正多角形(regular polygon)とは、辺の長さがすべて等しく、内角もすべて等しい凸多角形のことである。複素数平面で見ると、凸 $n$ 角形が正多角形であることは、頂点が $c+\rho\,\omega^k$($\omega=e^{2\pi i/n}$、$k=0,\dots,n-1$)と書けること、つまり外接円の円周を $n$ 等分する点を順に結んだ図形であることと同値であり、1 頂点分の回転で自分自身に重なることとも同値である。ここから内角 $\frac{(n-2)\pi}{n}$、1 辺 $2R\sin\frac{\pi}{n}$、面積 $\frac n2R^2\sin\frac{2\pi}{n}$ が従い、円に内接する凸 $n$ 角形の中で面積が最大のものは正 $n$ 角形である。正多面体・平面の敷き詰め・作図・二面体群など多くの話題の出発点になる。
正三角形・正方形・正五角形のように、辺の長さがすべて等しく、角の大きさもすべて等しい凸多角形を 正多角形(regular polygon)という。正多角形は、円周を $n$ 等分する点を順に結んだ図形であり、1 頂点分の回転で自分自身に重なる。この 3 つの見方(辺と角がそろう、円周の等分点、回転の対称性)が同じものを表すことが、この記事の主定理(thm-rpg-main)である。
正多面体の面、平面の敷き詰め、定規とコンパスによる作図、円周率の近似、二面体群など、正多角形はさまざまな記事の出発点になる。そこで使われる内角 $\frac{(n-2)\pi}{n}$、外接円・内接円の半径、面積の公式も主定理から導く。後半では、円に内接する多角形について「辺がそろえば正多角形」「角がそろっても $n$ が偶数なら正多角形とは限らない」こと(thm-rpg-cyclic)と、円に内接する凸 $n$ 角形の中で面積が最大のものは正 $n$ 角形であること(thm-rpg-area)を証明する。
平面を複素数平面 $\mathbb{C}$ と同一視する。$n\ge3$ とし、点 $v_0,v_1,\dots,v_{n-1}\in\mathbb{C}$ の添字は $n$ を法として考える($v_n=v_0$、$v_{-1}=v_{n-1}$)。線分 $v_kv_{k+1}$ を 辺、ベクトル $e_k:=v_{k+1}-v_k$ を 辺ベクトル という。
相異なる $n$ 個の点の列 $v_0,\dots,v_{n-1}$($n\ge3$)が 凸 $n$ 角形(反時計回り)であるとは、どの $k$ についても、$v_k,v_{k+1}$ 以外の頂点がすべて、$v_k$ から $v_{k+1}$ へ向かう直線の左側の開半平面にあることをいう。すなわち、$j\ne k,k+1$ のとき
$$
\operatorname{Im}\frac{v_j-v_k}{v_{k+1}-v_k}>0
$$
である。頂点 $v_k$ における 内角 を、ベクトル $v_{k-1}-v_k$ と $v_{k+1}-v_k$ のなす角 $\alpha_k\in(0,\pi)$ とする。
頂点を時計回りに並べたものは、順序を逆にすれば反時計回りになるので、この記事ではいつも反時計回りに並べる。頂点を結んだ折れ線で囲まれた領域は、頂点の 凸包 である。
凸 $n$ 角形 $v_0,\dots,v_{n-1}$ が 正 $n$ 角形 であるとは、すべての辺の長さ $\lvert e_k\rvert$ が等しく、すべての内角 $\alpha_k$ が等しいことをいう。$n$ を明示しないときは 正多角形 という。
辺の長さだけ、または角だけがそろっても正多角形とは限らない(ex-rpg-rhombus、ex-rpg-rectangle)。
以下、$\omega:=e^{2\pi i/n}$ とする(1の冪根)。
$n\ge3$ とし、$v_0,\dots,v_{n-1}$ を凸 $n$ 角形とする。次の 3 条件は同値である。
(1 ⇒ 2)。凸 $n$ 角形では、$j=k+1$ として def-rpg-convex を辺 $v_{k-1}v_k$ に使うと $\operatorname{Im}(e_k/e_{k-1})>0$ であり、$e_k/e_{k-1}=\frac{\lvert e_k\rvert}{\lvert e_{k-1}\rvert}e^{i\tau_k}$ と書くと 曲がる角 $\tau_k$ は $(0,\pi)$ にとれる。内角 $\alpha_k$ は $-e_{k-1}$ と $e_k$ のなす角なので、$e_{k-1}$ と $e_k$ のなす角 $\tau_k$ と $\alpha_k=\pi-\tau_k$ の関係にある。
