ベータ分布

同義語:beta distributionBeta分布

概要

ベータ分布(beta distribution)とは、$p,q>0$ について区間 $(0,1)$ 上の密度 $t^{p-1}(1-t)^{q-1}/B(p,q)$ をもつ確率分布であり、平均は $p/(p+q)$、分散は $pq/((p+q)^2(p+q+1))$ である。率の等しい独立なガンマ分布に従う $X,Y$ について、割合 $X/(X+Y)$ は $\mathrm{Beta}(p,q)$ に従い、和 $X+Y$ と独立である。表の確率 $\Theta$ が $\mathrm{Beta}(p,q)$ に従う硬貨を $N$ 回投げて表が $s$ 回出たあとの $\Theta$ の分布は $\mathrm{Beta}(p+s,q+N-s)$ であり、ベータ分布は二項分布の共役事前分布として確率そのものの推定に使われる。$(0,1)$ 上の独立な一様分布の順序統計量もベータ分布に従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベータ関数, ガンマ分布, 確率密度関数

ベータ分布(beta distribution)は、2 つのパラメータ $p>0$、$q>0$ をもち、区間 $(0,1)$ の上で密度 $t^{p-1}(1-t)^{q-1}/B(p,q)$ をもつ確率分布である。正規化の定数は ベータ関数 $B(p,q)$ であり、$p=q=1$ のときは $(0,1)$ 上の一様分布になる。値が $0$ と $1$ の間にあるので、割合や確率そのものの分布として使われる。
ベータ分布は 3 つの場面に現れる。第一に、率の等しい独立なガンマ分布に従う $X,Y$ について、割合 $X/(X+Y)$ はベータ分布に従い、しかも和 $X+Y$ と独立である(主定理 1)。第二に、表の出る確率 $\Theta$ がベータ分布に従う硬貨を投げて表と裏の回数を観測すると、観測のあとの $\Theta$ の分布はまたベータ分布になり、パラメータに表と裏の回数が足される(主定理 2)。とくに $\Theta$ が一様分布に従うとき、表が $m$ 回、裏が $n$ 回出たあとの分布は $\mathrm{Beta}(m+1,n+1)$ である。第三に、$(0,1)$ 上の一様分布に従う $n$ 個の独立な確率変数の $k$ 番目に小さい値は $\mathrm{Beta}(k,n-k+1)$ に従う(順序統計量)。

定義

以下、確率変数はすべて 1 つの確率空間の上で考え、密度は 確率密度関数 の定義「確率密度関数」の意味とする。

ベータ分布

$p>0$、$q>0$ とする。密度
$$ b_{p,q}(t):=\frac{t^{p-1}(1-t)^{q-1}}{B(p,q)}\quad(0< t< 1),\qquad b_{p,q}(t):=0\quad(t\notin(0,1)) $$
をもつ分布を、パラメータ $(p,q)$ の ベータ分布 といい、$\mathrm{Beta}(p,q)$ と書く。

ベータ関数 の命題「積分の収束域」により $B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,dt$ は正の有限の値なので、$b_{p,q}$ は確率密度である。ベータ関数 の定理「Γ関数による表示」$B(p,q)=\Gamma(p)\Gamma(q)/\Gamma(p+q)$ により、密度は $\frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\Gamma(q)}t^{p-1}(1-t)^{q-1}$ とも書ける(この表示は thm-betad-gamma の証明からも従う)。
密度の形は $p,q$ で決まる。$p< 1$ なら $t\to+0$ で、$q< 1$ なら $t\to1-0$ で密度は $+\infty$ に発散する。$p>1$ かつ $q>1$ なら、$\log b_{p,q}$ の導関数 $(p-1)/t-(q-1)/(1-t)$ は単調に減少して $t=(p-1)/(p+q-2)$ で $0$ になるので、密度はそこで最大になる山形である。

$(p,q)$密度特徴
$(1,1)$$1$$(0,1)$ 上の一様分布
$(\frac12,\frac12)$$\dfrac1{\pi\sqrt{t(1-t)}}$両端で発散する(ex-betad-arcsine)
$(2,2)$$6t(1-t)$$t=\frac12$ で最大。$B(2,2)=\frac16$ は 1/6公式とベータ積分 の $\frac16$
$(k,n-k+1)$(整数)$\dfrac{n!}{(k-1)!\,(n-k)!}t^{k-1}(1-t)^{n-k}$一様分布の第 $k$ 順序統計量(順序統計量)
積率と対称性

