等温座標

同義語:等角座標isothermal coordinatesisothermal parameters

概要

等温座標(isothermal coordinates)とは、2 次元の Riemann 多様体の局所座標 $(x,y)$ で、計量が正の関数 $\lambda$ によって $g=\lambda^2(dx^2+dy^2)$ と書けるもの、すなわち座標が角度を正しく写すものである。2 次元ではどの点のまわりにも等温座標があり(Korn–Lichtenstein の定理)、その存在は微分が消えない調和関数の存在と同値である。向きを保つ等温座標どうしの座標変換は正則関数なので、向きのついた曲面の計量の共形類は Riemann 面の構造を定める。等温座標では Gauss 曲率が $K=-\lambda^{-2}\Delta\log\lambda$ と表され、Mercator 図法、ステレオ射影、双曲平面、極小曲面の調和な表示がその例である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Riemann多様体, 共形変換, Hodgeのスター作用素, 正則関数

地図の上で測った角度が地表での本当の角度と一致する地図を、角度を保つ地図という。メルカトル図法の世界地図がその代表で、距離は緯度によって伸び縮みするが、交わる 2 本の道のなす角は正しく描かれる。曲面の上の座標 $(x,y)$ がこの性質をもつのは、計量(長さの測り方)が各点で Euclid の計量の正の関数倍
$$ g=\lambda^2\,(dx^2+dy^2) $$
の形をとるときである。このような座標を等温座標(isothermal coordinates)という。
2 次元の Riemann 多様体では、どの点のまわりにも等温座標がある。これが 2 次元に特有の事実で、3 次元以上では一般に成り立たない。等温座標は 2 次元の Riemann 幾何を複素関数論に結びつける。向きを保つ等温座標どうしの座標変換は正則関数になるので、向きのついた曲面に計量を 1 つ入れると、自然に Riemann面 の構造が決まる。この記事では、等温座標を定義し、調和関数による特徴づけ、座標変換の正則性、等温座標での Gauss 曲率の公式を証明し、回転面・球面・双曲平面・極小曲面での例を調べる。

定義

以下、$(M,g)$ を 2 次元の Riemann 多様体とする。

等温座標

$M$ の局所座標 $(U,(x,y))$ が等温座標であるとは、$U$ 上の正の滑らかな関数 $\lambda$ があって
$$ g=\lambda^2\,(dx^2+dy^2) $$
となることをいう。第 1 基本形式の係数 $E=g(\partial_x,\partial_x)$、$F=g(\partial_x,\partial_y)$、$G=g(\partial_y,\partial_y)$ で言えば、$E=G$ かつ $F=0$ である。$\lambda=e^{\varphi}$ と書いて $g=e^{2\varphi}(dx^2+dy^2)$ とすることも多い。

この条件は、座標写像 $(x,y)\colon U\to\mathbb R^2$ が $(U,g)$ から $\mathbb R^2$ の開集合(Euclid の計量)への共形変換であることと同じである。実際、Euclid の計量を引き戻したものが $dx^2+dy^2=\lambda^{-2}g$ になる。
2 つの接ベクトル $X=a\partial_x+b\partial_y$、$Y=c\partial_x+d\partial_y$ について $g(X,Y)=\lambda^2(ac+bd)$ だから、$g$ で測った $X,Y$ のなす角は、成分 $(a,b)$、$(c,d)$ の Euclid の角と等しい。等温座標は「角度を正しく写す地図」である。Gauss曲率 の記事で「等角座標」と呼んでいるものは、$\mathbb R^3$ の曲面の等温座標である。
計量を正の関数倍した $e^{2\rho}g$ についても、$g$ の等温座標はそのまま等温座標である($\lambda$ が $e^{\rho}\lambda$ に変わるだけ)。したがって等温座標という概念は、計量の共形類だけで決まる。

