Kähler多様体

同義語:ケーラー多様体Kähler manifold

概要

Kähler多様体(Kähler manifold)とは、複素構造と両立するリーマン計量をもち、その基本 $2$ 形式 $\omega$ が閉形式 $d\omega=0$ となる複素多様体である。複素曲線、複素トーラス、Fubini–Study 計量をもつ射影空間が例で、Kähler 性は複素部分多様体と積に遺伝するので、射影多様体はすべて Kähler 多様体である。コンパクト Kähler 多様体では Hodge 分解により $b_1=2h^{1,0}$ は偶数になり、$b_1$ が奇数の Hopf 曲面は Kähler でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 複素多様体, リーマン多様体, 微分形式, 正則写像

複素構造と距離を一緒に扱う

Kähler多様体(Kähler manifold、ケーラー多様体)とは、複素多様体に入れた Hermitian 計量の基本2形式が閉じているものである。複素構造は接ベクトルを「虚数倍」する作用を与え、計量は長さと角度を与える。両者から交代的な2形式が作られるが、それが閉じるという追加条件が Kähler 条件である。この一条件は微分幾何、複素解析、代数幾何を結びつける。複素射影空間とその滑らかな複素部分多様体、複素トーラス、複素次元1の複素多様体は基本例である。Huy05
Hermitian 計量を持つだけでは Kähler とは限らない。また、複素構造を持たないリーマン多様体を、計量があるという理由だけで Kähler と呼ぶこともできない。本記事は定義に必要な三つのデータを分け、局所座標と具体例で閉性を検査する。複素多様体の一般論やリーマン計量の作り方はそれぞれの専門記事に譲り、ここでは Kähler 条件そのものと、複素射影幾何へ向かう接点を扱う。

定義と符号の約束

$X$ を複素次元 $n$ の複素多様体とする。その実接束には複素構造 $J$ があり、各接空間で $J^2=-\operatorname{id}$ が成り立つ。実リーマン計量 $g$ が $g(Ju,Jv)=g(u,v)$ を満たすとき、$g$ を $J$ と両立する Hermitian 計量という。実ベクトル $u,v$ に対して
$$ \omega(u,v)=g(Ju,v) $$
と置く。これを基本2形式、または Kähler 形式と呼ぶ。本記事ではこの符号を使うので、標準座標 $z=x+iy$ では $\omega=dx\wedge dy$ となる。文献によって $\omega(u,v)=g(u,Jv)$ の符号を採ることがあり、その場合は正値性の向きも合わせて読む必要がある。

Kähler計量とKähler多様体

Hermitian 計量 $g$ の基本2形式 $\omega$ が
$$ d\omega=0 $$
を満たすとき、$g$ をKähler計量といい、組 $(X,J,g)$ をKähler多様体という。基本2形式 $\omega$ 自身を Kähler 形式と呼ぶ。

まず $\omega$ が本当に2形式であることを確かめる。計量の対称性と $J$ の直交性から $g(Ju,v)=-g(u,Jv)$ なので、$\omega(v,u)=-\omega(u,v)$ である。また、零でない $v$ に対して $\omega(v,Jv)=g(Jv,Jv)=g(v,v)>0$ となる。従って $\omega$ は退化しない。Kähler 条件は、この正値な非退化2形式がさらに閉形式であることを要求する。閉性を外した Hermitian 多様体と、正値性を外した一般の閉2形式を同一視しない。

基本2形式の交代性と正値性

$g(Ju,Jv)=g(u,v)$ なら $\omega(u,v)=g(Ju,v)$ は実2形式であり、$\omega(v,Jv)>0$ が $v\ne0$ に対して成立する。

両立性の式で $v$ を $Jv$ に替えると $g(Ju,-v)=g(u,Jv)$、すなわち $g(Ju,v)=-g(u,Jv)$ を得る。計量の対称性により $\omega(v,u)=g(Jv,u)=g(u,Jv)=-\omega(u,v)$ である。さらに $\omega(v,Jv)=g(Jv,Jv)=g(v,v)>0$ である。従って2形式として交代的で、各点で退化しない。$\blacksquare$

