Artin L関数

同義語:ArtinのL関数Artin L-functionArtin L-series

概要

Artin L関数(Artin L-function)とは、代数体の Galois 拡大 $L/K$ の Galois 群の有限次元複素表現 $\rho$ に対し、各素イデアル $\mathfrak{p}$ で惰性群の不変部分への Frobenius 元の作用の固有多項式 $\det(1-\varphi N\mathfrak{p}^{-s})$ の逆数を掛け合わせた関数であり、$\operatorname{Re}s>1$ で絶対収束する。直和で積に、誘導表現で中間体の $L$ 関数に移るので、$\zeta_L$ は既約指標 $\chi$ の Artin L 関数の $\chi(1)$ 乗の積に分解する。1 次元の場合は類体論により Hecke の $L$ 関数と一致する。自明でない既約表現の $L$ 関数が全平面で正則であるという Artin 予想は、一般には未解決である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Frobenius元, 分解群と惰性群, 群の表現, 誘導表現, Dedekindゼータ関数

法 $N$ の Dirichlet 指標 $\chi$ の $L$ 関数は、$N$ を割らない素数 $p$ にわたる Euler 積 $\prod_p(1-\chi(p)p^{-s})^{-1}$ である。円分体 $\mathbb{Q}(\zeta_N)$ の Galois 群は $(\mathbb{Z}/N\mathbb{Z})^\times$ と同型で、$p$ の Frobenius元 は $p\bmod N$ に対応するので、$\chi$ は Galois 群の 1 次元表現とみなせ、$\chi(p)$ は「Frobenius 元での表現の値」になる。Artin はこれを、Galois 群の任意の次元の複素表現 $\rho$ に一般化した。各素イデアルで Frobenius 元の $\rho$ による像の固有多項式を作り、その逆数を掛け合わせたものが Artin L 関数(Artin $L$-function)である。
Artin L 関数は、表現の直和で積に、誘導表現で中間体の $L$ 関数に移るという著しい性質をもつ。これにより Dedekind ゼータ関数 $\zeta_L$ は既約表現の Artin L 関数の積に分解し、アーベル拡大では類体論を通じて Hecke の $L$ 関数と一致する。この記事では、分岐する素イデアルでの局所因子を含めて Artin L 関数を定義し、$\operatorname{Re}s>1$ での収束と、直和・商・誘導についての性質を完全に証明する。例として Dirichlet L 関数と、$x^3-2$ の分解体の 2 次元表現の $L$ 関数を計算する。解析接続と関数等式(Brauer の誘導定理による)と Artin 予想は、主張と所在を述べる。

定義

この記事を通して、$L/K$ を代数体の Galois拡大、$G:=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。$G$ の表現とは、有限次元の複素ベクトル空間 $V$ と準同型 $\rho\colon G\to\mathrm{GL}(V)$ の組のことである(群の表現)。$\rho(\sigma)v$ を $\sigma v$ とも書く。
$\mathcal{O}_K$ の $0$ でない素イデアル $\mathfrak{p}$ について $N\mathfrak{p}:=\lvert\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}\rvert$ とおき、$\mathfrak{p}$ の上の $\mathcal{O}_L$ の素イデアル $\mathfrak{P}$ をとる。分解群を $D_{\mathfrak{P}}$、惰性群を $I_{\mathfrak{P}}$、$r\colon D_{\mathfrak{P}}\to\operatorname{Gal}(\kappa(\mathfrak{P})/\kappa(\mathfrak{p}))$ を剰余体への作用とする(分解群と惰性群)。分解群と惰性群 の系「惰性群の位数と完全列」により $r$ は全射で核は $I_{\mathfrak{P}}$ なので、$r(\varphi)$ が $N\mathfrak{p}$ 乗写像になる $\varphi\in D_{\mathfrak{P}}$ の全体は $I_{\mathfrak{P}}$ の 1 つの剰余類をなす。この剰余類を $\mathfrak{P}$ の Frobenius 剰余類 と呼び、その元を Frobenius 元 と呼ぶ。$\mathfrak{p}$ が不分岐なら $I_{\mathfrak{P}}=1$ で、Frobenius元 の定義「Frobenius元」の $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}$ ただ 1 つである。
$I_{\mathfrak{P}}$ は $D_{\mathfrak{P}}$ の正規部分群なので、$I_{\mathfrak{P}}$ で動かない元の空間 $V^{I_{\mathfrak{P}}}:=\{v\in V\mid\tau v=v\ (\tau\in I_{\mathfrak{P}})\}$ は $D_{\mathfrak{P}}$ の作用で保たれる。Frobenius 元 $\varphi,\varphi'$ は $\varphi'=\varphi\tau$($\tau\in I_{\mathfrak{P}}$)と書けるので、$V^{I_{\mathfrak{P}}}$ の上では $\varphi'$ と $\varphi$ は同じ作用をする。

