有限半順序集合(finite poset)とは、元の個数が有限な半順序集合である。有限なので極大元と線形拡大がいつも存在し、下方集合はその極大元のなす反鎖で決まり、線形拡大の個数は極小元を先頭に置く漸化式で数えられる。順序を線形拡大の共通部分として書くのに要る個数を次元といい、$k$ 個の鎖に分割できれば次元は $k$ 以下、とくに幅以下であり、標準例 $S_n$ では次元も幅も $n$ になる。数直線上の閉区間の「完全に左にある」関係として表せる順序を区間順序といい、Fishburn の定理により、それは 2 元の鎖 2 つを並べた 4 元の順序 $\mathbf 2+\mathbf 2$ を含まないことと同値である。
前提知識: 半順序集合, 全順序, Dilworthの定理
有限半順序集合(finite poset)は、元の個数が有限な半順序集合である。有限であることから、極大元や線形拡大がいつも存在し、順序は「すぐ上」の関係だけで決まり(Hasse図)、鎖と反鎖の大きさは Dilworth と Mirsky の定理で結びつく。こうした道具がそろうので、有限半順序集合は一つひとつの構造を比べ、分類する対象になる。
この記事では、有限半順序集合を測る二つの観点を扱う。一つは次元で、順序をいくつの全順序の共通部分として書けるかを測る。主定理(thm-fposet-chain-cover)は、$k$ 個の鎖に分割できる有限半順序集合の次元が $k$ 以下であることを示し、Dilworth の定理と合わせて、次元が幅を超えないことを導く。もう一つは区間順序で、数直線上の区間の「完全に左にある」という関係として表せる順序である。Fishburn の定理(thm-fposet-fishburn)は、区間順序であることが、4 元の半順序集合 $\mathbf 2+\mathbf 2$ と同型な部分を含まないことと同値であることを述べる。ほかに、下方集合と反鎖の一対一対応と、線形拡大の個数の漸化式を示す。
$\mathord{\downarrow}S$ はつねに下方集合であり、$S$ を含む最小の下方集合である。$P$ の高さ $h(P)$(鎖の元の個数の最大値)と幅 $w(P)$(反鎖の元の個数の最大値)は Dilworthの定理 の定義「高さと幅」に従う。線形拡大($x\le y$ なら $x\preceq y$ となる $P$ 上の全順序 $\preceq$)は 離散数学 の定義「線形拡大」に従う。
有限であることから、次の基本的な事実が成り立つ。どれも他の記事で証明されているので、この記事では見出しで引いて使う。
| 事実 | 記事と見出し |
|---|---|
| 空でない有限半順序集合では、各元 $a$ に対し $a\le m$ となる極大元 $m$ がある | 極大元 の命題「有限半順序集合の極大元」 |
| 有限半順序集合は線形拡大をもつ | 離散数学 の定理「有限半順序集合の線形拡大の存在」 |
| 比較不能な 2 元 $a,b$ について、$x\le y$ または($x\le a$ かつ $b\le y$)で定めた関係は $\le$ を含む半順序で、$a$ を $b$ 以下にする | 全順序 の補題「比較不能な一組を比較可能にする拡大」 |
| 順序は被覆関係の列で復元される | 半順序集合 の命題「有限半順序集合における被覆関係からの復元」 |
| $P$ は $h(P)$ 個の反鎖に、$w(P)$ 個の鎖に分割できる | Dilworthの定理 の定理「Mirskyの定理」「Dilworthの定理」 |
| 有限分配束は $\mathcal O(P)$ の形の束と同型で、$P$ は同型を除いて決まる | 分配束 の定理「有限分配束の表現定理(Birkhoff)」 |
有限半順序集合は、仕事の前後関係、集合の包含、数の整除のように、「どちらが先か決まっている組」と「決まっていない組」が混ざった関係である。比較不能な組があることが全順序との違いであり、その混ざり方を測るのが次元と区間順序である。次元は「何人かの審査員がそれぞれ全員を一列に並べたとき、全員の判定が一致する組だけを残すと元の順序になる」ための審査員の最小人数である。区間順序は、各元を時間の区間(仕事の開始から終了まで)とみて、終わってから始まる組だけを前後関係とした順序である。
