Legendre多項式

同義語:ルジャンドル多項式Legendre polynomialsLegendre polynomial

概要

Legendre多項式(Legendre polynomials)とは、Rodrigues の公式 $P_n(x)=\frac{1}{2^nn!}\frac{d^n}{dx^n}(x^2-1)^n$ で定まる多項式の列 $P_0=1$、$P_1=x$、$P_2=\frac{3x^2-1}{2}$、… である。$\int_{-1}^1P_mP_n\,dx$ は $m\ne n$ なら $0$、$m=n$ なら $\frac{2}{2n+1}$ で、$P_n(1)=1$ と規格化した $[-1,1]$ 上の重み $1$ の直交多項式である。漸化式 $(n+1)P_{n+1}=(2n+1)xP_n-nP_{n-1}$、Legendre の微分方程式、母関数 $(1-2xt+t^2)^{-1/2}$ をもち、ポテンシャルの展開や Gauss–Legendre 公式による数値積分に使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 直交多項式, 積の微分とLeibnizの公式, 部分積分

Legendre 多項式(Legendre polynomials)$P_0,P_1,P_2,\dots$ は、区間 $[-1,1]$ の上で重みを付けない積分 $\int_{-1}^1f(x)g(x)\,dx$ に関して互いに直交する多項式の列であり、$P_n(1)=1$ となるように定数倍をそろえたものである。直交多項式 のうち最も基本的な例で、$(x^2-1)^n$ を $n$ 回微分する Rodrigues の公式で具体的に書ける。3 項の漸化式、2 階の微分方程式(Legendre の微分方程式)、母関数 $(1-2xt+t^2)^{-1/2}$ をもち、球の上の Laplace 方程式、重力や静電気のポテンシャルの展開、数値積分(Gauss–Legendre 公式)に現れる。

定義

Legendre 多項式

$n=0,1,2,\dots$ について
$$ P_n(x):=\frac1{2^nn!}\,\frac{d^n}{dx^n}(x^2-1)^n $$
とおき、$P_n$ を $n$ 次の Legendre 多項式 という。この式を Rodrigues の公式 という($n=0$ では $P_0=1$)。

最初のいくつか

$$ P_0=1,\quad P_1=x,\quad P_2=\frac{3x^2-1}2,\quad P_3=\frac{5x^3-3x}2,\quad P_4=\frac{35x^4-30x^2+3}8. $$
たとえば $(x^2-1)^3=x^6-3x^4+3x^2-1$ を 3 回微分すると $120x^3-72x$ で、$2^3\cdot3!=48$ で割ると $P_3=\frac{5x^3-3x}2$ である。どれも $x=1$ で値 $1$ をとる。

基本的な性質

$n\ge0$ について次が成り立つ。

  1. $P_n$ の次数はちょうど $n$ で、最高次の係数は $k_n:=\dfrac{(2n)!}{2^n(n!)^2}$ である。
  2. $P_n(-x)=(-1)^nP_n(x)$。すなわち $P_n$ は $n$ が偶数なら偶関数、奇数なら奇関数である。
  3. $P_n(1)=1$、$P_n(-1)=(-1)^n$。
  4. $\displaystyle P_n(x)=\frac1{2^n}\sum_{k=0}^{\lfloor n/2\rfloor}(-1)^k\binom nk\binom{2n-2k}nx^{n-2k}$。
二項展開と Leibniz の公式

