アフィンWeyl群

同義語:アフィンワイル群affine Weyl group

概要

アフィンWeyl群(affine Weyl group)とは、ルート系 $R$ の各ルート $\alpha$ と整数 $k$ について、超平面 $(\alpha,x)=k$ に関する鏡映が生成する Euclid 空間のアフィン変換の群である。余ルート格子による平行移動の群と有限 Weyl 群の半直積に分解し、鏡映の超平面の族は局所有限で群の作用で保たれる。超平面の補集合の連結成分(アルコーブ)全体に推移的に作用し、1 つのアルコーブの壁に関する鏡映で生成される無限 Coxeter 群であり、そのアルコーブによる空間の分割は、$p$ 進体上の行列の群に付随するアフィン型の建物のアパートメントとして現れる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ルート系, Coxeter系, 半直積, 等長写像

アフィンWeyl群 は、ルート系の各ルート $\alpha$ について、原点を通る超平面 $(\alpha,x)=0$ だけでなく、それを平行移動した超平面 $(\alpha,x)=k$($k\in\mathbb{Z}$)すべての鏡映で生成される Euclid 空間の等長変換の群である。もっとも簡単な例では、数直線上で各整数を中心とする折り返し $x\mapsto2k-x$ が生成する群になり、2 つの折り返しの合成として平行移動 $x\mapsto x+2$ が現れる。平面の $A_2$ 型では、超平面は 3 方向の平行線の族で、平面を正三角形に敷きつめる。
有限の Weyl群 が原点の周りの「部屋」に単純推移的に作用するのに対し、アフィン Weyl 群は空間全体を敷きつめる部屋(アルコーブ)に推移的に作用し、1 つのアルコーブの壁に関する鏡映で生成される。群としては、余ルートが生成する格子の平行移動と有限 Weyl 群の 半直積 である。アフィン Weyl 群は無限の Coxeter系 の代表例であり、$p$ 進体上の行列の群の Bruhat 分解に Weyl 群として現れ、そのアルコーブの分割は、その群が作用するアフィン型の Titsの建物 のアパートメントになる。

定義

この記事を通して、$V$ を正定値な内積 $(\ ,\ )$ をもつ有限次元の実ベクトル空間、$R\subset V$ を ルート系 の定義「ルート系」の意味のルート系((RS1)〜(RS4) を満たす有限集合)、$W$ を $R$ の Weyl 群とする。$\alpha\in R$ の 余ルート を $\alpha^\vee:=2\alpha/(\alpha,\alpha)$ と定めると、鏡映は $s_\alpha(x)=x-(\alpha,x)\alpha^\vee$ と書ける。余ルートが生成する $V$ の部分群を $Q^\vee:=\sum_{\alpha\in R}\mathbb{Z}\alpha^\vee$ と書き、余ルート格子 という。$\lambda\in V$ による平行移動を $t_\lambda(x):=x+\lambda$ と書く。

アフィンWeyl群

$\alpha\in R$、$k\in\mathbb{Z}$ について、超平面とその鏡映を
$$ H_{\alpha,k}:=\{x\in V\mid(\alpha,x)=k\},\qquad s_{\alpha,k}(x):=x-\bigl((\alpha,x)-k\bigr)\alpha^\vee $$
と定め、$\mathcal{H}:=\{H_{\alpha,k}\mid\alpha\in R,\ k\in\mathbb{Z}\}$ とおく。$s_{\alpha,k}$($\alpha\in R$、$k\in\mathbb{Z}$)全体が生成する $V$ のアフィン変換の群 $W_a$ を、$R$ の アフィンWeyl群(affine Weyl group)という。

$s_{\alpha,k}$ は $H_{\alpha,k}$ の各点を固定し、$\alpha$ 方向のベクトルを反転する。すなわち $H_{\alpha,k}$ に関する直交鏡映であり、$s_{\alpha,k}^2=\mathrm{id}$ である。$H_{\alpha,k}=H_{-\alpha,-k}$、$s_{\alpha,0}=s_\alpha$ であり、$W\subset W_a$ である。

アルコーブと壁

$V^\circ:=V\setminus\bigcup_{H\in\mathcal{H}}H$ の 連結成分 を アルコーブ(alcove)という。$H\in\mathcal{H}$ が アルコーブ $A$ の 壁 であるとは、$A$ の閉包と $H$ の共通部分に、$H$ 以外のどの $H'\in\mathcal{H}$ にも属さない点があることをいう。