$T\sim\mathrm{Beta}(p,q)$ とする。

  1. $1-T\sim\mathrm{Beta}(q,p)$ である。
  2. 実数 $r$ について、$E[T^r]$ が有限であることと $r>-p$ は同値であり、そのとき
    $$ E[T^r]=\frac{B(p+r,q)}{B(p,q)}=\frac{\Gamma(p+r)\,\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\,\Gamma(p+q+r)} $$
    である。
  3. $E[T]=\dfrac p{p+q}$、$\mathrm{Var}(T)=\dfrac{pq}{(p+q)^2(p+q+1)}$ である。

1:$P(0< T< 1)=1$ なので、確率密度関数 の定理「単調な変換による密度」を $I=(0,1)$、$\varphi(t)=1-t$ に使うと、$1-T$ は $(0,1)$ の上で密度 $b_{p,q}(1-u)=u^{q-1}(1-u)^{p-1}/B(p,q)$ をもつ。ベータ関数 の命題「対称性と漸化式」の 1 により $B(p,q)=B(q,p)$ なので、これは $b_{q,p}(u)$ である。
2:確率密度関数 の定理「密度による期待値の公式」により $E[T^r]=\frac1{B(p,q)}\int_0^1t^{p+r-1}(1-t)^{q-1}\,dt$ であり、ベータ関数 の命題「積分の収束域」により右辺の積分が有限であることは $p+r>0$ と同値で、そのとき値は $B(p+r,q)$ である。2 つめの等号は ベータ関数 の定理「Γ関数による表示」による。
3:ベータ関数 の命題「対称性と漸化式」の 4 により $B(p+1,q)=\frac p{p+q}B(p,q)$、$B(p+2,q)=\frac{p+1}{p+q+1}B(p+1,q)$ なので、$E[T]=\frac p{p+q}$、$E[T^2]=\frac{p(p+1)}{(p+q)(p+q+1)}$ である。よって
$$ \mathrm{Var}(T)=\frac{p(p+1)}{(p+q)(p+q+1)}-\frac{p^2}{(p+q)^2}=\frac{p\bigl((p+1)(p+q)-p(p+q+1)\bigr)}{(p+q)^2(p+q+1)}=\frac{pq}{(p+q)^2(p+q+1)} $$
である。$\square$

パラメータが整数のときは、分布関数が二項分布の確率で書ける。$1\le k\le n$ の整数について $\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!}=\frac1{B(k,n-k+1)}$(ベータ関数 の系「正の整数での値」)なので、順序統計量 の補題「二項分布の裾とベータ積分」は、$T\sim\mathrm{Beta}(k,n-k+1)$ と $0\le u\le1$ について
$$ P(T\le u)=\sum_{j=k}^n\binom nju^j(1-u)^{n-j} $$
であること、すなわち $P(T\le u)$ が二項分布 $B(n,u)$ に従う確率変数が $k$ 以上になる確率に等しいことを述べている。

主定理 1:ガンマ分布の割合

$f_{\alpha,\lambda}$ を ガンマ分布 の定義「ガンマ分布」の密度とする。

ガンマ分布の割合と和

$\lambda>0$ とし、$X\sim\mathrm{Gamma}(p,\lambda)$ と $Y\sim\mathrm{Gamma}(q,\lambda)$ が独立であるとする。$S:=X+Y$、$U:=X/(X+Y)$ とおく($X>0$、$Y>0$ が確率 $1$ で成り立つので、$U$ は確率 $1$ で定まる)。このとき

  1. $(U,S)$ は同時密度 $b_{p,q}(u)\,f_{p+q,\lambda}(s)$ をもつ。
  2. したがって $U\sim\mathrm{Beta}(p,q)$、$S\sim\mathrm{Gamma}(p+q,\lambda)$ であり、$U$ と $S$ は独立である。

