円周束

同義語:circle bundle主U(1)束principal U(1)-bundle

概要

円周束(circle bundle)とは、ファイバーが円周 $S^1$ で、回転の群 $\mathrm{U}(1)$ が各ファイバーに自由かつ推移的に作用するファイバー束(主 $\mathrm{U}(1)$ 束)である。Hermite 計量を入れた複素直線束の単位円周束が典型で、パラコンパクト Hausdorff 空間の上では円周束と複素直線束の同型類が一対一に対応する。円周束には同伴直線束の Euler 類 $e\in H^2(B;\mathbb Z)$ が付き、CW 複体の上では円周束は Euler 類で分類される。Gysin 列により全空間のコホモロジーを Euler 類との cup 積から計算でき、2 次元球面の上の Euler 数 $m$ の円周束の全空間は $S^2\times S^1$、$S^3$、レンズ空間 $L(|m|;1)$ のどれかである。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル束, Euler類, 複素ベクトル束, 主束, 特異コホモロジー

円周束(circle bundle)とは、各点の上のファイバーが円周 $S^1$ であるファイバー束のうち、円周を回転させる群 $\mathrm{U}(1)=\{\lambda\in\mathbb C\mid|\lambda|=1\}$ がファイバーに自由かつ推移的に作用するもの、すなわち主 $\mathrm{U}(1)$ 束である。Hermite 計量を入れた複素直線束 $L$ の長さ $1$ のベクトルの全体 $S(L)$ が典型例であり、逆にどの円周束もこの形に書ける。
円周束には $2$ 次の整係数コホモロジー類である Euler 類が付き、CW 複体の上では円周束は Euler 類でちょうど分類される。$2$ 次元球面の上では Euler 数 $m$ の円周束の全空間は、$m=0$ なら $S^2\times S^1$、$m=\pm1$ なら $3$ 次元球面(Hopf 束)、$|m|\ge2$ ならレンズ空間 $L(|m|;1)$ である。
この記事では、円周束と複素直線束の対応を証明し、切断と自明性の関係、有限単体複体の上ではどの $2$ 次の整数類も Euler 類として実現されること(変換関数を具体的に書いた構成)、円周束の Gysin 列とそれによる全空間のコホモロジーの計算を示す。一般の分類定理は引用にとどめる。

定義

以下、$\mathrm{U}(1)$ を単位円周 $S^1\subset\mathbb C$ と同一視し、積で位相群とみる。

円周束

$B$ を位相空間とする。連続な全射 $p\colon P\to B$ と、$P$ への $\mathrm{U}(1)$ の連続な右作用 $P\times\mathrm{U}(1)\to P$、$(u,\lambda)\mapsto u\lambda$ の組で、次をみたすものを $B$ の上の円周束という。

  1. $p(u\lambda)=p(u)$ である。
  2. (局所自明性)$B$ の各点は、開近傍 $U$ と同相写像 $\psi\colon p^{-1}(U)\to U\times\mathrm{U}(1)$ で、$\mathrm{pr}_1\circ\psi=p$ かつ $\psi(u\lambda)=\psi(u)\lambda$ をみたすものをもつ。ここで $U\times\mathrm{U}(1)$ には $(x,\mu)\lambda:=(x,\mu\lambda)$ で作用させる。
    $B$ の上の円周束 $P,P'$ の同型とは、同相写像 $f\colon P\to P'$ で $p'\circ f=p$、$f(u\lambda)=f(u)\lambda$ をみたすものをいう。$B\times\mathrm{U}(1)$ と同型な円周束を自明という。

局所自明化 $\psi_a\colon p^{-1}(U_a)\to U_a\times\mathrm{U}(1)$ の族をとると、$U_a\cap U_b$ の上で
$$ \psi_a\circ\psi_b^{-1}(x,\mu)=(x,\ g_{ab}(x)\mu) $$
となる連続関数 $g_{ab}\colon U_a\cap U_b\to\mathrm{U}(1)$ がただ 1 つある($\mu=1$ での値を $g_{ab}(x)$ とおけば、同変性から一般の $\mu$ でもこの式になる)。これを変換関数といい、$g_{ab}g_{bc}=g_{ac}$ をみたす。円周束は 主束 の定義「主 $G$ 束」の $G=\mathrm{U}(1)$ の場合を位相空間と連続写像で読んだもの(主 $\mathrm{U}(1)$ 束)である。

呼び名と向き

ファイバーが $S^1$ のファイバー束で、変換関数が回転 $\mu\mapsto g\mu$($g\in\mathrm{U}(1)$)の族として書けるものは、上の意味の円周束と同じものである。実際、$\mathrm{U}(1)$ は可換なので、局所自明化の上での右からの積 $(x,\mu)\mapsto(x,\mu\lambda)$ は変換関数と可換であり、全空間への作用として矛盾なく貼り合う。文献ではこれを「構造群 $\mathrm{SO}(2)=\mathrm{U}(1)$ の円周束」「向き付けられた円周束」ともいう。ファイバーが $S^1$ でも変換関数に鏡映が要る束(たとえば Klein の壺 $\to S^1$)は、この記事の円周束に入らない(下の節「反例と注意」)。

複素直線束との対応

複素直線束 $L\to B$(複素ベクトル束 で階数 $1$ のもの)の Hermite 計量とは、各ファイバーの Hermite 内積の族で、局所的な枠 $e$ について $|e|^2$ が連続になるものをいう。計量を入れた $L$ について
$$ S(L):=\{v\in L\mid|v|=1\} $$
に $v\lambda:=\lambda v$ で $\mathrm{U}(1)$ を作用させたものを $L$ の単位円周束という。逆に円周束 $P$ について、$P\times\mathbb C$ を $(u\lambda,z)\sim(u,\lambda z)$ で割った
$$ L_P:=P\times_{\mathrm{U}(1)}\mathbb C $$
を $P$ の同伴直線束という(主束 の定義「同伴束」の標準表現の場合)。$L_P$ には $|[u,z]|:=|z|$ で計量が入る($|\lambda z|=|z|$ なので代表によらない)。

