Lerayの定理(非輪状被覆)(Leray's theorem on acyclic covers)とは、位相空間 $X$ 上のアーベル群の層 $\mathcal{F}$ と開被覆 $\mathfrak{U}$ について、被覆の有限個の交わりの上で $\mathcal{F}$ の正の次数の層コホモロジーがすべて消えるならば、$\mathfrak{U}$ に関する Čech コホモロジーが層コホモロジー $H^p(X,\mathcal{F})$ とすべての次数で一致するという定理である。被覆の局所有限性は要らず、Čech 複体を層の複体に作り直した脆弱分解と二重複体から示される。分離的なスキーム上の準連接層をアフィン開被覆で、複素空間上の連接解析層を Stein 開被覆で計算するときの土台であり、Lerayスペクトル系列とは別の定理である。
前提知識: 層コホモロジー, Čechコホモロジー, 脆弱層, 二重複体
位相空間 $X$ 上のアーベル群の層 $\mathcal{F}$ の層コホモロジー $H^p(X,\mathcal{F})$ は、大域切断の関手の右導来関手として定義されるので、定義のままでは計算しにくい。一方、開被覆 $\mathfrak{U}$ に関するČechコホモロジー $\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ は、被覆の重なりの上の切断だけから作る具体的な複体のコホモロジーである。Lerayの定理(Leray's theorem on acyclic covers)は、被覆の有限個の交わりの上で $\mathcal{F}$ の高次の層コホモロジーがすべて消えるならば、両者がすべての次数で一致すると主張する。分離的なスキーム上の準連接層をアフィン開被覆で計算するとき、複素空間上の連接解析層を Stein 開被覆で計算するとき、どちらもこの定理が土台になる。
同じ Leray の名を冠するLerayスペクトル系列(連続写像の高次順像から全空間のコホモロジーを組み立てるスペクトル系列)とは別の定理である。この記事では、Čech 複体を層の複体に作り直した分解と二重複体を使って定理を証明し、スキームと複素空間での使い方と、仮定を外したときの反例を述べる。
以下、$X$ を位相空間、$\mathcal{F}$ を $X$ 上のアーベル群の層、$\mathfrak{U}=(U_i)_{i\in I}$ を $X$ の開被覆とする。添字集合 $I$ に制限は置かない。$s=(i_0,\dots,i_p)\in I^{p+1}$ について $U_s:=U_{i_0}\cap\cdots\cap U_{i_p}$ と書き、$\mathcal{F}(\emptyset)=0$ とする。$H^q(U,\mathcal{F})$ は制限 $\mathcal{F}|_U$ の層コホモロジー(導来関手)を表す。
$p\ge0$ について
$$
\check{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F}):=\prod_{s\in I^{p+1}}\mathcal{F}(U_s),\qquad(dc)_{i_0\cdots i_{p+1}}:=\sum_{k=0}^{p+1}(-1)^k\,c_{i_0\cdots\widehat{i_k}\cdots i_{p+1}}\big|_{U_{i_0\cdots i_{p+1}}}
$$
と定める(Čechコホモロジー の定義「Čech複体」を開被覆に当てたもの)。$c\in\check{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ が交代的であるとは、$\{0,\dots,p\}$ の任意の置換 $\sigma$ について $c_{i_{\sigma(0)}\cdots i_{\sigma(p)}}=\operatorname{sgn}(\sigma)\,c_{i_0\cdots i_p}$ であり、添字に重複があれば $c_{i_0\cdots i_p}=0$ であることをいう。交代的な元は部分複体 $\check{C}^\bullet_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ をなす。それぞれのコホモロジーを $\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})$、$\check{H}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ と書く。
