滑らかな底変換定理(smooth base change theorem)とは、準コンパクトかつ準分離な射 $f\colon X\to Y$ と滑らかな射 $g\colon Y'\to Y$ について、位数が $Y$ の剰余標数と素な捩れ層 $F$ の高次順像 $R^qf_*F$ の作り方が底変換 $g$ と交換するという Artin の定理である。射 $f$ に固有性を課す固有底変換定理と対をなし、滑らかな射が局所非輪状であることから導かれる。$g$ がエタールなら係数に条件なしで成り立つが、Artin–Schreier 被覆による $p$ 捩れ係数や、平坦でも分岐する $g$ では成り立たない。
前提知識: エタールコホモロジー, 滑らかな射, 高次順像, 固有基底変換定理, 狭義Hensel局所環
滑らかな底変換定理(smooth base change theorem)は、準コンパクトかつ準分離な射 $f\colon X\to Y$ の高次順像 $R^qf_*F$ の作り方が、滑らかな射 $g\colon Y'\to Y$ による底変換と交換するという定理である。ただし係数 $F$ は捩れ層で、その切断の位数が $Y$ の剰余標数と素であることを要する。固有基底変換定理が射 $f$ に固有性を課して任意の底変換を許すのに対し、この定理は $f$ にほとんど条件を付けない代わりに、底変換の側 $g$ を滑らかな射に限る。Artin による定理で(SGA 4 第 XVI 講)、滑らかな射が局所非輪状であるという Artin の定理(同第 XV 講)から導かれる。
滑らかな底変換は、エタールコホモロジーの計算で「パラメータを付け足しても高次順像は変わらない」ことを保証する。分離閉体を大きくしてもコホモロジーが変わらないこと、固有で滑らかな射の高次順像が局所定数になること(局所非輪状の系「固有で滑らかな射の高次順像は局所定数」)、複素数体上の比較定理の証明などで、固有基底変換定理と組み合わせて使われる。
この記事では、定理を引用で述べ、底変換 $g$ がエタールな場合を完全に証明する。そのうえで、係数の位数が剰余標数で割り切れる場合(Artin–Schreier 被覆)と、$g$ が平坦で有限だが滑らかでない場合(平方写像)に結論が成り立たないことを、どちらも茎を計算して証明する。
次のデカルト図式を考える。$X'=X\times_YY'$ で、$f'$ と $g'$ は射影である。
$$
\begin{CD}
X' @>{g'}>> X\\
@V{f'}VV @VV{f}V\\
Y' @>{g}>> Y
\end{CD}
$$
$X$ 上のアーベル群のエタール層 $F$ について、底変換射
$$
\varphi^q\colon g^{-1}R^qf_*F\longrightarrow R^qf'_*g'^{-1}F
$$
が定まる(固有基底変換定理の定義「基底変換射」)。これがすべての $q$ で同型であるとき、$R^qf_*F$ の作り方は底変換 $g$ と交換するという。
スキームの幾何的点 $\bar y\colon\operatorname{Spec}\Omega\to Y$($\Omega$ は分離閉体)での狭義 Hensel 化を $\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y}$ と書く(狭義Hensel局所環)。$f$ が準コンパクトかつ準分離なら、高次順像の茎は
$$
(R^qf_*F)_{\bar y}=H^q\bigl(X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y},\,F\bigr)
$$
で計算される(Stacks Tag 03Q9。右辺は $F$ の引き戻しのコホモロジー)。$\bar y'$ を $Y'$ の幾何的点、$\bar y=g\circ\bar y'$ とする。この同一視は、Stacks Tag 03Q9 の証明のとおり、$\bar y$ のエタール近傍 $V$ についての $H^q(X\times_YV,F)$ の帰納極限を経由する。底変換射は各近傍 $V$ の上で、$\bar y'$ のエタール近傍 $V\times_YY'$ についての射 $X\times_Y(V\times_YY')\to X\times_YV$ による引き戻しとして働く。極限に移ると、$\varphi^q$ の $\bar y'$ での茎は、局所環の射 $\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y}\to\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}$ から得られる射
$$
X'\times_{Y'}\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}=X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}\longrightarrow X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y}