階数 1:数直線の折り返し

$V=\mathbb{R}$(通常の内積)、$R=\{\pm1\}$ とする。$\alpha=1$ の余ルートは $\alpha^\vee=2$ で、$H_{\alpha,k}=\{k\}$、$s_{\alpha,k}(x)=2k-x$ である。$s_{\alpha,k}s_{\alpha,l}(x)=x+2(k-l)$ なので、$W_a=\{x\mapsto x+2m,\ x\mapsto-x+2m\mid m\in\mathbb{Z}\}$ であり、$Q^\vee=2\mathbb{Z}$ である。アルコーブは開区間 $(k,k+1)$ で、$(0,1)$ の壁は $0$ と $1$ である。2 つの壁の鏡映 $s_0(x)=-x$、$s_1(x)=2-x$ の積 $s_1s_0=t_2$ は無限位数で、$W_a$ は Coxeter系 の例「無限二面体群」の群である。$W_a$ の元のうち $(0,1)$ を $(k,k+1)$ に写すものはただ 1 つであり、アルコーブとその端点の配置は Coxeter複体 の例「無限二面体群のCoxeter複体」の直線の分割と同じである。

構造:平行移動と有限 Weyl 群

アフィンWeyl群の構造
  1. $s_{\alpha,k}=t_{k\alpha^\vee}\circ s_\alpha$ であり、$t_{\alpha^\vee}=s_{\alpha,1}\circ s_{\alpha,0}$ である。
  2. 平行移動の群 $T(Q^\vee):=\{t_\lambda\mid\lambda\in Q^\vee\}$ は $W_a$ の正規部分群であり、$W_a=T(Q^\vee)\rtimes W$ である。すなわち $W_a$ の各元は $t_\lambda w$($\lambda\in Q^\vee$、$w\in W$)とただ 1 通りに書ける。とくに $R\ne\emptyset$ なら $W_a$ は無限群である。
  3. $W_a$ の各元は $\mathcal{H}$ の元を $\mathcal{H}$ の元に写し、$g\in W_a$、$H\in\mathcal{H}$ について $g\,s_H\,g^{-1}=s_{gH}$ である($s_H$ は $H$ に関する鏡映)。$\mathcal{H}$ は 局所有限 である。すなわち $V$ の有界集合と交わる $H\in\mathcal{H}$ は有限個である。
  4. $W_a$ の各元はアルコーブをアルコーブに写す。原点の固定部分群は $W$ である。

1:$s_{\alpha,k}(x)=x-(\alpha,x)\alpha^\vee+k\alpha^\vee=s_\alpha(x)+k\alpha^\vee$ である。$k=1$ の式を $s_\alpha(x)$ に当てると $s_{\alpha,1}(s_\alpha(x))=s_\alpha(s_\alpha(x))+\alpha^\vee=x+\alpha^\vee$ である。
2:$w\in W$ は内積を保ち $R$ を $R$ に写すので $w(\alpha^\vee)=(w\alpha)^\vee$ であり、$w(Q^\vee)=Q^\vee$ である。$wt_\lambda w^{-1}=t_{w\lambda}$ なので、$T(Q^\vee)$ と $W$ が生成する群 $G$ は $G=T(Q^\vee)W$ で、$T(Q^\vee)$ は $G$ の正規部分群である。1 により $W_a$ の生成元 $s_{\alpha,k}$ は $G$ に属し、$G$ の生成元 $s_\alpha=s_{\alpha,0}$ と $t_{\alpha^\vee}$ は $W_a$ に属するので、$W_a=G$ である。$t_\lambda w=t_\mu w'$ なら、両辺を原点で評価して $\lambda=\mu$($w$ は線形で原点を固定する)、よって $w=w'$ である。$R\ne\emptyset$ なら $\alpha^\vee\ne0$ で、$t_{m\alpha^\vee}$($m\in\mathbb{Z}$)は互いに異なる。
3:$w\in W$ について $w(H_{\alpha,k})=H_{w\alpha,k}$ である。$\lambda=\beta^\vee$($\beta\in R$)について
$$ t_{\beta^\vee}(H_{\alpha,k})=\{y\mid(\alpha,y-\beta^\vee)=k\}=H_{\alpha,\,k+(\alpha,\beta^\vee)} $$
であり、$(\alpha,\beta^\vee)=2(\alpha,\beta)/(\beta,\beta)$ は (RS3) により整数なので、これも $\mathcal{H}$ に属する。$W_a$ はこれらとその逆元で生成されるから、$\mathcal{H}$ を $\mathcal{H}$ に写す。$g(x)=Px+b$($P$ は直交変換)、$H=\{x\mid(x-p,e)=0\}$($e$ は単位法ベクトル)とすると、$s_H(x)=x-2(x-p,e)e$ で、$(g^{-1}y-p,e)=(y-gp,Pe)$ から
$$ g\,s_H\,g^{-1}(y)=y-2(y-gp,Pe)\,Pe $$
となる。$gH$ は $gp$ を通り $Pe$ を単位法ベクトルとする超平面なので、これは $s_{gH}$ である。局所有限性:$\|x\|\le\rho$ なら $\lvert(\alpha,x)\rvert\le\rho\|\alpha\|$ なので、$H_{\alpha,k}$ がこの球と交わる $k$ は各 $\alpha$ について有限個で、$R$ は有限である。
4:3 により $g\in W_a$ は $V$ の同相写像で $\bigcup_{H\in\mathcal{H}}H$ を保つから、$V^\circ$ を $V^\circ$ に写し、連結成分を連結成分に写す。$t_\lambda w(0)=\lambda$ なので、原点を固定するのは $\lambda=0$、すなわち $W$ の元である。$\square$

