Young図形

同義語:Young diagramヤング図形

概要

Young図形(Young diagram)とは、整数の分割 $\lambda=(\lambda_1\ge\lambda_2\ge\cdots)$ を、第 $i$ 行に $\lambda_i$ 個の箱を左詰めで並べた図で表したものであり、左上に詰まった有限個の箱の集合として特徴づけられる。対角線での折り返しが共役分割を与え、共役は優越順序を逆にする。行と列がともに増加するように $1,\dots,n$ を書き込んだ標準盤の個数 $f^\lambda$ は、各箱の鉤の長さの積で $n!$ を割った値に等しく(鉤長公式)、対称群 $S_n$ の既約表現の次元になって $\sum_\lambda(f^\lambda)^2=n!$ を満たす。半標準盤を通じて Schur 多項式や一般線形群の表現とも結びつく。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 分割数, 対称群

Young図形とは、整数の分割 $\lambda=(\lambda_1\ge\lambda_2\ge\cdots)$ を、第 $i$ 行に $\lambda_i$ 個の箱を左詰めで並べた図で表したものである。たとえば $4+2+1$ は、上から $4$ 個、$2$ 個、$1$ 個の箱の行になる。
$$ \begin{array}{llll}\square&\square&\square&\square\\\square&\square&&\\\square&&&\end{array} $$
図にすることで、分割どうしの関係(共役、包含、優越)が目に見える操作になる。Young 図形の箱に数を書き込んだものを Young 盤(Young tableau)といい、行と列がどちらも増加するように $1,\dots,n$ を書き込んだ標準盤の個数 $f^\lambda$ は、対称群 $S_n$ の既約表現の次元に等しい。$f^\lambda$ は各箱の「鉤の長さ」の積で $n!$ を割った値になる(鉤長公式)。Young 図形は、対称群・一般線形群の表現論、Schur多項式、組合せ論を結ぶ共通の言葉である。
この記事では、Young 図形と標準盤を定義し、標準盤の個数の漸化式、鉤長公式(Greene–Nijenhuis–Wilf の確率的な証明)、優越順序と共役の関係を証明する。

定義

整数 $n\ge0$ の分割(partition)とは、正の整数の非増加列 $\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_\ell)$ で和が $n$ のものである(分割数 の記事の定義「整数の分割と分割数」)。$\lambda$ が $n$ の分割であることを $\lambda\vdash n$、$|\lambda|:=n$ と書き、$\ell=\ell(\lambda)$ を長さという。必要に応じて末尾に $0$ を補い、$i>\ell$ では $\lambda_i=0$ とする。

Young図形

分割 $\lambda$ に対し、正の整数の組の集合
$$ D(\lambda):=\{(i,j)\in\mathbb{Z}_{>0}^2\mid 1\le i\le\ell(\lambda),\ 1\le j\le\lambda_i\} $$
を $\lambda$ の Young 図形(Young diagram)という。$(i,j)$ を第 $i$ 行・第 $j$ 列の箱と呼び、行番号は上から下へ、列番号は左から右へ増えるように描く。

箱の個数は $|\lambda|$ である。分割と Young 図形は互いに決め合うので、以下では $\lambda$ と $D(\lambda)$ を同一視し、$(i,j)\in\lambda$ のようにも書く。行を下から上へ積む描き方(フランス式)もあり、その場合は図が上下反転する。
Young 図形は「左上に詰まった」箱の集合として特徴づけられる。

Young図形の特徴づけ

$\mathbb{Z}_{>0}^2$ の有限部分集合 $D$ について、次は同値である。

  1. ある分割 $\lambda$ について $D=D(\lambda)$。
  2. $(i,j)\in D$、$1\le i'\le i$、$1\le j'\le j$ ならば $(i',j')\in D$。
行の長さを読む

1 ⇒ 2:$(i,j)\in D(\lambda)$ なら $i\le\ell$、$j\le\lambda_i$ である。$i'\le i$ なら $\lambda_{i'}\ge\lambda_i\ge j\ge j'$ なので $(i',j')\in D(\lambda)$ である。
2 ⇒ 1:$\lambda_i:=\#\{j\mid(i,j)\in D\}$ とおく。2 により第 $i$ 行の箱は $(i,1),\dots,(i,\lambda_i)$ の形で左に詰まっている。$(i+1,j)\in D$ なら $(i,j)\in D$ なので $\lambda_{i+1}\le\lambda_i$ である。$D$ は有限なので、$\lambda_i>0$ となる $i$ は有限個で、それらは $1,\dots,\ell$ と続く。よって $\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_\ell)$ は分割で、$D=D(\lambda)$ である。$\square$

