Euclid近傍レトラクト(Euclidean neighborhood retract、ENR)とは、ある Euclid 空間 $\mathbb{R}^n$ に埋め込んだとき、その像が $\mathbb{R}^n$ のある開集合のレトラクトになる位相空間のことである。$\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合については、開集合のレトラクトであることと局所可縮であることが同値であり、このためコンパクト空間が ENR であるかどうかは埋め込み方によらない。コンパクトな ENR は有限単体複体のレトラクトと同相な空間として特徴づけられ、ホモロジー群は有限生成で、コンパクト多様体や有限 CW 複体を含む。コンパクト距離化可能空間が ENR であることは、被覆次元が有限な絶対近傍レトラクトであることと同値である。
円周 $S^1\subset\mathbb{R}^2$ は $\mathbb{R}^2$ 全体のレトラクトではないが、原点を除いた平面 $\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$ からは $y\mapsto y/\lvert y\rvert$ で $S^1$ の上へ引き戻せる。このように、Euclid 空間に置いたとき「まわりの開集合から自分の上へ連続に引き戻せる」空間を Euclid近傍レトラクト(ENR)という。ENR は、有限単体複体のように扱いやすい空間を、三角形分割を使わずに位相だけでとらえる枠組みである。
中心となる定理は、$\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合について、近傍レトラクトであることと局所可縮であることが同値だというものである。局所可縮性は埋め込み方によらない性質なので、コンパクトな ENR であるかどうかも埋め込み方によらない。この定理から、コンパクトな ENR は有限単体複体のレトラクトとして特徴づけられ、ホモロジー群が有限生成になる。コンパクト多様体と有限 CW 複体は ENR であり、Lefschetz の不動点定理や Alexander 双対定理はこの範囲の空間に対して成り立つ。
この記事では、ENR を定義し、主定理(thm-enr-main)を証明して、有限単体複体との関係(prop-enr-finite-complex)、絶対近傍レトラクトとの関係(prop-enr-anr)、近傍のコホモロジーの順極限(prop-enr-colimit)を導く。
$\mathbb{R}^n$ には Euclid ノルム $\lvert\cdot\rvert$ と、それから決まる距離を入れる。部分集合 $A\subset\mathbb{R}^n$ の点 $y$ からの距離を $d(y,A):=\inf_{a\in A}\lvert y-a\rvert$ と書く。
近傍を開集合に限らなくても同じ概念になる。$i(X)$ を内部に含む集合 $N$ からのレトラクションがあれば、それを $N$ の内部に制限すればよいからである。また $i(X)$ がある開集合 $W$ のレトラクトなら、$i(X)\subset W'\subset W$ を満たすどの開集合 $W'$ のレトラクトでもある($r$ を $W'$ に制限する)。
局所可縮性は 局所可縮空間 の定義の意味で使う。すなわち $X$ が局所可縮であるとは、各点 $x\in X$ と $x$ の各近傍 $U$ に対し、$x$ の近傍 $V\subset U$ で、包含 $V\hookrightarrow U$ が $U$ の中で定値写像とホモトピックになるものがとれることをいう。$V$ 自身が可縮である必要はない。
$K$ を $\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合とする。$K$ が $\mathbb{R}^n$ のある開集合のレトラクトであることと、$K$ が局所可縮であることは同値である。
近傍レトラクトならば局所可縮. $\mathbb{R}^n$ は局所可縮(局所可縮空間の定理「凸集合と多様体」)なので、局所可縮な空間の近傍レトラクトは局所可縮である(同記事の定理「開集合とレトラクト」の 2)。
局所可縮ならば近傍レトラクト. $K=\emptyset$ なら $W=\emptyset$ でよいので、$K\neq\emptyset$ とする。$X:=\mathbb{R}^n\setminus K$ に、$K$ に近づくほど小さくなる立方体の胞体構造を入れ、$X$ の大部分から $K$ への写像を骨格ごとに作る。
段 1(立方体への分割). $k\ge0$ について、頂点の座標がすべて $2^{-k}\mathbb{Z}$ に属する辺の長さ $2^{-k}$ の閉立方体全体を $\mathcal{C}_k$ とする。$\mathcal{A}_0$ を $\mathcal{C}_0$ のうち $K$ と交わらないもの全体、$k\ge1$ について $\mathcal{A}_k$ を $\mathcal{C}_k$ のうち $K$ と交わらず、$j< k$ のどの $\mathcal{A}_j$ の立方体にも含まれないもの全体とし、$\mathcal{A}:=\bigcup_k\mathcal{A}_k$ とおく。次が成り立つ。
