測地線(geodesic)とは、リーマン多様体上で速度ベクトルが自分自身に沿って平行な曲線、すなわち $\nabla_{\dot\gamma}\dot\gamma=0$ を満たす曲線 $\gamma$ である。初期点と初速度を与えると局所的にただ一つ定まり、Euclid 空間では直線、球面では大円になる。測地線は局所的には最短だが大域的に最短とは限らず(球面で半周を越える大円の弧)、連結なリーマン多様体では、測地線が全時間に延びること(測地的完備性)は Hopf–Rinow の定理により距離の完備性と同値である。
測地線(geodesic)とは、リーマン多様体上で速度が自分自身に沿って平行な曲線である。平面の一定速度の直線は最も身近な例であり、球面では大円の弧が例になる。「二点間の最短路」という説明は有用だが、測地線の定義そのものにはならない。球面上の大円を半周より長く進んだ弧も測地線である一方、端点を結ぶ最短の弧ではない。測地線は各点の十分近くでは長さを最小にしうるが、遠くまで延ばしたときに大域的な最短性を保つとは限らない。Lee18
リーマン計量は接空間ごとに内積を与える。そこから得られる Levi-Civita 接続は、異なる点に置かれた速度ベクトルを曲線に沿って比較する方法を与える。曲線の速度をこの方法で微分して零になる、というのが測地線の条件である。本記事では、その条件を座標の微分方程式に直し、初期位置と初速度から曲線が決まることを説明する。さらに、距離を最小にする曲線との関係、途中で最短でなくなる例、完備性の役割を区別する。曲線長やエネルギーの変分計算そのものは 曲線の変分論 で扱う。
$M$ を滑らかなリーマン多様体、$\nabla$ をその Levi-Civita 接続とする。滑らかな曲線 $\gamma\colon I\to M$ の速度を $\dot\gamma(t)$ と書く。速度は点 $\gamma(t)$ の接空間に属するので、通常のベクトルの差では微分できない。曲線に沿う共変微分 $D_t$ を使えば、速度の変化を $D_t\dot\gamma$ と表せる。
滑らかな曲線 $\gamma\colon I\to M$ が
$$
D_t\dot\gamma(t)=\nabla_{\dot\gamma(t)}\dot\gamma(t)=0
$$
を全ての $t\in I$ で満たすとき、$\gamma$ をアフィンパラメータをもつ測地線という。定値曲線もこの定義に含める。非定値の場合、向きを保つ $t\mapsto at+b$($a>0$)でパラメータを取り直しても測地線である。
「測地線」という語を曲線の像に対して使う文脈もある。この場合、同じ像をなぞる速さは記録しない。本記事で方程式や初期値を述べるときは、パラメータ付きの曲線を意味する。例えば平面で同じ直線を $t\mapsto(t,0)$ と $t\mapsto(t^2,0)$($t>0$)がなぞっていても、後者は加速しているので通常のパラメータでは測地線方程式を満たさない。像が同じことと方程式を満たすことは別の主張である。
$\gamma\colon I\to M$ が測地線であり、$a\ne0$ とする。$\widetilde\gamma(s)=\gamma(as+b)$ を定義できる区間では、$\widetilde\gamma$ も測地線である。
$\widetilde\gamma'(s)=a\dot\gamma(as+b)$ である。接続の曲線方向の微分の線形性から
$$
D_s\widetilde\gamma'(s)=a^2D_t\dot\gamma(as+b)=0
$$
となる。$a<0$ は向きを逆にして同じ軌道をたどる場合に相当する。$\blacksquare$
より一般に $\widetilde\gamma(s)=\gamma(\phi(s))$ と置くと、$\gamma$ が測地線のとき
$$
D_s\widetilde\gamma'=\phi''(s)\dot\gamma(\phi(s)).
