Abel–Ruffiniの定理

同義語:Abel-Ruffiniの定理アーベル–ルフィニの定理Abelの不可能性定理Abel–Ruffini theoremAbel's impossibility theorem

概要

Abel–Ruffiniの定理(Abel–Ruffini theorem)とは、標数 $0$ の体 $K$ と $n\ge5$ について、係数を独立な文字とした一般の $n$ 次多項式は、係数の生成する体の上で冪根で解けない、すなわち係数から四則演算と冪根をとる操作を有限回くり返して根を表すことはできない、という定理である。証明では、冪根で解ける多項式の Galois 群が可解群であることと、一般の $n$ 次多項式の Galois 群が対称群 $S_n$ であることを示し、$n\ge5$ で $S_n$ が可解でないことと合わせる。$x^5-4x+2$ のように Galois 群が $S_5$ の有理数係数の方程式も冪根で解けないが、$x^5-2$ のように冪根で解ける 5 次方程式もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Galois理論, 可解群, 対称式, Kummer理論

2 次方程式 $x^2+bx+c=0$ の解は、係数から四則演算と平方根で $\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4c}}2$ と書ける。3 次方程式には Cardano の公式(Cardanoの公式)、4 次方程式には Ferrari の方法があり、どちらも係数から四則演算と冪根($n$ 乗根)をとる操作を有限回くり返して解を表す。では 5 次以上の方程式にも同じような公式はあるか。Abel–Ruffini の定理 は、ないと答える。$n\ge5$ のとき、係数を文字のままにした一般の $n$ 次方程式は、係数から四則演算と冪根だけでは解けない。
現在の標準的な証明は Galois 理論による。方程式の解をすべて含む体の自己同型群(Galois 群)を考えると、冪根を 1 つ添加する操作は群の側で「アーベル群の商を 1 段はがす」操作にあたる。したがって冪根で解ける方程式の Galois 群は、アーベル群を有限段積み重ねた群、すなわち可解群でなければならない。一方、一般の $n$ 次方程式の Galois 群は $n$ 次対称群 $S_n$ であり、$n\ge5$ では $S_n$ は可解でない。
この記事では、冪根で解ける多項式の Galois 群が可解であること(thm-ar-radical-solvable)と、一般の $n$ 次多項式の Galois 群が $S_n$ であること(prop-ar-general-galois)を証明し、両者を合わせて主定理(thm-ar-main)を導く。さらに有理数係数の具体的な 5 次方程式で冪根による解がないものを挙げ、定理の仮定を外すと何が変わるかを見る。

定義

冪根拡大と冪根による可解性は、標数 $0$ の体について考える(prop-ar-general-galois だけは任意の体で成り立つ)。体 $K$ の代数拡大は、その代数閉包(代数閉包)の中でとる。

冪根拡大

体の有限次拡大 $L/K$ が 冪根拡大(radical extension)であるとは、中間体の列
$$ K=K_0\subseteq K_1\subseteq\cdots\subseteq K_m=L,\qquad K_i=K_{i-1}(\alpha_i),\quad \alpha_i^{n_i}\in K_{i-1} $$
($n_i\ge1$ は整数)があることをいう。つまり $L$ は、$K$ から始めて「ある元の $n$ 乗根を 1 つ添加する」操作を有限回くり返して得られる体である。

冪根で解ける多項式

$K$ 上の定数でない多項式 $f$ が 冪根で解ける(根号で解ける、solvable by radicals)とは、$f$ の $K$ 上の分解体 $E$ を含む $K$ の冪根拡大 $L$ があることをいう。$\operatorname{Gal}(E/K)$ を $f$ の Galois 群 といい、$\operatorname{Gal}(f)$ と書く(Galois群)。

標数 $0$ では分解体 $E$ は $K$ 上の Galois 拡大である(Galois拡大 の記事の定理「有限次Galois拡大の特徴づけ」。$f$ の相異なる既約因子の積は重根をもたない)。冪根で解ける多項式の根は、どれも $K$ の元から四則演算と冪根をとる操作を有限回くり返して書ける。