2 の分解では、$t_\lambda w$ の線形部分が $w$、平行移動部分が $\lambda$ である。線形部分をとる写像 $W_a\to W$ は準同型で、核が $T(Q^\vee)$ である。ex-awg-a1 では $W=\{\pm1\}$、$Q^\vee=2\mathbb{Z}$ である。

アルコーブと壁の鏡映

一般の位置の点

$n:=\dim V\ge1$ とする。

  1. $V$ の空でない開集合は、次元が $n$ より小さい可算個のアフィン部分空間の和集合に含まれない。
  2. $a\in V^\circ$ とアルコーブ $A'$ について、線分 $[a,a']$ がどの $H\cap H'$($H\ne H'\in\mathcal{H}$)とも交わらない $a'\in A'$ がある。
  3. 各 $H\in\mathcal{H}$ は、$H$ 以外のどの $H'\in\mathcal{H}$ にも属さない点を含む。

要点:次元の低いアフィン部分空間は測度 $0$ で、$\mathcal{H}$ は可算である。

詳しい証明を開く

1:次元が $n$ より小さいアフィン部分空間は Lebesgue測度 が $0$ であり、可算個の和集合も測度 $0$ である。空でない開集合は正の測度をもつ。

2:$R$ は有限で $k\in\mathbb{Z}$ なので $\mathcal{H}$ は可算である。$H\ne H'$ なら $L:=H\cap H'$ は空(平行なとき)か次元 $n-2$ のアフィン部分空間で、$a\notin L$ である。$[a,a']$ が $L$ の点 $q$ を通るなら、$a'$ は $a$ と $q$ を通る直線上にあり、$\{a\}\cup L$ が張るアフィン部分空間(次元 $n-1$ 以下)に属する。よって条件を満たさない $a'$ は可算個の次元 $n-1$ 以下のアフィン部分空間に含まれ、1 により空でない開集合 $A'$ は条件を満たす点を含む。

3:$n=1$ なら $H$ は 1 点で、ほかの $H'$ は別の点である。$n\ge2$ なら $H'\ne H$ について $H\cap H'$ は空か $H$ の中の次元 $n-2$ の部分空間なので、$H$($n-1$ 次元のアフィン空間)に 1 を当てればよい。$\square$

