次元論の一致定理(coincidence theorem of dimension theory)とは、可分な距離化可能空間 $X$ では小さな帰納次元・大きな帰納次元・被覆次元が一致し、$\operatorname{ind}X=\operatorname{Ind}X=\dim X$ となるという定理である。和定理と、$\operatorname{ind}X\le n$ の空間が $n+1$ 個の 0 次元部分空間の和になるという分解定理から $\operatorname{Ind}X\le\operatorname{ind}X$ と $\dim X\le\operatorname{ind}X$ が従い、$\operatorname{ind}X\le\dim X$ は Nöbeling 空間への埋め込みから従う。空でない $n$ 次元位相多様体の次元はどの定義でも $n$ である。
前提知識: 帰納次元, 被覆次元, 距離空間, 第2可算公理, Lindelöf空間
位相空間の次元の定め方には、点や閉集合を「次元の 1 つ低い境界」で囲めるかどうかで帰納的に定める小さな帰納次元 $\operatorname{ind}$ と大きな帰納次元 $\operatorname{Ind}$(帰納次元)、細かい開被覆の重なりの個数で測る被覆次元 $\dim$(被覆次元)がある。定義の考え方はまったく違い、一般の空間では値も食い違う。ところが、可分な距離化可能空間という広いクラスでは、3 つの値は必ず一致する。これが次元論の一致定理である。
一致定理のおかげで、Euclid 空間の部分集合や多様体のような普通の空間については「次元」を 1 つの数として語ってよく、場面に応じて扱いやすい定義を選べる。帰納次元は部分空間への単調性や和定理を、被覆次元は写像や埋め込みの構成を扱いやすい。この記事では、和定理と分解定理を証明し、それを使って $\operatorname{Ind}\le\operatorname{ind}$ と $\dim\le\operatorname{ind}$ を示し、Menger–Nöbelingの埋め込み定理 を使って $\operatorname{ind}\le\dim$ を示して一致定理を完全に証明する。
3 つの次元の定義は 帰納次元 と 被覆次元 の記事にしたがう。要点だけ繰り返す。値はどれも $-1,0,1,2,\dots$ または $\infty$ で、空集合でだけ $-1$ になる。
可分な距離化可能空間 $X$ について
$$
\operatorname{ind}X=\operatorname{Ind}X=\dim X
$$
である。
「可分」と「距離化可能」の両方が必要である。3 つの次元は、一般の正規空間では一致するとは限らず、可分距離空間という範囲で初めて一致する。したがって、可分距離空間については次元を 3 つのうちのどの定義で計算してもよい。証明は最後の節で、先に用意する 3 つの不等式($\operatorname{Ind}X\le\operatorname{ind}X$、$\dim X\le\operatorname{ind}X$、$\operatorname{ind}X\le\dim X$)と、正規空間で成り立つ $\operatorname{ind}X\le\operatorname{Ind}X$ を組み合わせて与える。
Eng78 Theorem 1.7.7(p. 65)である。$\operatorname{ind}=\operatorname{Ind}$ は Tumarkin(1926)と Hurewicz(1927)が、$\operatorname{ind}=\dim$ は Hurewicz(1927)が可分距離空間で示した(Eng78 p. 48 と p. 69 の歴史的注意)。証明は最後の節にまとめ、それまでに次の 4 つの不等式を用意する。
$$
\operatorname{ind}X\le\operatorname{Ind}X,\qquad\operatorname{Ind}X\le\operatorname{ind}X,\qquad\dim X\le\operatorname{ind}X,\qquad\operatorname{ind}X\le\dim X .
