Menger–Nöbelingの埋め込み定理

同義語:Menger-Nöbelingの埋め込み定理メンガー・ネーベリングの埋め込み定理Menger–Nöbelingの定理Nöbeling空間Menger–Nöbeling embedding theorem

概要

Menger–Nöbelingの埋め込み定理(Menger–Nöbeling embedding theorem)とは、被覆次元が $n$ 以下の可分な距離化可能空間は $(2n+1)$ 次元の立方体 $[0,1]^{2n+1}\subset\mathbb{R}^{2n+1}$ に埋め込めるという定理である。さらに、有理数の座標が高々 $n$ 個の点からなる Nöbeling 空間 $N^{2n+1}_n$ への埋め込みが、一様距離をもつ連続写像の空間の中で稠密な $G_\delta$ 集合をなすほど多くある。証明は Hurewicz による Baire のカテゴリー定理を使う方法で、位数 $n+1$ 以下の細かい開被覆と一般の位置の点から作る写像で近似する。5 頂点の完全グラフが平面に埋め込めないように、$2n+1$ は一般には下げられない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 被覆次元, 位相空間の埋め込み定理, Baireのカテゴリー定理, 全有界, 距離空間

有限グラフは、どんなに辺が多くても 3 次元空間の中に辺どうしが交わらないように描ける。平面では描けないグラフ(たとえば 5 頂点の完全グラフ)もあるが、3 次元あれば余裕がある。Menger–Nöbeling の埋め込み定理はこれを一般化し、被覆次元が $n$ 以下の可分距離空間は、どれも $(2n+1)$ 次元の Euclid 空間 $\mathbb{R}^{2n+1}$ の部分空間と同相であることを主張する。抽象的に定義された「$n$ 次元の空間」は、必ず有限次元の Euclid 空間の中の図形として実現できる。
数 $2n+1$ の由来は次の数え方にある。$\mathbb{R}^m$ の中の $n$ 次元の 2 つの部分が「一般の位置」にあれば、交わりの次元は $n+n-m$ と見積もられ、これが負、すなわち $m\ge2n+1$ なら交わらない。埋め込みを作るには、空間の離れた 2 つの部分の像が交わらないようにすればよいので、$2n+1$ 次元あれば足りる。この記事では、Hurewicz による Baire のカテゴリー定理を使う方法で定理を完全に証明する。証明は、埋め込みがあることだけでなく、「ほとんどすべての」連続写像が埋め込みであることを示す。

主張

位相空間の間の連続写像 $f\colon X\to Y$ が埋め込みであるとは、$f$ が単射で、$X$ から部分空間 $f(X)$ への同相写像であることをいう(位相空間の埋め込み定理)。$I:=[0,1]$ とし、$m\ge1$ について $I^m\subset\mathbb{R}^m$ に Euclid ノルム $\|\cdot\|$ を入れる。

Nöbeling 空間

$0\le n\le m$ について、$\mathbb{R}^m$ の点のうち有理数の座標が高々 $n$ 個のものの全体を $N^m_n$ と書く。$N^{2n+1}_n$ を $n$ 次元の Nöbeling 空間という。

$\mathbb{R}^m\setminus N^m_n$ は、有理数の座標を $n+1$ 個以上もつ点の全体である。それは、$n+1$ 個の座標の番号 $i_1<\dots< i_{n+1}$ と有理数 $r_1,\dots,r_{n+1}$ を選んで $x_{i_1}=r_1,\dots,x_{i_{n+1}}=r_{n+1}$ で定まる $(m-n-1)$ 次元のアフィン部分空間の和であり、そのようなアフィン部分空間は可算個である。$m=2n+1$ ならどれも $n$ 次元である。

Menger–Nöbelingの埋め込み定理

$n\ge0$ とし、$X$ を被覆次元が $n$ 以下の可分な距離化可能空間とする。

  1. $X$ は立方体 $I^{2n+1}\subset\mathbb{R}^{2n+1}$ に埋め込める。
  2. より強く、$X\ne\emptyset$ なら、$X$ から $I^{2n+1}$ への連続写像の全体 $C(X,I^{2n+1})$ に一様距離 $\rho(f,g):=\sup_{x\in X}\| f(x)-g(x)\|$ を入れた空間の中で、埋め込み $f$ で $f(X)\subset N^{2n+1}_n$ となるものの全体は、稠密な $G_\delta$ 集合を含む。とくに $X$ は Nöbeling 空間 $N^{2n+1}_n$ の部分空間と同相である。