$d$ が交代的な元を交代的な元に送ることは定義から確かめられる(GR79 第 B 章 §2.2、p. 35)。$I$ に全順序を 1 つ固定すると、増加列 $i_0<\cdots< i_p$ の成分だけを見る写像により $\check{C}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})\cong\prod_{i_0<\cdots< i_p}\mathcal{F}(U_{i_0\cdots i_p})$ である。これは Har77 第 III 章 §4 の定義である。とくに $I$ が $N$ 個の元からなれば、$p\ge N$ で $\check{C}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})=0$ である。$\mathcal{F}$ は層なので $\check{H}^0(\mathfrak{U},\mathcal{F})=\check{H}^0_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})=\mathcal{F}(X)$ である(Čechコホモロジー の注意「0次の項と層の条件」)。
開被覆 $\mathfrak{U}$ が $\mathcal{F}$ について非輪状(acyclic)である、または $\mathcal{F}$ の Leray 被覆であるとは、すべての $p\ge0$、$s\in I^{p+1}$、$q\ge1$ について $H^q(U_s,\mathcal{F})=0$ であることをいう。
条件は有限個の交わり $U_s$ ごとの条件であり、$U_s=\emptyset$ なら自動的にみたされる。
$X$ を位相空間、$\mathcal{F}$ を $X$ 上のアーベル群の層、$\mathfrak{U}$ を $\mathcal{F}$ について非輪状な開被覆とする。このとき、def-leray-comparison の比較写像
$$
\rho^p\colon\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})\longrightarrow H^p(X,\mathcal{F}),\qquad\rho^p_a\colon\check{H}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})\longrightarrow H^p(X,\mathcal{F})
$$
はすべての $p\ge0$ で同型である。とくに包含 $\check{C}^\bullet_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})\subset\check{C}^\bullet(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ はコホモロジーの同型を与える。
被覆が局所有限であることも、$X$ がパラコンパクトであることも仮定しない。証明は次の節で、2 つの補題(lem-leray-sheafified-resolution、lem-leray-flasque)を準備してから与える(prf-leray-acyclic-cover)。
開集合 $V\subset X$ について、$\mathfrak{U}\cap V:=(U_i\cap V)_{i\in I}$ は $V$ の開被覆である。
$$
\mathcal{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})(V):=\check{C}^p(\mathfrak{U}\cap V,\mathcal{F}|_V)=\prod_{s\in I^{p+1}}\mathcal{F}(U_s\cap V)
$$
と置き、制限写像を成分ごとの制限とする。各成分 $V\mapsto\mathcal{F}(U_s\cap V)$ は層であり、層の積は層なので、$\mathcal{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ は層である。$d$ は制限と可換なので層の複体が得られ、$\varepsilon\colon\mathcal{F}\to\mathcal{C}^0(\mathfrak{U},\mathcal{F})$、$t\mapsto(t|_{U_i\cap V})_i$ が添加写像を与える。交代的な元だけをとった部分層の複体を $\mathcal{C}^\bullet_a(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ とする。定義から $\Gamma(X,\mathcal{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F}))=\check{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})$ である。
層の列
$$
0\longrightarrow\mathcal{F}\xrightarrow{\ \varepsilon\ }\mathcal{C}^0(\mathfrak{U},\mathcal{F})\xrightarrow{\ d\ }\mathcal{C}^1(\mathfrak{U},\mathcal{F})\xrightarrow{\ d\ }\cdots
$$
は完全である。$\mathcal{C}^\bullet$ を $\mathcal{C}^\bullet_a$ に替えても完全である。