複素直線束との対応
  1. 計量を入れた複素直線束 $L$ について、$S(L)$ は円周束である。$L$ の各点の近くに長さ $1$ の局所枠 $e_a$ をとり、$e_b=g_{ab}e_a$ と書くと、$g_{ab}$ は $\mathrm{U}(1)$ に値をとり、$S(L)$ の変換関数である。
  2. $B$ がパラコンパクト Hausdorff 空間なら、どの複素直線束にも計量があり、計量を取り替えても $S(L)$ の同型類は変わらない。
  3. 円周束 $P$ について、$L_P$ は複素直線束であり、$u\mapsto[u,1]$ は円周束の同型 $P\cong S(L_P)$ を与える。計量を入れた複素直線束 $L$ について、$[v,z]\mapsto zv$ は複素直線束の同型 $L_{S(L)}\cong L$ を与える。
  4. したがって $B$ がパラコンパクト Hausdorff 空間なら、$P\mapsto L_P$ と $L\mapsto S(L)$ は、$B$ の上の円周束の同型類と複素直線束の同型類の間の互いに逆な全単射であり、連続写像による引き戻しと両立する。

1.$L$ の局所自明化を $\varphi_a(ze_a(x))=(x,z)$ で与える枠 $e_a$ が、計量について長さ $1$ のものとする。任意の局所枠 $e$ は $e/|e|$ に取り替えればよいので、そのような枠はどの点の近くにもある。$|e_a|=|e_b|=1$ なので $e_b=g_{ab}e_a$ の $g_{ab}$ は絶対値 $1$ である。$\varphi_a$ は $S(L)|_{U_a}$ を $U_a\times\mathrm{U}(1)$ の上へ同相に写し、$\varphi_a(\lambda v)=\varphi_a(v)\lambda$ をみたす。また $\varphi_a\circ\varphi_b^{-1}(x,\mu)=\varphi_a(\mu e_b(x))=\varphi_a(\mu g_{ab}(x)e_a(x))=(x,g_{ab}(x)\mu)$ である。

2 の証明を開く

存在は パラコンパクト空間 の定理「1 の分割の存在」による。$L$ を自明にする開被覆 $\{U_a\}$ と枠 $e_a$ について、$U_a$ の上で $e_a$ を長さ $1$ とする内積 $\langle\ ,\ \rangle_a$ を作り、従属する 1 の分割 $(\rho_a)$ で $\sum_a\rho_a\langle\ ,\ \rangle_a$ とおけばよい(各点で有限和で、正定値な内積の正係数の和は正定値である)。2 つの計量 $h,h'$ について、ファイバーが $1$ 次元なので $h'(v,v)=f(x)\,h(v,v)$($v\in L_x$)となる関数 $f\colon B\to(0,\infty)$ があり、局所枠 $e$ について $f=h'(e,e)/h(e,e)$ なので $f$ は連続である。$v\mapsto f(p(v))^{1/2}v$ は $\mathrm{U}(1)$ の作用と可換で、$h'$ の単位円周束を $h$ の単位円周束の上へ写し、逆写像 $v\mapsto f(p(v))^{-1/2}v$ も連続なので、円周束の同型である。


3.$P$ の局所自明化 $\psi_a$ から $s_a(x):=\psi_a^{-1}(x,1)$ とおくと、$s_b=s_ag_{ab}$ である。主束 の定理「同伴束の構成」とその証明は、多様体と微分同相を位相空間と同相に読み替えてもそのまま通り、$L_P$ は $\Phi_a(x,z):=[s_a(x),z]$ を局所自明化とし、$\Phi_a^{-1}\circ\Phi_b(x,z)=(x,g_{ab}(x)z)$ をみたす複素直線束である。$[u\lambda,1]=[u,\lambda]=\lambda[u,1]$ なので $u\mapsto[u,1]$ は同変であり、$u=s_a(x)\mu$ を $[s_a(x),\mu]=\Phi_a(x,\mu)$ に写すから、局所自明化の上では $U_a\times\mathrm{U}(1)$ の恒等写像である。よって $P\cong S(L_P)$ である。後半の写像は $[v\lambda,z]=[\lambda v,z]\mapsto z\lambda v$ と $[v,\lambda z]\mapsto\lambda zv$ が一致するので矛盾なく定まり、$v=\mu e_a(x)$ の上では $[\mu e_a(x),z]\mapsto z\mu e_a(x)$ なので、1 の自明化と $\Phi_a$ のもとで $U_a\times\mathbb C$ の恒等写像である。よって複素線型な束の同型である。
4.3 により 2 つの対応は同型類の上で互いに逆である。$L\cong L'$ なら同型で $L'$ の計量を $L$ に移すと、2 により $S(L)\cong S(L')$ である。$P\cong P'$ なら同型 $f$ は $[u,z]\mapsto[f(u),z]$ により $L_P\cong L_{P'}$ を与える。引き戻しとの両立は、$f^*S(L)=S(f^*L)$(引き戻した計量について)と $f^*L_P=L_{f^*P}$ が定義から従うことによる。$\square$

Euler 類の定義

複素直線束 $L$ は、各ファイバー $L_x$ の $\mathbb R$ 上の基底 $(v,iv)$($v\ne0$)が定める向き(複素構造の向き)で、向き付けられた階数 $2$ の実ベクトル束になる。$v$ を $\lambda v$($\lambda\in\mathbb C^\times$)に替えても基底変換の行列式は $|\lambda|^2>0$ なので、この向きは $v$ によらない。

