定理)、$n$ 次元なら $\mathbb{C}^{2n+1}$ の閉複素部分多様体として埋め込める。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 複素多様体, 正則関数, 多重劣調和関数, Stein空間, 正則領域, ∂̄方程式のL²評価

Stein 多様体は、大域的な正則関数が十分に豊富な複素多様体である。$\mathbb{C}^n$ の正則領域を、$\mathbb{C}^n$ に埋め込まれていない複素多様体へ広げた概念で、K. Stein が 1951 年に導入した(Hor90 第 V 章の Notes、p. 153;GR79 Introduction、pp. XVII–XVIII)。特異点を許す一般化が Stein空間 であり、Stein 多様体はその中で複素多様体であるものにあたる。定義と、閉部分多様体・直積・超曲面の補集合などの基本的な例は Stein空間 にあるので、この記事は多様体に特有の理論、とくに多重劣調和関数による特徴づけを扱う。
中心になるのは次の事実である。複素多様体が Stein であることは、強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数、すなわち各点で Levi 形式が正定値で、すべての部分レベル集合 $\{\varphi< c\}$ が相対コンパクトになる関数をもつことと同値である。Stein 多様体がこの関数をもつことは、大域正則関数の絶対値の 2 乗の和として直接作れる(thm-stein-manifold-exhaustion、この記事で証明する)。逆向きは Levi 問題の多様体版で、Grauert が解き、$\bar\partial$ 方程式の $L^2$ 評価を使って証明される(thm-stein-manifold-grauert、この記事では証明しない)。この特徴づけから、Stein 多様体は正の次元のコンパクトな複素部分多様体を含まないことが従う。また尽くし関数を重みに使うと、$\bar\partial$ 方程式がつねに解け、構造層の正の次数のコホモロジーが消えることを示せる(thm-stein-manifold-l2、cor-stein-manifold-vanishing)。

定義

この記事で複素多様体とは、Hausdorff で、可算個のコンパクト集合 $L_1\subset L_2\subset\cdots$ で各コンパクト集合がどれかの $L_j$ に含まれるものがある(無限遠で可算である)ものとする。$\Omega$ 上の正則関数の環を $\mathcal{O}(\Omega)$ と書き、コンパクト集合 $K\subset\Omega$ の正則凸包を
$$ \widehat{K}_\Omega:=\Bigl\{z\in\Omega\ \Bigm|\ |f(z)|\le\sup_K|f|\ \text{ for all }f\in\mathcal{O}(\Omega)\Bigr\} $$
とする(Stein空間 の定義「正則凸包と正則凸性」)。$\widehat K_\Omega$ は閉集合で、定義から $\sup_{\widehat K_\Omega}|f|=\sup_K|f|$ なので $\widehat{(\widehat K_\Omega)}_\Omega=\widehat K_\Omega$ であり、$K\subset K'$ なら $\widehat K_\Omega\subset\widehat{K'}_\Omega$ である。正則凸包のこれ以外の性質と、正則凸性の点列による言い換えは 正則凸包 で扱う。

Stein 多様体

$n$ 次元の複素多様体 $\Omega$ が Stein 多様体(Stein manifold)であるとは、次の 3 条件を満たすことをいう。

  1. (正則凸性)任意のコンパクト集合 $K\subset\Omega$ について $\widehat K_\Omega$ はコンパクトである。
  2. (点の分離)相異なる 2 点 $x\ne y$ に対し、$f(x)\ne f(y)$ となる $f\in\mathcal{O}(\Omega)$ がある。
  3. (局所座標)各点 $z\in\Omega$ に対し、$z$ での局所座標系をなす $f_1,\dots,f_n\in\mathcal{O}(\Omega)$ がある。

これは Hor90 Definition 5.1.3(p. 116)であり、複素多様体については Stein空間 の定義「Stein 空間」と同じ条件である(同記事の定義の後の説明)。条件 2 は条件 1・3 から従う(Hor90 Corollary 5.2.12、p. 129。この記事では証明しない)。

強多重劣調和関数と尽くし関数

複素多様体 $\Omega$ 上の実数値 $C^2$ 級関数 $\varphi$ と、点 $z$ のまわりの局所座標 $(z_1,\dots,z_n)$ について、Levi 形式を
$$ \mathcal{L}_\varphi(z;\xi):=\sum_{l,m=1}^n\frac{\partial^2\varphi}{\partial z_l\,\partial\bar z_m}(z)\,\xi_l\bar\xi_m\qquad(\xi\in\mathbb{C}^n) $$
とする(多重劣調和関数 の定義「Levi 形式」)。正則な座標変換で $\xi$ は Jacobi 行列で移り、Levi 形式の値は変わらない(同記事の補題「正則写像についての連鎖律」)。

強多重劣調和関数と尽くし関数

$\varphi\colon\Omega\to\mathbb{R}$ を $C^2$ 級関数とする。

  1. 各点 $z$ で $\mathcal{L}_\varphi(z;\xi)>0$($\xi\ne0$)のとき、$\varphi$ は強多重劣調和(strictly plurisubharmonic)であるという。
  2. すべての $c\in\mathbb{R}$ について $\{z\in\Omega\mid\varphi(z)< c\}$ が $\Omega$ の中で相対コンパクト(閉包がコンパクト)のとき、$\varphi$ は尽くし関数(exhaustion function)であるという。

$\mathcal{L}_\varphi\ge0$ なら $\varphi$ は多重劣調和で(多重劣調和関数 の定理「$C^2$ 級の関数の多重劣調和性の判定」)、とくに正則な円板 $t\mapsto\gamma(t)$ に制限した $\varphi\circ\gamma$ は劣調和である。$\mathbb{C}^n$ の $|z|^2=\sum_l|z_l|^2$ は Levi 形式が $|\xi|^2$ の強多重劣調和な尽くし関数である。

主定理:強多重劣調和な尽くし関数

Stein 多様体の強多重劣調和な尽くし関数

$\Omega$ を $n\ge1$ 次元の Stein 多様体、$K\subset\Omega$ を空でないコンパクト集合、$\omega$ を $\widehat K_\Omega$ の開近傍とする。このとき $C^\infty$ 級関数 $\varphi\colon\Omega\to\mathbb{R}$ で、次を満たすものがある。

  1. $\varphi$ は強多重劣調和である。
  2. $K$ の上で $\varphi<0$、$\Omega\setminus\omega$ の上で $\varphi>0$ である。
  3. $\varphi$ は尽くし関数である。
仮定と所在

$\omega$ は $K$ ではなく $\widehat K_\Omega$ の近傍でなければならない(ex-stein-manifold-counterexamples の 2)。証明では定義の条件 2(点の分離)を使わない。定理は Hor90 Theorem 5.1.6(pp. 117–118)で、証明の筋もそれによる。