1:$y\in X$ なら $d(y,K)>0$ なので、$y$ を含む $\mathcal{C}_k$ の立方体で直径 $\sqrt n\,2^{-k}$ が $d(y,K)$ より小さいものは $K$ と交わらない。それが $\mathcal{A}_k$ に入らなければ、定義によりある $\mathcal{A}_j$($j< k$)の立方体に含まれる。2:$Q$ を含む $\mathcal{C}_{k-1}$ の立方体 $Q'$ が $K$ と交わらなければ、$Q'$ 自身かそれを含む立方体がある $\mathcal{A}_j$($j\le k-1$)に属し、$Q\notin\mathcal{A}_k$ となって矛盾する。よって $Q'$ は $K$ と交わり、$Q\subset Q'$ の点の $K$ からの距離は $Q'$ の直径 $\sqrt n\,2^{1-k}$ 以下である。3:$y\in X$、$\delta:=d(y,K)$ とする。$B(y,\delta/2)$ の点は $K$ から $\delta/2$ 以上離れているので、これと交わる $Q\in\mathcal{A}_k$($k\ge1$)は 2 により $\sqrt n\,2^{1-k}\ge\delta/2$ を満たし、$k$ は上から抑えられる。各 $k$ について有界な球と交わる $\mathcal{C}_k$ の立方体は有限個である。4:直径が $\eta$ 以上の $\mathcal{A}$ の立方体は $k$ が上から抑えられるので、$B(x,1)$ と交わるものは有限個であり、どれも $K$ と交わらない閉集合なので $x$ から正の距離にある。$\beta$ をそれらの距離と $1$ より小さくとればよい。
段 2(写像の構成). $X$ の部分複体 $Z$ と連続写像 $r\colon Z\to K$ を骨格ごとに作る。$Z$ の 0 胞体は $X$ のすべての 0 胞体とし、$r(v)$ を $v$ に最も近い $K$ の点($K$ はコンパクトなので存在する。複数あれば一つ選ぶ)とする。$Z^k$ と $r\colon Z^k\to K$ ができたとし、$X$ の $(k+1)$ 胞体 $e$ で境界が $Z^k$ に含まれるものを考える。$r$ の境界 $\partial\bar e$ への制限を $\bar e$ 全体へ連続に延ばした写像 $g\colon\bar e\to K$ の全体を $\Phi_e$ とする。$\Phi_e\neq\emptyset$ のときに限り $e$ を $Z^{k+1}$ に入れ、$r|_{\bar e}$ を次のように選ぶ。$m_e:=\inf_{g\in\Phi_e}\operatorname{diam}g(\bar e)$ とおき、$m_e>0$ なら $\operatorname{diam}r(\bar e)<2m_e$ となる $g\in\Phi_e$ をとる。$m_e=0$ なら境界の像 $r(\partial\bar e)$ の直径も $0$、すなわち一点なので、その点への定値写像をとる。いずれの場合も
$$
\operatorname{diam}r(\bar e)\le2\operatorname{diam}g(\bar e)\qquad(g\in\Phi_e)
$$
が成り立つ。$Z:=Z^n$ とすると、$r$ は各閉胞体の上で連続なので、$Z$ 上で連続である。
段 3($K$ の近くでの評価). $x\in K$ と $\varepsilon>0$ を固定する。$K$ の中の開球を $B_K(x,\rho):=\{y\in K\mid\lvert y-x\rvert<\rho\}$ と書く。$\rho_n:=\varepsilon$ とし、$i=n,n-1,\dots,0$ の順に、局所可縮性により $B_K(x,\sigma_i)$ が $B_K(x,\rho_i)$ の中で可縮になる $0<\sigma_i\le\rho_i$ を選び、$i\ge1$ なら $\rho_{i-1}:=\sigma_i/5$ とおく。$\beta:=\sigma_0/2$ とし、閉包が開球 $B(x,\beta)\subset\mathbb{R}^n$ に含まれる $X$ の胞体全体を $Y$ とする。$Y$ は部分複体である。
主張:$Y\subset Z$ であり、各 $i$ について $r(Y^i)\subset B_K(x,\sigma_i)$。
$i=0$:$Y$ の頂点 $v$ について、$\lvert r(v)-v\rvert=d(v,K)\le\lvert v-x\rvert<\beta$ なので $\lvert r(v)-x\rvert<2\beta=\sigma_0$。