一般の $n$ 次多項式

$K$ を体、$n\ge1$ とし、$x_1,\dots,x_n$ を不定元とする。有理関数体 $L_n:=K(x_1,\dots,x_n)$ の中で、基本対称式 $s_1=\sum_ix_i$、$s_2=\sum_{i< j}x_ix_j$、…、$s_n=x_1\cdots x_n$ の生成する部分体を $F_n:=K(s_1,\dots,s_n)$ とする。
$$ f_n(T):=\prod_{i=1}^n(T-x_i)=T^n-s_1T^{n-1}+s_2T^{n-2}-\cdots+(-1)^ns_n\in F_n[T] $$
を $K$ 上の 一般の $n$ 次多項式(general polynomial of degree $n$)という。

係数が $F_n$ に入ることは根と係数の関係である(対称式 の記事の命題「根と係数の関係」)。$s_1,\dots,s_n$ は $K$ 上代数的に独立なので(同記事の定理「対称多項式の基本定理」)、$y_k\mapsto(-1)^ks_k$ により有理関数体 $K(y_1,\dots,y_n)$ は $F_n$ と同型であり、$f_n$ は係数がすべて独立な文字である多項式 $T^n+y_1T^{n-1}+\cdots+y_n$ と同じものである。「$n$ 次方程式の解の公式」とは、この $f_n$ の根を $F_n$ の元から四則演算と冪根で表す式のことである。

主定理

Abel–Ruffini の定理

$K$ を標数 $0$ の体、$n\ge5$ とする。$K$ 上の一般の $n$ 次多項式 $f_n$ は、$F_n=K(s_1,\dots,s_n)$ 上で冪根で解けない。

証明は 2 つの部分からなる。冪根で解ける多項式の Galois 群は可解群であること(thm-ar-radical-solvable)と、$\operatorname{Gal}(f_n)\cong S_n$ であること(prop-ar-general-galois)である。後で示すこの 2 つから、次のように従う。

$f_n$ が $F_n$ 上で冪根で解けたとする。$F_n$ の標数は $K$ と同じく $0$ なので、thm-ar-radical-solvable により $\operatorname{Gal}(f_n)$ は可解群である。prop-ar-general-galois により $\operatorname{Gal}(f_n)\cong S_n$ なので $S_n$ は可解群になるが、$n\ge5$ のとき $S_n$ は可解群でない(可解群 の記事の注意「反例:可解でない群」。$A_5$ の交換子部分群が $A_5$ 自身であることと、可解群の部分群が可解であることによる)。これは矛盾である。$\square$

冪根で解ける多項式の Galois 群

冪根を 1 つ添加する拡大がアーベル拡大になるには、底の体に $1$ の冪根がそろっている必要がある。そこで、まず $1$ の冪根を添加し、そのあと冪根拡大の「共役」をすべて添加して Galois 拡大にする。

1 の冪根の添加

$K$ を標数 $0$ の体、$N\ge1$、$\zeta$ を $1$ の原始 $N$ 乗根(代数閉包の中で乗法の位数がちょうど $N$ の元)とする。$K(\zeta)/K$ は Galois 拡大で、$\operatorname{Gal}(K(\zeta)/K)$ はアーベル群である。

標数 $0$ では $x^N-1$ とその導関数 $Nx^{N-1}$ は共通の根をもたないので、$x^N-1$ は $N$ 個の相異なる根をもつ。$\zeta^0,\dots,\zeta^{N-1}$ はその相異なる根なので根のすべてであり、$K(\zeta)$ は重根をもたない多項式 $x^N-1$ の分解体である。よって $K(\zeta)/K$ は Galois 拡大である(Galois拡大 の記事の定理「有限次Galois拡大の特徴づけ」)。$\sigma\in\operatorname{Gal}(K(\zeta)/K)$ は $\zeta$ を位数 $N$ の元 $\sigma(\zeta)=\zeta^{a_\sigma}$ に写す。$\sigma\tau(\zeta)=\sigma(\zeta^{a_\tau})=\zeta^{a_\sigma a_\tau}$ なので、$\sigma\mapsto a_\sigma\bmod N$ は $(\mathbb{Z}/N\mathbb{Z})^\times$ への群準同型であり、$\sigma$ は $\zeta$ の行き先で決まるので単射である。可換群の部分群と同型なので、$\operatorname{Gal}(K(\zeta)/K)$ はアーベル群である。$\square$

Galois 拡大への埋め込み

$K$ を標数 $0$ の体、$L/K$ を冪根拡大とする。$L$ を含む $K$ の有限次 Galois 拡大 $M$ と、中間体の列
$$ K=M_0\subseteq M_1\subseteq\cdots\subseteq M_r=M $$
で、各 $j$($1\le j\le r$)について $M_j/M_{j-1}$ が Galois 拡大でその Galois 群がアーベル群であるものがある。

