解析的同型(代数幾何学)(analytically isomorphic points)とは、代数閉体 $k$ 上の多様体の 2 点 $P,Q$ について、局所環の極大イデアルに関する完備化が $k$ 代数として同型であることをいう。局所環が同型なら解析的に同型だが、逆は成り立たず、$k$ の標数が $2$ でなければ曲線 $y^2=x^2(x+1)$ の原点は $xy=0$ の原点と解析的に同型である。解析的に同型な点は次元・埋め込み次元・重複度・接錐を共有し、局所環の次元が同じ非特異点はすべて解析的に同型である。平面曲線では最低次の部分の互いに素な分解が冪級数に持ち上がり、通常 2 重点・3 重点は型が 1 つに決まるが、通常 4 重点は接線の 4 点が射影変換で移り合わなければ型が異なり、型は無限個ある。
代数多様体の 2 点 $P,Q$ の局所環 $\mathcal{O}_P,\mathcal{O}_Q$ が同型なら、$P$ と $Q$ は同型な近傍をもち、とくにもとの多様体は双有理同値になる(Har77 演習 I.4.7。同書 pp. 33–34 の説明。この記事では証明しない)。そのため局所環の同型は「点の近くの形」を比べるには細かすぎる。たとえば標数が $2$ でないとき、平面曲線 $y^2=x^2(x+1)$ の原点は、2 本の直線 $xy=0$ の交点と同じように 2 本の滑らかな枝が交わる点だが、前者の局所環は整域で後者はそうでないので、局所環は同型でない。
そこで局所環の代わりにその完備化 $\widehat{\mathcal{O}}_P$ を比べる。完備化が $k$ 代数として同型な 2 点を解析的に同型(analytically isomorphic)という。複素数体の上では、これは点の近くの複素解析的な形をとらえる(prop-ai-complex)。この記事では、解析的に同型な点が次元・重複度・接錐を共有すること、同じ次元の非特異点はすべて解析的に同型であること(thm-ai-nonsingular)、平面曲線の通常 2 重点・3 重点はそれぞれ互いに解析的に同型だが通常 4 重点はそうでないこと(cor-ai-ordinary)を証明する。
以下 $k$ を代数閉体とし、多様体は $k$ 上の代数多様体とする。点 $P\in X$ は閉点とし、局所環 $\mathcal{O}_P=\mathcal{O}_{X,P}$ の極大イデアルを $\mathfrak{m}_P$、その $\mathfrak{m}_P$ 進完備化を $\widehat{\mathcal{O}}_P$ と書く。$\mathcal{O}_P$ は $k$ を含み、剰余体は $k$ である。
多様体 $X,Y$ の点 $P\in X$、$Q\in Y$ が解析的に同型(analytically isomorphic)であるとは、$k$ 代数の同型 $\widehat{\mathcal{O}}_P\cong\widehat{\mathcal{O}}_Q$ があることをいう。
定義は Har77 第 I 章 §5 の Definition(p. 34)による。$\mathcal{O}_P\cong\mathcal{O}_Q$ なら完備化も同型なので、局所環が同型な点は解析的に同型である。逆は成り立たない(ex-ai-node)。
$\mathcal{O}_P$ は Noether 局所環なので、$\widehat{\mathcal{O}}_P$ は極大イデアル $\widehat{\mathfrak{m}}_P=\mathfrak{m}_P\widehat{\mathcal{O}}_P$ をもつ Noether 局所環で、各 $n$ について $\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P^n\cong\widehat{\mathcal{O}}_P/\widehat{\mathfrak{m}}_P^n$、$\mathfrak{m}_P^n/\mathfrak{m}_P^{n+1}\cong\widehat{\mathfrak{m}}_P^n/\widehat{\mathfrak{m}}_P^{n+1}$ である(AM69 Proposition 10.15・10.16(p. 109)、Theorem 10.26(p. 113))。$k$ 代数の同型 $\widehat{\mathcal{O}}_P\cong\widehat{\mathcal{O}}_Q$ は極大イデアルを極大イデアルに写す。
平面曲線 $C=V(f)\subset\mathbb{A}^2$($f\in k[x,y]$、$f(0,0)=0$)の原点 $O$ では、$\mathcal{O}_O=k[x,y]_{(x,y)}/(f)$ であり、完備化は
$$
\widehat{\mathcal{O}}_O\cong k[\![x,y]\!]/(f)