Young 図形を対角線(左上から右下への線)で折り返すと、また Young 図形が得られる。これが分割数 の記事の定義「共役分割」の $\lambda'$ であり、$\lambda'_j=\#\{i\mid\lambda_i\ge j\}$ は第 $j$ 列の箱の個数である。$(\lambda')'=\lambda$ が成り立つ(同記事の命題「共役分割の性質」)。Schur多項式 の記事では $\lambda'$ を $\lambda^{\mathrm{T}}$ と書いている。

腕・脚・鉤の長さと角

箱 $u=(i,j)\in\lambda$ に対し、$a(u):=\lambda_i-j$ を腕の長さ、$l(u):=\lambda'_j-i$ を脚の長さという(右に何個、下に何個の箱があるか)。$u$ と、その右にある箱と下にある箱を合わせた集合を $u$ の鉤(hook)といい、その箱の個数
$$ h(u):=a(u)+l(u)+1=\lambda_i-j+\lambda'_j-i+1 $$
を $u$ の鉤の長さ(hook length)という。右にも下にも箱がない箱、すなわち $h(u)=1$ の箱を $\lambda$ の角(corner)という。

角は各行の右端の箱 $(i,\lambda_i)$ のうち $\lambda_{i+1}<\lambda_i$ となるものであり、角を一つ取り除くとまた Young 図形が残る。取り除いて Young 図形が残る箱は角に限る(prop-young-diagram-ideal の 2 により、取り除く箱の右と下に箱があってはならない)。

標準盤

$\lambda\vdash n$ とする。$\lambda$ の各箱に $1,\dots,n$ を一つずつ書き込んだもの、すなわち全単射 $T\colon\lambda\to\{1,\dots,n\}$ で、各行で左から右へ、各列で上から下へ増加するものを、形 $\lambda$ の標準盤(standard Young tableau)という。形 $\lambda$ の標準盤の個数を $f^\lambda$ と書く。$f^{\emptyset}:=1$ とする。

各行で広義増加、各列で狭義増加するように $\{1,\dots,m\}$ の元を書き込んだものは半標準盤であり、Schur多項式 の記事の定義「半標準盤と盤の重み」で扱われている。

例

小さい Young 図形

$3$ の分割は $(3)$、$(2,1)$、$(1,1,1)$ の三つで、Young 図形は横一列、L 字形、縦一列である。$(2,1)$ の標準盤は、$1$ が左上、$2$ と $3$ が残りの二箱に入るので、$1\,2/3$ と $1\,3/2$(スラッシュは行の区切り)の $2$ 個であり、$f^{(2,1)}=2$ である。$f^{(3)}=f^{(1,1,1)}=1$ なので $1^2+2^2+1^2=6=3!$ となる。
$(3,2)$ の鉤の長さを箱に書き込むと、第 1 行が $4,3,1$、第 2 行が $2,1$ であり、積は $24$ である。$5!/24=5$ で、実際 $(3,2)$ の標準盤は第 1 行が $123$、$124$、$125$、$134$、$135$ の $5$ 個(第 2 行は残りの数を小さい順に並べる)である。$(2,2)$ の鉤の長さは $3,2/2,1$ で、$4!/12=2$ である。

鉤の形と長方形

$\lambda=(n-k,1^k)$(第 1 行が $n-k$ 個、残り $k$ 行が $1$ 個)の形を鉤形という。標準盤では $1$ が左上に入り、第 1 列の残り $k$ 箱に入る数を $\{2,\dots,n\}$ から選べば盤が決まるので、$f^{(n-k,1^k)}=\binom{n-1}{k}$ である。$k=1$ の $f^{(n-1,1)}=n-1$ は、$S_n$ の標準表現(対称群 の $n$ 次の置換表現から自明表現を除いたもの)の次元である。
$\lambda=(m,m)$ の標準盤は、第 1 行に入る数の集合 $A$ で決まり、条件は「各 $k$ について $1,\dots,k$ のうち $A$ に入る数が入らない数以上」となる。鉤の長さは第 1 行が $m+1,m,\dots,2$、第 2 行が $m,\dots,1$ なので、後で示す鉤長公式により $f^{(m,m)}=\frac{(2m)!}{(m+1)!\,m!}=\frac{1}{m+1}\binom{2m}{m}$ であり、これは Catalan 数である。$m=2$ なら $2$、$m=3$ なら $5$ で、$(3,3)$ の標準盤の第 1 行は $123$、$124$、$125$、$134$、$135$ の $5$ 通りである。