円周束の Euler 類

$B$ の上の円周束 $P$ について、同伴直線束 $L_P$ を複素構造の向きで向き付けられた階数 $2$ の実ベクトル束とみたときの Euler 類(Euler類 の定義「Euler 類と Euler 数」)
$$ e(P):=e(L_P)\in H^2(B;\mathbb Z) $$
を $P$ の Euler 類という。ここで $B$ は Euler類 の規約に合わせてパラコンパクト Hausdorff 空間とし、以下 Euler 類を使う箇所ではつねにそう仮定する(CW 複体はこの仮定をみたす。パラコンパクト空間 の定理「CW 複体のパラコンパクト性」)。$B$ が向き付けられた閉曲面なら、$\langle e(P),[B]\rangle\in\mathbb Z$ を $P$ の Euler 数という。

prop-cb-line-bundle の 3 により $e(S(L))=e(L)$ である。Euler 類の自然性(Euler類 の命題「Euler 類の基本性質」の 1)から $e(f^*P)=f^*e(P)$ であり、同型な円周束の Euler 類は等しい。複素ベクトル束の最高次の Chern 類はその実化の Euler 類に等しいので(Euler類 の節「ほかの特性類との関係」の表)、$e(P)=c_1(L_P)$ である(第1Chern類)。
向き付けられた階数 $2$ の実ベクトル束 $E$ に計量を入れると、各ファイバーで「向きの正の向きに $90^\circ$ 回す」回転 $J$ が定まり、$i$ を $J$ として作用させれば $E$ は複素直線束になって、その複素構造の向きは元の向きと一致する。したがって $E$ の単位円周束 $S(E)$ は円周束で、$e(S(E))=e(E)$ である。円周束の Euler 類は、向き付けられた階数 $2$ の実ベクトル束の Euler 類と同じものである。

切断と自明性

切断と自明性

$P$ を $B$ の上の円周束とする。

  1. $P$ が自明であることと、$P$ が連続な切断 $\sigma\colon B\to P$($p\circ\sigma=\mathrm{id}_B$)をもつことは同値である。
  2. $P$ が自明なら $e(P)=0$ である。したがって $e(P)\ne0$ なら $P$ は切断をもたず、同伴直線束 $L_P$ はどこでも $0$ にならない切断をもたない。

1.自明化 $P\cong B\times\mathrm{U}(1)$ があれば、$x\mapsto(x,1)$ を移したものが切断である。逆に切断 $\sigma$ があるとき、$F\colon B\times\mathrm{U}(1)\to P$、$F(x,\lambda):=\sigma(x)\lambda$ は連続で同変であり、各ファイバーへの作用が自由かつ推移的なので全単射である。逆写像が連続であることを局所自明化 $\psi_a$ の上で確かめる。$\psi_a(\sigma(x))=(x,\tau_a(x))$ と書くと $\tau_a\colon U_a\to\mathrm{U}(1)$ は連続で、$\psi_a(F(x,\lambda))=(x,\tau_a(x)\lambda)$ である。よって $F^{-1}(\psi_a^{-1}(x,\mu))=(x,\tau_a(x)^{-1}\mu)$ であり、これは連続である。
2.$P\cong B\times\mathrm{U}(1)$ なら $L_P\cong B\times\mathbb C$ は自明束で、自明束の Euler 類は $0$ である(Euler類 の命題「Euler 類の基本性質」の 1)。$L_P$ のどこでも $0$ にならない切断 $s$ があれば、$s/|s|$ は $S(L_P)\cong P$ の切断なので、1 から $P$ は自明である。$\square$

分類

円周束の分類

$B$ を CW 複体とする。$P\mapsto e(P)$ は、$B$ の上の円周束の同型類の集合から $H^2(B;\mathbb Z)$ への全単射である。とくに、円周束が自明であることと Euler 類が $0$ であることは同値である。

分類定理の出典と証明の筋

この定理は一般の場合にはこの記事では証明しない。prop-cb-line-bundle の 4 により、円周束の同型類は複素直線束の同型類と対応し、$e(P)=c_1(L_P)$ なので、これは CW 複体の上の複素直線束が第 1 Chern 類で分類されることの言い換えである(第1Chern類 の定義「位相的定義」)。そこでは、複素直線束が $\mathbb{CP}^\infty$ への写像のホモトピー類と対応し(普遍束は $S^\infty\to\mathbb{CP}^\infty$。分類空間 の例「円周群と無限次元複素射影空間」)、$\mathbb{CP}^\infty$ が Eilenberg–MacLane 空間 $K(\mathbb Z,2)$ であること(Hat02 Example 4.50、p. 380)と $[B,K(\mathbb Z,2)]\cong H^2(B;\mathbb Z)$(Hat02 Theorem 4.57、p. 393)が使われる。全射のほうは、$B$ が有限単体複体なら次の節で変換関数を具体的に書いて証明する。

有限単体複体の上の構成

$K$ を有限単体複体の多面体、$V$ をその頂点の集合、$K^1$ を $1$ 骨格とする。頂点 $a$ の重心座標 $\lambda_a\colon K\to[0,1]$(単体複体 の定義「幾何学的実現」)は連続で $\sum_a\lambda_a=1$ をみたし、点 $x$ で $\lambda_a(x)>0$ となる頂点の全体は、$x$ を内部に含むただ 1 つの単体の頂点の全体である(同記事の補題「各点の台」)。$U_a:=\{\lambda_a>0\}$ とおくと、$\{U_a\}_{a\in V}$ は $K$ の開被覆である。
$V$ に全順序を入れると、$K$ は各単体の頂点を小さい順に並べた Δ 複体になる(Hat02 §2.1、p. 107)。その単体的コホモロジーは、対 $(K,K^1)$ についても特異コホモロジーと同型であり、同型は、特異余鎖を、各単体 $\tau$ の頂点を小さい順に並べたアフィン写像 $\sigma_\tau\colon\Delta^k\to\tau$ の上の値に制限して与えられる(Hat02 §3.1、p. 202。同書 Theorem 2.27、p. 128 と Corollary 3.4、p. 196 による)。この同型は対の写像と両立する。
とくに $\alpha\in H^2(K)$ は単体的な整数 $2$ 余輪体 $\kappa$ で代表される。$\kappa$ を、共通の単体に入る頂点の順序付きの 3 つ組 $(a,b,c)$ の関数 $\kappa_{abc}$ に交代的に延ばす。すなわち、相異なる頂点を並べ替えると置換の符号倍になり、同じ頂点を 2 回以上含めば $0$ とする。共通の単体に入らない 3 つ組では $\kappa_{abc}:=0$ とおく。$K$ の上の連続関数
$$ h_{ab}:=\sum_{k\in V}\lambda_k\,\kappa_{kab},\qquad g_{ab}:=\exp(2\pi i\,h_{ab})\qquad(a,b\in V) $$
を考える。$\kappa$ が交代的なので $h_{ba}=-h_{ab}$、$h_{aa}=0$ である。