局所正則座標 $z^1,\ldots,z^n$ では、Hermitian 行列 $(h_{j\bar k})$ を使い、標準的な規格化の一つで
$$ \omega=\frac{i}{2}\sum_{j,k=1}^{n}h_{j\bar k}\,dz^j\wedge d\bar z^k $$
と書ける。$h_{j\bar k}$ は正定値で、$h_{j\bar k}=\overline{h_{k\bar j}}$ を満たす。$d\omega=0$ はこの係数に関する微分方程式である。座標式は計算に便利だが、閉性そのものは座標を替えても同じである。閉形式かどうかは2形式に外微分を施すだけで判断できるため、接続係数を直接計算する必要はない。

複素次元1と平坦な例

複素次元1の $X$ は実次元2である。任意の実2形式の外微分は3形式になるが、実次元2では3形式は零である。よって、複素曲線の任意の Hermitian 計量は Kähler 計量である。これは曲線に特有の次元上の理由であって、複素次元2以上の Hermitian 計量すべてに一般化されない。非コンパクトな複素曲線でも同じ議論が働く。

複素曲線はHermitian計量ごとにKähler

複素次元1の複素多様体 $X$ 上では、全ての Hermitian 計量の基本2形式は閉じている。

$X$ の実次元は2であり、$\omega$ は実2形式である。$d\omega$ は実3形式だが、各点の3重交代テンソル空間 $\bigwedge^3T_x^*X$ は零である。従って全ての点で $d\omega=0$。定義により $g$ は Kähler 計量である。$\blacksquare$

$\mathbb C^n$ の標準 Euclid 計量では、$z^j=x^j+iy^j$ として
$$ \omega_0=\sum_{j=1}^{n}dx^j\wedge dy^j =\frac{i}{2}\sum_{j=1}^{n}dz^j\wedge d\bar z^j $$
である。係数が一定なので $d\omega_0=0$ であり、$\mathbb C^n$ は Kähler 多様体となる。複素線形座標変換で標準形が変わっても、引き戻した形式が閉じるという事実は変わらない。正定値 Hermitian 行列を一定に取れば、標準形以外の平坦な Kähler 計量も得られる。
格子 $\Lambda\subset\mathbb C^n$ を実階数 $2n$ の離散加法部分群とすると、複素トーラス $T=\mathbb C^n/\Lambda$ ができる。$\omega_0$ は平行移動で不変だから商に降り、その商上でも閉じている。格子による商はコンパクトである。従って複素トーラスはコンパクト Kähler 多様体の例である。ただし、任意の複素トーラスが代数多様体になるわけではない。ここは「コンパクト Kähler」と「射影代数的」の大切な境界であり、後者には整数性や正値な線束に関係する追加条件が要る。Huy05

複素トーラスの平坦Kähler形式

標準形式 $\omega_0$ は格子 $\Lambda$ に関する商 $\mathbb C^n/\Lambda$ に一意に降り、商の Kähler 形式を与える。

各 $\lambda\in\Lambda$ について平行移動 $\tau_\lambda(z)=z+\lambda$ は $dz^j$ と $d\bar z^j$ を保つ。従って $\tau_\lambda^*\omega_0=\omega_0$。被覆写像 $\pi\colon\mathbb C^n\to T$ の局所逆を使って形式を定義すると、不変性により局所定義が重なりで一致し、$T$ 上の一意の形式 $\omega_T$ を得る。$\pi^*(d\omega_T)=d(\pi^*\omega_T)=d\omega_0=0$ で、$\pi$ は局所微分同相だから $d\omega_T=0$。正値性も局所微分同相で保たれる。$\blacksquare$

積と複素部分多様体

Kähler 性は幾つかの自然な構成で保たれる。二つの Kähler 多様体の積には、それぞれの形式を引き戻して足した形式が入る。また、複素部分多様体には形式を制限できる。この二つの操作は、複素代数幾何で多くの例を作る基礎になる。ただし、任意の滑らかな実部分多様体への制限で正値性が Kähler の意味で保たれるという主張ではない。部分多様体は複素構造で閉じた接空間を持つ必要がある。