性質

標準盤の漸化式と Young 束

標準盤の個数の漸化式

$\lambda\vdash n$、$n\ge1$ とする。

  1. $f^\lambda=\sum_cf^{\lambda\setminus c}$ が成り立つ。和は $\lambda$ の角 $c$ すべてにわたり、$\lambda\setminus c$ は $c$ を取り除いた Young 図形である。
  2. $f^{\lambda'}=f^\lambda$ である。
最大の数が入る箱を見る

1:形 $\lambda$ の標準盤 $T$ で $n$ が入る箱 $c$ を考える。$c$ の右や下に箱があれば、そこには $n$ より大きい数が入らなければならないが、そのような数はない。よって $c$ は角である。$T$ から $c$ を取り除くと、形 $\lambda\setminus c$ に $1,\dots,n-1$ を書き込んだ標準盤が得られる。逆に、角 $c$ と形 $\lambda\setminus c$ の標準盤が与えられたとき、$c$ に $n$ を書き込むと、$c$ の左と上の数はすべて $n$ より小さいので形 $\lambda$ の標準盤になる。二つの操作は互いに逆なので、形 $\lambda$ の標準盤の集合は、角 $c$ ごとの形 $\lambda\setminus c$ の標準盤の集合の非交和と一対一に対応する。
2:盤を対角線で折り返すと、行と列が入れ替わり、各行・各列が増加するという条件は保たれる。これは形 $\lambda$ の標準盤と形 $\lambda'$ の標準盤の一対一の対応である。$\square$

Young 図形の全体に、図形の包含 $\mu\subseteq\lambda$ で順序を入れた半順序集合を Young 束という(二つの図形の共通部分と和集合がまた Young 図形になるので束である)。標準盤 $T$ に、$1,\dots,k$ が入った箱の集合 $T^{-1}(\{1,\dots,k\})$ の列
$$ \emptyset\subset\lambda^{(1)}\subset\lambda^{(2)}\subset\cdots\subset\lambda^{(n)}=\lambda $$
を対応させると、これは箱を一つずつ付け加える Young 図形の列であり、prop-young-diagram-ideal によりこの対応は全単射である。つまり $f^\lambda$ は Young 束で $\emptyset$ から $\lambda$ へ一段ずつ上がる道の本数であり、prop-young-diagram-recursion の 1 は「最後の一段で取り除く箱」で道を分類したものである。

鉤長公式

標準盤の個数 $f^\lambda$ は、鉤の長さの積で $n!$ を割った値に等しい。これが Frame–Robinson–Thrall の鉤長公式である(Sta13 Chapter 8, Theorem 8.1 と章末の注、FH91 (4.12))。以下では Greene–Nijenhuis–Wilf による確率的な証明を述べる。$F(\lambda):=n!/\prod_{u\in\lambda}h(u)$ とおき、$F(\emptyset)=1$ とする。prop-young-diagram-recursion の 1 と $f^{\emptyset}=1$ により、$F$ も同じ漸化式
$$ F(\lambda)=\sum_cF(\lambda\setminus c) $$
を満たすことを示せば、$n$ についての帰納法で $f^\lambda=F(\lambda)$ が従う。
$\lambda\vdash n$($n\ge1$)上の鉤の歩みを次のように定める。まず $\lambda$ の箱を一つ、$n$ 個から等確率で選ぶ。いまいる箱 $v$ が角なら止まる。角でなければ、$v$ の鉤に属する $v$ 以外の $h(v)-1$ 個の箱から一つを等確率で選んで移る。移るたびに行番号と列番号の和が増えるので、歩みは有限回で止まり、止まる場所はいずれかの角である。

鉤の歩みの終点

$c=(\alpha,\beta)$ を $\lambda$ の角とする。鉤の歩みが $c$ で止まる確率は
$$ \frac1n\prod_{i=1}^{\alpha-1}\Bigl(1+\frac{1}{h(i,\beta)-1}\Bigr)\prod_{j=1}^{\beta-1}\Bigl(1+\frac{1}{h(\alpha,j)-1}\Bigr) $$
である($i<\alpha$ なら $(i,\beta)$ の下に $c$ があるので $h(i,\beta)\ge2$ であり、$j<\beta$ についても同様)。