$f:=f_{p,\lambda}$、$g:=f_{q,\lambda}$ とおく。$h\colon\mathbb R^2\to[0,\infty)$ を Borel 可測関数とする。
段 1(期待値を反復積分で書く)。 $X$ と $Y$ は独立なので、Dur19 Theorem 2.1.12(p. 48)により $E[h(U,S)]$ は $X$ の分布と $Y$ の分布についての反復積分に等しく、確率密度関数 の定理「密度による期待値の公式」を内側と外側に使うと
$$ E[h(U,S)]=\int_0^\infty\Bigl(\int_0^\infty h\Bigl(\frac x{x+y},\,x+y\Bigr)f(x)\,dx\Bigr)g(y)\,dy $$
である。
段 2(和の変数に替える)。 $y>0$ を固定し、内側の積分で $x=s-y$ と平行移動すると、内側は $\int_y^\infty h\bigl(\frac{s-y}s,s\bigr)f(s-y)\,ds$ になる。被積分関数は $0$ 以上なので、Fubiniの定理(Tonelli の形)で $y$ と $s$ の積分の順序を入れ替えると
$$ E[h(U,S)]=\int_0^\infty\Bigl(\int_0^sh\Bigl(\frac{s-y}s,\,s\Bigr)f(s-y)\,g(y)\,dy\Bigr)ds $$
である。
段 3(割合の変数に替える)。 $s>0$ を固定し、内側の積分で $y=s(1-u)$($0< u< 1$、$\lvert dy\rvert=s\,du$)と置換すると、$\frac{s-y}s=u$、$s-y=su$ なので
$$ E[h(U,S)]=\int_0^\infty\int_0^1h(u,s)\,f(su)\,g(s(1-u))\,s\,du\,ds $$
である。ここで
$$ f(su)\,g(s(1-u))\,s=\frac{\lambda^p(su)^{p-1}e^{-\lambda su}}{\Gamma(p)}\cdot\frac{\lambda^q(s(1-u))^{q-1}e^{-\lambda s(1-u)}}{\Gamma(q)}\cdot s=\frac{\lambda^{p+q}s^{p+q-1}e^{-\lambda s}}{\Gamma(p)\Gamma(q)}\,u^{p-1}(1-u)^{q-1} $$
である。
段 4(定数を決める)。 $h\equiv1$ とすると左辺は $1$ である。右辺は、$u$ の積分が $B(p,q)$、$s$ の積分が Γ関数 の例「尺度変換と Laplace 型積分」により $\Gamma(p+q)/\lambda^{p+q}$ なので、$\Gamma(p+q)B(p,q)/(\Gamma(p)\Gamma(q))$ である。よって $\Gamma(p)\Gamma(q)=\Gamma(p+q)B(p,q)$ であり、段 3 の式は
$$ f(su)\,g(s(1-u))\,s=\frac{\lambda^{p+q}s^{p+q-1}e^{-\lambda s}}{\Gamma(p+q)}\cdot\frac{u^{p-1}(1-u)^{q-1}}{B(p,q)}=f_{p+q,\lambda}(s)\,b_{p,q}(u) $$
と書き直せる。
段 5(結論)。 Borel 集合 $D\subset\mathbb R^2$ について $h=\mathbf 1_D$ とおき、Tonelli の形の Fubiniの定理 で反復積分を $\mathbb R^2$ 上の積分と見ると、$P((U,S)\in D)=\iint_Db_{p,q}(u)f_{p+q,\lambda}(s)\,du\,ds$ となる($u\notin(0,1)$ や $s\le0$ では密度は $0$)。これが 1 である。$D=A\times\mathbb R$、$D=\mathbb R\times C$ とすると $P(U\in A)=\int_Ab_{p,q}$、$P(S\in C)=\int_Cf_{p+q,\lambda}$ であり、$D=A\times C$ とすると $P(U\in A,S\in C)=P(U\in A)P(S\in C)$ となる。これが 2 である。$\square$

段 4 の等式 $B(p,q)=\Gamma(p)\Gamma(q)/\Gamma(p+q)$ は ベータ関数 の定理「Γ関数による表示」の別証明になっており、2 の $S\sim\mathrm{Gamma}(p+q,\lambda)$ は ガンマ分布 の定理「ガンマ分布の再生性」の別証明になっている。$U$ の分布が $\lambda$ によらないのは、ガンマ分布 の命題「尺度の変換」により $\lambda$ を変えても $X$ と $Y$ が同じ倍率で伸び縮みするだけで、割合は変わらないからである。