4 と 1。 二項定理で $(x^2-1)^n=\sum_{k=0}^n(-1)^k\binom nkx^{2n-2k}$ と展開する。$x^{2n-2k}$ を $n$ 回微分すると、$2n-2k\ge n$ なら $\frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}$、$2n-2k< n$ なら $0$ である。$\frac{(2n-2k)!}{n!\,(n-2k)!}=\binom{2n-2k}n$ なので 4 を得る。$k=0$ の項が最高次で、係数は $\frac1{2^n}\binom{2n}n=k_n\ne0$ である。
2。 4 の右辺の各項は $x^{n-2k}$ で、$n-2k$ と $n$ の偶奇は同じである。
3。 $(x^2-1)^n=(x-1)^n(x+1)^n$ に 積の微分とLeibnizの公式 の定理「Leibniz の公式」を使うと
$$ \frac{d^n}{dx^n}(x^2-1)^n=\sum_{j=0}^n\binom nj\Bigl(\frac{d^j}{dx^j}(x-1)^n\Bigr)\Bigl(\frac{d^{n-j}}{dx^{n-j}}(x+1)^n\Bigr) $$
である。$j< n$ なら $\frac{d^j}{dx^j}(x-1)^n=\frac{n!}{(n-j)!}(x-1)^{n-j}$ は $x=1$ で $0$ なので、$x=1$ では $j=n$ の項 $n!\cdot(1+1)^n=2^nn!$ だけが残る。$2^nn!$ で割って $P_n(1)=1$ を得る。$P_n(-1)=(-1)^n$ は 2 から従う。$\square$

主定理 1:直交性

証明のための補題を 2 つ用意する。

端点での微分の値

$0\le j\le n-1$ について、$\dfrac{d^j}{dx^j}(x^2-1)^n$ は $x=\pm1$ で $0$ である。

$(x^2-1)^n=(x-1)^n(x+1)^n$ を Leibniz の公式で $j$ 回微分すると、各項は定数 $\times(x-1)^{n-i}(x+1)^{n-(j-i)}$($0\le i\le j$)の形で、$j\le n-1$ なので $x-1$ と $x+1$ の指数はどちらも $1$ 以上である。よって各項は $x=\pm1$ で $0$ である。$\square$

$(1-x^2)^n$ の積分

$\displaystyle J_n:=\int_{-1}^1(1-x^2)^n\,dx=\frac{2^{2n+1}(n!)^2}{(2n+1)!}$ である。

証明を開く

$n\ge1$ のとき、部分積分 で $J_n=\bigl[x(1-x^2)^n\bigr]_{-1}^1+2n\int_{-1}^1x^2(1-x^2)^{n-1}dx=2n(J_{n-1}-J_n)$ なので($x^2=1-(1-x^2)$ を使った)、$J_n=\frac{2n}{2n+1}J_{n-1}$ である。$J_0=2$ から $J_n=2\prod_{k=1}^n\frac{2k}{2k+1}$ で、分子と分母に $\prod_{k=1}^n2k=2^nn!$ を掛けると $J_n=\frac{2\cdot(2^nn!)^2}{(2n+1)!}$ である。$\square$

直交性と大きさ

$m,n\ge0$ について
$$ \int_{-1}^1P_m(x)P_n(x)\,dx=\begin{cases}0&(m\ne n),\\[4pt]\dfrac2{2n+1}&(m=n)\end{cases} $$
である。さらに、次数 $n-1$ 以下のすべての多項式 $q$ について $\int_{-1}^1P_n(x)q(x)\,dx=0$ である。

部分積分で微分を $q$ に移す

$q$ との直交性。 $u:=(x^2-1)^n$ とおき、$q$ を次数 $m\le n-1$ の多項式とする($n=0$ なら主張は空)。部分積分を 1 回行うと
$$ \int_{-1}^1q\,u^{(n)}\,dx=\Bigl[q\,u^{(n-1)}\Bigr]_{-1}^1-\int_{-1}^1q'\,u^{(n-1)}\,dx=-\int_{-1}^1q'\,u^{(n-1)}\,dx $$
である(lem-leg-vanish で $j=n-1$ として境界の項は $0$)。同じことを繰り返すと、$1\le i\le n$ について
$$ \int_{-1}^1q\,u^{(n)}\,dx=(-1)^i\int_{-1}^1q^{(i)}\,u^{(n-i)}\,dx $$
である(各段の境界の項 $\bigl[q^{(i-1)}u^{(n-i)}\bigr]_{-1}^1$ は、$n-i\le n-1$ なので lem-leg-vanish により $0$)。$i=m+1\le n$ とすると $q^{(m+1)}=0$ なので、積分は $0$ である。$P_n$ は $u^{(n)}$ の定数倍なので $\int_{-1}^1P_nq\,dx=0$ である。$m\ne n$ なら、小さいほうの次数の $P$ を $q$ にとれば $\int_{-1}^1P_mP_n\,dx=0$ を得る。
大きさ。 $P_n=k_nx^n+(\text{次数}\ n-1\ \text{以下})$ と上で示したことから $\int_{-1}^1P_n^2\,dx=k_n\int_{-1}^1x^nP_n\,dx$ である。$q=x^n$ に上の計算を $i=n$ まで行うと(境界の項は同じ理由で $0$)
$$ \int_{-1}^1x^nu^{(n)}\,dx=(-1)^nn!\int_{-1}^1(x^2-1)^n\,dx=n!\,J_n $$
である($(-1)^n(x^2-1)^n=(1-x^2)^n$)。よって lem-leg-beta から
$$ \int_{-1}^1P_n^2\,dx=\frac{k_n}{2^nn!}\,n!\,J_n=\frac{(2n)!}{2^{2n}(n!)^2}\cdot\frac{2^{2n+1}(n!)^2}{(2n+1)!}=\frac2{2n+1} $$
である。$\square$

