壁紙群(wallpaper group)とは、平面の合同変換の群の部分群 $G$ で、$G$ に含まれる平行移動のベクトルの全体 $T_G$ が平面の格子になっているもので、2 つの向きにくり返す模様の対称性の群がその例である。線形部分の群(点群)は $G/T_G$ と同型な有限群で、格子を保つことから回転の位数は $1,2,3,4,6$ に限られ、回転で共役をとると巡回群 $C_n$ か二面体群 $D_n$($n=1,2,3,4,6$)の 10 通りになる。向きを保つ壁紙群は群の同型で分けてちょうど 5 種類である。鏡映やすべり鏡映を含むものまで合わせると、壁紙群は 17 種類の型に分かれる。
前提知識: 平面の合同変換の分類, 格子(群), 群の作用, 壁紙模様の対称性
壁紙群は、平面の合同変換の群の部分群で、そこに含まれる平行移動の全体が 2 つの向きの格子になっているものである。2 つの向きにくり返す模様(壁紙模様)の対称性の全体は壁紙群になり、模様の対称性の分類は壁紙群の分類になる。
壁紙模様の対称性 では、くり返す模様の回転対称が 2 回・3 回・4 回・6 回に限られること(結晶学的制限)を示した。この記事では群の言葉で次のことを示す。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 壁紙群の「回転と鏡映の部分」はどんな群か | 有限群で、回転で共役をとると 10 個の群のどれかになる(thm-wg-point) |
| 10 個の点群はすべて現れるか | 格子とその対称性の半直積で、すべて現れる(prop-wg-semidirect) |
| 鏡映もすべり鏡映も含まない(向きを保つ)壁紙群は何種類か | 群の同型で分けてちょうど 5 種類(thm-wg-orientation) |
| 点群が同じなら同じ壁紙群か | そうとは限らない(prop-wg-d1)。全体では 17 種類ある |
平面の合同変換は、直交行列 $A\in\mathrm{O}(2)$ と $b\in\mathbb{R}^2$ によって $x\mapsto Ax+b$ と書ける(平面の合同変換の分類 の定理「合同変換の式」、Jud25 定理 12.2.3)。この変換を $(A,b)$ と書き、合同変換の群を $\mathrm{E}(2)$ と書く。合成は
$$
(A,b)(A',b')=(AA',\,Ab'+b),\qquad (A,b)^{-1}=(A^{-1},\,-A^{-1}b)
$$
で、$(A,b)\mapsto A$ は群の準同型 $\lambda\colon\mathrm{E}(2)\to\mathrm{O}(2)$ である。その核は平行移動 $t_v:=(I,v)$ の全体である。$A$ を $(A,b)$ の 線形部分 という。
$\mathrm{E}(2)$ の部分群 $G$ について、$G$ に含まれる平行移動のベクトルの全体
$$
T_G:=\{v\in\mathbb{R}^2\mid t_v\in G\}
$$
が $\mathbb{R}^2$ の格子(格子(群)、すなわち線形独立な 2 つのベクトル $e_1,e_2$ で $T_G=\mathbb{Z}e_1+\mathbb{Z}e_2$ と書けるもの)であるとき、$G$ を 壁紙群(2 次元の結晶群)という。$T_G$ を $G$ の 平行移動の格子、$P_G:=\lambda(G)\subset\mathrm{O}(2)$ を $G$ の 点群 という。$P_G\subset\mathrm{SO}(2)$(鏡映もすべり鏡映も含まない)とき、$G$ は 向きを保つ という。
これは Jud25 §12.2.1 の定義と同じである。$T_G$ は $\mathbb{R}^2$ の部分群である。壁紙模様の対称性 の定義「周期的な模様と平行移動の格子」の条件 (R1)(R2) を満たす模様の対称性の全体は壁紙群である(同記事の補題「平行移動の格子の基底」により $T$ は格子)。
点群を比べるために、$\mathrm{O}(2)$ の次の部分群を使う。$\rho$ を角 $2\pi/n$ の回転、$\sigma=\mathrm{diag}(1,-1)$ を $x$ 軸に関する鏡映とし、
$$
C_n:=\{I,\rho,\dots,\rho^{n-1}\},\qquad D_n:=C_n\cup\sigma C_n
$$
とおく($|C_n|=n$、$|D_n|=2n$、$D_1=\{I,\sigma\}$)。
$G$ を壁紙群、$T=T_G$、$P=P_G$ とする。