1 を仮定すると、辺の長さが等しく、$\alpha_k$ が等しいので $\tau_k$ も等しい。その共通の値を $\tau\in(0,\pi)$、$\zeta:=e^{i\tau}$ とおくと $e_k=\zeta e_{k-1}$、したがって $e_k=\zeta^ke_0$ である。添字は $n$ を法として考えるので $e_n=e_0$ であり、$\zeta^n=1$ である。よって $\tau=\frac{2\pi m}{n}$ と書け、$0<\tau<\pi$ から $1\le m<\frac n2$ である。$\zeta\ne1$ なので
$$
v_k=v_0+\sum_{j=0}^{k-1}e_j=v_0+e_0\frac{\zeta^k-1}{\zeta-1}=c+\rho\,\zeta^k,\qquad c:=v_0-\frac{e_0}{\zeta-1},\ \rho:=\frac{e_0}{\zeta-1}
$$
である。あとは $m=1$ を示せばよい。
$d:=\gcd(m,n)>1$ なら $\zeta^{n/d}=1$ なので $v_{n/d}=v_0$ となり、頂点が相異なることに反する。よって $m$ と $n$ は互いに素で、$\{\zeta^k\}$ は $1$ の $n$ 乗根全体 $\{\omega^j\}$ と一致する(1の冪根)。とくに $\omega=\zeta^{k_0}$ となる $k_0$ があり、$v_{k_0}=c+\rho\,\omega$ は頂点である。$m\ge2$ と仮定すると $\omega\ne1,\zeta$ なので $k_0\ne0,1$ である。ここで
$$
\frac{v_{k_0}-v_0}{v_1-v_0}=\frac{\omega-1}{\zeta-1}
=\frac{e^{\pi i/n}\cdot 2i\sin\frac{\pi}{n}}{e^{\pi i m/n}\cdot 2i\sin\frac{\pi m}{n}}
=\frac{\sin\frac{\pi}{n}}{\sin\frac{\pi m}{n}}\,e^{-\pi i(m-1)/n}
$$
であり($e^{ix}-1=e^{ix/2}\cdot2i\sin\frac x2$ を使った)、$0<\frac{\pi(m-1)}n<\pi$ なので虚部は負である。これは $v_{k_0}$ が辺 $v_0v_1$ の右側にあることを意味し、凸性に反する。よって $m=1$、$\zeta=\omega$ で、2 が成り立つ。
(2 ⇒ 3)。$g(z):=c+\omega(z-c)$ は点 $c$ のまわりの角 $\frac{2\pi}n$ の回転で、$g(c+\rho\,\omega^k)=c+\rho\,\omega^{k+1}$ である。
(3 ⇒ 1)。回転は長さと角を保つ。$g$ は辺 $v_kv_{k+1}$ を辺 $v_{k+1}v_{k+2}$ に、頂点 $v_k$ の 2 辺を頂点 $v_{k+1}$ の 2 辺に移すので、$\lvert e_{k+1}\rvert=\lvert e_k\rvert$、$\alpha_{k+1}=\alpha_k$ である。
(後半)。$w_k:=c+\rho\,\omega^k$ とおく。$\rho\ne0$ で $\omega^k$($0\le k< n$)は相異なるので、$w_k$ も相異なる。$j\ne k,k+1$ について
$$
\frac{w_j-w_k}{w_{k+1}-w_k}=\frac{\omega^{j-k}-1}{\omega-1}
=\frac{\sin\frac{\pi(j-k)}{n}}{\sin\frac{\pi}{n}}\,e^{\pi i(j-k-1)/n}
$$
である。$j-k$ を $2\le j-k\le n-1$ の範囲の代表にとると、$\sin\frac{\pi(j-k)}n>0$ かつ $0<\frac{\pi(j-k-1)}n<\pi$ なので虚部は正である。よって凸 $n$ 角形であり、2 ⇒ 1 から正 $n$ 角形である。辺ベクトルは $e_k=\rho\,\omega^k(\omega-1)$ なので曲がる角は $\frac{2\pi}n$、内角は $\pi-\frac{2\pi}n=\frac{(n-2)\pi}{n}$ である。$\square$