等温座標の存在

2 次元の Riemann 多様体 $(M,g)$ のどの点のまわりにも、等温座標がある。

存在定理の出典

この定理は Korn と Lichtenstein による。この記事では証明しない。主張は Lee18 p. 222 にあり、そこで挙げられている証明が Che55 である。Chern の論文は、ある座標での係数 $E,F,G$ が Hölder 連続であるという弱い仮定のもとで等温座標の存在を示している(Che55 pp. 771–772 の定理)。同じ論文の序(p. 771)は、係数が連続であるだけでは足りないという Hartman–Wintner の結果を紹介している。証明の核心は偏微分方程式にあり、次の節で見るように、定理は「微分が消えない調和関数が局所的に存在する」ことと同値である。

2 次元の Lorentz 計量についても、$g=\lambda^2(dx^2-dy^2)$ の形になる座標が局所的にある(Lee18 p. 222 は演習 Problem 7-15 に回している。この記事では扱わない)。以下ではリーマン計量だけを扱う。

調和関数による特徴づけ

この節では $M$ に向きがついているとする(局所的にはいつでもつけられる)。正の向きの正規直交余枠 $\theta^1,\theta^2$ について、面積形式を $dA=\theta^1\wedge\theta^2$ とし、1 次形式の Hodgeのスター作用素 $*$ は $*\theta^1=\theta^2$、$*\theta^2=-\theta^1$ で与えられる。滑らかな関数 $u$ の Laplacian $\Delta_gu$ を
$$ d*du=(\Delta_gu)\,dA $$
で定め、$\Delta_gu=0$ となる $u$ を $g$ に関する調和関数という。

等温座標での Laplacian

$(x,y)$ を正の向きの等温座標とし、$g=\lambda^2(dx^2+dy^2)$ とする。このとき
$$ *dx=dy,\qquad *dy=-dx,\qquad dA=\lambda^2\,dx\wedge dy,\qquad \Delta_gu=\frac1{\lambda^2}\Bigl(\frac{\partial^2u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2u}{\partial y^2}\Bigr) $$
である。とくに座標関数 $x,y$ は $g$ に関する調和関数であり、$dy=*dx$ を満たす。

$\theta^1=\lambda\,dx$、$\theta^2=\lambda\,dy$ は正の向きの正規直交余枠である($g=(\theta^1)^2+(\theta^2)^2$)。よって $dA=\theta^1\wedge\theta^2=\lambda^2dx\wedge dy$ であり、$*\theta^1=\theta^2$ を $\lambda$ で割って $*dx=dy$、同様に $*dy=-dx$ を得る(1 次形式の $*$ が共形不変であることは Hodgeのスター作用素 の命題「計量の共形変形とスター作用素」でもある)。したがって
$$ d*du=d(u_x\,dy-u_y\,dx)=(u_{xx}+u_{yy})\,dx\wedge dy=\frac{u_{xx}+u_{yy}}{\lambda^2}\,dA $$
である。$u=x$ なら右辺は $0$ で、$*dx=dy$ である。$\square$

逆に、微分が消えない調和関数から等温座標が作れる。

調和関数から等温座標を作る

$(M,g)$ を向きのついた 2 次元 Riemann 多様体、$p\in M$ とし、$u$ を $p$ の近傍で定義された調和関数で $du_p\neq0$ となるものとする。このとき $p$ の近傍 $W$ と $W$ 上の滑らかな関数 $v$ で $dv=*du$ となるものがあり、$(u,v)$ は $W$ 上の正の向きの等温座標で
$$ g=\frac1{|du|_g^2}\,\bigl(du^2+dv^2\bigr) $$
となる。したがって、$p$ のまわりに等温座標があることと、$p$ の近傍で定義された調和関数 $u$ で $du_p\neq0$ となるものがあることは同値である。