$n\ge2$ とし、$2n$ 個の元 $a_1,\dots,a_n,b_1,\dots,b_n$ に、$a_i< b_j\iff i\ne j$ だけを狭義の大小とする順序を入れたものを標準例 $S_n$ という($a$ どうし、$b$ どうしは比較不能で、$b_j< a_i$ となる組はない)。推移律で新しい大小は生じないので、これは半順序である。$n=3$ の Hasse 図は次のとおりである。
$$
\xymatrix{
b_1 & b_2 & b_3 \\
a_1 \ar@{-}[ur] \ar@{-}[urr] & a_2 \ar@{-}[ul] \ar@{-}[ur] & a_3 \ar@{-}[ull] \ar@{-}[ul]
}
$$
各 $a_i$ から $b_j$($j\ne i$)へだけ線があり、真上の $b_i$ とは結ばれていない($a_i\parallel b_i$)。
有限半順序集合の下方集合は、その極大元の集合だけで決まる。
有限半順序集合 $P$ について、反鎖 $A$ に $\mathord{\downarrow}A$ を対応させる写像は、$P$ の反鎖全体から $\mathcal O(P)$ への全単射である。逆写像は、下方集合 $D$ にその極大元の全体 $\max D$ を対応させる写像である。
$\max D$ の相異なる 2 元 $m,m'$ が $m< m'$ を満たせば $m$ は $D$ で極大でないので、$\max D$ は反鎖である。
$A$ を反鎖とし、$\max(\mathord{\downarrow}A)=A$ を示す。$a\in A$ と $z\in\mathord{\downarrow}A$ が $a\le z$ を満たすとする。$z\le a'$ となる $a'\in A$ があり、$a\le a'$ なので、$A$ が反鎖であることから $a=a'$、したがって $a\le z\le a$ から $z=a$ である。よって $a$ は $\mathord{\downarrow}A$ で極大である。逆に $m$ が $\mathord{\downarrow}A$ で極大なら、$m\le a$ となる $a\in A$ があり、$a\in\mathord{\downarrow}A$ と極大性から $m=a\in A$ である。
$D$ を下方集合とし、$\mathord{\downarrow}(\max D)=D$ を示す。$D$ は下方集合なので左辺は $D$ に含まれる。$z\in D$ なら、有限半順序集合 $D$ の中で $z\le m$ となる極大元 $m$ がとれ(極大元 の命題「有限半順序集合の極大元」)、$z\in\mathord{\downarrow}(\max D)$ である。2 つの合成がともに恒等写像なので、2 つの写像は互いに逆な全単射である。$\square$
分配束 の定理「有限分配束の表現定理(Birkhoff)」と合わせると、$P$ に対応する有限分配束 $\mathcal O(P)$ の元の個数は $P$ の反鎖の個数に等しい。たとえば $\mathbf 2+\mathbf 2$ の反鎖は、空集合、1 元集合 $4$ 個、$\{a,c\},\{a,d\},\{b,c\},\{b,d\}$ の $9$ 個で、$\mathcal O(\mathbf 2+\mathbf 2)$ は 3 元の鎖 2 つの直積($3\times3=9$ 元)である。
$P$ の線形拡大の個数を $e(P)$ と書き、$e(\emptyset)=1$ とする。$P$ の極小元全体を $\min P$ と書く。
空でない有限半順序集合 $P$ について
$$
e(P)=\sum_{m\in\min P}e\bigl(P\setminus\{m\}\bigr)
$$
である。ここで $P\setminus\{m\}$ には $P$ の順序を制限する。
