$E_n$ オペラッド($E_n$-operad)とは、単位立方体の中に互いに交わらない小立方体を並べる仕方の空間がなす小立方体オペラッド $\mathcal{C}_n$ と、各項が弱ホモトピー同値であるオペラッドの射の列で結ばれ、対称群が各項に自由に作用する位相空間のオペラッドである。$\mathcal{C}_n$ の $j$ 項演算の空間は $\mathbb{R}^n$ の $j$ 点の配置空間とホモトピー同値で、$n$ 重ループ空間は $\mathcal{C}_n$ の代数になり、逆に弧状連結な $\mathcal{C}_n$ 代数は $n$ 重ループ空間と弱同値である(May の認識原理)。$n=1$ では積はホモトピーを除いて結合的で、$n\ge2$ では連結成分のモノイドが可換になり、$E_\infty$ オペラッドは、作用が自由で各項が弱可縮なものとして特徴づけられる。
$E_n$ オペラッド($E_n$-operad)は、$n$ 重ループ空間がもつ演算の構造を記述する位相空間のオペラッドである。基本となるのは 小立方体オペラッド $\mathcal{C}_n$ で、その $j$ 項演算は、単位立方体の中に互いに交わらない $j$ 個の小さな立方体を並べる仕方である。$n$ 重ループ空間 $\Omega^nY$ の $j$ 個の元は、それぞれを小立方体に縮めて貼り合わせることで 1 つの元にまとめられる。これが $\Omega^nY$ への $\mathcal{C}_n$ の作用であり、対称群が自由に作用するオペラッドで $\mathcal{C}_n$ と弱同値なものを $E_n$ オペラッドという。
$n=1$ では小区間を一列に並べるだけなので、$\mathcal{C}_1$ は「ホモトピーを除いて結合的」な積を表す。$n\ge2$ では小立方体どうしが互いの周りを回り込めるので、積はホモトピーを除いて可換にもなる。$n$ が大きいほど可換性を保証するホモトピーの「高次の整合性」が多く備わり、$n=\infty$ では完全にそろう(May72 p. 3)。May の 認識原理 によれば、連結な $\mathcal{C}_n$ 空間は $n$ 重ループ空間と弱同値である。
この記事では、小立方体オペラッドを定義し、その演算の空間が配置空間とホモトピー同値であることを証明する。次に、$n$ 重ループ空間への作用を構成し、$\mathcal{C}_n$ 空間の連結成分のなすモノイドが $n\ge2$ で可換になることを示す。最後に $E_n$ オペラッドを定義し、$E_\infty$ オペラッドを特徴づけ、認識原理を述べる。
以下、位相空間は May72 にならってコンパクト生成空間で考える。$J:=(0,1)$、$I:=[0,1]$ とし、$1\le n<\infty$ とする。$\Sigma_j$ の作用、合成、代数の記法は オペラッド の記事に従う。
これは May72 定義 4.1(p. 17)の小立方体オペラッドである。そこでは $\mathcal{C}_n(j)$ に $j$ 個の $J^n$ の非交和から $J^n$ への写像の空間としての位相を入れるが、それが上の位相と一致することが同 補題 4.2(p. 17)にある。$\gamma(c;d_1,\dots,d_k)$ は、$c$ の第 $s$ の小立方体の中に $d_s$ の配置を縮小して入れたものである。
$\mathcal{C}_n$ はオペラッドであり、$\Sigma_j$ は $\mathcal{C}_n(j)$ に自由に作用する。
要点:小立方体の合成は小立方体で、像は外側の小立方体の像に入る。公理は写像の合成の結合律と、並べ替えの付け替えの計算である。
合成が定まること:$c_s\circ d_{s,t}$ は各座標が正の傾きの 1 次式で $J^n$ を $J^n$ に写すので小立方体であり、その像は $c_s(J^n)$ に含まれる。$s\ne s'$ なら $c_s(J^n)\cap c_{s'}(J^n)=\emptyset$ なので像は交わらず、同じ $s$ の中では $d_{s,t}$ の像が交わらず $c_s$ が単射なので交わらない。角の座標は $c$ と $d_s$ の角の座標の多項式なので、$\gamma$ は連続である。