$G_\delta$ 集合とは開集合の可算個の共通部分のことである。1 は 2 から従う($X=\emptyset$ なら明らか)。定理はコンパクト距離空間について Menger が 1926 年に述べて $n=1$ の場合を示し、一般の $n$ は Nöbeling、Pontryagin と Tolstowa、Lefschetz が 1931 年に同時期に証明した。Nöbeling 空間への埋め込みも Nöbeling(1931)による。この記事の証明は Hurewicz(1933)の方法である(Eng78 pp. 128–129 の歴史的注意)。定理の形は Eng78 Theorem 1.11.4・1.11.5(pp. 120–121)で、そこではコンパクトな場合に帰着させているが、この記事では全有界な距離を使って一般の場合を直接示す。

次元 $2n+1$ の最良性

$I^{2n+1}$ は可分な距離化可能空間なので、定理の仮定「可分な距離化可能」は埋め込みの存在に必要な条件でもある。次元 $2n+1$ はこれ以上一般には下げられない。prop-mn-flores により、$(2n+2)$ 単体の $n$ 次元以下の面の和 $K_n$(次元は $n$)は $\mathbb{R}^{2n}$ に埋め込めない。したがって「次元 $n$ 以下の空間はすべて $\mathbb{R}^{2n}$ に埋め込める」とは言えず、$2n+1$ が最良である。ただし個々の空間(たとえば多様体や有限グラフ)はもっと低い次元に埋め込めることがある。

準備

写像の空間と全有界な距離

一様距離の完備性

空でない位相空間 $X$ と $m\ge1$ について、$(C(X,I^m),\rho)$ は完備距離空間である。

要点:Cauchy 列は各点で収束し、その極限は一様収束の極限なので連続である。

詳しい証明を開く

$\rho(f,g)\le\sqrt m$ なので $\rho$ は有限で、距離の公理を満たす。$(f_k)$ を Cauchy 列とする。各 $x$ で $(f_k(x))$ は $I^m$ の Cauchy 列なので、閉集合 $I^m$ の点 $f(x)$ に収束する。$\varepsilon>0$ に対し $k,l\ge K$ で $\rho(f_k,f_l)<\varepsilon$ となる $K$ をとり、$l\to\infty$ とすると $k\ge K$ で $\sup_x\| f_k(x)-f(x)\|\le\varepsilon$ である。$f$ の連続性:$x_0$ と $\varepsilon>0$ に対し、$\sup_x\| f_k(x)-f(x)\|\le\varepsilon$ となる $k$ と、$f_k$ の連続性から $\| f_k(x)-f_k(x_0)\|<\varepsilon$ となる $x_0$ の近傍をとると、そこで $\| f(x)-f(x_0)\|<3\varepsilon$ である。よって $f\in C(X,I^m)$ で、$\rho(f_k,f)\to0$ である。$\square$

全有界な距離

可分な距離化可能空間 $X$ は、位相を与える全有界な距離をもつ。

位相空間の埋め込み定理 の記事の系「可分距離化可能空間の特徴づけ」により、埋め込み $e\colon X\to Q$ がある。ここで $Q=I^{\mathbb{N}}$ は Hilbert 立方体で、同じ記事の命題「Hilbert 立方体の距離」の距離 $d_Q$ をもつコンパクト距離空間である。$d(x,y):=d_Q(e(x),e(y))$ は $X$ の位相を与える距離である($e$ は像への同相写像)。コンパクト距離空間は全有界であり、全有界な集合の部分集合は全有界なので(全有界 の記事の命題「有界性・部分集合・閉包・一様連続像」)、$e(X)$ は全有界で、$(X,d)$ も全有界である。$\square$

一般の位置

$\mathbb{R}^m$ の点 $q_0,\dots,q_s$ がアフィン独立であるとは、実数 $\lambda_0,\dots,\lambda_s$ が $\sum_i\lambda_iq_i=0$ かつ $\sum_i\lambda_i=0$ を満たすなら、すべての $\lambda_i$ が $0$ であることをいう。有限集合 $S$ のアフィン包 $\operatorname{aff}S$ は、$S$ の点の係数の和が $1$ の一次結合の全体で、$S$ を含む最小のアフィン部分空間である。$S$ がアフィン独立で $p\notin\operatorname{aff}S$ なら $S\cup\{p\}$ もアフィン独立である($p$ の係数が $0$ でなければ $p$ を $S$ のアフィン結合で書けてしまう)。アフィン部分空間に 1 点を付け加えると、アフィン包の次元は高々 $1$ しか増えない。