1・2:$(A,b)\in G$ と $v\in T$ について
$$
(A,b)\,t_v\,(A,b)^{-1}=(A,\,Av+b)(A^{-1},\,-A^{-1}b)=(I,\,Av)=t_{Av}
$$
なので、平行移動の部分群は正規で、$A(T)\subset T$ である。$A^{-1}=\lambda((A,b)^{-1})\in P$ にも同じことが言えるので $A^{-1}(T)\subset T$、よって $A(T)=T$ である。$\lambda$ を $G$ に制限した準同型の核は $G$ に含まれる平行移動の全体なので、準同型定理により $G/T\cong P$ である。
3:$e_1,e_2$ を $T$ の基底、$r:=\max(|e_1|,|e_2|)$ とし、$S:=\{v\in T\mid|v|\le r\}$ とおく。格子は離散部分群なので(格子(群) の定理「格子であるための条件」)、$S$ は有限集合である(同記事の補題「有界集合に含まれる点の有限性」)。$A\in P$ は長さを保ち $A(T)=T$ なので $A(S)=S$ である。$A$ は線形写像なので $Ae_1,Ae_2$ で決まり、$e_1,e_2\in S$ なので、$A$ に $S$ の置換 $A|_S$ を対応させる写像は単射である。よって $|P|\le|S|!$ である。
4:$A\in P$ を角 $\varphi$ の回転とする。$Ae_1,Ae_2\in T$ なので、基底 $e_1,e_2$ で表した $A$ の行列は整数を成分にもち、トレースは整数である。トレースは基底によらず $2\cos\varphi$ なので、$2\cos\varphi\in\{-2,-1,0,1,2\}$ で、$\varphi$ は $2\pi$ の $0$、$\frac12$、$\frac13$ か $\frac23$、$\frac14$ か $\frac34$、$\frac16$ か $\frac56$ 倍である。よって $A$ の位数は $1,2,3,4,6$ のどれかである。これは 壁紙模様の対称性 の定理「回転の角と整数のトレース」と同じ議論である。
5:要点:有限な回転の群は最小の角の回転で生成される巡回群で、鏡映 $s$ を含めば $P=R\cup sR$ となる。
$R:=P\cap\mathrm{SO}(2)$ は 3 により有限で、単位元以外の回転の角を $(0,2\pi)$ でとったときの最小値 $\theta_0$ がある($R=\{I\}$ なら $R=C_1$)。角 $\theta$ の回転が $R$ にあれば、$\theta=m\theta_0+\theta'$($m$ は整数、$0\le\theta'<\theta_0$)と書くと角 $\theta'$ の回転も $R$ にあるので、最小性から $\theta'=0$ である。$2\pi$ に当てると $\theta_0=2\pi/n$ となり、$R=C_n$、4 により $n\in\{1,2,3,4,6\}$ である。$P=R$ ならここで終わる($\rho_0=I$)。$P\ne R$ のとき、$P$ の行列式 $-1$ の元 $s$(ある直線に関する鏡映)をとると、$\det$ で考えて $P=R\cup sR$ である。$s$ が角 $\alpha$ の直線に関する鏡映なら、角 $-\alpha$ の回転 $\rho_0$ で $\rho_0s\rho_0^{-1}=\sigma$ で、回転どうしは可換なので $\rho_0P\rho_0^{-1}=C_n\cup\sigma C_n=D_n$ である。Jud25 定理 12.2.4 にも同じ議論がある。
格子 $T$ と、$A(T)=T$ を満たす $A$ からなる $\mathrm{O}(2)$ の有限部分群 $P$ について、$T\rtimes P:=\{(A,v)\mid A\in P,\ v\in T\}$ は平行移動の格子 $T$、点群 $P$ の壁紙群である。とくに次の表の組で、10 個の群がすべて点群として現れる。
| 格子 | 基底 | 点群 |
|---|---|---|
| 一般の格子 | $(1,0)$、$(\frac13,1)$ | $C_1$、$C_2$ |
| 長方形の格子 | $(1,0)$、$(0,2)$ | $D_1$、$D_2$ |
| 正方形の格子 | $(1,0)$、$(0,1)$ | $C_4$、$D_4$ |
| 三角格子 | $(1,0)$、$(\frac12,\frac{\sqrt3}2)$ | $C_3$、$C_6$、$D_3$、$D_6$ |