公理:結合律と単位律は、写像の合成が結合的で恒等写像が単位であることから従う。$((c\sigma)\tau)_m=(c\sigma)_{\tau(m)}=c_{\sigma\tau(m)}$ なので右作用である。同変性の第 1 式:左辺の第 $s$ ブロックの第 $t$ 成分は $c_{\sigma(s)}\circ d_{s,t}$ である。右辺は $e:=\gamma(c;d_{\sigma^{-1}(1)},\dots,d_{\sigma^{-1}(k)})$ に $\pi:=\sigma\langle j_1,\dots,j_k\rangle$ を作用させたもので、その同じ位置の成分は $e_{\pi(m)}$、すなわち $e$ の第 $\sigma(s)$ ブロックの第 $t$ 成分 $c_{\sigma(s)}\circ d_{s,t}$ である。第 2 式も同様に、両辺の第 $s$ ブロックの第 $t$ 成分はともに $c_s\circ d_{s,\tau_s(t)}$ である。
自由性:$c\sigma=c$ で $\sigma(m)\ne m$ なら $c_{\sigma(m)}=c_m$ となり、2 つの成分の像が一致して交わらないことに反する。$\square$
$c\mapsto c\times\operatorname{id}_J$ はオペラッドの射 $\iota_n\colon\mathcal{C}_n\to\mathcal{C}_{n+1}$ を与え、各 $\iota_{n,j}$ は閉埋め込みである。$\mathcal{C}_\infty(j)$ を $\mathcal{C}_n(j)$ の和集合(各段の位相の帰納極限)とすると、$\mathcal{C}_\infty$ もオペラッドになる(May72 定義 4.1)。
多様体 $M$ の $j$ 点の 配置空間 を $F(M,j):=\{(x_1,\dots,x_j)\in M^j\mid r\ne s\Rightarrow x_r\ne x_s\}$ とし、$\Sigma_j$ を $(x\sigma)_m:=x_{\sigma(m)}$ で右から作用させる。$J^n$ と $\mathbb{R}^n$ は同相なので、$F(J^n,j)$ と $F(\mathbb{R}^n,j)$ は $\Sigma_j$ 同変に同相である。
$1\le n<\infty$、$j\ge1$ とし、$m:=(\tfrac12,\dots,\tfrac12)$ とする。中心をとる写像
$$
g\colon\mathcal{C}_n(j)\to F(J^n,j),\qquad g(c):=(c_1(m),\dots,c_j(m))
$$
は $\Sigma_j$ 同変なホモトピー同値である。さらに $\Sigma_j$ 同変な $f\colon F(J^n,j)\to\mathcal{C}_n(j)$ で $g\circ f=\operatorname{id}$ を満たすものがあり、$f\circ g$ は $f$ の像を動かさない $\Sigma_j$ 同変なホモトピーで恒等写像とつながる。
要点:各点を中心とする同じ大きさの立方体で、互いに交わらず $J^n$ に収まる最大のものが $f$ を与える。$c$ から $f(g(c))$ へは、中心を止めて各小立方体をいったん小さな立方体まで縮め、それから最大の大きさまで広げる。
$b=(b_1,\dots,b_j)\in F(J^n,j)$ について、$\|\cdot\|_\infty$ を最大値ノルムとして $\delta(b):=\min\bigl(\min_{r,i}2\min(b_{r,i},1-b_{r,i}),\ \min_{r\ne s}\|b_r-b_s\|_\infty\bigr)>0$ とおく($j=1$ なら第 2 項はない)。$\delta$ は連続である。$0<\ell\le\delta(b)$ のとき、$b_r$ を中心とし各辺の長さ $\ell$ の開立方体は $J^n$ に収まり($b_{r,i}\pm\ell/2\in I$)、互いに交わらない(中心の距離が $\|b_r-b_s\|_\infty\ge\ell$)。この配置を $E(b,\ell)\in\mathcal{C}_n(j)$ と書き、$f(b):=E(b,\delta(b))$ とおく。$f$ は連続で同変であり、$g\circ f=\operatorname{id}$ である。