Artin L関数

$(\rho,V)$ を $G$ の表現とする。$\mathcal{O}_K$ の $0$ でない素イデアル $\mathfrak{p}$ と $\mathfrak{P}\mid\mathfrak{p}$、$\mathfrak{P}$ の Frobenius 元 $\varphi$ について、
$$ L_{\mathfrak{p}}(\rho,s):=\det\bigl(1-\varphi\,N\mathfrak{p}^{-s}\ \big|\ V^{I_{\mathfrak{P}}}\bigr)^{-1} $$
を $\mathfrak{p}$ での 局所因子 という。$\operatorname{Re}s>1$ で
$$ L(L/K,\rho,s):=\prod_{\mathfrak{p}}L_{\mathfrak{p}}(\rho,s) $$
を $\rho$ の Artin L 関数 という($\mathfrak{p}$ は $\mathcal{O}_K$ の $0$ でない素イデアル全体を動く)。$\rho$ の指標を $\chi$ とするとき $L(L/K,\chi,s)$ とも書く。

局所因子は素イデアルの選び方によらない

$L_{\mathfrak{p}}(\rho,s)$ は $\mathfrak{p}$ の上の素イデアル $\mathfrak{P}$ と Frobenius 元 $\varphi$ の選び方によらず、$\rho$ を同型な表現に取り替えても変わらない。

要点:素イデアルを $\sigma\in G$ で取り替えると、分解群・惰性群・Frobenius 元がすべて $\sigma$ で共役になり、$\rho(\sigma)$ が 2 つの不変部分空間のあいだの作用を移す。

詳しい証明を開く

$\varphi$ によらないことは定義の直前に述べた。$\mathfrak{p}$ の上の別の素イデアルは $\sigma\mathfrak{P}$($\sigma\in G$)と書ける(分解群と惰性群 の定理「Galois 群は素イデアルに推移的に作用する」)。同記事の命題「分解群と惰性群の基本性質」の 2 により $D_{\sigma\mathfrak{P}}=\sigma D_{\mathfrak{P}}\sigma^{-1}$、$I_{\sigma\mathfrak{P}}=\sigma I_{\mathfrak{P}}\sigma^{-1}$ であり、$x\in\mathcal{O}_L$ について $\sigma\varphi\sigma^{-1}(x)=\sigma\bigl(\varphi(\sigma^{-1}x)\bigr)\equiv\sigma\bigl((\sigma^{-1}x)^{N\mathfrak{p}}\bigr)=x^{N\mathfrak{p}}\pmod{\sigma\mathfrak{P}}$ なので、$\sigma\varphi\sigma^{-1}$ は $\sigma\mathfrak{P}$ の Frobenius 元である。$\rho(\sigma)$ は $V^{I_{\mathfrak{P}}}$ を $V^{I_{\sigma\mathfrak{P}}}$ に同型に写し、$\rho(\sigma\varphi\sigma^{-1})\rho(\sigma)=\rho(\sigma)\rho(\varphi)$ なので、2 つの行列式は等しい。表現の同型 $V\to V'$ も同じく不変部分空間と Frobenius 元の作用を移す。$\square$

$\mathfrak{p}$ が $L$ で不分岐なら、$L_{\mathfrak{p}}(\rho,s)=\det(1-\rho(\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}})N\mathfrak{p}^{-s})^{-1}$ で、これは Frobenius 類 $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}$($G$ の共役類)の上の $\rho$ の固有多項式で決まる。分岐する素イデアルは有限個なので(差積と分岐 の系「Dedekindの判別式定理」)、局所因子のうち $V^{I_{\mathfrak{P}}}\ne V$ となりうるのは有限個である。

収束

収束と Euler 積

$\delta>0$ とする。$\operatorname{Re}s\ge1+\delta$ で $\sum_{\mathfrak{p}}\log L_{\mathfrak{p}}(\rho,s)$ は絶対かつ一様に収束する($\log L_{\mathfrak{p}}$ は下の級数で定める)。したがって $L(L/K,\rho,s)$ は $\operatorname{Re}s>1$ で正則で、$0$ にならない。

要点:Frobenius 元の固有値は 1 の冪根なので、局所因子の対数は $\dim V\cdot N\mathfrak{p}^{-\operatorname{Re}s}$ の定数倍で抑えられ、$\sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{-\operatorname{Re}s}$ は素数の和と比べて収束する。

