Hurewiczの定理(Hurewicz theorem)とは、ホモトピー群から整数係数の特異ホモロジー群への Hurewicz 準同型 $h\colon\pi_n(X,x_0)\to H_n(X)$ が、最初に消えない次数で同型になることを述べる定理である。道連結な空間では $h$ は基本群のアーベル化と $H_1(X)$ の同型を誘導し、$n\ge2$ で $X$ が $(n-1)$-連結なら $0<i<n$ で $\tilde H_i(X)=0$ かつ $\pi_n(X)\cong H_n(X)$ となる。部分空間 $A$ が単連結な $(n-1)$-連結な対には相対版が成り立ち、系として、単連結な CW 複体の間の写像はホモロジーの同型を誘導すればホモトピー同値である。
Hurewicz の定理は、空間のホモトピー群とホモロジー群を、球面からの写像を球面の基本類の像に送る写像(Hurewicz 準同型)で結び、最初に消えない次数で両者が一致することを主張する。1 次元では、道連結な空間の基本群をアーベル化したものが 1 次ホモロジー群になる。$n\ge2$ では、$(n-1)$-連結な空間について $\pi_n(X)\cong H_n(X)$ となる。
ホモトピー群は定義が簡単でも計算が難しく、ホモロジー群は完全列や胞体の数え上げで計算しやすい。この定理により、最初に現れる非自明なホモトピー群をホモロジーから計算できる。また、単連結な CW 複体の間の写像がホモロジーの同型を誘導すればホモトピー同値であること(cor-hur-whitehead)も、この定理から従う。
ホモロジーはすべて整数係数の特異ホモロジーとし、$H_n(X;\mathbb Z)$ を $H_n(X)$、被約ホモロジーを $\tilde H_n(X)$ と書く。$n\ge1$ について $H_n(D^n,S^{n-1})\cong\mathbb Z$ の生成元 $[D^n]$ を一つ選び、対の完全列の境界写像($D^n$ が可縮なので同型)による像を $[S^{n-1}]\in\tilde H_{n-1}(S^{n-1})$ とする。$n=2$ では、$[D^2]$ の符号を、$[S^1]$ が 1 輪体 $\omega$ の類になるように選ぶ。ここで $\omega\colon\Delta^1\cong[0,1]\to S^1$ は両端を同一視する商写像で、$\partial\omega=\omega(1)-\omega(0)=0$ である。$[\omega]$ が $H_1(S^1)$ の生成元であることは、ループをその 1 輪体の類へ送る写像が $\pi_1^{\mathrm{ab}}\to H_1$ の同型を与えること(thm-hur-one の証明の $\bar h$。その構成は $[S^1]$ の選び方を使わない)を $S^1$ に使い、$\pi_1(S^1)$ が $\omega$ の表すループで生成されることから分かる。
位相空間 $X$、点 $x_0\in X$、整数 $n\ge1$ に対し、
$$
h\colon\pi_n(X,x_0)\to H_n(X),\qquad h([a]):=a_*[S^n]
$$
を Hurewicz 準同型(Hurewicz homomorphism)という。ここで $a\colon(S^n,s_0)\to(X,x_0)$ は基点付き写像、$a_*$ はホモロジーの誘導準同型である。部分空間 $A\subset X$ と $x_0\in A$ に対しては、写像 $b\colon(D^n,S^{n-1},s_0)\to(X,A,x_0)$ の類を $b_*[D^n]$ に送る写像
$$
h\colon\pi_n(X,A,x_0)\to H_n(X,A)
$$
を相対 Hurewicz 準同型という。
ホモトピックな写像はホモロジーに同じ準同型を誘導するので、$h$ は類の代表によらない。基点を動かすホモトピーでも値は変わらないので、ホモトピー群の記事の命題「被覆空間と$n$-単純性」の $\pi_1(X,x_0)$ の作用で移り合う元は、$h$ で同じ値に送られる(基点の移送で得た写像は、殻の幅を縮めるホモトピーで元の写像と自由ホモトピックである)。これはホモトピー群の記事の命題「Hurewicz準同型」と同じ写像である。
要点:立方体の貼り合わせによる和は、球面を赤道でつぶす写像 $c\colon S^n\to S^n\vee S^n$ と $a\vee b$ の合成で表され、$c_*[S^n]$ は二つの球面の基本類の和である。