段 1(凸包の増大列).$\Omega$ は無限遠で可算で局所コンパクトなので、コンパクト集合の列 $L_1\subset L_2\subset\cdots$ で、どのコンパクト集合もある $L_j$ に含まれるものがある。$K_1:=\widehat K_\Omega$ とし、$K_j$ まで決めたら、$K_j\cup L_j$ を内部に含むコンパクト集合 $N_j$ をとって $K_{j+1}:=\widehat{(N_j)}_\Omega$ とおく。条件 1 により各 $K_j$ はコンパクトで、
$$ \widehat{(K_j)}_\Omega=K_j,\qquad K_j\subset\operatorname{int}K_{j+1},\qquad L_j\subset K_{j+1} $$
である。とくに $\bigcup_j\operatorname{int}K_j=\Omega$ で、コンパクト集合はどれもある $K_j$ に含まれる。開集合 $\omega_j$ を、$K_j\subset\omega_j$、閉包 $\overline{\omega_j}$ がコンパクトで $\overline{\omega_j}\subset\operatorname{int}K_{j+1}$、さらに $\omega_1\subset\omega$ となるようにとる。
段 2(各段の関数).$A_j:=K_{j+2}\setminus\omega_j$ はコンパクトで $K_j$ と交わらない。$\zeta\in A_j$ は $\widehat{(K_j)}_\Omega=K_j$ に属さないので、$|f(\zeta)|>\sup_{K_j}|f|$ となる $f\in\mathcal{O}(\Omega)$ があり、定数倍して $\sup_{K_j}|f|<1<|f(\zeta)|$ とできる。$\{|f|>1\}$ の形の開集合で $A_j$ を覆い、有限個 $g_1,\dots,g_r$ を選ぶ。$\max_i|g_i|$ は連続なので、$K_j$ の上で $\max_i|g_i|\le c<1$、$A_j$ の上で $\max_i|g_i|\ge d>1$ となる $c,d$ がある。自然数 $N$ を大きくとれば、$g_i^N$ たちについて
$$ \sum_i|g_i^N|^2\le r\,c^{2N}<2^{-j-1}\ \ (K_j\text{ の上}),\qquad\sum_i|g_i^N|^2\ge d^{2N}>j\ \ (A_j\text{ の上}) $$
となる。さらに条件 3 により、各点 $x\in K_j$ に、$x$ の近傍で局所座標をなす $n$ 個の大域正則関数がある。局所座標をなすこと(Jacobi 行列式が $0$ でないこと)は開条件なので、$K_j$ はそのような近傍の有限個で覆え、対応する有限個の関数に小さな $0$ でない定数を掛けて、それらの絶対値の 2 乗の和を $K_j$ の上で $2^{-j-1}$ 未満にできる。定数倍は局所座標であることを保つ。$g_i^N$ たちとこれらを合わせて $f_{j,1},\dots,f_{j,k_j}$ とすると、
$$ \sum_k|f_{j,k}|^2<2^{-j}\ \ (K_j\text{ の上}),\qquad\sum_k|f_{j,k}|^2>j\ \ (A_j\text{ の上}) $$
であり、$K_j$ の各点で $f_{j,1},\dots,f_{j,k_j}$ のうち $n$ 個が局所座標をなす。
段 3(和の収束と滑らかさ).$\varphi:=\sum_{j\ge1}\sum_{k=1}^{k_j}|f_{j,k}|^2-1$ とおく。コンパクト集合 $C$ はある $K_J$ に含まれ、$j\ge J$ なら $C\subset K_j$ で $\sum_k|f_{j,k}|^2<2^{-j}$ なので、級数は $C$ の上で一様に収束する。滑らかさを見るため、座標近傍を $\mathbb{C}^n$ の開集合 $U$ と同一視し、$U^*:=\{\bar w\mid w\in U\}$ の上で
$$ \Psi(z,w):=\sum_{j,k}f_{j,k}(z)\,\overline{f_{j,k}(\bar w)}\qquad((z,w)\in U\times U^*) $$
とおく。各項は $(z,w)$ について正則で、$|f_{j,k}(z)\overline{f_{j,k}(\bar w)}|\le\frac12\bigl(|f_{j,k}(z)|^2+|f_{j,k}(\bar w)|^2\bigr)$ だから、級数は $U\times U^*$ のコンパクト集合の上で一様に収束する。よって $\Psi$ は正則(正則領域 の命題「多変数の正則関数の基本事項」の 5)、とくに $C^\infty$ 級であり、$\varphi(z)=\Psi(z,\bar z)-1$ も $C^\infty$ 級である。正則関数の広義一様極限では偏導関数も項別に収束するので(Cauchy の評価式による。多重円板 の系「Cauchy の評価式と Liouville の定理」)、連鎖律により
$$ \frac{\partial^2\varphi}{\partial z_l\,\partial\bar z_m}(z)=\frac{\partial^2\Psi}{\partial z_l\,\partial w_m}(z,\bar z)=\sum_{j,k}\frac{\partial f_{j,k}}{\partial z_l}(z)\,\overline{\frac{\partial f_{j,k}}{\partial z_m}(z)} $$
である。
段 4(強多重劣調和性).段 3 から
$$ \mathcal{L}_\varphi(z;\xi)=\sum_{j,k}\Bigl|\sum_{l=1}^n\xi_l\,\frac{\partial f_{j,k}}{\partial z_l}(z)\Bigr|^2 $$
である。$z$ はある $K_j$ に属し、$f_{j,1},\dots,f_{j,k_j}$ のうち $n$ 個が $z$ で局所座標をなすので、その $n$ 個の Jacobi 行列は正則であり、$\xi\ne0$ なら内側の和のどれかが $0$ でない。よって $\mathcal{L}_\varphi(z;\xi)>0$ である。
段 5(符号と尽くし性).$K\subset K_1\subset K_j$(すべての $j$)なので、$K$ の上で $\sum_{j,k}|f_{j,k}|^2<\sum_j2^{-j}=1$、すなわち $\varphi<0$ である。次に、$z\notin\omega_j$ なら $\varphi(z)>j-1$ であることを示す。$m\ge j$ を $z\in K_{m+2}$ となる最小のものとする。$m=j$ なら $z\in A_j$ である。$m>j$ なら $z\notin K_{m+1}\supset\omega_m$ なので $z\in A_m$ である。いずれの場合も $\varphi(z)>m-1\ge j-1$ である。$j=1$ とすると、$\Omega\setminus\omega\subset\Omega\setminus\omega_1$ の上で $\varphi>0$ である。また $c\in\mathbb{R}$ に対し $j\ge c+1$ をとれば $\{\varphi< c\}\subset\omega_j$ であり、$\overline{\omega_j}$ はコンパクトなので $\varphi$ は尽くし関数である。$\square$

逆向き:Grauert の定理

Grauert の定理(強多重劣調和な尽くし関数による特徴づけ)

複素多様体 $\Omega$ が Stein 多様体であるための必要十分条件は、強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数が存在することである。

証明の所在

必要性は thm-stein-manifold-exhaustion である。十分性は Levi 問題の多様体版で、H. Grauert による(Hor90 第 V 章の Notes、p. 153)。この記事では証明しない。Hor90 Theorem 5.2.10(pp. 127–129)は、$\varphi$ を重みに使った $\bar\partial$ 方程式の $L^2$ 評価(∂̄方程式のL²評価 の方法を多様体に広げたもの)で、$\{\varphi\le c\}$ の近くの正則関数を $\Omega$ 上の正則関数で近似する定理(同 Theorem 5.2.8、p. 126)を示し、それを使って定義の 3 条件を確かめている。

$\mathbb{C}^n$ の開集合 $U$ では、Stein 多様体であることは、正則凸であること(座標関数が条件 2・3 を与える)、各連結成分が正則領域であること、擬凸であることと同値である(正則領域 の節「補足:Stein 空間」・節「擬凸領域との一致(Levi 問題)」、擬凸領域)。

帰結:コンパクトな複素部分多様体

強多重劣調和関数とコンパクトな部分多様体

複素多様体 $X$ に強多重劣調和な $C^2$ 級関数 $\varphi$ があるとする。このとき $X$ は、正の次元のコンパクトな複素部分多様体を含まない。とくに、Stein 多様体は正の次元のコンパクトな複素部分多様体を含まない。

