Sorgenfrey平面

同義語:Sorgenfrey plane

概要

Sorgenfrey平面(Sorgenfrey plane)とは、半開区間を開基とする Sorgenfrey 直線 $\mathbb{R}_L$ の自分自身との直積 $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$ であり、半開長方形 $[a,b)\times[c,d)$ の全体を開基にもつ。第1可算・可分・完全正則な Hausdorff 空間だが、反対角線 $\{(x,-x)\}$ が連続体濃度の閉離散集合になるため、Lindelöf 空間でも正規空間でもなく、パラコンパクトでも距離化可能でもない。因子の $\mathbb{R}_L$ は完全正規かつ Lindelöf でパラコンパクトなので、これらの性質が 2 つの空間の直積でも保たれないことを示す標準的な反例である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Sorgenfrey直線, 直積位相, 正規空間

Sorgenfrey 平面(Sorgenfrey plane)とは、Sorgenfrey直線 $\mathbb{R}_L$ の自分自身との直積 $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$ のことである。点 $(x,y)$ の近さを、右上に開いた正方形 $[x,x+\varepsilon)\times[y,y+\varepsilon)$ で測る平面だと言ってよい。
Sorgenfrey 直線は正規で Lindelöf でパラコンパクトという、よい性質をそろえた空間である。ところがその 2 つの直積をとると、これらの性質がすべて失われる。原因は反対角線 $\{(x,-x)\mid x\in\mathbb{R}\}$ にある。反対角線上の点を左下の角とする半開正方形は、反対角線とその角の 1 点でしか交わらないので、反対角線は非可算な離散集合として平面の中に閉じた形で埋まっている。一方で平面は可分であり、有理点だけで全体を近似できる。この「可算個の点で近似できるのに、非可算個の点がばらばらに並ぶ」という食い違いが、Lindelöf 性と正規性を壊す。この記事では、平面の基本的な性質を確かめてから、Lindelöf でないこと、正規でないことを 2 通りの方法で証明する。

定義

Sorgenfrey 平面

Sorgenfrey直線 $\mathbb{R}_L$(半開区間 $[a,b)$ の全体を開基とする実数直線)の直積空間 $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$ を Sorgenfrey 平面 といい、$\mathbb{R}_L^2$ と書く。その位相を $\mathcal{O}_{L^2}$ と書く。

以下、$\mathbb{R}^2$ の通常の Euclid 位相を $\mathcal{O}_{E^2}$ と書き、
$$ Q(x,y;\varepsilon)=[x,x+\varepsilon)\times[y,y+\varepsilon)\qquad(\varepsilon>0) $$
を点 $(x,y)$ を左下の角とする半開正方形とよぶ。

開基と開集合の判定
  1. 半開長方形 $[a,b)\times[c,d)$($a< b$、$c< d$)の全体は $\mathbb{R}_L^2$ の開基である。
  2. $U\subseteq\mathbb{R}^2$ が $\mathbb{R}_L^2$ の開集合であることと、各 $(x,y)\in U$ についてある $\varepsilon>0$ が存在して $Q(x,y;\varepsilon)\subseteq U$ となることは同値である。
  3. $\mathcal{O}_{E^2}\subseteq\mathcal{O}_{L^2}$ である。とくに $\mathbb{R}^2$ の通常の意味での閉集合は $\mathbb{R}_L^2$ の閉集合である。
  4. 各半開長方形 $[a,b)\times[c,d)$ は $\mathbb{R}_L^2$ の開かつ閉集合である。
  1. 因子の開基の元の直積の全体は直積位相の開基である(直積位相 の命題「因子の開基から作る直積位相の開基」)。
  2. $U$ が開で $(x,y)\in U$ ならば、1 により $(x,y)\in[a,b)\times[c,d)\subseteq U$ となる半開長方形がある。$\varepsilon=\min\{b-x,d-y\}>0$ とおけば $Q(x,y;\varepsilon)\subseteq[a,b)\times[c,d)\subseteq U$ である。逆に条件が成り立てば、$U$ は半開正方形の合併なので開である。
  3. $W\in\mathcal{O}_{E^2}$、$(x,y)\in W$ とすると、ある $\delta>0$ で $(x-\delta,x+\delta)\times(y-\delta,y+\delta)\subseteq W$ となり、$Q(x,y;\delta)$ はこれに含まれる。2 により $W\in\mathcal{O}_{L^2}$ である。補集合をとれば後半が従う。
  4. $[a,b)\times[c,d)$ は 1 により開である。その補集合は
    $$ \bigl((\mathbb{R}\setminus[a,b))\times\mathbb{R}\bigr)\cup\bigl(\mathbb{R}\times(\mathbb{R}\setminus[c,d))\bigr) $$
    であり、$[a,b)$ と $[c,d)$ は $\mathbb{R}_L$ で閉(Sorgenfrey直線 の命題「開基の元は開かつ閉」)だから、右辺は開集合の直積の合併として開である。$\square$

