p進展開(p-adic expansion)とは、素数 $p$ について、$p$ 進数を $p$ の冪の級数 $\sum_{n\ge m}s_np^n$ として表すことである。数字 $s_n$ を $0$ を含み $p$ を法とする各剰余類を 1 つずつ代表する集合からとると、$\mathbb Q_p$ の $0$ でない各元はただ 1 通りに展開でき、先頭の位置は $p$ 進付値に等しい。標準の数字 $0,1,\dots,p-1$ では、和と符号の反転が繰り上がりで計算でき、展開が有限で終わるのは $0$ 以上の整数、ある所から周期的になるのは有理数にちょうど対応し、$p$ 進整数である有理数の展開が最初から周期的になるのは $-1\le x\le0$ のときにちょうど限る。数字に $1$ の $(p-1)$ 乗根をとる Teichmüller 代表元の展開もある。
素数 $p$ を底にすると、$0$ 以上の整数 $n$ は $n=\sum_{i=0}^{r}a_ip^i$($a_i\in\{0,1,\dots,p-1\}$)とただ 1 通りに書ける(n進法と記数法)。この有限和を高い冪の方へ限りなく続けた級数 $\sum_{i\ge0}a_ip^i$ は、実数としては発散するが、$p$ 進絶対値 $\lvert p^i\rvert_p=p^{-i}$ のもとでは収束し、$p$ 進整数環 $\mathbb Z_p$ の元を表す。$p$ 進数をこのように $p$ の冪の級数として書いたものを $p$ 進展開(p-adic expansion)という。
$\mathbb Q_p$ の元が標準の数字 $\{0,1,\dots,p-1\}$ でただ 1 通りに展開できることは、p進数 の定理「$p$ 進展開の存在と一意性」が示している。この記事では、数字の集合を一般の代表系に広げた形で存在と一意性を示し(thm-pae-existence)、桁の足し算と符号の反転を繰り上がりで記述する。そのうえで、展開の形から数の種類を読む定理を証明する。有限で終わる展開は $0$ 以上の整数に、ある所から先が $p-1$ だけの展開は負の整数に対応し(thm-pae-integers)、ある所から周期的になる展開は有理数にちょうど対応する(thm-pae-rational)。さらに、$p$ 進整数である有理数 $x$ の展開が最初から周期的になるのは、$-1\le x\le0$ のときにちょうど限る(thm-pae-purely-periodic)。最後に、$(p-1)$ 乗根を数字に使う Teichmüller の数字と、桁の繰り上がりが階乗・二項係数の $p$ 進付値に現れる様子を述べる。
この記事を通じて $p$ を素数とする。$p$ 進付値 $v_p$ と $p$ 進絶対値 $\lvert x\rvert_p=p^{-v_p(x)}$ は p進付値 と p進数 の記事の記法に従う。次の基本事実を使う。$\mathbb Z_p=\{x\in\mathbb Q_p\mid v_p(x)\ge0\}$ であり、$x\in\mathbb Z_p$ が $p\mathbb Z_p$ に入ることと $v_p(x)\ge1$ は同値である。$\mathbb Z_p$ の各元は $p$ を法としてある整数と合同で、$\mathbb Z_p/p\mathbb Z_p\cong\mathbb Z/p\mathbb Z$ である(p進数 の定理「$p$ 進整数の逆極限表示」)。$\mathbb Q_p$ の級数 $\sum c_n$ は $c_n\to0$ のとき収束する(同記事の命題「非アルキメデス級数の収束判定」)。
$\mathbb Z_p$ の部分集合 $S$ が $0\in S$ を満たし、$p$ を法とする各剰余類($\mathbb Z_p/p\mathbb Z_p$ の各元)からちょうど 1 つの元を含むとき、$S$ を数字の集合という。$S$ はちょうど $p$ 個の元からなる。
$x\in\mathbb Q_p$ について、整数 $m$ と $s_n\in S$($n\ge m$)による収束級数の表示
$$
x=\sum_{n\ge m}s_np^n
$$
を、$x$ の $S$ に関する $p$ 進展開といい、$s_n$ を第 $n$ 桁という。$S=\{0,1,\dots,p-1\}$ を標準の数字とよび、単に $p$ 進展開といえば標準の数字による展開を指す。$x\in\mathbb Z_p$ の標準の展開 $x=\sum_{n\ge0}a_np^n$ を、整数の $p$ 進表示にならって $x=(\cdots a_2a_1a_0)_p$ とも書く。