有限単体複体の上の 2 次の類の実現

$K$、$\alpha$、$\kappa$、$g_{ab}$ を上のとおりとする。

  1. $\{g_{ab}|_{U_a\cap U_b}\}$ は変換関数のコサイクル条件をみたし、局所自明化 $\varphi_a\colon L|_{U_a}\cong U_a\times\mathbb C$ で $\varphi_a\circ\varphi_b^{-1}(x,z)=(x,g_{ab}(x)z)$ となる複素直線束 $L\to K$ が定まる。$|g_{ab}|=1$ なので $S(L)$ は円周束である。
  2. 複素構造の向きについて $e(L)=\alpha$ である。したがって円周束 $S(L)$ の Euler 類は $\alpha$ である。
巻き数による計算

要点:$1$ 骨格の上ではすべての $g_{ab}$ が $1$ になるので、長さ $1$ の切断 $\sigma$ が定まる。各 $2$ 単体 $\tau$ の上で $L$ を自明化すると、$\sigma$ は $\tau$ の境界をちょうど $\kappa(\tau)$ 回まわる。$\sigma$ を $K$ 全体の切断 $s$ に延ばすと、相対類 $s^*u\in H^2(K,K^1)$ の各 $2$ 単体での値はこの巻き数であり、相対類は $\kappa$ で代表されるので、その絶対類 $e(L)$ は $[\kappa]=\alpha$ である。

証明を開く

第 1 段:余輪体の条件.共通の単体に入る頂点の順序付きの 4 つ組 $(a_0,a_1,a_2,a_3)$ について、$a_m$ を除いた 3 つ組の $\kappa$ の値を $\kappa^{(m)}$ と書き、$D(a_0,a_1,a_2,a_3):=\sum_{m=0}^3(-1)^m\kappa^{(m)}$ とおく。隣り合う 2 つの成分を入れ替えると、$D$ は $-1$ 倍になる。実際、その 2 つのどちらも除かない項では、除いた後の 3 つ組で隣り合う 2 つが入れ替わるので $\kappa$ の値が $-1$ 倍になり、その 2 つのどちらかを除く 2 項は、入れ替えの後には互いの位置に移って、符号 $(-1)^m$ が逆になる。よって $D$ は成分の置換で置換の符号倍になる。2 つの成分が等しければ、その 2 つの互換で $D=-D$ となり、$D=0$ である。成分が相異なれば、それらは $K$ の $3$ 単体の頂点で、小さい順に並べ替えた値は単体的な余境界 $\delta\kappa$ のその $3$ 単体での値 $0$ である。したがってつねに $D=0$ であり、共通の単体に入る任意の頂点 $k,a,b,c$ について $\displaystyle \kappa_{abc}-\kappa_{kbc}+\kappa_{kac}-\kappa_{kab}=0\qquad(\ast)$ が成り立つ。

第 2 段:コサイクル条件.閉単体 $\tau$ の点 $x$ では、$\lambda_k(x)>0$ となる $k$ はすべて $\tau$ の頂点である。$\tau$ の頂点 $a,b,c$ について、$(\ast)$ に $\lambda_k(x)$ を掛けて $k$ について和をとると、$\sum_k\lambda_k=1$ から、$\tau$ の上で $\displaystyle h_{bc}-h_{ac}+h_{ab}=\kappa_{abc}\qquad(\ast\ast)$ である。$U_a\cap U_b\cap U_c$ の点 $x$ では、$a,b,c$ はどれも $x$ を内部に含む単体の頂点なので、その単体に $(\ast\ast)$ を使うと $h_{ab}+h_{bc}-h_{ac}=\kappa_{abc}\in\mathbb Z$、よって $g_{ab}g_{bc}=g_{ac}$ である。$h_{aa}=0$ から $g_{aa}=1$ でもある。$g_{ab}$ は連続で $\mathbb C^\times=\mathrm{GL}(1,\mathbb C)$ に値をとるので、ベクトル束 の命題「変換関数の連続性・コサイクル条件と束の再構成」の 2 により、1 の局所自明化をもつ複素直線束 $L$ がある($K$ は Hausdorff なので $L$ も Hausdorff である)。$\varphi_a$ の第 2 成分を $z_a$ と書くと、$U_a\cap U_b$ の上で $z_a=g_{ab}z_b$ であり、$|g_{ab}|=1$ なので $|z_a|=|z_b|$ である。変換関数は $\mathbb C\cong\mathbb R^2$ の回転なので、$\varphi_a$ はどれも各ファイバーの複素構造の向きを $\mathbb C$ の標準の向きに写し、Euler類 の定義「ベクトル束の向き」の意味で $L$ の向きを与える。これで 1 が示された。

第 3 段:$1$ 骨格の上の切断.$a\ne b$ とし、$x\in K^1\cap U_a\cap U_b$ とする。$x$ を内部に含む単体は $1$ 骨格の単体で $a,b$ を頂点にもつので辺 $[a,b]$ であり、$k\ne a,b$ では $\lambda_k(x)=0$ である。よって $h_{ab}(x)=\lambda_a(x)\kappa_{aab}+\lambda_b(x)\kappa_{bab}=0$、$g_{ab}(x)=1$ である。したがって $K^1\cap U_a$ の上で $\sigma(x):=\varphi_a^{-1}(x,1)$ と定めると $a$ によらず、$\sigma$ は $K^1$ の上の連続な切断で、どこでも $|\sigma|=1$ である。

第 4 段:閉単体の上の自明化.次元が $1$ 以上の閉単体 $\tau$ をとり、その最小の頂点を $o$ とする。$\tau$ の頂点 $a,b$ について、整数 $n_{ab}:=\kappa_{oab}$ と $\tau$ の上の関数 $h'_{ab}:=h_{ab}-n_{ab}$ をおく。$(\ast)$ で $k=o$ とした式 $n_{bc}-n_{ac}+n_{ab}=\kappa_{abc}$ を $(\ast\ast)$ から引くと、$\tau$ の上で $h'_{bc}-h'_{ac}+h'_{ab}=0$ である(これを $(\dagger)$ とする)。$\tau$ の上の関数 $\Theta_a:=\sum_l\lambda_l\,h'_{la}$($l$ は $\tau$ の頂点を動く)をおく。$(\dagger)$ を 3 つ組 $(l,a,b)$ に使うと $h'_{lb}-h'_{la}=h'_{ab}$ なので、$\sum_l\lambda_l=1$ から $\Theta_b-\Theta_a=h'_{ab}$ である。