一般の位置の点

$m=2n+1$ とし、$E\subset\mathbb{R}^m$ を $n$ 次元のアフィン部分空間、$y_1,\dots,y_r\in\mathbb{R}^m$、$\eta>0$ とする。点 $p_1,\dots,p_r$ で、$\| p_j-y_j\|<\eta$ かつ次を満たすものがある。
(i) $p_1,\dots,p_r$ のうち相異なる高々 $m+1$ 個はアフィン独立である(とくに $p_j$ は相異なる)。
(ii) $p_1,\dots,p_r$ のうち高々 $n+1$ 個からなる集合 $S$ について $\operatorname{aff}S\cap E=\emptyset$ である。

$p_1,p_2,\dots$ を順に選ぶ。$p_1,\dots,p_{j-1}$ が (i)(ii) を満たすように選べたとする。$p_j$ を開球 $B(y_j,\eta)$ から、次の有限個のアフィン部分空間のどれにも属さないように選ぶ。

  • $p_1,\dots,p_{j-1}$ のうち高々 $m$ 個からなる $S$ の $\operatorname{aff}S$(次元は $m-1$ 以下)。
  • $p_1,\dots,p_{j-1}$ のうち高々 $n$ 個からなる $S$(空でもよい)と $E$ の和のアフィン包 $\operatorname{aff}(S\cup E)$(次元は $\lvert S\rvert+n\le2n=m-1$ 以下)。
    どれも $\mathbb{R}^m$ の真のアフィン部分空間で、内点をもたない閉集合である。内点をもたない閉集合の有限個の和も内点をもたない(空でない開集合 $W\subset F\cup G$ があれば $W\setminus F$ は $G$ に含まれる空でない開集合になる)ので、開球の中にどれにも属さない点がある。
    (i):新しい集合 $T\ni p_j$、$\lvert T\rvert\le m+1$ は $T=S\cup\{p_j\}$($\lvert S\rvert\le m$)で、$S$ はアフィン独立、$p_j\notin\operatorname{aff}S$ なので $T$ もアフィン独立である。
    (ii):$T=S\cup\{p_j\}$($\lvert S\rvert\le n$)とする。$S=\emptyset$ なら $\operatorname{aff}T=\{p_j\}$ で、$p_j\notin E$ である。$S\ne\emptyset$ のとき、$\operatorname{aff}T$ の点は $z=tp_j+(1-t)s$($t\in\mathbb{R}$、$s\in\operatorname{aff}S$)と書ける。$z\in E$ とすると、$t=0$ なら $z=s\in\operatorname{aff}S\cap E=\emptyset$ で矛盾し、$t\ne0$ なら $p_j=\bigl(z-(1-t)s\bigr)/t\in\operatorname{aff}(S\cup E)$ となって $p_j$ の選び方に反する。$\square$

これは Eng78 の Theorem 1.10.2(p. 102)と同じ考え方である。

定理の証明

以下、$n\ge0$、$m:=2n+1$ とし、$X\ne\emptyset$ を被覆次元 $n$ 以下の可分距離化可能空間、$d$ を lem-mn-totally-bounded の全有界な距離、$C:=C(X,I^m)$ とする。

2 種類の開集合

$k\ge1$ と、$\mathbb{R}^m$ のアフィン部分空間 $E$ について
$$ G_k:=\bigl\{f\in C\bigm|\text{ある }\delta>0\text{ があって、}d(x,y)\ge1/k\text{ なら }\| f(x)-f(y)\|\ge\delta\bigr\}, $$
$$ H_E:=\bigl\{f\in C\bigm|\text{ある }\delta>0\text{ があって、すべての }x\text{ で }\operatorname{dist}(f(x),E)\ge\delta\bigr\} $$
とおく。$G_k$ は「距離 $1/k$ 以上離れた 2 点の像が一様に離れている」写像、$H_E$ は「像が $E$ から一様に離れている」写像の全体である。

開集合であること

$G_k$ と $H_E$ は $(C,\rho)$ の開集合である。

$f\in G_k$ を $\delta$ についてとり、$\rho(g,f)<\delta/4$ とする。$d(x,y)\ge1/k$ なら
$$ \| g(x)-g(y)\|\ge\| f(x)-f(y)\|-\| g(x)-f(x)\|-\| g(y)-f(y)\|>\delta-\frac\delta2=\frac\delta2 $$
なので $g\in G_k$ である。同様に $f\in H_E$ を $\delta$ についてとり $\rho(g,f)<\delta/2$ とすると、$\operatorname{dist}(g(x),E)\ge\operatorname{dist}(f(x),E)-\| g(x)-f(x)\|>\delta/2$ なので $g\in H_E$ である。$\square$

$\delta$ を「一様に」とったことが要である。$f(x)\ne f(y)$ や $f(X)\cap E=\emptyset$ だけでは、$X$ がコンパクトでないとき開集合にならない。