$$
による引き戻しの写像
$$
H^q\bigl(X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y},F\bigr)\longrightarrow H^q\bigl(X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'},F\bigr)
$$
になる(逆像の茎は $(g^{-1}G)_{\bar y'}=G_{\bar y}$ である。Stacks Tag 03Q1)。エタール層の射が同型であることは幾何的点での茎で判定できるので(Stacks Tag 03PU)、底変換が成り立つかどうかは、この引き戻しの写像が同型かどうかで決まる。
上のデカルト図式で、$g$ は滑らかな射、$f$ は準コンパクトかつ準分離な射とする。$F$ を $X$ 上のアーベル群のエタール層で、すべての幾何的点での茎がすべての元の位数が有限な群であり、その位数が $Y$ のどの点の剰余体の標数とも素であるものとする。このとき、すべての $q\ge0$ について底変換射
$$
g^{-1}R^qf_*F\longrightarrow R^qf'_*g'^{-1}F
$$
は同型である。
これは Artin による(SGA4 XVI Corollaire 1.2、pp. 207–208)。この記事では証明しない。同所は集合の層については $q=0$ で、群の層については $q\le1$ で同じ結論を述べる(後者は剰余標数と素な素数の集合 $\mathbb L$ について ind-$\mathbb L$ 群の層の場合)。Stacks Tag 0EYU も同じ主張を(記号を入れ替えて)定理として証明している。
SGA 4 では、まず $g$ が「普遍的局所非輪状」であるという一般の形(SGA4 XVI Théorème 1.1、p. 207)を示し、滑らかな射が普遍的局所非輪状であるという Artin の定理(SGA4 XV Théorème 2.1、p. 192。局所非輪状の定理「滑らかな射の局所非輪状性」)を当てて系を得る。定理 1.1 の証明は、$f$ が準射影的な場合を、開埋め込みと射影的な射の合成に分けて、射影的な部分は固有基底変換定理(SGA4 XII 5.1)、開埋め込みの部分は局所非輪状性の定義そのもので片付け(SGA4 XVI、p. 208)、一般の場合を $X$ がアフィンの場合と極限への移行に帰着させる(同 Lemme 1.3、pp. 208–209)。Stacks Tag 0EYU の第 1 の証明は、$g$ をエタールな射とアフィン空間への射影に分け、相対次元 $1$ の場合に帰着して、滑らかなアフィン曲線のコホモロジーを有限 Galois 被覆で殺す補題(Tag 0EYT)を使う。
名前のつけ方に注意する。「滑らかな」は底変換の射 $g$ に付く形容であり、高次順像をとる射 $f$ は滑らかでなくてよい。$f$ が準コンパクトかつ準分離であることは、茎の公式 Tag 03Q9 が使えるための条件である。
固有基底変換定理・一般の基底変換定理との違いを並べる。
| 固有底変換 | 滑らかな底変換 | |
|---|---|---|
| 射 $f$ の条件 | 固有 | 準コンパクト・準分離 |
| 底変換 $g$ の条件 | なし | 滑らか |
| 係数の条件 | 捩れ | 捩れで、位数が $Y$ の剰余標数と素 |
| 典拠 | SGA 4 XII 5.1 | SGA 4 XVI 1.2 |
係数の条件の違いは、下の prop-sbc-artin-schreier にそのまま現れる。固有底変換は $p$ 捩れ係数でも成り立つが、滑らかな底変換は成り立たない。
滑らかな射のうち相対次元が $0$ のものはエタール射である。この場合は、係数に何の条件もなく、定理の結論が成り立つ。
上のデカルト図式で、$g$ はエタール射、$f$ は準コンパクトかつ準分離な射とする。$X$ 上の任意のアーベル群のエタール層 $F$ とすべての $q\ge0$ について、底変換射 $g^{-1}R^qf_*F\to R^qf'_*g'^{-1}F$ は同型である。
$f'$ は $f$ の底変換なので準コンパクトかつ準分離である。$Y'$ の幾何的点 $\bar y'$ をとり、$\bar y:=g\circ\bar y'$ とおく。$g$ はエタールなので、局所非輪状の補題「エタール射と狭義局所化」により、狭義局所化の射 $\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}\to\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y}$ は同型である。
節「設定と記号」の茎の公式を $f$ と $f'$ に使うと、$\varphi^q$ の $\bar y'$ での茎は、引き戻しの写像
