特別な角の三角関数の値

同義語:trigonometric values at special angles

概要

特別な角の三角関数の値(trigonometric values at special angles)とは、$30^\circ$・$45^\circ$ の倍数や $15^\circ$・$18^\circ$・$22.5^\circ$ など、値を平方根で具体的に書ける角での三角関数の値である。三角定規・加法定理・半角の公式・正五角形から出る。角が $\pi$ の有理数倍のとき、余弦が有理数になるのは $0,\pm\frac12,\pm1$ の 5 通りに限り、これは 2 倍角の公式をくり返すと分母が増え続けることから示せる。一方 $\cos20^\circ$ のように、平方根で書けない値もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角比と鈍角への拡張, 一般角と弧度法, 三角関数の加法定理(高校数学)

高校での出発点:三角定規の角

三角比を習うと、$30^\circ$・$45^\circ$・$60^\circ$ の三角比の値を最初に覚える。これらの角は、2 枚の三角定規(正三角形を半分にした直角三角形と、直角二等辺三角形)の角である。

三角定規から読む値
  • 直角二等辺三角形の辺の比は $1:1:\sqrt2$ である(三平方の定理 で $1^2+1^2=(\sqrt2)^2$)。よって $\cos45^\circ=\sin45^\circ=\dfrac1{\sqrt2}=\dfrac{\sqrt2}2$、$\tan45^\circ=1$ である。
  • 1 辺 $2$ の正三角形を頂点から対辺の中点へ半分に折ると、斜辺 $2$、底辺 $1$、高さ $\sqrt{2^2-1^2}=\sqrt3$ の直角三角形になり、角は $30^\circ$、$60^\circ$、$90^\circ$ である。よって $\cos60^\circ=\sin30^\circ=\dfrac12$、$\sin60^\circ=\cos30^\circ=\dfrac{\sqrt3}2$、$\tan60^\circ=\sqrt3$、$\tan30^\circ=\dfrac1{\sqrt3}$ である。
一般角への広がり

単位円で、$150^\circ$ の点は $30^\circ$ の点を $y$ 軸で折り返した点なので $\cos150^\circ=-\dfrac{\sqrt3}2$、$\sin150^\circ=\dfrac12$ である。$225^\circ$ の点は $45^\circ$ の点を原点について対称に移した点なので $\cos225^\circ=\sin225^\circ=-\dfrac{\sqrt2}2$ である。こうして $30^\circ$ と $45^\circ$ の倍数の角の値はすべて、$0,\ \pm\dfrac12,\ \pm\dfrac{\sqrt2}2,\ \pm\dfrac{\sqrt3}2,\ \pm1$ のどれかになる(図 1)。

単位円の上の、30° の倍数と 45° の倍数の角の点。赤い点は余弦が有理数になる角で、余弦の値は −1、−1/2、0、1/2、1 の 5 つしかない 単位円の上の、30° の倍数と 45° の倍数の角の点。赤い点は余弦が有理数になる角で、余弦の値は −1、−1/2、0、1/2、1 の 5 つしかない
$30^\circ$ や $45^\circ$ の倍数のほかにも、三角関数の加法定理(高校数学) や倍角・半角の公式を使うと、$15^\circ$、$18^\circ$、$22.5^\circ$ などの値が平方根で書ける。この記事では、次の問いに答える。

  1. 平方根で書ける三角関数の値には、どんなものがあるか。→ ex-sav-addition、ex-sav-pentagon、表「平方根で書ける値」
  2. 角の大きさが度数で有理数のとき、余弦の値が有理数になるのはいつか。→ thm-sav-rational
  3. 角の大きさが度数で有理数でも、値が平方根で書けないことはあるか。→ ex-sav-twenty
  4. 値が有理数でも、角が「特別」でないことはあるか。→ ex-sav-345
    高校の計算この記事のボックス大学の言葉
    三角定規・加法定理・半角の公式で値を出すex-sav-addition、ex-sav-pentagon作図できる数(2 次拡大の列)
    2 倍角の公式 $\cos2\theta=2\cos^2\theta-1$ をくり返すthm-sav-rational の証明代数的整数、分母の評価
    $\cos20^\circ$ が 3 次方程式を満たすex-sav-twenty拡大次数が $2$ の冪でない

特別な角と、平方根で書ける値

有理角

角 $\theta$(弧度法)が $\theta=\dfrac pq\pi$($p,q$ は整数、$q\ge1$)の形に書けるとき、$\theta$ を 有理角 という。度数法では、$\theta$ が有理数の度数($15^\circ$、$\frac{360^\circ}7$ など)であることと同じである。