層の列の完全性は茎で確かめればよい。茎は点 $x$ の開近傍 $V$ についての切断の帰納極限であり、有向帰納極限は完全列を保つ。したがって、各点 $x$ について、$x$ の開近傍の基本系をなす $V$ で切断の列
$$
0\to\mathcal{F}(V)\xrightarrow{\ \varepsilon\ }\check{C}^0(\mathfrak{U}\cap V,\mathcal{F})\xrightarrow{\ d\ }\check{C}^1(\mathfrak{U}\cap V,\mathcal{F})\xrightarrow{\ d\ }\cdots
$$
が完全になるものがあることを示せばよい。
$x\in U_j$ となる $j\in I$ を 1 つ選び、$V\subset U_j$ とする。このとき任意の $t=(i_0,\dots,i_{p-1})$ について $U_{jt}\cap V=U_t\cap V$ である($U_{jt}:=U_j\cap U_t$)。$\check{C}^{-1}:=\mathcal{F}(V)$、$d:=\varepsilon$ と置き、$h\colon\check{C}^p(\mathfrak{U}\cap V,\mathcal{F})\to\check{C}^{p-1}(\mathfrak{U}\cap V,\mathcal{F})$($p\ge0$)を
$$
(hc)_{i_0\cdots i_{p-1}}:=c_{j\,i_0\cdots i_{p-1}}\in\mathcal{F}(U_{j\,i_0\cdots i_{p-1}}\cap V)=\mathcal{F}(U_{i_0\cdots i_{p-1}}\cap V)
$$
で定める($p=0$ では $hc:=c_j\in\mathcal{F}(U_j\cap V)=\mathcal{F}(V)$)。以下、制限の記号は省く。$p\ge1$、$c\in\check{C}^p$、$s=(i_0,\dots,i_p)$ について、$d$ の定義で $j$ を第 0 成分とする項を分けて書くと
$$
(hdc)_s=(dc)_{j\,i_0\cdots i_p}=c_{i_0\cdots i_p}+\sum_{k=0}^{p}(-1)^{k+1}c_{j\,i_0\cdots\widehat{i_k}\cdots i_p}=c_s-\sum_{k=0}^{p}(-1)^k(hc)_{i_0\cdots\widehat{i_k}\cdots i_p}=c_s-(dhc)_s
$$
である。$p=0$ では $(hdc)_{i_0}=(dc)_{j\,i_0}=c_{i_0}-c_j=c_{i_0}-(\varepsilon hc)_{i_0}$ であり、$\mathcal{F}(V)$ の上では $h\varepsilon(t)=t$ である。よってすべての次数で $hd+dh=\mathrm{id}$ が成り立ち、恒等写像が $0$ にホモトピックな複体は完全である。
$c$ が交代的なら $hc$ も交代的である。実際 $(i_0,\dots,i_{p-1})$ の置換は $(j,i_0,\dots,i_{p-1})$ の後ろの $p$ 成分の置換で、符号は同じであり、$i_0,\dots,i_{p-1}$ に重複があれば $c_{j\,i_0\cdots i_{p-1}}=0$ である。$\varepsilon$ の像は交代的($0$ 次では条件がない)なので、同じ $h$ が $\check{C}^\bullet_a$ の上でも縮約を与える。$\square$
この計算は、被覆 $\mathfrak{U}\cap V$ が $V$ 自身を成員にもつことだけを使っている(Čechコホモロジー の命題「切断をもつ被覆のČech複体は可縮」と同じ議論である)。
$\mathcal{G}$ を $X$ 上の脆弱層とする。任意の開被覆 $\mathfrak{U}$ と $p\ge1$ について $\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{G})=\check{H}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{G})=0$ である。
要点:$\mathcal{C}^\bullet(\mathfrak{U},\mathcal{G})$ は $\mathcal{G}$ の脆弱分解であり、その大域切断が Čech 複体である。