$L$ の冪根拡大としての列を $K_i=K_{i-1}(\alpha_i)$、$\alpha_i^{n_i}\in K_{i-1}$($1\le i\le m$)とし、$N:=n_1\cdots n_m$ とおく。$L$ の代数閉包 $\Omega$ の中で考える。$\Omega$ の $1$ の $N$ 乗根の全体は、lem-ar-roots-of-unity の証明で見たとおり $N$ 個あり、体の乗法群の有限部分群なので巡回群である(1の冪根 の記事の注意「一般の体での 1 の冪根」)。その生成元 $\zeta$ は $1$ の原始 $N$ 乗根である。
$p_i$ を $\alpha_i$ の $K$ 上の最小多項式とし、$x^N-1,p_1,\dots,p_m$ のうち相異なる既約因子すべての積を $g$ とする。標数 $0$ の既約多項式は重根をもたず、相異なるモニック既約多項式は共通の根をもたないので、$g$ は重根をもたない。$\Omega$ の中の $g$ の分解体を $M$ とすると、$M/K$ は有限次 Galois 拡大であり、$\zeta,\alpha_1,\dots,\alpha_m\in M$、したがって $L\subseteq M$ である。$G:=\operatorname{Gal}(M/K)$ とおく。$p_i$ の $M$ における根は $\sigma(\alpha_i)$($\sigma\in G$)の形の元に限る(Galois群 の記事の定理「既約因子と軌道」)。$x^N-1$ の根は $\zeta$ の冪なので、
$$ M=K\bigl(\zeta,\ \sigma(\alpha_i)\ (\sigma\in G,\ 1\le i\le m)\bigr) $$
である。
$G=\{\sigma_1,\dots,\sigma_t\}$ と並べ、元の列
$$ \beta_1,\dots,\beta_{tm}:=\sigma_1(\alpha_1),\dots,\sigma_t(\alpha_1),\ \sigma_1(\alpha_2),\dots,\sigma_t(\alpha_2),\ \dots,\ \sigma_1(\alpha_m),\dots,\sigma_t(\alpha_m) $$
を作る。$M_0:=K$、$M_1:=K(\zeta)$、$M_{j+1}:=M_j(\beta_j)$($1\le j\le tm$)とおくと、$r:=tm+1$ として $M_r=M$ である。
$M_1/M_0$ は lem-ar-roots-of-unity により Galois 拡大でアーベル群をもつ。$j\ge1$ について $\beta_j=\sigma(\alpha_i)$ とすると、$\alpha_i^{n_i}\in K_{i-1}=K(\alpha_1,\dots,\alpha_{i-1})$ に $\sigma$ を当てて
$$ \beta_j^{\,n_i}=\sigma(\alpha_i^{n_i})\in K\bigl(\sigma(\alpha_1),\dots,\sigma(\alpha_{i-1})\bigr)\subseteq M_j $$
を得る($\sigma(\alpha_1),\dots,\sigma(\alpha_{i-1})$ は列の中で $\beta_j$ より前にある)。$b:=\beta_j^{\,n_i}$ とおく。$b=0$ なら $\beta_j=0$ で $M_{j+1}=M_j$ である。$b\neq0$ のとき、$M_j$ は $\zeta^{N/n_i}$、すなわち $1$ の原始 $n_i$ 乗根を含み、標数は $n_i$ を割らないので、Kummer理論 の記事の補題「1 つの冪根の添加」の 1・2 により $M_{j+1}=M_j(\beta_j)$ は $M_j$ の Galois 拡大で、Galois 群は $1$ の $n_i$ 乗根の群(巡回群)の部分群に単射に写る。とくにアーベル群である。$\square$