「特別な角」という言葉に決まった定義はないが、高校では $30^\circ$・$45^\circ$ の倍数を指すことが多い。この記事では、値が平方根を使って具体的に書ける有理角をまとめて「特別な角」と呼ぶ。

有理角と、そうでない角
  • $15^\circ=\frac1{12}\pi$、$-135^\circ=-\frac34\pi$、$\frac{360^\circ}7=\frac27\pi$ は有理角である。
  • 弧度法の $1$(約 $57.3^\circ$)は有理角でない。$1=\frac pq\pi$ なら $\pi=\frac qp$ が有理数になるが、$\pi$ は無理数だからである(円周率)。
  • 辺の比が $3:4:5$ の直角三角形の角 $\theta_0$($\cos\theta_0=\frac45$、約 $36.87^\circ$)も有理角でない。これは後の cor-sav-345 で示す。
加法定理と半角の公式で出す値
  • 三角関数の加法定理(高校数学) の例「$75^\circ$ と $15^\circ$ の値」から、$\sin15^\circ=\cos75^\circ=\dfrac{\sqrt6-\sqrt2}4$、$\cos15^\circ=\sin75^\circ=\dfrac{\sqrt6+\sqrt2}4$ である。
  • 加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く の系「半角の公式と次数下げの公式」$\cos^2\dfrac\theta2=\dfrac{1+\cos\theta}2$ で $\theta=45^\circ$ とすると $\cos^222.5^\circ=\dfrac{1+\frac{\sqrt2}2}2=\dfrac{2+\sqrt2}4$ である。$22.5^\circ$ は鋭角で余弦は正なので、$\cos22.5^\circ=\dfrac{\sqrt{2+\sqrt2}}2=0.92387\ldots$ である。同じく $\sin22.5^\circ=\dfrac{\sqrt{2-\sqrt2}}2$ である。
正五角形から出る値

正五角形と黄金比 の系「36° と 72° の余弦」は、正五角形の対角線と辺の比(黄金比 $\varphi=\frac{1+\sqrt5}2$)から
$$ \cos36^\circ=\frac{1+\sqrt5}4,\qquad \cos72^\circ=\sin18^\circ=\frac{\sqrt5-1}4 $$
を示している。$\cos^2+\sin^2=1$ から $\sin36^\circ=\dfrac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4$、$\cos18^\circ=\dfrac{\sqrt{10+2\sqrt5}}4$ も出る。さらに加法定理で $18^\circ-15^\circ=3^\circ$ とすると、$\sin3^\circ=\sin18^\circ\cos15^\circ-\cos18^\circ\sin15^\circ$ も平方根で書ける(数値は $0.052335\ldots$ で、電卓の値と一致する)。

ここまでの値を表にまとめる($0^\circ$ から $90^\circ$ まで。ほかの角の値は単位円の対称性から出る)。

角$\cos$$\sin$出し方
$0^\circ$$1$$0$定義
$15^\circ$$\frac{\sqrt6+\sqrt2}4$$\frac{\sqrt6-\sqrt2}4$加法定理($45^\circ-30^\circ$)
$18^\circ$$\frac{\sqrt{10+2\sqrt5}}4$$\frac{\sqrt5-1}4$正五角形
$22.5^\circ$$\frac{\sqrt{2+\sqrt2}}2$$\frac{\sqrt{2-\sqrt2}}2$半角の公式
$30^\circ$$\frac{\sqrt3}2$$\frac12$三角定規
$36^\circ$$\frac{1+\sqrt5}4$$\frac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4$正五角形
$45^\circ$$\frac{\sqrt2}2$$\frac{\sqrt2}2$三角定規
$54^\circ$$\frac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4$$\frac{1+\sqrt5}4$$90^\circ-36^\circ$
$60^\circ$$\frac12$$\frac{\sqrt3}2$三角定規
$67.5^\circ$$\frac{\sqrt{2-\sqrt2}}2$$\frac{\sqrt{2+\sqrt2}}2$$90^\circ-22.5^\circ$
$72^\circ$$\frac{\sqrt5-1}4$$\frac{\sqrt{10+2\sqrt5}}4$正五角形
$75^\circ$$\frac{\sqrt6-\sqrt2}4$$\frac{\sqrt6+\sqrt2}4$加法定理($45^\circ+30^\circ$)
$90^\circ$$0$$1$定義

表の値のうち有理数なのは、$0^\circ$・$60^\circ$・$90^\circ$ の余弦と、$0^\circ$・$30^\circ$・$90^\circ$ の正弦だけである。ほかの有理角を探しても、余弦が有理数になる角は見つからない。これが次の節の主定理である。