$u$ の定義域に含まれる $p$ の座標円板 $V$ をとる。$d(*du)=(\Delta_gu)\,dA=0$ なので $*du$ は $V$ 上の閉形式であり、Poincaréの補題 により $V$ 上の関数 $v$ で $dv=*du$ となるものがある。
各点で正の向きの正規直交余枠 $\theta^1,\theta^2$ をとり、$du=a\theta^1+b\theta^2$ と書くと、$dv=*du=-b\theta^1+a\theta^2$ である。よって余接空間の内積について
$$ |du|^2=|dv|^2=a^2+b^2=:\mu^2,\qquad \langle du,dv\rangle=0,\qquad du\wedge dv=\mu^2\,\theta^1\wedge\theta^2 $$
である。$p$ では $\mu\neq0$ なので $du\wedge dv\neq0$ であり、逆関数定理 により $(u,v)$ は $p$ のある近傍 $W$ で局所座標になる。$\mu$ は $W$ 上で $0$ にならないとしてよい。$W$ 上で $du/\mu$、$dv/\mu$ は正規直交余枠なので、$g=(du/\mu)^2+(dv/\mu)^2$ である。$du\wedge dv$ は $dA$ の正の倍数なので、座標 $(u,v)$ は正の向きである。
最後の同値について、等温座標 $(x,y)$ があれば、prop-iso-laplacian により $x$ は調和関数で $dx\neq0$ である(向きが逆なら $(x,-y)$ をとる)。逆は前半から従う。$\square$

座標変換の正則性と Riemann 面

等温座標の取り替えは正則

$(x,y)$ と $(u,v)$ を連結な開集合 $U$ 上の 2 つの等温座標とし、$z=x+iy$、$w=u+iv$ とおく。座標変換 $z\mapsto w$ は、2 つの座標が同じ向きを定めるなら正則関数、逆の向きを定めるなら反正則関数(共役が正則な関数)であり、いずれの場合も導関数は $0$ にならない。

$U$ に $(x,y)$ の定める向きを入れる。$U$ は連結で座標変換の Jacobi 行列式は $0$ にならないので、その符号は一定である。まず $(u,v)$ も正の向きだとする。prop-iso-laplacian を 2 つの座標に当てると $dv=*du$ であり、$*$ は座標 $(x,y)$ では $*dx=dy$、$*dy=-dx$ で表される。Hodgeのスター作用素 の例「Cauchy–Riemann方程式」により、$dv=*du$ は $u_x=v_y$、$u_y=-v_x$ と同値で、$w=u+iv$ は $z$ の正則関数である。Jacobi 行列式は $u_xv_y-u_yv_x=u_x^2+v_x^2=|dw/dz|^2$ で、座標変換は微分同相なので $0$ でない。
$(u,v)$ が逆の向きなら $(u,-v)$ は正の向きの等温座標なので、$\bar w=u-iv$ が正則である。$\square$

曲面の上の Riemann 面の構造

向きのついた 2 次元 Riemann 多様体 $(M,g)$ の正の向きの等温座標の全体は、$M$ の正則座標系(Riemann面 の構造)を定める。計量を共形同値な計量 $e^{2\rho}g$ に替えても、この構造は変わらない。また、向きのついた 2 次元 Riemann 多様体の間の向きを保つ共形変換は、この構造について双正則である。

thm-iso-existence により正の向きの等温座標は $M$ を覆い、thm-iso-holomorphic により座標変換は正則で導関数が $0$ にならない。$e^{2\rho}g$ の等温座標は $g$ の等温座標と同じである。向きを保つ共形変換 $\phi\colon(M,g)\to(N,h)$、$\phi^*h=e^{2\rho}g$ と $N$ の正の向きの等温座標 $(u,v)$、$h=\mu^2(du^2+dv^2)$ について、$(u\circ\phi,v\circ\phi)$ は $g=e^{-2\rho}(\mu\circ\phi)^2\bigl(d(u\circ\phi)^2+d(v\circ\phi)^2\bigr)$ を満たす正の向きの等温座標なので、$\phi$ は正則座標で恒等写像として表される。$\square$

逆に、Riemann 面の上には、各正則座標で $\lambda^2|dz|^2$ の形をとる計量が 1の分割 で作れる(正則な座標変換 $w=w(z)$ のもとで $|dw|^2=|w'(z)|^2|dz|^2$ なので、この形は座標によらない)。したがって、向きのついた曲面の上では「計量の共形類」と「Riemann 面の構造」は同じものを表す。

