射影幾何学(projective geometry)とは、体 $K$ の上のベクトル空間 $V$ の 1 次元部分空間の全体である射影空間 $\mathbb{P}(V)$ で、点が直線の上にあるかどうかや直線の上の 4 点の複比のように、射影変換($\mathrm{GL}(V)$ の元が引き起こす変換)で変わらない性質を調べる幾何学である。部分空間の次元公式により射影平面の異なる 2 直線は必ず 1 点で交わり、射影変換は一般の位置にある $n+2$ 点の行き先でただ 1 つに決まる。実数体の上の $n\ge2$ 次元の射影空間では直線を直線に移す全単射は射影変換に限る。また、任意の体の上で点と超平面を入れ替える双対原理が成り立つ。
前提知識: 射影空間, 射影平面, 一般線形群, 双対空間(線形代数)
射影幾何学は、射影空間の図形のうち、射影変換で変わらない性質を調べる幾何学である。点が直線の上にあるか、3 点が一直線上にあるか、3 本の直線が 1 点で交わるか、直線の上の 4 点の 複比 はいくらか、といった性質がその対象になる。長さや角は射影変換で変わるので、射影幾何学の言葉ではない。
平面に「無限遠直線」を付け加えた 射影平面 では、平行な 2 直線も無限遠の 1 点で交わり、「2 点を通る直線はただ 1 本」と「2 直線の交点はただ 1 つ」が例外なく成り立つ。この対称性が点と直線を入れ替える 双対原理 の出発点になる。
この記事では、体の上の射影空間で次のことを示す。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 部分空間どうしはどう交わるか | 次元公式。射影平面の 2 直線は必ず交わり、部分空間の全体はモジュラー束になる(thm-pg-dimension、cor-pg-modular) |
| 射影変換は何個の点の行き先で決まるか | 一般の位置にある $n+2$ 点(射影枠)の行き先でただ 1 つに決まる(thm-pg-frame) |
| 「直線を直線に移す」だけで射影変換になるか | 実数体の上の $n\ge2$ 次元では、なる(thm-pg-fundamental) |
| 点と超平面を入れ替えてよいのはなぜか | 双対空間の零化空間による対応(thm-pg-duality) |
| 円の極と極線は射影幾何学で何にあたるか | 2 次曲線に関する極(prop-pg-polar) |
以下、$K$ を体、$V$ を $K$ の上の $n+1$ 次元のベクトル空間とする($n\ge1$)。
$V$ の 1 次元部分空間の全体を $\mathbb{P}(V)$ と書き、$V$ の 射影化 という。$\mathbb{P}(V)$ の元を 点 といい、$0$ でない $v\in V$ が張る点を $[v]$ と書く。$V$ の $k+1$ 次元の部分空間 $W$ について、$W$ に含まれる点の全体 $\mathbb{P}(W)\subset\mathbb{P}(V)$ を $k$ 次元の 射影部分空間 という($\dim\mathbb{P}(W)=\dim W-1$、空集合 $\mathbb{P}(0)$ の次元は $-1$)。$0$ 次元の部分空間は 1 点、$1$ 次元のものは 直線、$2$ 次元のものは 平面、$n-1$ 次元のものは 超平面 という。$\dim\mathbb{P}(V)=n$ であり、$V=K^{n+1}$ のとき $\mathbb{P}(V)$ を $\mathbb{P}^n(K)$ と書き、点 $[(x_0,\dots,x_n)]$ を $[x_0:\dots:x_n]$ と書く(斉次座標)。
射影部分空間 $\mathbb{P}(W_1)$、$\mathbb{P}(W_2)$ の 結び を $\mathbb{P}(W_1)\vee\mathbb{P}(W_2):=\mathbb{P}(W_1+W_2)$、交わり を $\mathbb{P}(W_1)\wedge\mathbb{P}(W_2):=\mathbb{P}(W_1\cap W_2)$ と定める。
結びは両方を含む最小の部分空間、交わりは集合としての共通部分 $\mathbb{P}(W_1)\cap\mathbb{P}(W_2)$ である。異なる 2 点 $[v]$、$[w]$ の結びは、2 点を通るただ 1 本の直線 $\mathbb{P}(Kv+Kw)$ である。$n=2$ のとき $\mathbb{P}^2(K)$ は 射影平面 の記事の定義「体 $K$ の上の射影平面」と同じものである。