$$
である($k[x,y]_{(x,y)}$ の完備化は $k[\![x,y]\!]$ で、完備化は有限生成加群の完全列を保つ。完備化 の例「形式的冪級数環と局所化の完備化」と命題「完備化の完全性と $\hat{A}\otimes_AM$」)。$f$ を斉次成分に分けて $f=f_r+f_{r+1}+\cdots$($f_r\neq0$)と書くとき、$r$ を原点の重複度、$f_r$ の 1 次因子が定める直線を接線という(接錐 の系「超曲面の接錐」)。
$P\in X$ と $Q\in Y$ が解析的に同型なら、次が成り立つ。
$\theta\colon\widehat{\mathcal{O}}_P\to\widehat{\mathcal{O}}_Q$ を $k$ 代数の同型とする。$\theta(\widehat{\mathfrak{m}}_P^n)=\widehat{\mathfrak{m}}_Q^n$ なので、$\theta$ は $k$ 代数の同型 $\widehat{\mathcal{O}}_P/\widehat{\mathfrak{m}}_P^n\cong\widehat{\mathcal{O}}_Q/\widehat{\mathfrak{m}}_Q^n$ と、次数付き $k$ 代数の同型 $\operatorname{gr}\widehat{\mathcal{O}}_P\cong\operatorname{gr}\widehat{\mathcal{O}}_Q$ を引き起こす。定義の直後に述べた同型 $\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P^n\cong\widehat{\mathcal{O}}_P/\widehat{\mathfrak{m}}_P^n$ と $\operatorname{gr}\mathcal{O}_P\cong\operatorname{gr}\widehat{\mathcal{O}}_P$(AM69 Proposition 10.22、p. 111)を合わせると、1 の等式と 3 が従う。
1 の残り:$n\mapsto\dim_k\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P^n$ は $n$ が大きいとき多項式で、その次数が $\dim\mathcal{O}_P$(Hilbert–Samuel多項式 の定理「Hilbert–Samuel 次元定理」、AM69 Theorem 11.14、p. 121)、最高次の係数に $(\dim\mathcal{O}_P)!$ を掛けたものが $e(\mathcal{O}_P)$ である(Hilbert–Samuel多項式 の定義「Hilbert–Samuel 重複度」)。埋め込み次元は $n=2$ の値から $1$ を引いたものである。2:非特異は $\dim\mathcal{O}_P=\dim_k\mathfrak{m}_P/\mathfrak{m}_P^2$(正則局所環)なので 1 から従う。4:平面曲線の点の重複度 $r$ は Hilbert–Samuel 重複度に等しい(接錐 の定理「超曲面の点の重複度」)。$\square$
4 は Har77 演習 I.5.14 (a)(p. 38)の主張である。
$P\in X$ を閉点、$n:=\dim\mathcal{O}_P$ とする。$P$ が非特異であることと、$k$ 代数の同型 $\widehat{\mathcal{O}}_P\cong k[\![x_1,\dots,x_n]\!]$ があることは同値である。とくに、局所環の次元が等しい非特異点はすべて互いに解析的に同型である。
冪級数環 $k[\![x_1,\dots,x_n]\!]$ は多様体 $\mathbb{A}^n$ の原点の局所環 $k[x]_{(x)}$ の完備化であり、原点は非特異なので、「同型 ⇒ 非特異」は prop-ai-invariants の 2 から従う。
逆に $P$ を非特異とし、$\mathfrak{m}_P$ を生成する $t_1,\dots,t_n$(正則パラメータ系)をとる。$k$ 代数の準同型 $\varphi\colon k[x_1,\dots,x_n]\to\mathcal{O}_P$、$x_i\mapsto t_i$ は $(x)^j$ を $\mathfrak{m}_P^j$ に写す。随伴次数環の写像 $\operatorname{gr}\varphi\colon k[x]\to\operatorname{gr}_{\mathfrak{m}_P}\mathcal{O}_P$ は、$\mathfrak{m}_P^j/\mathfrak{m}_P^{j+1}$ が $t$ の $j$ 次の単項式の像で張られるので全射である。AM69 Lemma 10.23 (ii)(p. 112)により、完備化の写像 $\hat\varphi\colon k[\![x]\!]\to\widehat{\mathcal{O}}_P$ は全射である。