等温座標での曲率

曲率テンソルは $R(X,Y)Z=\nabla_X\nabla_YZ-\nabla_Y\nabla_XZ-\nabla_{[X,Y]}Z$ とし、2 次元では 断面曲率 $K=\dfrac{g(R(\partial_x,\partial_y)\partial_y,\partial_x)}{EG-F^2}$ が Gauss 曲率である(断面曲率 の系「2次元多様体の断面曲率」)。

等温座標での Gauss 曲率

$(x,y)$ を等温座標とし、$g=e^{2\varphi}(dx^2+dy^2)$ とする。このとき Gauss 曲率は
$$ K=-e^{-2\varphi}\Bigl(\frac{\partial^2\varphi}{\partial x^2}+\frac{\partial^2\varphi}{\partial y^2}\Bigr) $$
である。$\lambda=e^{\varphi}$ で書けば $K=-\lambda^{-2}\Delta\log\lambda$($\Delta$ は Euclid の Laplacian)である。

要点:Christoffel 記号を計算し、$R(\partial_x,\partial_y)\partial_y=-(\varphi_{xx}+\varphi_{yy})\,\partial_x$ を示す。

計算を開く

$g_{ij}=e^{2\varphi}\delta_{ij}$ を $\Gamma^k_{ij}=\frac12g^{kl}(\partial_ig_{jl}+\partial_jg_{il}-\partial_lg_{ij})$ に入れると $\Gamma^k_{ij}=\delta_{jk}\varphi_i+\delta_{ik}\varphi_j-\delta_{ij}\varphi_k$($\varphi_1=\varphi_x$、$\varphi_2=\varphi_y$)なので

$$\nabla_{\partial_x}\partial_x=\varphi_x\partial_x-\varphi_y\partial_y,\quad \nabla_{\partial_x}\partial_y=\nabla_{\partial_y}\partial_x=\varphi_y\partial_x+\varphi_x\partial_y,\quad \nabla_{\partial_y}\partial_y=-\varphi_x\partial_x+\varphi_y\partial_y$$

である。これを使うと

$$\nabla_{\partial_x}\nabla_{\partial_y}\partial_y=(-\varphi_{xx}-\varphi_x^2+\varphi_y^2)\,\partial_x+(\varphi_{xy}+2\varphi_x\varphi_y)\,\partial_y,$$

$$\nabla_{\partial_y}\nabla_{\partial_x}\partial_y=(\varphi_{yy}+\varphi_y^2-\varphi_x^2)\,\partial_x+(\varphi_{xy}+2\varphi_x\varphi_y)\,\partial_y$$

で、$[\partial_x,\partial_y]=0$ だから $R(\partial_x,\partial_y)\partial_y=-(\varphi_{xx}+\varphi_{yy})\partial_x$ である。$g(\partial_x,\partial_x)=e^{2\varphi}$、$EG-F^2=e^{4\varphi}$ なので $K=-e^{-2\varphi}(\varphi_{xx}+\varphi_{yy})$ である。$\square$

$\mathbb R^3$ の曲面については同じ式が Gauss曲率 の系「直交座標・等角座標での Gauss 曲率」にあり、そこでは曲面の第 2 基本形式を経由して示されている。上の証明は計量だけを使うので、$\mathbb R^3$ に入っていない抽象的な曲面にもそのまま当てはまる。

平坦な曲面は局所的に平面と等長

$(M,g)$ の Gauss 曲率が恒等的に $0$ なら、$M$ の各点の近傍は Euclid 平面の開集合と等長である。

$p$ のまわりの等温座標 $z=x+iy$ を座標円板 $U$ の上でとり、$g=\lambda^2|dz|^2$ とする。prop-iso-curvature により $\log\lambda$ は Euclid の調和関数なので、thm-iso-harmonic の証明と同じく $U$ 上の関数 $\sigma$ で $d\sigma=*d\log\lambda$ となるものがあり、Hodgeのスター作用素 の例「Cauchy–Riemann方程式」により $h=\log\lambda+i\sigma$ は $U$ 上の正則関数である。円板の上の正則関数 $e^h$ には原始関数 $F$($F'=e^h$)がある。$|F'|=e^{\mathrm{Re}\,h}=\lambda>0$ なので $F$ は局所的に双正則で、$w=F(z)$ について
$$ |dw|^2=|F'(z)|^2\,|dz|^2=\lambda^2|dz|^2=g $$
である。よって $p$ の近傍で $F$ は Euclid 平面の開集合への等長写像である。$\square$