$A(T)=T$ から $(A,v)(A',v')=(AA',Av'+v)$ と逆元 $(A^{-1},-A^{-1}v)$ はまた $T\rtimes P$ に属し、群である。平行移動であるのは $A=I$ の元だけなので、平行移動の格子は $T$、点群は $P$ である。表の各行:$-I$ はどの格子も保つ。$\sigma$ は $(1,0)$、$(0,2)$ を $(1,0)$、$(0,-2)$ に移す。角 $\pi/2$ の回転と $\sigma$ は $\mathbb{Z}^2$ を保つ。三角格子を複素数 $\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\omega$($\omega=e^{\pi i/3}$)とみると、角 $\pi/3$ の回転は $\omega$ 倍で、$\omega^2=\omega-1$ から $\omega(\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\omega)\subset\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\omega$ である。$\sigma$ は複素共役で $\bar\omega=1-\omega$ なので格子を保つ。$C_3\subset C_6$、$D_3\subset D_6$ なので、それらも保つ。$\square$
向きを保つ壁紙群では、点群は $C_n$($n=1,2,3,4,6$)で、これだけで群の同型類が決まる。鍵になるのは、線形部分が恒等でない回転の元は、平面のある点のまわりの回転そのものだという事実である。
$R\ne I$ を回転、$b\in\mathbb{R}^2$ とする。$c:=(I-R)^{-1}b$ とおくと $(R,b)(x)=R(x-c)+c$ で、$(R,b)$ は $c$ を中心とする回転である。とくに $(R,b)^m=(R^m,\,c-R^mc)$ であり、$(R,b)^m=\mathrm{id}$ と $R^m=I$ は同値である。
回転 $R\ne I$ は $0$ でないベクトルを動かすので、$I-R$ は可逆である。$c=(I-R)^{-1}b$ は $c-Rc=b$ を意味し、$Rx+b=R(x-c)+c$ である。$m$ 回合成すると $R^m(x-c)+c$ で、これが恒等写像であることは $R^m=I$ と同値である。$\square$
$T$ を格子、$R$ を角 $2\pi/n$($n=3,4,6$)の回転で $R(T)=T$ を満たすものとする。$e_1$ を $T$ の $0$ でないベクトルで長さが最小のものとすると、$e_1$ と $e_2:=Re_1$ は $T$ の基底である。
要点:$e_1,e_2$ の張る平行四辺形を 2 つの三角形に分けると、どの点もいずれかの頂点から $|e_1|$ より近い。$\mathbb{Z}e_1+\mathbb{Z}e_2$ に入らない格子のベクトルがあれば、$|e_1|$ より短い $0$ でない格子のベクトルができて矛盾する。
$|e_1|=1$ としてよい。$e_1,e_2$ は線形独立($R$ は $e_1$ を平行でない向きに回す)なので、$v\in T$ は $v=ae_1+be_2$($a,b\in\mathbb{R}$)と書ける。$v':=v-[a]e_1-[b]e_2\in T$($[\ ]$ は整数部分)は平行四辺形 $\{se_1+te_2\mid 0\le s,t<1\}$ にあり、$v\notin\mathbb{Z}e_1+\mathbb{Z}e_2$ なら $v'$ は頂点 $0,e_1,e_1+e_2,e_2$ のどれとも異なる。
平行四辺形を対角線で 2 つの三角形 $\{0,e_1,e_1+e_2\}$、$\{0,e_1+e_2,e_2\}$ に分ける。三角形の頂点を $p_1,p_2,p_3$、点を $p=\sum\alpha_ip_i$($\alpha_i\ge0$、$\sum\alpha_i=1$)とすると、展開して確かめられる恒等式 $\sum_i\alpha_i|p-p_i|^2=\sum_{i< j}\alpha_i\alpha_j|p_i-p_j|^2$ から、$\min_i|p-p_i|^2$ は右辺以下である。