$$
非定値測地線の速度は後述のように零にならないので、再パラメータ化後も測地線となるのは $\phi''=0$ の場合に限る。長さは単調な再パラメータ化で変わらなくても、測地線方程式はその速度の選び方を識別する。これは「軌跡として直線である」と「一定速度で直進する」の違いである。
ここで「アフィン」は空間 $M$ の座標がアフィン空間であるという意味ではなく、パラメータの変換が $at+b$ の形であるという意味である。初速度を二倍にすると同じ向きの軌道を二倍の速さでたどるが、位置だけを指定して速度を指定しなければ一本のパラメータ付き測地線は定まらない。両端点を指定する境界値問題と、出発点・初速度を指定する初期値問題も異なる。前者は解が複数ありうるが、後者は定義できる範囲で一意である。球面の対蹠点へ向かう半円が無数にあることは境界値問題の非一意性であって、初期値に対する ODE の一意性に反しない。
局所座標を $(x^1,\ldots,x^n)$ とし、$\gamma$ の座標成分を $x^k(t)$ と書く。接続係数 $\Gamma^k_{ij}$ を用いると、測地線の条件は各 $k$ について
$$
\frac{d^2x^k}{dt^2}
+\sum_{i,j=1}^{n}\Gamma^k_{ij}(x(t))
\frac{dx^i}{dt}\frac{dx^j}{dt}=0
$$
となる。座標を替えれば $\Gamma^k_{ij}$ の値は替わるが、曲線上のベクトル $D_t\dot\gamma$ が零という条件は変わらない。係数だけを普通のテンソルのように扱うと、この不変性を見失う。
方程式を $(x,v)$ に関する一階の常微分方程式
$$
\dot x^k=v^k,\qquad
\dot v^k=-\sum_{i,j}\Gamma^k_{ij}(x)v^iv^j
$$
と見れば、右辺は滑らかである。したがって通常の常微分方程式の局所存在・一意性定理を使える。座標近傍の端を越える場合は重なる座標で解をつなぐ。一意性により、座標を選び直しても同じ幾何学的曲線を得る。Lee18
任意の $p\in M$ と $v\in T_pM$ に対して、ある $\varepsilon>0$ と測地線 $\gamma\colon(-\varepsilon,\varepsilon)\to M$ が存在し、$\gamma(0)=p$、$\dot\gamma(0)=v$ を満たす。この初期条件を満たす二つの測地線は、共通の定義域で一致する。従って各初期条件には、これ以上延長できない極大測地線が一意に定まる。
$p$ の座標近傍を取り、$v$ をその座標成分で表す。直前の一階方程式の右辺は座標と速度について滑らかなので、初期値 $(x(0),v(0))$ に対する局所解が一意に存在する。第二式を第一式に代入すれば測地線方程式を満たす。共通区間にある二解は ODE の一意性で一致する。解の定義区間を重ね合わせて最大の定義区間上の解を作れば極大測地線となる。座標を替えた場所でも同じ不変な方程式を満たし、重なりで一意性が働く。$\blacksquare$
局所存在は全ての時間での存在を意味しない。例えば開単位球を Euclid 計量で考えると、原点から外向きの一定速度の直線は有限時間で領域の境界に達し、球の中の曲線としては延長できない。方程式の係数が滑らかであることだけでは、定義区間が $\mathbb R$ 全体になるとは限らない。この違いは完備性の節で明確にする。
Levi-Civita 接続は計量と両立する。つまり曲線に沿うベクトル場 $V,W$ について、$\frac{d}{dt}g(V,W)=g(D_tV,W)+g(V,D_tW)$ が成立する。これを $V=W=\dot\gamma$ に適用すると、測地線の速さが一定と分かる。
測地線 $\gamma$ に沿って $|\dot\gamma(t)|_g$ は一定である。ある時刻に速度が零なら $\gamma$ は定値曲線である。非定値測地線は常に正の速さをもつ。
計量両立性と測地線方程式から
$$
\frac{d}{dt}g(\dot\gamma,\dot\gamma)
=2g(D_t\dot\gamma,\dot\gamma)=0
$$