thm-rpg-main の 2 から、正 $n$ 角形の頂点はすべて点 $c$ から距離 $R:=\lvert\rho\rvert$ にある。$c$ を 中心、中心を通り半径 $R$ の円を 外接円 という。正 $n$ 角形は、外接円の円周を $n$ 等分する点を順に結んだものにほかならない。
外接円の半径が $R$ の正 $n$ 角形について、
$c=0$、$\rho=R$ としてよい(平行移動と回転は長さと面積を変えない)。1 辺の長さは $\lvert R\omega-R\rvert=R\lvert e^{2\pi i/n}-1\rvert=2R\sin\frac{\pi}{n}$ である。辺 $v_kv_{k+1}$ の中点は $\frac R2(\omega^k+\omega^{k+1})=R\cos\frac{\pi}{n}\,\omega^{k+\frac12}$($\omega^{k+\frac12}:=e^{\pi i(2k+1)/n}$)で、中心からの距離は $R\cos\frac{\pi}{n}$ である。中心と辺の両端は二等辺三角形をなすので、中心から辺への垂線の足は中点であり、中心から辺の直線までの距離は $r$ である。辺の上の中点以外の点は中点より遠いので、半径 $r$ の円は辺と中点だけで交わり、そこで接する。面積は、中心と各辺の作る $n$ 個の三角形(頂角 $\frac{2\pi}n$、等辺 $R$)の面積の和で $n\cdot\frac12R^2\sin\frac{2\pi}{n}$ であり、$\frac12 s r\cdot n=nR^2\sin\frac\pi n\cos\frac\pi n$ とも等しい。$\square$
正 $n$ 角形を自分自身に移す合同変換の全体は、中心のまわりの $\frac{2\pi k}n$ 回転 $n$ 個と、$n$ 本の対称軸についての鏡映 $n$ 個からなる位数 $2n$ の群で、二面体群 という(回転・鏡映と行列の群 の定理「二面体群の元と構造」、二面体群)。thm-rpg-main の 3 は、そのうちの回転の部分が頂点を 1 つずつずらすことを言っている。
外接円の半径を $R$ とすると、cor-rpg-measure から次の表を得る。
| 内角 | 1 辺 $s$ | 内接円の半径 $r$ | 面積 $S$ | |
|---|---|---|---|---|
| 正三角形 | $\frac\pi3$ | $\sqrt3R$ | $\frac R2$ | $\frac{3\sqrt3}{4}R^2$ |
| 正方形 | $\frac\pi2$ | $\sqrt2R$ | $\frac{R}{\sqrt2}$ | $2R^2$ |
| 正六角形 | $\frac{2\pi}3$ | $R$ | $\frac{\sqrt3}{2}R$ | $\frac{3\sqrt3}{2}R^2$ |
正六角形では 1 辺が外接円の半径に等しく、中心と各辺が 6 個の正三角形を作る。Euclid『原論』の第 IV 巻は、円に内接する正方形・正五角形・正六角形・正十五角形の作図を与えている(Hea08b 第 IV 巻 命題 6・11・15・16)。
正五角形の内角は $\frac{3\pi}5=108^\circ$ である。外接円の半径を $R$ とすると、1 辺は $2R\sin\frac\pi5$、対角線($v_0v_2$)は $\lvert\omega^2-1\rvert R=2R\sin\frac{2\pi}5$ なので、
$$
\frac{\text{対角線}}{\text{辺}}=\frac{\sin\frac{2\pi}5}{\sin\frac\pi5}=2\cos\frac\pi5=\frac{1+\sqrt5}2
$$
である。最後の等号は次のように確かめる。$1+\omega+\omega^2+\omega^3+\omega^4=0$ の実部をとると $1+2\cos\frac{2\pi}5+2\cos\frac{4\pi}5=0$ で、$\cos\frac{4\pi}5=-\cos\frac\pi5$ だから $\cos\frac\pi5-\cos\frac{2\pi}5=\frac12$ である。$x:=\cos\frac\pi5$ とおくと $\cos\frac{2\pi}5=2x^2-1$ なので $4x^2-2x-1=0$、$x>0$ から $x=\frac{1+\sqrt5}4$ である。
$v_0=0$、$v_1=1$、$v_2=1+e^{i\pi/3}$、$v_3=e^{i\pi/3}$ は 4 辺の長さがすべて $1$ の凸四角形(ひし形)であるが、内角は $\frac\pi3,\frac{2\pi}3,\frac\pi3,\frac{2\pi}3$ で等しくない。辺の長さがそろうことは、角がそろうことを導かない。