基本的な性質

可算性と分離の条件
  1. $\mathbb{R}_L^2$ は第1可算公理を満たす。各点 $(x,y)$ で $\{Q(x,y;1/n)\mid n\ge1\}$ が基本近傍系である。
  2. $\mathbb{R}_L^2$ は可分空間である。有理点の全体 $\mathbb{Q}^2$ が稠密である。
  3. $\mathbb{R}_L^2$ は Hausdorff 空間であり、完全正則(Tychonoff空間)である。すなわち、点 $p$ とそれを含まない閉集合 $F$ に対し、$f(p)=0$、$F$ 上で $f=1$ となる連続関数 $f\colon\mathbb{R}_L^2\to[0,1]$ が存在する。とくに正則である。
  1. prop-sorgenfrey-plane-basis の 2 による。$U$ が $(x,y)$ の開近傍ならば $Q(x,y;\varepsilon)\subseteq U$ となる $\varepsilon$ があり、$1/n< \varepsilon$ ならば $Q(x,y;1/n)\subseteq U$ である。
  2. 空でない開集合は半開正方形 $Q(x,y;\varepsilon)$ を含み、開区間 $(x,x+\varepsilon)$ と $(y,y+\varepsilon)$ はそれぞれ有理数 $r,s$ を含むので $(r,s)\in Q(x,y;\varepsilon)\cap\mathbb{Q}^2$ である。$\mathbb{Q}^2$ は可算である。
  3. Hausdorff 性:$(x,y)\ne(x',y')$ とする。$x< x'$ ならば $[x,x')\times\mathbb{R}$ と $[x',\infty)\times\mathbb{R}$ は 2 点をそれぞれ含む交わらない開集合である($[x',\infty)=\bigcup_n[x',x'+n)$ は $\mathbb{R}_L$ で開)。$x'< x$ のときは役割を入れ替え、$x=x'$ のときは第 2 座標で同じことをすればよい。
    完全正則性:$p=(x_0,y_0)$ とする。$U=\mathbb{R}^2\setminus F$ は $p$ を含む開集合なので、半開正方形 $R=Q(x_0,y_0;\varepsilon)\subseteq U$ がある。$R$ の特性関数を $\chi_R$ とし $f=1-\chi_R$ とおく。$R$ は開かつ閉(prop-sorgenfrey-plane-basis の 4)なので、任意の集合の $f$ による逆像は $\emptyset$、$R$、$\mathbb{R}^2\setminus R$、$\mathbb{R}^2$ のいずれかで開であり、$f$ は連続である。$f(p)=0$ であり、$F\subseteq\mathbb{R}^2\setminus R$ 上で $f=1$ である。正則性は、$f^{-1}([0,1/2))$ と $f^{-1}((1/2,1])$ が $p$ と $F$ を分ける開集合であることから従う。$\square$

平面の中の直線にどのような位相が入るかを見ると、平面の特徴がはっきりする。

直線が受け継ぐ位相

$c\in\mathbb{R}$ とし、$\mathbb{R}_L^2$ の部分空間として次の 3 つを考える。
$$ H_c=\mathbb{R}\times\{c\},\qquad \Delta^+=\{(x,x)\mid x\in\mathbb{R}\},\qquad \Delta^-=\{(x,-x)\mid x\in\mathbb{R}\}. $$

