p基底

同義語:p 基底p-basisp独立

概要

p基底(p-basis)とは、標数 $p$ の体 $k$ と $k^p\subset K\subset k$ を満たす部分体 $K$ について、指数を $p$ 未満に制限した有限個の元の単項式全体が $k$ の $K$ 上の基底になる部分集合 $B\subset k$ である。Zornの補題により、$p$ 独立な集合は濃度を問わず $p$ 基底へ拡張でき、$B$ が $p$ 基底であることは $(db)_{b\in B}$ が $\Omega_{k/K}$ の基底になることと同値で、導分の $B$ 上の値は任意に指定できる。$K=k^p$ の場合を絶対 $p$ 基底といい、それが空であることは $k$ が完全体であることと同値である。一般の部分体 $F$ に対する相対 $p$ 基底は $K=k^pF$ を係数体として定め、$p$ 独立性は通常の代数独立性とは一致しない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 体, 体の拡大, ベクトル空間, 多項式環, 微分加群, 導分

標数 $p$ の体では、$p$ 乗の微分は常に零になる。従って微分で測れる方向を調べるには、通常の代数独立性だけでなく、$p$ 乗を係数として許したときの独立性を考える必要がある。$p$ 基底はこのための基底である。指数を $0$ から $p-1$ に制限した単項式が体の線形基底になる、という具体的な条件で定義できる。
典型例は $k=\mathbf F_p(t)$ である。$k^p=\mathbf F_p(t^p)$ に対し $1,t,\ldots,t^{p-1}$ が基底なので、$\{t\}$ は絶対 $p$ 基底となる。一方、$k$ の完全閉包では全ての元が $p$ 乗になり、絶対 $p$ 基底は空になる。同じ超越的な体でも、この二つは微分から見ると全く異なる。本記事では有限 $p$ 次数を仮定せず、任意集合の $p$ 基底を扱う。

指数一の体拡大と定義

$p$ は素数、$k$ は標数 $p$ の体とする。$k^p=\{a^p:a\in k\}$ は部分体である。実際、$(a+b)^p=a^p+b^p$、$(ab)^p=a^pb^p$、$(a^{-1})^p=(a^p)^{-1}$ が成り立つ。本節から微分の定理までは、部分体 $K$ が
$$ k^p\subset K\subset k $$
を満たすとする。この包含が、全ての $b\in k$ について $b^p$ を係数体 $K$ に入れるための条件である。$k/K$ は純非分離拡大であり、各元の $p$ 乗が $K$ に入るという意味で指数は高々一である。
集合 $B\subset k$ の制限単項式とは
$$ b^\nu=\prod_{b\in B}b^{\nu_b},\qquad 0\leq\nu_b< p $$
で、$\nu_b\ne0$ となる $b$ が有限個しかないものをいう。空積は $1$ である。$B$ が無限でも、ここで無限積や無限和は使わない。

$p$ 独立性と $p$ 基底

$B$ が $K$ 上 $p$ 独立であるとは、その制限単項式の族が $K$ 上線形独立であることをいう。$B$ が $k/K$ の $p$ 基底であるとは、制限単項式が $k$ の $K$ ベクトル空間基底になることをいう。
$K=k^p$ の場合を $k$ の絶対 $p$ 基底という。絶対という語も標数 $p$ の体に対して用いており、標数零の超越基底を同じ名前で呼ぶことはしない。

線形独立とは、有限個の異なる単項式について $\sum_\nu a_\nu b^\nu=0$、$a_\nu\in K$ なら全係数が零であることをいう。基底なら、全ての $x\in k$ がこのような有限和として一意に表される。集合 $B$ 自体が有限である必要はない(定義は MatCA §38、MatCRT §26 に対応する)。
$B$ が $p$ 独立であるだけでは $k$ を張るとは限らない。例えば $k=\mathbf F_p(s,t)$ で $K=k^p$ のとき $\{s\}$ は $p$ 独立だが $t$ を生成しない。また $0$、あるいは $K$ に属する元を $p$ 独立集合に入れることはできない。その元の単項式と $1$ の間に係数体上の一次関係があるからである。