$P:=I^n/\partial I^n\cong S^n$ とする。超平面 $\{s_1=\tfrac12\}$ もつぶすと $P\vee P$ になり(左半分と右半分を第 1 座標方向に 2 倍に引き伸ばす)、この商写像を $c\colon P\to P\vee P$ とする。ホモトピー群の記事の定義「ホモトピー群の演算($n\geq1$)」の和は $a+b=(a\vee b)\circ c$ と書ける。$q_k\colon P\vee P\to P$($k=1,2$)を他方の球面をつぶす写像、$\iota_k$ を包含とすると、$(q_{1*},q_{2*})\colon H_n(P\vee P)\to H_n(P)^2$ は同型で逆は $\iota_{1*}+\iota_{2*}$ である(Hat02 Corollary 2.25, p. 126)。$q_1\circ c$ は $s\mapsto(\min(2s_1,1),s_2,\dots,s_n)$ で与えられ、ホモトピー群の記事の命題「貼り合わせによる群構造」の証明にある単位元則のホモトピーにより恒等写像とホモトピックである。$q_2\circ c$ も同様である。よって $c_*[P]=\iota_{1*}[P]+\iota_{2*}[P]$ であり、$(a\vee b)\circ\iota_1=a$、$(a\vee b)\circ\iota_2=b$ から $h([a]+[b])=(a\vee b)_*c_*[P]=a_*[P]+b_*[P]$ を得る。2 は $(f\circ a)_*=f_*\circ a_*$ による。$\square$
相対版も $n\ge2$ で準同型である(Hat02 Proposition 4.36, p. 369。この記事では証明しない)。自然性は 2 と同じく誘導準同型の合成から従う。
道 $\alpha\colon[0,1]\to X$ を、標準 1 単体 $\Delta^1\cong[0,1]$ からの特異 1 単体とみなす。道の積を $\alpha\cdot\beta$、逆の道を $\bar\alpha$ と書く。1 鎖 $c,c'$ の差が境界であることを $c\equiv c'$ と書く。
要点:三角形や正方形を道の形に写す特異 2 単体を作り、その境界を計算する。
標準 2 単体を $\Delta^2=[v_0,v_1,v_2]$、辺 $[v_i,v_j]$ は一次の径数で $[0,1]$ と同一視する。2 単体 $\sigma$ の境界は $\partial\sigma=\sigma|_{[v_1,v_2]}-\sigma|_{[v_0,v_2]}+\sigma|_{[v_0,v_1]}$ である。
1:定値の 2 単体の境界は $c_x-c_x+c_x=c_x$ である。
3:アフィン写像 $p\colon\Delta^2\to[0,1]$ を $p(v_0)=0$、$p(v_1)=\tfrac12$、$p(v_2)=1$ で定め、$\sigma:=(\alpha\cdot\beta)\circ p$ とする。$p$ は辺 $[v_0,v_1]$、$[v_1,v_2]$、$[v_0,v_2]$ をそれぞれ $[0,\tfrac12]$、$[\tfrac12,1]$、$[0,1]$ へ一次に写すので、$\partial\sigma=\beta-\alpha\cdot\beta+\alpha$ である。
2:$F\colon I\times I\to X$ を $F(s,0)=\alpha(s)$、$F(s,1)=\beta(s)$、$F(0,u)=x$、$F(1,u)=y$ を満たすホモトピーとする。正方形を対角線で二つの三角形 $[(0,0),(1,0),(1,1)]$、$[(0,0),(0,1),(1,1)]$ に分け、それぞれの上の $F$ を $\sigma_1,\sigma_2$ とする。対角線上の道を $\delta$ とすると $\partial\sigma_1=c_y-\delta+\alpha$、$\partial\sigma_2=\beta-\delta+c_x$ なので、$\alpha-\beta\equiv c_x-c_y\equiv0$ である。
4:$\alpha\cdot\bar\alpha$ は定値の道と端点を止めてホモトピックである(基本群)。3、2、1 から $\alpha+\bar\alpha\equiv\alpha\cdot\bar\alpha\equiv c_{\alpha(0)}\equiv0$。$\square$
$X$ を道連結な位相空間、$x_0\in X$ とする。$h\colon\pi_1(X,x_0)\to H_1(X)$ は全射であり、その核は交換子群 $[\pi_1(X,x_0),\pi_1(X,x_0)]$ である。すなわち $h$ は同型
$$
\bar h\colon\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}\xrightarrow{\ \cong\ }H_1(X)
$$
を誘導する。
ループ $f$ は $\partial f=f(1)-f(0)=0$ なので 1 輪体である。$f=a\circ\omega$ となる基点付き写像 $a\colon S^1\to X$ をとると、節「定義」の規約 $[S^1]=[\omega]$ により $h([f])=a_*[\omega]=[a\circ\omega]=[f]$ である。ここで右辺はループ $f$ を 1 輪体とみなした類で、lem-hur-paths の 2 により類の代表によらず、3 により準同型である。$H_1(X)$ はアーベル群なので、$h$ はアーベル化を経由して $\bar h$ を誘導する。$\bar h$ の逆写像を作る。