詳しい証明を開く

$\varphi$ は有限群 $G$ の元なので $\rho(\varphi)$ の位数は有限であり、$V^{I_{\mathfrak{P}}}$ の上の作用は対角化可能で、固有値 $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_k$($k\le d:=\dim V$)は $1$ の冪根である。よって $L_{\mathfrak{p}}(\rho,s)=\prod_{j=1}^k(1-\varepsilon_jN\mathfrak{p}^{-s})^{-1}$ であり、$$\log L_{\mathfrak{p}}(\rho,s):=\sum_{j=1}^k\sum_{m\ge1}\frac{\varepsilon_j^m\,N\mathfrak{p}^{-ms}}{m}$$とおくと $\exp\log L_{\mathfrak{p}}=L_{\mathfrak{p}}$ である。$c:=\operatorname{Re}s\ge1+\delta$、$x:=N\mathfrak{p}^{-c}\le2^{-c}<\frac12$ とすると、項の絶対値の和は $d\sum_mx^m/m\le d\,x/(1-x)\le2d\,x$ 以下である。$K$ の素イデアルは素数 $\ell$ の上に高々 $n_K:=[K:\mathbb{Q}]$ 個しかなく(代数体における素イデアルの分解 の定理「基本等式」)、そのノルムは $\ell$ 以上なので、$$\sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{-c}\le n_K\sum_{\ell}\ell^{-c}\le n_K\sum_{m\ge2}m^{-1-\delta}<\infty$$である。よって $\sum_{\mathfrak{p}}\log L_{\mathfrak{p}}$ は $\operatorname{Re}s\ge1+\delta$ で絶対かつ一様に収束し、正則関数の一様極限として正則である(Riemannゼータ関数 の補題「正則関数の一様極限」)。その $\exp$ が積 $L(L/K,\rho,s)$ に等しく、$0$ にならない。$\square$

$\rho$ が自明な 1 次元表現 $\mathbf 1$ なら、すべての $\mathfrak{p}$ で $V^{I_{\mathfrak{P}}}=V=\mathbb{C}$、$\varphi$ は恒等的に作用するので $L_{\mathfrak{p}}(\mathbf 1,s)=(1-N\mathfrak{p}^{-s})^{-1}$ であり、Dedekindゼータ関数 の定理「収束と Euler 積」により
$$ L(L/K,\mathbf 1,s)=\zeta_K(s) $$
である。

直和・商・誘導

Artin L 関数の性質の中心は、次の 3 つの両立性である。2 により、表現が Galois 群の商を経由するなら $L$ 関数はその商に対応する部分拡大だけで決まり、3 により中間体の $L$ 関数と行き来できる。

Artin L関数の基本性質

$\operatorname{Re}s>1$ で次が成り立つ。

  1. 直和. $G$ の表現 $V_1,V_2$ について $L(L/K,V_1\oplus V_2,s)=L(L/K,V_1,s)\,L(L/K,V_2,s)$。
  2. 商. $J$ を $G$ の正規部分群、$L':=L^J$ とし、$\operatorname{Gal}(L'/K)=G/J$ の表現 $\bar\rho$ を射影 $G\to G/J$ と合成した $G$ の表現を $\rho$ とすると、$L(L/K,\rho,s)=L(L'/K,\bar\rho,s)$。
  3. 誘導. $H$ を $G$ の部分群、$K':=L^H$、$(\psi,W)$ を $H=\operatorname{Gal}(L/K')$ の表現とすると、$L(L/K',\psi,s)=L\bigl(L/K,\operatorname{Ind}_H^G\psi,s\bigr)$。

1:$(V_1\oplus V_2)^{I}=V_1^{I}\oplus V_2^{I}$ で、Frobenius 元はこの分解を保つので、局所因子の行列式は積に分かれる。
2:$\mathfrak{P}\mid\mathfrak{p}$ を $L$ の素イデアル、$\mathfrak{P}':=\mathfrak{P}\cap\mathcal{O}_{L'}$ とし、$\pi\colon G\to G/J$ を射影とする。$\pi(D_{\mathfrak{P}})=D_{\mathfrak{P}'}$、$\pi(I_{\mathfrak{P}})=I_{\mathfrak{P}'}$ を示す。$\sigma\in D_{\mathfrak{P}}$ は $\mathfrak{P}'$ を保つので $\pi(D_{\mathfrak{P}})\subset D_{\mathfrak{P}'}$ であり、分解群と惰性群 の命題「分解群と惰性群の基本性質」の 3 の記述から $\pi(I_{\mathfrak{P}})\subset I_{\mathfrak{P}'}$ である。同命題の 4 により、$\pi$ の $D_{\mathfrak{P}}$ 上の核 $D_{\mathfrak{P}}\cap J$ は $L/L'$ での分解群で位数 $e(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{P}')f(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{P}')$、$I_{\mathfrak{P}}$ 上の核 $I_{\mathfrak{P}}\cap J$ は $L/L'$ での惰性群で位数 $e(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{P}')$ である(同記事の系「惰性群の位数と完全列」)。分岐指数と剰余次数の乗法性(代数体における素イデアルの分解 の命題「分岐指数と剰余次数の乗法性」)から像の位数は $e(\mathfrak{P}'\mid\mathfrak{p})f(\mathfrak{P}'\mid\mathfrak{p})=\lvert D_{\mathfrak{P}'}\rvert$ と $e(\mathfrak{P}'\mid\mathfrak{p})=\lvert I_{\mathfrak{P}'}\rvert$ なので、包含は等号である。よって $V^{I_{\mathfrak{P}}}=V^{I_{\mathfrak{P}'}}$($I_{\mathfrak{P}}$ は $\pi$ を通して作用する)であり、$\mathfrak{P}$ の Frobenius 元 $\varphi$ は $\kappa(\mathfrak{P}')\subset\kappa(\mathfrak{P})$ の上でも $N\mathfrak{p}$ 乗写像を引き起こすので、$\pi(\varphi)$ は $\mathfrak{P}'$ の Frobenius 元である。局所因子が一致する。
3:各 $\mathfrak{p}$ について、$\operatorname{Ind}_H^G\psi$ の局所因子が $\mathfrak{p}$ の上の $K'$ の素イデアル $\mathfrak{q}$ たちでの $\psi$ の局所因子の積に等しいことを示せばよい。証明は、分解群への制限を Mackey の分解公式で分け、各成分を「巡回群の誘導表現の固有多項式」の計算に帰着させる。