$n=4$ のとき三角形は直角二等辺三角形で、辺の長さの 2 乗は $1,1,2$(直角の頂点を $p_2$ とする)なので、右辺は $\alpha_1\alpha_2+\alpha_2\alpha_3+2\alpha_1\alpha_3\le\alpha_2(1-\alpha_2)+\frac{(1-\alpha_2)^2}2=\frac{1-\alpha_2^2}2\le\frac12$ である($\alpha_1\alpha_3\le\frac{(\alpha_1+\alpha_3)^2}4$)。$n=3,6$ のとき $e_1$ と $e_2$ のなす角は $120^\circ$ か $60^\circ$ で、$|e_1+e_2|$ は $1$ か $\sqrt3$ である。$120^\circ$ のときは 2 つの三角形がどちらも 1 辺 $1$ の正三角形になり、右辺は $\alpha_1\alpha_2+\alpha_2\alpha_3+\alpha_3\alpha_1\le\frac13$ である。$60^\circ$ のときは対角線を $e_1$、$e_2$ の先を結ぶ方(長さ $1$)に取りかえて同じく正三角形に分ける。どの場合も $v'$ からある頂点 $p_i$ への距離は $1$ 未満で、$v'-p_i$ は $0$ でない $T$ のベクトルになり、$e_1$ の最小性に反する。
$G$ を向きを保つ壁紙群、$n:=|P_G|$ とする。
1:thm-wg-point の 5 により $P_G\subset\mathrm{SO}(2)$ は回転で共役をとって $C_n$ になるが、$C_n$ は $\mathrm{SO}(2)$ の中で回転と可換なので $P_G=C_n$ で、4 により $n\in\{1,2,3,4,6\}$ である。$n\ge2$ のとき、角 $2\pi/n$ の回転 $R$ を線形部分にもつ元 $g=(R,b)\in G$ をとると、lem-wg-rotation により $g$ は位数 $n$ の回転である。$h=(R^k,b')\in G$ に対し $hg^{-k}$ の線形部分は $I$ なので $hg^{-k}=t_v$($v\in T_G$)で、$h=t_vg^k$ と書ける。$t_vg^k=t_{v'}g^{k'}$($0\le k,k'< n$)なら線形部分を比べて $k=k'$、よって $v=v'$ である。
2:$n=1$ なら $G=\{t_v\}\cong T_G\cong\mathbb{Z}^2$ である。$n\ge2$ のとき $T_G$ の基底 $e_1,e_2$ を、$n=2$ なら任意に、$n=3,4,6$ なら lem-wg-basis のようにとる。基底で表した $R$ の行列が $M_n$ であることを確かめる。$n=2$ は $R=-I$ である。$n=3,4,6$ では $Re_1=e_2$ で、$Re_2=R^2e_1$ を求めればよい。角 $2\pi/3$、$\pi/2$、$\pi/3$ の回転の固有多項式は $x^2+x+1$、$x^2+1$、$x^2-x+1$ なので(トレース $2\cos\varphi$、行列式 $1$)、Cayley–Hamilton の定理により $R^2=-I-R$、$-I$、$R-I$ で、$Re_2=-e_1-e_2$、$-e_1$、$e_2-e_1$ となり、行列は $M_3,M_4,M_6$ である。
$\Phi\colon\mathbb{Z}^2\rtimes_{M_n}\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\to G$ を $\Phi(m,k):=t_{m_1e_1+m_2e_2}\,g^k$ で定める。$g^n=\mathrm{id}$、$M_n^n=I$ なので $k$ を $n$ を法として見てよい。prf-wg-point の共役の式($g^k$ の線形部分は $R^k$ なので $g^kt_wg^{-k}=t_{R^kw}$)から
$$
t_ug^k\,t_{u'}g^{k'}=t_u\,(g^kt_{u'}g^{-k})\,g^{k+k'}=t_{u+R^ku'}\,g^{k+k'}
$$
で、$R^k$ は座標では $M_n^k$ なので $\Phi$ は準同型である。1 の一意な表示から全単射である。
3:線形部分が $I$ の元は平行移動で、単位元以外は位数無限である。線形部分が $R^k\ne I$ の元は lem-wg-rotation により位数が $R^k$ の位数に等しい回転である。$R^k$($0< k< n$)の位数は $n$ の約数で $1$ より大きいもの全部にわたるので、集合は $n=1,2,3,4,6$ に応じて主張のとおりになる。5 つの集合は異なり、群の同型は元の位数を保つので、5 つの群は互いに同型でない。prop-wg-semidirect により 5 つとも現れる。$\square$