$s_n\in\mathbb Z_p$ なので $\lvert s_np^n\rvert_p\le p^{-n}\to0$ であり、桁をどう選んでも級数は収束する。
$S$ を数字の集合とする。
1 の存在。$x_0:=x$ とおく。$x_n\in\mathbb Z_p$ が決まったら、$x_n$ と $p$ を法として合同な $S$ の元がただ 1 つあるので、それを $s_n$ とし、$x_{n+1}:=(x_n-s_n)/p$ とおく。$v_p(x_n-s_n)\ge1$ なので $x_{n+1}\in\mathbb Z_p$ である。$x_n=s_n+px_{n+1}$ を繰り返し代入すると、各 $N\ge1$ で
$$
x=\sum_{n=0}^{N-1}s_np^n+p^Nx_N
$$
となる。$\lvert p^Nx_N\rvert_p\le p^{-N}\to0$ なので、級数 $\sum_{n\ge0}s_np^n$ は $x$ に収束する。
1 の一意性。$\sum_{n\ge0}s_np^n=\sum_{n\ge0}t_np^n$($s_n,t_n\in S$)で、$s_n\ne t_n$ となる最小の $n$ を $k$ とする。差をとって $p^k$ で割ると
$$
(s_k-t_k)+\sum_{n>k}(s_n-t_n)p^{n-k}=0
$$
となる。第 2 項は $p\mathbb Z_p$ の元の収束級数なので $p\mathbb Z_p$ に入る($p\mathbb Z_p$ は $\mathbb Z_p$ の閉集合である)。よって $s_k\equiv t_k\pmod p$ だが、$S$ は各剰余類から 1 つずつしか元を含まないので $s_k=t_k$ となり、矛盾する。
2。$m:=v_p(x)$ とおくと $u:=p^{-m}x$ は $\mathbb Z_p$ の単元である。1 で $u=\sum_{n\ge0}s_np^n$ と書くと、$s_0\equiv u\not\equiv0\pmod p$ なので $s_0\ne0$ であり、$x=\sum_{n\ge m}s_{n-m}p^n$ が求める形の展開である。逆に $x=\sum_{n\ge m'}s'_np^n$($s'_{m'}\ne0$)と書けたとする。$0\in S$ は $0$ の剰余類の代表なので、$0$ でない $s'_{m'}$ は $p\mathbb Z_p$ に入らず、$v_p(s'_{m'}p^{m'})=m'$ である。残りの項の和は $v_p\ge m'+1$ を満たすので、強三角不等式により $v_p(x)=m'$、すなわち $m'=m$ である。そこで $p^{-m}x=\sum_{n\ge0}s'_{n+m}p^n$ に 1 の一意性を当てると、桁がすべて一致する。$\square$
証明の手順は、各段で「$p$ で割った余り」を数字にとり、残りを $p$ で割るという、整数の $p$ 進表示を求める手順そのものである。標準の数字のときは、展開を第 $N-1$ 桁で切った和 $\sum_{n< N}a_np^n$ が、$x$ と $p^N$ を法として合同な $0$ 以上 $p^N$ 未満のただ 1 つの整数になる(上の式 $x=\sum_{n< N}a_np^n+p^Nx_N$ による)。$0\in S$ という条件は 2 の一意性と $m=v_p(x)$ に使っている(ex-pae-counterexamples の表)。
$x_0=-\frac13$ とする。$3a\equiv-1\pmod5$ の解は $a=3$ なので第 $0$ 桁は $3$、$x_1=(-\frac13-3)/5=-\frac23$。$3a\equiv-2\pmod5$ の解は $a=1$ なので第 $1$ 桁は $1$、$x_2=(-\frac23-1)/5=-\frac13=x_0$。以後同じことを繰り返す。値を確かめると、$3+1\cdot5=8$ を周期 $2$ の繰り返しにした級数は $8\sum_{j\ge0}25^j=\frac{8}{1-25}=-\frac13$ である。$\frac13$ は $x_0=\frac13$ から始めると、$3a\equiv1$ の解 $a=2$ で $x_1=(\frac13-2)/5=-\frac13$ となり、以後は $-\frac13$ の桁が 1 つずれて続く。