$P_n$ を最高次の係数 $k_n$ で割ったものは、区間 $(-1,1)$、重み $1$ のモニック直交多項式である(直交多項式 の命題「モニック直交多項式の存在と一意性」の 3)。したがって、直交多項式 で示した一般の性質がすべて $P_n$ に当てはまる。

  • $P_n$ の根は $(-1,1)$ の中の相異なる $n$ 個の実数であり、$P_n$ と $P_{n+1}$ の根は交互に並ぶ(同記事の定理「零点の位置」「零点の交互性」)。
  • $P_n$ の根を節点にとる $n$ 点の公式 $\int_{-1}^1f\,dx\approx\sum_k\lambda_kf(x_k)$ は、次数 $2n-1$ 以下の多項式で正確である(同記事の定理「Gauss 求積」)。これを Gauss–Legendre 公式 という。$n=2$ では節点 $\pm\frac1{\sqrt3}$・重み $1,1$、$n=3$ では節点 $0,\pm\sqrt{3/5}$・重み $\frac89,\frac59,\frac59$ である(同記事の例「Gauss–Legendre 公式」)。

主定理 2:3 項漸化式

Bonnet の漸化式

$n\ge1$ について
$$ (n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)xP_n(x)-nP_{n-1}(x) $$
である。$P_0=1$、$P_1=x$ とこの漸化式から、すべての $P_n$ が順に決まる。

直交展開の係数を偶奇と $x=1$ の値で決める

$xP_n$ は次数 $n+1$ の多項式なので、$P_0,\dots,P_{n+1}$(次数が $0,\dots,n+1$ なので次数 $n+1$ 以下の多項式の基底)の 1 次結合 $xP_n=\sum_{k=0}^{n+1}c_kP_k$ で書ける。両辺に $P_k$ を掛けて積分すると、thm-leg-orthogonality により
$$ c_k\cdot\frac2{2k+1}=\int_{-1}^1xP_n(x)P_k(x)\,dx=\int_{-1}^1P_n(x)\,\bigl(xP_k(x)\bigr)\,dx $$
である。

  • $k\le n-2$ なら $xP_k$ の次数は $n-1$ 以下なので、thm-leg-orthogonality の後半により $c_k=0$ である。
  • $k=n$ なら、prop-leg-basic の 2 により $xP_n(x)^2$ は奇関数なので積分は $0$ で、$c_n=0$ である。
    よって $xP_n=c_{n+1}P_{n+1}+c_{n-1}P_{n-1}$ である。最高次の係数を比べると $k_n=c_{n+1}k_{n+1}$ で、
    $$ \frac{k_{n+1}}{k_n}=\frac{(2n+2)!}{2^{n+1}((n+1)!)^2}\cdot\frac{2^n(n!)^2}{(2n)!}=\frac{(2n+2)(2n+1)}{2(n+1)^2}=\frac{2n+1}{n+1} $$
    なので $c_{n+1}=\frac{n+1}{2n+1}$ である。次に $x=1$ を代入すると、prop-leg-basic の 3 により $1=c_{n+1}+c_{n-1}$ で、$c_{n-1}=\frac n{2n+1}$ である。$xP_n=\frac{n+1}{2n+1}P_{n+1}+\frac n{2n+1}P_{n-1}$ の両辺に $2n+1$ を掛けると主張の式になる。$\square$
漸化式で $P_4$ を求める