各点 $x\in X$ に $x_0$ から $x$ への道 $\gamma_x$ を選び、$\gamma_{x_0}$ は定値の道とする。$\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}$ を加法で書き、特異 1 単体 $\sigma$ に対して
$$
\Psi(\sigma):=\bigl[\gamma_{\sigma(0)}\cdot\sigma\cdot\bar\gamma_{\sigma(1)}\bigr]\in\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}
$$
と定め、$\Psi\colon C_1(X)\to\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}$ に線型に延ばす。
$\Psi$ は境界を 0 に送る。 特異 2 単体 $\tau$ の三辺を $\tau_{01},\tau_{12},\tau_{02}$ とする。$\Delta^2$ は凸なので、$v_0$ から $v_1$ を経て $v_2$ へ行く道と辺 $[v_0,v_2]$ は線分によるホモトピーで端点を止めて移り合い、$\tau$ と合成すれば $\tau_{01}\cdot\tau_{12}$ と $\tau_{02}$ は端点を止めてホモトピックである。$\bar\gamma_y\cdot\gamma_y$ は定値の道とホモトピックなので、$p=\tau(v_0)$ として
$$
\Psi(\partial\tau)=\Psi(\tau_{01})+\Psi(\tau_{12})-\Psi(\tau_{02})
=\bigl[\gamma_p\cdot\tau_{01}\cdot\tau_{12}\cdot\bar\tau_{02}\cdot\bar\gamma_p\bigr]=0 .
$$
よって $\Psi$ を 1 輪体に制限すると、$\bar\Psi\colon H_1(X)\to\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}$ が定まる。
$\bar\Psi\circ\bar h$ は恒等写像である。 ループ $f$ について $\Psi(f)=[\gamma_{x_0}\cdot f\cdot\bar\gamma_{x_0}]=[f]$。
$\bar h\circ\bar\Psi$ は恒等写像である。 lem-hur-paths の 3、4 により $h\Psi(\sigma)$ は 1 鎖 $\gamma_{\sigma(0)}+\sigma-\gamma_{\sigma(1)}$ の類である。準同型 $\Gamma\colon C_0(X)\to C_1(X)$ を $\Gamma(x):=\gamma_x$ で定めると、1 輪体 $z=\sum_in_i\sigma_i$ について
$$
\bar h\bar\Psi[z]=\Bigl[\sum_in_i\bigl(\gamma_{\sigma_i(0)}+\sigma_i-\gamma_{\sigma_i(1)}\bigr)\Bigr]=\bigl[z-\Gamma(\partial z)\bigr]=[z]
$$
である($\partial z=\sum_in_i(\sigma_i(1)-\sigma_i(0))=0$)。
以上で $\bar h$ は同型であり、$h=\bar h\circ(\text{アーベル化})$ の核は交換子群である。$\square$
この証明は CW 構造も局所的な連結性も使わず、各点への道の選び方だけを使う。アーベル化の記事の定理「1次ホモロジーとアーベル化」の 1 はこの定理である。
正の整数 $m,n$ について、円周の写像 $z\mapsto z^m$、$z\mapsto z^n$ の写像柱を定義域側の円周どうしで貼り合わせた空間を $X_{m,n}$ とする。その基本群は $G_{m,n}:=\langle a,b\mid a^m=b^n\rangle$ であり、$m,n$ が互いに素なら $S^3$ から $(m,n)$ トーラス結び目を除いた空間は $X_{m,n}$ に変位レトラクトする(Hat02 Example 1.24, pp. 47–48)。thm-hur-one により $H_1(X_{m,n})\cong G_{m,n}^{\mathrm{ab}}=\mathbb Z^2/\mathbb Z(m,-n)$ である。$d:=\gcd(m,n)$、$m=dm'$、$n=dn'$ とし、$m'r+n's=1$ となる整数 $r,s$ をとると、$(m',-n')$ と $(s,r)$ は行列式 $m'r+n's=1$ の整数基底をなす。関係 $(m,-n)$ は第 1 基底の $d$ 倍なので
$$
H_1(X_{m,n})\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z/d\mathbb Z .