一元添加で何が起こるか

次の計算は存在証明と微分との対応の両方で使う。有限次数の公式を先に無限集合へ適用せず、まず一元ずつ調べる。

一元添加の次数

$K\subset E\subset k$ を中間体とし、$a\in k\setminus E$ とする。このとき $X^p-a^p$ は $E[X]$ で既約であり、$[E(a):E]=p$ である。従って $1,a,\ldots,a^{p-1}$ は $E(a)$ の $E$ 基底となる。

$a^p\in k^p\subset K\subset E$ なので、この多項式の係数は $E$ にある。代数閉包では $X^p-a^p=(X-a)^p$ であり、根は $a$ だけである。もし既約でなければ、モニックな真因子 $g\in E[X]$ を次数 $r$、$1\le r< p$ で取れる。代数閉包に移すと $g=(X-a)^r$ である。その $X^{r-1}$ の係数は $-ra$ である。$r$ は標数 $p$ で零でないので、$-ra\in E$ から $a\in E$ となり矛盾する。従って既約である。
評価写像 $E[X]\to E(a)$ の核はこの既約多項式であり、モニック除法で各類は次数 $p$ 未満の多項式として一意に表せる。これが所望の基底を与える。

有限個の元 $b_1,\ldots,b_n$ が各段階で先行する体 $K(b_1,\ldots,b_{i-1})$ に入らないなら、補題を繰り返すと拡大次数は $p^n$ となる。各段の基底を掛け合わせることで、全制限単項式が基底になる。逆にこれらの単項式が独立なら、各添加の次数は $p$ でなければならない。各次数は $1$ 又は $p$ であり、どこかで $1$ になると $p^n$ 個の単項式が $p^n$ より小さい次元の空間に入り、独立でなくなるからである。
もう一つの有用な計算は、$K[B]$ が既に体になることである。$x\in K[B]$ は有限多項式なので、$x^p$ は $K$ に入る。$x\ne0$ なら
$$ x^{-1}=\frac{x^{p-1}}{x^p}\in K[B]. $$
従って $K[B]=K(B)$ である。指数を $p$ 未満へ還元すれば $K[B]$ は制限単項式で張られるので、$p$ 基底という条件は「$p$ 独立であり、$K(B)=k$」とも書ける。体生成を示す際に、分母のために別の基底要素を追加する必要はない。

任意基数の存在と基底拡張

$p$ 基底の存在

$k^p\subset K\subset k$ とする。任意の $K$ 上 $p$ 独立な部分集合 $B_0\subset k$ は、$k/K$ の $p$ 基底へ拡張できる。特に $p$ 基底は存在する。集合の大きさや $[k:K]$ の有限性は仮定しない。

$B_0$ を含む $p$ 独立集合全体を包含関係で順序付ける。鎖の合併 $B$ に有限線形関係があると仮定する。その関係に現れる単項式は有限個であり、その台の合併も有限集合である。鎖の一つの要素がこの有限集合を全て含むので、関係はその $p$ 独立集合内の関係になる。従って全係数が零であり、合併も $p$ 独立である。Zorn の補題により極大元 $B$ が存在する。
$E=K(B)$ と置く。既に示したように $E$ は制限単項式を $K$ 基底に持つ。もし $E\ne k$ なら $a\in k\setminus E$ を取る。一元添加の補題によって $1,a,\ldots,a^{p-1}$ は $E$ 上独立である。
$B\cup\{a\}$ の制限単項式間に有限関係があるとする。$a$ の指数で項をまとめると $\sum_{j=0}^{p-1}u_j a^j=0$、$u_j\in E$ となる。$E$ 上の独立性から全 $u_j=0$ であり、さらに $B$ の $K$ 上の独立性から元の全係数が零である。従って $B\cup\{a\}$ も $p$ 独立となり、極大性に矛盾する。ゆえに $E=k$ であり、$B$ は $p$ 基底である。