$c\in\mathcal{C}_n(j)$ の第 $r$ 成分の第 $i$ 辺の長さを $\ell_{r,i}$ とし、$\varepsilon(c):=\min(\min_{r,i}\ell_{r,i},\ \delta(g(c)))>0$ とおく。$H\colon\mathcal{C}_n(j)\times I\to\mathcal{C}_n(j)$ を次で定める。$0\le t\le\frac12$ では、各成分の中心を止め、第 $i$ 辺の長さを $(1-2t)\ell_{r,i}+2t\,\varepsilon(c)$ にする。この長さは $\varepsilon(c)$ 以上 $\ell_{r,i}$ 以下なので、新しい立方体は元の立方体に含まれ、配置は $\mathcal{C}_n(j)$ にとどまる。$t=\frac12$ では $E(g(c),\varepsilon(c))$ になる。$\frac12\le t\le1$ では $E\bigl(g(c),(2-2t)\varepsilon(c)+(2t-1)\delta(g(c))\bigr)$ とする。辺の長さは $\varepsilon(c)$ と $\delta(g(c))$ の間にあるので、これも $\mathcal{C}_n(j)$ に入る。
$H$ は角の座標が連続に動くので連続で、成分ごとに定義しているので同変であり、$H(c,0)=c$、$H(c,1)=f(g(c))$ である。$c=f(b)$ なら $\ell_{r,i}=\delta(b)=\varepsilon(c)$ なので $H(c,t)=c$ である。よって $g$ と $f$ は互いに同変なホモトピー逆である。$\square$
May72 定理 4.8(p. 19)は同じ主張を $1\le n\le\infty$ について述べている。上の証明で縮める段を挟むのは、すべての辺を同時に長さ $\delta(g(c))$ へ線形に変えると、途中で 2 つの立方体が交わることがあるからである。たとえば $n=2$ で、中心 $(0.4,0.3)$ と $(0.6,0.7)$、辺の長さがどちらも横 $0.2$・縦 $0.5$ の 2 つの長方形は交わらず、$\delta=0.4$ であるが、辺の長さを中点で $(0.3,0.45)$ にすると、両者は $(0.45,0.55)\times(0.475,0.525)$ で交わる。
要点:1 と 2 は角の座標の不等式で定まる凸集合であることから、3 は配置空間の 2 点の差の方向をとる写像から出る。
1:$\mathcal{C}_n(1)$ は $\{(u,v)\mid0\le u_i< v_i\le1\}$ で凸である。
2:$\omega(c)=(r_1,\dots,r_j)$ を、$c_{r_1}(J),\dots,c_{r_j}(J)$ が左から順に並ぶ列とする。$(c\sigma)_m=c_{\sigma(m)}$ なので、$c\sigma$ で左から $p$ 番目の区間の番号は $\sigma^{-1}(r_p)$ であり、$\omega(c\sigma)=\omega(c)\sigma$ である(オペラッド の例「可換オペラッドと結合オペラッド」の作用)。$\gamma(c;d_1,\dots,d_k)$ の区間は、ブロックの順が $c_s$ の並び、ブロックの中の順が $d_s$ の並びで決まるので、$\omega$ は辞書式の合成を保つ。$\omega^{-1}(r_1,\dots,r_j)$ は $0\le u_{r_1}< v_{r_1}\le u_{r_2}< \cdots< v_{r_j}\le1$ で定まる空でない凸集合である。これらは有限個の互いに交わらない閉集合で $\mathcal{C}_1(j)$ をおおうので、どれも開集合でもあり、ちょうど弧状連結成分である。
3:$h(x_1,x_2):=(x_2-x_1)/\lvert x_2-x_1\rvert$ は $F(\mathbb{R}^n,2)\to S^{n-1}$ で、成分の入れ替えを対蹠写像に写す。$k(z):=(-z/2,z/2)$ は同変で $h\circ k=\operatorname{id}$ であり、$(x,t)\mapsto(1-t)x+t\,k(h(x))$ は $F(\mathbb{R}^n,2)$ の中の同変なホモトピーである(2 点の差が $((1-t)\lvert x_2-x_1\rvert+t)\,h(x)\ne0$)。これと thm-en-configuration を合わせる。$S^{n-1}$ は $n\ge2$ で弧状連結であり、可縮でない(球面)。$\square$