$\ker\hat\varphi\neq0$ と仮定する。$k[\![x]\!]$ は整域で(最低次の斉次成分の積は $0$ でない)、$\dim k[\![x]\!]=n$ である($\dim k[x]_{(x)}=n$ であり(AM69 p. 121 の例)、完備化で次元が変わらないことは prf-ai-invariants と同じ議論による)。$\ker\hat\varphi$ を含む素イデアル $\mathfrak{p}$ は $0$ でないので、$k[\![x]\!]/\mathfrak{p}$ の素イデアルの鎖の前に $0\subsetneq\mathfrak{p}$ を付け足すと、$\dim k[\![x]\!]/\mathfrak{p}\le n-1$ である。よって $\dim\widehat{\mathcal{O}}_P=\dim k[\![x]\!]/\ker\hat\varphi\le n-1$ となるが、prop-ai-invariants の証明により $\dim\widehat{\mathcal{O}}_P=\dim\mathcal{O}_P=n$ であり、矛盾する。ゆえに $\hat\varphi$ は同型である。$\square$
これは Har77 Example 5.6.2(p. 34)の主張で、同書は Cohen の構造定理(Cohenの構造定理)から導いている。「同じ次元の多様体(位相・可微分・複素)は局所的にはどれも同型」という事実の代数的な類似である。
平面曲線の点の解析的な型は、最低次の部分 $f_r$ の因数分解でかなり決まる。鍵は、互いに素な因子への分解が冪級数に持ち上がることである。以下 $S_e\subset k[x,y]$ を $e$ 次の斉次多項式の空間($e< 0$ なら $0$)とし、$\dim S_e=e+1$($e\ge0$)である。
$g\in S_s$、$h\in S_t$($s,t\ge1$)が共通の 1 次因子をもたないとする。このとき $d\ge s+t-1$ なら、写像 $S_{d-s}\oplus S_{d-t}\to S_d$、$(a,b)\mapsto ag+bh$ は全射である。
要点:互いに素なので核は $(ch,-cg)$ の形に限られ、次元を数えると像が $S_d$ 全体になる。
$k[x,y]$ は一意分解整域で、$g,h$ は互いに素である。$ag+bh=0$ なら $h\mid ag$ から $h\mid a$ なので、$a=ch$、$b=-cg$($c\in S_{d-s-t}$)と書ける。よって核の次元は $d-s-t+1$($d\ge s+t$ のとき)または $0$($d=s+t-1$ のとき)であり、像の次元は $d\ge s+t$ なら $(d-s+1)+(d-t+1)-(d-s-t+1)=d+1$、$d=s+t-1$ なら $t+s=d+1$ である。いずれも $\dim S_d$ に等しい。$\square$
$f=f_r+f_{r+1}+\cdots\in k[\![x,y]\!]$($f_j\in S_j$)とし、$f_r=gh$($g\in S_s$、$h\in S_t$、$s,t\ge1$)で $g,h$ は共通の 1 次因子をもたないとする。このとき $\tilde g=g+g_{s+1}+g_{s+2}+\cdots$、$\tilde h=h+h_{t+1}+h_{t+2}+\cdots$($g_j,h_j\in S_j$)で $f=\tilde g\tilde h$ となるものがある。
$g_s:=g$、$h_t:=h$ とする。$f=\tilde g\tilde h$ の次数 $r+j$ の部分は
$$
g_sh_{t+j}+h_tg_{s+j}=f_{r+j}-\sum_{\substack{i+i'=j\\ i,i'\ge1}}g_{s+i}h_{t+i'}\qquad(j\ge1)
$$
であり、$j=0$ の部分は $f_r=gh$ で成り立っている。$j\ge1$ について、右辺は $j-1$ 以下の段で決めた $g_{s+i},h_{t+i'}$ だけで決まる $r+j$ 次の斉次式である。$r+j\ge s+t-1$ なので、lem-ai-forms により $h_{t+j}\in S_{t+j}$、$g_{s+j}\in S_{s+j}$ を選んで等式を成り立たせられる。こうして帰納的に定めた $\tilde g,\tilde h$ について、$\tilde g\tilde h$ と $f$ はすべての次数で一致する。$\square$