積と複素部分多様体への保存

$(X,\omega_X)$ と $(Y,\omega_Y)$ が Kähler 多様体なら、$X\times Y$ 上の $\operatorname{pr}_X^*\omega_X+\operatorname{pr}_Y^*\omega_Y$ は Kähler 形式である。また、$i\colon Z\hookrightarrow X$ が複素部分多様体の包含なら、$i^*\omega_X$ は $Z$ 上の Kähler 形式である。

積の形式の外微分は $d\operatorname{pr}_X^*\omega_X+d\operatorname{pr}_Y^*\omega_Y=\operatorname{pr}_X^*(d\omega_X)+\operatorname{pr}_Y^*(d\omega_Y)=0$ である。零でない接ベクトル $(u,v)$ に対し、対応する複素構造を $J_X\oplus J_Y$ と書けば、形式の値は $\omega_X(u,J_Xu)+\omega_Y(v,J_Yv)$ となり、少なくとも一方が正なので正である。部分多様体では $d(i^*\omega_X)=i^*(d\omega_X)=0$。零でない $w\in T_zZ$ は $T_{i(z)}X$ でも零でなく、包含が正則だから $di(J_Zw)=J_Xdi(w)$ である。従って $i^*\omega_X(w,J_Zw)=\omega_X(di(w),J_Xdi(w))>0$。$\blacksquare$

この命題を使う際には、特異点を持つ解析的部分集合をそのまま滑らかな複素部分多様体とみなさない。特異空間の滑らかな部分には誘導計量を考えられるが、全体で滑らかな接束を使う定義はそのまま適用できない。複素代数多様体でも、射影的な滑らかなものへの適用と特異なものへの拡張は別の問題である。

射影空間とFubini–Study形式

複素射影空間 $\mathbb{CP}^n$ は、同一直線上の零でないベクトルを同一視した空間である。局所座標 $z=(z^1,\ldots,z^n)$ のチャートで
$$ \omega_{\mathrm{FS}}=\frac{i}{2}\partial\bar\partial \log\!\left(1+\sum_{j=1}^{n}|z^j|^2\right) $$
と置くと、これは Fubini–Study 形式を与える。正の係数の付け方には複数の規格化があり、本記事では $\mathbb C^n$ の標準形式を上で書いた $\frac{i}{2}\sum dz^j\wedge d\bar z^j$ と一致させる規格化を用いる。$\partial\bar\partial$ は複素微分形式の型を一段ずつ上げる操作であり、$\partial^2=\bar\partial^2=0$ を満たす。Huy05
閉性は局所式から直接分かる。$d=\partial+\bar\partial$ と二つの演算の反可換性により、$d(\partial\bar\partial f)=0$ である。正値性は、$\rho=1+|z|^2$ として Hermitian 行列
$$ \left(\frac{\partial^2\log\rho}{\partial z^j\partial\bar z^k}\right)_{j,k} =\left(\frac{\rho\delta_{jk}-\bar z^jz^k}{\rho^2}\right)_{j,k} $$
を調べればよい。非零 $v\in\mathbb C^n$ に対し分子の二次形式は $\rho|v|^2-|\sum_j\bar z^jv^j|^2$ である。Cauchy–Schwarz により第二項は $|z|^2|v|^2$ 以下なので、分子は $|v|^2$ 以上である。従って正定値である。
異なる射影チャートでは、ポテンシャル $\log(1+|z|^2)$ は同じ関数として一致しない。しかし重なりで二つのポテンシャルの差は零でない正則関数の絶対値の対数の形になり、その $\partial\bar\partial$ は零である。このため局所的な2形式は貼り合わさる。座標ポテンシャルが大域的な一つの関数にならなくても、形式は大域的に定まる。もしコンパクトな正の次元の Kähler 多様体で $\omega=\frac{i}{2}\partial\bar\partial f$ が大域的な滑らかな関数 $f$ から作れたなら、$\omega$ は完全形式となり、体積に対応する $\omega^n$ の積分が Stokes の定理で零になるが正値性に反する。局所ポテンシャルと大域ポテンシャルは区別が必要である。