アルコーブへの推移性と壁の鏡映による生成

$A$ をアルコーブとし、$A$ の壁に関する鏡映の全体を $S_A$ とする。

  1. $W_a$ はアルコーブ全体の集合に推移的に作用する。
  2. $W_a$ は $S_A$ で生成される。

段 1:一般の位置の線分。 $a\in A$ を固定し、$A'$ を任意のアルコーブとする。lem-awg-generic の 2 により、$[a,a']$ がどの $H\cap H'$ とも交わらない $a'\in A'$ をとる。線分は有界なので、thm-awg-structure の 3 により交わる $H\in\mathcal{H}$ は有限個である。$a\notin H$ なので、$H$ を定めるアフィン関数は線分上で恒等的に $0$ でなく、各 $H$ は線分と高々 1 点で交わる。交点を $a$ に近い順に $p_1,\dots,p_m$ とし、$p_i$ を通る超平面を $H_i$ とする。$a'$ の選び方から $p_i$ は $H_i$ 以外の超平面にのらず、$p_i$ は互いに異なる。隣り合う交点の間の開線分は $V^\circ$ の連結な部分集合なので 1 つのアルコーブに含まれる。それらを順に $A=A_0,A_1,\dots,A_m=A'$ とする。
段 2:隣のアルコーブへの移り方。 $p_i$ を中心とする十分小さい開球 $B$ をとると、$B$ は $H_i$ 以外の超平面と交わらない($p_i$ の近くと交わる超平面は有限個で、$H_i$ 以外は $p_i$ を含まないので正の距離にある)。$B\setminus H_i$ は 2 つの開いた半球 $B^-,B^+$ からなり、それぞれ凸で $V^\circ$ に含まれるので 1 つのアルコーブに含まれる。$H_i$ のアフィン関数は線分上 $p_i$ で符号を変えるので、$p_i$ の直前の点を含む半球を $B^-$ とすると $B^-\subset A_{i-1}$、$B^+\subset A_i$ である。$p_i$ は $A_{i-1}$ と $A_i$ の閉包に属し $H_i$ だけにのるので、$H_i$ は $A_{i-1}$ と $A_i$ の壁である。鏡映 $s_{H_i}$ は $p_i$ を固定し、$B$ を保って $B^-$ と $B^+$ を入れ替える。thm-awg-structure の 4 により $s_{H_i}(A_{i-1})$ は $B^+$ を含むアルコーブなので、$s_{H_i}(A_{i-1})=A_i$ である。とくに $A'=s_{H_m}\cdots s_{H_1}(A)$ となり、1 が示された。
段 3:$S_A$ が生成する群も推移的である。 $W':=\langle S_A\rangle$ とする。$g\in W_a$ は $\mathcal{H}$ を保つ同相写像なので、$H$ がアルコーブ $C$ の壁なら $gH$ は $gC$ の壁である。$A_{i-1}=wA$($w\in W'$)と仮定する。$H_i$ は $A_{i-1}$ の壁なので $w^{-1}H_i$ は $A$ の壁で、$s:=s_{w^{-1}H_i}\in S_A$ である。thm-awg-structure の 3 により $s_{H_i}=wsw^{-1}$ なので、$A_i=s_{H_i}wA=(ws)A$、$ws\in W'$ である。$A_0=A$ から始めて帰納すると、$A'=A_m$ は $W'$ の元で $A$ から得られる。
段 4:$W'=W_a$。 $H\in\mathcal{H}$ をとる。lem-awg-generic の 3 により、$H$ だけにのる点 $p\in H$ がある。段 2 と同じく $p$ の周りの小さい開球は $H$ だけで 2 つに分かれ、その一方を含むアルコーブ $C$ は $H$ を壁にもつ。段 3 により $C=wA$($w\in W'$)と書け、$w^{-1}H$ は $A$ の壁なので $s_H=w\,s_{w^{-1}H}\,w^{-1}\in W'$ である。$W_a$ は $s_H$($H\in\mathcal{H}$)で生成されるので $W_a=W'$ である。$\square$

この定理の証明は、Gar97 §12.2(pp. 178–179)の推移性の証明(壁で隔てられたアルコーブを 1 枚ずつ越える議論)と同じ考え方を、一般の位置の線分で組み立てたものである。さらに次が成り立つ。

単純推移性とCoxeter系(引用)

$A$ をアルコーブ、$S_A$ を $A$ の壁に関する鏡映の全体とする。

  1. $W_a$ はアルコーブ全体に単純推移的に作用する。$w\in W_a$ の $S_A$ に関する長さは、$A$ と $wA$ を隔てる $H\in\mathcal{H}$ の個数に等しい。
  2. $(W_a,S_A)$ は Coxeter 系である。
  3. $V=\bigcup_{w\in W_a}w(\bar A)$ であり、$x,y\in\bar A$、$wx=y$ なら $x=y$ である($\bar A$ は $A$ の閉包)。
  4. $R$ が既約で $n=\dim V$ なら、$A$ は $n$ 次元の開単体で、壁はちょうど $n+1$ 枚である。基 $\Delta$ に対して、壁が $H_{\alpha,0}$($\alpha\in\Delta$)ともう 1 枚の超平面であるアルコーブがある。
引用した定理の出典