$v_0=0$、$v_1=2$、$v_2=2+i$、$v_3=i$ は内角がすべて $\frac\pi2$ の凸四角形(長方形)であるが、辺の長さは $2,1,2,1$ で等しくない。4 頂点は中心 $1+\frac i2$、半径 $\frac{\sqrt5}2$ の円の上にあるので、円に内接して角がそろっても正多角形とは限らない(thm-rpg-cyclic の 3 と比べよ)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 内角がすべて等しい | ひし形(ex-rpg-rhombus) | 正多角形である |
| 辺の長さがすべて等しい | 長方形(ex-rpg-rectangle) | 正多角形である |
| 凸(def-rpg-convex) | 星形五角形 $\{5/2\}$(def-rpg-star) | 辺の長さと内角がそろえば頂点が順に $c+\rho\,\omega^k$ と書けること(thm-rpg-main の 1 ⇒ 2。$\{5/2\}$ の頂点は順に $c+\rho\,\omega^{2k}$) |
| $n$ が奇数(thm-rpg-cyclic の 2) | 円に内接する長方形(ex-rpg-rectangle) | 等角なら正多角形である |
正多角形はどれも円に内接する。逆に、円に内接する凸多角形のうちどれが正多角形かを、弧の長さで判定する。
凸 $n$ 角形 $v_0,\dots,v_{n-1}$ が中心 $c$、半径 $R$ の円 $\Gamma$ に内接しているとする。$v_k$ から $v_{k+1}$ へ $\Gamma$ を反時計回りにたどる開いた弧は、直線 $v_kv_{k+1}$ の右側にあるので、凸性(def-rpg-convex)から頂点を含まない。したがって $v_0,v_1,\dots,v_{n-1}$ は $\Gamma$ の上に反時計回りの順に並び、この弧の中心角を $\theta_k\in(0,2\pi)$ とすると $\theta_0+\cdots+\theta_{n-1}=2\pi$ である。弦の長さは $\lvert e_k\rvert=2R\sin\frac{\theta_k}2$、内角は $v_k$ を含まない弧 $v_{k+1}v_{k-1}$(中心角 $2\pi-\theta_{k-1}-\theta_k$)に対する円周角なので、円周角の定理 により
$$
\alpha_k=\pi-\frac{\theta_{k-1}+\theta_k}{2}
$$
である。
円に内接する凸 $n$ 角形($n\ge3$)について、
どの場合も、すべての $\theta_k$ が $\frac{2\pi}n$ に等しいことを示せば、$v_k=c+\rho\,\omega^k$($\rho:=v_0-c$)となり、thm-rpg-main の 2 から正 $n$ 角形である。
(1) $\sin\frac{\theta_k}2$ がすべて等しいので、その値を $\sin\frac\theta2$($0<\theta\le\pi$)と書くと、各 $\theta_k$ は $\theta$ か $2\pi-\theta$ である。$\theta=\pi$ ならすべて $\pi$ で、和が $2\pi$ なので $n=2$ となり矛盾する。$\theta<\pi$ とし、$2\pi-\theta$ に等しい $\theta_k$ が $l$ 個あるとする。$l\ge2$ なら和は $2(2\pi-\theta)>2\pi$ を超えて矛盾する。$l=1$ なら $(n-1)\theta+2\pi-\theta=2\pi$ から $(n-2)\theta=0$ で矛盾する。よって $l=0$ で、すべて $\theta$ に等しく、$n\theta=2\pi$ である。
(2)・(3) 内角がすべて等しいことは、$\theta_{k-1}+\theta_k$ が $k$ によらないことと同値である。これは $\theta_{k+1}=\theta_{k-1}$(すべての $k$)と同値である($\theta_k+\theta_{k+1}=\theta_{k-1}+\theta_k$ による)。$n$ が偶数なら、これが 3 の条件である。$n$ が奇数なら、$k\mapsto k+2$ を繰り返すとすべての剰余類を通るので、すべての $\theta_k$ が等しく、$\frac{2\pi}n$ である。$\square$