$V'$ も $n+1$ 次元とする。線形同型 $A\colon V\to V'$ は 1 次元部分空間を 1 次元部分空間に移すので、全単射
$$
\bar A\colon\mathbb{P}(V)\to\mathbb{P}(V'),\qquad [v]\mapsto[Av]
$$
を定める。この形の写像を 射影変換($V'=V$ のとき)または射影同型という(Ful08 §4.2 の projective change of coordinates)。$c\in K^\times$ について $\overline{cA}=\bar A$ である。$\mathbb{P}(V)$ の射影変換の全体は合成について群をなし、$\mathrm{PGL}(V)$ と書く。
射影変換は $k$ 次元の部分空間 $\mathbb{P}(W)$ を $k$ 次元の部分空間 $\mathbb{P}(AW)$ に移し、結びと交わりを保つ。$\bar A$ が恒等写像になるのは $A$ が $0$ でない定数倍のときに限るので、$\mathrm{PGL}(V)=\mathrm{GL}(V)/K^\times$ である(thm-pg-frame の最後の主張)。
$\mathbb{P}(V)$ の $n+2$ 個の点が 一般の位置 にあるとは、そのうちのどの $n+1$ 個も 1 つの超平面に含まれないこと、すなわち代表のベクトルのどの $n+1$ 個も線形独立であることをいう。一般の位置にある $n+2$ 点の順序付きの組を 射影枠 という。
たとえば $\mathbb{P}^n(K)$ の標準基底の点 $[e_0],\dots,[e_n]$ と $[e_0+\dots+e_n]$ は射影枠である。$\mathbb{P}^1$ では射影枠は相異なる 3 点、$\mathbb{P}^2$ ではどの 3 点も一直線上にない 4 点である。
$\mathbb{P}(V)$ の射影部分空間 $S$、$T$ について
$$
\dim(S\vee T)+\dim(S\wedge T)=\dim S+\dim T
$$
である。とくに次が成り立つ。
$S=\mathbb{P}(W_1)$、$T=\mathbb{P}(W_2)$ とすると、ベクトル空間の次元公式 $\dim(W_1+W_2)+\dim(W_1\cap W_2)=\dim W_1+\dim W_2$(部分空間 の命題「次元公式(参照)」)の両辺から $2$ を引いたものが主張である。
1:異なる 2 直線 $S$、$T$ の結びは直線より真に大きい部分空間なので平面 $\mathbb{P}(V)$ 自身で、$\dim(S\wedge T)=1+1-2=0$ である。2:$L\vee H$ は $H$ より真に大きいので $\mathbb{P}(V)$ で、$\dim(L\wedge H)=1+(n-1)-n=0$ である。3:$\dim(S\vee T)\le n$ なので $\dim(S\wedge T)\ge\dim S+\dim T-n\ge0$ である。$\square$
平面の点 $(x,y)$ を $\mathbb{P}^2(\mathbb{R})$ の点 $[x:y:1]$ とみる。平行な 2 直線 $y=0$、$y=1$ は、射影平面の直線 $\{[x:y:z]\mid y=0\}$、$\{[x:y:z]\mid y=z\}$ の $z\ne0$ の部分である。2 本の射影直線の交点は $y=0=z$ から $[1:0:0]$ で、これは $z=0$ の無限遠直線の上の点、すなわち $x$ 軸の方向を表す無限遠点である。
次元公式から、部分空間の全体が束として特別な性質をもつことが出る。
$\mathbb{P}(V)$ の射影部分空間の全体は、包含関係について結び $\vee$ と交わり $\wedge$ をもつ束であり、$S\subset U$ を満たす部分空間 $S,T,U$ について
$$
S\vee(T\wedge U)=(S\vee T)\wedge U
$$
が成り立つ(モジュラー束)。
$S=\mathbb{P}(W_1)$、$T=\mathbb{P}(W_2)$、$U=\mathbb{P}(W_3)$、$W_1\subset W_3$ とし、$W_1+(W_2\cap W_3)=(W_1+W_2)\cap W_3$ を示せばよい。左辺は $W_1\subset W_3$ と $W_2\cap W_3\subset W_3$ から右辺に含まれる。逆に右辺の元 $u=w_1+w_2$($w_1\in W_1$、$w_2\in W_2$、$u\in W_3$)について、$w_2=u-w_1\in W_3$ なので $w_2\in W_2\cap W_3$ であり、$u$ は左辺に属する。$\square$