$$
H^q\bigl(X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y},F\bigr)\longrightarrow H^q\bigl(X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'},F\bigr)
$$
である。ここで $X'\times_{Y'}\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}=X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}$ を使い、$g'^{-1}F$ をさらに引き戻したものは $F$ の引き戻しであることを使った。引き戻しに使う射 $X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}\to X\times_Y\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y}$ は、同型 $\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y',\bar y'}\to\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{Y,\bar y}$ と $X$ とのファイバー積なので同型であり、同型による引き戻しはコホモロジーの同型である。よって $\varphi^q$ はすべての幾何的点で茎の同型であり、同型である(Stacks Tag 03PU)。$\square$
エタールな場合に係数の条件が要らないのは、狭義局所化が変わらない、つまり「点のエタール位相での近傍」が $g$ で取り替わらないからである。相対次元が正の滑らかな射では狭義局所化は大きくなり、その差を消すのが、係数の位数が剰余標数と素であるという条件と、Artin の局所非輪状性の定理である。
$p$ を素数、$k$ を標数 $p$ の代数閉体とする。標数 $p$ の体 $L$ について、$\wp(h):=h^p-h$ とおくと、$\wp\colon L[x]\to L[x]$ は加法群の準同型である。
$L$ を $k$ を含む体とし、$L\neq k$ とする。$c\in L\setminus k$ について、$cx\in L[x]$ は $k[x]+\wp(L[x])$ に属さない。
多項式 $\sum_m a_mx^m$ を、$p$ で割り切れる $m$($m=0$ を含む)について $a_m=0$ となるとき標準形とよぶ。
(a) $k[x]$ の元は $\wp(k[x])$ を法として標準形の元と合同である。$h\in k[x]$ に $p\mid m$ の項 $ax^{m}$($m=pm'$)があれば、$k$ は代数閉なので $b^p=a$ となる $b\in k$ があり、$h-\wp(bx^{m'})=h-ax^{m}+bx^{m'}$ では $x^m$ の項が消え、新しく加わる項の次数 $m'$ は $m$ より小さい($m=0$ なら $m'=0$ で、$a$ は $b^p-b=a$ を満たす $b\in k$ をとって消す。$k$ は代数閉なので解がある)。$p\mid m$ の項の最大次数についての帰納法で、標準形の元に達する。
(b) 標準形の元 $u\in L[x]$ が $\wp(L[x])$ に属するなら $u=0$ である。$u=\wp(v)$、$v\in L[x]$ とする。$v$ の次数 $d$ が $1$ 以上なら、最高次の係数を $b\neq0$ として、$v^p-v$ の $x^{pd}$ の係数は $b^p\neq0$ であり、$p\mid pd$ なので $u$ が標準形であることに反する。よって $v$ は定数で、$u=v^p-v$ も定数である。標準形の定数項は $0$ なので $u=0$ である。
$cx=h+\wp(v)$($h\in k[x]$、$v\in L[x]$)と仮定する。(a) により $h=h_0+\wp(w)$ となる標準形の $h_0\in k[x]$ と $w\in k[x]$ がある。すると $cx-h_0=\wp(v+w)$ であり、左辺は標準形($x$ の項と、$p\nmid m$ の項だけをもつ)なので、(b) により $cx=h_0$ となる。$x$ の係数を比べて $c\in k$ となり、矛盾する。$\square$
$k$ が代数閉であることは (a) でだけ使い、$L$ は完全体でなくてよい。$L$ が代数閉の場合の同じ主張は一般の基底変換定理の命題「$p$ 捩れ係数では一般の基底変換が成り立たない」にある。ここでは $L$ を $k(s)$ の分離閉包にとるので、$L$ は完全体でない。