稠密であること

稠密であること

$E$ を $\mathbb{R}^m$ の $n$ 次元アフィン部分空間とする。任意の $g\in C$、$\varepsilon>0$、$k\ge1$ に対し、$f\in G_k\cap H_E$ で $\rho(f,g)<\varepsilon$ となるものがある。とくに $G_k$ と $H_E$ は $C$ で稠密である。

段 1(小さな被覆). $\eta:=\varepsilon/3$ とする。$(X,d)$ は全有界なので、直径 $1/k$ 未満の有限個の開集合で覆える(半径 $1/(3k)$ の開球の有限個)。$I^m$ はコンパクトなので、直径 $\eta$ 未満の有限個の開集合 $O_1,\dots,O_s$ で覆える。直径 $1/k$ 未満の開集合 $V$ と $g^{-1}(O_t)$ の共通部分の全体は $X$ の有限開被覆で、被覆次元が $n$ 以下なので、位数 $n+1$ 以下の有限開細分 $\{U_1,\dots,U_r\}$ がある。空集合は除いておく。どの $U_j$ も $d$ に関する直径が $1/k$ 未満で、$g(U_j)$ の直径は $\eta$ 未満である。
段 2(1 の分割). $U_j\ne X$ なら $\psi_j(x):=d(x,X\setminus U_j)$、$U_j=X$ なら $\psi_j:=1$ とおく。$\psi_j$ は連続で、$\psi_j(x)>0$ と $x\in U_j$ は同値である。各点はどれかの $U_j$ に入るので $\sum_l\psi_l>0$ で、$\varphi_j:=\psi_j/\sum_l\psi_l$ は連続、$\varphi_j\ge0$、$\sum_j\varphi_j=1$、$\varphi_j(x)>0\iff x\in U_j$ を満たす。とくに、各点 $x$ で $\varphi_j(x)>0$ となる $j$ は高々 $n+1$ 個である。
段 3(頂点を選ぶ). 各 $j$ で点 $x_j\in U_j$ をとる。中心 $c:=(\frac12,\dots,\frac12)$ に向けて縮めた写像 $g':=(1-\tau)g+\tau c$ を考える。$\tau:=\min\{1,\eta/\sqrt m\}$ とすると $\rho(g',g)\le\tau\sqrt m/2\le\eta/2$ で、$g'(X)$ の点から距離 $\tau/2$ 以内の点は $I^m$ に入る。$\eta':=\min\{\eta,\tau/2\}$ として、lem-mn-general-position を $y_j:=g'(x_j)$、$\eta'$ に使い、点 $p_1,\dots,p_r$ をとる。$p_j\in I^m$ である。
$$ f(x):=\sum_{j=1}^r\varphi_j(x)\,p_j $$
とおく。$f$ は連続で、$f(x)$ は $I^m$ の点の凸結合なので $f\in C$ である。
段 4($g$ に近い). $\varphi_j(x)>0$ なら $x,x_j\in U_j$ なので、$\| g'(x)-g'(x_j)\|\le\| g(x)-g(x_j)\|<\eta$ であり、$\| p_j-g'(x)\|<\eta'+\eta\le2\eta$ となる。凸結合をとって $\| f(x)-g'(x)\|<2\eta$、よって $\rho(f,g)\le2\eta+\eta/2<\varepsilon$ である。
段 5($f\in H_E$). $f(x)$ は、$\varphi_j(x)>0$ となる高々 $n+1$ 個の $p_j$ の凸包に入る。$p_1,\dots,p_r$ のうち高々 $n+1$ 個の凸包の全体の和を $K$ とすると、$K$ はコンパクトで、lem-mn-general-position の (ii) により閉集合 $E$ と交わらない。よって $\delta:=\operatorname{dist}(K,E)>0$ で、すべての $x$ で $\operatorname{dist}(f(x),E)\ge\delta$ である。
段 6($f\in G_k$). $\Delta:=\{a\in\mathbb{R}^r\mid a_j\ge0,\ \sum_ja_j=1\}$ とし、
$$ T:=\bigl\{(a,b)\in\Delta\times\Delta\bigm|\text{すべての }j\text{ で }a_jb_j=0,\ a\text{ と }b\text{ の }0\text{ でない成分はそれぞれ高々 }n+1\text{ 個}\bigr\} $$
とおく。「$0$ でない成分が高々 $n+1$ 個」の点の全体は、座標のどれか $r-n-1$ 個が $0$ という閉集合の有限個の和なので閉集合であり、$T$ はコンパクトである。$F(a,b):=\bigl\|\sum_ja_jp_j-\sum_jb_jp_j\bigr\|$ は $T$ 上で正である。実際 $F(a,b)=0$ とすると $\sum_j(a_j-b_j)p_j=0$、$\sum_j(a_j-b_j)=0$ で、$a_j-b_j\ne0$ となる $j$ は高々 $2n+2=m+1$ 個なので、(i) のアフィン独立性から $a_j=b_j$ がすべての $j$ で成り立つ。$a_jb_j=0$ と合わせると $a=b=0$ となり、$\sum_ja_j=1$ に反する。よって $\delta':=\min_TF>0$ である($T=\emptyset$ なら $\delta':=1$)。
$d(x,y)\ge1/k$ なら、直径が $1/k$ 未満の $U_j$ は $x,y$ の両方を含まないので、$\varphi_j(x)\varphi_j(y)=0$ がすべての $j$ で成り立ち、$\bigl((\varphi_j(x))_j,(\varphi_j(y))_j\bigr)\in T$ である。よって $\| f(x)-f(y)\|\ge\delta'$ で、$f\in G_k$ である。$\square$