$n=3$ とすると $4P_4=7xP_3-3P_2=\frac{35x^4-21x^2}2-\frac{9x^2-3}2=\frac{35x^4-30x^2+3}2$ なので、$P_4=\frac{35x^4-30x^2+3}8$ であり、ex-leg-first と一致する。漸化式は、与えられた $x$ での値 $P_0(x),P_1(x),\dots,P_n(x)$ を、係数を展開せずに順に計算する方法でもある。

漸化式を最高次の係数で割ると、直交多項式 の定理「3 項漸化式」の係数は $\beta_n=0$、$\gamma_n=\frac{n^2}{4n^2-1}$ となる(同記事の例「古典直交多項式」の表)。

Legendre の微分方程式

Legendre の微分方程式

$y=P_n(x)$ は
$$ (1-x^2)y''-2xy'+n(n+1)y=0,\qquad\text{すなわち}\qquad\bigl((1-x^2)y'\bigr)'+n(n+1)y=0 $$
を満たす。

$(x^2-1)v'=2nxv$ を $n+1$ 回微分する

$v:=(x^2-1)^n$ とおくと $v'=2nx(x^2-1)^{n-1}$ なので $(x^2-1)v'=2nxv$ である。両辺を $n+1$ 回微分する。Leibniz の公式で、$x^2-1$ と $x$ は 3 回以上・2 回以上微分すると $0$ になることに注意すると
$$ (x^2-1)v^{(n+2)}+(n+1)\cdot2x\,v^{(n+1)}+\binom{n+1}2\cdot2\,v^{(n)}=2n\bigl(x\,v^{(n+1)}+(n+1)v^{(n)}\bigr) $$
である。$u:=v^{(n)}$ とおいて整理すると
$$ (x^2-1)u''+2xu'+\bigl(n(n+1)-2n(n+1)\bigr)u=0,\qquad\text{すなわち}\qquad(1-x^2)u''-2xu'+n(n+1)u=0 $$
である。$P_n$ は $u$ の定数倍なので同じ方程式を満たす。$\square$

$\frac{d}{dx}\bigl((1-x^2)\frac{d}{dx}\bigr)$ は端点で係数 $1-x^2$ が $0$ になる Sturm–Liouville 型の作用素で、$P_n$ はその固有値 $-n(n+1)$ の固有関数である(端点で係数が消えるので、Sturm–Liouville問題 の正則な問題の枠には入らない)。この見方では、thm-leg-orthogonality の $m\ne n$ の場合は、部分積分 $\int_{-1}^1\bigl((1-x^2)P_m'\bigr)'P_n\,dx=-\int_{-1}^1(1-x^2)P_m'P_n'\,dx$(境界の項は $1-x^2$ が $\pm1$ で $0$ なので消える)が $m,n$ について対称であることからも分かる。$n(n+1)$ が異なれば、対称な量を 2 通りに書いた差から積分が $0$ になるからである。
3 次元空間の Laplace 方程式 $\Delta\Phi=0$ を極座標で解き、$z$ 軸のまわりの回転で変わらない解を探すと、角度 $\theta$ の部分が $P_n(\cos\theta)$ になる。回転で変わる解には、Legendre の陪関数 $P_n^m(x)=(-1)^m(1-x^2)^{m/2}\frac{d^m}{dx^m}P_n(x)$ が現れ、これらから球面調和関数が作られる(Tes09 §10.3、(10.31)–(10.40)、pp. 226–227)。

母関数

母関数

$-1\le x\le1$、$|t|<\sqrt2-1$ について
$$ \frac1{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\sum_{n=0}^\infty P_n(x)t^n $$
であり、右辺は絶対収束する。