滑らかな射影多様体はKähler

複素射影空間に滑らかに埋め込まれた複素多様体 $Z$ には、Fubini–Study 形式の制限により Kähler 計量が入る。

直前の局所計算で Fubini–Study 形式は閉で正値であり、チャートの重なりで貼り合わさる。よって $\mathbb{CP}^n$ は Kähler 多様体である。埋め込み $i\colon Z\hookrightarrow\mathbb{CP}^n$ は正則だから、積と部分多様体の命題を $i$ に適用すれば $i^*\omega_{\mathrm{FS}}$ は閉で正値である。従って $Z$ は Kähler となる。$\blacksquare$

この方向は射影的な複素代数幾何から Kähler 幾何へ入る入口である。逆に、コンパクト Kähler 多様体なら必ず射影的という主張は成り立たない。複素トーラスにも非射影的なものがあり、Kähler 形式のコホモロジー類に整数性を課す Kodaira 型の射影化条件は別に必要となる。解析化によって代数多様体から複素解析空間へ移るときも、滑らかな射影多様体については上の計量が使えるが、全ての非コンパクトな複素多様体が射影空間に収まるわけではない。
複素射影直線では計量の規格化を積分で確かめられる。アフィン座標 $z=x+iy$ のチャートで、上の Fubini–Study 形式は
$$ \omega_{\mathrm{FS}}=\frac{dx\wedge dy}{(1+|z|^2)^2} $$
となる。チャートから抜ける一点は面積積分に影響しないため、極座標で計算すると
$$ \int_{\mathbb{CP}^1}\omega_{\mathrm{FS}} =2\pi\int_0^\infty\frac{r}{(1+r^2)^2}\,dr =\pi. $$
積分は置換 $u=1+r^2$ により $2\pi\cdot\frac12\int_1^\infty u^{-2}\,du=\pi$ となる。この値は本記事で選んだ $\frac{i}{2}$ の規格化に依存する。他の文献で面積や曲率の数値が違うときには、まず Fubini–Study 形式の定数倍を調べる必要がある。正の定数倍は Kähler 性を変えない。

Kählerでない複素多様体

Kähler 条件は単なる言葉の付け替えではなく、複素多様体を真に絞り込む。典型例は Hopf 曲面である。$\mathbb C^2\setminus\{0\}$ を $z\mapsto2z$ が生成する無限巡回群で割った複素曲面 $H$ はコンパクトだが Kähler でない。位相的には $S^3\times S^1$ と同相なので、第一 Betti 数 $b_1(H)$ は1である。他方、コンパクト Kähler 多様体では Hodge 分解と複素共役によって $b_1=2h^{1,0}$ となり偶数でなければならない。従って $H$ は Kähler 計量を持てない。ここで使う偶数性はコンパクト性を仮定した結果であり、非コンパクト多様体に無条件で当てはめない。Huy05
Hopf 曲面が Hermitian 計量も持たないという意味ではない。滑らかな複素多様体には Hermitian 計量を作れるので、違いは基本2形式の閉性である。また、第一 Betti 数が偶数なら必ず Kähler になるという逆も主張しない。奇数であれば非 Kähler と判定できるという必要条件の使い方である。例を調べるときは、複素構造、Hermitian 計量、Kähler 条件、大域的な位相制約の順に何を確認したかを分けると混乱しにくい。

局所的な条件と大域的な障害

Kähler 条件 $d\omega=0$ は与えられた計量について局所座標で検査できる。しかし「ある Kähler 計量が存在するか」は大域的な問いであり、コンパクトな場合にはコホモロジーや Betti 数による制約を受ける。局所的に正値な閉2形式を書けることと、全体で矛盾なく貼り合わさることも別に確かめる。