通った行と列の集合で分類する

歩みの一歩は、行番号か列番号のどちらか一方だけを増やす。したがって $c$ で止まる歩みは、ある箱 $(a,b)$($a\le\alpha$、$b\le\beta$)から出発し、通った箱の行番号の集合 $A$ と列番号の集合 $B$ は $a=\min A$、$\alpha=\max A$、$b=\min B$、$\beta=\max B$ を満たす。逆に $\{1,\dots,\alpha\}$ の部分集合 $A\ni\alpha$ と $\{1,\dots,\beta\}$ の部分集合 $B\ni\beta$ を与えると、$(\min A,\min B)$ は $c$ の左上にあるので $\lambda$ の箱である(prop-young-diagram-ideal)。そこから出発した歩みが、行の集合がちょうど $A$、列の集合がちょうど $B$ で $c$ に止まる確率を $q(A,B)$ とし、
$$ P(A,B):=\prod_{i\in A\setminus\{\alpha\}}\frac{1}{h(i,\beta)-1}\prod_{j\in B\setminus\{\beta\}}\frac{1}{h(\alpha,j)-1} $$
とおく。$q(A,B)=P(A,B)$ を $|A|+|B|$ についての帰納法で示す。
$|A|=|B|=1$ なら出発点は角 $c$ で、すぐ止まるので $q=1=P$ である。それ以外のとき、$a=\min A$、$b=\min B$ とすると $(a,b)\neq c$ であり、$a<\alpha$ なら $(a+1,b)$、$b<\beta$ なら $(a,b+1)$ が $c$ の左上にあって $\lambda$ に入るので、$(a,b)$ は角でない。行の集合が $A$、列の集合が $B$ であるためには、最初の一歩で $(a',b)$($a'$ は $A\setminus\{a\}$ の最小元)か $(a,b')$($b'$ は $B\setminus\{b\}$ の最小元)に移らなければならず、それぞれの確率は $1/(h(a,b)-1)$ である。よって
$$ q(A,B)=\frac{1}{h(a,b)-1}\Bigl(q(A\setminus\{a\},B)+q(A,B\setminus\{b\})\Bigr) $$
である。ただし $a=\alpha$ なら第 1 項は現れず、$b=\beta$ なら第 2 項は現れない。帰納法の仮定により、$a\neq\alpha$ なら $q(A\setminus\{a\},B)=P(A,B)\,(h(a,\beta)-1)$、$b\neq\beta$ なら $q(A,B\setminus\{b\})=P(A,B)\,(h(\alpha,b)-1)$ である。$a=\alpha$ のときは $h(a,\beta)-1=h(c)-1=0$ なので、現れない第 1 項を $P(A,B)(h(a,\beta)-1)$ と書いても同じであり、$b=\beta$ のときも同様である。したがって
$$ q(A,B)=P(A,B)\,\frac{(h(a,\beta)-1)+(h(\alpha,b)-1)}{h(a,b)-1} $$
となる。$c$ は角なので $\lambda_\alpha=\beta$、$\lambda'_\beta=\alpha$ であり、def-young-diagram-hook の式から
$$ (h(a,\beta)-1)+(h(\alpha,b)-1)=(\lambda_a-\beta+\alpha-a)+(\beta-b+\lambda'_b-\alpha)=\lambda_a-b+\lambda'_b-a=h(a,b)-1 $$
である。よって $q(A,B)=P(A,B)$ が示された。
出発点は確率 $1/n$ で選ばれるので、$c$ で止まる確率は $\frac1n\sum_{A,B}P(A,B)$ である。和は $\alpha\in A\subseteq\{1,\dots,\alpha\}$、$\beta\in B\subseteq\{1,\dots,\beta\}$ にわたり、これは主張の積を展開したものに等しい。$\square$