$\tau\cap U_a$ の上で $\psi_\tau(\varphi_a^{-1}(x,z)):=(x,\ e^{2\pi i\Theta_a(x)}z)$ と定める。$x\in\tau\cap U_a\cap U_b$ なら $\varphi_a^{-1}(x,z)=\varphi_b^{-1}(x,g_{ba}(x)z)$ であり、$g_{ba}=e^{-2\pi ih_{ab}}$ から $e^{2\pi i\Theta_b}g_{ba}=e^{2\pi i(\Theta_a+h'_{ab}-h_{ab})}=e^{2\pi i\Theta_a}e^{-2\pi in_{ab}}=e^{2\pi i\Theta_a}$ なので、$\psi_\tau$ は $a$ によらない。$\psi_\tau\colon L|_\tau\to\tau\times\mathbb C$ は、各 $\tau\cap U_a$ の上で連続な逆写像 $(x,w)\mapsto\varphi_a^{-1}(x,e^{-2\pi i\Theta_a(x)}w)$ をもつ連続な全単射で、$\{\tau\cap U_a\}$ は $\tau$ の開被覆なので同相写像である。各ファイバーの上では回転なので、$\psi_\tau$ は向きを保つ自明化である。

$\tau$ の辺 $[a,b]$ の上では、$l\ne a,b$ で $\lambda_l=0$ であり、第 3 段と同じ計算で $h_{ba}=0$、また $h'_{aa}=h_{aa}-\kappa_{oaa}=0$ である。$n_{ba}=-n_{ab}$ なので $\Theta_a=\lambda_bh'_{ba}=-\lambda_bn_{ba}=\lambda_bn_{ab}$ となる。よって辺 $[a,b]$ の $b$ 以外の点で $\psi_\tau(\sigma(x))=(x,\ e^{2\pi i\lambda_b(x)n_{ab}})$ であり、両辺の連続性から $b$ でもこの式が成り立つ。

第 5 段:切断の延長.$\sigma$ を $K$ 全体の切断 $s$ に延ばす。次元 $k\ge2$ の単体について、$k$ の小さい方から順に定める。単体 $\tau$ の境界 $\partial\tau$ の上で $s$ が定まっているとき、$\psi_\tau(s(y))=(y,f(y))$ と書き、$\tau$ の重心を $\beta$ として $\displaystyle s\bigl(\beta+t(y-\beta)\bigr):=\psi_\tau^{-1}\bigl(\beta+t(y-\beta),\ t\,f(y)\bigr)\qquad(y\in\partial\tau,\ 0\le t\le1)$ とおく。写像 $\partial\tau\times[0,1]\to\tau$、$(y,t)\mapsto\beta+t(y-\beta)$ は、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全射なので商写像であり、$\partial\tau\times\{0\}$ を $\beta$ に潰すほかは単射である(単体複体 の命題「単体は閉球体と同相」の証明の段 1)。右辺は $t=0$ で $y$ によらず $\psi_\tau^{-1}(\beta,0)$ なので、$s$ は $\tau$ の上で矛盾なく定まって連続であり、$t=1$ では元の値に一致する。有限個の閉単体の上の連続写像で、共通部分(共通の面)の上で値が一致するものを貼り合わせて、$s$ は $K$ 全体の連続な切断になり、$K^1$ の上では $\sigma$ に等しい。

第 6 段:$2$ 単体での値.$s$ は $K^1$ を $L_0$($0$ でないベクトルの全体)に写すので対の写像 $s\colon(K,K^1)\to(L,L_0)$ を与え、$\xi:=s^*u\in H^2(K,K^1)$ が定まる($u$ は $L$ の Thom 類)。包含 $j\colon(K,\emptyset)\to(K,K^1)$ について、Euler類 の定義「Euler 類と Euler 数」の直後の式(任意の切断 $s$ について $e(E)=s^*(u|_E)$)により $j^*\xi=s^*(u|_L)=e(L)$ である。$2$ 単体 $\tau=[v_0,v_1,v_2]$($v_0< v_1< v_2$)について、$\sigma_\tau\colon\Delta^2\to K$ は $\partial\Delta^2$ を $K^1$ に写すので $(K,K^1)$ の相対輪体である。$\langle\xi,\sigma_\tau\rangle=\kappa_{v_0v_1v_2}$ を示す。

$u$ を $(L|_\tau,(L|_\tau)_0)$ に制限した類と $\psi_\tau^*\mathrm{pr}_2^*\nu$($\nu:=u_{\mathbb C}$ は複素構造の向きの生成元)は、どちらもファイバー $L_y$ への制限が $u_{L_y}$ である($\psi_\tau$ はファイバーごとに向きを保つ線型同型)。Euler類 の定理「Thom 類の存在と一意性」の一意性を束 $L|_\tau\to\tau$ に使うと両者は等しい。よって $F:=\mathrm{pr}_2\circ\psi_\tau\circ s\circ\sigma_\tau\colon(\Delta^2,\partial\Delta^2)\to(\mathbb C,\mathbb C_0)$ を相対輪体とみると、$\langle\xi,\sigma_\tau\rangle=\langle u,s\circ\sigma_\tau\rangle=\langle\nu,F\rangle$ である。