2 の射 $\mathcal{C}_1\to\mathrm{Ass}$ は各項でホモトピー同値なので、$\mathcal{C}_1$ は結合オペラッド $\mathrm{Ass}$ の「ホモトピー版」である(May72 定義 3.5(p. 13)の意味の $A_\infty$ オペラッドであることが同 定理 4.8 で述べられている)。
基点付き空間 $(Y,*)$ について、$\Omega^nY$ を $\partial I^n$ を $*$ に写す写像 $I^n\to Y$ の空間(コンパクト開位相)とする。$n=1$ のときは ループ空間 $\Omega Y$ である。小 $n$ 立方体 $c$ は同じ式で $\bar c\colon I^n\to I^n$ に延び、その像は閉直方体 $\prod_i[u_i,v_i]$ である。
$c\in\mathcal{C}_n(j)$、$y_1,\dots,y_j\in\Omega^nY$、$w\in I^n$ について
$$
\theta_j(c;y_1,\dots,y_j)(w):=\begin{cases}y_r\bigl(\bar c_r^{-1}(w)\bigr)&(w\in\bar c_r(I^n))\\ *&(w\text{ がどの }c_r(J^n)\text{ にも入らない})\end{cases}
$$
と定め、$\theta_0$ を定値写像 $*$ とする。この $\theta$ は $\Omega^nY$ に $\mathcal{C}_n$ 代数の構造を与え、基点を保つ写像 $Y\to Y'$ から誘導される $\Omega^nY\to\Omega^nY'$ は $\mathcal{C}_n$ 代数の射である。
要点:閉直方体どうしは境界でしか交わらず、境界ではどの定義も $*$ になるので、貼り合わせの補題で連続になる。公理は、縮めて貼る操作を 2 段で行っても 1 段で行っても同じことである。
定義が定まること:$r\ne s$ で $w\in\bar c_r(I^n)\cap\bar c_s(I^n)$ とする。$w$ が $c_r(J^n)$ の点なら、$w$ の近くに $c_s(J^n)$ の点があり、$c_r(J^n)$ と交わることに反する。よって $w$ は両方の直方体の境界にあり、$\bar c_r^{-1}(w),\bar c_s^{-1}(w)\in\partial I^n$ なので、$y_r,y_s$ の値はどちらも $*$ である。どの $c_r(J^n)$ にも入らない点が $\bar c_r(I^n)$ に入るときも同様である。$w\in\partial I^n$ なら値は $*$ である。
連続性:$\mathcal{C}_n(j)\times(\Omega^nY)^j\times I^n$ を、$w\in\bar c_r(I^n)$ で定まる閉集合 $A_r$ と、$w$ がどの $c_r(J^n)$ にも入らないことで定まる閉集合 $A_0$ でおおう。$A_r$ の上では値は $y_r$ と $\bar c_r^{-1}(w)=\bigl((w_i-u_{r,i})/(v_{r,i}-u_{r,i})\bigr)_i$ の評価で、$I^n$ が局所コンパクトなので評価写像は連続である。$A_0$ の上では定数である。重なりで値が一致するので、有限個の閉集合についての貼り合わせの補題により連続である。$I^n$ は局所コンパクトなので、随伴をとって $\theta_j\colon\mathcal{C}_n(j)\times(\Omega^nY)^j\to\Omega^nY$ も連続である。
公理(オペラッド の命題「構造写像による記述」の 1〜3):単位は $\theta_1(\operatorname{id};y)=y$ である。同変性:$\theta_j(c\sigma;y)$ は $y_m$ を $c_{\sigma(m)}$ に貼り、$\theta_j(c;\sigma\cdot y)$ は $(\sigma\cdot y)_r=y_{\sigma^{-1}(r)}$ を $c_r$ に貼るので、どちらも $y_m$ を $c_{\sigma(m)}$ に貼る。結合律:$e=\gamma(c;d_1,\dots,d_k)$ とすると、$\theta(e;y)$ は $c_s(d_{s,t}(J^n))$ の上で $y_{s,t}\circ(c_s\circ d_{s,t})^{-1}$、それ以外で $*$ である。