鉤長公式

$\lambda\vdash n$ に対して
$$ f^\lambda=\frac{n!}{\prod_{u\in\lambda}h(u)} $$
が成り立つ。

鉤の長さの比を確率と見る

$n\ge1$ とし、角 $c=(\alpha,\beta)$ を取り除いたときの鉤の長さの変化を調べる。$c$ と同じ行にも同じ列にもない箱の鉤は変わらない。$j<\beta$ の箱 $(\alpha,j)$ の鉤は腕から $c$ を失い、長さが $1$ 減る。$i<\alpha$ の箱 $(i,\beta)$ の鉤は脚から $c$ を失い、長さが $1$ 減る。$h(c)=1$ なので
$$ \frac{F(\lambda\setminus c)}{F(\lambda)}=\frac{(n-1)!}{n!}\prod_{i=1}^{\alpha-1}\frac{h(i,\beta)}{h(i,\beta)-1}\prod_{j=1}^{\beta-1}\frac{h(\alpha,j)}{h(\alpha,j)-1} $$
であり、$\frac{h}{h-1}=1+\frac{1}{h-1}$ なので、これは lem-young-diagram-hook-walk の確率に等しい。鉤の歩みは必ずいずれかの角で止まるので、すべての角についての和は $1$ であり、$\sum_cF(\lambda\setminus c)=F(\lambda)$ を得る。$|\lambda|$ についての帰納法により、$f^\lambda=\sum_cf^{\lambda\setminus c}=\sum_cF(\lambda\setminus c)=F(\lambda)$ である。$\square$

鉤長公式から、$f^\lambda$ が $n!$ の約数であることや、$f^{\lambda'}=f^\lambda$(鉤の長さの集まりは折り返しで変わらない)が読み取れる。FH91 (4.12) で $\lambda=(4,3,1)$ について計算されている通り、鉤の長さは第 1 行が $6,4,3,1$、第 2 行が $4,2,1$、第 3 行が $1$ で、$f^{(4,3,1)}=8!/(6\cdot4\cdot3\cdot4\cdot2)=70$ である。

優越順序と共役

優越順序

$\lambda,\mu\vdash n$ について、すべての $k\ge1$ で
$$ \lambda_1+\cdots+\lambda_k\ \ge\ \mu_1+\cdots+\mu_k $$
が成り立つとき、$\lambda\trianglerighteq\mu$ と書き、$\lambda$ は $\mu$ を優越する(dominate)という。

$\trianglerighteq$ は $n$ の分割全体の上の半順序である。$(n)$ が最大、$(1^n)$ が最小であるが、全順序ではない。$n=6$ の $(3,1,1,1)$ と $(2,2,2)$ では、部分和が $3,4,5,6$ と $2,4,6,6$ で、$k=1$ では前者が、$k=3$ では後者が大きい。

共役は優越順序を逆にする

$\lambda,\mu\vdash n$ について、$\lambda\trianglerighteq\mu$ と $\mu'\trianglerighteq\lambda'$ は同値である。

はみ出す箱の個数で書き直す

$k\ge1$ について、Young 図形の最初の $k$ 列にある箱を行ごとに数えると $\lambda'_1+\cdots+\lambda'_k=\sum_i\min(\lambda_i,k)$ であり、$x^+:=\max(x,0)$ と書くと
$$ n-(\lambda'_1+\cdots+\lambda'_k)=\sum_i(\lambda_i-k)^+ $$
である(第 $k+1$ 列以降にはみ出す箱の個数)。$\lambda\trianglerighteq\mu$ とし、$m:=\#\{i\mid\mu_i>k\}$ とおく。$\mu$ は非増加なので
$$ \sum_i(\mu_i-k)^+=\sum_{i=1}^m\mu_i-mk\ \le\ \sum_{i=1}^m\lambda_i-mk=\sum_{i=1}^m(\lambda_i-k)\ \le\ \sum_{i=1}^m(\lambda_i-k)^+\ \le\ \sum_i(\lambda_i-k)^+ $$
である。上の式で書き直すと $\lambda'_1+\cdots+\lambda'_k\le\mu'_1+\cdots+\mu'_k$ がすべての $k$ で成り立ち、$\mu'\trianglerighteq\lambda'$ となる。逆に $\mu'\trianglerighteq\lambda'$ なら、いま示したことを $\mu',\lambda'$ に当てて $(\lambda')'\trianglerighteq(\mu')'$、すなわち $\lambda\trianglerighteq\mu$ を得る(分割数 の記事の命題「共役分割の性質」の 2)。$\square$

半標準盤の内容と優越順序

$\lambda,\mu\vdash n$ とし、形 $\lambda$ で内容 $\mu$(数 $i$ がちょうど $\mu_i$ 個書き込まれている)の半標準盤が存在するとする。このとき $\lambda\trianglerighteq\mu$ である。

小さい数は上の行にしか入らない

半標準盤では列が上から下へ狭義増加なので、第 $i$ 行の箱に書かれた数は、その上の $i-1$ 個の相異なる正の整数より大きく、$i$ 以上である。したがって $k$ 以下の数はすべて第 $1$ 行から第 $k$ 行までの箱に入り、その個数 $\mu_1+\cdots+\mu_k$ は、それらの行の箱の総数 $\lambda_1+\cdots+\lambda_k$ 以下である。$\square$