Poisson 過程の到着時刻の比

強度 $\lambda$ の Poisson過程 の到着時刻を $S_1< S_2<\cdots$ とし、$1\le k\le n$ とする。到着間隔 $T_1,T_2,\dots$ は独立にどれも率 $\lambda$ の指数分布に従う(Poisson過程 の定理「到着間隔の分布」)ので、$X:=T_1+\cdots+T_k$ と $Y:=T_{k+1}+\cdots+T_{n+1}$ は独立で、ガンマ分布 の系「指数分布の和」により $X\sim\mathrm{Gamma}(k,\lambda)$、$Y\sim\mathrm{Gamma}(n+1-k,\lambda)$ である。thm-betad-gamma により
$$ \frac{S_k}{S_{n+1}}=\frac X{X+Y}\sim\mathrm{Beta}(k,\,n-k+1) $$
であり、この比は $S_{n+1}$ と独立である。これは $(0,1)$ 上の一様分布に従う独立な $n$ 個の確率変数の第 $k$ 順序統計量の分布(順序統計量 の定理「一様分布の順序統計量」)と同じである。

主定理 2:硬貨の表の確率の推定

表の出る確率 $\Theta$ そのものが確率変数である硬貨を考える。$N$ を正の整数とし、$x=(x_1,\dots,x_N)\in\{0,1\}^N$ について $s(x):=x_1+\cdots+x_N$(表の回数)とおく。

表の確率が確率変数である硬貨投げ

$\pi$ を $(0,1)$ 上の確率密度とする。$(0,1)$ に値をとる確率変数 $\Theta$ と、$\{0,1\}^N$ に値をとる確率変数 $X=(X_1,\dots,X_N)$ が、すべての Borel 集合 $A\subset(0,1)$ とすべての $x\in\{0,1\}^N$ について
$$ P(\Theta\in A,\ X=x)=\int_At^{s(x)}(1-t)^{N-s(x)}\,\pi(t)\,dt $$
を満たすとき、$X$ を 事前分布 $\pi$ のもとで表の確率 $\Theta$ の硬貨を $N$ 回投げた結果という。$X=x$ という条件のもとでの $\Theta$ の分布 $P(\Theta\in\cdot\mid X=x)$ を 事後分布 という。

この式は「$\Theta=t$ のもとで $X_1,\dots,X_N$ は独立に、どれも確率 $t$ で $1$(表)をとる」ことを表す。$x$ について足すと $P(\Theta\in A)=\int_A\pi$ なので、$\pi$ は $\Theta$ の密度である。
このような $\Theta$ と $X$ は次のように作れる。$\Theta$ と $U_1,\dots,U_N$ を独立にとり、$\Theta$ は密度 $\pi$ をもち、$U_i$ はどれも $(0,1)$ 上の一様分布に従うとして、$X_i:=\mathbf 1_{\{U_i< \Theta\}}$ とおく。$\Theta=t$ を固定したとき、事象 $\{X=x\}$ は「$x_i=1$ の $i$ で $U_i< t$、$x_i=0$ の $i$ で $U_i\ge t$」であり、その確率は独立性から $t^{s(x)}(1-t)^{N-s(x)}$ である。$\Theta,U_1,\dots,U_N$ の同時分布はそれぞれの分布の積測度なので(Dur19 Theorem 2.1.11(p. 48))、Fubiniの定理 により $U_1,\dots,U_N$ について先に積分し、次に $\Theta$ について積分すると上の式を得る。$\pi=b_{1,1}$ のときは $\Theta$ も一様分布に従う点なので、$(0,1)$ に独立に一様な $N+1$ 個の点 $\Theta,U_1,\dots,U_N$ を打ち、$\Theta$ より左にある $U_i$ を表と数える試行になる。これは 1/6公式とベータ積分 の注意「確率で読む」の説明を確率変数で書いたものである。

ベータ分布による事後分布

def-betad-model で $\pi=b_{p,q}$($p,q>0$)とする。$x\in\{0,1\}^N$、$s:=s(x)$ とすると、次が成り立つ。

  1. $P(X=x)=\dfrac{B(p+s,\,q+N-s)}{B(p,q)}$ であり、これは正である。
  2. すべての Borel 集合 $A\subset(0,1)$ について
    $$ P(\Theta\in A\mid X=x)=\int_Ab_{p+s,\,q+N-s}(t)\,dt $$
    である。すなわち、事後分布は $\mathrm{Beta}(p+s,\,q+N-s)$ である。
  3. 表の回数 $S:=X_1+\cdots+X_N$ について、$0\le m\le N$ なら
    $$ P(S=m)=\binom Nm\frac{B(p+m,\,q+N-m)}{B(p,q)} $$
    である。