  1. $x\mapsto(x,c)$ と $x\mapsto(x,x)$ は、それぞれ $\mathbb{R}_L$ から $H_c$、$\Delta^+$ への同相写像である。
  2. 反対角線 $\Delta^-$ は $\mathbb{R}_L^2$ の閉集合であり、相対位相は離散位相である。各 $x$ について $Q(x,-x;1)\cap\Delta^-=\{(x,-x)\}$ である。
  3. $\Delta^-$ の任意の部分集合は $\mathbb{R}_L^2$ の閉集合である。
  1. 半開長方形 $[a,b)\times[c',d')$ と $H_c$ の交わりは、$c\in[c',d')$ ならば $[a,b)\times\{c\}$、そうでなければ空集合である。よって $H_c$ の相対位相の開基は $\{[a,b)\times\{c\}\}$ であり、$x\mapsto(x,c)$ は $\mathbb{R}_L$ の開基を $H_c$ の開基に移す全単射だから同相写像である。同様に $[a,b)\times[c',d')\cap\Delta^+=\{(t,t)\mid \max\{a,c'\}\le t< \min\{b,d'\}\}$ であり、これは空であるか半開区間の像なので、$x\mapsto(x,x)$ も同相写像である。
  2. $\Delta^-$ は連続関数 $(x,y)\mapsto x+y$ の零点集合として $\mathbb{R}^2$ の通常の閉集合なので、prop-sorgenfrey-plane-basis の 3 により $\mathbb{R}_L^2$ でも閉である。$(t,-t)\in Q(x,-x;1)$ ならば $t\ge x$ かつ $-t\ge-x$ なので $t=x$ である。よって各一点集合 $\{(x,-x)\}$ は $\Delta^-$ の相対開集合であり、相対位相は離散である。
  3. $S\subseteq\Delta^-$ は離散空間 $\Delta^-$ の閉集合であり、$\Delta^-$ は $\mathbb{R}_L^2$ の閉集合だから、$S$ は $\mathbb{R}_L^2$ の閉集合である。$\square$

傾きが負の直線 $y=-mx+k$($m>0$)でも、2 と同じ計算で相対位相は離散になる。右下がりの直線上の点を左下の角とする半開正方形は、その直線と角の 1 点でしか交わらない。

第2可算でなく、局所コンパクトでもない

$\mathbb{R}_L^2$ は第2可算公理を満たさず、局所コンパクトでもない。

第2可算性は部分空間に遺伝する(第2可算公理 の命題「部分空間への遺伝」)。$\mathbb{R}_L^2$ が第2可算ならば、その部分空間 $H_0$、したがって prop-sorgenfrey-plane-lines の 1 により $\mathbb{R}_L$ も第2可算になるが、これは Sorgenfrey直線 の命題「第2可算公理を満たさないこと」に反する。
点 $(x,y)$ がコンパクトな近傍 $N$ をもつとする。第 1 成分への射影 $\pi_1\colon\mathbb{R}_L^2\to\mathbb{R}_L$ は連続なので $\pi_1(N)$ は $\mathbb{R}_L$ のコンパクト集合であり、$N\supseteq Q(x,y;\varepsilon)$ から $\pi_1(N)\supseteq[x,x+\varepsilon)$ は非可算である。これは Sorgenfrey直線 の命題「コンパクト部分集合の可算性」に反する。$\square$

Lindelöf でないこと

Lindelöf 空間でない

$\mathbb{R}_L^2$ は Lindelöf空間でない。また、可分な $\mathbb{R}_L^2$ の閉部分空間 $\Delta^-$ は可分でない。

各 $x\in\mathbb{R}$ について $B_x=Q(x,-x;1)$ とおき、
$$ \mathcal{U}=\{\mathbb{R}^2\setminus\Delta^-\}\cup\{B_x\mid x\in\mathbb{R}\} $$
を考える。prop-sorgenfrey-plane-lines の 2 により $\mathbb{R}^2\setminus\Delta^-$ は開であり、$\Delta^-$ の各点 $(x,-x)$ は $B_x$ に含まれるので、$\mathcal{U}$ は開被覆である。同じく 2 により $B_x\cap\Delta^-=\{(x,-x)\}$ なので、点 $(x,-x)$ を含む $\mathcal{U}$ の元は $B_x$ だけである。したがって $\mathcal{U}$ の部分被覆はすべての $B_x$($x\in\mathbb{R}$)を含み、非可算である。高々可算な部分被覆は存在しない。
$\Delta^-$ は非可算な離散空間であり、その稠密部分集合は $\Delta^-$ 自身しかない(一点集合が開だから)。よって $\Delta^-$ は可分でない。$\square$

同じ結論は、Lindelöf 性が閉部分空間に遺伝すること(Lindelöf空間 の命題「閉部分空間への遺伝」)と、非可算な離散空間 $\Delta^-$ が Lindelöf でないことからも得られる。Sorgenfrey直線 は Lindelöf なので、thm-sorgenfrey-plane-not-lindelof は Lindelöf 性が有限個の直積でも保たれない ことを示している。また後半は、可分性が閉部分空間にさえ遺伝しないことの、Hausdorff で完全正則な空間での例になっている。