主定理:有理角の余弦が有理数になるのは 5 通りだけ

有理角の有理数の余弦

$\theta$ を有理角とする。$\cos\theta$ が有理数ならば
$$ \cos\theta\in\Bigl\{-1,\ -\frac12,\ 0,\ \frac12,\ 1\Bigr\} $$
である。逆に、この 5 つの値は $\theta=180^\circ,120^\circ,90^\circ,60^\circ,0^\circ$ でとられる。

証明の考え方

2 倍角の公式 $\cos2\varphi=2\cos^2\varphi-1$ の両辺を $2$ 倍すると
$$ 2\cos2\varphi=(2\cos\varphi)^2-2 $$
となる。$x=2\cos\varphi$ とおけば、角を 2 倍することは $x$ を $x^2-2$ に替えることである。この操作をくり返したときの分母の様子を、先に数で見ておく(証明は prf-thm-sav-rational)。

分母が大きくなっていく様子
  1. $\theta=60^\circ$ では $x=2\cos60^\circ=1$ で、$x\mapsto x^2-2$ をくり返すと $1\mapsto-1\mapsto-1\mapsto\cdots$ となる。$2\cdot60^\circ=120^\circ$、$4\cdot60^\circ=240^\circ$、… の $2\cos$ がずっと $-1$ である。
  2. $\cos\theta_0=\frac45$ の角 $\theta_0$ では $x=\frac85$ で、くり返すと
    $$ \frac85\mapsto\frac{64}{25}-2=\frac{14}{25}\mapsto\frac{196}{625}-2=-\frac{1054}{625}\mapsto\cdots $$
    となり、分母が $5,\ 25,\ 625,\dots$ と $2$ 乗ずつ大きくなっていく。
  1. のように値がくり返すのは、角が有理角だからである。(2) のように分母が大きくなり続けると、値は同じものに戻れない。この 2 つがぶつかることを使う。
2 倍角をくり返して分母を見る

方針:$x_k=2\cos(2^k\theta)$($k=0,1,2,\dots$)という数の列を考える。有理角なので、この列は有限個の値しかとらない(段 1)。一方、$x_0$ が整数でない有理数なら、$x_k$ の分母はどこまでも大きくなり、無限個の値をとる(段 2・段 3)。この矛盾から $x_0=2\cos\theta$ は整数であり、$-2\le x_0\le2$ から 5 つの値に絞られる(段 4)。
段 1(列は有限個の値しかとらない)。$\theta=\dfrac pq\pi$($p,q$ は整数、$q\ge1$)とし、$n=2q$ とおくと $\theta=\dfrac{2\pi p}n$ である。$2^kp$ を $n$ で割った余りを $r_k$($0\le r_k\le n-1$)とすると、$2^kp=nm_k+r_k$($m_k$ は整数)なので
$$ 2^k\theta=\frac{2\pi\cdot2^kp}n=2\pi m_k+\frac{2\pi r_k}n $$
である。余弦は周期 $2\pi$ をもつので $x_k=2\cos\dfrac{2\pi r_k}n$ である。$r_k$ は $0,1,\dots,n-1$ の $n$ 通りしかないので、$x_0,x_1,x_2,\dots$ がとる値は高々 $n$ 通りである。
段 2(漸化式)。2 倍角の公式 $\cos2\varphi=2\cos^2\varphi-1$ を $\varphi=2^k\theta$ に使って $2$ 倍すると
$$ x_{k+1}=2\cos(2^{k+1}\theta)=(2\cos(2^k\theta))^2-2=x_k^2-2 $$
である。
段 3(分母は 2 乗ずつ増える)。$x_0$ が有理数だと仮定する($\cos\theta$ が有理数なので、そのとおりである)。$x_0=\dfrac ab$ を既約分数($a,b$ は互いに素な整数、$b\ge1$)で書き、$b\ge2$ と仮定する。段 2 から
$$ x_1=\frac{a^2}{b^2}-2=\frac{a^2-2b^2}{b^2} $$
である。$a^2-2b^2$ と $b^2$ は互いに素である。実際、ある素数 $\ell$ が両方を割り切るとすると、$\ell$ は $b^2$ を割り切るので $b$ を割り切り(素因数分解の一意性)、すると $\ell$ は $2b^2$ も割り切るので $a^2=(a^2-2b^2)+2b^2$ を割り切り、$a$ を割り切る。これは $a,b$ が互いに素であることに反する。よって $x_1$ を既約分数で書いたときの分母は $b^2$ である。同じ議論を $x_1,x_2,\dots$ にくり返すと、$x_k$ を既約分数で書いたときの分母は $b^{2^k}$ である。$b\ge2$ なので $b< b^2< b^4<\cdots$ と分母はすべて異なり、既約分数の書き方はただ 1 通りなので、$x_0,x_1,x_2,\dots$ はすべて異なる数である。これは段 1 に反する。
段 4(結論)。段 3 の矛盾から $b=1$、つまり $x_0=2\cos\theta$ は整数である。$-1\le\cos\theta\le1$ より $-2\le x_0\le2$ なので、$x_0\in\{-2,-1,0,1,2\}$、すなわち $\cos\theta\in\bigl\{-1,-\frac12,0,\frac12,1\bigr\}$ である。逆の主張は、$\cos180^\circ=-1$、$\cos120^\circ=-\frac12$、$\cos90^\circ=0$、$\cos60^\circ=\frac12$、$\cos0^\circ=1$ から分かる。$\square$