一方、分配律 $S\wedge(T\vee U)=(S\wedge T)\vee(S\wedge U)$ は一般には成り立たない。$\mathbb{P}^2$ の 1 直線 $S$ と、$S$ の上にない異なる 2 点 $T$、$U$ で、直線 $TU$ が $S$ と点 $P$ で交わるものをとると、左辺は $S\wedge(TU)=P$、右辺は $\emptyset\vee\emptyset=\emptyset$ である。
$\dim V=\dim V'=n+1$ とし、$(p_0,\dots,p_{n+1})$ を $\mathbb{P}(V)$ の射影枠、$(q_0,\dots,q_{n+1})$ を $\mathbb{P}(V')$ の射影枠とする。このとき $\bar A(p_i)=q_i$($i=0,\dots,n+1$)を満たす射影同型 $\bar A\colon\mathbb{P}(V)\to\mathbb{P}(V')$ がただ 1 つある。線形同型 $A$ は $0$ でない定数倍を除いてただ 1 つに決まる。とくに、すべての点を動かさない射影変換は恒等写像だけで、$\bar A=\mathrm{id}$ となる $A$ は定数倍 $cI$ に限る。
段 1(代表の正規化)。$p_i=[v_i]$ とする。$v_0,\dots,v_n$ は線形独立なので $V$ の基底で、$v_{n+1}=\sum_{i=0}^na_iv_i$ と書ける。ある $a_j$ が $0$ なら、$v_{n+1}$ と $v_i$($i\ne j$、$i\le n$)の $n+1$ 個が線形従属になり、一般の位置であることに反する。よってすべての $a_i\ne0$ で、$v_i$ を $a_iv_i$ に取りかえれば $v_{n+1}=v_0+\dots+v_n$ としてよい。同じように $q_i=[w_i]$ の代表を $w_{n+1}=w_0+\dots+w_n$ となるようにとる。
段 2(存在)。基底 $v_0,\dots,v_n$ を $w_0,\dots,w_n$ に移す線形同型 $A$ をとると、$Av_i=w_i$($i\le n$)で、$Av_{n+1}=\sum_iw_i=w_{n+1}$ なので、$\bar A(p_i)=q_i$ である。
段 3(一意性)。$B$ も $\bar B(p_i)=q_i$ を満たすとし、$C:=A^{-1}B$ とおくと $\bar C(p_i)=p_i$ である。よって $Cv_i=\lambda_iv_i$($i\le n$)、$Cv_{n+1}=\mu v_{n+1}$ となる $\lambda_i,\mu\in K^\times$ がある。
$$
\sum_{i=0}^n\lambda_iv_i=C\Bigl(\sum_{i=0}^nv_i\Bigr)=\mu\sum_{i=0}^nv_i
$$
で $v_0,\dots,v_n$ は線形独立なので $\lambda_i=\mu$ となり、$C=\mu I$、$B=\mu A$ である。最後の主張は $V'=V$、$q_i=p_i$ の場合である(どの射影枠も動かさないので、すべての点を動かさない写像はとくにある射影枠を動かさない)。$\square$
$\mathbb{P}^2(\mathbb{Q})$ で $[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[0:0:1]$ を動かさず、$[1:1:1]$ を $[1:2:3]$ に移す射影変換を求める。行き先の代表を $w_0=(1,0,0)$、$w_1=(0,2,0)$、$w_2=(0,0,3)$ と取りかえると $w_0+w_1+w_2=(1,2,3)$ となるので、$A=\mathrm{diag}(1,2,3)$ が答えで、ほかの答えはその定数倍だけである。$[1:2:3]$ の代わりに一直線上の点 $[1:1:0]$ を行き先にすると、$[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[1:1:0]$ が直線 $z=0$ の上にあって行き先が射影枠でないので、そのような射影変換はない(射影変換は一般の位置を保つ)。