$\tau$ では $o=v_0$ なので、$n_{v_0v_1}=\kappa_{v_0v_0v_1}=0$、$n_{v_0v_2}=0$、$n_{v_1v_2}=\kappa_{v_0v_1v_2}=:m$ である。第 4 段の辺の上の式により、$F$ は辺 $[e_0,e_1]$ と $[e_0,e_2]$ の上で定数 $1$ であり、$\sigma_\tau((1-t)e_1+te_2)$ での $\lambda_{v_2}$ は $t$ なので $F((1-t)e_1+te_2)=e^{2\pi imt}$ である。したがって特異鎖として $\displaystyle \partial F=F|_{[e_1,e_2]}-F|_{[e_0,e_2]}+F|_{[e_0,e_1]}=\omega_m,\qquad\omega_m(t):=e^{2\pi imt}$ である(2 つの定数の $1$ 単体は同じものなので打ち消し合う)。$\omega_m=p_m\circ\omega$($p_m(z)=z^m$、$\omega(t)=e^{2\pi it}$)は $S^1$ の輪体で、写像度 の命題「円周の冪写像の写像度」により $H_1(S^1)$ で $[\omega_m]=(p_m)_*[\omega]=m[\omega]$ であり、$[\omega]$ は $H_1(S^1)$ の生成元である(同命題の証明の段 2)。

$\mathbb C$ は可縮なので、対の長完全列の連結準同型 $\partial\colon H_2(\mathbb C,\mathbb C_0)\to H_1(\mathbb C_0)$ は同型であり、包含 $S^1\hookrightarrow\mathbb C_0$ はホモトピー同値(放射状の射影 $r(z)=z/|z|$ がホモトピー逆写像)なので $H_1(\mathbb C_0)$ は $[\omega]$ で生成される。生成元 $\mu_{\mathbb C}$ について $\partial\mu_{\mathbb C}=[\omega]$ を確かめる。$\zeta:=e^{2\pi i/3}$ とし、$\Delta^2$ の頂点 $e_0,e_1,e_2$ を $1,\zeta,\zeta^2$ に写すアフィン写像 $A$ をとる。$\zeta-1$ と $\zeta^2-1$ を並べた行列の行列式は $3\sqrt3/2>0$ で、$A$ は $\Delta^2$ の重心を $0$ に写すので、$A$ は $\mu_{\mathbb C}$ を代表する($\mu_V$ は、向きを保ち $\Delta^n$ の重心を $0$ に写すアフィン単体の類である。MS74 p. 96)。$\partial A=A_{12}-A_{02}+A_{01}$($A_{kl}$ は $A(e_k)$ から $A(e_l)$ への線分)である。道 $\gamma$ とその逆の道 $\bar\gamma$ について $\gamma+\bar\gamma$ は境界であり、端点を止めてホモトピックな道は境界の差しかない(Hat02 Theorem 2A.1 の証明の (i)・(ii)・(iv)、p. 166)。線分 $A_{01}$、$A_{12}$、$A_{20}:=\overline{A_{02}}$ を $r$ で $S^1$ に写した道は、それぞれ $1$ から $\zeta$、$\zeta$ から $\zeta^2$、$\zeta^2$ から $1$ への、偏角の幅 $2\pi/3$ の弧の中の道である(弦の内部の点の偏角は両端の偏角の間にある)。弧は可縮なので、これらは $\omega$ を $[0,1/3]$、$[1/3,2/3]$、$[2/3,1]$ に制限した道と端点を止めてホモトピックであり、写像度 の同命題の証明の段 1 により、その 3 つの和は $\omega$ と境界の差しかない。よって $r_*[\partial A]=[\omega]$ であり、$r$ は包含のホモトピー逆写像なので $\partial\mu_{\mathbb C}=[\partial A]=[\omega]$ である。

以上から $\partial[F]=[\omega_m]=m[\omega]=m\,\partial\mu_{\mathbb C}$ で、$[F]=m\,\mu_{\mathbb C}$ である。$\langle u_{\mathbb C},\mu_{\mathbb C}\rangle=1$ なので $\langle\xi,\sigma_\tau\rangle=\langle\nu,[F]\rangle=m=\kappa_{v_0v_1v_2}$ である。

第 7 段:結論.$K$ の辺はすべて $K^1$ に入るので、$(K,K^1)$ の単体的な $1$ 余鎖は $0$ であり、単体的な相対コホモロジー $H^2_\Delta(K,K^1)$ は相対 $2$ 余輪体の群そのものである。$K^1$ には $2$ 単体がないので、$2$ 単体の上の関数 $\kappa$ はそのまま相対余輪体である。冒頭の同型は $\xi$ を余輪体 $\tau\mapsto\langle\xi,\sigma_\tau\rangle$ に写し、第 6 段によりこれは $\kappa$ である。同型は $j$ と両立し、単体的な側の $j^*$ は余輪体 $\kappa$ をその類 $[\kappa]$ に写すので、$e(L)=j^*\xi$ は $[\kappa]=\alpha$ である。$\square$

2 次元球面の上の円周束の Euler 数

$K$ を $3$ 単体 $[v_0,v_1,v_2,v_3]$ の境界とする($S^2$ と同相)。$K$ には $3$ 単体がないので、$2$ 単体の上のどんな整数値の関数も余輪体である。整数 $m$ をとり、$\kappa$ を $[v_1,v_2,v_3]$ で $m$、ほかの 3 つの $2$ 単体で $0$ とする。単体的な輪体 $z:=\sum_{l=0}^3(-1)^l[v_0,\dots,\widehat{v_l},\dots,v_3]$ は $H_2(K)=\ker\partial_2\cong\mathbb Z$ の生成元である(係数が $\pm1$ なので、$\ker\partial_2$ のどの元の $2$ 以上の整数倍でもない)。$z$ の類を基本類とする向きを $K$ に入れると、thm-cb-realization の束 $L$ について $\langle e(L),[K]\rangle=\kappa(z)=m$ である(単体的な対と特異的な対は冒頭の同型で両立する)。とくに、どの整数も $S^2$ の上のある円周束の Euler 数になる。

Gysin 列

円周束の Gysin 列

$p\colon P\to B$ を円周束、$e=e(P)\in H^2(B;\mathbb Z)$ とする。整数係数の長完全列
$$ \cdots\to H^{j-2}(B)\xrightarrow{\ \smile e\ }H^j(B)\xrightarrow{\ p^*\ }H^j(P)\longrightarrow H^{j-1}(B)\xrightarrow{\ \smile e\ }H^{j+1}(B)\to\cdots $$
がある。