標準の数字による展開は、整数の筆算と同じ繰り上がりで足し算できる。
$x=\sum_{i\ge0}a_ip^i$、$y=\sum_{i\ge0}b_ip^i$ を $\mathbb Z_p$ の元の標準の展開とする。$c_0:=0$ とし、$i\ge0$ について
$$
a_i+b_i+c_i=d_i+pc_{i+1},\qquad d_i\in\{0,1,\dots,p-1\}
$$
で $d_i$ と $c_{i+1}$ を順に定める。このとき $c_i\in\{0,1\}$ であり、$x+y=\sum_{i\ge0}d_ip^i$ は $x+y$ の標準の展開である。$c_{i+1}=1$ のとき、第 $i$ 桁から繰り上がりが起きるという。
$c_i\in\{0,1\}$ なら $0\le a_i+b_i+c_i\le2p-1$ なので $c_{i+1}\in\{0,1\}$ であり、帰納法で $c_i\in\{0,1\}$ がわかる。定める式に $p^i$ を掛けて $i=0,\dots,N-1$ について足すと、$c_0=0$ により
$$
\sum_{i< N}(a_i+b_i)p^i=\sum_{i< N}d_ip^i+c_Np^N
$$
となる。左辺は $x+y$ と $p^N$ を法として合同なので、$x+y-\sum_{i< N}d_ip^i\in p^N\mathbb Z_p$ であり、$\sum_id_ip^i$ は $x+y$ に収束する。桁は標準の数字なので、thm-pae-existence の一意性によりこれが $x+y$ の展開である。$\square$
$0$ でない $x=\sum_{i\ge0}a_ip^i\in\mathbb Z_p$ の第 $k$ 桁が最初の $0$ でない桁であるとする。このとき $-x$ の標準の展開の第 $i$ 桁は、$i< k$ なら $0$、$i=k$ なら $p-a_k$、$i>k$ なら $p-1-a_i$ である。
主張の桁をもつ元を $y$ とし、prop-pae-carry で $x+y$ の桁を求める。$i< k$ では $a_i=0$ なので桁は $0$、繰り上がりはない。$i=k$ では $a_k+(p-a_k)=p$ なので桁 $0$、繰り上がり $1$ である。$i>k$ では $a_i+(p-1-a_i)+1=p$ なので、やはり桁 $0$、繰り上がり $1$ である。よって $x+y$ の桁はすべて $0$ で、$x+y=0$ である。$\square$
たとえば $p=5$、$x=17=(\cdots0032)_5$ なら、$-17=(\cdots4413)_5$ である。積も、整数の筆算と同じく、桁の畳み込み $\sum_{i+j=n}a_ib_j$ を下の桁から繰り上げれば求まる。ただし繰り上がりの値は $0,1$ に限らない。
以下この節では標準の数字による展開を考える。
$x\in\mathbb Z_p$ とする。
1。展開が有限で終われば、$x$ は $0$ 以上の整数の有限和である。逆に $x$ が $0$ 以上の整数なら、$p$ 進表示 $x=\sum_{i=0}^{r}a_ip^i$(n進法と記数法 の「存在と一意性」)は標準の数字による展開でもあるので、thm-pae-existence の一意性によりこれが $x$ の展開である。
2。ある所から先の桁がすべて $p-1$ なら $x\ne0$ であり、prop-pae-negation により $-x$ の桁はある所から先がすべて $0$ である。1 により $-x$ は $0$ 以上の整数で、$x\ne0$ なので $x$ は負の整数である。逆に $x$ が負の整数なら、$-x$ は正の整数なので 1 によりその展開は有限で終わる。$x=-(-x)$ に prop-pae-negation を当てると、$x$ の桁はある所から先がすべて $p-1$ である。$\square$
$x\in\mathbb Q_p$ が有理数であることと、$x$ の展開がある所から周期的になること、すなわち整数 $N$ と $L\ge1$ があって $n\ge N$ のとき第 $n+L$ 桁と第 $n$ 桁が等しいことは、同値である。
$x$ に $p$ の冪を掛けると桁がずれるだけで、どちらの性質も変わらない。そこで $x\in\mathbb Z_p$ とし、展開を $x=\sum_{n\ge0}a_np^n$ とする。