$$
$m=n=2$ では $X_{2,2}$ は Klein の壺で、$\mathbb Z\oplus\mathbb Z/2\mathbb Z$ を得る。トーラス結び目の補空間($d=1$)の $H_1$ はどれも $\mathbb Z$ だが、$m,n\ge2$ のとき $G_{m,n}$ は非可換である(中心で割ると $\mathbb Z/m*\mathbb Z/n$ になる。Hat02 p. 48)。$H_1$ は基本群の非可換な部分を見ない。
$n\ge0$ について、空間 $X$ が $n$-連結 であるとは、道連結で $1\le i\le n$ のすべての $i$ について $\pi_i(X,x_0)=0$ であることをいう。対 $(X,A)$ が $n$-連結であるとは、$A$ が $X$ のすべての弧状連結成分と交わり、すべての $x_0\in A$ と $1\le i\le n$ について $\pi_i(X,A,x_0)=0$ であることをいう。CW 対 $(X,A)$ で $X\setminus A$ の胞体の次元がすべて $m$ より大きければ、$(X,A)$ は $m$-連結である(胞体近似定理の記事の系「胞体の次元と対の連結度」)。
$n\ge2$ とし、$W=\bigvee_\alpha S^n_\alpha$ を $n$ 次元球面の族の一点でのウェッジ和(0 胞体 1 個と $n$ 胞体の族からなる CW 複体)、$\iota_\alpha\colon S^n\to W$ を包含とする。$\pi_n(W)$ は $\{[\iota_\alpha]\}_\alpha$ を基底とする自由アーベル群であり、$h\colon\pi_n(W)\to H_n(W)$ は同型である。
要点:有限個なら $W$ は球面の積 $P$ の $n$ 骨格で、$P\setminus W$ の胞体は $2n$ 次元以上なので $\pi_n(W)\cong\pi_n(P)$ となる。
有限個の場合。各 $S^n_\alpha$ に 0 胞体と $n$ 胞体からなる CW 構造を入れ、積 $P:=\prod_\alpha S^n_\alpha$ に積の CW 構造を入れる(Hat02 Theorem A.6, p. 524)。$P$ の胞体は胞体の積なので、$W$ は $P$ の $n$ 骨格であり、$P\setminus W$ の胞体の次元は $2n$ 以上である。よって $(P,W)$ は $(2n-1)$-連結で、対の完全列(Hat02 Theorem 4.3, p. 344)$\pi_{n+1}(P,W)\to\pi_n(W)\to\pi_n(P)\to\pi_n(P,W)$ の両端は $n+1\le2n-1$($n\ge2$)により 0 である。積への写像は成分の組なので $\pi_n(P)\cong\prod_\alpha\pi_n(S^n_\alpha)$ であり(Hat02 Proposition 4.2, p. 343)、$[\iota_\alpha]$ は第 $\alpha$ 成分が $[\mathrm{id}]$、他の成分が 0 の元に写る。ex-hur-sphere により $\pi_n(S^n)$ は $[\mathrm{id}]$ で生成される無限巡回群なので、$\{[\iota_\alpha]\}$ は基底である。
一般の場合。$S^n$ からの写像とそのホモトピーの像はコンパクトなので有限部分複体に含まれ(CW複体の記事の定理「コンパクト集合は有限部分複体に含まれる」)、したがって有限個の球面のウェッジ和に入る。有限の場合を当てはめると、$\pi_n(W)$ の元は $[\iota_\alpha]$ の有限一次結合で書け、係数のどれかが 0 でない一次結合は 0 にならない。
ホモロジーについては、包含が誘導する $\bigoplus_\alpha H_n(S^n_\alpha)\to H_n(W)$ は同型である(Hat02 Corollary 2.25, p. 126)。$h([\iota_\alpha])=\iota_{\alpha*}[S^n]$ は右辺の基底をなすので、$h$ は基底を基底に写し、同型である。$\square$
$n\ge2$ とし、$X$ を $(n-1)$-連結な位相空間、$x_0\in X$ とする。このとき $0< i< n$ で $\tilde H_i(X)=0$ であり、Hurewicz 準同型
$$
h\colon\pi_n(X,x_0)\to H_n(X)
$$
は同型である。