開集合 $V'\subset V$ について制限写像 $\prod_s\mathcal{G}(U_s\cap V)\to\prod_s\mathcal{G}(U_s\cap V')$ は成分ごとに全射なので、$\mathcal{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{G})$ は脆弱である。交代的な部分層も、$I$ に全順序を固定し、増加列の成分を延長してから残りの成分を交代性で定めれば延長できるので、脆弱である。lem-leray-sheafified-resolution により $0\to\mathcal{G}\to\mathcal{C}^\bullet(\mathfrak{U},\mathcal{G})$ は脆弱分解であるから、層コホモロジー の定理「脆弱層の非輪状性」の 2 により、$p\ge1$ について $\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{G})=H^p(\Gamma(X,\mathcal{C}^\bullet(\mathfrak{U},\mathcal{G})))\cong H^p(X,\mathcal{G})=0$ である(最後の等号は $\mathcal{G}$ 自身が脆弱だから)。交代的な版も同じである。$\square$
$0\to\mathcal{F}\to\mathcal{G}^\bullet$ を $\mathcal{F}$ の Godement の標準分解とする(Godementの標準分解 の定義「Godement の標準分解」)。各 $\mathcal{G}^q$ は脆弱であり、$H^p(X,\mathcal{F})\cong H^p(\Gamma(X,\mathcal{G}^\bullet))$ である(同記事の定理「Godement の標準分解の基本性質」の 2・3)。$K^{p,q}:=\check{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{G}^q)$($p,q\ge0$)とおき、横の微分を Čech の微分 $d$、縦の微分を $\mathcal{G}^\bullet$ の微分から成分ごとに誘導される射 $\delta$ とする。両者は可換なので、縦の微分を $(-1)^p\delta$ に替えると第 1 象限の二重複体になる(二重複体 の注意「可換の流儀と符号の付け替え」)。全複体を $\operatorname{Tot}(K)$ と書く。$K_a^{p,q}:=\check{C}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{G}^q)$ も同様に二重複体をなす。
次の 2 つの複体の射を考える。
比較写像はどの開被覆についても定まり、Godement 分解が $\mathcal{F}$ について関手的なので $\mathcal{F}$ について自然である。包含 $K_a\subset K$ と両立するので、$\rho^p_a$ は包含 $\check{H}^p_a\to\check{H}^p$ と $\rho^p$ の合成に等しい。
$\rho^p$ が同型であることを示すには、$\kappa$ が擬同型であることを示せばよい。二重複体 の定理「列が正の次数で非輪状な二重複体の全複体」の 1 により、各列 $(K^{p,\bullet},\delta)$ について、正の次数のコホモロジーが $0$ で、$0$ 次のコホモロジーが $\check{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})$($\kappa$ による)であることを示せばよい。
第 $p$ 列は、添加写像まで含めて
$$
0\to\check{C}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})\to K^{p,0}\to K^{p,1}\to\cdots\;=\;\prod_{s\in I^{p+1}}\Bigl(0\to\mathcal{F}(U_s)\to\mathcal{G}^0(U_s)\to\mathcal{G}^1(U_s)\to\cdots\Bigr)
$$
である。脆弱層の開集合への制限は脆弱で、層の完全列の制限は完全なので、$0\to\mathcal{F}|_{U_s}\to\mathcal{G}^\bullet|_{U_s}$ は $\mathcal{F}|_{U_s}$ の脆弱分解である。層コホモロジー の定理「脆弱層の非輪状性」の 2 により、因子 $\Gamma(U_s,\mathcal{G}^\bullet)$ の $q$ 次コホモロジーは $H^q(U_s,\mathcal{F})$ であり、仮定により $q\ge1$ で $0$ である。$0$ 次では、層の完全列 $0\to\mathcal{F}\to\mathcal{G}^0\to\mathcal{G}^1$ に大域切断の左完全性(層コホモロジー の命題「大域切断関手の左完全性」)を $U_s$ で当てて、$\ker(\mathcal{G}^0(U_s)\to\mathcal{G}^1(U_s))=\mathcal{F}(U_s)$ である。よって各因子の添加された列は完全であり、アーベル群の完全列の直積は完全なので、第 $p$ 列も添加まで含めて完全である。これで $\kappa$ は擬同型であり、$\rho^p$ は同型である。