この記事では thm-awg-coxeter を証明しない。Gar97 §12.2(pp. 178–180)は、局所有限な超平面の族で、その鏡映で保たれるものについて、1–3 を証明している(交換条件を経て Coxeter 系であることを示す)。$\mathcal{H}$ がこの条件を満たすことは thm-awg-structure の 3 であり、同書 §12.5 の命題(pp. 192–193)でも示されている。4 は同書 §12.4 の命題(pp. 188–190)と §12.5 の最後の系(p. 194)による。

例

$A_{n-1}$ 型

$n\ge2$ とし、$V=\{x\in\mathbb{R}^n\mid x_1+\cdots+x_n=0\}$、$R=\{e_i-e_j\mid i\ne j\}$ とする(ルート系 の例「$A_{n-1}$ 型」)。$(\alpha,\alpha)=2$ なので $\alpha^\vee=\alpha$ で、$Q^\vee=\{x\in\mathbb{Z}^n\mid\sum x_i=0\}$、$\mathcal{H}$ は超平面 $x_i-x_j=k$($k\in\mathbb{Z}$)の全体である。
$$ A_0:=\{x\in V\mid x_1>x_2>\cdots>x_n>x_1-1\} $$
はアルコーブで、その壁はちょうど $H_i:x_i=x_{i+1}$($1\le i\le n-1$)と $H_0:x_1-x_n=1$ の $n$ 枚である。対応する鏡映は、$s_i$ が座標 $x_i$ と $x_{i+1}$ の入れ替え、$s_0$ が $x_1\mapsto x_n+1$、$x_n\mapsto x_1-1$(ほかの座標はそのまま)である。thm-awg-alcove により $W_a=\langle s_0,s_1,\dots,s_{n-1}\rangle$ である。$n\ge3$ なら、添字を円周 $0,1,\dots,n-1,0$ に並べたとき隣り合う $s_i,s_j$ の積は位数 $3$、隣り合わないものの積は位数 $2$ である。これは Gar97 §2.2(pp. 27–28)の $\tilde A_{n-1}$ 型の Coxeter データで、図式は $n$ 角形である。$n=2$ は ex-awg-a1 を $\sqrt2$ 倍に縮めたものである。

アルコーブ・壁・位数の確かめ

アルコーブであること:$x\in A_0$ と $i< j$ について $0< x_i-x_j\le x_1-x_n<1$ なので、$A_0$ はどの超平面とも交わらない。$A_0$ は凸な開集合なので 1 つのアルコーブ $C$ に含まれる。$A_0$ の境界は $H_0,\dots,H_{n-1}$ の和集合に含まれ $C$ と交わらないので、$A_0$ は $C$ の中で開かつ閉であり、$C$ の連結性から $A_0=C$ である。

壁:閉包 $\bar A_0=\{x_1\ge\cdots\ge x_n\ge x_1-1\}$ の上では $i< j$ について $x_i-x_j\in[0,1]$ なので、$\bar A_0$ と交わる超平面は $x_i-x_j\in\{0,1\}$ の形である。$j\ge i+2$ で $x_i=x_j$ なら $x_i=x_{i+1}$ でもあり、$(i,j)\ne(1,n)$ で $x_i-x_j=1$ なら $x_1-x_n=1$ でもあるので、これらの超平面上の $\bar A_0$ の点はほかの超平面にものり、壁にならない。逆に、$x_i=x_{i+1}$ でほかの隣り合う差がすべて小さな正の数 $\delta$($(n-2)\delta<1$)の点は $H_i$ だけにのり、隣り合う差がすべて $1/(n-1)$ の点は $H_0$ だけにのる。

位数:$H_i$ の法ベクトルは $\alpha_i=e_i-e_{i+1}$、$H_0$ の法ベクトルは $\theta=e_1-e_n$ である。$(\alpha_i,\alpha_{i+1})=-1$、$(\theta,\alpha_1)=(\theta,\alpha_{n-1})=1$ で、ほかの組の内積は $0$ である($n\ge3$)。長さ $\sqrt2$ の法ベクトルの内積が $\pm1$ なら 2 つの超平面は角度 $\pi/3$ で交わり、2 つの鏡映の積は交わりの周りの角 $2\pi/3$ の回転で位数 $3$ である。内積が $0$ なら 2 つの鏡映は可換で、積の位数は $2$ である。