冪根で解ける多項式の Galois 群は可解

$K$ を標数 $0$ の体とし、$f\in K[x]$ が冪根で解けるとする。このとき $\operatorname{Gal}(f)$ は可解群である。

$f$ の分解体 $E$ を含む冪根拡大 $L$ をとり、lem-ar-galois-tower の $M$ と列 $M_0\subseteq\cdots\subseteq M_r$ をとる。$G:=\operatorname{Gal}(M/K)$、$G_j:=\operatorname{Gal}(M/M_j)$ とおく。$M/K$ は Galois 拡大なので、各 $M/M_{j-1}$ も Galois 拡大である(Galois拡大 の記事の命題「中間体からのGalois性」)。$M_j$ は $M/M_{j-1}$ の中間体で、$M_j/M_{j-1}$ は Galois 拡大なので、Galois理論 の記事の定理「Galois理論の基本定理」の 4 を $M/M_{j-1}$ に当てると、$G_j$ は $G_{j-1}$ の正規部分群であり、$G_{j-1}/G_j\cong\operatorname{Gal}(M_j/M_{j-1})$ はアーベル群である。よって
$$ \{e\}=G_r\trianglelefteq G_{r-1}\trianglelefteq\cdots\trianglelefteq G_0=G $$
は商因子がアーベル群の正規列であり、$G$ は可解群である。
$E/K$ は Galois 拡大で $K\subseteq E\subseteq M$ なので、同じ定理の 4 により $\operatorname{Gal}(M/E)$ は $G$ の正規部分群で、$\operatorname{Gal}(E/K)\cong G/\operatorname{Gal}(M/E)$ である。可解群の剰余群は可解群である(可解群 の記事の命題「部分群と剰余群への遺伝」)ので、$\operatorname{Gal}(f)=\operatorname{Gal}(E/K)$ は可解群である。$\square$

一般の多項式の Galois 群

一般の $n$ 次多項式の Galois 群

$K$ を体、$n\ge1$ とし、def-ar-general-polynomial の記号を用いる。$L_n/F_n$ は $f_n$ の分解体であり、$f_n$ は重根をもたない。$\sigma\in S_n$ に、$x_i\mapsto x_{\sigma(i)}$ で定まる $L_n$ の自己同型を対応させる写像は、群の同型 $S_n\to\operatorname{Gal}(L_n/F_n)$ である。とくに $\operatorname{Gal}(f_n)\cong S_n$ である。

$\sigma\in S_n$ について、$x_i\mapsto x_{\sigma(i)}$ で定まる $K$ 上の環準同型 $K[x_1,\dots,x_n]\to K[x_1,\dots,x_n]$ は $\sigma^{-1}$ から作った準同型を逆にもつ同型であり、分数体 $L_n$ の自己同型 $\tilde\sigma$ に一意に延びる。$\tilde\sigma\tilde\tau(x_i)=\tilde\sigma(x_{\tau(i)})=x_{\sigma\tau(i)}$ なので $\sigma\mapsto\tilde\sigma$ は群準同型であり、$x_1,\dots,x_n$ の行き先が異なるので単射である。$\tilde\sigma$ は基本対称式 $s_k$ を動かさないので、$F_n$ の元を動かさない。
$L_n=K(x_1,\dots,x_n)$ は $F_n$ に $f_n$ の根 $x_1,\dots,x_n$ を添加した体なので、$f_n$ の $F_n$ 上の分解体であり、根 $x_1,\dots,x_n$ は相異なる。よって $L_n/F_n$ は有限次 Galois 拡大である(Galois拡大 の記事の定理「有限次Galois拡大の特徴づけ」)。$\operatorname{Gal}(L_n/F_n)$ の元は $f_n$ の根を並べかえ、根は $L_n$ を $F_n$ 上生成するので、元はこの並べかえで決まる。したがって $\lvert\operatorname{Gal}(L_n/F_n)\rvert\le n!$ である。一方、前段の $\sigma\mapsto\tilde\sigma$ は $S_n$ から $\operatorname{Gal}(L_n/F_n)$ への単射な準同型なので、$\lvert\operatorname{Gal}(L_n/F_n)\rvert\ge n!$ である。よって両者の位数は等しく、$\sigma\mapsto\tilde\sigma$ は同型である。$\square$

$\operatorname{Gal}(L_n/F_n)=S_n$ なので、Galois理論 の記事の定理「Galois理論の基本定理」により $F_n$ は $S_n$ の固定体、すなわち $L_n$ の元のうち変数の並べかえで変わらない有理関数の全体に等しい。

例

冪根で解けない有理数係数の 5 次方程式

$f=x^5-4x+2\in\mathbb{Q}[x]$ の Galois 群は $S_5$ である(Galois群 の記事の例「$x^5-4x+2$ と 5 次の対称群」。$f$ は既約で、実数の根を 3 つ、実数でない根を 2 つもつ)。$S_5$ は可解群でないので、thm-ar-radical-solvable により $f$ は $\mathbb{Q}$ 上で冪根で解けない。$f$ の 3 つの実数の根は区間 $(-2,-1)$、$(0,1)$、$(1,2)$ にあり、数値としてはいくらでも精密に計算できるが、有理数から四則演算と冪根をとる操作を有限回くり返して書くことはできない。