複素代数幾何と解析への接続

Kähler 多様体では、リーマン計量から来る解析と複素構造から来る $(p,q)$ 型の分解がよく噛み合う。コンパクトな場合の Hodge 理論はコホモロジーの型分解を与え、Betti 数に制約を課す。この構造は代数多様体の周期、線束、代数サイクルを理解するための背景になる。ただし Hodge 分解の証明は楕円型作用素の理論を要するので、本記事の初等的な積・部分多様体の証明から直ちに出るわけではない。Huy05
局所ポテンシャルは複素解析での計算手段でもある。正値な関数行列から計量を考えるだけでなく、実関数の複素 Hessian $\partial\bar\partial\phi$ が正値なら局所 Kähler 形式を得る。ポテンシャルを変えても形式が同じになる場合があり、異なる局所式の差が重なりでどの形になるかが貼り合わせの鍵となる。Fubini–Study 形式はこの仕組みを具体的に示した。複素多様体、解析化、GAGA を経て射影多様体を解析的に見ると、Kähler 形式は代数的対象に計量と微分形式を持ち込む共通語になる。

条件を外したときの反例

本記事の命題の仮定を一つずつ外すと、次のように結論が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
計量が $J$ と両立$\mathbb C$ 上の $g=dx^2+4\,dy^2$$\omega(u,v)=g(Ju,v)$ が交代2形式
複素次元が $1$$\mathbb C^2$ 上で $h_{1\bar1}=1+\lvert z^2\rvert^2$、$h_{2\bar2}=1$、$h_{1\bar2}=0$ の Hermitian 計量Hermitian 計量なら Kähler
部分多様体が複素部分多様体$\mathbb C^2$ の実平面 $\{y^1=y^2=0\}$制限した形式が正値(Kähler 形式)
コンパクト$\mathbb C$ の標準形式 $\omega_0$Kähler 形式は完全形式でない
コンパクト$\mathbb C\setminus\{0\}$Kähler 多様体の第一 Betti 数は偶数
表の反例の確かめ

$J$ と両立しない計量。 $J\partial_x=\partial_y$、$J\partial_y=-\partial_x$ である。$g=dx^2+4\,dy^2$ なら $\omega(\partial_x,\partial_y)=g(\partial_y,\partial_y)=4$、$\omega(\partial_y,\partial_x)=g(-\partial_x,\partial_x)=-1$ で、$\omega(v,u)=-\omega(u,v)$ が成り立たない。交代性の証明で使った $g(Ju,Jv)=g(u,v)$ が破れている($g(J\partial_x,J\partial_x)=4\ne1=g(\partial_x,\partial_x)$)。
閉じない基本2形式。 表の計量の基本2形式は $\omega=\frac i2\bigl((1+\lvert z^2\rvert^2)\,dz^1\wedge d\bar z^1+dz^2\wedge d\bar z^2\bigr)$ である。係数行列は対角で成分が正だから正定値であり、Hermitian 計量を与える。外微分は
$$ d\omega=\frac i2\,(\bar z^2\,dz^2+z^2\,d\bar z^2)\wedge dz^1\wedge d\bar z^1 $$
で、$z^2\ne0$ の点で零でない。従ってこの計量は Kähler でない。複素次元1では3形式が零であることが閉性を保証したが、次元2以上ではその理由が消える。
複素でない部分多様体。 $\omega_0=dx^1\wedge dy^1+dx^2\wedge dy^2$ を実平面 $\{y^1=y^2=0\}$ に制限すると、$dy^1,dy^2$ が零になるので制限は $0$ である。正値でなく、Kähler 形式ではない。実平面の接空間は $J$ で閉じていない($J\partial_{x^1}=\partial_{y^1}$ は接空間の外にある)。
非コンパクトな場合。 $\mathbb C$ 上で $\omega_0=dx\wedge dy=d(x\,dy)$ は完全形式である。コンパクトな場合の議論で使った Stokes の定理による体積の零化は、境界のないコンパクト多様体上の積分でしか使えない。また $\mathbb C\setminus\{0\}$ は複素次元1なので、その任意の Hermitian 計量は Kähler である。しかし円周に変形レトラクトするので第一 Betti 数は $1$ で奇数である。偶数性はコンパクト Kähler 多様体の Hodge 分解から来る性質である。

関連項目

参考文献

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