$\theta_k(c;\theta(d_1;y^{(1)}),\dots)$ は $c_s(J^n)$ の上で $\theta(d_s;y^{(s)})\circ c_s^{-1}$ であり、これは $c_s(d_{s,t}(J^n))$ の上で $y_{s,t}\circ d_{s,t}^{-1}\circ c_s^{-1}$、$c_s(J^n)$ のほかの点で $*$ である。$c_s(J^n)$ の外では $*$ である。境界の点ではどちらも $*$ なので、両者は一致する。射であること:$\varphi\colon Y\to Y'$ について $\varphi\circ\theta_j(c;y)=\theta_j(c;\varphi\circ y_1,\dots,\varphi\circ y_j)$ は定義から明らかである。$\square$
これは May72 定理 5.1(p. 21)の作用である。$n=1$ で $c$ を 2 つの区間 $(0,\frac12),(\frac12,1)$ とすると、$\theta_2(c;y_1,y_2)$ はループの連結 $y_1\cdot y_2$ である。区間の取り方を変えると、連結の「時間の配分」が変わる。ループの連結はホモトピーを除いてしか結合的でないが、すべての配分を $\mathcal{C}_1$ の点としてまとめて扱うことで、結合律が厳密に成り立つ代数構造に置き換わっている。
$\mathcal{C}_n$ 代数を $\mathcal{C}_n$ 空間 といい、$\theta_0$ の値を基点 $*$ とする。$c^\circ\in\mathcal{C}_n(2)$ を、第 1 座標で $J^n$ を半分に分けた 2 つの直方体 $(0,\frac12)\times J^{n-1}$、$(\frac12,1)\times J^{n-1}$ の組とする。
$X$ を $\mathcal{C}_n$ 空間とし、弧状連結成分の集合 $\pi_0(X)$ に $[x][y]:=[\theta_2(c^\circ;x,y)]$ と定める。
要点:演算の空間の中の道は、演算の値の間の道を与える。単位律と結合律は $\mathcal{C}_n(1)$ と $\mathcal{C}_1(3)$ の 1 つの成分が凸であることから、可換律は $\mathcal{C}_n(2)$ が弧状連結であることから出る。
$\theta_2(c^\circ;-,-)$ は連続なので、積は $\pi_0$ の上で定まる。一般に $\mathcal{C}_n(j)$ の中の道 $\alpha$ について $t\mapsto\theta_j(\alpha(t);x)$ は $X$ の中の道であり、$\alpha$ の両端の演算の値をつなぐ。
単位元:構造写像の 1 により $\theta_2(c^\circ;x,*)=\theta_2(c^\circ;\theta_1(\operatorname{id};x),\theta_0)=\theta_1(\gamma(c^\circ;\operatorname{id},*);x)$ であり、$\gamma(c^\circ;\operatorname{id},*)\in\mathcal{C}_n(1)$ は左半分の直方体である。$\mathcal{C}_n(1)$ は凸なので(cor-en-small-arity)恒等写像と道でつながり、$\theta_2(c^\circ;x,*)$ と $\theta_1(\operatorname{id};x)=x$ は同じ成分にある。右からも同じである。
結合律:$([x][y])[z]$ と $[x]([y][z])$ はそれぞれ $\theta_3(\gamma(c^\circ;c^\circ,\operatorname{id});x,y,z)$、$\theta_3(\gamma(c^\circ;\operatorname{id},c^\circ);x,y,z)$ の成分である。2 つの演算は、どちらも第 1 座標の 3 つの区間を左から $1,2,3$ の順に並べた $\mathcal{C}_1(3)$ の点に、$\iota$ を $n-1$ 回合わせた射で $\mathcal{C}_n(3)$ に写したものである。$\mathcal{C}_1(3)$ の順が $(1,2,3)$ の成分は凸なので、2 点は道でつながる。