要点:左辺を $t$ の冪級数に展開し、その係数が thm-leg-recurrence と同じ漸化式を満たすことを、左辺が満たす微分方程式から示す。

詳しい証明を開く

冪級数に展開できること。 $s:=2xt-t^2$ とおくと $|s|\le2|t|+t^2=(1+|t|)^2-1< 1$ である。二項定理と組合せの恒等式 の定理「一般二項定理」($\alpha=-\frac12$)から $(1-s)^{-1/2}=\sum_{m\ge0}\binom{2m}m4^{-m}s^m$ で、$s^m=(2xt-t^2)^m$ を展開した各項の絶対値の和は $\sum_m\binom{2m}m4^{-m}(2|t|+t^2)^m< \infty$ である。よって項を $t$ の冪ごとにまとめ直してよく、左辺 $G(t)$ は $|t|< \sqrt2-1$ で絶対収束する冪級数 $\sum_na_nt^n$ に等しい。$a_n$ は $x$ の多項式で、$a_0=G(0)=1$ である。

係数の漸化式。 $G'(t)=(x-t)(1-2xt+t^2)^{-3/2}$ なので $(1-2xt+t^2)G'(t)=(x-t)G(t)$ である。冪級数は収束する範囲の内側で項別に微分でき、係数は和の関数で決まる(冪級数 の定理「項別微分」)ので、両辺の $t^n$ の係数を比べると、$n=0$ で $a_1=xa_0$、$n\ge1$ で $(n+1)a_{n+1}-2xna_n+(n-1)a_{n-1}=xa_n-a_{n-1}$、すなわち $(n+1)a_{n+1}=(2n+1)xa_n-na_{n-1}$ である。

結論。 $a_0=1=P_0$、$a_1=x=P_1$ で、$a_n$ と $P_n$ は同じ漸化式を満たすので、帰納法によりすべての $n$ で $a_n=P_n$ である。$\square$

等式は実際には $-1\le x\le1$、$|t|< 1$ で成り立つ(DLMF (18.12.11)。この記事では証明しない)。$t=1$、$x=\cos\theta$ を代入できないことは、右辺が $x=1$ で $\sum_n1$ となって発散することにも表れている。また、$-1\le x\le1$ で $|P_n(x)|\le1$ である(DLMF (18.14.1) で $\alpha=\beta=0$ としたもの。この記事では証明しない)。

点電荷のポテンシャルの展開

空間の 2 点 $\boldsymbol{r},\boldsymbol{r}'$ の原点からの距離を $r,r'$($r>0$)、なす角を $\theta$ とすると、余弦定理から $|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}'|^2=r^2-2rr'\cos\theta+r'^2$ である。$t:=r'/r$ とおくと
$$ \frac1{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}'|}=\frac1r\cdot\frac1{\sqrt{1-2t\cos\theta+t^2}}=\sum_{n=0}^\infty\frac{r'^n}{r^{n+1}}P_n(\cos\theta) $$
であり、prop-leg-generating により $r'<(\sqrt2-1)r$ で成り立つ(上の注意により $r'< r$ で成り立つ)。$\boldsymbol{r}'$ に置いた点電荷が遠くの点 $\boldsymbol{r}$ につくるポテンシャルを、$1/r$ の冪で展開した式(多重極展開)である。

Legendre 展開

thm-leg-orthogonality により、$Q_n(x):=\sqrt{\frac{2n+1}2}P_n(x)$ は、$[-1,1]$ 上の連続関数の空間に内積 $\langle f,g\rangle=\int_{-1}^1fg\,dx$ を入れたときの正規直交系である。$[-1,1]$ 上の連続関数 $f$ について
$$ a_n:=\frac{2n+1}2\int_{-1}^1f(x)P_n(x)\,dx,\qquad S_Nf:=\sum_{n=0}^Na_nP_n $$
とおき、$S_Nf$ を $f$ の Legendre 展開 の部分和という。

Legendre 展開の平均 2 乗収束

$[-1,1]$ 上の連続関数 $f$ について
$$ \lim_{N\to\infty}\int_{-1}^1\bigl(f(x)-S_Nf(x)\bigr)^2dx=0,\qquad\int_{-1}^1f(x)^2\,dx=\sum_{n=0}^\infty\frac2{2n+1}a_n^2 $$
である。