例

回転面と Mercator の座標

$\mathbb R^3$ の回転面 $x(s,\theta)=\bigl(f(s)\cos\theta,\ f(s)\sin\theta,\ h(s)\bigr)$($f>0$、$f'^2+h'^2=1$)の計量は $g=ds^2+f(s)^2d\theta^2$ で、$E=1$、$G=f^2$ だから $(s,\theta)$ は等温座標でない。そこで
$$ \sigma(s):=\int_{s_0}^s\frac{dt}{f(t)} $$
とおくと $d\sigma=ds/f$ なので $g=f^2\,(d\sigma^2+d\theta^2)$ となり、$(\sigma,\theta)$ は等温座標である($d\sigma/ds>0$ なので局所座標)。
単位球面では $f(s)=\sin s$($0< s<\pi$、$s$ は北極からの角距離)で、$\sigma=\log\tan(s/2)$ である。$\tan(s/2)=e^\sigma$ から $\sin s=1/\cosh\sigma$ となり
$$ g_{S^2}=\frac{d\sigma^2+d\theta^2}{\cosh^2\sigma} $$
である。これが Mercator 図法($\sigma$ を縦、$\theta$ を横にとる地図)が角度を保つ理由である。$\varphi=-\log\cosh\sigma$ とすると $\varphi_{\sigma\sigma}=-1/\cosh^2\sigma$ なので、prop-iso-curvature から $K=\cosh^2\sigma\cdot\cosh^{-2}\sigma=1$ である。
平面を回転面とみると($f(s)=s$)、$\sigma=\log s$ で $dx^2+dy^2=s^2\bigl((d\log s)^2+d\theta^2\bigr)$ である。$(\log r,\theta)$ は平面の等温座標で、$\log r+i\theta$ は $z$ の対数関数(正則関数)である。

ステレオ射影と双曲平面
  1. 共形変換 の例「ステレオ射影」により、北極からのステレオ射影の座標 $(x,y)$ で単位球面の計量は $g=\dfrac{4}{(1+x^2+y^2)^2}(dx^2+dy^2)$ である。$\varphi=\log2-\log(1+r^2)$($r^2=x^2+y^2$)について $\Delta\log(1+r^2)=\dfrac{4}{(1+r^2)^2}$ なので、$K=\dfrac{(1+r^2)^2}{4}\cdot\dfrac{4}{(1+r^2)^2}=1$ である。北極からの角距離を $s$ とすると $r=\cot(s/2)=e^{-\sigma}$ であり、ex-iso-revolution の Mercator の座標との変換は $\sigma+i\theta=-\overline{\log z}$ となる。2 つの座標は逆の向きを定めるので、thm-iso-holomorphic のとおり変換は反正則である。
  2. 上半平面 $\{y>0\}$ の計量 $g=\dfrac{dx^2+dy^2}{y^2}$(上半平面、双曲計量)では $\varphi=-\log y$、$\Delta\varphi=1/y^2$ なので $K=-y^2\cdot y^{-2}=-1$ である。単位円板の計量 $\dfrac{4(dx^2+dy^2)}{(1-r^2)^2}$ でも同じ計算で $K=-1$ となる。
  3. Gauss曲率 の例「懸垂面と螺旋面」の 2 つの曲面は、どちらも $E=G=\cosh^2u$、$F=0$ の等温座標で表されている。
極小曲面の等温表示

$x\colon U\to\mathbb R^3$ を $C^2$ 級の正則曲面片とし、$(u,v)$ が等温座標($E=G=\lambda^2$、$F=0$)であるとする。単位法ベクトルを $\nu$、平均曲率を $H$(Gauss曲率 の定義「主曲率・Gauss 曲率・平均曲率」)とすると
$$ x_{uu}+x_{vv}=2\lambda^2H\,\nu $$
である。とくに曲面が極小($H\equiv0$)であることと、$x$ の 3 つの成分がすべて $(u,v)$ の調和関数であることは同値である。