$$
1 つ目は正規空間で成り立つ(帰納次元 の記事の定理「小さな帰納次元は大きな帰納次元以下」)。残りの 3 つは一般の正規空間では成り立たず(「反例」の節)、この記事で可分距離空間について証明する。
以下、この記事では「可分距離空間」は可分な距離化可能空間を指す。可分距離空間の部分空間は可分距離空間である(距離空間では可分と第 2 可算が同値で、第 2 可算は部分空間に遺伝する。第2可算公理 の記事の定理「距離空間における同値性」と命題「部分空間への遺伝」)。可分距離空間は第 2 可算なので Lindelöf である(同じ記事の命題「三つの帰結」)。
次元を調べるときは、開集合の境界よりも、閉集合どうしを分ける「仕切り」の形のほうが扱いやすい。
位相空間 $X$ の互いに素な閉集合 $A,B$ について、$X$ の閉集合 $L$ が $A$ と $B$ の間の分割(partition)であるとは、互いに素な開集合 $U,W$ で
$$
A\subset U,\qquad B\subset W,\qquad X\setminus L=U\cup W
$$
となるものがあることをいう。
空集合が $A$ と $B$ の間の分割であることは、開かつ閉な集合 $U$ で $A\subset U\subset X\setminus B$ となるものがあることと同じである。
$A,B$ を位相空間 $X$ の互いに素な閉集合とする。
1:$X\setminus\operatorname{Fr}U=U\cup(X\setminus\overline{U})$ で、$U$ と $X\setminus\overline{U}$ は互いに素な開集合、$A\subset U$、$B\subset X\setminus\overline{U}$ である。
2:$X\setminus W$ は $U$ を含む閉集合なので $\overline{U}\subset X\setminus W$ であり、$\operatorname{Fr}U=\overline{U}\setminus U\subset X\setminus(U\cup W)=L$ である。$B\subset W$ なので $U\subset X\setminus B$ である。$\square$
2 つの部分集合 $A,B$ が分離されているとは、$\overline{A}\cap B=\emptyset=A\cap\overline{B}$ であることをいう。互いに素な閉集合どうし、互いに素な開集合どうしは分離されている。
距離空間 $(X,d)$ の分離された部分集合 $A,B$ に対し、互いに素な開集合 $U,W$ で $A\subset U$、$B\subset W$ となるものがある。
要点:$U:=\{x\mid d(x,A)< d(x,B)\}$、$W:=\{x\mid d(x,A)>d(x,B)\}$ とおけばよい。
$A=\emptyset$ なら $U=\emptyset$、$W=X$ とし、$B=\emptyset$ なら $U=X$、$W=\emptyset$ とする。どちらも空でないとき、$d(x,A):=\inf_{a\in A}d(x,a)$ は連続で、$d(x,A)=0$ と $x\in\overline{A}$ は同値である。上の $U,W$ は互いに素な開集合である。$x\in A$ なら $d(x,A)=0$ で、$x\notin\overline{B}$ だから $d(x,B)>0$、よって $x\in U$ である。同様に $B\subset W$ である。$\square$
次の補題は、部分空間の中の分割を、全体の空間の分割に広げる。
$M$ を距離空間 $X$ の部分空間、$A,B$ を $X$ の互いに素な閉集合、$V_1,V_2$ を $X$ の開集合で $A\subset V_1$、$B\subset V_2$、$\overline{V_1}\cap\overline{V_2}=\emptyset$ を満たすものとする。$L'$ が部分空間 $M$ における $M\cap\overline{V_1}$ と $M\cap\overline{V_2}$ の間の分割ならば、$X$ における $A$ と $B$ の間の分割 $L$ で $M\cap L\subset L'$ となるものがある。
要点:$M$ の中で $L'$ の両側にある開集合 $U',W'$ を、$A$、$B$ にそれぞれ付け足しても分離されたままであることを確かめ、lem-coin-separated で $X$ の開集合に広げる。
$M$ の互いに素な開集合 $U',W'$ で $M\cap\overline{V_1}\subset U'$、$M\cap\overline{V_2}\subset W'$、$M\setminus L'=U'\cup W'$ となるものをとる。