可換律:互換 $\tau$ について $\theta_2(c^\circ;y,x)=\theta_2(c^\circ;\tau\cdot(x,y))=\theta_2(c^\circ\tau;x,y)$ である。$n\ge2$ なら $\mathcal{C}_n(2)$ は弧状連結(cor-en-small-arity)なので $c^\circ\tau$ と $c^\circ$ は道でつながり、$[y][x]=[x][y]$ である。
3:射は $\theta_2(c^\circ;-,-)$ と $\theta_0$ を保つ。$\square$
$X=\Omega^nY$ では、$\pi_0(\Omega^nY)$ は $n$ 次のホモトピー群 $\pi_n(Y,*)$ で、$c^\circ$ による積は第 1 座標に沿った貼り合わせ、すなわち $\pi_n$ の群の演算である。したがって 2 は、$n\ge2$ で $\pi_n$ が可換であることの別証明を与える(Eckmann–Hilton論法 の命題「2 つの座標に沿った貼り合わせの一致」と同じ現象である)。$n=1$ では $\mathcal{C}_1(2)$ が 2 点からなる $S^0$ とホモトピー同値で、$c^\circ$ と $c^\circ\tau$ は別の成分にあるので、可換性は出てこない。
$\mathcal{C}_n$ 自身は $E_n$ オペラッドである。射を一方向に限らず「つないだ列」で弱同値を定めるのは、2 つの $E_n$ オペラッドの間に直接の射があるとは限らないからである。May72 は $n=1$ と $n=\infty$ を別の形で定義している(定義 3.5, p. 13)。$A_\infty$ オペラッドは、作用が自由で、$\mathrm{Ass}$ への射が各項で $\Sigma_j$ 同変なホモトピー同値であるオペラッドであり、$E_\infty$ オペラッドは、作用が自由で各項が可縮なオペラッドである。$E_\infty$ については、次のとおり上の定義とほぼ同じになる。
$\Sigma_j$ が各 $E(j)$ に自由に作用するオペラッド $E$ について、$E$ が $E_\infty$ オペラッドであることと、各 $E(j)$ が弱可縮であること(空でなく、すべてのホモトピー群が自明であること)は同値である。
要点:各 $\mathcal{C}_\infty(j)$ は可縮である。弱可縮性は弱同値で保たれ、逆に弱可縮なら $E\times\mathcal{C}_\infty$ の 2 つの射影が弱同値になる。
$\mathcal{C}_\infty(j)$ は可縮である(May72 定理 4.8, p. 19。この記事では証明しない)。弱ホモトピー同値の一方が弱可縮なら他方も弱可縮なので、$E_\infty$ オペラッドをつなぐ列のすべての項は弱可縮である。逆に各 $E(j)$ が弱可縮とする。オペラッド $P,Q$ について $(P\times Q)(j):=P(j)\times Q(j)$ に、成分ごとの合成と単位 $(1,1)$、対角的な $\Sigma_j$ の作用を入れると、公理は成分ごとに成り立つのでオペラッドになり、2 つの射影はオペラッドの射である。$P=E$ なら作用は自由である。$Q=\mathcal{C}_\infty$ とすると、ホモトピー群は直積で計算されるので、射影 $E\times\mathcal{C}_\infty\to E$ と $E\times\mathcal{C}_\infty\to\mathcal{C}_\infty$ はどちらも弱同値であり、$E\leftarrow E\times\mathcal{C}_\infty\to\mathcal{C}_\infty$ が求める列である。$\square$
$n$ による違いを、2 項演算の空間と配置空間の性質でまとめる。
| $n$ | $\mathcal{C}_n(2)$ のホモトピー型 | $\pi_0$ のモノイド | 補足 |
|---|---|---|---|
| $1$ | $S^0$(2 点) | 一般に非可換 | $\mathcal{C}_1(j)\to\mathrm{Ass}(j)$ はホモトピー同値 |
| $2$ | $S^1$ | 可換 | $F(\mathbb{R}^2,j)/\Sigma_j$ はブレイド群 $B_j$ の Eilenberg–MacLane 空間 $K(B_j,1)$ |