である。従って速さの二乗は一定となる。ある時刻に速度が零なら、同じ初期位置と初速度を持つ定値測地線があるので、局所一意性および延長の一意性より $\gamma$ 全体が定値である。$\blacksquare$
速さを一定値 $c$ とする区間 $[a,b]$ の測地線では、長さは $L(\gamma)=c(b-a)$ である。この等式だけから最短性は従わない。長い道のりを一定速度で進んだとしても、端点を結ぶ別の短い曲線がありうるからである。エネルギー $E(\gamma)=\frac12\int_a^b|\dot\gamma|^2dt$ については $E(\gamma)=\frac12c^2(b-a)$ となる。両端点を固定した滑らかな変分でエネルギーが停留することと測地線方程式との同値性は、曲線の変分論 における計算で確かめられる。ただし停留は最小と同義ではない。
Euclid 空間 $\mathbb R^n$ の標準座標では接続係数が全て零である。測地線方程式は $\ddot x^k=0$ になり、解は $\gamma(t)=p+tv$ である。距離も通常の Euclid 距離なので、線分は端点間の最短路である。この例では測地線をどちらの方向にも全時間へ延長できる。
$p,q\in\mathbb R^n$ を結ぶ区分的 $C^1$ 曲線 $\alpha\colon[0,1]\to\mathbb R^n$ の長さは $|q-p|$ 以上である。等速線分 $\gamma(t)=p+t(q-p)$($0\le t\le1$)は長さ $|q-p|$ の測地線である。
微積分の基本定理より $q-p=\int_0^1\dot\alpha(t)\,dt$ である。積分の三角不等式から
$$
|q-p|=\left|\int_0^1\dot\alpha(t)\,dt\right|
\le\int_0^1|\dot\alpha(t)|\,dt=L(\alpha).
$$
線分では速度が一定の $q-p$ なので測地線方程式を満たし、長さは $|q-p|$ である。$\blacksquare$
半径 $R$ の球面 $S^2_R$ では、大円が非定値の測地線の軌跡になる。例えば赤道上の
$$
\gamma(t)=(R\cos t,R\sin t,0)
$$
は速さ $R$ で進む。加速度 $\ddot\gamma(t)=-\gamma(t)$ は球面の法線方向なので、その接成分、すなわち球面の Levi-Civita 接続による $D_t\dot\gamma$ は零である。平面に埋め込んだときに曲がって見えても、球面に沿う方向には曲がっていない。球面の外から見た曲率と球面内の測地線条件を混同してはならない。
赤道上の $(R,0,0)$ から $(-R,0,0)$ まで半周進む大円弧の長さは $\pi R$ である。同じ二点を結ぶ上半分と下半分の弧はいずれも測地線であり、最短路は一意ではない。これとは別に、始点 $(R,0,0)$ から赤道を正の向きに $3\pi/2$ だけ進むと終点は $(0,-R,0)$ となる。この弧は測地線で長さ $3\pi R/2$ だが、同じ始点から同じ終点へ逆方向に進む弧の長さは $\pi R/2$ である。この長い弧は測地線でありながら端点間の最短路ではない。
開部分多様体の例では別の落とし穴がある。$M=(0,1)$ に Euclid 計量を入れると、$\gamma(t)=p+t$ は $p+t\in(0,1)$ の間は測地線である。方程式も速さも Euclid 空間と同じだが、有限時間で $1$ に達した後は $M$ の曲線として続けられない。定理の仮定にある「多様体上の全時刻」という語は、周囲の $\mathbb R$ へ曲線を延長できることでは置き換えられない。Lee18
リーマン距離 $d_g(p,q)$ は、$p$ と $q$ を結ぶ区分的滑らかな曲線の長さの下限で定義する。同じ連結成分内に二点があるときに有限である。「長さが下限に等しい」ことを長さ最小という。測地線方程式は一つの曲線に沿う局所的な条件であり、最小性は端点を共有するあらゆる曲線との比較であるため、量化の範囲が違う。
リーマン多様体上の各点 $p$ には正規近傍があり、$p$ からその近傍の点 $q$ へ向かう十分短い放射状の測地線は $p$ と $q$ の間で長さ最小である。特に任意の測地線は各時刻の周りの十分短い部分区間で端点間の長さを最小にする。