$Y\subset X$ を $m\ge1$ 次元のコンパクトな複素部分多様体とする。$\varphi|_Y$ は連続なので、ある点 $y_0\in Y$ で最大値をとる。$y_0$ のまわりの $X$ の局所座標 $(z_1,\dots,z_n)$ を、$y_0$ が原点で、$y_0$ の近くで $Y=\{z_{m+1}=\cdots=z_n=0\}$ となるようにとる(Hor90 Definition 5.1.4、p. 116 の意味の部分多様体)。小さな $t\in\mathbb{C}$ について $g(t):=\varphi(t,0,\dots,0)$ とおくと、$(t,0,\dots,0)\in Y$ なので $g$ は $t=0$ で極大になる。$t=s+iu$ とすると、$C^2$ 級関数の極大点では $\partial^2g/\partial s^2\le0$、$\partial^2g/\partial u^2\le0$ なので
$$ 0\ge\frac{\partial^2g}{\partial s^2}(0)+\frac{\partial^2g}{\partial u^2}(0)=4\frac{\partial^2g}{\partial t\,\partial\bar t}(0)=4\frac{\partial^2\varphi}{\partial z_1\,\partial\bar z_1}(y_0)=4\,\mathcal{L}_\varphi(y_0;e_1) $$
である($e_1=(1,0,\dots,0)$)。これは強多重劣調和性 $\mathcal{L}_\varphi(y_0;e_1)>0$ に反する。後半は thm-stein-manifold-exhaustion による。$\square$

後半は、条件 2 と最大値原理からも直接分かる。コンパクトな連結複素多様体の上の正則関数は定数なので(Stein空間 の例「反例:コンパクトな複素多様体」)、$Y$ の正の次元の連結成分の 2 点を大域正則関数で分離できない。

例

基本的な Stein 多様体
  1. $\mathbb{C}^n$ と $\mathbb{C}^n$ の正則領域は Stein 多様体である(正則領域 の節「補足:Stein 空間」)。とくに凸な領域と多重円板は Stein である(同記事の系「Cartan–Thullen の定理の帰結」)。
  2. Stein 多様体の閉複素部分多様体、2 つの Stein 多様体の直積、Stein 多様体 $\Omega$ と $h\in\mathcal{O}(\Omega)$ に対する $\{h\ne0\}$ は Stein 多様体である(Stein空間 の命題「閉解析的部分空間は Stein である」「直積と正則関数の非零集合」)。たとえば $(\mathbb{C}^*)^n$ や、多項式の零点集合として定まる $\mathbb{C}^N$ の非特異な部分多様体は Stein である。
  3. 非コンパクトな連結 Riemann 面は Stein 多様体である(H. Behnke と K. Stein による。GR79 第 V 章 §1.5、p. 134)。
強多重劣調和な尽くし関数の例
  1. $\mathbb{C}^n$ では $\varphi(z)=|z|^2$ が強多重劣調和な尽くし関数である。
  2. $(\mathbb{C}^*)^n$ では $\varphi(z)=\sum_l\bigl(|z_l|^2+|z_l|^{-2}\bigr)$ がそうである。$|z_l|^{-2}=|1/z_l|^2$ で $1/z_l$ は正則なので、Levi 形式は $\sum_l\bigl(1+|z_l|^{-4}\bigr)|\xi_l|^2>0$ であり(正則関数 $h$ について $\partial^2|h|^2/\partial z_l\partial\bar z_m=\partial_lh\,\overline{\partial_mh}$ である)、$\varphi< c$ なら各 $|z_l|$ が $c^{-1/2}\le|z_l|\le c^{1/2}$ を満たすので $\{\varphi< c\}$ は相対コンパクトである。
正則凸だが Stein でない多様体

$X:=\mathbb{C}\times\mathbb{P}^1$($\mathbb{P}^1$ は Riemann球面)とする。$X$ は定義の条件 1 を満たすが、条件 2・3 を満たさず、Stein 多様体でない。
$F\in\mathcal{O}(X)$ とすると、各 $z\in\mathbb{C}$ について $w\mapsto F(z,w)$ はコンパクトな連結複素多様体 $\mathbb{P}^1$ の上の正則関数なので定数である。よって $F(z,w)=F(z,w_0)$ は $z$ だけの関数である。コンパクト集合 $K\subset X$ について、$R:=\sup_{(z,w)\in K}|z|$ とすると、$z$ を $\mathcal{O}(X)$ の元とみて $\widehat K_X\subset\{|z|\le R\}\times\mathbb{P}^1$ であり、右辺はコンパクト、$\widehat K_X$ は閉なのでコンパクトである。一方 $(0,w_1)$ と $(0,w_2)$($w_1\ne w_2$)はどの $F$ でも分離されず、どの点でも $\mathcal{O}(X)$ の元の微分は $w$ 方向に $0$ なので局所座標が作れない。$\{0\}\times\mathbb{P}^1$ は 1 次元のコンパクトな複素部分多様体であり、prop-stein-manifold-compact-sub により $X$ には強多重劣調和な $C^2$ 級関数そのものがない。

反例:仮定を外した場合

外す条件反例成り立たなくなること
正則凸性(定義の条件 1)$X=\mathbb{C}^2\setminus\{0\}$強多重劣調和な尽くし関数の存在
$\omega$ が $\widehat K_\Omega$ の近傍$\Omega=\mathbb{C}$、$K=\{\lvert z\rvert=1\}$、$\omega=\{1/2<\lvert z\rvert<2\}$$K$ で負、$\Omega\setminus\omega$ で正の連続な多重劣調和関数の存在
反例の確かめ
  1. $X=\mathbb{C}^2\setminus\{0\}$ は条件 2・3 を満たし(座標関数)、条件 1 を満たさない(Stein空間 の命題「原点を除いた $\mathbb{C}^2$ の正則関数と第 1 コホモロジー」)。$X$ に連続な多重劣調和な尽くし関数 $\varphi$ があったとする。$\{\varphi< c\}$ の閉包は $X$ のコンパクト集合で原点から離れているので、$z\to0$ のとき $\varphi(z)\to\infty$ である。$M:=\max\{\varphi(z)\mid|z_1|=1,\ |z_2|\le1\}$ とおく。$0<|\varepsilon|\le1$ を固定すると、$t\mapsto\varphi(t,\varepsilon)$ は $\mathbb{C}$ 上の連続な劣調和関数である。閉円板の上の連続な劣調和関数の最大値は境界でとられる(内部でとれば、劣調和関数 の定理「劣調和関数の最大値原理」により開円板の上で定数になり、連続性から境界でも同じ値をとる)ので、 $\varphi(0,\varepsilon)\le\max_{|t|=1}\varphi(t,\varepsilon)\le M$ である。$\varepsilon\to0$ とすると $\varphi(0,\varepsilon)\to\infty$ に反する。よって $X$ には強多重劣調和な尽くし関数がない。
  2. $\mathbb{C}$ は Stein で、$\widehat K_{\mathbb{C}}$ は閉単位円板である(最大値原理)。$\omega$ は $K$ の近傍だが $\widehat K_{\mathbb{C}}$ の近傍でない。$K$ で負、$\mathbb{C}\setminus\omega$(とくに $0$)で正の連続な多重劣調和関数($n=1$ では劣調和関数)$\varphi$ があれば、1 と同じ最大値原理により $\varphi(0)\le\max_K\varphi<0$ となり矛盾する。