ここで使った選択原理は、通常のベクトル空間の基底の存在と同じ Zorn の補題である。無限個の生成元を一つずつ番号付けして添加する方法では、任意基数を扱ったことにはならない。鎖の合併で有限関係を確認する点が、任意の基数を扱える要点になる。
$[k:K]$ が有限なら、$p$ 基底 $B$ は有限である。無限なら任意の $n$ 元部分集合が $p^n$ 個の独立単項式を持ち、有限次元に収まらないからである。$|B|=n$ の場合は
$$ [k:K]=p^n. $$
また $k$ を $K$ 上 $m$ 元で体生成すれば各添加次数は高々 $p$ なので $[k:K]\le p^m$、従って $m\ge n$ である。$p$ 基底は最小の体生成元数も与える。
一方、$B$ が無限基数 $\lambda$ のとき、ベクトル空間次元を有限の場合と同じ式 $p^\lambda$ と書いてはいけない。基底は有限台の指数関数全体である。その集合の濃度は $\lambda$ となる。固定された有限台では選択肢は有限個であり、全有限部分集合の集合は無限集合 $B$ と同じ濃度だからである。ここで $p$ 基底の濃度と、全ての無限指数列の濃度を混同しない。

任意係数の導分を構成する

微分基底との対応を証明するために、$p$ 基底上の値を自由に指定した導分を実際に作る。$M$ は任意の $k$ ベクトル空間であり、有限次元である必要はない。導分は加法写像 $D:k\to M$ で $D(xy)=xD(y)+yD(x)$ を満たし、$K$ 上零となるものをいう。

$p$ 基底と微分基底

$k^p\subset K\subset k$、$B$ が $k/K$ の $p$ 基底であるとする。このとき任意の $k$ 加群 $M$ について
$$ \operatorname{Der}_K(k,M)\cong\prod_{b\in B}M,\qquad \Omega_{k/K}\cong\bigoplus_{b\in B}k\,db $$
である。前者は $D\mapsto(D(b))_{b\in B}$、後者は添字付き族 $(db)_{b\in B}$ を基底とする同型である。

任意集合の変数を持つ多項式環 $P=K[X_b:b\in B]$ と、イデアル
$$ J=(X_b^p-b^p:b\in B) $$
を取る。$b^p\in K$ なので関係式の係数は $K$ にある。各多項式は有限個の変数しか含まない。そこで各変数のモニック関係を用いる除法を有限回実行すれば、指数 $p$ 未満の単項式の $K$ 線形結合に還元できる。この表示の一意性は、有限変数のモニック除法を順番に行うことから得られる。新たな変数を含む関係を有限和として使っても、その変数を含む有限集合の商で同じ一意性を適用できる。
従って $P/J$ の制限単項式は $K$ 基底である。評価 $X_b\mapsto b$ による $P/J\to k$ は、$p$ 基底の生成性で全射、独立性で単射なので同型である。
任意の族 $(v_b)_{b\in B}$、$v_b\in M$ を指定する。評価によって $M$ を $P$ 加群と見て
$$ D_P(f)=\sum_b (\partial f/\partial X_b)(b)\,v_b $$
と定める。各 $f$ の変数は有限個なので、この和は常に有限和である。多項式の積則を展開すれば $D_P(fg)=f(b)D_P(g)+g(b)D_P(f)$ であり、$K$ 上零である。各生成関係について $D_P(X_b^p-b^p)=p b^{p-1}v_b=0$ となる。
$J$ の一般元 $\sum_i h_i(X)(X_{b_i}^p-b_i^p)$ の導分も、積則から零になる。関係式自体の評価も零だからである。よって $D_P$ は商 $P/J=k$ 上の $K$ 導分へ降りる。逆に $K$ 導分は多項式の積則から $B$ の値で一意に決まる。従って任意値への対応は全単射である。
最後に $V=\bigoplus_{b\in B}k e_b$ と置く。各 $x$ の一意な制限単項式表示に前述の公式を適用し、$v_b=e_b$ とした写像 $d:k\to V$ を取る。任意 $M$ への $k$ 線形写像 $V\to M$ は $e_b$ の任意値と一対一に対応するから、合成 $\varphi\circ d$ は全ての $K$ 導分を一意に表す。これは微分加群の普遍性そのものであり、$V\cong\Omega_{k/K}$、$e_b\mapsto db$ を得る。