段 6 が、この証明で $2n+1$ 次元を使う理由である($2n+1$ がこれ以上下げられないことは「反例」の節の例が示す)。離れた 2 点 $x,y$ の像は、それぞれ高々 $n+1$ 個の頂点の凸包に入り、2 つの頂点の集合は交わらない。あわせて $2n+2$ 個の頂点がアフィン独立であるためには、$\mathbb{R}^{2n+1}$ 以上の次元が要る。

証明の完成

Menger–Nöbelingの埋め込み定理

2 を示せば 1 も従う。$\mathbb{R}^m\setminus N^m_n$ を覆う可算個の $n$ 次元アフィン部分空間(def-mn-nobeling の後の注意)を $E_1,E_2,\dots$ とし、
$$ \mathcal{D}:=\bigcap_{k\ge1}G_k\ \cap\ \bigcap_{i\ge1}H_{E_i} $$
とおく。lem-mn-complete により $(C,\rho)$ は空でない完備距離空間で(定値写像を含む)、lem-mn-open と lem-mn-dense により $G_k$、$H_{E_i}$ は稠密な開集合である。Baireのカテゴリー定理 の記事の定理「Baire のカテゴリー定理」により $\mathcal{D}$ は稠密な $G_\delta$ 集合である。
$f\in\mathcal{D}$ が埋め込みで $f(X)\subset N^m_n$ であることを示す。

  • 単射. $x\ne y$ なら $d(x,y)\ge1/k$ となる $k$ があり、$f\in G_k$ から $f(x)\ne f(y)$ である。
  • 逆写像の連続性. $f(x_l)\to f(x)$ で $d(x_l,x)\not\to0$ とすると、ある $k$ について $d(x_l,x)\ge1/k$ となる $l$ が無限個あり、$f\in G_k$ の $\delta$ について $\| f(x_l)-f(x)\|\ge\delta$ となる $l$ が無限個ある。これは $f(x_l)\to f(x)$ に反する。距離空間では点列で連続性が判定できるので、$f^{-1}\colon f(X)\to X$ は連続である。
  • 像. $f\in H_{E_i}$ なので $f(X)\cap E_i=\emptyset$ がすべての $i$ で成り立ち、$f(X)\subset N^m_n$ である。
    よって $\mathcal{D}$ の元はすべて求める埋め込みである。$\square$

証明のうち被覆次元を使ったのは、prf-mn-dense の段 1 で位数 $n+1$ 以下の細分をとったところだけである。

帰結

位相多様体の埋め込み

$n$ 次元の位相多様体は $\mathbb{R}^{2n+1}$ に埋め込める。

位相多様体は可分な距離化可能空間であり、次元論の一致定理 の記事の系「位相多様体の次元」により被覆次元は $n$ 以下である。thm-mn-main による。$\square$

滑らかな $n$ 次元多様体については、Whitneyの埋め込み定理 が $\mathbb{R}^{2n+1}$ への閉埋め込みで、しかも滑らかなものを与える。上の系は滑らかさを仮定しない代わりに、埋め込みは位相的なものにとどまる。

次元による特徴づけ

可分な距離化可能空間 $X$ と $n\ge0$ について、$\dim X\le n$ であることと、$X$ が $N^{2n+1}_n$ のある部分空間と同相であることは同値である。

一方は thm-mn-main の 2 である。逆に $X$ が $N^{2n+1}_n$ の部分空間と同相なら、次元論の一致定理 の記事の例「Euclid 空間の分解と Nöbeling 空間」により $\operatorname{ind}N^{2n+1}_n\le n$ で、同じ記事の系「部分空間と和」と一致定理により $\dim X\le\dim N^{2n+1}_n\le n$ である。$\square$