段 1($A\cap\overline{W'}=\emptyset=B\cap\overline{U'}$).$V_1\cap W'=V_1\cap M\cap W'\subset U'\cap W'=\emptyset$ で、$V_1$ は開集合なので $V_1\cap\overline{W'}=\emptyset$、よって $A\cap\overline{W'}=\emptyset$ である。同様に $B\cap\overline{U'}=\emptyset$ である。
段 2($U'$ と $W'$ は分離されている).$U'$ は部分空間 $U'\cup W'$ の中で閉集合である(補集合 $W'$ が $M$ で開なので $U'\cup W'$ でも開)。よって $\overline{U'}\cap(U'\cup W')=U'$ で、$\overline{U'}\cap W'=\emptyset$ である。同様に $U'\cap\overline{W'}=\emptyset$ である。
段 3(広げる).$\overline{A\cup U'}\cap(B\cup W')=(A\cup\overline{U'})\cap(B\cup W')$ は、$A\cap B$、$A\cap W'$、$\overline{U'}\cap B$、$\overline{U'}\cap W'$ の和で、段 1・段 2 と $A\cap B=\emptyset$ によりどれも空である。対称に $(A\cup U')\cap\overline{B\cup W'}=\emptyset$ なので、$A\cup U'$ と $B\cup W'$ は分離されている。lem-coin-separated により互いに素な開集合 $U\supset A\cup U'$、$W\supset B\cup W'$ がある。$L:=X\setminus(U\cup W)$ は $A$ と $B$ の間の分割で、$M\cap L=M\setminus(U\cup W)\subset M\setminus(U'\cup W')=L'$ である。$\square$
$X$ を距離空間、$Z$ を $X$ の可分な部分空間で $\operatorname{ind}Z\le0$ となるものとする。$X$ の互いに素な閉集合 $A,B$ に対し、$A$ と $B$ の間の分割 $L$ で $L\cap Z=\emptyset$ となるものがある。
距離空間は正規なので、開集合 $V_1\supset A$、$V_2\supset B$ で $\overline{V_1}\cap\overline{V_2}=\emptyset$ となるものがある($A,B$ を互いに素な開集合 $O_1,O_2$ で分け、閉集合 $A$ と $X\setminus O_1$ を分けて $\overline{V_1}\subset O_1$ となる開集合 $V_1\supset A$ を、同様に $\overline{V_2}\subset O_2$ となる $V_2\supset B$ をとる)。$Z$ は可分距離空間なので Lindelöf であり、帰納次元 の記事の命題「Lindelöf 空間での 0 次元」により $\operatorname{Ind}Z\le0$ である($Z=\emptyset$ でも成り立つ)。同じ記事の命題「0 次元の言い換え」の 2 を $Z$ の互いに素な閉集合 $Z\cap\overline{V_1}$、$Z\cap\overline{V_2}$ に使うと、$Z$ で開かつ閉な $C$ で $Z\cap\overline{V_1}\subset C\subset Z\setminus\overline{V_2}$ となるものがある。すなわち空集合は $Z$ における $Z\cap\overline{V_1}$ と $Z\cap\overline{V_2}$ の間の分割である。lem-coin-extend を $M=Z$、$L'=\emptyset$ で使えば、$A$ と $B$ の間の分割 $L$ で $Z\cap L=\emptyset$ となるものが得られる。$\square$
Eng78 Theorem 1.2.11(pp. 14–15)で、補題は同書の Lemma 1.2.8・1.2.9(pp. 13–14)である。$Z$ 自身は閉集合でなくてよい点が要で、たとえば $Z=\mathbb{Q}$ のように稠密な部分空間でも、それと交わらない仕切りがとれる。$X=\mathbb{R}$、$A=\{0\}$、$B=\{1\}$、$Z=\mathbb{Q}$ なら、無理数 $c\in(0,1)$ をとって $L=\{c\}$ とすればよい。
可分距離空間 $X$ が $\operatorname{ind}X\le n$($n\ge0$)を満たすならば、$X$ は可算な開基 $\mathcal{B}$ で、すべての $U\in\mathcal{B}$ について $\operatorname{ind}\operatorname{Fr}U\le n-1$ となるものをもつ。
要点:$\operatorname{ind}\operatorname{Fr}U\le n-1$ となる開集合 $U$ の全体は定義により開基なので、可算な開基 $\{V_i\}$ を使ってそこから可算個を選べばよい。