この証明は 微分加群 の一般構成によらず、$p$ 基底があるときに関係式の微分が全て零となる特殊な表示を直接計算している。係数として $k^p$ を許す理由もここに現れる。任意の導分は $D(x^p)=p x^{p-1}D(x)=0$ を満たすため、微分で区別する方向は $p$ 乗部分体からの方向ではない。
無限集合では、導分の値の空間は直積、微分加群は直和である。各基底元に任意の値を指定する写像では、非零値の台を有限にする必要はない。一方、一つの $dx$ は $x$ の有限単項式表示から得られ、有限個の $db$ の線形結合になる。例えば無限 $p$ 基底の全要素へ $1$ を指定した導分も存在するが、微分加群に「全基底の和」という元があるわけではない。

独立性と微分独立性の両方向

添字付き微分族による判定

任意の部分集合 $C\subset k$ について、$C$ が $K$ 上 $p$ 独立であることと、添字付き族 $(dc)_{c\in C}$ が $k$ 上線形独立であることは同値である。さらに $C$ が $p$ 基底であることと、この微分族が $\Omega_{k/K}$ の基底であることも同値である。

$p$ 独立なら存在定理で $p$ 基底へ拡張できる。その微分族は前定理の基底であり、部分族 $(dc)$ も独立である。
逆に $C$ が $p$ 独立でないとする。有限部分集合 $c_1,\ldots,c_r$ の制限単項式に従属関係がある。これらを順番に体へ添加すると、全段が次数 $p$ なら単項式が基底になるので矛盾する。従ってある $c_i$ が $K(c_1,\ldots,c_{i-1})$ に属する。
$c_i$ は先行元の有理式 $f/g$ として書ける。導分の積則から $d(g^{-1})=-g^{-2}dg$、従って
$$ d(f/g)=g^{-1}df-fg^{-2}dg $$
である。係数体の微分は零なので、$dc_i$ は先行する $dc_j$ の $k$ 線形結合になる。これは係数 $1$ を持つ非自明な依存関係であり、微分族は独立でない。
最後に微分族が基底である場合、既に示した独立性から $C$ を $p$ 基底 $B$ に拡張する。もし $B\setminus C$ が非空なら、その元の微分は基底 $(db)_{b\in B}$ の他の元の線形結合になれない。しかし $(dc)$ が全体を張るという仮定はそのような線形結合を要求する。矛盾するので $C=B$ となる。逆向きは前定理である。

ここで「微分の集合」として重複を消してはいけない。$k=\mathbf F_p(t)$、$K=k^p$、$C=\{t,t+1\}$ とすると、二つの元は $p$ 従属である。一方 $d(t+1)=dt$ だから、重複を消した集合は $\{dt\}$ となり独立である。添字付きの二つのベクトル $dt,d(t+1)$ なら差が零であり、正しく従属を検出する。

一般の基礎体に対する相対基底

任意の部分体 $F\subset k$ に対しては、$k^p\subset F$ とは限らない。この場合の相対 $p$ 基底は、まず係数体を
$$ K=k^pF $$
へ置き換えて定義する。これは $k^p$ と $F$ の合成体である。実際、環 $k^p[F]$ の非零元 $a$ は $a^p\in k^p$ を満たし、$a^{-1}=a^{p-1}/a^p$ が同じ環に入るので、既に体となる。
$k/F$ の相対 $p$ 基底とは、$k/K$ の $p$ 基底である。従って生成条件は $k=F k^p(B)$ であり、一般に $k=F(B)$ を要求するものではない。$F$ 導分は全て $k^p$ を殺すので $K$ 導分でもあり、逆も成立する。ゆえに
$$ \operatorname{Der}_F(k,M)=\operatorname{Der}_K(k,M),\qquad \Omega_{k/F}\cong\Omega_{k/K} $$
であり、前節までの基底対応をそのまま適用できる。

基礎体を係数に含めない定義の反例

$k=\mathbf F_p(t)$、$F=k$ とする。相対 $p$ 基底は空集合であり、$\Omega_{k/k}=0$ である。しかし係数を常に $k^p$ に固定してしまうと $\{t\}$ が基底になり、微分次元を $1$ と誤って計算する。絶対基底と指定された基礎体に対する相対基底は別物である。