交代的な版では、$I$ に全順序を固定した同一視 $\check{C}^p_a(\mathfrak{U},\mathcal{A})\cong\prod_{i_0<\cdots< i_p}\mathcal{A}(U_{i_0\cdots i_p})$ が前層 $\mathcal{A}$ について自然なので、第 $p$ 列は増加列 $s$ についての同じ直積であり、同じ議論で $\rho^p_a$ も同型である。最後の主張は $\rho^p_a=\rho^p\circ(\text{包含})$ から従う。$\square$
GR79 第 B 章 §3.3(p. 43)は局所有限な被覆について同じ定理を述べ、局所有限性の仮定は他の方法で外せると注意している。上の証明では、列のコホモロジーがアーベル群の直積と可換であることだけを使うので、局所有限性は要らない。
$X$ を分離的なスキーム(分離射)、$\mathcal{F}$ を準連接層、$\mathfrak{U}$ をアフィン開集合からなる開被覆とする。分離的なスキームでは有限個のアフィン開集合の交わりはアフィンであり(Har77 II 演習 4.3、p. 106)、アフィンスキーム上の準連接層の正の次数のコホモロジーは消える(連接層 の定理「アフィンスキーム上の消滅」)。よって $\mathfrak{U}$ は $\mathcal{F}$ について非輪状であり、thm-leray-acyclic-cover により $\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})\cong H^p(X,\mathcal{F})$ である。$X$ が Noether の場合が Har77 III.4.5(p. 222)である。$X$ が $N$ 個のアフィン開集合で覆えるなら、交代 Čech 複体の長さから $p\ge N$ で $H^p(X,\mathcal{F})=0$ である。
$k$ を体、$X=\mathbb{P}^1_k=\operatorname{Proj}k[x_0,x_1]$、$U_0=D_+(x_0)$、$U_1=D_+(x_1)$ とし、Serreのひねり層 $\mathcal{O}(n)$ を考える。Serreのひねり層 の命題「付随する層の茎と座標近傍」の 2 により、$\Gamma(U_0,\mathcal{O}(n))$ は $k[x_0,x_1]_{x_0}$ の次数 $n$ の部分で、単項式 $x_0^ax_1^b$($a+b=n$、$b\ge0$)を基底にもつ。同様に $\Gamma(U_1,\mathcal{O}(n))$ は $a\ge0$ の単項式、$\Gamma(U_0\cap U_1,\mathcal{O}(n))$ は $a+b=n$ のすべての単項式を基底にもつ。$0<1$ の順序での交代 Čech 複体は
$$
0\to\Gamma(U_0,\mathcal{O}(n))\oplus\Gamma(U_1,\mathcal{O}(n))\xrightarrow{\ (c_0,c_1)\mapsto c_1-c_0\ }\Gamma(U_0\cap U_1,\mathcal{O}(n))\to0
$$
である。像は $a\ge0$ または $b\ge0$ の単項式が張るので、余核は $a\le-1$ かつ $b\le-1$ の単項式 $x_0^ax_1^b$ を基底にもち、核は $a,b\ge0$ の単項式が張る。ex-leray-affine により
$$
\dim_kH^0(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{O}(n))=\max(0,n+1),\qquad\dim_kH^1(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{O}(n))=\max(0,-n-1),
$$
$p\ge2$ で $H^p=0$ である。たとえば $H^1(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{O}(-2))$ は $x_0^{-1}x_1^{-1}$ の類で張られる $1$ 次元の空間である。
$X$ を複素空間、$\mathcal{F}$ を連接解析層とし、$\mathfrak{U}$ を Stein な開集合からなる開被覆とする。2 つの Stein な開部分空間の交わりは Stein であり(GR79 第 V 章 §1.2、p. 127)、Stein 空間の上では連接解析層の正の次数のコホモロジーが消える(Stein空間 の定理「Cartan の定理 A・B」)。よって $\mathfrak{U}$ は $\mathcal{F}$ について非輪状で、$\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{F})\cong H^p(X,\mathcal{F})$ である(GR79 第 V 章 §1.2 定理 3、p. 128 は局所有限な Stein 被覆について述べる)。