2 倍角をくり返して分母を見るこの証明は、Jah10 §3 の証明と同じ考え方である。正弦と正接についても、同じ形の結論が出る。

正弦と正接の場合

$\theta$ を有理角とする。

  1. $\sin\theta$ が有理数ならば、$\sin\theta\in\bigl\{-1,-\frac12,0,\frac12,1\bigr\}$ である。
  2. $\cos\theta\ne0$ で $\tan\theta$ が有理数ならば、$\tan\theta\in\{-1,0,1\}$ である。
余弦の場合に直す

1。$\sin\theta=\cos\bigl(\frac\pi2-\theta\bigr)$ であり、$\theta=\frac pq\pi$ なら $\frac\pi2-\theta=\frac{q-2p}{2q}\pi$ も有理角である。thm-sav-rational をこの角に使えばよい。
2。$t=\tan\theta$ とおく。$\cos2\theta=\cos^2\theta-\sin^2\theta$ を $1=\cos^2\theta+\sin^2\theta$ で割り、分母と分子を $\cos^2\theta$ で割ると
$$ \cos2\theta=\frac{1-t^2}{1+t^2} $$
である。$t$ が有理数ならこれは有理数で、$2\theta$ も有理角なので、thm-sav-rational により $c=\cos2\theta$ は 5 つの値のどれかである。上の式を $t^2$ について解くと $t^2=\dfrac{1-c}{1+c}$ である($c=-1$ なら $1-t^2=-(1+t^2)$ となって $1=-1$ になるので、$c\ne-1$)。$c=1$ なら $t^2=0$、$c=\frac12$ なら $t^2=\frac13$、$c=0$ なら $t^2=1$、$c=-\frac12$ なら $t^2=3$ である。$t$ が有理数のとき $t^2=\frac13$ や $t^2=3$ にはならない($\sqrt3$ は無理数である。実数とは何か:無理数の証明)。よって $t^2\in\{0,1\}$、$t\in\{-1,0,1\}$ である。$\square$

3:4:5 の角は有理角でない

$\cos\theta_0=\frac45$、$\sin\theta_0=\frac35$ の角 $\theta_0$ は有理角でない。

5 つの値に入らない

$\frac45$ は有理数だが $\bigl\{-1,-\frac12,0,\frac12,1\bigr\}$ に入らない。$\theta_0$ が有理角なら thm-sav-rational に反する。$\square$

cor-sav-345 から、点 $(1,0)$ を原点のまわりに角 $\theta_0$ ずつ回していくと、何回回しても $(1,0)$ には戻らない($n\theta_0$ が $2\pi$ の整数倍なら $\theta_0$ は有理角である)。無理数の角だけ回し続ける運動は、最高位の数字とBenfordの法則 で別の形で現れる。

平方根で書けない値

有理角の余弦は、有理数でなくても、表のように平方根で書けることが多い。しかし、いつもそうなるわけではない。ここで「平方根で書ける」とは、有理数から始めて、四則と正の数の平方根をとる操作を有限回くり返して得られることとする。これは、定規とコンパスで長さとして作図できる数(作図できる数)と同じものである(3大作図問題の不可能性 の節「問題を数の言葉に直す」)。