これは Har77 演習 I.5.14 (b)(p. 38)の主張であり、同書 Example 5.6.3(pp. 34–35)は $y^2=x^2(x+1)$ の場合に同じ計算をしている。$f_r$ が互いに素に分解しないと結論は崩れる(反例の表の 3 行目)。
$f_r$ が相異なる $r$ 本の直線の積であるとき、原点を通常 $r$ 重点という。$r=2$ が通常2重点(節点)である(通常2重点)。
平面曲線の点について次が成り立つ。
準備。$u,v\in(x,y)\subset k[\![x,y]\!]$ の 1 次の部分が一次独立なら、$x\mapsto u$、$y\mapsto v$ で定まる $k$ 代数の準同型 $\sigma\colon k[\![x,y]\!]\to k[\![x,y]\!]$ は同型である。実際、$\sigma$ が随伴次数環に引き起こす写像は 1 次の変数変換なので全単射であり、AM69 Lemma 10.23(p. 112)により $\sigma$ は全単射である(通常2重点 の補題「形式的な座標変換」と同じ)。このとき $\sigma$ はイデアル $(F)$ を $(\sigma(F))$ に写すので、$k[\![x,y]\!]/(F)\cong k[\![x,y]\!]/(\sigma(F))$ である。
通常 $r$ 重点では $f_r=\ell_1\cdots\ell_r$(相異なる 1 次式)であり、thm-ai-splitting を $\ell_1$ と $\ell_2\cdots\ell_r$ に当て、残りに繰り返すと、$f=u_1\cdots u_r$($u_i$ の 1 次の部分が $\ell_i$)と書ける。
1:$\sigma\colon x\mapsto u_1$、$y\mapsto u_2$ は同型で $\sigma(xy)=f$ なので、$\widehat{\mathcal{O}}\cong k[\![x,y]\!]/(f)\cong k[\![x,y]\!]/(xy)$ である。
2:$\sigma\colon x\mapsto u_1$、$y\mapsto u_2$ をとり、$u_3=\sigma(G)$ とする。$G$ の各単項式を $x$ を含むものと $y$ の冪だけのものに分けて $G=xA_0+yB_0$ と書くと、$u_3=u_1A+u_2B$($A:=\sigma(A_0)$、$B:=\sigma(B_0)$)であり、1 次の部分を比べて $\ell_3=a\ell_1+b\ell_2$($a=A(0)$、$b=B(0)$)である。$\ell_3$ は $\ell_1,\ell_2$ のどちらとも比例しないので $a,b\neq0$ であり、$A,B$ は単元である。$X:=u_1A$、$Y:=u_2B$ の 1 次の部分 $a\ell_1,b\ell_2$ は一次独立なので、$\tau\colon x\mapsto X$、$y\mapsto Y$ は同型で、
$$
\tau\bigl(xy(x+y)\bigr)=XY(X+Y)=AB\cdot u_1u_2u_3=AB\cdot f
$$
である。$AB$ は単元なので $(\tau(xy(x+y)))=(f)$ であり、$\widehat{\mathcal{O}}\cong k[\![x,y]\!]/(xy(x+y))$ である。
3:$\theta\colon\widehat{\mathcal{O}}_P\to\widehat{\mathcal{O}}_Q$ を同型とし、$P,Q$ の方程式の最低次の部分を $f_4,g_4$ とする。prop-ai-invariants の 3 と 接錐 の系「超曲面の接錐」により、$\theta$ は次数付き $k$ 代数の同型 $k[x,y]/(f_4)\to k[x,y]/(g_4)$ を引き起こす。両辺は 1 次の部分で生成され、1 次の部分は $kx\oplus ky$ そのものなので、この同型は可逆な線形変換 $L$ による変数の代入 $F\mapsto F\circ L$ から来ており、$f_4\circ L$ は $(g_4)$ の 4 次の部分 $kg_4$ に入る。よって $f_4\circ L=cg_4$($c\neq0$)であり、$L$ が引き起こす $\mathbb{P}^1$ の射影変換は $g_4$ の 4 つの零点を $f_4$ の 4 つの零点に移す。$xy(x-y)(x-\lambda y)$ の零点は $\mathbb{P}^1$ の $\{0,\infty,1,\lambda\}$(の並べ替え)である。射影変換が 4 点の集合を 4 点の集合に移すとき、移った先の 4 点を並べた複比は、もとの 4 点をある順に並べた複比に等しい(複比 の定理「複比の基本定理」の 1)。同定理の 2 により $(\infty,0;1,d)=d$ なので、$\{0,\infty,1,\lambda'\}$ が $\{0,\infty,1,\lambda\}$ の像なら、$\lambda'=(\infty,0;1,\lambda')$ は $0,\infty,1,\lambda$ をある順に並べた複比に等しく、複比 の定理「並べ替えと 6 つの値」によりその値は高々 6 個である。$k$ は無限体なので、無限個の型がある。$\square$