CW 複体への帰着。 $X$ には CW 近似、すなわち CW 複体 $Z$ と弱ホモトピー同値 $f\colon Z\to X$ がある(CW近似、Hat02 Proposition 4.13, p. 353)。弱ホモトピー同値はホモロジーにも同型を誘導する(Hat02 Proposition 4.21, p. 356)。prop-hur-hom の 2 により $h\circ f_*=f_*\circ h$ なので、$Z$ について示せば $X$ について従う。さらに 0 胞体 $z_0$ について $(Z,z_0)$ は $(n-1)$-連結な CW 対なので、$z_0$ を止めたホモトピー同値で $Z$ を、$z_0$ 以外の胞体がすべて $n$ 次元以上の CW 複体に取り替えられる(Hat02 Proposition 4.15, p. 353)。以下 $X$ はこの形とし、$x_0$ をその 0 胞体とする。$X$ の $n$ 骨格は $n$ 次元球面のウェッジ和 $W$ である。
低い次数。 CW 複体の $k$ 骨格の包含は $i< k$ の $H_i$ に同型を誘導する(Hat02 Lemma 2.34, p. 137)ので、$0< i< n$ で $\tilde H_i(X)\cong\tilde H_i(W)=0$ である。同じ理由で $X^{n+1}\hookrightarrow X$ は $H_n$ に同型を誘導し、$(X,X^{n+1})$ は $(n+1)$-連結なので $\pi_n$ にも同型を誘導する。自然性により $X=X^{n+1}$ としてよい。すなわち
$$
X=W\cup_{\varphi_\beta}\bigcup_\beta e^{n+1}_\beta,\qquad \varphi_\beta\colon S^n\to W
$$
とする。$\Phi_\beta\colon D^{n+1}\to X$ を特性写像、$i\colon W\hookrightarrow X$ を包含とする。$W$ は道連結で $(S^n,s_0)$ はホモトピー拡張性質をもつので、$\varphi_\beta$ と自由ホモトピックな基点付き写像 $a_\beta\colon(S^n,s_0)\to(W,x_0)$ がとれる。
三つの事実。
全射。 $h\circ i_*=i_*\circ h$ の右辺は、lem-hur-wedge と 2 により全射なので、$h\colon\pi_n(X)\to H_n(X)$ は全射である。
単射。 $x\in\pi_n(X)$ で $h(x)=0$ とする。1 により $x=i_*(w)$ となる $w\in\pi_n(W)$ がある。$i_*h(w)=h(x)=0$ なので、2 により整数 $m_\beta$(有限個を除き 0)で $h(w)=\sum_\beta m_\beta h([a_\beta])$ となる。lem-hur-wedge により $h$ は $W$ 上で単射なので $w=\sum_\beta m_\beta[a_\beta]$ であり、3 から $x=\sum_\beta m_\beta i_*[a_\beta]=0$。$\square$
証明から、$\pi_n(X)$ は、第 $\alpha$ 球面以外をつぶす写像 $q_\alpha$ との合成の写像度 $\deg(q_\alpha\circ\varphi_\beta)$ を成分とする行列の余核として計算できる。これは胞体境界写像の行列と同じである(Hat02 pp. 140–141 の胞体境界公式)。
$n\ge2$、$m\ge1$ とし、写像度 $m$ の写像 $S^n\to S^n$ で $(n+1)$ 胞体を貼った $X=S^n\cup_me^{n+1}$ を考える。胞体は 0、$n$、$n+1$ 次元だけなので $X$ は $(n-1)$-連結で、上の計算から $H_n(X)\cong\mathbb Z/m\mathbb Z$ である。よって $\pi_n(X)\cong\mathbb Z/m\mathbb Z$ であり、最初の非自明なホモトピー群は自由とは限らない。
$\mathbb CP^k$($k\ge1$)は 0、2、…、$2k$ 次元の胞体を一つずつもつ CW 複体である(Hat02 Example 0.6, pp. 6–7)。1 次元の胞体がないので 1-連結であり、奇数次元の胞体がないので胞体境界写像はすべて 0 で $H_2(\mathbb CP^k)\cong\mathbb Z$ である(胞体ホモロジー、Hat02 p. 140)。よって $\pi_2(\mathbb CP^k)\cong\mathbb Z$ であり、包含 $\mathbb CP^1=S^2\hookrightarrow\mathbb CP^k$ の類が生成元である($h$ はこれを $H_2$ の生成元に送る)。