$|P|=n$ の線形拡大は、$P$ の元の並べ方 $x_1,\dots,x_n$ で、$x_i< x_j$ なら $i< j$ となるものと同じである(離散数学 の定義「線形拡大」の後半)。そのような並べ方では、先頭の $x_1$ より小さい元は並びのどこにも置けないので、$x_1$ は極小元である。また残りの $x_2,\dots,x_n$ は $P\setminus\{x_1\}$ の線形拡大である。逆に、極小元 $m$ と $P\setminus\{m\}$ の線形拡大 $y_2,\dots,y_n$ をとって $m,y_2,\dots,y_n$ と並べると、$m$ より小さい元はないので、これは $P$ の線形拡大である。この 2 つの対応は互いに逆なので、線形拡大は先頭の極小元 $m$ ごとに $e(P\setminus\{m\})$ 個ずつある。$\square$
$\mathbf 2+\mathbf 2$ では極小元は $a,c$ の 2 つで、$P\setminus\{a\}$ は $c< d$ と $b$ からなり線形拡大は $3$ 個なので、$e(\mathbf 2+\mathbf 2)=3+3=6$ である。これは $4$ 個の位置から $a,b$ の置き場所 $2$ つを選ぶ方法の数 $\binom42=6$ と一致する。反鎖 $n$ 元では $e=n!$、鎖では $e=1$ である。
全順序 の族の共通部分として半順序を表すことを考える。全順序 $L$ の大小を $\le_L$、狭義の大小を $<_L$ と書く。
空でない有限半順序集合 $P$ の線形拡大 $L_1,\dots,L_t$ の族が $P$ の実現子(realizer)であるとは、任意の $x,y\in P$ について
$$
x\le y\iff\text{すべての } i \text{ で } x\le_{L_i}y
$$
が成り立つことをいう。実現子の元の個数の最小値を $P$ の次元(dimension)といい、$\dim P$ と書く(KT17 §6.10, Exercise 21, p. 139)。
$\Rightarrow$ は線形拡大であることから自動的に成り立つので、実現子の条件は「$x\parallel y$ なら、ある $L_i$ で $y<_{L_i}x$ となる」ことと同じである($x,y$ を入れ替えれば、別の $L_j$ で $x<_{L_j}y$ ともなる)。
空でない有限半順序集合 $P$ の線形拡大全体は実現子である。したがって $\dim P$ は定まり、$1\le\dim P\le e(P)$ である。$\dim P=1$ となるのは $P$ が鎖のときに限る。
$x\parallel y$ とする。全順序 の補題「比較不能な一組を比較可能にする拡大」を $a=y$、$b=x$ に使うと、$\le$ を含み $y\le' x$ となる半順序 $\le'$ が得られる。有限半順序集合 $(P,\le')$ の線形拡大 $L$(離散数学 の定理「有限半順序集合の線形拡大の存在」)は $\le$ の線形拡大でもあり、$y\le_L x$、$x\ne y$ なので $y<_L x$ である。よって線形拡大全体は上の言い換えの条件を満たし、実現子である。線形拡大全体は $e(P)$ 個の有限族なので、次元は定まって $e(P)$ 以下である。$P$ が鎖なら $\le$ 自身が全順序で、$\{\le\}$ が実現子である。逆に $\dim P=1$ なら $\le$ は 1 つの全順序に一致するので、$P$ は鎖である。$\square$
次元は「座標の数」とみることもできる。$\mathbb R^d$ に成分ごとの大小 $(u_i)\le(v_i)\iff$ すべての $i$ で $u_i\le v_i$ を入れる。
空でない有限半順序集合 $P$ と $d\ge1$ について、$\dim P\le d$ であることと、写像 $\varphi\colon P\to\mathbb R^d$ で $x\le y\iff\varphi(x)\le\varphi(y)$(成分ごと)となるものがあることは同値である。
$L_1,\dots,L_t$($t\le d$)を実現子とし、足りない分は $L_t$ を繰り返して $d$ 個にする。$L_i$ で $x$ より前にある元の個数を $\rho_i(x)$ とおくと、$x\le_{L_i}y\iff\rho_i(x)\le\rho_i(y)$ である。$\varphi=(\rho_1,\dots,\rho_d)$ とおけば、実現子の条件がそのまま $x\le y\iff\varphi(x)\le\varphi(y)$ になる。