$Y=\operatorname{Spec}k$、$X=\mathbb A^1_k=\operatorname{Spec}k[x]$、$f$ を構造射、$Y'=\mathbb A^1_k=\operatorname{Spec}k[s]$、$g$ を構造射とし、$F=\mathbb Z/p$ を定数層とする。$g$ は滑らかで $f$ は準コンパクトかつ準分離だが、底変換射 $g^{-1}R^1f_*F\to R^1f'_*F$ は同型でない。
$X'=\operatorname{Spec}k[x,s]$ で、$f'$ は $s$ 座標への射影である。
$H^1$ の計算。標数 $p$ の体 $L$ について、$\mathbb A^1_L$ のエタール位相で Artin–Schreier 列 $0\to\mathbb Z/p\to\mathbb G_a\xrightarrow{\wp}\mathbb G_a\to0$ は完全である(Stacks Tag 0A3J)。構造層のエタールコホモロジーは Zariski 位相のものと一致し(Stacks Tag 03P2)、アフィンスキームの上で $H^1$ は $0$ なので、長完全列から
$$
H^1(\mathbb A^1_L,\mathbb Z/p)\cong L[x]/\wp(L[x])
$$
を得る。体の拡大 $L\subset L_1$ による引き戻しは、包含 $L[x]\to L_1[x]$ が誘導する写像に対応する(長完全列の自然性)。
茎の計算。$Y'$ の生成点 $\eta$ の上に幾何的点 $\bar\eta\colon\operatorname{Spec}\Omega\to Y'$ をとる。$\eta$ での局所環は体 $k(s)$ であり、その狭義 Hensel 化は分離閉包 $L:=k(s)^{\mathrm{sep}}\subset\Omega$ である(狭義 Hensel 化は次元 $0$ の局所環で(Stacks Tag 06LK)、エタール代数の帰納極限として被約なので体であり、剰余体は $k(s)$ の分離閉包である(Stacks Tag 04GW))。節「設定と記号」の茎の公式から
$$
(R^1f'_*F)_{\bar\eta}=H^1(X'\times_{Y'}\operatorname{Spec}L,\mathbb Z/p)=H^1(\mathbb A^1_L,\mathbb Z/p)
$$
である。一方 $k$ は分離閉なので $\operatorname{Spec}k$ の狭義 Hensel 化は $k$ 自身であり、$(g^{-1}R^1f_*F)_{\bar\eta}=(R^1f_*F)_{g\circ\bar\eta}=H^1(\mathbb A^1_k,\mathbb Z/p)$ である。底変換射の $\bar\eta$ での茎は、$\mathbb A^1_L\to\mathbb A^1_k$ による引き戻し
$$
k[x]/\wp(k[x])\longrightarrow L[x]/\wp(L[x])
$$
である。$s\in L\setminus k$ なので、lem-sbc-as-classes により $sx$ の類はこの写像の像に入らない。よって茎の写像は全射でなく、底変換射は同型でない。$\square$
この例で外れている条件は、係数の位数 $p$ が $Y=\operatorname{Spec}k$ の剰余標数で割り切れないことだけである。直観的には、$\mathbb A^1_L$ には $k$ 上で定義されない Artin–Schreier 被覆 $y^p-y=sx$ があり、パラメータ $s$ を付け足すと $H^1$ が増える。SGA4 XVI Remarque 1.7(pp. 212–213)は、標数 $p$ のアフィン曲線の $H^1(X,\mathbb Z/p)$ について、無限遠での「暴分岐」のためにこの種の不変性が成り立たないと注意している。
以下、$k$ を標数が $2$ でない代数閉体とし、$\mu_2=\{\pm1\}$ を定数層 $\mathbb Z/2$ と同一視する。
$A$ を狭義 Hensel 局所環で離散付値環であるものとし、剰余体は $k$、一意化元を $\pi$、分数体を $K$ とする。このとき
$$
H^1(\operatorname{Spec}K,\mu_2)\cong K^\times/(K^\times)^2\cong\mathbb Z/2
$$
であり、生成元は $\pi$ の類である。
$2$ は $K$ で可逆なので、Kummer 列 $1\to\mu_2\to\mathbb G_m\xrightarrow{(\cdot)^2}\mathbb G_m\to1$ は $\operatorname{Spec}K$ のエタール位相で完全である(Stacks Tag 03PL)。$H^1(\operatorname{Spec}K,\mathbb G_m)=\operatorname{Pic}(\operatorname{Spec}K)=0$(Stacks Tag 03P8)なので、長完全列から $H^1(\operatorname{Spec}K,\mu_2)\cong K^\times/(K^\times)^2$ を得る。