1 の主張は Euclid が正五角形の作図(Hea08b 第 IV 巻 命題 11)で使う論法(等しい弧には等しい弦が張る)の逆向きにあたる。3 から、$n$ が偶数なら、$\theta_0=a$、$\theta_1=b$($\frac n2(a+b)=2\pi$、$a\ne b$)と交互に並べて、円に内接する等角で正多角形でない $n$ 角形が作れる。$n=4$ の場合が長方形である。
半径 $R$ の円に内接する凸 $n$ 角形($n\ge3$)の面積は $\frac n2R^2\sin\frac{2\pi}{n}$ 以下であり、等号が成り立つのは正 $n$ 角形のときだけである。
中心を原点にとり、$v_k=Re^{i\varphi_k}$ と書く。反時計回りの凸多角形の面積は 靴ひも公式 により $\frac12\sum_k\operatorname{Im}(\overline{v_k}\,v_{k+1})$ で、$\overline{v_k}\,v_{k+1}=R^2e^{i\theta_k}$ なので
$$
S=\frac{R^2}2\sum_{k=0}^{n-1}\sin\theta_k
$$
である。$t_0:=\frac{2\pi}n\in(0,\pi)$ とし、$\sum_k\sin\theta_k\le n\sin t_0$ と等号条件を示す。
場合 1(すべての $\theta_k<\pi$)。$h(\theta):=\sin t_0+(\theta-t_0)\cos t_0-\sin\theta$ とおくと $h(t_0)=0$、$h'(\theta)=\cos t_0-\cos\theta$ は $[0,\pi]$ で $\theta< t_0$ なら負、$\theta>t_0$ なら正なので、$h\ge0$ で等号は $\theta=t_0$ のときだけである。$k$ について足すと、$\sum_k\theta_k=nt_0$ より $\sum_k\sin\theta_k\le n\sin t_0$ で、等号はすべての $\theta_k=t_0$ のときだけである。
場合 2(ある $\theta_j\ge\pi$)。$\sin\theta_j\le0$ である。残りの $n-1$ 個は和が $2\pi-\theta_j\le\pi$ なので、どれも $(0,\pi)$ にあり、$\sin x\le x$ より $\sum_{k\ne j}\sin\theta_k<\sum_{k\ne j}\theta_k\le\pi$ である。$n=3$ のときは、さらに $\sin\theta_k\le1$ から和は $2$ 以下で、$3\sin\frac{2\pi}3=\frac{3\sqrt3}2>2$ である。$n\ge4$ のときは、$[0,\frac\pi2]$ で $\sin x\ge\frac{2}{\pi}x$(正弦の凹性)を $x=t_0\le\frac\pi2$ に使って $n\sin t_0\ge4>\pi$ である。どちらでも $\sum_k\sin\theta_k< n\sin t_0$ である。
よって $S\le\frac n2R^2\sin t_0$ で、等号はすべての $\theta_k=\frac{2\pi}n$ のとき、すなわち(prf-rpg-cyclic の冒頭と同じく)正 $n$ 角形のときだけである。$\square$
$n\to\infty$ のとき $\frac n2R^2\sin\frac{2\pi}n\to\pi R^2$ である。正多角形で円の面積・周の長さを挟む議論は 正多角形で円周率を挟む にある。
prf-rpg-main で凸性を使ったのは、曲がる角 $\tau_k$ がすべて $(0,\pi)$ にとれる(どの頂点でも同じ向きに曲がる)所と、曲がる角 $\frac{2\pi m}n$ の $m$ を $1$ に決める所である。前者を保ったまま後者を外すと、$m\ge2$ の図形が残る。
$n\ge5$ とし、$2\le m<\frac n2$ で $\gcd(m,n)=1$ とする。点 $c+\rho\,\omega^{mk}$($k=0,\dots,n-1$、$\rho\ne0$)をこの順に結んだ閉じた折れ線を 星形正 $n$ 角形 といい、$\{n/m\}$ と書く。凸な正 $n$ 角形は $\{n/1\}$ にあたる。