正規でないこと

濃度による証明

Sorgenfrey 平面は正規でない

$\mathbb{R}_L^2$ は正規空間でない。すなわち、交わらない閉集合 $A,B$ であって、$A\subseteq U$、$B\subseteq V$、$U\cap V=\emptyset$ となる開集合 $U,V$ が存在しないものがある。

部分集合を有理点で数える

$\mathbb{R}_L^2$ が正規であると仮定して矛盾を導く。$D=\mathbb{Q}^2$ とおく。
段 1:単射 $\Phi\colon\mathcal{P}(\Delta^-)\to\mathcal{P}(D)$ を作る。$S\subseteq\Delta^-$ とすると、prop-sorgenfrey-plane-lines の 3 により $S$ と $\Delta^-\setminus S$ はともに $\mathbb{R}_L^2$ の閉集合で、互いに交わらない。正規性により、交わらない開集合 $U_S\supseteq S$、$V_S\supseteq\Delta^-\setminus S$ を、各 $S$ について一つずつ選ぶ(選択公理を用いる)。$\Phi(S)=U_S\cap D$ とおく。
$S\ne T$ とし、$p\in S\setminus T$ とする($p\in T\setminus S$ のときは $S$ と $T$ を入れ替える)。$p\in S\subseteq U_S$ かつ $p\in\Delta^-\setminus T\subseteq V_T$ なので、$U_S\cap V_T$ は空でない開集合であり、prop-sorgenfrey-plane-basic の 2 により $D$ の点 $q$ を含む。$q\in V_T$ と $U_T\cap V_T=\emptyset$ から $q\notin U_T$ である。よって $q\in\Phi(S)\setminus\Phi(T)$ であり、$\Phi$ は単射である。
段 2:単射 $\psi\colon\mathcal{P}(D)\to\mathbb{R}$ を作る。$D$ は可算無限集合なので全単射 $e\colon\mathbb{N}_{\ge1}\to D$ をとる。$T\subseteq D$ に対し
$$ \psi(T)=\sum_{n\ge1,\ e(n)\in T}10^{-n} $$
とおく。$T\ne T'$ とし、$e(n)$ が $T$ と $T'$ の一方だけに属するような最小の $n$ を $m$ とする。$e(m)\in T$、$e(m)\notin T'$ としてよい。$n< m$ の項は打ち消し合うので
$$ \psi(T)-\psi(T')\ge10^{-m}-\sum_{n>m}10^{-n}=10^{-m}-\frac{10^{-m}}{9}>0 $$
であり、$\psi$ は単射である。
段 3:$\iota(x)=(x,-x)$ は $\mathbb{R}$ から $\Delta^-$ への全単射なので、$X\mapsto\iota(X)$ は単射 $\mathcal{P}(\mathbb{R})\to\mathcal{P}(\Delta^-)$ である。これと $\Phi$、$\psi$ を合成すると、単射 $\mathcal{P}(\mathbb{R})\to\mathbb{R}$ が得られる。しかし任意の集合 $X$ について $\mathcal{P}(X)$ から $X$ への単射は存在しない(Cantorの定理 の定理「Cantorの定理」の 3)。これは矛盾である。$\square$

この証明の要点は、正規な可分空間では閉離散集合 $D'$ の部分集合が $2^{|D'|}$ 個あるのに、それらを可算稠密集合の部分集合 $2^{\aleph_0}$ 個で区別できてしまうことにある。一般の形は「可分な正規空間の閉離散集合の濃度は連続体濃度より小さい」であり、Niemytzki平面 の補題「可分な正規空間の閉離散集合」で扱われている(Jones の補題)。Niemytzki 平面も同じ理由で正規でない。

分離できない具体的な閉集合

prf-sorgenfrey-not-normal は、どの 2 つの閉集合が分離できないのかを教えない。次の命題は、反対角線の有理点と無理点が分離できないことを示す。

有理点と無理点は分離できない

$$ A=\{(x,-x)\mid x\in\mathbb{Q}\},\qquad B=\{(x,-x)\mid x\in\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\} $$
は $\mathbb{R}_L^2$ の交わらない閉集合であり、$A\subseteq U$、$B\subseteq V$ を満たす開集合 $U,V$ は必ず交わる。