1 と 2 と 3 の後半は Har77 演習 I.5.14 (c)(p. 38)の主張である。
$C=V(y^2-x^2(x+1))$ の原点 $O$ と、$D=V(xy)$ の原点 $O'$ を比べる。$C$ の最低次の部分は $y^2-x^2=(y-x)(y+x)$ で、$k$ の標数が $2$ でなければ 2 つの因子は異なるので、$O$ は通常 2 重点であり、cor-ai-ordinary の 1 により $O$ と $O'$ は解析的に同型である。一方 $y^2-x^2(x+1)$ は $k[x,y]$ で既約なので $\mathcal{O}_{C,O}$ は整域だが、$\mathcal{O}_{D,O'}$ では $x\cdot y=0$、$x,y\neq0$ なので整域でない。よって $\mathcal{O}_{C,O}\not\cong\mathcal{O}_{D,O'}$ である。$\widehat{\mathcal{O}}_{C,O}$ は整域でない(完備化 の例「反例:完備化で既約性が壊れる例」)。これは Har77 Example 5.6.3(pp. 34–35)である。
節点 $xy=0$ と尖点 $y^2=x^3$ の原点は、どちらも重複度 $2$ の平面曲線の点で、接錐 の定理「超曲面の点の重複度」の証明と同じ計算により $\dim_k\mathfrak{m}^j/\mathfrak{m}^{j+1}=2$($j\ge1$)なので、Hilbert 関数 $\dim_k\mathcal{O}/\mathfrak{m}^n=2n-1$ は等しい。しかし接錐の座標環は $k[x,y]/(xy)$ と $k[x,y]/(y^2)$ で、後者だけが 1 次の冪零元 $y$ をもつので、次数付き $k$ 代数として同型でない。prop-ai-invariants の 3 により、2 点は解析的に同型でない。
$k=\mathbb{C}$ のとき、多様体 $X$ の解析化 $X^{\mathrm{an}}$(解析化)の点 $P$ での局所環 $\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P$ は解析代数である。
$X,Y$ を $\mathbb{C}$ 上の多様体、$P\in X$、$Q\in Y$ とする。$\widehat{\mathcal{O}}_P$ は $\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P$ の極大イデアルに関する完備化と同型である。とくに、$P$ の近傍と $Q$ の近傍が複素解析空間として同型(双正則)なら、$P$ と $Q$ は解析的に同型である。
$P$ のアフィン近傍を $V(F_1,\dots,F_s)\subset\mathbb{A}^N$、$P=0$ とすると、$\mathcal{O}_P=\mathbb{C}[z]_{(z)}/(F)$、$\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P=\mathbb{C}\{z\}/(F)$ である(解析化 の定義「アフィンスキームの解析化」)。$\mathbb{C}\{z\}/(z)^n=\mathbb{C}[z]/(z)^n$ なので(解析代数 の補題「単項式による分割」。1 変数では 完備化 の例「収束冪級数環との違い」)、$\mathbb{C}[z]_{(z)}$ と $\mathbb{C}\{z\}$ はどちらも同じ逆系の極限として $\mathbb{C}[\![z]\!]$ を完備化にもち、完備化は有限生成加群の完全列を保つので、どちらの完備化も $\mathbb{C}[\![z]\!]/(F)$ である。後半:同型 $(X^{\mathrm{an}},P)\cong(Y^{\mathrm{an}},Q)$ は $\mathbb{C}$ 代数の同型 $\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_Q\cong\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P$ を引き起こし、それは極大イデアルを保つので完備化の同型を引き起こす。$\square$
完備化の同型は、エタール射で結ばれることとも言い換えられる。
$X,Y$ を多様体、$P\in X$、$Q\in Y$ を点とする。