詳しい証明を開く

記号.$\mathfrak{P}\mid\mathfrak{p}$ を固定し、$D:=D_{\mathfrak{P}}$、$I:=I_{\mathfrak{P}}$、$\varphi$ を Frobenius 元、$T:=N\mathfrak{p}^{-s}$、$V:=\operatorname{Ind}_H^GW$ とする。$D/I$ は $\varphi I$ で生成される巡回群である。$\Sigma$ を両側剰余類 $D\backslash G/H$ の代表系とし、$g\in\Sigma$ について $D_g:=D\cap gHg^{-1}$、$I_g:=I\cap D_g$、$f_g:=[D:D_gI]$ とおく。$W$ に $x\in D_g$ を $\psi(g^{-1}xg)$ で作用させた $D_g$ の表現を ${}^gW$ と書く。

段 1:$K'$ の素イデアル.$g\in G$ に $\mathfrak{q}_g:=(g^{-1}\mathfrak{P})\cap\mathcal{O}_{K'}$ を対応させると、$\mathfrak{q}_g=\mathfrak{q}_{g'}$ は $g'^{-1}\mathfrak{P}=hg^{-1}\mathfrak{P}$($h\in H$。$L/K'$ での推移性)、すなわち $gh^{-1}g'^{-1}\in D$、すなわち $g'\in DgH$ と同値である。$L/K$ での推移性からこの対応は全射なので、$g\mapsto\mathfrak{q}_g$ は $\Sigma$ から $\mathfrak{p}$ の上の $K'$ の素イデアル全体への全単射である。

段 2:$\mathfrak{q}_g$ での $\psi$ の局所因子.$\mathfrak{Q}:=g^{-1}\mathfrak{P}$ とおく。分解群と惰性群 の命題「分解群と惰性群の基本性質」の 2・4 により、$L/K'$ での $\mathfrak{Q}$ の分解群と惰性群は $g^{-1}D_gg$ と $g^{-1}I_gg$ である。剰余次数は $f(\mathfrak{q}_g\mid\mathfrak{p})=f(\mathfrak{Q}\mid\mathfrak{p})/f(\mathfrak{Q}\mid\mathfrak{q}_g)=\lvert D/I\rvert/\lvert D_g/I_g\rvert=[D:D_gI]=f_g$ である($D_g/I_g\cong D_gI/I$)。$D_gI/I$ は巡回群 $D/I$ の指数 $f_g$ の部分群なので $\varphi^{f_g}I$ で生成され、$\varphi^{f_g}=\varphi_g\tau$($\varphi_g\in D_g$、$\tau\in I$)と書ける。$\varphi_g$ は $\kappa(\mathfrak{P})$ に $N\mathfrak{p}^{f_g}=N\mathfrak{q}_g$ 乗写像を引き起こすので、$g^{-1}\varphi_gg\in H$ は $\mathfrak{Q}$ の($L/K'$ での)Frobenius 元である。$g$ による共役で移すと$$L_{\mathfrak{q}_g}(\psi,s)^{-1}=\det\bigl(1-\varphi_gT^{f_g}\ \big|\ ({}^gW)^{I_g}\bigr)$$である。

段 3:Mackey の分解.誘導表現 の定理「Mackey の分解公式」により、$D$ の表現として $V\cong\bigoplus_{g\in\Sigma}\operatorname{Ind}_{D_g}^D{}^gW$ である。$I$ の不変部分と $\varphi$ の作用はこの分解を保つので、$\det(1-\varphi T\mid V^I)$ は各 $g$ の成分の積である。あとは次の補題を $D'=D_g$、$U={}^gW$ に使えばよい。

補題.$D$ を有限群、$I$ をその正規部分群で $D/I$ が $\varphi I$ で生成される巡回群とし、$D'$ を部分群、$I':=I\cap D'$、$f':=[D:D'I]$、$\varphi^{f'}=\varphi'\tau$($\varphi'\in D'$、$\tau\in I$)とする。$D'$ の表現 $U$ について $\det\bigl(1-\varphi T\mid(\operatorname{Ind}_{D'}^DU)^I\bigr)=\det\bigl(1-\varphi'T^{f'}\mid U^{I'}\bigr)$ である。