$\bar\partial$ 方程式の可解性

Stein 多様体の上では、∂̄方程式のL²評価 の Hörmander の方法がそのまま使え、$\bar\partial$ 閉な形式はつねに $\bar\partial$ の像になる。必要なのは強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数だけで、それは thm-stein-manifold-exhaustion が与える。$\mathbb{C}^n$ の場合との違いは、Hermite 計量が平坦でないために基本等式に 0 階の誤差項が出ることである。この誤差は重みを十分速く増やして吸収する。
記号.$\Omega$ を $n$ 次元の複素多様体($n\ge1$)、$E$ を $\Omega$ 上の階数 $N$ の正則ベクトル束とし、$E$ に Hermite 計量 $H$ を、$\Omega$ に Hermite 計量 $g$(正則接空間 $T^{1,0}_z\Omega$ の正定値 Hermite 内積で、$z$ について $C^\infty$ 級のもの)をとる。どちらも局所的な計量を 1の分割 で貼り合わせて作れる。$E$ に値をとる $(0,r)$ 形式の各点のノルム $|f|$ を $H$ と $g$ から定め、$dV$ を $g$ の定める体積要素とする。$(p,r)$ 形式は束 $\Lambda^pT^{*1,0}\Omega$ に値をとる $(0,r)$ 形式とみなせ、この同一視で $(p,r)$ 形式の $\bar\partial$ は、符号 $(-1)^p$ を除いて $E=\Lambda^pT^{*1,0}\Omega$ に値をとる形式の $\bar\partial$(Dolbeaultの定理 の定理「Dolbeault の定理」の 2 の $\bar\partial_E$)に一致する。係数が局所 2 乗可積分な形式の $\bar\partial$ は、局所座標と $E$ の正則な局所枠で成分ごとに超関数の意味でとる。実数値の $C^\infty$ 級関数 $\varphi$ について、$\|f\|_\varphi^2:=\int_\Omega|f|^2e^{-\varphi}dV<\infty$ となる可測な形式の空間 $L^2_{(0,r)}(\Omega,E,\varphi)$ は Hilbert 空間である。$\varphi$ の Levi 形式の $g$ に関する最小固有値を
$$ \lambda_\varphi(z):=\min\bigl\{\mathcal{L}_\varphi(z;\xi)\bigm|\xi\in T^{1,0}_z\Omega,\ |\xi|_g=1\bigr\} $$
とする($\xi=\sum_l\xi_l\,\partial/\partial z_l$ と書いて $\mathcal{L}_\varphi(z;\xi)$ を定義の式で計算する)。$\lambda_\varphi$ は $z$ について連続である。

強多重劣調和な尽くし関数をもつ多様体の上の $L^2$ 存在定理

$\Omega$ を強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数 $\sigma$ をもつ $n$ 次元の複素多様体($n\ge1$)、$E$ を Hermite 計量 $H$ をもつ $\Omega$ 上の正則ベクトル束とする。このとき $\Omega$ の Hermite 計量 $g$ と連続関数 $A\colon\Omega\to[0,\infty)$ で、次の 1・2 を満たすものがある。

  1. $\varphi$ を $\Omega$ 上の実数値 $C^\infty$ 級関数で、各点で $\lambda_\varphi\ge A$ を満たすものとし、$0\le q\le n-1$ とする。$E$ に値をとる $(0,q+1)$ 形式 $f$ が $\|f\|_\varphi<\infty$ と $\bar\partial f=0$ を満たせば、$\bar\partial u=f$、$\|u\|_\varphi\le\|f\|_\varphi$ となる $E$ に値をとる $(0,q)$ 形式 $u$ がある。
  2. 係数が局所 2 乗可積分な形式 $f$ に対し、$C^\infty$ 級の凸増加関数 $\chi\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ で、$\varphi:=\chi\circ\sigma$ が $\lambda_\varphi\ge A$ と $\|f\|_\varphi<\infty$ を満たすものがある。
    とくに、係数が局所 2 乗可積分で $\bar\partial f=0$ を満たす $E$ に値をとる $(0,q+1)$ 形式 $f$ に対し、$\bar\partial u=f$ となる係数が局所 2 乗可積分な $u$ がある。Stein 多様体はこの定理の仮定を満たす(thm-stein-manifold-exhaustion)。
所在と証明の筋

Hor90 Theorem 5.2.4(p. 125)と Theorem 5.6.1(p. 148)である。証明は同 §5.2 の Lemma 5.2.1・5.2.2(pp. 120–121)、評価 (5.2.10)(pp. 122–124)、Theorem 5.2.3(p. 125)の筋による。∂̄方程式のL²評価 の $\mathbb{C}^n$ の場合は 3 つの重みで切り落としの誤差を吸収したが、ここでは計量 $g$ を大きくとって切り落とし関数の微分を $1$ 以下にし、1 つの重みで済ませる。

要点:局所的な正規直交枠で $\bar\partial$ とその形式的な随伴を書くと、$\mathbb{C}^n$ の基本等式が 0 階の誤差項を除いて成り立つ。誤差は重み $\varphi$ によらない連続関数で押さえられ、1 の分割で貼り合わせると $\int(\lambda_\varphi-C_0)|f|^2e^{-\varphi}dV\le4(\|\vartheta_\varphi f\|_\varphi^2+\|\bar\partial f\|_\varphi^2)$ を得る。あとは $\mathbb{C}^n$ の場合と同じく、滑らかな形式の稠密性と Hilbert 空間の補題で解を作る。

段 1〜3(計量・局所枠・局所的な評価)を開く

段 1(計量と切り落とし).$\kappa\colon\mathbb{R}\to[0,1]$ を、$(-\infty,\frac13]$ で $1$、$[\frac23,\infty)$ で $0$ の $C^\infty$ 級関数とし、$\eta_\nu:=\kappa(\sigma-\nu)$($\nu=1,2,\dots$)とおく。$\eta_\nu$ の台は、相対コンパクトな $\{\sigma<\nu+1\}$ に含まれる閉集合 $\{\sigma\le\nu+\frac23\}$ に含まれるのでコンパクトであり、$\eta_\nu$ は開集合 $\{\sigma<\nu+\frac13\}$ の上で $1$ である。コンパクト集合 $L$ の上で $\sigma$ は最大値をとるので、$\nu$ が大きければ $\eta_\nu$ は $L$ の近傍で $1$ である。Hermite 計量 $g_0$ を 1 つとり、$c_\kappa:=\sup|\kappa'|$、$M:=1+c_\kappa(1+|\bar\partial\sigma|_{g_0}^2)$ とおく。$M$ は $C^\infty$ 級で、$a\le1+a^2$ から $|\bar\partial\eta_\nu|_{g_0}=|\kappa'(\sigma-\nu)|\,|\bar\partial\sigma|_{g_0}\le M$ である。$g:=M^2g_0$ とすると 1 次形式のノルムは $1/M$ 倍になるので、すべての $\nu$ について $|\bar\partial\eta_\nu|_g\le1$ である。以下この $g$ を使う。$\sigma$ は強多重劣調和なので、$m:=\lambda_\sigma$ は正の連続関数である。