$n=1$ の場合は、相異なる 3 点を相異なる 3 点に移す射影変換がただ 1 つあるという定理で、射影変換と複比 の定理「3 点を 3 点に移す射影変換はただ 1 つ」にあたる。直線の上の 4 番目の点の位置は射影変換で自由には動かせず、その位置を測る量が 複比 である。複比 の定理「複比の基本定理」は、射影直線の上の 4 点(3 点以上が相異なる)の組が射影変換で移り合うのは複比が等しいときに限ることを示している。
射影変換は直線を直線に、直線の上の点の組をその像の直線の上の点の組に移し、直線の間の写像は $\mathbb{P}^1$ の射影同型なので、直線の上の 4 点の複比を保つ。透視(ある点から見て 1 本の直線を別の直線に写す写像)も複比を保つ(複比 の定理「透視は複比を保つ」)。
射影変換は直線を直線に移す。実数体の上では逆も成り立ち、「直線を直線に移す全単射」というだけの条件から行列による表示が出てくる。証明は、無限遠超平面を固定して アフィン変換 の定理「アフィン幾何の基本定理」に帰着させる。
$n\ge1$ とし、全単射 $f\colon\mathbb{P}(V)\to\mathbb{P}(V)$ は、どの直線 $L$ についても像 $f(L)$ が直線であるとする。このとき $f^{-1}$ も同じ性質をもち、$f$ は $k$ 次元の射影部分空間を $k$ 次元の射影部分空間の上へ移す($k=-1,0,\dots,n$)。
要点:部分集合 $S$ が射影部分空間であることは「$S$ の異なる 2 点を通る直線が $S$ に含まれる」ことと同値で、この性質は $f$ と $f^{-1}$ で保たれる。次元は部分空間の真の増大列の長さで決まる。
$f^{-1}$ について:直線 $M$ の異なる 2 点 $x,y$ をとり、$f^{-1}(x)$、$f^{-1}(y)$ を通る直線を $L$ とする。$f(L)$ は $x,y$ を通る直線なので $M$ に等しく、$f^{-1}(M)=L$ である。
特徴づけ:$S=\mathbb{P}(W)$ なら $W$ の 2 つのベクトルの張る空間は $W$ に含まれるので、条件を満たす。逆に $S$ が条件を満たすとき、$W:=\{0\}\cup\bigcup_{[v]\in S}[v]$ とおく。$v,w\in W$ が $0$ でなく比例しないとき、$[v+w]$ は $[v]$ と $[w]$ を通る直線の上にあるので $S$ に属し、$v+w\in W$ である。比例するときや一方が $0$ のときも $v+w\in W$ は明らかで、定数倍で閉じることも明らかなので、$W$ は部分空間で $S=\mathbb{P}(W)$ である。
$S$ が条件を満たすとき、$f(S)$ の異なる 2 点 $f(x)$、$f(y)$ を通る直線は、$f(x)$ と $f(y)$ を通る直線 $f(xy)$ に等しく、$xy\subset S$ から $f(S)$ に含まれる。よって $f$ は部分空間を部分空間に移し、$f^{-1}$ についても同じである。したがって $f$ は部分空間の全体の上に包含関係を両方向に保つ全単射を引き起こす。$k$ 次元の部分空間は、空でない部分空間の真の増大列 $S_0\subsetneq S_1\subsetneq\dots\subsetneq S_k=S$ をとれる最大の $k$ で特徴づけられる(真の包含で次元は $1$ 以上増え、$\dim S_0\ge0$)ので、次元も保たれる。
$n\ge2$ とする。全単射 $f\colon\mathbb{P}^n(\mathbb{R})\to\mathbb{P}^n(\mathbb{R})$ が、どの直線 $L$ についても像 $f(L)$ が直線であるならば、$f$ は射影変換である。
点 $x\in\mathbb{R}^n$ を $[x:1]$ と書き、$H_\infty:=\{[d:0]\mid d\in\mathbb{R}^n\setminus\{0\}\}$ を無限遠超平面とする。$\mathbb{P}^n(\mathbb{R})\setminus H_\infty$ は $x\mapsto[x:1]$ で $\mathbb{R}^n$ と同一視できる。
段 1(無限遠超平面を固定する)。lem-pg-subspaces により $H':=f(H_\infty)$ は超平面である。$H'=\mathbb{P}(W')$、$H_\infty=\mathbb{P}(W_\infty)$($W_\infty=\mathbb{R}^n\times\{0\}$)とし、$W'$ の基底を $W_\infty$ の基底に移して $\mathbb{R}^{n+1}$ 全体に延ばした線形同型を $B$ とすると、$g:=\bar B$ は $g(H')=H_\infty$ を満たす。$h:=g\circ f$ は直線を直線に移す全単射で、$h(H_\infty)=H_\infty$ だから $h$ は $\mathbb{R}^n$ を $\mathbb{R}^n$ の上へ全単射に移す。