鏡映やすべり鏡映を含む壁紙群まで合わせると、17 種類の型に分かれることが知られている(Jud25 定理 12.2.12 と表 12.2.11。この記事では証明しない)。点群ごとに並べると次のとおりである(記号は結晶学の国際記号)。
| 点群 | $C_1$ | $C_2$ | $D_1$ | $D_2$ | $C_3$ | $D_3$ | $C_4$ | $D_4$ | $C_6$ | $D_6$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 型 | p1 | p2 | pm, pg, cm | pmm, pmg, pgg, cmm | p3 | p3m1, p31m | p4 | p4m, p4g | p6 | p6m |
| 個数 | 1 | 1 | 3 | 4 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 |
点群が $C_n$ の列は thm-wg-orientation で示した 5 種類である。点群が $D_n$ のときは、点群だけでは型が決まらない。最も小さい $D_1$ の場合を確かめる。
$\sigma=\mathrm{diag}(1,-1)$、$h=(\frac12,0)$、$T_0=\mathbb{Z}(1,0)+\mathbb{Z}(0,1)$、$T_1=\mathbb{Z}(\frac12,\frac12)+\mathbb{Z}(\frac12,-\frac12)$ とし、
$$
\mathrm{pm}:=T_0\rtimes D_1,\qquad \mathrm{pg}:=\{t_v\mid v\in T_0\}\cup\{(\sigma,v+h)\mid v\in T_0\},\qquad \mathrm{cm}:=T_1\rtimes D_1
$$
とおく。3 つとも点群 $D_1$ の壁紙群で、互いに同型でない。
$\sigma$ は $T_0$ と $T_1$ を保つ($\sigma(\frac12,\frac12)=(\frac12,-\frac12)$)ので、pm と cm は prop-wg-semidirect により壁紙群である。pg:$\sigma h=h$、$2h=(1,0)\in T_0$ なので $(\sigma,v+h)(\sigma,w+h)=(I,\sigma w+v+2h)$ は $T_0$ の平行移動で、ほかの積と逆元も同じように閉じている。平行移動であるのは $t_v$ の元だけなので、平行移動の格子は $T_0$ である。
pm と cm は鏡映 $(\sigma,0)$(位数 2)を含む。pg の元 $(\sigma,v+h)$ は $(\sigma,v+h)^2=(I,(2v_1+1,0))\ne\mathrm{id}$ を満たすので、pg の単位元以外の元はすべて位数無限で、pg は pm とも cm とも同型でない。
pm と cm は可換化 $G/[G,G]$ で区別する。要点:$G=T\rtimes\{I,\sigma\}$ では $[G,G]=(\sigma-I)T$ で、$G/[G,G]\cong T/(\sigma-I)T\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。pm では $(\sigma-I)T_0=\{0\}\times2\mathbb{Z}$ で可換化は $\mathbb{Z}\times(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$、cm では $(\sigma-I)T_1=\{0\}\times\mathbb{Z}$ で可換化は $\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ となり、位数有限の元の個数が $4$ と $2$ で異なる。
$(\sigma-I)(x,y)=(0,-2y)$ である。交換子 $(\sigma,0)\,t_v\,(\sigma,0)^{-1}t_v^{-1}=t_{\sigma v-v}$ は $(\sigma-I)T$ に属する。$N:=\{t_w\mid w\in(\sigma-I)T\}$ は $\sigma(\sigma-I)v=-(\sigma-I)v$ から $(\sigma,0)$ の共役で保たれ、平行移動とは可換なので正規部分群である。$G/N$ では $(\sigma,0)t_v(\sigma,0)^{-1}=t_{\sigma v}\equiv t_v$ なので生成元どうしが可換で、$G/N$ は可換、よって $[G,G]\subset N$ である。上の交換子が $N$ を生成するので $[G,G]=N$ である。$G/N$ は $T/(\sigma-I)T$ と位数 2 の元 $(\sigma,0)$ で生成され、両者は交わらないので直積である。