段 2(局所枠での表示).$U$ を、正則座標をもち、その上に $E$ の正則な枠がある開集合とする。$dz_1,\dots,dz_n$ に Gram–Schmidt の直交化を各点で施して、$g$ について各点で正規直交な $C^\infty$ 級の $(1,0)$ 形式 $\theta_1,\dots,\theta_n$ を作り、双対な $(1,0)$ 型のベクトル場を $e_1,\dots,e_n$ とする($\theta_j(e_k)=\delta_{jk}$)。同じく $E$ の正則な枠から、$H$ について正規直交な $C^\infty$ 級の枠 $s_1,\dots,s_N$ を作る。$E$ に値をとる $(0,r)$ 形式を $f=\sum_\alpha\sum'_Jf_{\alpha J}\,s_\alpha\otimes\bar\theta_J$($f_{\alpha J}$ は $J$ について反対称に拡張する)と書くと、$|f|^2=\sum_\alpha\sum'_J|f_{\alpha J}|^2$ である。関数 $w$ について $dw=\sum_j(e_jw)\theta_j+\sum_j(\bar e_jw)\bar\theta_j$ であり、$D_jw:=\bar e_jw$、$\delta_jw:=e_jw-(e_j\varphi)w$ とおく。$s_\alpha$ は正則な枠の $C^\infty$ 級関数を係数とする 1 次結合なので $\bar\partial s_\alpha=\sum_\beta s_\beta\otimes\omega_{\beta\alpha}$($\omega_{\beta\alpha}$ は滑らかな $(0,1)$ 形式)と書ける。これと $\bar\partial\bar\theta_J$ から出る項をまとめると$$\bar\partial f=\sum_\alpha\sum{}'_J\sum_{j}(D_jf_{\alpha J})\,s_\alpha\otimes\bar\theta_j\wedge\bar\theta_J+R_1f$$である。ここで $R_1$ は $U$ 上の $C^\infty$ 級の係数をもつ 0 階の作用素で、$\varphi$ によらない。

ベクトル場 $X$ の発散 $\operatorname{div}X$ を $\mathcal{L}_X(dV)=(\operatorname{div}X)\,dV$($\mathcal{L}_X$ は Lie 微分)で定めると、台がコンパクトな $C^1$ 級関数 $F$ について $\int X(F)\,dV=-\int(\operatorname{div}X)F\,dV$ である(Stokesの定理)。$c_j:=\operatorname{div}e_j$、$d_j:=\operatorname{div}\bar e_j$ とおく。台が $U$ のコンパクト集合に含まれる滑らかな関数 $a,b$ について、$\varphi$ が実数値であることから $e_j(a\bar be^{-\varphi})=(\delta_ja)\bar be^{-\varphi}+a\overline{D_jb}e^{-\varphi}$、$\bar e_j(a\bar be^{-\varphi})=(D_ja)\bar be^{-\varphi}+a\overline{\delta_jb}e^{-\varphi}$ なので、$$\int(\delta_ja)\bar b\,e^{-\varphi}dV=-\int a\overline{D_jb}\,e^{-\varphi}dV-\int c_j\,a\bar b\,e^{-\varphi}dV,\qquad\int(D_ja)\bar b\,e^{-\varphi}dV=-\int a\overline{\delta_jb}\,e^{-\varphi}dV-\int d_j\,a\bar b\,e^{-\varphi}dV$$である。台がコンパクトな滑らかな形式の内積 $(\bar\partial u,f)_\varphi$ を係数で書いて 2 つ目の式を使うと、$\bar\partial$ の形式的な随伴 $\vartheta_\varphi$($(\bar\partial u,f)_\varphi=(u,\vartheta_\varphi f)_\varphi$ を満たすもの)は$$(\vartheta_\varphi f)_{\alpha K}=-\sum_j\delta_jf_{\alpha,jK}+(R_2f)_{\alpha K}$$と書ける。$R_2$ も $\varphi$ によらない 0 階の作用素である($-\sum_j\bar d_jf_{\alpha,jK}$ と、$R_1$ の各点の随伴からなる)。

交換子 $[\bar e_k,e_j]$ を枠で $\sum_m(\gamma^m_{kj}e_m+\tau^m_{kj}\bar e_m)$ と書き、$e_j=\sum_le^l_j\,\partial/\partial z_l$ として、$\varphi$ の Levi 形式の枠での係数を $\varphi_{j\bar k}:=\sum_{l,l'}\frac{\partial^2\varphi}{\partial z_l\partial\bar z_{l'}}\,e^l_j\,\overline{e^{l'}_k}$ とする。$|\sum_jt_je_j|_g=|t|$ なので $\sum_{j,k}\varphi_{j\bar k}t_j\bar t_k=\mathcal{L}_\varphi(z;\sum_jt_je_j)\ge\lambda_\varphi|t|^2$ である。$\bar e_k(e_j\varphi)=\sum_{l,l'}\overline{e^{l'}_k}\,\frac{\partial}{\partial\bar z_{l'}}\bigl(e^l_j\frac{\partial\varphi}{\partial z_l}\bigr)=\varphi_{j\bar k}+\sum_l(\bar e_ke^l_j)\frac{\partial\varphi}{\partial z_l}$ で、最後の和は $[\bar e_k,e_j]$ の $(1,0)$ 部分 $\sum_l(\bar e_ke^l_j)\,\partial/\partial z_l=\sum_m\gamma^m_{kj}e_m$ を $\varphi$ に施したものである。よって関数 $w$ について$$[D_k,\delta_j]w=[\bar e_k,e_j]w-\bar e_k(e_j\varphi)\,w=\sum_m\gamma^m_{kj}\,\delta_mw+\sum_m\tau^m_{kj}\,D_mw-\varphi_{j\bar k}\,w$$である。$\varphi$ の 1 階微分は $\delta_m$ の中に入り、ほかには $\varphi$ によらない係数だけが残る。

段 3(局所的な評価).$L\subset U$ をコンパクト集合とする。$\varphi$ によらない定数 $C_L$ があって、$\lambda_\varphi\ge0$ を満たすすべての実数値 $C^\infty$ 級関数 $\varphi$ と、台が $L$ に含まれるすべての滑らかな $(0,q+1)$ 形式 $f$ について$$\int\lambda_\varphi|f|^2e^{-\varphi}dV\le2\bigl(\|\vartheta_\varphi f\|_\varphi^2+\|\bar\partial f\|_\varphi^2\bigr)+C_L\|f\|_\varphi^2$$となることを示す。以下 $C$ は $L$ と枠だけによる定数を表す。$(\vartheta^0_\varphi f)_{\alpha K}:=-\sum_j\delta_jf_{\alpha,jK}$、$\bar\partial^0f:=\sum_\alpha\sum'_J\sum_j(D_jf_{\alpha J})\,s_\alpha\otimes\bar\theta_j\wedge\bar\theta_J$、$|Df|^2:=\sum_\alpha\sum'_J\sum_j|D_jf_{\alpha J}|^2$ とおく。段 2 の表示は $\vartheta_\varphi f=\vartheta^0_\varphi f+R_2f$、$\bar\partial f=\bar\partial^0f+R_1f$ ということなので $\|\vartheta^0_\varphi f\|_\varphi^2\le2\|\vartheta_\varphi f\|_\varphi^2+C\|f\|_\varphi^2$、$\|\bar\partial^0f\|_\varphi^2\le2\|\bar\partial f\|_\varphi^2+C\|f\|_\varphi^2$ である。枠は正規直交なので各点の計算は ∂̄方程式のL²評価 の補題「Morrey–Kohn–Hörmander の基本等式」の証明の 2 つ目の等式と同じで、$|\bar\partial^0f|^2=|Df|^2-\sum_\alpha\sum'_K\sum_{j,k}D_jf_{\alpha,kK}\,\overline{D_kf_{\alpha,jK}}$ である。