周期的なら有理数であること。$n\ge N$ で $a_{n+L}=a_n$ とし、$B:=\sum_{i=0}^{L-1}a_{N+i}p^i$ とおく。$\mathbb Q_p$ では $\sum_{j\ge0}p^{jL}=\frac1{1-p^L}$ である(部分和に $1-p^L$ を掛けると $1-p^{JL}\to1$)。よって
$$
x=\sum_{n=0}^{N-1}a_np^n+p^N\sum_{j\ge0}Bp^{jL}=\sum_{n=0}^{N-1}a_np^n+\frac{p^NB}{1-p^L}
$$
は有理数である。
有理数なら周期的であること。$x\in\mathbb Q\cap\mathbb Z_p$ を既約分数 $c/b$($b\ge1$)で書くと、$v_p(x)\ge0$ なので $p\nmid b$ である。prf-pae-existence の手順で $x_0=x$、$x_{n+1}=(x_n-a_n)/p$ とおく。$x_n=c_n/b$($c_n\in\mathbb Z$)と書けることを帰納法で示す。$x_n=c_n/b$ なら $x_{n+1}=\frac{c_n-a_nb}{pb}$ であり、整数 $c_n-a_nb=pbx_{n+1}$ は $v_p\ge1$ を満たすので $p$ で割り切れる。よって $c_{n+1}:=(c_n-a_nb)/p$ は整数で、$x_{n+1}=c_{n+1}/b$ である。
$0\le a_n\le p-1$ なので $\lvert c_{n+1}\rvert\le(\lvert c_n\rvert+(p-1)b)/p$ である。$\lvert c_n\rvert\le b$ なら $\lvert c_{n+1}\rvert\le b$、$\lvert c_n\rvert>b$ なら $\lvert c_{n+1}\rvert<\lvert c_n\rvert$ である。整数の真に減る列は無限には続かないので、ある $N_0$ から先は $\lvert c_n\rvert\le b$ となる。一方、$a_n$ は $a_nb\equiv c_n\pmod p$ を満たすただ 1 つの数字なので $c_n$ だけで決まり、$c_{n+1}$ も $c_n$ だけで決まる。$n\ge N_0$ の $c_n$ は有限集合 $\{-b,\dots,b\}$ に入るので、$N_0\le N< M$ で $c_N=c_M$ となるものがあり、そこから先は $c_{n+L}=c_n$($L=M-N$)が成り立つ。桁 $a_n$ は $c_n$ で決まるので、$n\ge N$ で $a_{n+L}=a_n$ である。$\square$
$\mathbb Z_p$ の元の大部分(たとえば $\sum_{n\ge0}p^{n^2}$)は周期的でない展開をもち、有理数ではない。
$x\in\mathbb Q\cap\mathbb Z_p$ とする。$x$ の展開が最初から周期的である(ある $L\ge1$ があってすべての $n\ge0$ で第 $n+L$ 桁と第 $n$ 桁が等しい)ことと、実数として $-1\le x\le0$ であることは同値である。
最初から周期的なら、prf-pae-rational の式で $N=0$ とすると $x=\frac{B}{1-p^L}=-\frac{B}{p^L-1}$ であり、$0\le B\le p^L-1$ なので $-1\le x\le0$ である。
逆を示す。$x=-c/b$($b\ge1$、$p\nmid b$、$0\le c\le b$)と書き、$X:=\{-c'/b\mid c'\in\mathbb Z,\ 0\le c'\le b\}$ とおく。$y\in\mathbb Z_p$ に対し、$a(y)$ を $y$ と $p$ を法として合同な数字、$T(y):=(y-a(y))/p$ とする。$x$ の第 $n$ 桁は $a(T^n(x))$ である。
$T$ は $X$ を $X$ に移す。実際 $y=-c'/b\in X$ なら $T(y)=-\frac{c'+a(y)b}{pb}$ であり、prf-pae-rational と同じ理由で $c'':=(c'+a(y)b)/p$ は整数で、$0\le c'+a(y)b\le b+(p-1)b=pb$ から $0\le c''\le b$ である。