Schur多項式 の記事の命題「Kostka 数による単項対称多項式展開」の Kostka 数 $K_{\lambda\mu}$(形 $\lambda$ で内容 $\mu$ の半標準盤の個数)について、prop-young-diagram-kostka は $K_{\lambda\mu}\neq0$ なら $\lambda\trianglerighteq\mu$ であることを述べている。

対称群の表現との関係

$\mathbb{C}$ 上の $S_n$ の既約表現の同値類は $n$ の分割 $\lambda$ と一対一に対応し、$\lambda$ に対応する既約表現 $V_\lambda$ は、Young 図形の行を保つ置換と列を保つ置換から作る群環の元(Young 対称子)の像として構成される(FH91 §4.1, Theorem 4.3。この記事では証明しない)。その次元は形 $\lambda$ の標準盤の個数に等しい(FH91 §4.3, Corollary 4.39 の直後の段落。この記事では証明しない)。FH91 (4.12) はこの次元を鉤の長さで書いた形であり、thm-young-diagram-hook-length により二つの表し方は一致する。まとめると
$$ \dim V_\lambda=f^\lambda $$
を得る。有限群の既約表現の次元の 2 乗の和は群の位数に等しい(FH91 Corollary 2.18 と (2.19))ので、
$$ \sum_{\lambda\vdash n}(f^\lambda)^2=n! $$
が成り立つ。$n=4$ では $f^\lambda$ が $(4),(3,1),(2,2),(2,1,1),(1^4)$ について $1,3,2,3,1$ で、$1+9+4+9+1=24$ である。この等式は、置換と同じ形の標準盤の対を一対一に対応させる Robinson–Schensted–Knuth の対応によって、表現論を使わずに証明することもでき(Sta13 Chapter 8, Theorem 8.13)、Young 束の上の道の数え上げからも導かれる(同 Corollary 8.5)。
Young 図形は一般線形群の表現にも現れる。長さ $m$ 以下の分割 $\lambda$ は $GL_m(\mathbb{C})$ の既約多項式表現を定め、その指標が Schur 多項式 $s_\lambda$ であり、次元は形 $\lambda$ で $m$ 以下の数を使う半標準盤の個数である(Schur多項式 の記事の定理「一般線形群と対称群の既約指標」と命題「主特殊化と次元公式」)。標準盤が対称群を、半標準盤が一般線形群を数えるという分担になっている。

反例の表

二つの分割 $\mu\subseteq\lambda$ の Young 図形の差 $\lambda/\mu:=D(\lambda)\setminus D(\mu)$ を歪 Young 図形といい、行と列が増加する書き込みを同じように考えられる。

外す条件反例成り立たなくなること
形が Young 図形である(左上に詰まっている)歪 Young 図形 $(2,2)/(1)$鉤長公式(右辺が整数にならない)
標準盤の列も増加する$\lambda=(2,1)$ で行だけ増加する書き込み個数が $n!/\prod h(u)$ に等しいこと
半標準盤の列が狭義増加$\lambda=(1,1)$ に $1,1$ を縦に書いたもの内容 $\mu$ について $\lambda\trianglerighteq\mu$(prop-young-diagram-kostka)
反例の確認

1 行目:$(2,2)/(1)$ の箱は $(1,2)$、$(2,1)$、$(2,2)$ である。$(2,2)$ は $(1,2)$ の下、$(2,1)$ の右にあるので最大の $3$ が入り、残り二箱には $1,2$ をどちらの順にも入れられるので、行と列が増加する書き込みは $2$ 個である。図形の中だけで鉤の長さを数えると $2,2,1$ で、$3!/(2\cdot2\cdot1)=3/2$ は整数でさえない。2 行目:第 1 行に入る $2$ 個の数を $\{1,2,3\}$ から選べば書き込みが決まるので $\binom32=3$ 個あり、$f^{(2,1)}=3!/(3\cdot1\cdot1)=2$ と異なる。$1\,3/2$、$1\,2/3$ のほかに $2\,3/1$ が加わる。3 行目:列が広義増加の書き込みを許すと、形 $(1,1)$ で内容 $\mu=(2)$ のものができるが、$\lambda_1=1<2=\mu_1$ なので $(1,1)\trianglerighteq(2)$ でない。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する