$E:=L_P$ を複素構造の向きで向き付けられた階数 $2$ の実ベクトル束とみて、Gysin列 の定理「整数係数の Gysin 列」を使う。そこでの $E_0$ は $\{[u,z]\mid z\ne0\}$ である。$r\colon E_0\to S(E)$、$r[u,z]:=[u,z/|z|]$ は代表によらず、局所自明化 $\Phi_a$ の上では $(x,z)\mapsto(x,z/|z|)$ なので連続である。包含 $i\colon S(E)\to E_0$ について $r\circ i=\mathrm{id}$ であり、$H_t[u,z]:=[u,(1-t)z+tz/|z|]$($z$ と $z/|z|$ は同じ向きの複素数なので $0$ にならない)は $\mathrm{id}_{E_0}$ と $i\circ r$ を結ぶホモトピーである。よって $i^*\colon H^j(E_0)\to H^j(S(E))$ は同型で、射影と両立する。prop-cb-line-bundle の 3 の同型 $P\cong S(E)$ も射影と両立するので、Gysin 列の $H^j(E_0)$ を $H^j(P)$ に、$\pi_0^*$ を $p^*$ に置き換えてよい。同型で置き換えても完全性は保たれる。$\square$

この列から、全空間のコホモロジーは短完全列 $0\to\operatorname{Coker}(\smile e)\to H^j(P)\to\operatorname{Ker}(\smile e)\to0$(左は $H^{j-2}(B)\to H^j(B)$ の余核、右は $H^{j-1}(B)\to H^{j+1}(B)$ の核)の形で計算できる。とくに $e(P)=0$ なら、長完全列は短完全列 $0\to H^j(B)\to H^j(P)\to H^{j-1}(B)\to0$ に分かれる。

2 次元球面の上の円周束の全空間

$S^2$ に向きを 1 つ入れ、$P\to S^2$ を Euler 数 $m$ の円周束とする。このとき $H^0(P;\mathbb Z)\cong H^3(P;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$、$j\ge4$ で $H^j(P;\mathbb Z)=0$ であり、
$$ H^1(P;\mathbb Z)\cong\begin{cases}\mathbb Z&(m=0)\\0&(m\ne0)\end{cases},\qquad H^2(P;\mathbb Z)\cong\begin{cases}\mathbb Z&(m=0)\\\mathbb Z/|m|&(m\ne0)\end{cases} $$
である。とくに、$|m|$ の異なる円周束の全空間はホモトピー同値でない。

$H^j(S^2)$ は $j=0,2$ で $\mathbb Z$、ほかで $0$ である。$H^2(S^2)$ の生成元 $g$ を $\langle g,[S^2]\rangle=1$ ととると、普遍係数定理により $\langle\,\cdot\,,[S^2]\rangle$ は同型 $H^2(S^2)\cong\mathbb Z$ なので $e(P)=mg$ である。thm-cb-gysin の列の $j=1,2$ の部分は
$$ 0=H^1(S^2)\to H^1(P)\to H^0(S^2)\xrightarrow{\ \smile e\ }H^2(S^2)\to H^2(P)\to H^1(S^2)=0 $$
で、$\smile e$ は $1\mapsto mg$、すなわち $\mathbb Z$ の $m$ 倍写像である。よって $H^1(P)$ はその核、$H^2(P)$ はその余核であり、主張の形になる。$j=0$ では $0=H^{-2}(S^2)\to H^0(S^2)\to H^0(P)\to H^{-1}(S^2)=0$、$j=3$ では $0=H^3(S^2)\to H^3(P)\to H^2(S^2)\to H^4(S^2)=0$、$j\ge4$ では両隣の $H^j(S^2)$ と $H^{j-1}(S^2)$ が $0$ である。コホモロジーはホモトピー不変なので最後の主張が従う。$\square$

例

Hopf 束

$S^3=\{(z_1,z_2)\in\mathbb C^2\mid|z_1|^2+|z_2|^2=1\}$ に $\mathrm{U}(1)$ を $(z_1,z_2)\lambda:=(z_1\lambda,z_2\lambda)$ で作用させ、$p(z):=[z_1:z_2]\in\mathbb{CP}^1$ とおくと、$p\colon S^3\to\mathbb{CP}^1\cong S^2$ は円周束である(主束 の例「Hopf 束」、Hopfファイブレーション の定理「Hopf ファイブレーションは円周束」)。同伴直線束はトートロジー直線束 $\gamma=\mathcal O(-1)$ と同型で(同じ例)、Chern類 の系「直線束の全Chern類と双対」の 4 により $c_1(\gamma)=-h$ である($h$ は $\langle h,[\mathbb{CP}^1]\rangle=1$ をみたす超平面類)。よって複素構造の向きについて Hopf 束の Euler 数は $-1$ である。

Euler 数 m の円周束とレンズ空間

$m\ge1$ とし、$\gamma^{\otimes m}$ に $\mathbb C^2$ の内積から誘導される計量($|v^{\otimes m}|=|v|^m$)を入れる。$1$ の $m$ 乗根の群 $\mu_m$ を $S^3$ に $z\mapsto z\zeta$($\zeta\in\mu_m$)で作用させると、$z\mapsto z^{\otimes m}$ は商 $S^3/\mu_m$ から $S(\gamma^{\otimes m})$ への同相写像を引き起こす。$m\ge2$ なら $S^3/\mu_m$ は レンズ空間 の定義「3 次元レンズ空間」の $L(m;1)$ であり、$m=1$ なら $S^3$ である。

同相であることの確かめを開く

$\phi\colon S^3\to S(\gamma^{\otimes m})$、$\phi(z):=z^{\otimes m}\in(\mathbb Cz)^{\otimes m}$ とおく。局所枠 $f=(z_1/z_2,1)$($z_2\ne0$ の上)について $z^{\otimes m}=z_2^mf^{\otimes m}$ なので $\phi$ は連続である。$(\mathbb Cz)^{\otimes m}$ の長さ $1$ のベクトルは $\nu z^{\otimes m}$($|\nu|=1$)の形で、$\lambda^m=\nu$ となる $\lambda$ をとれば $\phi(z\lambda)=\nu z^{\otimes m}$ なので $\phi$ は全射である。$\phi(z)=\phi(w)$ なら $w$ は $z$ と同じ直線にあって $w=z\lambda$($|\lambda|=1$)と書け、$\lambda^mz^{\otimes m}=z^{\otimes m}$ から $\lambda^m=1$ である。逆も成り立つ。よって $\phi$ は、$1$ の $m$ 乗根の群 $\mu_m$ を $z\mapsto z\zeta$($\zeta\in\mu_m$)で作用させた商から $S(\gamma^{\otimes m})$ への連続な全単射を引き起こし、コンパクト空間から Hausdorff 空間への写像なので同相写像である。