要点:$S_Nf$ は次数 $N$ 以下の多項式の中で平均 2 乗の意味の最良近似であり、Weierstrass の近似定理で一様に近い多項式がとれる。

詳しい証明を開く

$S_Nf=\sum_{n\le N}\langle f,Q_n\rangle Q_n$ である。$Q_0,\dots,Q_N$ は次数 $N$ 以下の多項式の空間の正規直交基底なので、Besselの不等式 の定理「有限個の場合の等式」により、次数 $N$ 以下のすべての多項式 $q$ について $\|f-S_Nf\|\le\|f-q\|$ であり、$\|f-S_Nf\|^2=\|f\|^2-\sum_{n\le N}\langle f,Q_n\rangle^2$ である。

$\varepsilon>0$ とする。Weierstrassの近似定理 の定理「Weierstrass の近似定理」により、$[-1,1]$ で $|f-q|\le\varepsilon$ となる多項式 $q$ がある。その次数を $N_0$ とすると、$N\ge N_0$ で $\|f-S_Nf\|\le\|f-q\|\le\sqrt{2}\,\varepsilon$ である。よって第 1 式が成り立つ。第 2 式は、$\langle f,Q_n\rangle^2=\frac2{2n+1}a_n^2$ と上の等式で $N\to\infty$ とすれば得られる。$\square$

平均 2 乗の意味の収束は、2 乗可積分な関数の空間 $L^2(-1,1)$ でも成り立ち、$\{Q_n\}$ は $L^2(-1,1)$ の正規直交基底になる(Tes09 Theorem 10.6($m=0$ の場合)、p. 226。この記事では証明しない)。

$|x|$ の展開

$f(x)=|x|$ は偶関数なので、奇数の $n$ では $a_n=0$ である。$a_0=\frac12\int_{-1}^1|x|\,dx=\frac12$、$a_2=\frac52\cdot2\int_0^1x\cdot\frac{3x^2-1}2\,dx=\frac52\cdot\frac14=\frac58$ なので
$$ S_2f=\frac12+\frac58\cdot\frac{3x^2-1}2=\frac3{16}+\frac{15}{16}x^2 $$
であり、これが次数 $2$ 以下の多項式の中で $\int_{-1}^1(|x|-q(x))^2dx$ を最小にする。最小値は $\frac23-\bigl(2a_0^2+\frac25a_2^2\bigr)=\frac23-\frac{21}{32}=\frac1{96}$ で、Besselの不等式 の例「Legendre 多項式による近似」と一致する。Taylor 展開と違い、Legendre 展開は $x=0$ で微分できない関数にも使える。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
Rodrigues の公式の係数 $\frac1{2^nn!}$$\frac{d^n}{dx^n}(x^2-1)^n$ そのもの$x=1$ での値が $2^nn!$ で、$P_n(1)=1$ が成り立たない(直交性は保たれる)
積分区間が $[-1,1]$ であること区間 $[0,1]$$\int_0^1P_0P_1\,dx=\frac12\ne0$ で、直交しない
$\lvert P_n(x)\rvert\le1$ の、$-1\le x\le1$$x=2$$P_2(2)=\frac{11}2>1$
母関数の $\lvert t\rvert< 1$$x=1$、$t=1$左辺は定義されず、右辺 $\sum_nP_n(1)=\sum_n1$ は発散する
反例の確かめ
  1. prf-leg-basic の 3 の計算そのものである。定数倍は直交性を変えない。
  2. $\int_0^1x\,dx=\frac12$ である。区間 $[0,1]$ で直交する多項式の列は、$x$ を $2x-1$ に置き換えた $P_n(2x-1)$ である($x=\frac{1+y}2$ と変数変換すると $\int_0^1P_m(2x-1)P_n(2x-1)\,dx=\frac12\int_{-1}^1P_mP_n\,dy$)。
  3. $P_2(2)=\frac{3\cdot4-1}2=\frac{11}2$ である。$|x|>1$ では $P_n(x)$ は $n\to\infty$ で大きくなりうる。
  4. $x=1$ では $1-2t+t^2=(1-t)^2$ なので、左辺は $\frac1{|1-t|}$ で、$t\to1$ で限りなく大きくなる。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する