(a) $I$ の不変部分.$Y:=\operatorname{Ind}_{D'}^{D'I}U$ とおくと、推移律(誘導表現 の命題「推移律と直和」)により $\operatorname{Ind}_{D'}^DU\cong\operatorname{Ind}_{D'I}^DY=\bigoplus_{j=0}^{f'-1}\varphi^j\otimes Y$ である($1,\varphi,\dots,\varphi^{f'-1}$ は $D/D'I$ の代表系)。$I$ は正規なので $\tau'\in I$ は $\tau'(\varphi^j\otimes y)=\varphi^j\otimes(\varphi^{-j}\tau'\varphi^j)y$ と各成分を保ち、$(\operatorname{Ind}_{D'}^DU)^I=\bigoplus_j\varphi^j\otimes Y^I$ である。次に $X\subset I$ を $I/I'$ の代表系とすると、$X$ は $D'I/D'$ の代表系でもあり $Y=\bigoplus_{x\in X}x\otimes U$ である。$\tau'\in I$、$x\in X$ について $\tau'x=x'\iota$($x'\in X$、$\iota\in I'$)と書けるので、$\Theta(u):=\sum_{x\in X}x\otimes u$ は $U^{I'}$ を $Y^I$ に写す。逆に $y=\sum_xx\otimes u_x\in Y^I$ なら、$I'$ の元で動かないことから $u_1\in U^{I'}$($1\in X$ とする)、$x\in X$ で動かないことから $u_x=u_1$ となり、$y=\Theta(u_1)$ である。$d\in D'$ について $d(x\otimes u)=(dxd^{-1})\otimes du$ で、$dXd^{-1}$ も $I/I'$ の代表系なので、$U^{I'}$ の上で $d\,\Theta(u)=\Theta(du)$ である。よって $\Theta$ は $D'$ の作用と両立する同型 $U^{I'}\cong Y^I$ である。

(b) 行列式.$Y^I$ の基底をとり、$\varphi^j\otimes Y^I$ を第 $j$ ブロックとする。$\varphi$ は第 $j$ ブロックを第 $j+1$ ブロックに恒等的に写し($j< f'-1$)、$\varphi(\varphi^{f'-1}\otimes y)=\varphi'\tau\otimes y=1\otimes\varphi'y$($y\in Y^I$)なので、第 $f'-1$ ブロックを $\varphi'$ の行列 $A$ で第 $0$ ブロックに写す。$1-T\varphi$ の行列で、第 $0$ ブロック列に第 $j$ ブロック列の $T^j$ 倍を $j=1,\dots,f'-1$ について足すと、第 $0$ ブロック列は第 $0$ ブロック行の $1-T^{f'}A$ だけになり、残りは対角が単位行列の下三角になる。よって $\det(1-T\varphi\mid(\operatorname{Ind}U)^I)=\det(1-T^{f'}A)$ で、(a) によりこれは右辺に等しい。

結論.段 2・段 3 と補題($f'=f_g$、$\varphi'=\varphi_g$、$I'=I_g$)から $\det(1-\varphi T\mid V^I)=\prod_{g\in\Sigma}L_{\mathfrak{q}_g}(\psi,s)^{-1}$ で、段 1 によりこれは $\mathfrak{p}$ の上の $K'$ の素イデアルすべての局所因子の積の逆数である。$\mathfrak{p}$ について掛け合わせればよい。$\square$

同じ主張と証明の筋道は Neu99 Chapter VII, Proposition (10.4)(pp. 522–524)にある。上の証明は、そこでの $\operatorname{Ind}$ の剰余類分解を 誘導表現 の Mackey の分解公式に置き換え、補題の (a) を詳しく書いたものである。

Dedekindゼータ関数の分解
  1. $H$ を $G$ の部分群、$K':=L^H$ とすると $\zeta_{K'}(s)=L(L/K,\operatorname{Ind}_H^G\mathbf 1,s)$ である。
  2. $\chi$ を $G$ の既約指標全体にわたらせると
    $$ \zeta_L(s)=\prod_{\chi}L(L/K,\chi,s)^{\chi(1)}=\zeta_K(s)\prod_{\chi\ne\mathbf 1}L(L/K,\chi,s)^{\chi(1)} $$
    である。

1:thm-art-l-functorial の 3 を $\psi=\mathbf 1_H$ に使い、$L(L/K',\mathbf 1,s)=\zeta_{K'}(s)$ を合わせる。2:1 で $H=1$ とすると $\zeta_L=L(L/K,\operatorname{Ind}_1^G\mathbf 1)$ で、$\operatorname{Ind}_1^G\mathbf 1$ は正則表現 $\mathbb{C}[G]$ であり、各既約表現を次元と同じ重複度で含む(指標(表現論) の系「正則表現の分解」)。thm-art-l-functorial の 1 を使えばよい。$\square$

例

Dirichlet L 関数

$N\ge1$ とし、$\zeta_N:=e^{2\pi i/N}$、$a\in(\mathbb{Z}/N\mathbb{Z})^\times$ に $\sigma_a(\zeta_N)=\zeta_N^a$ となる $\sigma_a\in\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_N)/\mathbb{Q})$ を対応させる同型で、法 $N$ の Dirichlet 指標 $\chi$ を $\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_N)/\mathbb{Q})$ の 1 次元表現 $\sigma_a\mapsto\chi(a)$ とみる(円分体、Dirichlet指標)。