$i-1$ から $i$:$e$ を $Y$ の $i$ 胞体とする。境界は $Y^{i-1}\subset Z$ に含まれ、$r(\partial\bar e)\subset B_K(x,\sigma_{i-1})$ である。$B_K(x,\sigma_{i-1})$ は $B_K(x,\rho_{i-1})$ の中で可縮なので、球面 $\partial\bar e$ からの写像 $r|_{\partial\bar e}$ は $B_K(x,\rho_{i-1})$ の中で定値写像とホモトピックであり、円板 $\bar e$ 上の $B_K(x,\rho_{i-1})$ に値をとる写像に延びる。よって $\Phi_e\neq\emptyset$ で $e\subset Z$ であり、段 2 の不等式から $\operatorname{diam}r(\bar e)\le2\cdot2\rho_{i-1}$ となる。$r(\bar e)$ は $B_K(x,\sigma_{i-1})\subset B_K(x,\rho_{i-1})$ の点を含むので、$r(\bar e)\subset B_K(x,5\rho_{i-1})=B_K(x,\sigma_i)$ である。
とくに $r(Y)\subset B_K(x,\varepsilon)$。さらに 1 と 4 により、$\beta'\le\beta/2$ を、$B(x,\beta')$ と交わる $\mathcal{A}$ の立方体の直径がすべて $\beta/2$ より小さくなるようにとる。$y\in B(x,\beta')\setminus K$ は、$B(x,\beta')$ と交わる $Q\in\mathcal{A}$ に含まれ、$Q\subset B(x,\beta)$ なので、$y$ を含む胞体の閉包は $Q$ に含まれて $y\in Y$ である。よって
$$
B(x,\beta')\subset Y\cup K,\qquad r\bigl(B(x,\beta')\setminus K\bigr)\subset B_K(x,\varepsilon).
$$
段 4(レトラクション). $\varepsilon=1$ のときの $\beta'$ を各 $x\in K$ についてとり、それらの開球の和を $W$ とする。$W$ は $K$ を含む開集合で $W\subset Z\cup K$ である。$\bar r\colon W\to K$ を $W\setminus K$ 上で $r$、$K$ 上で恒等写像として定める。$W\setminus K$ の点は、$W\setminus K$ に含まれ有限個の閉胞体としか交わらない開球をもち、それらの閉胞体はすべて $Z$ に属するので、$\bar r$ はそこで連続である(貼り合わせの補題)。$x\in K$ では、任意の $\varepsilon>0$ について段 3 の $\beta'$ をとれば、$\bar r(W\cap B(x,\beta'))\subset B_K(x,\varepsilon)$($K$ の点は $\beta'\le\varepsilon$ より)なので連続である。よって $\bar r$ は $W$ から $K$ へのレトラクションである。$\square$
段 2 で「最小に近い」延長を選ぶのは、$K$ の近くの胞体の像を小さく保つためである。最小値は達成されるとは限らないので、2 倍までの余裕をとっている。
コンパクト空間 $X$ について次は同値である。
1 ⇒ 2:$i(X)$ はコンパクトで近傍レトラクトなので、thm-enr-main により局所可縮であり、同相な $X$ も局所可縮である。2 ⇒ 3:埋め込み $j$ について、$j(X)$ はコンパクトで、$X$ と同相なので局所可縮である。thm-enr-main により $j(X)$ は近傍レトラクトである。3 ⇒ 1:存在する埋め込みの一つに 3 を使えばよい。$\square$
$X$ をコンパクト空間とする。
1(⇐):$P$ の頂点が $N$ 個なら、$P$ は $\mathbb{R}^N$ の標準的な $(N-1)$ 単体の部分複体として実現でき、$\lvert P\rvert$ は $\mathbb{R}^N$ のコンパクト集合である。$\lvert P\rvert$ は局所可縮である(局所可縮空間の定理「局所有限な単体複体の多面体」)ので、thm-enr-main により開集合 $W\supset\lvert P\rvert$ からのレトラクション $r$ がある。$A\subset\lvert P\rvert$ を $X$ と同相なレトラクト、$q\colon\lvert P\rvert\to A$ をレトラクションとすると、$q\circ r\colon W\to A$ はレトラクションであり、$A$ と同相な $X$ は ENR である。
1(⇒):$X$ を $\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合 $K$ とみなす($X$ が与えられた $\mathbb{R}^n$ の部分集合と同相なら、その像を $K$ とする。cor-enr-intrinsic により $K$ は近傍レトラクトである)。$r\colon W\to K$ をレトラクションとする。$\delta:=d(K,\mathbb{R}^n\setminus W)$ は正である($W=\mathbb{R}^n$ なら $\delta:=1$)。$K$ を含む $n$ 単体 $\Delta\subset\mathbb{R}^n$ をとり、重心細分をくり返して、すべての単体の直径が $\delta$ より小さい $\Delta$ の細分を得る。その単体のうち $K$ と交わるものとその面の全体を $P$ とすると、$P$ は次元 $n$ 以下の有限単体複体で、$K\subset\lvert P\rvert\subset W$ である。$r|_{\lvert P\rvert}$ が $\lvert P\rvert$ から $K$ へのレトラクションである。