$n=3$ では、$\mathcal{H}$ は平面 $V$ の 3 方向の平行線の族で、アルコーブは正三角形、原点の周りの 6 つのアルコーブが $wA_0$($w\in W$)である。Coxeter系 の注意「反例:位数2の生成系がCoxeter系を与えない例」に現れる群 $\langle a,b,c\mid a^2,b^2,c^2,(ab)^3,(bc)^3,(ac)^3\rangle$ は、$a,b,c\mapsto s_1,s_2,s_0$ により $W_a$ の上への準同型をもつ(関係式が成り立ち、thm-awg-alcove により $s_0,s_1,s_2$ が生成する)。$W_a$ は thm-awg-structure の 2 により無限群なので、この群も無限群である。thm-awg-coxeter の 2 によれば、この準同型は同型である。

反例:条件を外した場合

外す条件反例成り立たなくなること
(RS3) 結晶性(thm-awg-structure の 3)正五角形の対称性の 10 本の単位ベクトル $(\cos\frac{\pi j}{5},\sin\frac{\pi j}{5})$超平面の族が $W_a$ で保たれず、平行移動の群が離散でなくなる
$k$ を $\mathbb{Z}$ 全体にとる(thm-awg-alcove の 1)$k=0$ の鏡映だけが生成する群 $W$有限群で、無限個あるアルコーブに推移的に作用しない
(RS1) $R$ が $V$ を張る(thm-awg-coxeter の 4)$R=\{\pm e_1\}\subset\mathbb{R}^2$アルコーブは帯 $k< x_1< k+1$ で有界でなく、単体にならない
既約(thm-awg-coxeter の 4)$R=\{\pm e_1,\pm e_2\}\subset\mathbb{R}^2$アルコーブは正方形 $(k,k+1)\times(l,l+1)$ で、壁は 3 枚でなく 4 枚

1 行目:単位ベクトル $\alpha$ の余ルートは $2\alpha$ で、thm-awg-structure の 1 の計算は (RS3) を使わないので $t_{2\alpha}\in W_a$ である。隣り合う 2 本 $\alpha,\beta$ について $t_{2\beta}(H_{\alpha,k})=\{x\mid(\alpha,x)=k+2(\alpha,\beta)\}$ で、$2(\alpha,\beta)=2\cos\frac{\pi}{5}$ は整数でないから、これは $\mathcal{H}$ に属さない。また $2\alpha$ たちが生成する $\mathbb{R}^2$ の部分群は $1$ の $10$ 乗根の整数係数の結合の全体を 2 倍したもので階数 $4$ をもち、$\mathbb{R}^2$ の離散部分群の階数は $2$ 以下なので離散でない。2 行目:$W$ は有限群(ルート系 の補題「Weyl群の有限性」)だが、アルコーブは無限個ある。実際、アルコーブの点 $a$ と $\alpha\in R$ について、点 $a+m\alpha^\vee=t_{m\alpha^\vee}(a)$($m\in\mathbb{Z}$)は $V^\circ$ に属し、$(\alpha,\cdot)$ の値が $2$ ずつ異なるので、どの 2 点も超平面 $H_{\alpha,k}$ に隔てられて異なるアルコーブに属する。

補足

建物と $p$ 進群での役割
  • $R$ が既約なとき、アルコーブとその面は $V$ の三角形分割を与え、$(W_a,S_A)$ の Coxeter複体 の幾何学的実現になる(Gar97 §13.6 の系、p. 214)。
  • 離散付値体(たとえば $p$ 進数体 $\mathbb{Q}_p$)上の $\mathrm{SL}_n$ には、アパートメントが $\tilde A_{n-1}$ 型の Coxeter 複体、すなわち ex-awg-type-a のアルコーブの分割であるアフィン型の Titsの建物 が付随する(Gar97 第 19 章の序、p. 321)。$\mathrm{SL}_n$ はこの建物に型を保って強推移的に作用し(同 §19.3、p. 329)、部屋の固定部分群は、整数環に成分をもち剰余体に落とすと上三角になる行列の群(岩堀部分群)である(同 §19.4、pp. 330–331)。こうして得られる Tits 系の Weyl 群は $\tilde A_{n-1}$ 型の Coxeter 群で、thm-awg-coxeter の 2 により $A_{n-1}$ 型のアフィン Weyl 群と同型である。$n=2$ では建物は木になる。

関連項目

参考文献

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