Dirichlet L関数はArtin L関数

$\chi$ を法 $N$ の原始的な Dirichlet 指標(Dirichlet指標 の定義「導手と原始指標」)とすると、$\operatorname{Re}s>1$ で
$$ L(\mathbb{Q}(\zeta_N)/\mathbb{Q},\chi,s)=L(s,\chi) $$
である(右辺は Dirichlet L関数)。

$p\nmid N$ なら $p$ は不分岐で、$\operatorname{Frob}_p=\sigma_p$ である(円分体 の命題「円分体のFrobenius元」)。局所因子は $(1-\chi(p)p^{-s})^{-1}$ である。
$p\mid N$ とし、$N=p^aN'$($p\nmid N'$)と書く。$U:=\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_N)/\mathbb{Q}(\zeta_N^{p^a}))=\{\sigma_b\mid b\equiv1\pmod{N'}\}$ とおき、$p$ の上の素イデアル $\mathfrak{P}$ の惰性群 $I$ が $U$ に等しいことを示す。$\mathbb{Q}(\zeta_N^{p^a})$ は 1 の原始 $N'$ 乗根で生成されるので、$p$ はそこで不分岐であり(円分体 の定理「円分体における素数の分解」の 1)、その惰性群は自明である。$\sigma\in I$ は $\mathbb{Q}(\zeta_N)$ の整数環の元を $\mathfrak{P}$ を法として動かさないので、その制限は部分体の素イデアル $\mathfrak{P}\cap\mathbb{Q}(\zeta_N^{p^a})$ の惰性群に入り、自明である。よって $I\subset U$ である。同定理により $\lvert I\rvert=e=\lvert(\mathbb{Z}/p^a\mathbb{Z})^\times\rvert$ であり、$\lvert U\rvert=\lvert(\mathbb{Z}/N\mathbb{Z})^\times\rvert/\lvert(\mathbb{Z}/N'\mathbb{Z})^\times\rvert=\lvert(\mathbb{Z}/p^a\mathbb{Z})^\times\rvert$ なので $I=U$ である。
$\chi$ は原始的なので法 $N'$ では定まらず、$b\equiv1\pmod{N'}$、$\gcd(b,N)=1$ で $\chi(b)\ne1$ となる $b$ がある。よって $\chi$ は $I$ の上で自明でなく、$V^I=0$ で局所因子は $1$ である。一方 $L(s,\chi)$ の Euler 積(Dirichlet L関数 の命題「Euler 積」)では $\chi(p)=0$ なので因子は $1$ である。両辺の Euler 積が一致する。$\square$

原始的でない $\chi$ では、$\chi$ を誘導する原始指標 $\chi^*$(法は $\chi$ の導手 $f$)について、$\chi$ は $\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_f)/\mathbb{Q})$ を経由するので、thm-art-l-functorial の 2 と prop-art-l-dirichlet から $L(\mathbb{Q}(\zeta_N)/\mathbb{Q},\chi,s)=L(s,\chi^*)$ となり、$L(s,\chi)$ とは $N$ を割り $\chi^*$ の導手を割らない素数での有限個の因子だけ異なる。Artin L 関数の分岐する素数での因子は、原始指標の $L$ 関数の因子を自動的に選んでいる。

$x^3-2$ の分解体

$L=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2,\omega)$($\omega=e^{2\pi i/3}$)、$G=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q})\cong S_3$ とする。$S_3$ の既約表現は、自明表現 $\mathbf 1$、符号 $\operatorname{sgn}$、2 次元表現 $\rho$ の 3 つで、$\rho$ の指標は恒等写像・互換・3 次の巡回置換で $2,0,-1$ である(指標(表現論))。

2 次元表現の L 関数

$H:=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}(\sqrt[3]2))$(位数 $2$)とする。$\operatorname{Ind}_H^G\mathbf 1$ は 3 根の置換表現で、指標は $3,1,0$ なので $\operatorname{Ind}_H^G\mathbf 1\cong\mathbf 1\oplus\rho$ である。$\operatorname{sgn}$ は商 $G/A_3=\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\omega)/\mathbb{Q})$ から来る表現で、$\mathbb{Q}(\omega)=\mathbb{Q}(\zeta_3)$ の法 $3$ の原始指標 $\chi_{-3}$ にあたる。cor-art-l-zeta・thm-art-l-functorial の 2・prop-art-l-dirichlet から
$$ \zeta_{\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)}(s)=\zeta(s)\,L(s,\rho),\qquad\zeta_L(s)=\zeta(s)\,L(s,\chi_{-3})\,L(s,\rho)^2 $$
である($L(s,\rho):=L(L/\mathbb{Q},\rho,s)$)。局所因子は次のとおりで、$T:=p^{-s}$ とする(Frobenius 類は Frobenius元 の例「$x^3-2$ の分解体での Frobenius 元」、$p=2,3$ の分解群と惰性群は 分解群と惰性群 の例「$x^3-2$ の分解体と 3 次の対称群」による)。