2:1 の $\iota\colon K\hookrightarrow\lvert P\rvert$ と $r|_{\lvert P\rvert}$ について $r\circ\iota=\operatorname{id}_K$ なので、$r_*\circ\iota_*=\operatorname{id}$ となり、$H_i(K)$ は $H_i(\lvert P\rvert)$ の直和因子である。$H_i(\lvert P\rvert)$ は単体ホモロジーと同型であり(Hat02 Theorem 2.27, p. 128)、有限生成で $i>\dim P$ では $0$ である。同様に $r_*\colon\pi_1(\lvert P\rvert,x)\to\pi_1(K,x)$ は全射であり、有限 CW 複体の基本群は有限生成である。1 骨格(有限グラフ)の基本群は有限生成な自由群であり(Hat02 Proposition 1A.2, p. 84)、2 胞体を貼ると商群になり、3 次元以上の胞体を貼っても変わらない(同書 Proposition 1.26, p. 50)からである。よって $\pi_1(K,x)$ も有限生成である。$\square$
Lefschetz の不動点定理は有限単体複体のレトラクトについて成り立つ(Hat02 Theorem 2C.3, p. 179、Lefschetz不動点定理)ので、コンパクトな ENR はその適用範囲に入る。
1:$X$ を $\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合とみなし、開集合 $W$ からのレトラクションをとる。$W$ は ANR であり(絶対近傍レトラクトの例「凸集合と開集合」の 2)、ANR の近傍レトラクトは ANR である(同記事の命題「開集合とレトラクトへの遺伝」の 2)。
2(⇒):1 により ANR である。$X$ を $\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合とみなすと、ある $m$ について $X\subset[-m,m]^n$ であり、$X$ はこの立方体の閉集合である。被覆次元は閉部分空間で増えず(被覆次元の命題「閉部分空間の被覆次元」)、$[-m,m]^n$ は $[0,1]^n$ と同相で次元 $n$ をもつ(同記事の定理「立方体の被覆次元」)ので、$\dim X\le n$ である。
2(⇐):$\dim X=d<\infty$ とする。コンパクト距離化可能空間は可分なので、Menger–Nöbelingの埋め込み定理により埋め込み $j\colon X\to\mathbb{R}^{2d+1}$ がある。$j(X)$ はコンパクトなので閉集合であり、$\mathbb{R}^{2d+1}$ は距離化可能なので、ANR の定義により $j(X)$ は $\mathbb{R}^{2d+1}$ のある開集合のレトラクトである。$\square$
コンパクトでない場合も含め、局所コンパクトで可分な距離化可能空間の範囲では「有限次元の ANR」を ENR と呼ぶ流儀がある(Edw80 p. 112)。この場合も、そのような空間は Euclid 空間の閉集合として近傍レトラクトになるように埋め込める(同所)。
$K\subset\mathbb{R}^n$ をコンパクト集合とする。$K$ を含む開集合 $U$ の全体を、$U'\subset U$ のとき $U\le U'$ と順序づけた有向集合とみなし、特異コホモロジーの制限写像による順極限 $\varinjlim_UH^q(U;G)$ を考える($G$ はアーベル群)。各 $U$ の包含 $\iota_U\colon K\hookrightarrow U$ の誘導する $\iota_U^*$ から、標準的な準同型
$$
\Theta\colon\varinjlim_{U\supset K}H^q(U;G)\longrightarrow H^q(K;G)
$$
が定まる。
$K\subset\mathbb{R}^n$ がコンパクトで局所可縮なら、すべての $q$ について $\Theta$ は同型である。
thm-enr-main により、開集合 $W\supset K$ とレトラクション $r\colon W\to K$ がある。
全射:$\alpha\in H^q(K;G)$ に対し $r^*\alpha\in H^q(W;G)$ は $\iota_W^*r^*\alpha=(r\circ\iota_W)^*\alpha=\alpha$ を満たす。