段 2($h$ は $\mathbb{R}^n$ のアフィン変換)。$H_\infty$ に含まれない射影直線 $L$ は、thm-pg-dimension の 2 により $H_\infty$ とちょうど 1 点 $[d:0]$ で交わり、$L$ の上の点 $[a:1]$ をとれば $L\setminus H_\infty=\{[a+td:1]\mid t\in\mathbb{R}\}$ は $\mathbb{R}^n$ の直線である。逆に $\mathbb{R}^n$ の直線 $\{a+td\}$ はこの形に書ける。$h(L)$ は直線で、$h(L)\subset H_\infty$ なら $L\subset h^{-1}(H_\infty)=H_\infty$ となるので、$h(L)\not\subset H_\infty$ である。$h$ は $H_\infty$ を $H_\infty$ の上へ全単射に移すので、$h(L\setminus H_\infty)=h(L)\setminus H_\infty$ は $\mathbb{R}^n$ の直線である。よって $h$ を $\mathbb{R}^n$ に制限した写像は、直線を直線に移す全単射で、アフィン変換 の定理「アフィン幾何の基本定理」($n\ge2$)により、ある $T\in\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})$、$b\in\mathbb{R}^n$ で $h([x:1])=[Tx+b:1]$ と書ける。
段 3(無限遠点も一致する)。行列 $\begin{pmatrix}T&b\\ 0&1\end{pmatrix}$ が定める射影変換を $k$ とし、$u:=k^{-1}\circ h$ とおく。$u$ は直線を直線に移す全単射で、$\mathbb{R}^n$ の各点を動かさず、$H_\infty$ を $H_\infty$ に移す($k$ も $h$ もそうだから)。$p=[d:0]\in H_\infty$ について、$[0:1]$ と $p$ を通る直線 $L$ は $[d:1]$ を通る。$u(L)$ は $u([0:1])=[0:1]$ と $u([d:1])=[d:1]$ を通る直線なので $L$ に等しく、$u(p)\in L\cap H_\infty=\{p\}$ である。よって $u$ は恒等写像で、$f=g^{-1}\circ k$ は射影変換である。$\square$
$n=1$ では $\mathbb{P}^1(\mathbb{R})$ の直線は全体ただ 1 本なので、仮定は何も言っておらず、結論は成り立たない(ex-pg-counter)。射影直線では代わりに複比を保つことを仮定すれば射影変換に限る(複比 の定理「複比の基本定理」の 4)。体を $\mathbb{C}$ に変えても結論は成り立たない(ex-pg-counter)。
$V^*$ を $V$ の 双対空間(線形代数) とする。部分空間 $W\subset V$ の 零化空間 を $W^\perp:=\{\varphi\in V^*\mid\varphi(W)=0\}$ と書く。$V^*$ の 1 次元部分空間 $[\varphi]$ は $\mathbb{P}(V)$ の超平面 $\mathbb{P}(\ker\varphi)$ と 1 対 1 に対応するので、$\mathbb{P}(V^*)$ は「$\mathbb{P}(V)$ の超平面の全体」とみなせる。$\mathbb{P}^n(K)$ では超平面 $a_0x_0+\dots+a_nx_n=0$ を点 $[a_0:\dots:a_n]$ で表すことにあたる。
$\mathbb{P}(W)\mapsto\mathbb{P}(W^\perp)$ は、$\mathbb{P}(V)$ の $k$ 次元の射影部分空間の全体から $\mathbb{P}(V^*)$ の $n-1-k$ 次元の射影部分空間の全体への全単射で、包含関係を逆にし、結びと交わりを入れ替える:
$$
(S\vee T)^\perp=S^\perp\wedge T^\perp,\qquad(S\wedge T)^\perp=S^\perp\vee T^\perp .