この意味で $N^{2n+1}_n$ は、被覆次元 $n$ 以下の可分距離空間の全体に対する普遍空間である(Eng78 Theorem 1.11.5、p. 120)。$n=0$ では $N^1_0$ は無理数の全体で、0 次元の可分距離空間はすべて無理数の全体の部分空間と同相である。

例

有限グラフの $\mathbb{R}^3$ への埋め込み

有限な単純グラフ(有限個の頂点と、相異なる 2 頂点を結ぶ有限個の辺からなるもの)を、各辺を線分として貼り合わせた空間は、次元 $1$ 以下の有限単体複体の多面体なので被覆次元 $1$ 以下であり(被覆次元 の記事の命題「多面体の被覆次元の上からの評価」)、定理により $\mathbb{R}^3$ に埋め込める。この場合は具体的に作れる。頂点 $v_1,\dots,v_N$ を曲線 $c(t):=(t,t^2,t^3)$ の上の点 $c(1),c(2),\dots,c(N)$ に置き、辺をその両端を結ぶ線分にする。
曲線 $c$ の相異なる 4 点 $c(t_0),\dots,c(t_3)$ はアフィン独立である。実際、$\sum_i\lambda_ic(t_i)=0$、$\sum_i\lambda_i=0$ は、Vandermonde 行列 $(t_i^{\,e})_{0\le e\le3,\,0\le i\le3}$ に $(\lambda_i)$ を掛けると $0$ になることを意味し、$t_i$ が相異なるので行列は正則で $\lambda=0$ である。したがって、端点を共有しない 2 本の辺の線分は交わらない(交点があれば 4 つの端点がアフィン従属になる)。端点を 1 つ共有する 2 本の辺は、3 点がアフィン独立なので退化しない三角形の 2 辺であり、共有する頂点でしか交わらない。よって線分の和は、グラフの空間から $\mathbb{R}^3$ への連続な全単射の像で、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射として埋め込みである。

次元が低い具体例
  • $n=0$:$\mathbb{Q}$ は $\sqrt2+\mathbb{Q}$ と同相で、これは無理数の全体 $N^1_0$ の部分空間である。
  • 円周 $S^1$ は被覆次元 $1$ で、定理は $\mathbb{R}^3$ への埋め込みを保証するが、実際には $\mathbb{R}^2$ に埋め込める。定理の $2n+1$ は、次元 $n$ 以下のすべての空間に通用する上限であって、個々の空間に必要な次元ではない。同様に $S^n$(被覆次元 $n$)は定義から $\mathbb{R}^{n+1}$ の部分空間である。一方、次の節のように上限 $2n+1$ が必要になる空間もある。

反例

外す条件・変える値反例成り立たなくなること
次元 $2n+1$ を $2n$ にする($n=1$)5 頂点の完全グラフ $K_5$(4 単体の 1 骨格)$\mathbb{R}^{2}$ に埋め込める
次元 $2n+1$ を $2n$ にする(一般の $n$)$(2n+2)$ 単体の $n$ 骨格$\mathbb{R}^{2n}$ に埋め込める
被覆次元が有限Hilbert 立方体 $I^{\mathbb{N}}$ある $\mathbb{R}^m$ に埋め込める
可分非可算集合の離散空間ある $\mathbb{R}^m$ に埋め込める
反例の確かめ
  1. $K_5$. 被覆次元は $1$ である(上は ex-mn-graph、下は線分を含むことと 被覆次元 の記事の命題「閉部分空間の被覆次元」による)。$K_5$ が $\mathbb{R}^2$ に埋め込めれば、各辺の像は弧で、それらは端点以外で交わらないので平面埋め込みになるが、$K_5$ は平面グラフでない(平面グラフ の記事の命題「$K_5$ は平面グラフでない」)。Jordan 曲線定理による直接の証明は Eng78 Example 1.11.8(pp. 127–128)にある。
  2. 一般の $n$. $(2n+2)$ 単体の、次元 $n$ 以下の面の全体の和 $K_n$ は被覆次元 $n$ の多面体だが、$\mathbb{R}^{2n}$ には埋め込めない(Flores の結果。Eng78 p. 128 と Problem 1.11.F(p. 132)。証明は下の prf-mn-flores)。$n=1$ の $K_1$ が $K_5$ である。
  3. Hilbert 立方体. 被覆次元は $\infty$ である(被覆次元 の記事の系「Euclid 空間・球面・Hilbert 立方体」)。$\mathbb{R}^m$ に埋め込めたとすると、像は $\mathbb{R}^m$ の部分空間なので、次元論の一致定理 の記事の系「部分空間と和」と系「Euclid 空間・立方体・球面」により被覆次元は $m$ 以下になり、被覆次元が位相不変量であることに反する。
  4. 非可算離散空間 $D$. 有限開被覆 $\{U_1,\dots,U_k\}$ は、$U_i\setminus(U_1\cup\dots\cup U_{i-1})$ という互いに交わらない開集合で細分できるので $\dim D=0$ であり、$D$ は距離化可能(異なる 2 点の距離を $1$)である。一方 $\mathbb{R}^m$ の部分空間は可分なので、非可算な離散空間は埋め込めない。可分という仮定が外せないことを示す。
単体の骨格は低い次元に埋め込めない