$a:=f_{\alpha,jK}$、$b:=f_{\alpha,kK}$ とし、段 2 の 1 つ目の部分積分、交換子の式 $D_j\delta_kb=\delta_kD_jb+\sum_m\gamma^m_{jk}\delta_mb+\sum_m\tau^m_{jk}D_mb-\varphi_{k\bar j}b$、2 つ目の部分積分を順に使うと、$\overline{\varphi_{k\bar j}}=\varphi_{j\bar k}$ から(積分はすべて $e^{-\varphi}dV$ についてとる)$$\int\delta_ja\,\overline{\delta_kb}=-\int a\,\overline{D_j\delta_kb}-\int c_ja\overline{\delta_kb}=\int D_ka\,\overline{D_jb}+\int\varphi_{j\bar k}\,a\bar b+E_{jk},$$$$E_{jk}:=\int d_ka\overline{D_jb}-\sum_m\int\overline{\gamma^m_{jk}}\,a\,\overline{\delta_mb}-\sum_m\int\overline{\tau^m_{jk}}\,a\,\overline{D_mb}-\int c_ja\overline{\delta_kb}$$である。$E_{jk}$ のうち $\overline{\delta_mb}$ を含む項は、2 つ目の部分積分により、滑らかな関数 $h$ について $-\int ha\overline{\delta_mb}=\int hD_ma\,\bar b+\int\bigl(D_mh+d_mh\bigr)a\bar b$ と書き直せる。$\varphi$ の微分は残らないので、$|E_{jk}|\le C\int(|a||Db|+|Da||b|+|a||b|)e^{-\varphi}dV$ である。$\alpha,K,j,k$ について和をとり、$|\bar\partial^0f|^2$ の式を積分して足すと、2 つの交差項は $j,k$ を入れ替えると打ち消し合うので$$\|\vartheta^0_\varphi f\|_\varphi^2+\|\bar\partial^0f\|_\varphi^2=\int\sum_\alpha\sum{}'_K\sum_{j,k}\varphi_{j\bar k}f_{\alpha,jK}\overline{f_{\alpha,kK}}\,e^{-\varphi}dV+\int|Df|^2e^{-\varphi}dV+E,\qquad|E|\le C\int\bigl(|f||Df|+|f|^2\bigr)e^{-\varphi}dV$$となる。Levi 形式の項は $\lambda_\varphi\sum_\alpha\sum'_K\sum_j|f_{\alpha,jK}|^2=(q+1)\lambda_\varphi|f|^2\ge\lambda_\varphi|f|^2$ 以上であり、$C|f||Df|\le\frac12|Df|^2+\frac{C^2}2|f|^2$ である。これらを合わせて主張を得る。

段 4〜7(大域的な評価・稠密性・解の存在・重み)を開く

段 4(大域的な評価).$\Omega$ は無限遠で可算なので、段 2 の $U$ の形の開集合からなる局所有限な被覆 $(U_\nu)$ と、台がコンパクトで $U_\nu$ に含まれる $C^\infty$ 級関数 $\rho_\nu\ge0$ で $\sum_\nu\rho_\nu=1$ となるものがある(1の分割)。$\chi_\nu:=\rho_\nu/(\sum_\mu\rho_\mu^2)^{1/2}$ とおくと、$\chi_\nu$ は $C^\infty$ 級で、台は $L_\nu:=\operatorname{supp}\rho_\nu$、$\sum_\nu\chi_\nu^2=1$ である。実数値の $C^\infty$ 級関数 $\chi$ について、$\bar\partial(\chi f)=\chi\bar\partial f+\bar\partial\chi\wedge f$、$\vartheta_\varphi(\chi f)=\chi\vartheta_\varphi f-(\bar\partial\chi\wedge)^*f$ である(後者は $(\bar\partial u,\chi f)_\varphi=(\bar\partial(\chi u)-\bar\partial\chi\wedge u,f)_\varphi$ による。$(\bar\partial\chi\wedge)^*$ は $\bar\partial\chi\wedge$ の各点の随伴である)。各点で $\bar\partial\chi=|\bar\partial\chi|_g\bar\theta_1$ となる正規直交な余枠を選ぶと、$|\bar\partial\chi\wedge f|$ と $|(\bar\partial\chi\wedge)^*f|$ はともに $|\bar\partial\chi|_g|f|$ 以下である。よって台がコンパクトな滑らかな形式 $f$ について、$Q_\varphi(f):=\|\vartheta_\varphi f\|_\varphi^2+\|\bar\partial f\|_\varphi^2$ とおくと$$\sum_\nu Q_\varphi(\chi_\nu f)\le2Q_\varphi(f)+4\int\sum_\nu|\bar\partial\chi_\nu|_g^2|f|^2e^{-\varphi}dV$$である。段 3 を $\chi_\nu f$ に使い(定数を $C_\nu:=C_{L_\nu}$ とする)、$\nu$ について和をとると、$\lambda_\varphi\ge0$ のとき$$\int(\lambda_\varphi-C_0)|f|^2e^{-\varphi}dV\le4Q_\varphi(f),\qquad C_0:=\sum_\nu\bigl(C_\nu\chi_\nu^2+8|\bar\partial\chi_\nu|_g^2\bigr)$$となる。和は局所有限なので $C_0$ は連続で、$\varphi$ によらない。$A:=C_0+4$ とおく。