$$
したがって、射影部分空間の包含・結び・交わり・次元だけで述べた $n$ 次元の射影空間についての定理が正しければ、「包含」を逆にし、結びと交わりを入れ替え、次元 $k$ を $n-1-k$ に変えた定理も正しい。
要点:$\dim W^\perp=\dim V-\dim W$、$(W^\perp)^\perp=W$($V^{**}=V$ と同一視)、$(W_1+W_2)^\perp=W_1^\perp\cap W_2^\perp$ の 3 つから出る。
$W$ の基底 $w_1,\dots,w_m$ を $V$ の基底 $w_1,\dots,w_{n+1}$ に延ばし、双対基底を $\varphi_1,\dots,\varphi_{n+1}$ とすると、$W^\perp$ は $\varphi_{m+1},\dots,\varphi_{n+1}$ の張る空間なので $\dim W^\perp=n+1-m$ である。射影次元に直すと $(n-(m-1))-1=n-1-(m-1)$ で、$k=m-1$ について $n-1-k$ である。$W\subset(W^\perp)^\perp$ は定義から明らかで、両辺の次元はどちらも $m$ なので等しい。よって $W\mapsto W^\perp$ は全単射で、逆写像も零化空間をとる写像である。$W_1\subset W_2$ なら $W_2^\perp\subset W_1^\perp$ であり、逆向きも二重零化から出る。$\varphi$ が $W_1+W_2$ を零にすることは $W_1$ と $W_2$ を両方零にすることなので $(W_1+W_2)^\perp=W_1^\perp\cap W_2^\perp$ である。これを $W_i^\perp$ に当てて零化をとれば $(W_1\cap W_2)^\perp=W_1^\perp+W_2^\perp$ を得る。最後の主張は、この全単射で定理の仮定と結論を $\mathbb{P}(V^*)\cong\mathbb{P}^n(K)$ の言葉に移せばよい。
$n=2$ では点($k=0$)と直線($k=1$)が入れ替わる。
| 主張 | 双対な主張 |
|---|---|
| 異なる 2 点を通る直線はただ 1 本 | 異なる 2 直線の交点はただ 1 つ |
| 3 点が一直線上にある | 3 直線が 1 点を通る |
| 2 つの三角形が 1 点から配景的なら、対応する辺の交点は一直線上にある(Desarguesの定理) | 2 つの三角形が 1 直線について配景的なら、対応する頂点を結ぶ直線は 1 点を通る |
3 行目の双対な主張は Desargues の定理の逆であり、図がつぶれない条件をつけた形が Desarguesの定理 の系「Desargues の定理の逆」にある。$n=3$ では点と平面が入れ替わり、直線は直線に移る。
射影平面 の定理「双対原理」は、点と直線の公理だけから同じ入れ替えが許されることを示している。上の定理は、体の上の $n$ 次元の射影空間で、どの次元の部分空間についても入れ替えが許されることを述べている。
体 $K$ の標数は $2$ でないとし、$n=2$ とする。$\beta$ を $V$ の上の非退化な対称双線形形式(双線形形式)とする。$\beta$ が定める 2 次曲線 を $C:=\{[v]\mid\beta(v,v)=0\}$ とし、点 $p=[v]$ の 極線 を $\pi(p):=\mathbb{P}(v^\perp)$、$v^\perp:=\{w\mid\beta(v,w)=0\}$ と定める。$\beta$ が非退化なので $v^\perp$ は 2 次元で、$\pi(p)$ は直線である。
要点:1 は $\beta$ の対称性と、$v\mapsto\beta(v,\cdot)$ が同型 $V\to V^*$ であることから出る。2 は $p=[v]$ と別の点 $[w]$ を通る直線の点 $[sv+tw]$ について $\beta(sv+tw,sv+tw)=t\bigl(2s\beta(v,w)+t\beta(w,w)\bigr)$ となることを使う。
1:$\beta$ が非退化なので $v\mapsto\beta(v,\cdot)$ は同型 $V\to V^*$ で、$\pi(p)$ は thm-pg-duality の対応で点 $[\beta(v,\cdot)]\in\mathbb{P}(V^*)$ にあたる直線である。よって $\pi$ は全単射である。$p=[v]$、$q=[w]$ について $p\in\pi(q)\iff\beta(w,v)=0\iff\beta(v,w)=0\iff q\in\pi(p)$ である。