単射:$\gamma\in H^q(U;G)$ が $\iota_U^*\gamma=0$ を満たすとする。$U':=U\cap W$ とし、$F\colon U'\times[0,1]\to\mathbb{R}^n$ を $F(y,t):=(1-t)y+t\,r(y)$ で定める。$F^{-1}(U')$ は $K\times[0,1]$ を含む開集合なので、$[0,1]$ のコンパクト性(チューブ補題)により、$K$ を含む開集合 $V\subset U'$ で $F(V\times[0,1])\subset U'$ となるものがある。$F|_{V\times[0,1]}$ は、包含 $V\hookrightarrow U'$ と、$r|_V$ と包含 $K\hookrightarrow U'$ の合成との間の $U'$ の中のホモトピーである。コホモロジーのホモトピー不変性により
$$
\gamma|_V=(r|_V)^*\bigl(\gamma|_K\bigr)=(r|_V)^*(\iota_U^*\gamma)=0
$$
となり、$\gamma$ の順極限での類は $0$ である。$\square$
この命題は、$S^n$ のコンパクトで局所可縮な部分集合 $K$ について $\tilde H_i(S^n\setminus K)$ と $\tilde H^{n-i-1}(K)$ を結ぶAlexander双対定理の証明で、$K$ の近傍の双対性から $K$ 自身の双対性へ移る段に使われる(Hat02 Theorem 3.44 の証明、pp. 254–255。そこでは $\mathbb{R}^n$ の代わりに閉多様体の中で同じ議論を行う)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 局所可縮性(thm-enr-main) | 位相幾何学者の正弦曲線 $S\subset\mathbb{R}^2$ | コンパクトだが、$\mathbb{R}^2$ のどの開集合のレトラクトでもない |
| 「近傍」のレトラクト($\mathbb{R}^n$ 全体からのレトラクトに強める) | 円周 $S^1\subset\mathbb{R}^2$ | ENR だが $\mathbb{R}^2$ のレトラクトではない(可縮な空間のレトラクトは可縮) |
| コンパクト性(prop-enr-finite-complex の 2) | $\mathbb{Z}\subset\mathbb{R}$ | ENR だが $H_0(\mathbb{Z};\mathbb{Z})=\bigoplus_{\mathbb{Z}}\mathbb{Z}$ は有限生成でない |
| 有限次元性(prop-enr-anr の 2) | Hilbert 立方体 $[0,1]^{\mathbb{N}}$ | コンパクトな ANR(さらに AR)だが ENR でない |
| 局所可縮性(prop-enr-colimit) | 位相幾何学者の正弦曲線 $S$ | 連結な開近傍が任意に小さくとれるので $\varinjlim H^0(U;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ だが、$S$ は弧状連結成分を 2 つもち $H^0(S;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}^2$ |
最後の行:$\varepsilon$ 近傍 $U_\varepsilon:=\{y\in\mathbb{R}^2\mid d(y,S)<\varepsilon\}$ は、$S$ の各点 $s$ を中心とする開球 $B(s,\varepsilon)$ の和である。各開球は連結で連結な $S$ と点 $s$ を共有するので、和 $U_\varepsilon=S\cup\bigcup_sB(s,\varepsilon)$ は連結であり、$\mathbb{R}^2$ の連結な開集合として弧状連結である。$S$ はコンパクトなので、$S$ を含む任意の開集合はある $U_\varepsilon$ を含み、$U_\varepsilon$ たちは共終である。よって順極限は $H^0(U_\varepsilon;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ である。$S$ の弧状連結成分は曲線部分と線分 $\{0\}\times[-1,1]$ の 2 つで、$H^0(S;\mathbb{Z})$ は弧状連結成分上の $\mathbb{Z}$ 値関数全体 $\mathbb{Z}^2$ である。
定義は Hat02 Appendix(p. 527)による。主定理は Hat02 Theorem A.7(pp. 525–527)で、この記事の証明はその筋に従い、延長の像の直径の選び方(下限が $0$ の場合)と、$K$ の近くでの半径の取り方を明示した。prop-enr-finite-complex は Hat02 Corollary A.8(p. 527)にあたる。コンパクトな ENR は有限単体複体に支配されるので、有限支配空間の意味で有限支配である。
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