$n\ge1$ とし、$V:=\{0,1,\dots,2n+2\}$、$\Delta:=\{x\in\mathbb{R}^V\mid x_v\ge0,\ \sum_vx_v=1\}$ とする。$\Delta$ の点のうち正の座標が $n+1$ 個以下のものの全体
$$ K_n:=\{x\in\Delta\mid \#\{v\mid x_v>0\}\le n+1\} $$
($(2n+2)$ 単体の次元 $n$ 以下の面の和)から $\mathbb{R}^{2n}$ への連続な単射は存在しない。

連続な単射 $f\colon K_n\to\mathbb{R}^{2n}$ があったとして矛盾を導く。$z\in\mathbb{R}^V$ に対し $\|z\|_1:=\sum_v|z_v|$、$z^+_v:=\max(z_v,0)$、$z^-_v:=\max(-z_v,0)$ と書き、
$$ \Sigma:=\{z\in\mathbb{R}^V\mid \|z\|_1=1,\ \#\{v\mid z_v>0\}\le n+1,\ \#\{v\mid z_v< 0\}\le n+1\} $$
とおく。「正の座標が $n+2$ 個以上」「負の座標が $n+2$ 個以上」はどちらも開条件なので $\Sigma$ はコンパクトであり、$-\Sigma=\Sigma$ である。$\Sigma$ の点は $2n+3$ 個の座標のうち高々 $2n+2$ 個しか $0$ でないので、少なくとも一つの座標が $0$ である。
1. $\Sigma$ は球面と奇関数で同相である。 $H:=\{w\in\mathbb{R}^V\mid\sum_vw_v=0\}$(次元 $2n+2$)への直交射影を $P(z):=z-\frac{1}{2n+3}\bigl(\sum_vz_v\bigr)\mathbf{1}$($\mathbf{1}$ は全座標が $1$ のベクトル)とすると $\ker P=\mathbb{R}\mathbf{1}$ である。$z\in\Sigma$ は $0$ の座標をもち $z\neq0$ なので $z\notin\mathbb{R}\mathbf{1}$、すなわち $P(z)\neq0$ である。$\rho(z):=P(z)/|P(z)|$ は $\Sigma$ から $H$ の単位球面 $S(H)\cong S^{2n+1}$ への連続写像で、$\rho(-z)=-\rho(z)$ を満たす。
単射であること:$\rho(z)=\rho(z')$ なら $\lambda:=|P(z)|/|P(z')|>0$ について $P(z-\lambda z')=0$、すなわち $z-\lambda z'=c\mathbf{1}$ となる $c\in\mathbb{R}$ がある。$c>0$ とすると、$z'_v\ge0$ となる $v$(負の座標が $n+1$ 個以下なので $n+2$ 個以上ある)で $z_v=c+\lambda z'_v>0$ となり、$z$ の正の座標が $n+2$ 個以上になって矛盾する。$c< 0$ も同様に $z$ の負の座標が $n+2$ 個以上になる。よって $c=0$、$z=\lambda z'$ で、$\|z\|_1=\|z'\|_1=1$ から $z=z'$ である。
全射であること:$w\in S(H)$ の $2n+3$ 個の座標を小さい順に並べた $n+2$ 番目の値を $m$ とし、$u:=w-m\mathbf{1}$ とおく。$m$ より真に大きい座標も真に小さい座標も $n+1$ 個以下なので、$u$ の正の座標・負の座標はそれぞれ $n+1$ 個以下である。$u=0$ なら $w=m\mathbf{1}\in H$ から $w=0$ となり $|w|=1$ に反するので $u\ne0$ である。$z:=u/\|u\|_1\in\Sigma$ について、$P(w)=w$、$P(\mathbf{1})=0$ から $P(z)=w/\|u\|_1$、よって $\rho(z)=w$ である。
コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射なので、$\rho$ は同相写像である。
2. $\Sigma$ から $\mathbb{R}^{2n+1}\setminus\{0\}$ への奇写像を作る。 $u\in\mathbb{R}^V$ が $u_v\ge0$、$u\neq0$ で正の座標が $n+1$ 個以下なら $u/\|u\|_1\in K_n$ である。このような $u$ と $u=0$ に対し、$F(u):=\|u\|_1\,f(u/\|u\|_1)$、$F(0):=0$ と定める。$K_n$ はコンパクトなので $M:=\max_{K_n}|f|$ は有限で、$|F(u)|\le M\|u\|_1$ から $F$ は $0$ でも連続である。$z\in\Sigma$ に対し $z^+$、$z^-$ は $F$ の定義域に入るので、
$$ G(z):=\bigl(\|z^+\|_1-\|z^-\|_1,\ F(z^+)-F(z^-)\bigr)\in\mathbb{R}\times\mathbb{R}^{2n}=\mathbb{R}^{2n+1} $$
は連続であり、$(-z)^+=z^-$、$(-z)^-=z^+$ から $G(-z)=-G(z)$ である。$G(z)=0$ とすると、$\|z^+\|_1+\|z^-\|_1=\|z\|_1=1$ と第 1 成分から $\|z^+\|_1=\|z^-\|_1=1/2$、第 2 成分から $f(2z^+)=f(2z^-)$ となる。$f$ は単射なので $z^+=z^-$ だが、$z^+$ と $z^-$ は $0$ でない座標の位置が重ならず、どちらも $0$ でないので矛盾する。よって $G$ は $0$ をとらない。
3. 矛盾。 $g:=G\circ\rho^{-1}\colon S(H)\to\mathbb{R}^{2n+1}$ は連続で $g(-y)=-g(y)$ を満たし、$0$ をとらない。$H$ から $\mathbb{R}^{2n+2}$ への線形な等長同型は $S(H)$ を $S^{2n+1}$ に移し、対蹠点を対蹠点に移すので、$g$ は $S^{2n+1}$ 上の奇写像で $0$ をとらないものと見なせる。Borsuk–Ulam の定理($S^{k}$ から $\mathbb{R}^{k}$ への連続写像 $g$ には $g(y)=g(-y)$ となる点 $y$ がある。Hat02 Corollary 2B.7、p. 176)を $k=2n+1$ で使うと、$g(y)=g(-y)=-g(y)$ から $g(y)=0$ となる点 $y$ があり、矛盾する。$\square$