また $k^p\subset F$ を仮定しないまま「制限単項式が $F$ 基底」とだけ定義しても、一般の相対基底とは異なる。例えば $F=\mathbf F_p(t^{p^2})\subset k=\mathbf F_p(t)$ では $[k:F]=p^2$ だが、$k^pF=k^p=\mathbf F_p(t^p)$ なので相対 $p$ 基底は $\{t\}$ であり、制限単項式は $F$ 上の全 $k$ を張らない。$t^p$ はその $p$ 個の単項式の $F$ 線形結合ではない。指数一という仮定を外すと、一回の制限指数では拡大の全次数を表せないことが分かる。

無限 $p$ 次数の具体例

任意の無限集合 $I$ に対し、互いに代数独立な変数 $t_i$ を用いて $k=\mathbf F_p(t_i:i\in I)$ と置く。この体は、有限変数の有理関数体の合併として定義される。$k^p=\mathbf F_p(t_i^p:i\in I)$ であり、$B=\{t_i:i\in I\}$ は絶対 $p$ 基底である。
生成性は有限有理式 $f/g$ について $g^{-1}=g^{p-1}/g^p$ を使い、分母 $g^p$ を係数体へ移せば確認できる。独立性は、有限関係の全係数の分母を払って多項式関係にすることで確認できる。係数多項式の各指数は $p$ の倍数であり、それに制限単項式の指数を足すと、各変数の指数の $p$ を法とした剰余がその制限指数になる。異なる制限指数の項は同じ通常単項式へ重ならない。多項式環の単項式の独立性から全係数が零になる。
この例では $\Omega_{k/\mathbf F_p}=\bigoplus_{i\in I}k\,dt_i$ であり、任意の族 $v_i\in M$ が導分を定める。有限台は元の表示と微分加群の元に課される条件であって、導分が基底へ取る値に課される条件ではない。有限 $p$ 次数を前提とする行列や行列式だけでは、この例は扱えない。

代数独立と同じではない

代数的な元からなる $p$ 基底

$K=\mathbf F_p(s)$ とし、$a^p=s$ を満たす $a$ を添加して $k=K(a)$ とする。$s$ は $K$ の $p$ 乗ではない。もし $s=(f(s)/g(s))^p$ なら、$s$ における零点の位数は左辺が $1$、右辺が $p$ の倍数となり矛盾する。一元添加の既約性の計算により $[k:K]=p$ であり、$k^p=\mathbf F_p(s)=K$ となる。従って $\{a\}$ は $k/K$ の $p$ 基底だが、$a^p-s=0$ という代数関係を持つ。$p$ 独立は通常の代数独立を意味しない。

逆に、代数独立な元でも $p$ 独立とは限らない。$k=\mathbf F_p(t)$ において $t^p$ は $\mathbf F_p$ 上超越的であるが、$t^p\in k^p$ なので絶対 $p$ 独立ではない。$t^p$ の微分は零である。比較している係数体を明記せず、超越次数と $p$ 基底の濃度を同一視してはいけない。
完全体は $k=k^p$ を満たすので、絶対 $p$ 基底は空集合となる。逆に空集合が絶対 $p$ 基底なら、その唯一の制限単項式 $1$ が $k$ を $k^p$ 上張るため $k=k^p$ である。従って絶対 $p$ 基底が空であることと完全性は同値である。
超越次数が正でも完全な体は存在する。$\mathbf F_p(t)$ の完全閉包 $\bigcup_{n\ge0}\mathbf F_p(t^{1/p^n})$ では、任意の元が次の段で $p$ 乗根を持つので絶対 $p$ 基底は空である。しかし $t$ は依然として $\mathbf F_p$ 上超越的である。この例は、空の微分基底から代数拡大だと推論することが標数 $p$ ではできないことも示す。

利用の範囲

$p$ 基底上の値を任意に選べるという性質は、導分の延長や係数体の構成で基本となる。特にモニック関係 $X_b^p-b^p$ の微分が零になるため、平方零の計算では $b$ の値に一次の制約が現れない。ただし、体を完備局所環へ実際に持ち上げる問題には、各桁での関係式の整合と逆極限の両立性が別に必要である。本記事の基底定理だけからは、その持上げは従わない。
本記事の各証明で、体の有限生成性、有限 $p$ 次数、完全性は仮定していない。体自身は環として常に Noether だが、その事実を有限な基底が存在する理由には使えない。ここで必要なのは係数体上のベクトル空間次元であり、環のイデアルの有限生成性とは別の量である。

関連項目

参考文献

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