$\{n/m\}$ も、辺の長さ($2R\sin\frac{\pi m}n$)と、隣り合う 2 辺のなす角($\pi-\frac{2\pi m}n$)がすべて等しく、点 $c$ のまわりの角 $\frac{2\pi m}n$ の回転で自分自身に重なる。しかし prf-rpg-main の (1 ⇒ 2) の後半で示したとおり、頂点 $c+\rho\,\omega$ が辺 $v_0v_1$ の右側にあるので凸多角形ではない。また、$k\mapsto mk$ は $n$ を法として全単射なので、辺は弦 $\omega^j\omega^{j+m}$($j=0,\dots,n-1$。$c+\rho\,\cdot$ を省いて書く)の全体であり、端点が円周の上で $\omega^0,\omega^1,\omega^m,\omega^{m+1}$ の順に交互に並ぶ 2 辺 $\omega^0\omega^m$ と $\omega^1\omega^{m+1}$ は交わる($1< m< m+1< n$)。
$n=5$ では $m=2$ だけが条件を満たし、$\{5/2\}$ は正五角形の対角線 5 本からなる星形五角形である。隣り合う 2 辺のなす角は $\pi-\frac{4\pi}5=\frac\pi5=36^\circ$ である。$n=6$ では $2\le m<3$ で $\gcd(m,6)=1$ となる $m$ がないので、星形正六角形はない(六芒星は 2 つの正三角形を重ねたもので、1 本の閉じた折れ線ではない)。
$n\ge3$ について、$\{n/m\}$($1\le m<\frac n2$、$\gcd(m,n)=1$)の種類は $\frac{\varphi(n)}2$ 個で、そのうち星形のものは $\frac{\varphi(n)}2-1$ 個である。ここで $\varphi$ は Euler関数 である。
$1\le m\le n-1$ で $\gcd(m,n)=1$ となる $m$ は $\varphi(n)$ 個ある。$\gcd(m,n)=\gcd(n-m,n)$ なので、$m\mapsto n-m$ はこれらを組にし、$n\ge3$ なら $m=\frac n2$ は($n$ が奇数なら整数でなく、偶数なら $\gcd(\frac n2,n)=\frac n2\ge2$ なので)この中にない。よって各組のちょうど一方が $m<\frac n2$ を満たし、その個数は $\frac{\varphi(n)}2$ である。$m=1$ が凸な正 $n$ 角形で、残りが星形である。$\square$
たとえば $n=7$ なら $\varphi(7)=6$ で、$\{7/2\}$ と $\{7/3\}$ の 2 種類、$n=12$ なら $\varphi(12)=4$ で $\{12/5\}$ の 1 種類である。
正多角形を出発点とする話題と、それを扱う記事を挙げる。
| 話題 | 内容 | 記事 |
|---|---|---|
| 作図 | 正 $n$ 角形が定規とコンパスで作図できるのは、$n$ が $2$ の冪と相異なる Fermat 素数の積のとき | 正多角形の作図可能性 |
| 格子点 | 座標が整数の点だけを頂点にもつ正 $n$ 角形は正方形だけ | 格子点の正多角形 |
| 敷き詰め | 合同な正 $p$ 角形 1 種類で平面を敷き詰められるのは $p=3,4,6$ | 正多角形の敷き詰め |
| 立体 | 面が合同な正多角形で、各頂点に同じ数の面が集まる凸多面体は 5 種類 | 正多面体, 正多面体の分類 |
| 対称性 | 自分自身に移す合同変換は位数 $2n$ の二面体群 | 二面体群, 回転・鏡映と行列の群 |
| 円周率 | 内接・外接する正多角形の周で $\pi$ を挟む | 正多角形で円周率を挟む |
| 頂点の計算 | 頂点の和が中心の $n$ 倍、頂点までの距離の積・累乗の和 | sin kxとcos kxの和, 正多角形の頂点までの距離の積, 正多角形の頂点までの距離の累乗の和 |
| 多角形の変形 | 二等辺三角形を立てる操作を $n-2$ 回くり返すと正 $n$ 角形になる | Petr–Douglas–Neumannの定理 |
正多面体の分類では、1 つの頂点に集まる面の内角の和が $2\pi$ より小さいことを使う。正 $p$ 角形の内角 $\frac{(p-2)\pi}p$(cor-rpg-measure)が $q$ 枚集まるとき、この条件は $q\cdot\frac{(p-2)\pi}{p}<2\pi$、すなわち $(p-2)(q-2)<4$ となる。平面の敷き詰めでは同じ和がちょうど $2\pi$ になり、$(p-2)(q-2)=4$ となる。
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