Baire のカテゴリー定理を使う

$A,B\subseteq\Delta^-$ なので、prop-sorgenfrey-plane-lines の 3 により閉集合である。$V$ を $B$ を含む開集合とする。
段 1:$n\ge1$ について
$$ K_n=\{x\in[0,1]\setminus\mathbb{Q}\mid Q(x,-x;1/n)\subseteq V\} $$
とおく。無理数 $x\in[0,1]$ については $(x,-x)\in B\subseteq V$ なので、prop-sorgenfrey-plane-basis の 2 により $Q(x,-x;\varepsilon)\subseteq V$ となる $\varepsilon$ があり、$1/n< \varepsilon$ ならば $x\in K_n$ である。したがって
$$ [0,1]=\bigcup_{n\ge1}\overline{K_n}\ \cup\bigcup_{r\in\mathbb{Q}\cap[0,1]}\{r\} $$
である。ここで $\overline{K_n}$ は $[0,1]$ の通常の位相での閉包とする。右辺は可算個の閉集合の合併である。
段 2:$[0,1]$ は空でない完備距離空間なので、Baireのカテゴリー定理 の系「閉集合による可算被覆」により、右辺の閉集合のどれかは $[0,1]$ の中で空でない内部をもつ。一点集合 $\{r\}$ の内部は空なので、ある $n$ について $\overline{K_n}$ の内部は空でなく、開区間 $(a,b)$($0\le a< b\le1$)を含む。このとき $K_n$ は $(a,b)$ で稠密である。
段 3:有理数 $q\in(a,b)$ をとり、点 $(q,-q)\in A$ の任意の半開正方形 $Q(q,-q;\delta)$ が $V$ と交わることを示す。$0< \varepsilon< \min\{\delta,1/n\}$ をとる。開区間 $(\max\{a,q-\varepsilon\},q)$ は $(a,b)$ の空でない開部分区間なので、$K_n$ の点 $y$ を含む。このとき $q-\varepsilon< y< q$ なので
$$ y< q< y+\varepsilon< y+\frac1n,\qquad -y< -q+\varepsilon< -y+\frac1n $$
である(後者の左の不等号は $y>q-\varepsilon$、右の不等号は $q-y>0>\varepsilon-1/n$ による)。よって点 $(q,-q+\varepsilon)$ は $Q(y,-y;1/n)\subseteq V$ に属する。一方 $0< \varepsilon< \delta$ なので $(q,-q+\varepsilon)\in Q(q,-q;\delta)$ でもある。
段 4:$U$ を $A$ を含む開集合とすると、$(q,-q)\in U$ から $Q(q,-q;\delta)\subseteq U$ となる $\delta>0$ があり、段 3 によりこれは $V$ と交わる。よって $U\cap V\ne\emptyset$ である。$\square$

prop-sorgenfrey-plane-rational-irrational は thm-sorgenfrey-not-normal の別証明になっている。こちらは濃度の議論を使わず、各 $S$ について開集合を選ぶ操作もしない。

帰結

正規でないことから従う性質
  1. prop-sorgenfrey-plane-rational-irrational の $A,B$ に対し、$A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ となる連続関数 $f\colon\mathbb{R}_L^2\to[0,1]$ は存在しない。
  2. $\mathbb{R}_L^2$ はパラコンパクト空間でない。
  3. $\mathbb{R}_L^2$ は距離化可能(距離化可能空間)でない。
  1. そのような $f$ があれば、$f^{-1}([0,1/2))$ と $f^{-1}((1/2,1])$ は $A$ と $B$ を含む交わらない開集合であり、prop-sorgenfrey-plane-rational-irrational に反する(正規空間 の命題「関数による分離は正規性を導く」と同じ議論)。
  2. 可分かつパラコンパクトな空間は Lindelöf である(可分空間 の命題「可分かつパラコンパクトならLindelöf」)。$\mathbb{R}_L^2$ は可分(prop-sorgenfrey-plane-basic の 2)で Lindelöf でない(thm-sorgenfrey-plane-not-lindelof)から、パラコンパクトでない。パラコンパクトな Hausdorff 空間は正規である(パラコンパクト空間 の命題「正則性と正規性」)ことと thm-sorgenfrey-not-normal からも従う。
  3. 距離空間は正規である(正規空間 の定理「距離空間は正規」)から、thm-sorgenfrey-not-normal により従う。可分な距離空間は第2可算である(第2可算公理 の定理「距離空間における同値性」)ことと cor-sorgenfrey-plane-not-second-countable からも従う。$\square$

1 は、Urysohnの補題 から正規性の仮定を外せないこと、とくに完全正則な空間でも交わらない閉集合を連続関数で分けられるとは限らないことを示している。点と閉集合は関数で分けられる(prop-sorgenfrey-plane-basic の 3)が、閉集合どうしは分けられない。