要点:1 の「解析的に同型 ⇒ エタール局所的に同型」は Artin の近似定理の帰結で、この記事では証明しない。逆向きはエタール射が完備局所環の同型を引き起こすことから従い、2 はこれを Weierstrass の有限性定理で解析局所環に持ち上げる。
1 の「⇒」は Art69 Corollary (2.6)(p. 28)である。そこで $S=\operatorname{Spec}k$、$X_1=X$、$X_2=Y$ とすると、完備局所環の $\mathcal{O}_S$ 同型は $k$ 代数の同型であり、結論の共通のエタール近傍を $P'$ のアフィン開近傍に取り替えたものが上の $X'$、$P'$、$u$、$v$ を与える(剰余体の同型も結論に含まれる)。証明は同論文の近似定理(Theorem 1.12)による。
1 の「⇐」:$\kappa(P')=k$ で $X'$ は $k$ 上有限型なので $P'$ は閉点である。エタール射 の命題「完備局所環の同型」により、$u$、$v$ は $k$ 代数の同型 $\widehat{\mathcal{O}}_P\to\widehat{\mathcal{O}}_{X',P'}$、$\widehat{\mathcal{O}}_Q\to\widehat{\mathcal{O}}_{X',P'}$ を引き起こす。よって $\widehat{\mathcal{O}}_P\cong\widehat{\mathcal{O}}_Q$ である。
2 の「⇐」:$\mathbb{C}$ 代数の同型 $\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P\cong\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_Q$ は極大イデアルを極大イデアルに写すので、極大イデアルに関する完備化の同型を引き起こす。prop-ai-complex によりそれぞれは $\widehat{\mathcal{O}}_P$、$\widehat{\mathcal{O}}_Q$ と同型なので、$P,Q$ は解析的に同型である。
2 の「⇒」:1 の $X'$、$P'$、$u$、$v$ をとる。$X'$ を $P'$ のアフィン開近傍に取り替えてよい。$u$ について $\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P\cong\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_{X',P'}$ を示せば、$v$ についても同じなので $\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P\cong\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_Q$ となる。$A=\mathcal{O}_P$、$B=\mathcal{O}_{X',P'}$、$A^{\mathrm{an}}=\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_P$、$B^{\mathrm{an}}=\mathcal{O}^{\mathrm{an}}_{X',P'}$ とし、$\varphi\colon A^{\mathrm{an}}\to B^{\mathrm{an}}$ を $u$ の解析化 $u^{\mathrm{an}}$(解析化 の命題「射と解析化」)が引き起こす局所 $\mathbb{C}$ 代数の準同型とする。prf-ai-complex は $\mathbb{C}$ 上有限型のアフィンスキームの閉点についてそのまま通り、$A$ と $A^{\mathrm{an}}$ の完備化はどちらも $A/\mathfrak{m}_A^n=A^{\mathrm{an}}/\mathfrak{m}_{A^{\mathrm{an}}}^n$ の逆極限である。$B$ についても同じであり、$\varphi$ と $u^\sharp\colon A\to B$ は各段 $n$ で同じ写像を引き起こすから、$\varphi$ の完備化 $\widehat\varphi$ は $u^\sharp$ の完備化と一致し、エタール射 の命題「完備局所環の同型」により同型である。
単射性:$A^{\mathrm{an}}$ は収束冪級数環の剰余環なので Noether 局所環であり(Weierstrassの予備定理 の系「収束冪級数環は Noether 環」)、Krullの交叉定理 により $A^{\mathrm{an}}\to\widehat{A^{\mathrm{an}}}$ は単射である。$\widehat\varphi$ も単射なので、合成 $A^{\mathrm{an}}\to\widehat{A^{\mathrm{an}}}\to\widehat{B^{\mathrm{an}}}$ に等しい $A^{\mathrm{an}}\xrightarrow{\varphi}B^{\mathrm{an}}\to\widehat{B^{\mathrm{an}}}$ は単射であり、$\varphi$ は単射である。