$p$Frobenius 類($p=2,3$ は $(D,I)$)$L_p(\rho,s)^{-1}$
$p\equiv2\pmod3$互換$1-T^2$
$p\equiv1\pmod3$、$2$ が 3 乗剰余恒等写像$(1-T)^2$
$p\equiv1\pmod3$、$2$ が 3 乗剰余でない3 次の巡回置換$1+T+T^2$
$p=2$$(S_3,A_3)$$1$
$p=3$$(S_3,S_3)$$1$
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不分岐な行は、$\rho(\varphi)$ の固有値が互換で $\pm1$、恒等写像で $1,1$、3 次の巡回置換で $\omega,\omega^2$(跡 $-1$、位数 $3$)であることによる。$p=2$ では $I=A_3$ で、$\rho$ の $A_3$ への制限は $A_3$ の 2 つの自明でない指標の和なので $V^I=0$ である。$p=3$ では $I=S_3$ で、$\rho$ は自明表現を含まないので $V^I=0$ である。検算として、$p\equiv2\pmod3$ では $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ で $p$ が剰余次数 $1$ と $2$ の 2 個の素イデアルに分かれるので、$\zeta_{\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)}$ の $p$ での因子は $(1-T)^{-1}(1-T^2)^{-1}$ で、$\zeta(s)L(s,\rho)$ の因子 $(1-T)^{-1}(1-T^2)^{-1}$ と一致する。$p=2$ では $2$ は $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ で完全分岐($e=3$)するので因子は $(1-T)^{-1}$ で、$L_2(\rho,s)=1$ と合う。

$\rho=\operatorname{Ind}_{A_3}^{S_3}\psi$($\psi$ は $A_3$ の自明でない指標)でもあるので、thm-art-l-functorial の 3 により $L(s,\rho)=L(L/\mathbb{Q}(\omega),\psi,s)$ は 2 次体 $\mathbb{Q}(\omega)$ 上の巡回 3 次拡大の 1 次元の Artin L 関数でもある。

アーベル拡大と類体論

$L/K$ がアーベル拡大なら既約表現は 1 次元の指標 $\chi\colon G\to\mathbb{C}^\times$ である。類体論の Artin 写像を通して $\chi$ は有限位数の Hecke 指標 $\tilde\chi$ を定め(Hecke指標とHecke L関数 の定理「有限位数の Hecke 指標と Galois 群の指標」)、不分岐な $\mathfrak{p}$ で $\tilde\chi(\mathfrak{p})=\chi(\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}})$ である。

アーベル拡大のArtin L関数

$L/K$ をアーベル拡大、$\chi$ を $G$ の単射な指標とすると、$L(L/K,\chi,s)$ は $\tilde\chi$ の Hecke L 関数 $L(s,\tilde\chi)$ に等しい。とくに $\chi\ne\mathbf 1$ なら $L(L/K,\chi,s)$ は全平面に正則に延びる。

アーベルの場合の所在

この記事では証明しない。等式は Neu99 Chapter VII, Theorem (10.6) とその後の注意(pp. 526–527)にあり、分岐する素イデアルで $\chi$ が惰性群の上で自明でないことと、そこで $\tilde\chi$ が分岐することの一致(類体論の導手の理論)を使う。正則性は Hecke の定理(同 Theorem (8.5)、p. 502。Hecke指標とHecke L関数 の節「Tate の学位論文への案内」)による。$\chi$ が単射でないときは、thm-art-l-functorial の 2 で $\ker\chi$ の固定体に移ってから使う。prop-art-l-dirichlet は $K=\mathbb{Q}$、$L=\mathbb{Q}(\zeta_N)$ の場合を、類体論を使わずに確かめたものである。

誘導された指標の正則性

$H$ を $G$ の部分群、$\psi$ を $H$ の自明でない 1 次元の指標とすると、$L(L/K,\operatorname{Ind}_H^G\psi,s)$ は全平面に正則に延びる。

thm-art-l-functorial の 3 により $L(L/K,\operatorname{Ind}_H^G\psi,s)=L(L/L^H,\psi,s)$ である。$\psi$ の核 $J$ は $H$ の正規部分群で $H/J$ は可換なので、2 により右辺は $L^J/L^H$ の単射な指標の $L$ 関数で、thm-art-l-abelian により全平面で正則である。$\square$

ex-art-l-s3 の $L(s,\rho)$ はこの形なので全平面で正則であり、$\zeta_{\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)}/\zeta$ も全平面で正則である。