$T$ は $X$ の上で単射である。$y,z\in X$ で $T(y)=T(z)$ なら、$y-z=a(y)-a(z)$ は整数で、$y,z\in[-1,0]$ なので $y-z\in\{-1,0,1\}$ である。$y-z=\pm1$ なら $\{y,z\}=\{0,-1\}$ だが、$a(0)=0$、$T(0)=0$ と $a(-1)=p-1$、$T(-1)=-1$ から $T(0)\ne T(-1)$ である。よって $y=z$ である。
有限集合 $X$ からそれ自身への単射 $T$ は全単射であり、$X$ の置換なので、ある $L\ge1$ で $T^L(x)=x$ となる。このとき第 $n+L$ 桁 $a(T^{n+L}(x))=a(T^n(x))$ は第 $n$ 桁に等しい。$\square$
$p=5$ のとき、$-\frac13=(\cdots1313)_5$ は $-1\le-\frac13\le0$ なので最初から周期的(周期 $2$)であり、$\frac13=(\cdots313132)_5$ は第 $1$ 桁から先だけが周期的である(ex-pae-small)。$p=2$ のとき $-\frac13=\frac{1}{1-4}=\sum_{j\ge0}4^j=(\cdots010101)_2$、$\frac13=(\cdots101011)_2$ である。
thm-pae-existence は数字の集合を自由に選べることを示している。標準の数字は整数の $p$ 進表示とつながるが、積との相性がよいのは $1$ の $(p-1)$ 乗根を数字にとる選び方である。
$a\in\mathbb Z_p$ に対し、列 $a,a^p,a^{p^2},\dots$ は $\mathbb Z_p$ で収束する。その極限を $\omega(a)$ と書くと、次が成り立つ。
補題:$k\ge1$ で $u\equiv v\pmod{p^k}$ なら $u^p\equiv v^p\pmod{p^{k+1}}$ である。実際 $u=v+p^kt$($t\in\mathbb Z_p$)とすると
$$
u^p=v^p+p\cdot v^{p-1}p^kt+\sum_{j=2}^{p}\binom pjv^{p-j}p^{kj}t^j
$$
で、第 2 項は $p^{k+1}$ で割り切れ、$j\ge2$ の項も $kj\ge k+1$ により $p^{k+1}$ で割り切れる。
$a$ と $p$ を法として合同な整数に Fermat の小定理を当てると $a^p\equiv a\pmod p$ である。補題を $n$ 回使うと $a^{p^{n+1}}\equiv a^{p^n}\pmod{p^{n+1}}$ となるので、列 $(a^{p^n})_n$ は Cauchy 列であり、$\mathbb Z_p$ は完備なので収束する。各項は $a$ と $p$ を法として合同で、$p\mathbb Z_p$ は閉集合なので、極限 $\omega(a)$ も $a$ と合同である。$\omega(a)^p=\lim_na^{p^{n+1}}=\omega(a)$ である。$a\equiv b\pmod p$ なら補題を $n$ 回使って $a^{p^n}\equiv b^{p^n}\pmod{p^{n+1}}$ となり、極限をとって $\omega(a)=\omega(b)$ を得る。
$\omega(0)=0$ であり、$a\not\equiv0$ なら $\omega(a)$ は単元なので $\omega(a)^p=\omega(a)$ から $\omega(a)^{p-1}=1$ である。$\omega(a)\equiv a$ により $S_\omega$ は各剰余類から 1 つずつ元を含むので、数字の集合である。$\square$
数字に $S_\omega$ を選ぶと、$0$ でない数字どうしの積はまた $0$ でない数字になる。完備離散付値環で一般の代表系を数字にとる展開は Ser79 Chapter II §4 の Proposition 5(pp. 32–33)にあり、$\mathbb Z_p$ では $0$ と $1$ の $(p-1)$ 乗根を数字にとるのがよいことが直後の Example(p. 33)で、乗法的な代表系の一般論が Proposition 8(p. 35)で述べられている。剰余体が一般の完全体のときの同じ考え方は Wittベクトル へつながる。