$n\ge2$、$X=S^1\vee S^n$ とする。$2\le i< n$ で $\pi_i(X)=0$ だが $\pi_1(X)\cong\mathbb Z$ であり、$h\colon\pi_n(X)\to H_n(X)\cong\mathbb Z$ は単射でない。
要点:普遍被覆は直線の各整数点に球面を付けた空間で、球面の可算ウェッジ和とホモトピー同値である。$\pi_1$ の生成元で移した二つの元は異なるが、$h$ では同じ値になる。
$\tilde X:=\mathbb R\cup\bigcup_{k\in\mathbb Z}S^n_k$($S^n_k$ の基点を整数点 $k$ に付ける)とし、$p\colon\tilde X\to X$ を $\mathbb R\to S^1$ の被覆と各 $S^n_k$ の恒等写像で定めると、$p$ は被覆写像である。$n\ge2$ なので $p_*\colon\pi_n(\tilde X,0)\to\pi_n(X)$ は同型である(ホモトピー群の記事の命題「被覆空間と$n$-単純性」)。可縮な部分複体 $\mathbb R$ をつぶす写像 $c\colon\tilde X\to\bigvee_kS^n_k$ はホモトピー同値である(コファイブレーションの記事の定理「可縮な部分空間をつぶす商写像」)。よって $2\le i< n$ で $\pi_i(X)\cong\pi_i(\bigvee_kS^n_k)=0$ である。
$\iota_k$ を $S^n_k$ の包含、$\beta$ を $\mathbb R$ の中の 0 から 1 への道とし、$u:=[\iota_0]$、$v:=\beta\cdot[\iota_1]$(基点の移送)を $\pi_n(\tilde X,0)$ の元とする。$c\circ\beta$ は定値なので $c_*u$、$c_*v$ はウェッジ和の異なる二つの包含の類であり、lem-hur-wedge により相異なる。よって $u\ne v$ で、$p_*u\ne p_*v$ である。一方 $p\circ\iota_0=p\circ\iota_1$ は $S^n\hookrightarrow X$ の包含 $\iota$ なので、$p_*u=[\iota]$、$p_*v=\gamma\cdot[\iota]$($\gamma=p\circ\beta$ は $S^1$ を一周するループ)である。$h$ は $\pi_1$ の作用で不変なので $h(p_*u)=h(p_*v)$ となる。$\square$
$\pi_n(S^1\vee S^n)$ は $\mathbb Z[t,t^{-1}]$ と同型で、$h$ はすべての $t^k$ を 1 に送る写像である(Hat02 Example 4.27, p. 364、p. 370)。
$n\ge2$ とし、$(X,A)$ を $(n-1)$-連結な対、$A$ を空でない単連結な空間、$x_0\in A$ とする。このとき $0< i< n$ で $H_i(X,A)=0$ であり、相対 Hurewicz 準同型 $h\colon\pi_n(X,A,x_0)\to H_n(X,A)$ は同型である。
要点:CW 対に帰着し、$X/A$ に thm-hur-main を使う。$A$ が単連結であることは、商写像が $\pi_n$ に同型を誘導するために使う。
対の CW 近似(Hat02 Example 4.14, p. 353)と自然性により、$(X,A)$ は CW 対としてよい。$(X,A)$ は $(n-1)$-連結、$A$ は 1-連結なので、商写像 $q$ は $i\le n$ で同型 $q_*\colon\pi_i(X,A,x_0)\to\pi_i(X/A)$ を誘導する(Hat02 Proposition 4.28, p. 364)。$X$ は道連結なので $X/A$ も道連結で、$X/A$ は $(n-1)$-連結である。CW 対は良い対なので $q_*\colon H_i(X,A)\to\tilde H_i(X/A)$ はすべての $i$ で同型である(切除定理(特異ホモロジー)の記事の命題「良い対の相対ホモロジー」)。thm-hur-main を $X/A$ に使えば $0< i< n$ で $H_i(X,A)=0$ を得る。$[D^n]$ と $[S^n]$ を商写像 $D^n\to D^n/S^{n-1}\cong S^n$ で対応するように選んでおけば、相対 Hurewicz 準同型と $X/A$ の Hurewicz 準同型は $q_*$ と可換なので、相対版の $h$ も同型である。$\square$