$\operatorname{ind}\operatorname{Fr}U\le n-1$ となる開集合 $U$ の全体を $\mathcal{B}'$ とすると、$\operatorname{ind}X\le n$ の定義により $\mathcal{B}'$ は開基である。$X$ の可算な開基 $\{V_i\}_{i\ge1}$ をとる。$V_i\subset U\subset V_j$ となる $U\in\mathcal{B}'$ がある組 $(i,j)$ ごとに、そのような $U$ を 1 つ選んで $U_{ij}$ とし、$\mathcal{B}:=\{U_{ij}\}$ とおく。$\mathcal{B}$ は可算である。開集合 $G$ と $x\in G$ をとると、$x\in V_j\subset G$ となる $j$、$x\in U\subset V_j$ となる $U\in\mathcal{B}'$、$x\in V_i\subset U$ となる $i$ が順にとれる。組 $(i,j)$ には $U_{ij}$ が選ばれていて、$x\in V_i\subset U_{ij}\subset V_j\subset G$ である。よって $\mathcal{B}$ は開基である。$\square$
可分距離空間 $X$ が部分空間 $Y,Z$ の和 $X=Y\cup Z$ で、$\operatorname{ind}Y\le n-1$、$\operatorname{ind}Z\le0$($n\ge0$)ならば、$\operatorname{ind}X\le n$ である。
点 $x$ と $x$ の近傍 $V$ をとり、$x\in V_0\subset V$ となる開集合 $V_0$ をとる。$\{x\}$ と $X\setminus V_0$ は互いに素な閉集合なので、thm-coin-zero-separation により、その間の分割 $L$ で $L\cap Z=\emptyset$ となるものがある。$X\setminus L=U\cup W$ を def-coin-partition のとおりとすると、lem-coin-partition-boundary の 2 により $x\in U\subset V_0\subset V$、$\operatorname{Fr}U\subset L\subset X\setminus Z\subset Y$ である。帰納次元 の記事の定理「小さな帰納次元の部分空間定理」により $\operatorname{ind}\operatorname{Fr}U\le\operatorname{ind}Y\le n-1$ である。よって $\operatorname{ind}X\le n$ である。$\square$
可分距離空間 $X$ が閉集合の列 $F_1,F_2,\dots$ の和 $X=\bigcup_{i\ge1}F_i$ で、すべての $i$ について $\operatorname{ind}F_i\le n$ ならば、$\operatorname{ind}X\le n$ である。
$n$ についての帰納法で示す。$n=-1$ ならすべての $F_i$ が空で $X=\emptyset$ である。$n=0$ は 帰納次元 の記事の系「可分距離空間の 0 次元の和」である。
$n\ge1$ とし、$n-1$ では(すべての可分距離空間について)定理が成り立つとする。各 $F_i$ は可分距離空間なので、lem-coin-base により $F_i$ の可算な開基 $\mathcal{B}_i$ で、$U\in\mathcal{B}_i$ の $F_i$ における境界 $\operatorname{Fr}_{F_i}U$ が $\operatorname{ind}\operatorname{Fr}_{F_i}U\le n-1$ を満たすものがある。
段 1(境界を集める).
$$
Y:=\bigcup_{i\ge1}\ \bigcup_{U\in\mathcal{B}_i}\operatorname{Fr}_{F_i}U
$$
とおく。$\operatorname{Fr}_{F_i}U$ は $F_i$ の閉集合、$F_i$ は $X$ の閉集合なので、$\operatorname{Fr}_{F_i}U$ は $X$ の閉集合であり、部分空間 $Y$ の閉集合でもある。$Y$ はそのような集合の可算個の和なので、帰納法の仮定により $\operatorname{ind}Y\le n-1$ である。
段 2(残りは 0 次元). $Z:=X\setminus Y$、$Z_i:=F_i\setminus Y=F_i\cap Z$ とおく。$U\in\mathcal{B}_i$ について、$U\cap Z_i$ は $Z_i$ の開集合で、$Z_i$ における閉包は
$$
\operatorname{cl}_{Z_i}(U\cap Z_i)\subset\operatorname{cl}_{F_i}U\cap Z_i=(U\cup\operatorname{Fr}_{F_i}U)\cap Z_i=U\cap Z_i