段 5(稠密性).$\varphi$ を実数値の $C^\infty$ 級関数とし、超関数の意味の $\bar\partial$ を、$\mathbb{C}^n$ の場合と同じく最大の定義域をもつ閉作用素 $T\colon L^2_{(0,q)}(\Omega,E,\varphi)\to L^2_{(0,q+1)}(\Omega,E,\varphi)$、$S\colon L^2_{(0,q+1)}(\Omega,E,\varphi)\to L^2_{(0,q+2)}(\Omega,E,\varphi)$ とみなす($q+1=n$ なら $S=0$)。台がコンパクトな滑らかな形式の全体が、グラフノルム $\|f\|_\varphi+\|T^*f\|_\varphi+\|Sf\|_\varphi$ について $D(T^*)\cap D(S)$ の中で稠密であることを示す。(a) 台がコンパクトな滑らかな $f$ は $D(T^*)$ に属し、$T^*f=\vartheta_\varphi f$ である($u\in D(T)$ について $(Tu,f)_\varphi=(u,\vartheta_\varphi f)_\varphi$ は、1 の分割で $f$ を座標近傍に台をもつものの和に分ければ、超関数の微分の定義そのものである)。逆に $f\in D(T^*)$ なら、台がコンパクトな滑らかな $u$ を試して、超関数として $T^*f=\vartheta_\varphi f$ である。(b) $f\in D(T^*)\cap D(S)$ とする。$u\in D(T)$ について $\eta_\nu u\in D(T)$、$T(\eta_\nu u)=\eta_\nu Tu+\bar\partial\eta_\nu\wedge u$ なので、$(Tu,\eta_\nu f)_\varphi=(u,\eta_\nu T^*f-(\bar\partial\eta_\nu\wedge)^*f)_\varphi$ であり、$\eta_\nu f\in D(T^*)$、$T^*(\eta_\nu f)=\eta_\nu T^*f-(\bar\partial\eta_\nu\wedge)^*f$ である。$S(\eta_\nu f)=\eta_\nu Sf+\bar\partial\eta_\nu\wedge f$ でもある。誤差の項の各点のノルムは $|\bar\partial\eta_\nu|_g|f|\le|f|$ 以下で、各点は $\nu$ が大きければ $d\eta_\nu$ の台の外にあるので、優収束定理により誤差は $0$ に近づく。$\eta_\nu f\to f$、$\eta_\nu T^*f\to T^*f$、$\eta_\nu Sf\to Sf$ も優収束定理による。よって台がコンパクトな $f$ を近似すればよい。(c) 同じ計算は台がコンパクトな任意の $C^\infty$ 級関数による切り落としでも成り立つ(その微分は有界である)。そこで有限個の座標近傍への 1 の分割で、$f$ の台はコンパクト集合 $L\subset U$ に含まれるとしてよい。ここで $U$ は正則座標と $E$ の正則な枠 $s'_1,\dots,s'_N$ をもつ開集合である。$f$ を $s'_\alpha\otimes d\bar z_J$ についての係数のベクトル $F$ で表す。$L$ のコンパクトな近傍 $L'\subset U$ の上では計量・体積・重みは上下から押さえられるので、台が $L'$ に含まれる形式の $L^2(\varphi)$ ノルムは $F$ の通常の $L^2$ ノルムと同値である。$\bar\partial$ は $F$ に定数係数で作用し、$\vartheta_\varphi$ は実座標 $x_i$ と $C^\infty$ 級の行列 $a_i,b$ によって $\sum_ia_i\,\partial F/\partial x_i+bF$ と書ける。軟化子との畳み込み $F_\varepsilon:=F*\chi_\varepsilon$ の表す形式を $f_\varepsilon$ とすると、$\varepsilon$ が小さければ $f_\varepsilon$ は台が $L'$ に含まれる滑らかな形式で、$F_\varepsilon\to F$、$\bar\partial F_\varepsilon=(\bar\partial F)*\chi_\varepsilon\to\bar\partial F$ である。下の Friedrichs の補題により $\vartheta_\varphi f_\varepsilon-(\vartheta_\varphi f)*\chi_\varepsilon\to0$ であり、$(\vartheta_\varphi f)*\chi_\varepsilon\to\vartheta_\varphi f=T^*f$ だから、(a) と合わせて $T^*f_\varepsilon\to T^*f$ である(収束はすべて $L^2$ である)。

Friedrichs の補題.$a$ を $\mathbb{R}^d$ 上の台がコンパクトな $C^1$ 級関数、$v\in L^2(\mathbb{R}^d)$ とすると、$K_\varepsilon v:=a\,\partial_i(v*\chi_\varepsilon)-(a\,\partial_iv)*\chi_\varepsilon\to0$($L^2$)である。実際、超関数の微分の定義から $(a\partial_iv)*\chi_\varepsilon(x)=-\int v(y)\,\partial_{y_i}\bigl(a(y)\chi_\varepsilon(x-y)\bigr)dy$ なので$$K_\varepsilon v(x)=\int\bigl(a(x)-a(y)\bigr)(\partial_i\chi_\varepsilon)(x-y)\,v(y)\,dy+\bigl((\partial_ia)v\bigr)*\chi_\varepsilon(x)$$である。$|a(x)-a(y)|\le\|\nabla a\|_\infty|x-y|$ であり、$k_\varepsilon(z):=|z|\,|(\partial_i\chi_\varepsilon)(z)|$ の積分は変数変換 $z=\varepsilon z'$ により $\varepsilon$ によらないので、Young の不等式(畳み込み の命題「$L^p$関数と$L^1$関数の畳み込み」)により $\|K_\varepsilon v\|_{L^2}\le C\|v\|_{L^2}$($C$ は $\varepsilon$ によらない)である。$v\in C_c^\infty$ なら $K_\varepsilon v=a\,(\partial_iv)*\chi_\varepsilon-(a\partial_iv)*\chi_\varepsilon\to a\partial_iv-a\partial_iv=0$ であり、一般の $v$ は $C_c^\infty$ の元で近似して一様な評価を使えばよい。0 階の項 $b(v*\chi_\varepsilon)-(bv)*\chi_\varepsilon$ は、どちらも $bv$ に収束するので $0$ に近づく。行列の場合は成分ごとに考え、係数には $L'$ の近傍で $1$ となる切り落とし関数を掛けて台をコンパクトにしておく。

段 6(解の存在).$\lambda_\varphi\ge A$ とする。段 4 により、台がコンパクトな滑らかな $(0,q+1)$ 形式 $f$ について $4\|f\|_\varphi^2\le\int(\lambda_\varphi-C_0)|f|^2e^{-\varphi}dV\le4(\|T^*f\|_\varphi^2+\|Sf\|_\varphi^2)$ である。段 5 により、この不等式は $D(T^*)\cap D(S)$ 全体で成り立つ。$F:=\ker S$ は閉部分空間で $T$ の値域を含み、$g\in F\cap D(T^*)$ について $\|g\|_\varphi\le\|T^*g\|_\varphi$ である。$\bar\partial f=0$、$\|f\|_\varphi<\infty$ なら $f\in F$ なので、∂̄方程式のL²評価 の補題「随伴作用素の評価から解の存在へ」により、$\|u\|_\varphi\le\|f\|_\varphi$ で、すべての $g\in D(T^*)$ について $(u,T^*g)_\varphi=(f,g)_\varphi$ となる $u$ がある。$g$ を台がコンパクトな滑らかな形式とすると、(a) から $(u,\vartheta_\varphi g)_\varphi=(f,g)_\varphi$ であり、これは超関数の意味で $\bar\partial u=f$ であることを意味する。これが 1 である。

段 7(重み).$\Omega\ne\emptyset$ としてよい。$\sigma$ は尽くし関数なので最小値 $t_0$ をとる(∂̄方程式のL²評価 の主定理の証明と同じ議論による)。$B_1(t):=\max\{A(z)/m(z)\mid\sigma(z)\le t\}$($\{\sigma\le t\}$ はコンパクトで、空なら $B_1(t):=0$ とする)と $F_f(t):=\int_{\{\sigma< t+1\}}|f|^2dV$ は有限な非減少関数である。$B(t):=\max\{B_1(t),\ \log(1+F_f(t))+2t\}$ に、∂̄方程式のL²評価 の定理「Hörmander の $L^2$ 存在定理」の証明の関数の構成を使うと、$C^\infty$ 級の凸増加関数 $\chi$ で、$t\ge t_0$ なら $\chi(t)\ge B(t)$、$\chi'(t)\ge B(t)$ となるものがある。$\varphi:=\chi\circ\sigma$ とおくと、局所座標で $\frac{\partial^2\varphi}{\partial z_l\partial\bar z_{l'}}=\chi'(\sigma)\frac{\partial^2\sigma}{\partial z_l\partial\bar z_{l'}}+\chi''(\sigma)\frac{\partial\sigma}{\partial z_l}\frac{\partial\sigma}{\partial\bar z_{l'}}$ なので、$\mathcal{L}_\varphi(z;\xi)=\chi'(\sigma)\mathcal{L}_\sigma(z;\xi)+\chi''(\sigma)\bigl|\sum_l\xi_l\,\partial\sigma/\partial z_l\bigr|^2\ge\chi'(\sigma)\,m\,|\xi|_g^2\ge A|\xi|_g^2$ であり、$\lambda_\varphi\ge A$ である。また整数 $k\ge t_0$ について $\{k\le\sigma< k+1\}$ の上で $e^{-\varphi}\le e^{-\chi(k)}\le e^{-2k}/(1+F_f(k))$ なので、その上の $\int|f|^2e^{-\varphi}dV$ は $e^{-2k}$ 以下であり、残りの相対コンパクトな $\{\sigma<\lceil t_0\rceil\}$ の上の積分は有限だから、$\|f\|_\varphi<\infty$ である。これが 2 である。最後の主張は、2 の $\varphi$ について 1 の $u$ をとれば、$e^{-\varphi}$ が各コンパクト集合の上で正の下界をもつことから従う。$\square$