具体例として、Riemann 球面 $X=\mathbb{P}^1(\mathbb{C})$ を $U_0=\{[1:z]\}\cong\mathbb{C}$ と $U_1=\{[w:1]\}\cong\mathbb{C}$ で覆う。$U_0\cap U_1\cong\mathbb{C}^*$($w=1/z$)である。$\mathbb{C}$ の開集合は擬凸なので(擬凸領域 の命題「凸領域と平面の領域」)、正則関数の層 $\mathcal{O}$ の正の次数のコホモロジーが消え(∂̄方程式のL²評価 の系「擬凸領域の上の層コホモロジーの消滅」)、この被覆は $\mathcal{O}$ について非輪状である。$f\in\mathcal{O}(\mathbb{C}^*)$ は $\mathbb{C}^*$ 上で広義一様収束する Laurent 展開 $f=\sum_{n\in\mathbb{Z}}a_nz^n$ をもち、$f_+:=\sum_{n\ge0}a_nz^n$ は $\mathbb{C}$ 上の正則関数、$f_-:=\sum_{n<0}a_nz^n=\sum_{m>0}a_{-m}w^m$ は $w$ の整関数である。よって $f=f_+ +f_-$ は $\mathcal{O}(U_0)\oplus\mathcal{O}(U_1)\to\mathcal{O}(U_0\cap U_1)$ の像に入り、$\check{H}^1_a(\mathfrak{U},\mathcal{O})=0$、したがって $H^1(\mathbb{P}^1(\mathbb{C}),\mathcal{O})=0$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 交わり $U_s$ の非輪状性 | $\mathbb{P}^1_k$ を $\mathbb{P}^1_k$ 自身 1 つで覆い、$\mathcal{F}=\mathcal{O}(-2)$ | $\check{H}^1(\mathfrak{U},\mathcal{F})=0$ だが $H^1(X,\mathcal{F})\cong k$ |
| ex-leray-affine の $X$ の分離性 | 原点を二重にした平面、2 つの $\mathbb{A}^2_k$ による被覆、$\mathcal{F}=\mathcal{O}_X$ | $\check{H}^2_a(\mathfrak{U},\mathcal{O}_X)=0$ だが $H^2(X,\mathcal{O}_X)\neq0$ |
1 行目:被覆が 1 つの開集合 $U_0=X$ だけからなるので、交代 Čech 複体は $\check{C}^0_a=\Gamma(X,\mathcal{F})$ だけで、$\check{H}^1_a=0$ である。全成分の複体でも、$s=(0,\dots,0)$ の 1 成分ずつからなる複体 $\mathcal{F}(X)\xrightarrow{0}\mathcal{F}(X)\xrightarrow{\mathrm{id}}\mathcal{F}(X)\xrightarrow{0}\cdots$ なので $\check{H}^1=0$ である。一方 ex-leray-p1 により $H^1(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{O}(-2))\cong k$ である。破れているのは、$U_0=X$ の上で $H^1\neq0$ となることだけである。
2 行目:$k$ を体、$U_1=U_2=\mathbb{A}^2_k=\operatorname{Spec}k[x,y]$ を開集合 $W=\mathbb{A}^2_k\setminus\{0\}$ に沿って恒等写像で貼り合わせたスキームを $X$ とする。$X$ は Noether で $\mathfrak{U}=\{U_1,U_2\}$ はアフィン開被覆だが、$X$ は分離的でなく、交わり $W$ の上で $H^1(W,\mathcal{O})\neq0$ となる。
$W$ は分離的で、アフィン開集合 $D(x),D(y)$ に覆われ、$D(x)\cap D(y)=D(xy)$ である。交代 Čech 複体 $k[x,y]_x\oplus k[x,y]_y\to k[x,y]_{xy}$ の余核は $x^ay^b$($a,b\le-1$)を基底にもつので、ex-leray-affine により $H^1(W,\mathcal{O})\neq0$ である。層コホモロジー の命題「Mayer–Vietoris完全列」と、$U_1,U_2$ がアフィンで正の次数のコホモロジーが消えることから、$H^1(U_1)\oplus H^1(U_2)=0\to H^1(W,\mathcal{O})\to H^2(X,\mathcal{O}_X)\to H^2(U_1)\oplus H^2(U_2)=0$ は完全であり、$H^2(X,\mathcal{O}_X)\cong H^1(W,\mathcal{O})\neq0$ である。一方、被覆は 2 つの開集合からなるので $\check{H}^2_a(\mathfrak{U},\mathcal{O}_X)=0$ である。
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