$\langle x_u,x_u\rangle=\langle x_v,x_v\rangle$、$\langle x_u,x_v\rangle=0$ をそれぞれ $u$、$v$ で微分すると
$$ \langle x_{uu},x_u\rangle=\tfrac12E_u=\tfrac12G_u=\langle x_{uv},x_v\rangle,\qquad \langle x_{vv},x_u\rangle=-\langle x_v,x_{uv}\rangle $$
なので $\langle x_{uu}+x_{vv},x_u\rangle=0$ である。$u$ と $v$ の役割を入れ替えて $\langle x_{uu}+x_{vv},x_v\rangle=0$ も得る。よって $x_{uu}+x_{vv}$ は $\nu$ の向きで、その成分は $L+N$ である。Gauss曲率 の定理「第 1・第 2 基本形式による表示」で $E=G=\lambda^2$、$F=0$ とおくと $H=\dfrac{L+N}{2\lambda^2}$ なので、$x_{uu}+x_{vv}=2\lambda^2H\nu$ である。$\square$

懸垂面 $x(u,v)=(\cosh u\cos v,\ \cosh u\sin v,\ u)$ では $x_{uu}+x_{vv}=(\cosh u\cos v,\ \cosh u\sin v,\ 0)-(\cosh u\cos v,\ \cosh u\sin v,\ 0)=0$ なので、懸垂面は極小曲面である。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
次元が 2単位球面の積 $S^2\times S^2$(4 次元)各点のまわりに $g=\lambda^2\sum_i(dx^i)^2$ となる座標がある
2 つの座標が同じ向きを定める平面の $(x,y)$ と $(x,-y)$座標変換が正則関数である
$E=G$($F=0$ だけを残す)平面の極座標 $(r,\theta)$座標関数が調和関数である
$du_p\neq0$平面の $u=x^2-y^2$、$p=0$$(u,v)$($dv=*du$)が $p$ のまわりの座標になる
反例の確かめ

1 行目:Weylテンソル の例「球面の積」により $S^2\times S^2$ は局所共形平坦でない。各点のまわりに $g=\lambda^2\sum(dx^i)^2$ となる座標があれば局所共形平坦なので、そのような座標はない。2 次元では thm-iso-existence によりどの計量にもある。
2 行目:どちらも Euclid の計量 $dx^2+dy^2$ の等温座標だが、変換 $z\mapsto\bar z$ は正則でない(反正則である)。
3 行目:$dx^2+dy^2=dr^2+r^2d\theta^2$ なので $F=0$ だが $E=1\neq r^2=G$ である。$r=\sqrt{x^2+y^2}$ について $r_{xx}+r_{yy}=1/r\neq0$ なので、prop-iso-laplacian の「座標関数は調和関数」が成り立たない。$r+i\theta$ も $z$ の正則関数でない($\log r+i\theta$ が正則である)。
4 行目:$u$ は調和関数で $du_0=0$ である。$dv=*du=2x\,dy+2y\,dx$ から $v=2xy$ で、$(u,v)$ は $z\mapsto z^2$ の実部と虚部である。$z$ と $-z$ が同じ値に写るので、$0$ のどの近傍でも単射でなく、座標にならない。

補足

3 次元以上。 $n\ge3$ 次元で $g=\lambda^2\sum(dx^i)^2$ となる座標が各点のまわりにあることは、計量が局所共形平坦であることにほかならない。$n\ge4$ では Weylテンソル が消えることと同値であり(共形変換 の定理「Weylテンソルと共形平坦性」)、一般の計量では成り立たない。2 次元ではこの条件がいつも満たされる、というのが thm-iso-existence の内容である。
極小曲面と複素関数論。 prop-iso-minimal により、等温座標で表した極小曲面の 3 つの成分は調和関数なので、$z=u+iv$ について $\partial x/\partial z=\frac12(x_u-ix_v)$ の 3 成分は正則関数になる。極小曲面の研究では、この事実を通して複素関数論の道具が使える。

関連項目

参考文献

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