この主張は、各点の周りに測地球面を作り、放射状の方向と球面に沿う方向の直交性を使う Gauss の補題から導かれる。前半の証明は 正規座標 の定理「放射状の測地線の最短性」にある。近傍の大きさは点と方向に依存する。定理は、一本の測地線が与えられた全区間で最短になるとは述べない。球面の長い大円弧が、その差を示す。詳しい証明と仮定は Lee18 Chapter 6 にある。
逆向きについては、滑らかな長さ最小曲線を弧長でパラメータ化すると測地線になる。区分的に滑らかな曲線が最短なら折点も作れず、適切な正則性を経て測地線として扱える。ここでもパラメータの指定が必要である。短い弧を不均一な速さでたどれば像は最短のままでも、与えられたパラメータでの測地線方程式は満たさない。Lee18 は最短曲線から測地線への方向と、測地線から局所最短性への方向を別々に証明する。
「測地線」「十分短い部分弧が長さ最小」「与えられた二端点の間で大域的に長さ最小」は区別する。前二者はリーマン多様体の局所理論で結びつく。第三の主張には端点と区間の位置が関わり、測地線の延長が途中で最短性を失うことがある。極小と停留の違いは曲線の変分でも現れる。
$p\in M$ と $v\in T_pM$ を初期条件とする測地線を $\gamma_v$ と書く。$\gamma_v(1)$ が定義されている $v$ に対して
$$
\exp_p(v)=\gamma_v(1)
$$
と定める写像を、$p$ における指数写像という。添字 $p$ は出発点を示し、指数関数 $e^x$ の単なる座標ごとの適用ではない。初速度を動かして終点を調べる写像であり、零ベクトルの近くで接空間と多様体の局所座標を結ぶ。$\gamma_{av}(t)=\gamma_v(at)$ が双方の定義域で成り立つため、$\exp_p(tv)=\gamma_v(t)$ とも書ける。$v=0$ なら $\exp_p(0)=p$ である。
リーマン多様体 $M$ の任意の $p\in M$ と $v\in T_pM$ に対する極大測地線が、全ての実数 $t\in\mathbb R$ で定義されるとき、$M$ は測地的に完備という。このとき各 $\exp_p$ は接空間 $T_pM$ 全体で定義される。
連結なリーマン多様体では、測地的完備性を距離の完備性や閉有界集合のコンパクト性と結びつける Hopf–Rinow 定理がある。「閉有界集合」は距離 $d_g$ に関して閉かつ有界な集合を意味する。一般の距離空間なら、完備であっても閉有界集合がコンパクトとは限らない。この同値性は有限次元の連結リーマン多様体に固有の強い結論である。Lee18
「全ての測地線が全時間に延びる」という条件は「ある一点から出る測地線だけが延びる」という条件より見た目が強い。Hopf–Rinow 定理には後者だけでも十分という形もあるが、後者を使うときは、固定した一点からの指数写像が接空間全体で定義されるという意味を明示する。単に一点から各方向に短時間だけ測地線が存在することは、どのリーマン多様体でも成り立つ局所存在の言い換えであり、完備性の条件ではない。また、非連結多様体では異なる連結成分の二点を結ぶ曲線は存在しないため、二点間の最短測地線という結論には連結性を入れる。成分ごとの完備性は別々に考える。
連結なリーマン多様体 $(M,g)$ について、次は同値である。
定理の前提で連結性は外せない。非連結なら異なる成分の二点を結ぶ曲線がなく、距離 $d_g$ が有限値にならない。また結論は最短測地線の存在であり、一意性ではない。球面の対蹠点を結ぶ半円は無数にある。三つの条件が同値であることと、任意の測地線が全区間で最短であることは別の事柄である。
定理の証明は測地線の延長、正規近傍、距離球の性質を組み合わせるもので、ここでは結論の使い分けを重視する。最短測地線の存在は保証されるが一意性は保証されない。球面の対蹠点を結ぶ半円は無数にある。また、測地的完備性は「全ての測地線が全区間で最短」を意味しない。球面はコンパクトで完備だが、長い大円弧は最短でない。Lee18 Chapter 6 の定理を適用するときは、まず連結性とリーマン計量による距離を確認する。