解析接続と Artin 予想

一般の表現の解析接続は、次の Brauer の誘導定理を通してアーベルの場合に帰着させる。

  • Brauer の誘導定理. 有限群 $G$ の任意の指標は、部分群 $H_j$ の 1 次元の指標 $\psi_j$ から誘導した指標の整数係数の 1 次結合 $\sum_jn_j\operatorname{Ind}_{H_j}^G\psi_j$ である(Neu99 Chapter VII, Theorem (10.3)、p. 522。証明は Ser77 §10.5 Theorem 20(pp. 78–79。§10.4 の Theorem 18 による)にある。この記事では証明しない)。係数 $n_j$ を $0$ 以上にとれない指標があることも同書 Exercise 10.5(p. 79)にある。
    thm-art-l-functorial を負の係数を含む 1 次結合に延ばすと $L(L/K,\chi,s)=\prod_jL(L/L^{H_j},\psi_j,s)^{n_j}$ となり、右辺は thm-art-l-abelian により全平面で有理型である。よって $L(L/K,\chi,s)$ は全平面に有理型に延びる。さらに、無限素点の Γ 因子と導手(Artin導手)を付け加えた完備化は関数等式 $\Lambda(L/K,\chi,s)=W(\chi)\Lambda(L/K,\bar\chi,1-s)$($\lvert W(\chi)\rvert=1$)を満たす(Neu99 Chapter VII, Theorem (12.6)、p. 540。この記事では証明しない)。$n_j$ に負のものがあるので、この方法では正則性は分からない。
Artin予想

$\chi$ が $G$ の自明でない既約指標なら、$L(L/K,\chi,s)$ は全平面で正則である。

$G$ が可換なら thm-art-l-abelian によって正しく、cor-art-l-monomial により、既約表現が 1 次元の指標から誘導されたもの(単項表現)であれば正しい。一般には未解決である(Neu99 Chapter VII, p. 525)。予想が正しければ、cor-art-l-zeta の 2 から $\zeta_L/\zeta_K$ は全平面で正則になる。Artin がこの問題を考えた出発点は、まさにこの商の正則性であった(同 p. 525)。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
局所因子で惰性群の不変部分 $V^{I}$ に制限する$\mathbb{Q}(i)/\mathbb{Q}$、$p=2$、$\rho$ は自明でない 1 次元表現で、$V$ 全体で $\det(1-\varphi T\mid V)$ を作る局所因子が Frobenius 元の選び方によらないこと
Artin 予想で $\chi$ が自明でない$\chi=\mathbf 1$全平面での正則性($\zeta_K$ は $s=1$ に極をもつ)
cor-art-l-zeta の 2 の指数 $\chi(1)$$S_3$ の ex-art-l-s3 で $\zeta(s)L(s,\chi_{-3})L(s,\rho)$ を作る$\zeta_L$ との一致
反例の確認
各行の確認を開く
  1. $2$ は $\mathbb{Q}(i)$ で完全分岐するので $D=I=G=\{1,c\}$($c$ は複素共役)で、剰余体は $\mathbb{F}_2$ なので $1$ と $c$ はどちらも Frobenius 元である。$\rho(c)=-1$ なので $\det(1-\varphi T\mid V)$ は $\varphi=1$ なら $1-T$、$\varphi=c$ なら $1+T$ で、選び方によって変わる。$V^I=0$ に制限すれば $1$ に定まる。
  2. $\zeta_K$ が $s=1$ で極をもつことは Dedekindゼータ関数 の定理「類数公式」による。
  3. $p\equiv1\pmod3$ で $2$ が 3 乗剰余である素数($p=31$ など)では $p$ は $L$ で完全分解し、$\zeta_L$ の因子は $(1-T)^{-6}$ だが、$\zeta(s)L(s,\chi_{-3})L(s,\rho)$ の因子は $(1-T)^{-1}(1-T)^{-1}(1-T)^{-2}=(1-T)^{-4}$ である。Euler 積の因子が一致しない素数があるので、2 つの関数は一致しない($\operatorname{Re}s>1$ で両辺の対数の差を $p^{-s}$ の Dirichlet 級数とみると、係数が $0$ でない)。

補足

幾何的 Frobenius と規約

この記事の Frobenius 元は剰余体に $N\mathfrak{p}$ 乗写像を引き起こす算術的 Frobenius である(Frobenius元 の節「Frobenius写像との関係」)。その逆元(幾何的 Frobenius)で局所因子を定める文献もあり、そのときの $L$ 関数は双対表現 $\rho^\vee$ の Artin L 関数に等しい。$\ell$ 進表現など、像が有限とは限らない Galois表現 の $L$ 関数も同じ形の局所因子で定められるが、この記事では扱わない。

関連項目

参考文献

[1]
Jürgen Neukirch (translated by Norbert Schappacher), Algebraic Number Theory, Springer, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 322, 1999, Chapter VII: Theorem (8.5)(Hecke L 関数の解析接続と正則性、p. 502)、§10 Definition (10.1)(Artin L 関数、p. 518)、Theorem (10.3)(Brauer の定理の主張、p. 522)、Proposition (10.4)(直和・商・誘導、pp. 522–524)、Corollary (10.5)(ゼータ関数の分解、p. 524)、Artin 予想(p. 525)、Theorem (10.6)(アーベル拡大の場合、pp. 526–527)、Theorem (12.6)(関数等式、p. 540)
[2]
Jean-Pierre Serre, Linear Representations of Finite Groups, Springer, 1977, §10.5 Theorem 19・Theorem 20(Brauer の定理、pp. 78–79)と Remarks、Exercise 10.5(p. 79)

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