Chern類 の系「直線束の全Chern類と双対」の 3 により $e(S(\gamma^{\otimes m}))=c_1(\gamma^{\otimes m})=-mh$ で、Euler 数は $-m$ である。prop-cb-over-sphere は $H^2(L(m;1);\mathbb Z)\cong\mathbb Z/m$ を与え、レンズ空間 の定理「ホモロジー群とコホモロジー群」と合う。Euler 数 $+m$ の円周束の全空間も $L(m;1)$ である(下の節「反例と注意」の 3 行目)。$m=0$ なら全空間は $S^2\times S^1$ で、thm-cb-classification と合わせると、$S^2$ の上の円周束の全空間は Euler 数 $m$ により $S^2\times S^1$、$S^3$、$L(|m|;1)$($|m|\ge2$)のどれかになる。

球面の単位接束

$S^2\subset\mathbb R^3$ の単位接束 $T^1S^2=\{(p,v)\mid|p|=|v|=1,\ p\perp v\}$ は、$(p,v)\lambda:=(p,\ \cos\theta\,v+\sin\theta\,p\times v)$($\lambda=e^{i\theta}$)により円周束であり、接束 $TS^2$ の単位円周束(外向きの法線で向き付けた $S^2$ の向き)である。その Euler 数は $\langle e(TS^2),[S^2]\rangle=2$ である(Euler類 の例「球面の接束」)。$(p,v)\mapsto(p\ \ v\ \ p\times v)$(列ベクトルを並べた行列)は $T^1S^2$ から $\mathrm{SO}(3)$ への同相写像で(逆写像は最初の 2 列をとる写像)、$\mathrm{SO}(3)\cong\mathbb{RP}^3$ である(SO(3)とSU(2) の命題「被覆写像であることと $\mathbb{RP}^3$ との同相」)。$\mathbb{RP}^3=L(2;1)$(レンズ空間 の例「実射影空間」)なので、これは ex-cb-lens の $|m|=2$ の場合と合う。prop-cb-over-sphere による $H^2(T^1S^2;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2$ は、Gysin列 の例「2 次元球面の単位接束」の計算と同じである。

反例と注意

外す条件反例成り立たなくなること
変換関数が回転であること$S^1$ の上の束としての Klein の壺ファイバーが $S^1$ の束が $H^2(B;\mathbb Z)$ の類で分類されること
Euler 類を整数係数で考えること$\mathbb{RP}^2$ の上の、Euler 類が $H^2(\mathbb{RP}^2;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2$ の生成元である円周束実係数の Euler 類が $0$ なら自明であること
円周束としての同型($\mathrm{U}(1)$ の作用を保つ同型)$S^2$ の上の $S(\gamma)$ と $S(\bar\gamma)$全空間が同相なら Euler 類が等しいこと
各行の確かめを開く

1 行目.Klein の壺は円周の鏡映 $z\mapsto\bar z$ の写像トーラスで、ファイバーが $S^1$ の $S^1$ 上のファイバー束である(Kleinの壺 の定理「Klein の壺の 3 つの模型」)。変換関数に鏡映が要るので、この記事の意味の円周束ではない(ファイバーの向きが一周で逆になる。Hat02 p. 442)。$H^2(S^1;\mathbb Z)=0$ なので、ファイバーが $S^1$ の束がすべて $H^2$ の類で分類されるなら Klein の壺はトーラス $S^1\times S^1$ と束として同型になり、とくに同相になる。しかし Klein の壺は向き付け不可能でトーラスは向き付け可能なので(Kleinの壺 の系「向き付け不可能性と連結和」)、同相でない。

2 行目.$H_1(\mathbb{RP}^2)\cong\mathbb Z/2$、$H_2(\mathbb{RP}^2)=0$(実射影空間 の定理「実射影空間のホモロジー」)と 普遍係数定理 から $H^2(\mathbb{RP}^2;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2$ である。$\mathbb{RP}^2$ は CW 複体なので、thm-cb-classification により Euler 類がその生成元 $\ne0$ である円周束 $P$ があり、prop-cb-section により $P$ は自明でない。一方 $H^2(\mathbb{RP}^2;\mathbb R)=0$ なので、$e(P)$ の実係数の像は $0$ であり、大域角形式や曲率で書ける実係数の量では $P$ を自明束と区別できない。

3 行目.複素直線束 $L$ の共役 $\bar L$ は、同じ実ベクトル束に $\lambda$ 倍を $\bar\lambda$ 倍として入れ直したものである(Pontryagin類 の定義「複素化と共役」)。同じ計量について $S(\bar L)$ と $S(L)$ は同じ空間で、$\mathrm{U}(1)$ の作用だけが $\lambda\mapsto\bar\lambda$ で入れ替わる。Pontryagin類 の命題「共役と奇数番目の Chern 類」の 1 により $e(S(\bar L))=c_1(\bar L)=-c_1(L)$ である。$L=\gamma$ なら $S(\gamma)$ と $S(\bar\gamma)$ の全空間はどちらも $S^3$ だが、Euler 数は $-1$ と $1$ で、円周束としては同型でない。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §2.1 単体複体と Δ 複体(p. 107)、Theorem 2.27(p. 128);§2.A Theorem 2A.1 の証明の (i)・(ii)・(iv)(p. 166);§3.1 Corollary 3.4(p. 196)、単体的コホモロジーと特異コホモロジーの同型(p. 202);Example 4.50(p. 380、CP^∞=K(Z,2))、Theorem 4.57(p. 393);§4.D 球面束の向き付け可能性と Klein の壺(p. 442)

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