Stein 多様体の上のコホモロジーの消滅

$\Omega$ を強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数をもつ $n$ 次元の複素多様体(たとえば Stein 多様体)、$E$ を $\Omega$ 上の正則ベクトル束、$\mathcal{O}(E)$ を $E$ の正則な切断の層とする。このとき $q\ge1$ について $H^q(\Omega,\mathcal{O}(E))=0$ である。とくに $H^q(\Omega,\mathcal{O})=0$、$H^q(\Omega,\Omega^p)=0$($0\le p\le n$)である。

$E$ に値をとる $(0,r)$ 形式で、係数と $\bar\partial$ の係数が局所 2 乗可積分なものの層を $\mathcal{L}^r(E)$ とする。正則な局所枠で成分に分けると、∂̄方程式のL²評価 の系「擬凸領域の上の層コホモロジーの消滅」の証明と同じく、層の列 $0\to\mathcal{O}(E)\to\mathcal{L}^0(E)\xrightarrow{\bar\partial}\mathcal{L}^1(E)\xrightarrow{\bar\partial}\cdots\xrightarrow{\bar\partial}\mathcal{L}^n(E)\to0$ は完全である($\mathcal{L}^0(E)$ では同記事の補題「正則関数についての Weyl の補題」、$r\ge1$ では座標の球の上の同記事の定理「Hörmander の $L^2$ 存在定理」による)。各 $\mathcal{L}^r(E)$ は $C^\infty$ 級関数を掛ける操作で閉じているので細層であり(細層 の命題「滑らかな関数の層の加群は細層」と定理「細層の非輪状性」)、層コホモロジー の命題「非輪状分解による計算」により、$H^q(\Omega,\mathcal{O}(E))$ は複体 $\Gamma(\Omega,\mathcal{L}^\bullet(E))$ の $q$ 次コホモロジーに等しい。$q\ge1$ とし、$f\in\Gamma(\Omega,\mathcal{L}^q(E))$ が $\bar\partial f=0$ を満たすとする。thm-stein-manifold-l2 により、係数が局所 2 乗可積分で $\bar\partial u=f$ となる $u$ があり、$\bar\partial u=f$ の係数も局所 2 乗可積分なので $u\in\Gamma(\Omega,\mathcal{L}^{q-1}(E))$ である。よってこのコホモロジーは $0$ である。$\mathcal{O}$ は $E$ が自明な直線束の場合、$\Omega^p$ は $E=\Lambda^pT^{*1,0}\Omega$ の場合である。$\square$

$\bar\partial$ 方程式の滑らかな解

$\Omega$ を強多重劣調和な $C^\infty$ 級の尽くし関数をもつ $n$ 次元の複素多様体(たとえば Stein 多様体)、$0\le p\le n$、$0\le q\le n-1$ とする。$\bar\partial f=0$ を満たす $C^\infty$ 級の $(p,q+1)$ 形式 $f$ に対し、$\bar\partial u=f$ となる $C^\infty$ 級の $(p,q)$ 形式 $u$ がある。正則ベクトル束に値をとる形式についても同じである。

$E$ を正則ベクトル束(自明な直線束でもよい)とする。Dolbeaultの定理 の定理「Dolbeault の定理」により $H^{p,q+1}_{\bar\partial}(\Omega,E)\cong H^{q+1}(\Omega,\Omega^p(E))$ である。$\Omega^p(E)$ は正則ベクトル束 $\Lambda^pT^{*1,0}\Omega\otimes E$ の正則な切断の層なので、cor-stein-manifold-vanishing により右辺は $0$ である。左辺が $0$ であることが主張である。$\square$

$\mathbb{C}^n$ の擬凸な開集合では、解を選んで微分の階数を 1 つずつ上げ、滑らかな解を直接作れる(∂̄方程式のL²評価 の定理「解の滑らかさ」)。Hor90 Theorem 5.2.5・Corollary 5.2.6(p. 126)は同じ議論を多様体で行う。ここでは、局所 2 乗可積分な形式の層と滑らかな形式の層がどちらも細層による分解を与えることを使って、$L^2$ の解から滑らかな解の存在を導いた。

性質

Stein 多様体のほかの主な性質を挙げる。近似の性質は 岡–Weilの近似定理 で、埋め込みは Stein多様体の埋め込み定理 で証明する。ほかはこの記事では証明しない。

  • 連接層のコホモロジーの消滅.連接解析層 $\mathcal{F}$ について $H^q(\Omega,\mathcal{F})=0$($q\ge1$)であり、茎は大域切断で生成される(Cartanの定理A・B)。その出発点は構造層が連接であること(岡の連接定理)である。構造層と正則ベクトル束の切断の層の場合は、前節の cor-stein-manifold-vanishing で示した。
  • 近似.$\widehat K_\Omega=K$ となるコンパクト集合 $K$ の近傍で正則な関数は、$K$ の上で $\mathcal{O}(\Omega)$ の元で一様に近似できる(岡–Weilの近似定理 の定理「Stein 多様体の上の近似定理」)。
  • 位相.$n$ 次元 Stein 多様体では $r>n$ について $H^r(\Omega,\mathbb{C})=0$ である(Hor90 Theorem 5.2.7、p. 126)。
  • 埋め込み.$n$ 次元 Stein 多様体は、$\mathbb{C}^{2n+1}$ への単射で固有な正則はめ込みをもつ。したがって $\mathbb{C}^{2n+1}$ の閉複素部分多様体と双正則である(Hor90 Theorem 5.3.9、p. 135。E. Bishop と R. Narasimhan による、同 p. 153。証明は Stein多様体の埋め込み定理)。逆に $\mathbb{C}^N$ の閉複素部分多様体は Stein なので、Stein 多様体とは $\mathbb{C}^N$ の閉複素部分多様体と双正則な複素多様体のことである。
    最後の性質は、affine 多様体が affine 空間の閉部分多様体であることの解析版である(Stein 空間と affine スキームの対応については Stein空間 の節「補足」)。

関連項目

参考文献

[1]
Lars Hörmander, An Introduction to Complex Analysis in Several Variables, North-Holland, 1990, Definition 5.1.3・5.1.4(p. 116)、Theorem 5.1.6(pp. 117–118);Lemma 5.2.1・5.2.2(pp. 120–121)、(5.2.10)(pp. 122–124)、Theorem 5.2.3・5.2.4(p. 125)、Theorem 5.2.5・Corollary 5.2.6・Theorem 5.2.7・Theorem 5.2.8(p. 126)、Theorem 5.2.10(pp. 127–129)、Corollary 5.2.12(p. 129);Theorem 5.3.9(p. 135);Theorem 5.6.1(p. 148);第 V 章 Notes(p. 153)
[2]
Hans Grauert, Reinhold Remmert, Theory of Stein Spaces, Springer, 1979, Introduction(pp. XVII–XVIII);第 V 章 §1.5(p. 134)

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