逆に $\varphi=(\varphi_1,\dots,\varphi_d)$ があるとする。$P$ の線形拡大 $L_0$ を 1 つ固定し、各 $i$ について
$$
x<_i y\iff\varphi_i(x)<\varphi_i(y)\text{、または }\varphi_i(x)=\varphi_i(y)\text{ かつ }x<_{L_0}y
$$
と定める。これは $\varphi_i$ の値で並べ、値の等しい元を $L_0$ の順に並べた全順序である。$x< y$ なら $\varphi(x)\le\varphi(y)$ なので $\varphi_i(x)\le\varphi_i(y)$ であり、等号のときも $x<_{L_0}y$ なので $x<_i y$ である。よって各 $<_i$ は線形拡大である。$x\parallel y$ なら $\varphi(y)\le\varphi(x)$ は成り立たないので、ある $i$ で $\varphi_i(y)>\varphi_i(x)$、すなわち $x<_i y$ であり、同様にある $j$ で $y<_j x$ である。よってこの $d$ 個は実現子で、$\dim P\le d$ である。$\square$
たとえば $\mathbf 2+\mathbf 2$($a< b$、$c< d$)では、$a,b,c,d$ と $c,d,a,b$ の 2 つの並べ方が実現子であり、鎖でないので次元は $2$ である。対応する埋め込みは $a\mapsto(0,2)$、$b\mapsto(1,3)$、$c\mapsto(2,0)$、$d\mapsto(3,1)$ である。
有限半順序集合 $P$ の空でない鎖 $C$ に対し、$P$ の線形拡大 $L$ で、$x\in C$、$y\in P$、$x\parallel y$ ならばつねに $x<_L y$ となるものがある。
$C=\{c_1< c_2<\cdots< c_k\}$ と並べ、$\mathord{\downarrow}c_0:=\emptyset$ として
$$
B_i:=\mathord{\downarrow}c_i\setminus\mathord{\downarrow}c_{i-1}\quad(1\le i\le k),\qquad B_{k+1}:=P\setminus\mathord{\downarrow}c_k
$$
とおく。$\mathord{\downarrow}c_1\subset\cdots\subset\mathord{\downarrow}c_k$ なので、$B_1,\dots,B_{k+1}$ は $P$ の分割である。各 $B_i$ の線形拡大(離散数学 の定理「有限半順序集合の線形拡大の存在」)を $B_1,B_2,\dots,B_{k+1}$ の順につないだ並べ方を $L$ とする。
$L$ が $P$ の線形拡大であることを示す。$x< y$、$x\in B_i$、$y\in B_j$ とする。$j\le k$ なら $y\le c_j$ なので $x\in\mathord{\downarrow}c_j$ であり、$x$ の属する $B_i$ は $i\le j$ を満たす。$j=k+1$ なら $i\le j$ は明らかである。$i< j$ なら $x$ は $y$ より前にあり、$i=j$ なら $B_i$ の線形拡大の中で $x$ が $y$ より前にある。
次に $x=c_i\in C$、$x\parallel y$、$y\in B_j$ とする。$j\le i$ なら $y\le c_j\le c_i$ となって $x\parallel y$ に反するので、$j> i$ であり、$y$ は $B_i$ に属する $c_i$ より後にある。$\square$
空でない有限半順序集合 $P$ が $k$ 個の鎖 $C_1,\dots,C_k$ に分割できるなら、$\dim P\le k$ である。とくに $\dim P\le w(P)$ である。
各 $C_i$ に lem-fposet-chain-low を使って線形拡大 $L_i$ をとる。$x\parallel y$ とし、$x\in C_i$、$y\in C_j$ とする。同じ鎖の 2 元は比較可能なので $i\ne j$ である。$L_i$ では $x\in C_i$ なので $x<_{L_i}y$、$L_j$ では $y\in C_j$ なので $y<_{L_j}x$ である。よって $L_1,\dots,L_k$ は実現子であり(def-fposet-dimension の後の言い換え)、$\dim P\le k$ である。後半は、Dilworthの定理 の定理「Dilworthの定理」により $P$ が $w(P)$ 個の鎖に分割できることから従う。$\square$