$$
を満たす($\operatorname{Fr}_{F_i}U\subset Y$ は $Z_i$ と交わらない)。よって $\{U\cap Z_i\mid U\in\mathcal{B}_i\}$ は開かつ閉な集合からなる $Z_i$ の開基であり、帰納次元 の記事の命題「0 次元の言い換え」の 1 により $\operatorname{ind}Z_i\le0$ である。$Z_i=F_i\cap Z$ は $Z$ の閉集合で、$Z=\bigcup_iZ_i$ なので、$n=0$ の場合により $\operatorname{ind}Z\le0$ である。
段 3. $X=Y\cup Z$ に lem-coin-add を使えば $\operatorname{ind}X\le n$ である。$\square$
Eng78 Theorem 1.5.3(p. 42)で、2 つの補題は同書の Theorem 1.1.6(p. 6)と Lemma 1.5.2(p. 42)である。この簡潔な証明は Hurewicz によるものと同書の歴史的注意(p. 48)にある。閉集合という仮定は外せない:$\mathbb{R}=\mathbb{Q}\cup(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q})$ は $\operatorname{ind}$ が $0$ の 2 つの部分空間の和だが、$\operatorname{ind}\mathbb{R}=1$ である(帰納次元 の記事の例「0 次元の例と 1 次元の例」)。
可分距離空間 $X$ と $n\ge0$ について、次は同値である。
1 から 2:lem-coin-base の可算な開基 $\mathcal{B}$ をとり、$Y:=\bigcup_{U\in\mathcal{B}}\operatorname{Fr}U$、$Z:=X\setminus Y$ とおく。$\operatorname{Fr}U$ は $X$ の閉集合で $\operatorname{ind}\operatorname{Fr}U\le n-1$ なので、thm-coin-sum により $\operatorname{ind}Y\le n-1$ である($n=0$ ならすべての境界が空で $Y=\emptyset$)。$U\in\mathcal{B}$ について $\operatorname{cl}_Z(U\cap Z)\subset\overline{U}\cap Z=(U\cup\operatorname{Fr}U)\cap Z=U\cap Z$ なので、$\{U\cap Z\}$ は $Z$ の開かつ閉な集合からなる開基であり、$\operatorname{ind}Z\le0$ である。
2 から 1:lem-coin-add である。
1 と 3 の同値は $n$ の帰納法で示す。$n=0$ では 3 は $X=Z_1$ で $\operatorname{ind}Z_1\le0$ ということなので 1 と同じである。$n\ge1$ とし、$n-1$ で同値とする。1 を仮定すると 2 の $Y,Z$ があり、$\operatorname{ind}Y\le n-1$ なので帰納法の仮定により $Y=Z_1\cup\dots\cup Z_n$($\operatorname{ind}Z_j\le0$)と書け、$Z_{n+1}:=Z$ とおけば 3 である。逆に 3 を仮定すると、$Y:=Z_1\cup\dots\cup Z_n$ は帰納法の仮定により $\operatorname{ind}Y\le n-1$ を満たし、$Z:=Z_{n+1}$ とおけば 2 なので 1 である。$\square$
Eng78 Theorem 1.5.7・1.5.8(pp. 43–44)である。3 の分け方は具体的に書けることが多い。
$0\le k\le m$ について、$\mathbb{R}^m$ の点のうち有理数の座標がちょうど $k$ 個のものの全体を $Q^m_k$ とする。たとえば $\mathbb{R}^2=Q^2_0\cup Q^2_1\cup Q^2_2$ で、$Q^2_0$ は両座標が無理数の点、$Q^2_2=\mathbb{Q}^2$ である。
$\operatorname{ind}Q^m_k\le0$. $Q^m_k$ は、有理数の座標の位置と値を固定した可算個の閉集合に分かれ、各々は座標がすべて無理数の点の空間と同相で 0 次元である。