全射性:$X'\subset\mathbb{A}^N$ を閉部分スキームとし $P'$ を原点にとると、$B^{\mathrm{an}}$ の極大イデアルは座標関数 $z_1,\dots,z_N$ の像で生成され、$z_i\in\mathfrak{m}_B$ である。剰余体はどちらも $k$ でエタール射は不分岐なので $\mathfrak{m}_B=\mathfrak{m}_AB$ であり(エタール射 の命題「完備局所環の同型」の証明の冒頭)、各 $z_i$ は $\mathfrak{m}_A$ の元の像を係数とする $B$ の元の 1 次結合である。よって $\mathfrak{m}_{B^{\mathrm{an}}}=\mathfrak{m}_{A^{\mathrm{an}}}B^{\mathrm{an}}$ である。解析代数 の系「有限な射の判定」(条件 3 で冪を $1$ とする)により $B^{\mathrm{an}}$ は有限生成 $A^{\mathrm{an}}$ 加群であり、$B^{\mathrm{an}}/\mathfrak{m}_{A^{\mathrm{an}}}B^{\mathrm{an}}=\mathbb{C}$ は $1$ で張られるので、解析代数 の定理「Weierstrass の有限性定理」の最後の主張により $1$ が $B^{\mathrm{an}}$ を $A^{\mathrm{an}}$ 加群として生成する。すなわち $\varphi$ は全射である。$\square$
1 の同値は、点の近くの形を「エタール射で移り合う」という代数的な言葉で述べる。局所環の同型(Zariski 近傍の同型)より弱く、完備化の同型と同じ強さであるところに、Artin の近似定理の内容がある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 完備化の同型(Hilbert 関数の一致に弱める) | 節点 $xy=0$ と尖点 $y^2=x^3$ の原点 | 不変量は一致するが解析的に同型でない(prop-ai-invariants の逆) |
| 非特異であること | 尖点 $y^2=x^3$ の原点 | $\widehat{\mathcal{O}}$ は $k[\![t]\!]$ と同型でない(thm-ai-nonsingular) |
| $g,h$ が共通の 1 次因子をもたないこと | $f=y^2-x^3$($f_2=y\cdot y$) | $f$ は $k[\![x,y]\!]$ で $(y+\cdots)(y+\cdots)$ と分解しない(thm-ai-splitting) |
| 重複度が $3$ 以下であること | $xy(x-y)(x-\lambda y)=0$ の原点 | 通常 4 重点どうしは解析的に同型とは限らない(cor-ai-ordinary) |
1 行目は ex-ai-node-cusp である。2 行目:尖点の原点は重複度 $2$ なので非特異でなく(接錐 の定理「超曲面の点の重複度」)、prop-ai-invariants の 2 により $k[\![t]\!]$($\mathbb{A}^1$ の原点という非特異点の完備化)とは同型でない。
3 行目:$y^2-x^3=GH$($G,H$ は単元でない)とする。最低次の部分の次数は足し算になるので($k[x,y]$ は整域)、$G,H$ の最低次の部分はどちらも 1 次で、その積は $y^2$ だから $G=cy+(\text{2 次以上})$($c\neq0$)としてよい。$x\mapsto t^2$、$y\mapsto t^3$ で定まる準同型 $k[\![x,y]\!]\to k[\![t]\!]$ で $y^2-x^3\mapsto0$ であり、$k[\![t]\!]$ は整域なので $G$ か $H$ の像は $0$ である。ところが 2 次以上の単項式 $x^iy^j$ の像の $t$ についての位数は $2i+3j\ge4$ なので、$G$ の像は $ct^3+(\text{位数 }4\text{ 以上})\neq0$ であり、$H$ についても同様で、矛盾する。よって $y^2-x^3$ は $k[\![x,y]\!]$ で既約である。
4 行目:cor-ai-ordinary の 3 である。重複度 $2,3$ の通常の点は 1 と 2 により型が 1 つしかない。
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