1:def-betad-model の式で $A=(0,1)$ とすると
$$ P(X=x)=\frac1{B(p,q)}\int_0^1t^{p+s-1}(1-t)^{q+N-s-1}\,dt=\frac{B(p+s,\,q+N-s)}{B(p,q)} $$
である。$p+s>0$、$q+N-s>0$ なので分子は正である。
2:1 により $P(X=x)>0$ なので、条件付き確率の定義と def-betad-model の式から
$$ P(\Theta\in A\mid X=x)=\frac{P(\Theta\in A,\ X=x)}{P(X=x)}=\frac{\int_At^{p+s-1}(1-t)^{q+N-s-1}\,dt\,/\,B(p,q)}{B(p+s,\,q+N-s)/B(p,q)}=\int_Ab_{p+s,\,q+N-s}(t)\,dt $$
である。
3:事象 $\{S=m\}$ は、$s(x)=m$ を満たす $\binom Nm$ 個の $x$ についての互いに交わらない事象 $\{X=x\}$ の和であり、1 によりどれも確率 $B(p+m,q+N-m)/B(p,q)$ をもつ。$\square$

事前分布がベータ分布なら、事後分布もまたベータ分布で、パラメータの $p$ に表の回数、$q$ に裏の回数を足したものになる。このことを、ベータ分布は二項分布の 共役事前分布 であるという。$p$ と $q$ は「観測の前に見込んでいた表と裏の回数」のように働く。事後分布の平均は prop-betad-moments の 3 により $\frac{p+s}{p+q+N}$ で、事前の平均 $\frac p{p+q}$ と観測の割合 $\frac sN$ を重み $p+q$ と $N$ で平均したものである。$N$ が大きくなるにつれて事後分布の分散 $\frac{(p+s)(q+N-s)}{(p+q+N)^2(p+q+N+1)}$ は $\frac1{4(p+q+N+1)}$ 以下になり、$0$ に近づく。

一様な事前分布

def-betad-model で $\Theta$ が $(0,1)$ 上の一様分布に従う($\pi=b_{1,1}$)とする。表が $m$ 回、裏が $n=N-m$ 回出たとき($s(x)=m$)、次が成り立つ。

  1. 事後分布は $\mathrm{Beta}(m+1,n+1)$ で、その平均は $\dfrac{m+1}{N+2}$ である。
  2. 表の回数 $S$ は $0,1,\dots,N$ の各値を確率 $\dfrac1{N+1}$ でとる。

1 は thm-betad-posterior の 2 と prop-betad-moments の 3 による。2 は thm-betad-posterior の 3 で $p=q=1$ とし、$B(1,1)=1$ と ベータ関数 の系「正の整数での値」$B(m+1,N-m+1)=\frac{m!\,(N-m)!}{(N+1)!}$ を使うと $\binom Nm\frac{m!(N-m)!}{(N+1)!}=\frac1{N+1}$ となることによる。$\square$

次の 1 回の予測。 def-betad-model を $N+1$ 回の試行に使うと、最初の $N$ 回の結果が $x$ のとき次に表が出る確率は
$$ P(X_{N+1}=1\mid(X_1,\dots,X_N)=x)=\frac{B(p+s+1,\,q+N-s)}{B(p+s,\,q+N-s)}=\frac{p+s}{p+q+N} $$
で、事後分布の平均に等しい。分子は $N+1$ 回の結果が $(x,1)$ である確率、分母は $(x,0)$ と $(x,1)$ の確率の和で、ベータ関数 の命題「対称性と漸化式」の 3 により $B(p+s+1,q+N-s)+B(p+s,q+N-s+1)=B(p+s,q+N-s)$ である。最後の等号は同じ命題の 4 による。一様な事前分布では $\frac{m+1}{N+2}$ で、これは Pólyaの壺 の例「次に赤が出る確率」の値と同じである。実際 $p=a$、$q=b$ が正の整数なら、1 の $P(X=x)=B(a+s,b+N-s)/B(a,b)$ は Pólyaの壺 の定理「並びの確率は赤の回数だけで決まる」の確率に等しく(同じ記事の「大学数学で見る」の計算)、赤 $a$ 個・白 $b$ 個から始める Pólya の壺の色の列は、事前分布 $\mathrm{Beta}(a,b)$ の硬貨投げの列と同じ分布をもつ。