座標の番号の集合 $I$($\lvert I\rvert=k$)と $r\in\mathbb{Q}^I$ に対し、$P_{I,r}:=\{x\mid i\in I\text{ で }x_i=r_i,\ i\notin I\text{ で }x_i\notin\mathbb{Q}\}$ とおく。$Q^m_k$ はこの可算個の $P_{I,r}$ の和である。$P_{I,r}$ は $Q^m_k$ の閉集合である:$P_{I,r}$ の点列の $Q^m_k$ での極限 $y$ は $I$ の座標が $r$ で有理数なので、有理数の座標がちょうど $k$ 個という条件から残りの座標は無理数であり、$y\in P_{I,r}$ となる。$P_{I,r}$ は、座標を $I$ の外に制限する写像で、座標がすべて無理数の点からなる $\mathbb{R}^{m-k}$ の部分空間 $P^{m-k}$ と同相である($m=k$ なら 1 点)。$P^{m-k}$ では、有理数を端点とする開区間の直積と $P^{m-k}$ の共通部分が開基をなし、各々は開かつ閉である(直方体の境界の点はどれかの座標が有理数なので、閉じた直方体と共通部分が同じ)。よって $\operatorname{ind}P_{I,r}\le0$ で、帰納次元 の記事の系「可分距離空間の 0 次元の和」により $\operatorname{ind}Q^m_k\le0$ である。
可分距離空間 $X$ について $\operatorname{Ind}X\le\operatorname{ind}X$ である。
$\operatorname{ind}X=\infty$ なら示すことはない。主張 $P(n)$:「$\operatorname{ind}X\le n$ となる任意の可分距離空間 $X$ について $\operatorname{Ind}X\le n$」を $n$ の帰納法で示す。$P(-1)$ は $X=\emptyset$ なので明らかである。
$n\ge0$ とし、$P(n-1)$ を仮定する。$\operatorname{ind}X\le n$ とし、閉集合 $A$ と開集合 $V\supset A$ をとる。thm-coin-decomposition の 2 により $X=Y\cup Z$、$\operatorname{ind}Y\le n-1$、$\operatorname{ind}Z\le0$ と書ける。thm-coin-zero-separation を閉集合 $A$ と $X\setminus V$ に使うと、その間の分割 $L$ で $L\cap Z=\emptyset$ となるものがある。$X\setminus L=U\cup W$ とすると、lem-coin-partition-boundary の 2 により $A\subset U\subset V$、$\operatorname{Fr}U\subset L$ である。
$L\subset Y$ なので、小さな帰納次元の部分空間定理(帰納次元)により $\operatorname{ind}L\le n-1$ であり、$L$ は可分距離空間なので $P(n-1)$ により $\operatorname{Ind}L\le n-1$ である。$\operatorname{Fr}U$ は $X$ の閉集合で $L$ に含まれるので $L$ の閉集合であり、帰納次元 の記事の定理「大きな帰納次元の閉部分空間定理」により $\operatorname{Ind}\operatorname{Fr}U\le\operatorname{Ind}L\le n-1$ である。よって $\operatorname{Ind}X\le n$ で、$P(n)$ が成り立つ。$\square$
Eng78 Theorem 1.6.4(p. 52)である。証明の核心は、0 次元の部分 $Z$ を避けて仕切りを入れると、仕切りは次元の低い部分 $Y$ に収まる、という点にある。
$M$ を距離空間 $(X,d)$ の部分空間、$E_1,\dots,E_k$ を $M$ の互いに素な閉集合とする。$X$ の互いに素な開集合 $W_1,\dots,W_k$ で $E_i\subset W_i$ となるものがある。
要点:$W_i$ を「$E_i$ への距離がほかのどの $E_j$ への距離よりも小さい点」の全体とする。
$E_i=\emptyset$ なら $W_i:=\emptyset$ とする。空でない $E_i$ について、$W_i$ を、空でないすべての $E_j$($j\ne i$)について $d(x,E_i)< d(x,E_j)$ となる点 $x\in X$ の全体とする。有限個の連続関数の狭義の不等式で定まるので開集合であり、$i\ne j$ なら $d(x,E_i)< d(x,E_j)$ と $d(x,E_j)< d(x,E_i)$ は両立しないので $W_i\cap W_j=\emptyset$ である。$x\in E_i$ とし $j\ne i$ とする。$E_j$ は $M$ の閉集合なので $\overline{E_j}\cap M=E_j$ であり、$x\in M\setminus E_j$ から $x\notin\overline{E_j}$、すなわち $d(x,E_j)>0=d(x,E_i)$ である。よって $E_i\subset W_i$ である。$\square$
可分距離空間 $X$ について $\dim X\le\operatorname{ind}X$ である。