$A$ が単連結でないときは、$h$ は $\pi_1(A,x_0)$ の作用で移り合う元を同じ値に送るので一般に単射でない。この場合の一般形は、その作用で割った商群について同型を主張する(Hat02 Theorem 4.37, p. 371。この記事では証明しない)。
$X,Y$ を単連結な CW 複体とする。連続写像 $f\colon X\to Y$ がすべての $n$ で同型 $f_*\colon H_n(X)\to H_n(Y)$ を誘導すれば、$f$ はホモトピー同値である。
写像柱 $M_f$ を考えると、$i$ は $X$ から部分空間 $i(X)$ への同相写像、$r\colon M_f\to Y$ はホモトピー同値で、$f=r\circ i$ である(Whiteheadの定理の記事の命題「写像柱の性質」。記号は同記事の節「写像柱」による)。以下 $i$ で $X$ を $M_f$ の部分空間とみなす。$r$ はホモトピー同値なので $M_f$ は単連結で、包含が誘導する $i_*=r_*^{-1}\circ f_*$ はすべての $H_k$ の同型である。$X$ と $M_f$ は単連結なので対 $(M_f,X)$ は 1-連結であり、ホモロジーの完全列からすべての $k$ で $H_k(M_f,X)=0$ である。
ある $k$ で $\pi_k(M_f,X)\neq0$ と仮定し、そのような最小の $k$ をとる。$k\ge2$ で $(M_f,X)$ は $(k-1)$-連結だから、thm-hur-relative により $\pi_k(M_f,X)\cong H_k(M_f,X)=0$ となり矛盾する。よって相対ホモトピー群はすべて 0 で、完全列から包含 $X\hookrightarrow M_f$ はすべてのホモトピー群に同型を誘導する。よって $f=r\circ i$ は弱ホモトピー同値であり、$X,Y$ は CW 複体なので Whiteheadの定理によりホモトピー同値である。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 道連結(thm-hur-one) | $X=\{x_0\}\sqcup S^1$ | $\pi_1(X,x_0)=0$ だが $H_1(X)\cong\mathbb Z$ で、$h$ は全射でない |
| $\pi_1=0$(thm-hur-main。$2\le i< n$ の $\pi_i=0$ は保つ) | $S^1\vee S^n$ | $h\colon\pi_n\to H_n\cong\mathbb Z$ は単射でない(ex-hur-wedge-circle) |
| $2\le i< n$ の $\pi_i=0$(thm-hur-main。単連結は保つ) | $X=S^2$、$n=3$ | $\pi_3(S^2)\cong\mathbb Z$ だが $H_3(S^2)=0$ |
| $A$ が単連結(thm-hur-relative) | $(S^1\vee S^n,S^1)$ | 対は $(n-1)$-連結だが、$h$ は単射でない |
| $X,Y$ が単連結(cor-hur-whitehead) | 包含 $S^1\hookrightarrow(S^1\vee S^n)\cup e^{n+1}$ | すべてのホモロジー群に同型を誘導するが、ホモトピー同値でない |
3 行目の $\pi_3(S^2)\cong\mathbb Z$ は Hopf 写像による(ホモトピー群の記事の例「低次元球面の非自明な高次ホモトピー: $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$(Hopf写像)」)。4 行目は、$n\ge2$ で $\pi_n(S^1)=0$、$\pi_{n-1}(S^1)\to\pi_{n-1}(X)$ が単射なので完全列から $\pi_n(X)\to\pi_n(X,S^1)$ が同型になり、$H_n(X)\to H_n(X,S^1)$ も同型なので、2 行目に帰着する。5 行目はHat02 Example 4.35(p. 368)の空間で、$e^{n+1}$ を $\pi_n(S^1\vee S^n)\cong\mathbb Z[t,t^{-1}]$ の元 $2t-1$ で貼る。この記事では 5 行目を証明しない。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する