例

10 回のうち 7 回表

一様な事前分布の硬貨を $10$ 回投げて表が $7$ 回出たとする。cor-betad-uniform により事後分布は $\mathrm{Beta}(8,4)$ で、平均は $\frac8{12}=\frac23$、分散は $\frac{8\cdot4}{12^2\cdot13}=\frac{2}{117}$、標準偏差は $0.1307\ldots$ である。$\Theta\le\frac12$ である事後確率は、$\mathrm{Beta}(8,4)=\mathrm{Beta}(k,n-k+1)$($k=8$、$n=11$)と二項分布の裾の式から
$$ P\Bigl(\Theta\le\frac12\Bigm|X=x\Bigr)=\sum_{j=8}^{11}\binom{11}j\frac1{2^{11}}=\frac{165+55+11+1}{2048}=\frac{232}{2048}=0.1132\ldots $$
である。次に表が出る確率は $\frac{8}{12}=\frac23$ である。

逆正弦分布

$B(\frac12,\frac12)=\Gamma(\frac12)^2/\Gamma(1)=\pi$ なので、$\mathrm{Beta}(\frac12,\frac12)$ の密度は $\frac1{\pi\sqrt{t(1-t)}}$($0< t< 1$)である。$\frac{d}{dt}\frac2\pi\arcsin\sqrt t=\frac2\pi\cdot\frac1{\sqrt{1-t}}\cdot\frac1{2\sqrt t}$ がこの密度に等しいので、分布関数は $\frac2\pi\arcsin\sqrt t$($0\le t\le1$)である。この分布を逆正弦分布という。thm-betad-gamma で $p=q=\frac12$ とすると、独立な $Z_1,Z_2\sim N(0,1)$ について $Z_1^2/(Z_1^2+Z_2^2)$ が逆正弦分布に従う($Z_i^2\sim\chi^2_1=\mathrm{Gamma}(\frac12,\frac12)$、カイ二乗分布)。$(Z_1,Z_2)$ の偏角を $\Psi$ とすると、これは $\cos^2\Psi$ である。

反例:条件を外したとき

外す条件反例成り立たなくなること
率が等しい(thm-betad-gamma)独立な $X\sim\mathrm{Gamma}(1,1)$、$Y\sim\mathrm{Gamma}(1,2)$$P(U\le u)=\frac u{2-u}$ で、$U$ は $\mathrm{Beta}(1,1)$(一様分布)に従わない
独立(thm-betad-gamma)$X\sim\mathrm{Gamma}(p,\lambda)$、$Y=X$$U=\frac12$ が確率 $1$ で成り立ち、$U$ は密度をもたない
事前分布がベータ分布(thm-betad-posterior)$\pi=2\cdot\mathbf 1_{(0,1/2)}$事後分布は $(\frac12,1)$ に確率をおかず、どのベータ分布でもない
$\Theta$ のもとでの独立性(def-betad-model の式)$\Theta\sim\mathrm{Beta}(p,q)$、$U_1$ を独立な一様分布とし、$X_1=\cdots=X_N=\mathbf 1_{\{U_1< \Theta\}}$($N\ge2$)表が $N$ 回出たあとの事後分布は $\mathrm{Beta}(p+1,q)$ で、$\mathrm{Beta}(p+N,q)$ ではない
表の反例の確かめ

1 行目:$0< u< 1$ について $c:=u/(1-u)$ とおくと $\{U\le u\}=\{X\le cY\}$ である。$Y$ を固定して $X$ について積分すると $P(X\le cY)=E[1-e^{-cY}]=1-\int_0^\infty e^{-cy}\,2e^{-2y}\,dy=1-\frac2{2+c}=\frac c{2+c}=\frac u{2-u}$ であり、これは $u$ と異なる(たとえば $u=\frac12$ で $\frac13$)。
3 行目:def-betad-model の式から、事後分布は $(0,\frac12)$ の上の密度 $t^s(1-t)^{N-s}\cdot2$ に比例する密度をもち、$(\frac12,1)$ の確率は $0$ である。ベータ分布は $(\frac12,1)$ に正の確率をおくので、事後分布はベータ分布でない。
4 行目:$P(\Theta\in A,\ X=(1,\dots,1))=P(\Theta\in A,\ U_1< \Theta)=\int_Atb_{p,q}(t)\,dt$ なので、事後分布の密度は $tb_{p,q}(t)$ に比例し、$\mathrm{Beta}(p+1,q)$ である。def-betad-model の式は $s=N$ で $t^N$ を求めるが、この試行では $t$ になる。

関連項目

参考文献

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