$K^\times$ の元は $u\pi^m$($u\in A^\times$、$m\in\mathbb Z$)と書ける。$u$ の剰余類 $\bar u\in k^\times$ は代数閉体 $k$ の中で平方根 $\bar b$ をもち、$\bar b$ は $X^2-\bar u$ の単根である(微分 $2\bar b\neq0$)。$A$ は Hensel 局所環なので、$\bar b$ は $X^2-u$ の根 $b\in A$ に持ち上がり(Henselの補題)、$u=b^2$ は平方である。よって $K^\times/(K^\times)^2$ は $\pi$ の類で生成される。$\pi$ の付値は $1$ で奇数なので $\pi$ は平方でなく、群は $\mathbb Z/2$ である。$\square$
$Y=\mathbb A^1_k=\operatorname{Spec}k[t]$、$X=\mathbb G_m=\operatorname{Spec}k[t,t^{-1}]$、$f=j\colon X\to Y$ を包含とし、$Y'=\mathbb A^1_k=\operatorname{Spec}k[z]$、$g\colon Y'\to Y$ を $t\mapsto z^2$ で定まる射とする。$F=\mu_2$ とする。
この例では、$f=j$ は準コンパクトかつ準分離で、係数 $\mu_2$ の位数 $2$ は $Y$ の剰余標数と素であり、外れている条件は $g$ の滑らかさだけである。$z\neq0$ では $g$ はエタールなので、そこでは prop-sbc-etale により底変換が成り立つ。$R^1j_*\mu_2$ の原点での茎は「原点のまわりを一周する」2 重被覆 $w^2=t$ を記録しており、$g$ はまさにこの被覆なので、引き戻すと被覆が自明になって消える。平坦性だけでは、狭義局所化の上の穴あき近傍のコホモロジーを保てない。
分離閉体の拡大に対する不変性。$k\subset K$ を分離閉体の拡大、$X$ を $k$ スキーム、$F$ を $X$ 上の捩れアーベル層でその位数が $k$ の標数と素なものとすると、すべての $q$ について $H^q(X,F)\cong H^q(X_K,F_K)$ である(SGA4 XVI Corollaire 1.6、p. 211。この記事では証明しない)。$\operatorname{Spec}K\to\operatorname{Spec}k$ は滑らかではないが、$k$ を完全閉包に取り替えると $K$ は滑らかな $k$ 代数の帰納極限になり、極限への移行で滑らかな場合に帰着する(同 Corollaire 1.5 とその証明、pp. 211–212)。固有基底変換定理の系「分離閉体の拡大に対する不変性」は $X$ を固有に限る代わりに係数の位数を制限しない。prop-sbc-artin-schreier の計算は、$X=\mathbb A^1_k$ と $\mathbb Z/p$ でこの不変性が成り立たないことも示している。
固有で滑らかな射の特殊化。固有基底変換で茎が幾何的ファイバーのコホモロジーになり、滑らかな射の局所非輪状性でファイバーのコホモロジーが特殊化で変わらなくなる(SGA4 XVI Corollaire 2.2、p. 214。局所非輪状の系「固有で滑らかな射の高次順像は局所定数」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 係数の位数が $Y$ の剰余標数と素 | $\mathbb A^1_k\to\operatorname{Spec}k$ を $\mathbb A^1_k\to\operatorname{Spec}k$ で底変換、$\mathbb Z/p$(prop-sbc-artin-schreier) | 生成点での $R^1$ の底変換 |
| $g$ が滑らか(有限平坦な分岐被覆に替える) | $j\colon\mathbb G_m\to\mathbb A^1$ を $t=z^2$ で底変換、$\mu_2$(prop-sbc-ramified) | 原点での $R^1j_*\mu_2$ の底変換 |
| $g$ が滑らか(閉埋め込みに替える) | $j\colon\mathbb G_m\to\mathbb A^1$ を原点の幾何的点で底変換、$\mathbb Z/n$ | 原点での $j_*$ の底変換 |
3 行目の計算は一般の基底変換定理の命題「開埋め込みの一般の基底変換」の 2 にある。原点のファイバーは空なのに、$j_*\mathbb Z/n$ の原点での茎は $0$ でない。$g$ が閉埋め込みのときは $f$ が固有でなければ底変換は期待できず、固有基底変換定理がその代わりを務める。
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