| $3\le n<\infty$ | $S^{n-1}$ | 可換 | $F(\mathbb{R}^n,j)$ は単連結 |
| $\infty$ | 可縮 | 可換 | 各項が可縮 |
$S^{n-1}$ は cor-en-small-arity、$\pi_0$ は prop-en-pi-zero による($n=\infty$ では、$\mathcal{C}_2\to\mathcal{C}_\infty$ に沿って $\mathcal{C}_2$ 空間とみる)。$n=2$ の行の事実と $n\ge3$ の単連結性は Fadell–Neuwirth のファイブレーションによるもので、May72 系 4.5 とそのあと(p. 18)に述べられている(この記事では証明しない)。$n=2$ では、$c^\circ$ から $c^\circ\tau$ へ 2 つの長方形を互いの周りに半周させる道と、それを $\tau$ で写した道をつなぐと、$\mathcal{C}_2(2)\simeq S^1$ を 1 周する縮まない閉じた道になる(中心の差の方向が 1 周する)。2 回の入れ替えが元に戻らないこの現象が、$\mathcal{C}_2$ の演算の空間に組紐が現れる理由である。小立方体の代わりに小円板(球)を使った小円板オペラッドも同じように定義でき、その項も配置空間とホモトピー同値である(Lei04 例 2.2.16, p. 49)。
$n$ 重ループ空間は $\mathcal{C}_n$ 空間であった(thm-en-loop-action)。逆向きの主張が May の認識原理である。
$1\le n<\infty$ とし、$X$ を弧状連結な $\mathcal{C}_n$ 空間(基点は非退化)とする。このとき基点付き空間 $Y$ があり、$X$ と $\Omega^nY$ は、$\mathcal{C}_n$ 空間の射で弱ホモトピー同値であるものの列(向きは問わない)で結ばれる。
これは May72 定理 13.1(p. 69)の場合 $\mathcal{D}=\mathcal{C}_n$ で、$Y$ は 2 側バー構成 $B(\Sigma^n,\mathcal{C}_n,X)$($\Sigma^n$ は $n$ 重懸垂の関手)として具体的に作られる(この記事では証明しない)。同書はバー構成の単体的空間に技術的な条件を課しており、必要ならオペラッドを少し取り替えてその条件を満たすようにしている(p. 68、付録の命題 A.10(p. 88)・補題 A.11(p. 89))。同定理は、$\Sigma_j$ が自由に作用するオペラッド $\mathcal{D}$ と各項でホモトピー同値であるオペラッドの射 $\mathcal{D}\to\mathcal{C}_n$ があるとき、$\mathcal{D}$ 空間について同じ結論を述べている。$E_\infty$ 空間については、弧状連結な $E_\infty$ 空間が無限ループ空間($Y_i\cong\Omega Y_{i+1}$ となる基点付き空間の列 $(Y_i)_{i\ge0}$ の $Y_0$)と弱同値になる(同 定理 14.4, pp. 75–77)。
∞オペラッド の言葉では、$\mathcal{C}_n$ から作られる∞オペラッド $\mathbb{E}_n$ が使われる。Lur17 は、立方体 $(-1,1)^n$ の各座標の 1 次式による埋め込みの空間から位相的な圏を作り、その脈体として $\mathbb{E}_n$ を定め(Definition 5.1.0.1–5.1.0.4, pp. 758–759)、$\mathbb{E}_1$ が結合∞オペラッドと同値であることを示している(Example 5.1.0.7, p. 759)。また $\mathbb{E}_{n+m}$ は $\mathbb{E}_n$ と $\mathbb{E}_m$ のテンソル積である(Theorem 5.1.2.2(Dunn の加法性定理), p. 768)。$E_n$ 構造が「互いに両立する $n$ 個の結合的な積」と言いかえられるのはこのためである(同 p. 760)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $n\ge2$ | 2 文字 $a,b$ の上の自由モノイド $W$(離散位相)に $\mathcal{C}_1\to\mathrm{Ass}$ を通して入れた $\mathcal{C}_1$ 作用 | $\pi_0$ が可換でなく、この作用は $\iota_1$ に沿ったどの $\mathcal{C}_2$ 作用の制限でもない |