直線と平面の比較

Sorgenfrey直線 で成り立つ性質のうち、平面に持ち越せるものと持ち越せないものは次のとおりである。直線の欄の主張と証明は Sorgenfrey直線 の記事にある。

性質$\mathbb{R}_L$$\mathbb{R}_L^2$平面についての根拠
第1可算・可分はいはいprop-sorgenfrey-plane-basic
Hausdorff・完全正則はいはいprop-sorgenfrey-plane-basic
第2可算いいえいいえcor-sorgenfrey-plane-not-second-countable
局所コンパクトいいえいいえcor-sorgenfrey-plane-not-second-countable
Lindelöfはいいいえthm-sorgenfrey-plane-not-lindelof
正規はい(完全正規)いいえthm-sorgenfrey-not-normal
パラコンパクトはいいいえcor-sorgenfrey-plane-consequences
距離化可能いいえいいえcor-sorgenfrey-plane-consequences

直線が完全正則であることは、prf-sorgenfrey-plane-basic の 3 と同じ議論で示せる。点 $x$ を含まない閉集合 $F$ に対し、$[x,x+\varepsilon)\cap F=\emptyset$ となる $\varepsilon$ をとると、$[x,x+\varepsilon)$ は開かつ閉なので、その特性関数を $1$ から引いた関数が $x$ と $F$ を分ける連続関数になる。
Lindelöf 性・正規性・パラコンパクト性は、いずれも 2 つの空間の直積で失われうる。一方、第1可算性・可分性・Hausdorff 性・完全正則性は有限個の直積で保たれる性質であり、表の上の 2 行はその例である。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
一方の因子のコンパクト性(パラコンパクト空間とコンパクト空間の直積はパラコンパクト、パラコンパクト空間 の命題「コンパクト空間との直積」)$\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$(第 2 因子はパラコンパクトだがコンパクトでない)直積のパラコンパクト性
因子の第2可算性(第2可算空間の有限直積は第2可算、とくに Lindelöf。第2可算公理 の命題「可算個の直積」「三つの帰結」)$\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$(因子は Lindelöf だが第2可算でない)直積の Lindelöf 性
正規性(Urysohnの補題)$\mathbb{R}_L^2$ の $A,B$(完全正則だが正規でない)交わらない閉集合を連続関数で分けること
距離化可能性(可分な距離空間の部分空間は可分。第2可算公理 の定理「距離空間における同値性」と命題「部分空間への遺伝」から従う)$\mathbb{R}_L^2$ の $\Delta^-$閉部分空間の可分性
直線の傾きが $0$ または $1$ であること(prop-sorgenfrey-plane-lines の 1)反対角線 $\Delta^-$直線が $\mathbb{R}_L$ と同相であること(離散になる)

補足

  • 呼び名:$\mathbb{R}_L$ を $\mathbb{R}_\ell$ や $K$ と書く文献もあり、Sorgenfrey 平面は $\mathbb{R}_\ell^2$ や $K\times K$ と書かれる。
  • 文献:Lindelöf でないことは Mun00 §30 Example 4(p. 193)、濃度による非正規性の証明は Mun00 §31 Example 3(p. 198)、有理点と無理点が分離できないことは Mun00 §31 Exercise 9(p. 200)で扱われている。Eng89 Example 2.3.12(p. 80)は、可分な正規空間が連続体濃度の閉離散部分空間をもたないこと(Corollary 2.1.10、p. 70)から $K\times K$ が正規でないことを導き、正規性・遺伝的正規性・完全正規性が有限個の直積で保たれないことの例としている。
  • 原論文:$K\times K$ が正規でないという例は R. H. Sorgenfrey Sorg47 による(Eng89 §2.3 の歴史の注、p. 88)。Eng89 Example 5.1.31(p. 309)は、これと $K$ のパラコンパクト性から、2 つのパラコンパクト空間の直積がパラコンパクトとは限らないことを導いている。
  • 関連する例:Niemytzki平面 も、可分で連続体濃度の閉離散集合をもつために正規でない平面である。

関連項目

参考文献

[1]
James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000, §30 Example 4(p. 193)、§31 Example 3(p. 198)、§31 Exercise 9(p. 200)
[2]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, 1989, Corollary 2.1.10(p. 70)、Example 2.3.12(p. 80)、§2.3 の歴史の注(p. 88)、Example 5.1.31(p. 309)
[3]
Robert Henry Sorgenfrey, On the topological product of paracompact spaces, Bulletin of the American Mathematical Society, 1947

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