この例は、thm-ar-main より具体的な主張である。thm-ar-main は係数を文字のままにした多項式についての主張なので、それだけからは、有理数係数の個々の 5 次方程式に冪根による解がないことは従わない。

冪根で解ける 5 次方程式

$x^5-2\in\mathbb{Q}[x]$ は冪根で解ける。実際 $\alpha=\sqrt[5]{2}$、$\zeta=e^{2\pi i/5}$ とすると、根は $\zeta^k\alpha$($0\le k\le4$)であり、
$$ \mathbb{Q}\subseteq\mathbb{Q}(\zeta)\subseteq\mathbb{Q}(\zeta,\alpha) $$
は $\zeta^5=1\in\mathbb{Q}$、$\alpha^5=2\in\mathbb{Q}(\zeta)$ による冪根拡大で、分解体 $\mathbb{Q}(\zeta,\alpha)$ そのものである。thm-ar-radical-solvable により、その Galois 群は可解群である。次数 $5$ の多項式でも、係数の特別な形によっては冪根で解ける。

4 次以下の場合と逆向きの定理

thm-ar-radical-solvable の逆も成り立つ。標数 $0$ の体の上の多項式は、Galois 群が可解群なら冪根で解ける(Galois の定理。DF04 §14.7, Theorem 39, p. 628。この記事では証明しない)。$n\le4$ では $S_n$ は可解群なので($S_4$ については 可解群 の記事の例「$4$ 次対称群」)、一般の $n$ 次多項式は冪根で解ける。これが 2 次方程式の解の公式・Cardano の公式・Ferrari の方法の存在に対応する。$n\ge5$ で解けないこと(thm-ar-main)は DF04 §14.7, Corollary 40(p. 629)にあたる。

仮定を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
$n\ge5$$n=4$、一般の 4 次多項式 $f_4$$\operatorname{Gal}(f_4)\cong S_4$ は可解群であり、$f_4$ は冪根で解ける(rem-ar-converse。逆向きの定理はこの記事では証明しない)
係数がすべて独立な文字であること$x^5-2\in\mathbb{Q}[x]$(ex-ar-quintic-solvable)冪根で解ける
底の体を $F_n$ にとること$f_n$ を $L_n=K(x_1,\dots,x_n)$ 上の多項式とみる$f_n$ は $L_n$ 上で 1 次式の積に分解するので、$L=L_n$ 自身が分解体を含む冪根拡大になり、冪根で解ける

3 行目は、「解の公式」で使ってよい材料が係数の体 $F_n$ の元だけであることが本質的であることを示す。根そのもの($x_1,\dots,x_n$)を材料に使ってよいなら、方程式を解く問題は自明になる。

補足

名前の由来

3 次・4 次方程式の解の公式は Cardano と Ferrari によって 16 世紀に得られ、その後 5 次以上について同じ形の公式を求める試みが続いたが、1820 年ごろに Ruffini と Abel がそのような公式がないことを示した(Mil22 Chapter 5 末の Notes、p. 81)。定理の名はこの 2 人による。DF04 p. 14 は Abel による 5 次方程式の解の公式の不可能性の証明を 1824 年としている。冪根による可解性と Galois 群の可解性の同値(rem-ar-converse)は Galois による(DF04 §14.7, p. 628)。

冪根の意味

冪根拡大の定義では、$\alpha_i$ は $x^{n_i}-a$($a\in K_{i-1}$)の根のうちどれか 1 つでよい。lem-ar-galois-tower の証明で $1$ の冪根を最初に添加したのは、残りの根 $\zeta^k\alpha_i$ も同じ体に入るようにし、各段を Galois 拡大にするためである。$1$ の冪根 $\zeta$ 自身も $x^N-1$ の根なので冪根で表せる元であり、これを添加しても冪根拡大の範囲を出ない。

関連項目

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004, p. 14(Abel による 5 次方程式の解の公式の不可能性への言及);§14.6, Proposition 30・Theorem 32, pp. 608–609(一般の多項式の Galois 群);§14.7, Lemma 38・Theorem 39, p. 628(冪根による可解性と Galois 群の可解性の同値)・Corollary 40, p. 629(一般の n 次方程式は n ≥ 5 で冪根で解けない)

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