| 連結性(認識原理) | 加法モノイド $\mathbb{N}$(離散位相)に $\mathcal{C}_n\to\mathrm{Com}$ を通して入れた $\mathcal{C}_n$ 作用 | $\mathcal{C}_n$ 空間として $n$ 重ループ空間と弱同値にならない |
| $\Sigma_j$ の作用が自由($E_\infty$) | 可換オペラッド $\mathrm{Com}$ | 各項は可縮だが $E_\infty$ オペラッドでない |
| $n=\infty$($E_\infty$) | $\mathcal{C}_n$($n$ は有限) | $\Sigma_j$ は自由に作用するが、$E_\infty$ オペラッドでない |
1 行目.$\theta_j(c;x):=\theta^W_j(\omega(c);x)$($\theta^W$ はモノイド $W$ の $\mathrm{Ass}$ 代数の構造。オペラッド の定理「モノイドと可換モノイドの記述」)は、cor-en-small-arity の射 $\omega\colon\mathcal{C}_1\to\mathrm{Ass}$ を合成した構造で、$\omega$ が局所定数なので連続である。$\pi_0(W)=W$ で、$c^\circ$ による積は $W$ の積なので $ab\ne ba$ である。$\mathcal{C}_2$ 作用 $\theta'$ で $\theta'\circ\iota_1=\theta$ となるものがあれば、$\mathcal{C}_2$ の $c^\circ$ は $\mathcal{C}_1$ の $c^\circ$ の像なので、$\theta'$ から作った $\pi_0$ の積も $W$ の積であり、prop-en-pi-zero の 2 により可換になって矛盾する。この例は「$\mathcal{C}_n$ 空間である」を $n=1$ で満たすが、$n\ge2$ を満たさないため可換性が破れる。
2 行目.唯一の射 $\mathcal{C}_n\to\mathrm{Com}$ と可換モノイド $(\mathbb{N},+,0)$ の $\mathrm{Com}$ 代数の構造を合成すると、$\theta_j(c;a_1,\dots,a_j)=a_1+\cdots+a_j$ となる $\mathcal{C}_n$ 空間 $\mathbb{N}$ が得られる。$\mathcal{C}_n$ 空間の射で弱ホモトピー同値なものは $\pi_0$ の全単射なモノイド準同型を引き起こす(prop-en-pi-zero の 3)ので、そのような列で $\Omega^nY$ と結ばれれば $\pi_0(\mathbb{N})=\mathbb{N}$ は $\pi_0(\Omega^nY)=\pi_n(Y,*)$ と同型なモノイドになる。後者は群だが、$\mathbb{N}$ では $1$ が逆元をもたないので矛盾する。$\mathbb{N}$ は弧状連結でないので、thm-en-recognition の仮定のうち連結性だけが破れている。
3 行目.$\mathrm{Com}(j)$ は 1 点なので可縮だが、$j\ge2$ で $\Sigma_j$ は自明に作用し、自由でない。$\mathrm{Com}$ 空間は可換な位相モノイドにほかならず(May72 命題 3.2, p. 12)、弧状連結な $\mathrm{Com}$ 空間(基点は非退化)は Eilenberg–MacLane 空間の積と弱ホモトピー同値になる(同 命題 3.6, p. 14。この記事では証明しない)。自由な作用の条件は、このような狭すぎる構造を除くためにある。
4 行目.$\mathcal{C}_n(2)$ は $S^{n-1}$ とホモトピー同値で(cor-en-small-arity)、$n=1$ なら連結でなく、$n\ge2$ なら $\pi_{n-1}(S^{n-1})\cong\mathbb{Z}$ なので、弱可縮でない。prop-en-e-infinity により $\mathcal{C}_n$ は $E_\infty$ オペラッドでない。
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