$\operatorname{ind}X\le n$($n\ge0$)とし、$\{U_1,\dots,U_k\}$ を $X$ の有限開被覆とする($n=-1$ なら $X=\emptyset$ で明らか)。thm-coin-decomposition の 3 により $X=Z_1\cup\dots\cup Z_{n+1}$、$\operatorname{ind}Z_j\le0$ と書く。
段 1(各 $Z_j$ を互いに素に覆う). $Z_j$ は可分距離空間なので Lindelöf で、帰納次元 の記事の命題「Lindelöf 空間での 0 次元」と「0 次元の言い換え」の 2 により、$Z_j$ の被覆次元は $0$ 以下である。よって $Z_j$ の有限開被覆 $\{Z_j\cap U_i\}_i$ は位数 $1$ 以下、すなわち互いに交わらない元からなる有限開細分をもつ。その各元を、それを含む $Z_j\cap U_i$ のうち $i$ が最小のものに割り当て、$i$ に割り当てた元の和を $E_{j,i}$ とする。$E_{j,1},\dots,E_{j,k}$ は $Z_j$ の互いに素な開集合で $Z_j$ を覆い、$E_{j,i}\subset U_i$ である。各 $E_{j,i}$ の補集合はほかの $E_{j,i'}$ の和なので、$E_{j,i}$ は $Z_j$ の閉集合でもある。
段 2($X$ の開集合へ広げる). lem-coin-disjoint により、$X$ の互いに素な開集合 $W_{j,1},\dots,W_{j,k}$ で $E_{j,i}\subset W_{j,i}$ となるものがある。$V_{j,i}:=W_{j,i}\cap U_i$($1\le j\le n+1$、$1\le i\le k$)とおく。
段 3(位数を数える). $V_{j,i}$ は開集合で $U_i$ に含まれ、$x\in X$ はある $Z_j$ の点で、ある $E_{j,i}\subset V_{j,i}$ に入るので、$\{V_{j,i}\}$ は $\{U_i\}$ の有限開細分である。ある点が $n+2$ 個の $V_{j,i}$ に属したとすると、$j$ は $n+1$ 通りしかないので、同じ $j$ で異なる $i,i'$ の $V_{j,i}$、$V_{j,i'}$ に属する。これは $W_{j,i}\cap W_{j,i'}=\emptyset$ に反する。よって位数は $n+1$ 以下で、$\dim X\le n$ である。$\square$
Eng78 Lemma 1.7.3・1.7.4(pp. 62–63)である。$n+1$ 個の 0 次元の部分それぞれで重なりのない覆い方を作り、層を重ねると重なりは高々 $n+1$ 重になる。
逆向きの不等式は、次の埋め込み定理を使うと短く済む。
可分距離空間 $X$ について $\operatorname{ind}X\le\dim X$ である。
$\dim X\le n$($n\ge0$)としてよい($\dim X=-1$ なら $X=\emptyset$、$\dim X=\infty$ なら示すことはない)。Menger–Nöbelingの埋め込み定理 の記事の定理「Menger–Nöbelingの埋め込み定理」の 2 により、$X$ は Nöbeling 空間 $N^{2n+1}_n$ のある部分空間と同相である。ex-coin-nobeling により $\operatorname{ind}N^{2n+1}_n\le n$ なので、小さな帰納次元の部分空間定理(帰納次元)と位相不変性により $\operatorname{ind}X\le n$ である。$\square$
引いた埋め込み定理の証明は、被覆次元の定義、完備距離空間の Baireのカテゴリー定理、可分距離空間が全有界な距離をもつこと(位相空間の埋め込み定理)だけを使い、一致定理を使わない。したがって論理の循環はない。Eng78 は、全有界な距離による次元を保つコンパクト化(Theorem 1.7.2、p. 61)とコンパクト距離空間での $\operatorname{ind}\le\dim$(Lemma 1.7.6、p. 64)を組み合わせて同じ不等式を示している。コンパクト距離空間について埋め込みによる証明があることは、同書 p. 121 が注意している。
$X$ を可分距離空間とする。帰納次元 の記事の定理「小さな帰納次元は大きな帰納次元以下」と thm-coin-large-ind により $\operatorname{ind}X=\operatorname{Ind}X$ である。thm-coin-dim-ind と thm-coin-ind-dim により $\dim X=\operatorname{ind}X$ である。値が $\infty$ の場合も、これらの不等式は「一方が $n$ 以下なら他方も $n$ 以下」という形で示したので、そのまま成り立つ。$\square$
一致定理により、可分距離空間については 3 つの次元の性質を持ち寄れる。以下、可分距離空間 $X$ の 3 つの次元の共通の値を単に $X$ の次元という。
可分距離空間 $X$ について次が成り立つ。