2:$\beta(v,v)=0$ なので $p\in\pi(p)$ である。$p$ を通る直線を、$p$ と別の点 $q=[w]$ で $\mathbb{P}(Kv+Kw)$ と書く。点 $[sv+tw]$ が $C$ にあることは $t\bigl(2s\beta(v,w)+t\beta(w,w)\bigr)=0$ と同値で、$t=0$ が $p$ である。$\beta(v,w)\ne0$(直線が極線でない)なら、$t=1$、$s=-\beta(w,w)/(2\beta(v,w))$ が $p$ と異なるもう 1 つの交点を与える。$\beta(v,w)=0$(直線が極線)なら、$t\ne0$ の交点があるのは $\beta(w,w)=0$ のときで、そのとき $\beta$ は 2 次元の部分空間 $Kv+Kw$ の上で恒等的に $0$ になる。すると $Kv+Kw\subset(Kv+Kw)^\perp$ だが、非退化性から右辺は 1 次元なので矛盾する。よって極線は $C$ と $p$ だけで交わる。
$K=\mathbb{R}$、$\beta\bigl((x,y,z),(x',y',z')\bigr)=xx'+yy'-r^2zz'$ とすると、$C$ の $z\ne0$ の部分は円 $x^2+y^2=r^2$ で、点 $(x_0,y_0)=[x_0:y_0:1]$ の極線の $z\ne0$ の部分は $x_0x+y_0y=r^2$ である。これは 円の接線と極線 の定義「円に関する極線」と一致し、1 はその記事の定理「La Hire の定理」、2 は円の上の点の極線が接線であることにあたる。$\pi$ は点を直線に、「点が直線の上にある」を「直線が点を通る」に移すので、双対原理を 1 つの写像として実現している。円に内接する六角形についての Pascalの定理 を極で移すと、円に外接する六角形についての主張になる(円の接線と極線 の「さらに先へ」)。
各行は定理の条件を 1 つだけ外す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 射影平面であること(無限遠点を付け加える) | 平面 $K^2$ の平行な 2 直線 $y=0$、$y=1$ | 異なる 2 直線が必ず交わる(thm-pg-dimension の 1) |
| 射影枠の $n+2$ 点が一般の位置にあること | $\mathbb{P}^2$ の 4 点 $[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[1:1:0]$、$[0:0:1]$ | 4 点を動かさない射影変換が恒等写像だけ(thm-pg-frame) |
| $n\ge2$ | $\mathbb{P}^1(\mathbb{R})$ で $[x:1]\mapsto[x^3:1]$、$[1:0]\mapsto[1:0]$ | 直線を直線に移す全単射が射影変換(thm-pg-fundamental) |
| 体が $\mathbb{R}$ | $\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ で $[z_0:\dots:z_n]\mapsto[\bar z_0:\dots:\bar z_n]$($n\ge2$) | 直線を直線に移す全単射が射影変換(thm-pg-fundamental) |
2 行目:$\mathrm{diag}(1,1,\lambda)$($\lambda\ne0$)はどれも 4 点を動かさない。$[1:0:0]$、$[0:1:0]$、$[1:1:0]$ が直線 $z=0$ の上にあり、一般の位置でない。
3 行目:この写像は全単射で、$\mathbb{P}^1(\mathbb{R})$ のただ 1 本の直線を自分自身に移す。$[1:0]$、$[0:1]$、$[1:1]$ の 3 点($\mathbb{P}^1$ の射影枠)を動かさないので、射影変換なら thm-pg-frame により恒等写像だが、$[2:1]$ を $[8:1]$ に移す。
4 行目:$W\subset\mathbb{C}^{n+1}$ が部分空間なら成分ごとの共役 $\bar W$ も同じ次元の部分空間なので、直線は直線の上へ移る。射影枠 $[e_0],\dots,[e_n]$、$[e_0+\dots+e_n]$ を動かさないので、射影変換なら恒等写像だが、$[1:i:0:\dots:0]$ を $[1:-i:0:\dots:0]$ に移す。
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