$\mathbb{R}^{2n}$ の部分空間への埋め込みは連続な単射なので、prop-mn-flores により $K_n$ は $\mathbb{R}^{2n}$ に埋め込めない。
1・2 行目は、定理の $2n+1$ がこれ以上下げられないことを示す。

補足

  • コンパクトな場合:$X$ がコンパクトなら、埋め込み全体そのものが $C(X,\mathbb{R}^{2n+1})$ の稠密な $G_\delta$ 集合になる(Eng78 Theorem 1.11.4、p. 120)。コンパクトな $X$ では連続な単射は自動的に埋め込みなので、$G_k$ を「$f(x)=f(y)$ なら $d(x,y)<1/k$」という条件に替えられる。
  • Menger の普遍空間:Cantor 集合を高次元にしたコンパクトな集合 $M^{2n+1}_n\subset I^{2n+1}$(Menger が 1926 年に導入)も、被覆次元 $n$ 以下の可分距離空間の普遍空間である(Eng78 Theorem 1.11.7、p. 126。この記事では証明しない)。Nöbeling 空間と違ってコンパクトであることが特徴で、$n=1$ の場合に 1 次元のコンパクト距離空間の普遍空間であることは Menger 自身が示した(Eng78 p. 129 の歴史的注意)。
  • 一致定理との関係:次元論の一致定理 の記事は、この記事の定理の 2 を使って $\operatorname{ind}X\le\dim X$ を導く。この記事の証明は一致定理を使っていないので、論理は循環しない。

関連項目

参考文献

[1]
Ryszard Engelking, Dimension Theory, North-Holland Mathematical Library 19, North-Holland / PWN, 1978, Definition 1.10.1・Theorem 1.10.2(一般の位置、p. 102)、Lemma 1.11.1–1.11.3(pp. 118–119)、Theorem 1.11.4(埋め込み定理、p. 120)、Theorem 1.11.5(Nöbeling の普遍空間、pp. 120–121)、Theorem 1.11.7(Menger の普遍空間、p. 126)、Example 1.11.8(K_5 が平面に埋め込めないこと、pp. 127–128)、第 1.11 節の歴史的注意(pp. 128–129)、Problem 1.11.F(Flores の例、p. 132)

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