標準 Euclid 空間 $\mathbb R^n$ は測地線 $p+tv$ が全時間で定義され、距離も完備である。標準計量の球面もコンパクトなので完備であり、大円を何周でも延長できる。一方、開区間 $(0,1)$ は長さが有限の境界への Cauchy 列、例えば $1-1/n$($n\ge2$)の極限を含まないので距離として完備でない。直線型の測地線も境界で止まる。三例とも局所存在一意性は成立するが、大域的な延長は異なる。
測地線は、距離を局所微分幾何から作る際の基本的な橋渡しとなる。距離の定義では全曲線を比較するが、短い範囲では指数写像から生じる放射状測地線が比較の基準になる。曲率が測地線の離れ方にどう影響するかを見ると、Jacobi 場や比較幾何へ進む。リーマン曲率 はその先のデータであり、曲率が零の平面と正の球面で測地線の大域的な振る舞いが違うことは最初の手がかりとなる。ただし単純な「曲率が正なら最短路が複数」という一文だけでは一般定理にならず、端点の位置と完備性も必要である。
Gauss–Bonnetの定理 で現れる測地曲率は、曲面上の曲線が測地線からどれだけ逸れるかを測る。曲面の外から見て曲がっているかどうかではない。球面の赤道は空間内の円として曲がっているが、球面内の測地曲率は零である。曲線の接方向にある加速度成分を見るという本記事の計算は、この用語の理解にもつながる。
このほか、測地線は幾何学的データを初期値問題へ変える手段でもある。点と接ベクトルを与え、局所 ODE を解いて曲線を得ることで、座標による計算と座標に依存しない説明を往復できる。リーマン多様体 が計量から何が作られるかの全体像を扱い、曲線の変分論 が停留性を扱うのに対し、本記事は測地線そのものの定義、例、最短性、完備性を担当する。
測地線についての主張は、パラメータの取り方・区間の短さ・完備性などの条件付きである。条件を外すと成り立たなくなる例を表にする。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 十分短い部分区間 | 球面の赤道を $3\pi/2$ 進む大円弧 | 測地線は端点の間で長さ最小 |
| アフィンなパラメータ | 平面の $t\mapsto(t^2,0)$($t>0$) | 像が直線なら測地線方程式を満たす |
| 完備性 | $\mathbb R^2\setminus\{0\}$ の二点 $(-1,0)$、$(1,0)$ | 任意の二点を結ぶ長さ最小の測地線が存在 |
| 完備性 | $(0,1)$ の閉有界集合 $(0,1)$ 自身 | 閉有界集合はコンパクト |
| 一意性(存在だけが保証される) | 球面の対蹠点 | 長さ最小の測地線はただ一つ |
球面の二行と $(0,1)$ の行は本文で確かめた。残りを確かめる。
加速するパラメータ。 $\gamma(t)=(t^2,0)$ では $\ddot\gamma=(2,0)\ne0$ で、平面の接続係数は零だから $D_t\dot\gamma=\ddot\gamma\ne0$ である。像は直線の一部だが、このパラメータでは測地線でない。
原点を除いた平面。 $M=\mathbb R^2\setminus\{0\}$ に Euclid 計量を入れる。$M$ は連結だが、点列 $(1/n,0)$ は $M$ の中で Cauchy 列なのに極限 $0$ が $M$ にないので完備でない。$p=(-1,0)$、$q=(1,0)$ とする。原点の周りを半径 $\varepsilon$ の半円で迂回する曲線の長さは $2-2\varepsilon+\pi\varepsilon$ で、$\varepsilon\to0$ で $2$ に近づくから $d_g(p,q)\le2$ である。一方、Euclid 空間の命題から任意の曲線の長さは $\lvert q-p\rvert=2$ 以上なので、$d_g(p,q)=2$ である。長さがちょうど $2$ の曲線があれば、積分の三角不等式で等号が成り立つので速度は常に $q-p$ の非負倍で、像は線分 $pq$ になる。しかし線分は原点を通り $M$ に含まれない。従って $p,q$ を結ぶ長さ最小の曲線はなく、Hopf–Rinow 定理の結論が破れる。
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