1:$M$ も可分距離空間なので、thm-coin-main と小さな帰納次元の部分空間定理(帰納次元)から従う。2:1 により $\dim F_i\le\dim X$ で、逆向きは thm-coin-sum と thm-coin-main による。$\square$
一般の正規空間では、被覆次元も大きな帰納次元も閉でない部分空間について単調とは限らない(Dowker の例。被覆次元 の記事と 帰納次元 の記事の「反例」の節)。可分距離空間ではこの食い違いが起きない。
$n\ge0$ について、$\mathbb{R}^n$、$[0,1]^n$、$S^n$ の小さな帰納次元・大きな帰納次元・被覆次元はすべて $n$ である。
$[0,1]^n$ と $S^n$ の被覆次元が $n$ であることは 被覆次元 の記事の定理「立方体の被覆次元」と系「Euclid 空間・球面・Hilbert 立方体」による($n=0$ では 1 点と 2 点で、次元 $0$)。thm-coin-main によりこの 2 つの空間の 3 つの次元はすべて $n$ である。$\mathbb{R}^n$ については、ex-coin-nobeling により $\operatorname{ind}\mathbb{R}^n\le n$、部分空間定理により $\operatorname{ind}\mathbb{R}^n\ge\operatorname{ind}[0,1]^n=n$ であり、再び thm-coin-main を使えばよい。$\square$
これは次元論の基本定理と呼ばれることがある(Eng78 Theorem 1.8.2、p. 73)。帰納次元 の記事は上からの評価 $\operatorname{ind}\mathbb{R}^n\le n$ だけを示していた。下からの評価は、Brouwer の不動点定理を使う Lebesgue の被覆定理(被覆次元)から一致定理を通して得られる。
空でない $n$ 次元の位相多様体 $M$ について $\operatorname{ind}M=\operatorname{Ind}M=\dim M=n$ である。とくに、空でない位相空間が $m$ 次元の位相多様体でも $n$ 次元の位相多様体でもあれば $m=n$ である。
$M$ は距離化可能で(Urysohnの距離化定理 の記事の例「位相多様体」)、第 2 可算なので可分であり、可分距離空間である。各点は $\mathbb{R}^n$ の開集合と同相な開近傍 $W$ をもち、cor-coin-euclid と部分空間定理により $\operatorname{ind}W\le\operatorname{ind}\mathbb{R}^n=n$ である。帰納次元 の記事の補題「小さな帰納次元の局所性」により $\operatorname{ind}M\le n$ である。逆に、$n\ge1$ なら座標近傍 $\varphi\colon W\to\varphi(W)\subset\mathbb{R}^n$ の像に含まれる閉じた立方体 $C$ をとると、$\varphi^{-1}(C)$ は $[0,1]^n$ と同相な $M$ の部分空間なので $\operatorname{ind}M\ge n$ である($n=0$ では $M\ne\emptyset$ から $\operatorname{ind}M\ge0$)。残りは thm-coin-main による。$\square$
この系は、位相多様体の次元が位相だけで決まること(領域不変性)の、ホモロジーを直接は使わない証明を与える。ただし、下からの評価に使った $\dim[0,1]^n=n$ の証明は Brouwer の不動点定理を経由している。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 可分(完備距離化可能のまま) | Roy の空間 | $\operatorname{ind}X=\operatorname{Ind}X=\dim X$($\operatorname{ind}X=0$、$\operatorname{Ind}X=\dim X=1$) |
| 距離化可能(コンパクト Hausdorff のまま) | Lokucievskii のコンパクト空間 | $\dim X=\operatorname{ind}X=\operatorname{Ind}X$($\dim X=1$、$\operatorname{Ind}X>\operatorname{ind}X\ge2$) |
| 和定理の「各 $F_i$ が閉集合」 | $\mathbb{R}=\mathbb{Q}\cup(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q})$ | $\operatorname{ind}X\le0$ |
| 分解定理の個数「$n+1$ 個」を「$n$ 個」にする | $\mathbb{R}^n$($n\ge1$) | $\operatorname{ind}X\le n$ なら $n$ 個の 0 次元部分空間の和 |
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