$\cos20^\circ$ は平方根で書けない

3 倍角の公式 $\cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta$(加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く の命題「3 倍角の公式」)で $\theta=20^\circ$ とすると、$\cos60^\circ=\frac12$ なので
$$ 4c^3-3c=\frac12,\qquad c=\cos20^\circ $$
である。$y=2c$ とおいて両辺を $2$ 倍すると $y^3-3y-1=0$ となる。3大作図問題の不可能性 の定理「60° の 3 等分の不可能性」は、この 3 次方程式が有理数の根をもたないことから、$\cos20^\circ$ が作図できないこと、つまり平方根で書けないことを示している。数値は $\cos20^\circ=0.93969\ldots$ で、$y=1.87938\ldots$ を代入すると $6.6381\ldots-5.6381\ldots-1=0.0000\ldots$ となる。
$20^\circ$ は有理角だが、その余弦は平方根では書けない。同じく $\cos\frac{2\pi}7$ も、$2\cos\frac{2\pi}7$ が $y^3+y^2-2y-1=0$ の根であることから平方根で書けない(正多角形の作図可能性 の例「正七角形は作図できない」)。

どの有理角の余弦が平方根で書けるかは、正多角形の作図の問題と同じである。$\cos\frac{2\pi}n$ が平方根で書けることは正 $n$ 角形が作図できることと同値で、それは $n$ が $2$ の冪と相異なる Fermat 素数($3,5,17,257,65537$ など)の積のときに限られる(正多角形の作図可能性 の「Gauss–Wantzel の定理」。この記事では証明しない)。$\cos1^\circ$ は平方根で書けないが、$\cos3^\circ$ は書ける(ex-sav-pentagon)。$360=2^3\cdot3^2\cdot5$ には $3$ が 2 回現れ、$120=2^3\cdot3\cdot5$ には 1 回しか現れないからである。

2 次の無理数になる値

有理角の余弦のうち、有理数でなく、$r+s\sqrt d$($r,s$ は有理数、$d$ は平方数でない正の整数)の形に書けるものは、$\pm\frac{\sqrt2}2$、$\pm\frac{\sqrt3}2$、$\pm\frac14\pm\frac{\sqrt5}4$ の 8 つだけであることが知られている(Jah10 §5 の Observation (ii)、p. 4。この記事では証明しない)。表の $45^\circ$・$30^\circ$・$36^\circ$・$72^\circ$ と、それらを $180^\circ$ から引いた角の値がこれにあたる。$15^\circ$ や $22.5^\circ$ の値は、平方根の中にさらに平方根が入る形($\frac{\sqrt6+\sqrt2}4$ は 2 種類の平方根の和)で、この形には入らない。

例と反例

thm-sav-rational の仮定を外すと結論が崩れることを、表にまとめる。

外す条件反例成り立たなくなること
$\theta$ が有理角であることex-sav-345「$\cos\theta$ が有理数なら 5 つの値のどれか」
$\cos\theta$ が有理数であることex-sav-36「有理角の余弦は 5 つの値のどれか」

有理角の余弦が平方根で書けるとは限らないことは、ex-sav-twenty で見た。

反例:有理角でない角

3:4:5 の角 $\theta_0$ では $\cos\theta_0=\frac45$ は有理数だが、$\frac45$ は 5 つの値のどれでもない。$\theta_0$ は有理角でないので(cor-sav-345)、thm-sav-rational の仮定を満たさない。値が有理数で「きれい」でも、角が有理角とは限らない。この反例は、仮定「$\theta$ は有理角」を外すと「$\cos\theta$ が有理数なら 5 つの値のどれか」が成り立たないことを示す。

反例:値が無理数の有理角

$36^\circ$ は有理角だが、$\cos36^\circ=\frac{1+\sqrt5}4=0.80901\ldots$ は 5 つの値のどれでもない。$\cos36^\circ$ は無理数なので($\sqrt5$ が無理数であるため)、thm-sav-rational の仮定「$\cos\theta$ が有理数」を満たさない。この反例は、その仮定を外すと結論が成り立たないことを示す。

さらに先へ

  • $2\cos\theta$($\theta$ は有理角)は、最高次の係数が $1$ の整数係数の多項式の根になる。このような数を 代数的整数 という。thm-sav-rational は「有理数である代数的整数は整数に限る」という事実の特別な場合として見ることができる(Jah10 §4)。$n\ge3$ のとき、$2\cos\frac{2\pi}n$ を根にもつ最小の多項式の次数は $\frac{\varphi(n)}2$ で、これが $1$ になる $n=3,4,6$ と、$n=1,2$ が thm-sav-rational の 5 つの値に対応する(正多角形の作図可能性 の「次数についての 2 つの事実」)。
  • $\cos n\theta$ を $\cos\theta$ の多項式で表したものは Chebyshev多項式 である。証明の段 2 の $x\mapsto x^2-2$ は、その $n=2$ の場合を $2\cos$ で書いたものである。
  • 正多角形と三角関数の値の関係は 正多角形の作図可能性 と 1の冪根 で、大学では Galois理論 の言葉で扱う。

関連項目

参考文献

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