この上界は改良できない。
$n\ge2$ について $\dim S_n=w(S_n)=n$ である(ex-fposet-standard)。
上界:添字を $n$ を法として読み、$C_i:=\{a_i,b_{i+1}\}$($1\le i\le n$)とおく。$n\ge2$ なので $i\ne i+1$ であり、$a_i< b_{i+1}$ だから各 $C_i$ は鎖で、$C_1,\dots,C_n$ は $S_n$ の分割である。thm-fposet-chain-cover により $\dim S_n\le n$ である。
下界:実現子 $L_1,\dots,L_t$ をとる。各 $i$ で $a_i\parallel b_i$ なので、ある $L$ で $b_i<_L a_i$ となる。1 つの線形拡大 $L$ で、$i\ne j$ について $b_i<_L a_i$ と $b_j<_L a_j$ がともに成り立つことはない。実際そうなら、$a_i< b_j$、$a_j< b_i$ から
$$
b_i<_L a_i<_L b_j<_L a_j<_L b_i
$$
となって矛盾する。よって各 $L_k$ が「$b_i$ を $a_i$ より前に置く」添字 $i$ は高々 1 つで、$n$ 個の添字をまかなうには $t\ge n$ が要る。$\{a_1,\dots,a_n\}$ は反鎖なので $w(S_n)\ge n$、上の $n$ 個の鎖への分割とDilworthの定理 の補題「鎖と反鎖は高々1元を共有する」から $w(S_n)\le n$ である。
一方、$S_n$ の高さは $2$ であり、$S_n$ は 2 個の反鎖 $\{a_i\}$、$\{b_j\}$ に分割できる。したがって、次元は鎖への分割では上から抑えられるが、反鎖への分割の個数(Mirsky の定理により高さ)では抑えられない。
有限半順序集合 $P$ が区間順序(interval order)であるとは、各 $x\in P$ に実数の閉区間 $I(x)=[l(x),r(x)]$($l(x)\le r(x)$)を対応させて、
$$
x< y\iff r(x)< l(y)
$$
が任意の $x,y\in P$ で成り立つようにできることをいう。$I$ を $P$ の区間表示という(相異なる元に同じ区間を当ててもよい。KT17 §6.6, p. 128)。
鎖(区間を左から右へ離して並べる)、反鎖(すべて同じ区間)、ex-fposet-intervals の 1 は区間順序である。$x< y$ のとき $I(x)$ は $I(y)$ の完全に左にあり、$x\parallel y$ は 2 つの区間が共有点をもつことにあたる。
有限半順序集合 $P$ について、次は同値である。
この定理は Fishburn による(KT17 §6.6, Theorem 6.29, p. 129)。同書は 2 ⇒ 1 を、下側の集合と上側の集合の両方を並べて区間を作る §6.7 の手順(Theorem 6.30, p. 130)で示し、細部を演習に回している。ここでは下側の集合だけを使って示す。
1 ⇒ 2。 区間表示 $I$ があり、2 の 4 元があったとする。$a< b$、$c< d$ から $r(a)< l(b)$、$r(c)< l(d)$ である。$a\parallel d$ なので $r(a)< l(d)$ は成り立たず、$l(d)\le r(a)$ である。同様に $b\parallel c$ から $l(b)\le r(c)$ である。すると
$$
l(d)\le r(a)< l(b)\le r(c)< l(d)
$$
となって矛盾する。
2 ⇒ 1。 各 $x$ について $D(x):=\{z\in P\mid z< x\}$ とおく。