$\omega(4)$ は $X^4=1$ の根で $4\equiv-1$ と合同なので $\omega(4)=-1$ である($\pm1$ は $5$ を法として合同でない)。$\omega(2)$ は $\omega(2)^2\equiv4\equiv-1\pmod5$ かつ $(\omega(2)^2)^2=1$ を満たすので $\omega(2)^2=-1$ であり、$\omega(2)$ は $\mathbb Z_5$ の中の $-1$ の平方根である。$25$ を法とすると $\omega(2)\equiv2^5=32\equiv7$ で、確かに $7^2=49\equiv-1\pmod{25}$ である。$\omega(3)=-\omega(2)$ である。
$0$ 以上の整数 $n$ の $p$ 進表示の数字の和を $s_p(n)$ と書く。$n!$ に含まれる素因数 $p$ の個数は
$$
v_p(n!)=\frac{n-s_p(n)}{p-1}
$$
で与えられる(階乗に含まれる素因数の個数 の定理「数字の和による形」)。prop-pae-carry の繰り上がりの回数は、二項係数の $p$ 進付値に現れる。$0\le k\le n$ のとき、$v_p\binom nk$ は $k$ と $n-k$ の標準の展開を足すときの繰り上がりの回数に等しい(二項係数 の定理「Kummer の定理」)。とくに $\binom nk$ が $p$ で割り切れないことは、$k$ と $n-k$ の和で繰り上がりが起きないこと、すなわち各桁で $k$ の数字が $n$ の数字以下であることと同値であり、これは 二項係数 の定理「Lucas の定理」の $\binom nk\equiv\prod_i\binom{n_i}{k_i}\pmod p$ からも読み取れる。
$p=3$、$n=10=(101)_3$、$k=4=(11)_3$ とする。$n-k=6=(20)_3$ で、$(11)_3+(20)_3$ は第 $1$ 桁で $1+2=3$ となって 1 回繰り上がる。実際 $\binom{10}{4}=210=2\cdot3\cdot5\cdot7$ で $v_3=1$ である。
thm-pae-existence と thm-pae-integers・thm-pae-purely-periodic の仮定は、どれも外せない。表の各行は仮定を 1 つだけ外す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 数字の集合が各剰余類を代表する | $p=3$、$S=\{0,1\}$($2$ の剰余類に元がない) | thm-pae-existence の存在:$2$ の第 $0$ 桁がとれない |
| $0\in S$ | $p=3$、$S=\{1,2,3\}$:$3=3+3\cdot3+\sum_{n\ge2}2\cdot3^n=1\cdot3+3\cdot3^2+\sum_{n\ge3}2\cdot3^n$ | thm-pae-existence の 2:先頭の桁が $0$ でない展開が 2 通りあり、$m=v_p(x)$ も成り立たない |
| 数字が標準の数字 | $p$ が奇素数で $S=S_\omega$:$-1=\omega(p-1)$ | thm-pae-integers の 1:展開が 1 桁で終わるのに負の整数 |
| $-1\le x\le0$ | $p=5$、$x=\frac13$ | thm-pae-purely-periodic:展開は最初から周期的にはならない |
1 行目:$2$ と合同な数字がないので、prf-pae-existence の最初の段が進まない。
2 行目:$S=\{1,2,3\}$ は $3$ を法とする 3 つの剰余類を 1 つずつ代表するが $0$ を含まない。1 つ目の和は $3+9+2\cdot9\sum_{j\ge0}3^j=12+\frac{18}{1-3}=3$、2 つ目の和は $3+27+2\cdot27\sum_{j\ge0}3^j=30+\frac{54}{1-3}=3$ で、桁はどちらも $S$ の元である。$v_3(3)=1$ だが、1 つ目の表示は $m=0$ で先頭の桁 $3$ が $0$ でない。3 行目:$p$ が奇数なら $(-1)^{p-1}=1$ かつ $-1\equiv p-1\pmod p$ なので、prop-pae-teichmuller の $S_\omega$ の元で $p-1$ と合同なものは $-1$ である。4 行目:ex-pae-small の計算による。
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