pm:$T_0=\mathbb{Z}^2$ で $(\sigma-I)T_0=\{0\}\times2\mathbb{Z}$、$T_0/(\sigma-I)T_0\cong\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。cm:$T_1=\{(x,y)\mid x,y\in\frac12\mathbb{Z},\ x+y\in\mathbb{Z}\}$ で、$y$ は $\frac12\mathbb{Z}$ のすべての値をとるので $(\sigma-I)T_1=\{0\}\times\mathbb{Z}$ である。$(x,y)\mapsto x$ は $T_1$ から $\frac12\mathbb{Z}$ への全射準同型で、核は $\{(0,y)\mid y\in\mathbb{Z}\}=(\sigma-I)T_1$ なので、$T_1/(\sigma-I)T_1\cong\mathbb{Z}$ である。可換化の位数有限の元は、pm では $(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$ の 4 個、cm では $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ の 2 個である。
pm は鏡映の軸が平行に並ぶ模様、pg は足跡のようにすべり鏡映だけがある模様(平面の合同変換の分類 の図)、cm は鏡映の軸の間にすべり鏡映の軸が入る模様の対称性である。
thm-wg-point の条件を 1 つずつ外す。各行は 1 つの条件だけを破る。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $T_G$ に線形独立な 2 つのベクトルがある | 正五角形の対称性の群 $D_5$($T_G=\{0\}$) | 点群の回転の位数が $1,2,3,4,6$(4) |
| $T_G$ が離散 | $\mathbb{R}^2=\mathbb{C}$ で $z\mapsto\zeta^kz+b$($\zeta=e^{2\pi i/5}$、$k\in\mathbb{Z}$、$b\in\mathbb{Z}[\zeta]$)の全体 | 点群の回転の位数が $1,2,3,4,6$(4) |
| $G$ の元が合同変換 | $x\mapsto M^kx+v$($M=\begin{pmatrix}2&1\\ 1&1\end{pmatrix}$、$k\in\mathbb{Z}$、$v\in\mathbb{Z}^2$)の全体 | 線形部分の群が有限(3) |
1 行目:正五角形を動かさない合同変換は有限群 $D_5$(の共役)で、平行移動は恒等写像しか含まない。角 $2\pi/5$ の回転を含む。
2 行目:$\zeta^kc\in\mathbb{Z}[\zeta]$ なので合成で閉じた群で、平行移動の全体は $\mathbb{Z}[\zeta]$ である。$1,\zeta$ は線形独立だが、$\zeta+\zeta^{-1}=2\cos\frac{2\pi}5=\frac{\sqrt5-1}2$ は無理数なので $\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\frac{\sqrt5-1}2\subset\mathbb{Z}[\zeta]\cap\mathbb{R}$ は $\mathbb{R}$ で稠密で、$\mathbb{Z}[\zeta]$ は離散でない(格子でない)。線形部分の群は $C_5$ である。
3 行目:$M\in\mathrm{GL}_2(\mathbb{Z})$ は $\mathbb{Z}^2$ を保つので合成で閉じた群で、$M$ の固有値 $\frac{3\pm\sqrt5}2$ から $M^k\ne I$($k\ne0$)なので平行移動の全体は $\mathbb{Z}^2$(格子)である。線形部分の群 $\{M^k\}$ は無限群である。
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