まず、集合族 $\{D(x)\mid x\in P\}$ が包含について全順序であることを示す。$D(x)\not\subset D(y)$ かつ $D(y)\not\subset D(x)$ とし、$p\in D(x)\setminus D(y)$、$q\in D(y)\setminus D(x)$ をとる。$p< x$、$q< y$ であり、$p< y$ も $q< x$ も成り立たない。4 元 $p,x,q,y$ が相異なり、$p\parallel q$、$p\parallel y$、$x\parallel q$、$x\parallel y$ であることを確かめる。
$S_n$($n\ge2$)は $a_1,b_2,a_2,b_1$ が $\mathbf 2+\mathbf 2$ をなすので区間順序でない。上の証明の $D_1,\dots,D_m$ は、$P$ が区間順序のとき端点が $1,\dots,m$ の整数である区間表示を与える。
この記事の結果の仮定を 1 つずつ外した例である。2 行目では、区間順序の定義を無限の半順序集合にもそのまま使う。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $P$ が有限(prop-fposet-downset-antichain) | 整数全体 $\mathbb Z$ の通常の大小 | 下方集合 $\mathbb Z$ がどの反鎖 $A$ の $\mathord{\downarrow}A$ にもならず、全射性が崩れる |
| $P$ が有限(thm-fposet-fishburn の 2 ⇒ 1) | $\mathbb R\times\{0,1\}$ の辞書式順序 | $\mathbf 2+\mathbf 2$ を含まないが区間表示をもたない |
| 分割の各部分が鎖(thm-fposet-chain-cover) | 標準例 $S_n$($n\ge3$)の 2 個の反鎖への分割 | 部分の個数 $2$ で次元 $n$ を抑えられない |
1 行目:$\mathbb Z$ の反鎖は空集合と 1 元集合だけで、$\mathord{\downarrow}A$ は $\emptyset$ か $\{k\mid k\le n\}$ の形である。$\mathbb Z$ には極大元がないので、下方集合 $\mathbb Z$ はこれらのどれでもない。
2 行目:辞書式順序は $(s,i)<(t,j)\iff s< t$、または $s=t$ かつ $i< j$ で定める。全順序なので比較不能な組がなく、$\mathbf 2+\mathbf 2$ を含まない。区間表示 $I$ があったとすると、$(t,0)<(t,1)$ から $r(t,0)< l(t,1)$ である。$s< t$ なら $(s,1)<(t,0)$ から $l(s,1)\le r(s,1)< l(t,0)\le r(t,0)$ なので、開区間 $U_t:=(r(t,0),l(t,1))$ は空でなく、$t$ ごとに互いに交わらない。$\mathbb Q$ の元に番号を付けておき、$U_t$ に含まれる番号最小の有理数を対応させると、$\mathbb R$ から $\mathbb Q$ への単射が得られて矛盾する。
3 行目:ex-fposet-standard-dimension による。
次元 2 の順序。 prop-fposet-embedding により、次元が $2$ 以下の有限半順序集合は、平面の点の集合に「$x$ 座標も $y$ 座標も小さくない方が上」という順序を入れたものと同じである。$\mathbf 2+\mathbf 2$ はその例であり、次元 $3$ の $S_3$ は平面の点ではこのように表せない。
区間表示の整数化。 Fishburn の定理の証明から、$\mathbf 2+\mathbf 2$ を含まない有限半順序集合では、区間の端点を $1$ から「相異なる下側の集合 $D(x)$ の個数」までの整数にとれる。逆に、整数の端点による区間表示には、相異なる整数が少なくともこの個数だけ要る。区間表示 $I$ では $D(x)=\{z\mid r(z)< l(x)\}$ が左端 $l(x)$ だけで決まるので、相異なる $D(x)$ には相異なる左端が要るからである(KT17 Theorem 6.30(p. 130)の 4 も参照)。
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