Zariski–永田の純性定理

同義語:Zariski–Nagataの純性定理Zariski–Nagata purity theorem分岐跡の純性purity of the branch locus

概要

Zariski–永田の純性定理(Zariski–Nagata purity theorem)とは、次元 $2$ 以上の正則局所環 $A$ 上の有限な正規代数 $B$($A$ 加群として捩れなし)が、閉点を除いた所でエタールならば $A\to B$ 全体がエタールである、という定理である。言い換えると、正則スキームへの正規な有限被覆(生成点でエタールなもの)の分岐因子は、空か余次元 $1$ であり、分岐が余次元 $2$ 以上の場所だけに起こることはない。次元 $2$ では、正規性による深さ $2$、Auslander–Buchsbaum 公式による自由性、判別式と Krull の高さ定理から証明できる。帰結として、正則局所環の穴あきスペクトル上の有限エタール被覆は全体に一意的に延びる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 純性, 正則局所環, エタール射, 正規環, Auslander–Buchsbaum公式

何を述べる定理か

正則なスキームの上の正規な有限被覆が分岐するとき、分岐の起こる場所は余次元 $1$ の部分に広がっていて、余次元 $2$ 以上の場所だけに閉じ込められることはない。これが Zariski–永田の純性定理(Zariski–Nagata purity theorem)であり、分岐跡の純性(purity of the branch locus)ともいう。複素解析で、余次元 $2$ 以上の解析的集合を除いた領域上の正則関数が全体に延びるという Hartogs の現象の、有限被覆版にあたる。

形主張この記事での扱い
局所形次元 $d\ge2$ の正則局所環 $A$ 上の有限な正規代数 $B$($A$ 加群として捩れなし)が、閉点を除いた所でエタールなら、$A\to B$ はエタールである$d=2$ を証明する(thm-zn-purity-local)。$d\ge3$ はこの記事では証明しない
分岐跡の形正規スキームから正則スキーム $X$ への有限射 $f$ で、各既約成分の生成点が $X$ の既約成分の生成点に写りそこでエタールなものの分岐因子は、空か、すべての既約成分が余次元 $1$局所形から導く(thm-zn-purity-branch)。$X$ の局所環の次元が $2$ 以下なら完全に証明される
被覆の延長の形$\dim A\ge2$ の正則局所環は純である:閉点を除いた所の有限エタール被覆は一意的に延びる$d=2$ を証明する(cor-zn-purity-pure)

等標数の場合(局所環が体を含む場合。体上の代数多様体の場合はこれに含まれる)を Zariski が、一般の正則局所環の場合を永田雅宜(Masayoshi Nagata)が示した(SGA1 Exposé X, §3 の注記、p. 212)。現在よく引かれる証明は SGA2 Exposé X, Théorème 3.4 にあり、局所完全交叉環への拡張も含む。純性という語は、ほかにコホモロジー的純性や Brauer 群の純性を指すこともあり、それらの関係は 純性 が扱う。
次元 $2$ の場合の証明は短く、次の 3 段からなる。

  1. 正規性から、$B$ は $A$ 加群として深さ $2$ をもつ。
  2. Auslander–Buchsbaum公式 により、$B$ は自由 $A$ 加群である。
  3. 自由な有限代数の分岐する場所は判別式という 1 つの元の零点集合であり、Krull の高さ定理により余次元 $1$ か空である。
    以下、$(A,\mathfrak{m},k)$ は Noether 局所環とし、$U_A:=\operatorname{Spec}A\setminus\{\mathfrak{m}\}$ をその穴あきスペクトル(punctured spectrum)という。環準同型 $A\to B$ が素イデアル $\mathfrak{p}\subset A$ の上でエタールであるとは、$\mathfrak{p}$ の上にある $B$ のすべての素イデアルで $\operatorname{Spec}B\to\operatorname{Spec}A$ がエタールであることをいう(エタール射)。

定義

分岐跡と分岐因子

$f\colon Y\to X$ を局所 Noether スキームの間の有限射とする。$f$ がエタールでない $Y$ の点の全体 $R_f$ を $f$ の分岐跡(ramification locus)といい、その像 $f(R_f)\subset X$ を分岐因子(branch locus)という。

エタールな点の全体は開集合なので $R_f$ は閉集合であり、有限射は閉写像なので $f(R_f)$ も閉集合である。記号は 純性 の定義「分岐跡」にそろえた。

純な局所環

Noether 局所環 $A$ が純(pure)であるとは、$A$ 上の有限エタール代数の圏から、$U_A$ 上の有限エタールスキームの圏への制限関手が圏同値であることをいう。

この定義は SGA2 Exposé X, Définitions 3.1・3.2(p. 94)による。

判別式

$B$ を階数 $n$ の自由加群である有限 $A$ 代数とし、基底 $e_1,\dots,e_n$ をとる。$b\in B$ の掛け算が定める $A$ 線形写像のトレースを $\operatorname{Tr}_{B/A}(b)$ とし、
$$ \operatorname{disc}(B/A):=\det\bigl(\operatorname{Tr}_{B/A}(e_ie_j)\bigr)_{i,j}\in A $$
を判別式という。基底を取り替えると単元の平方倍だけ変わるので、生成するイデアルは基底によらない。トレースは底変換と両立するので、素イデアル $\mathfrak{p}$ について $\operatorname{disc}(B/A)$ の $\kappa(\mathfrak{p})$ での像は $\operatorname{disc}(B\otimes_A\kappa(\mathfrak{p})/\kappa(\mathfrak{p}))$ である。

判別式による分岐の判定

$B$ を自由加群である有限 $A$ 代数、$\mathfrak{p}$ を $A$ の素イデアルとする。$A\to B$ が $\mathfrak{p}$ の上でエタールであることと、$\operatorname{disc}(B/A)\notin\mathfrak{p}$ であることは同値である。

要点:$B$ は平坦なので、ファイバー $F:=B\otimes_A\kappa(\mathfrak{p})$ が分離的な体の直積かどうかを見ればよく、それはトレース形式の非退化性で判定できる。

詳しい証明を開く

$B$ は有限自由なので平坦かつ有限表示であり、$\mathfrak{p}$ の上の素イデアル $\mathfrak{Q}$ でエタールであることは不分岐であること、すなわち $B_{\mathfrak{Q}}/\mathfrak{p}B_{\mathfrak{Q}}$ が $\kappa(\mathfrak{p})$ の有限分離拡大体であることと同値である(エタール射 の定義「不分岐な射」「エタール射の定義」)。$F$ は有限次元 $\kappa(\mathfrak{p})$ 代数なので局所 Artin 環 $F_{\mathfrak{Q}}=B_{\mathfrak{Q}}/\mathfrak{p}B_{\mathfrak{Q}}$ の直積である。よって、$\mathfrak{p}$ の上でエタールであることは、$F$ が有限分離拡大体の直積であることと同値である。判別式の像は $\operatorname{disc}(F/\kappa(\mathfrak{p}))$ なので、次を示せばよい:体 $\kappa$ 上の有限次元可換代数 $F$ が有限分離拡大体の直積であることと、トレース形式 $(a,b)\mapsto\operatorname{Tr}(ab)$ が非退化であることは同値である。

$\bar\kappa$ を代数閉包とし $\bar F:=F\otimes_\kappa\bar\kappa$ とおく。トレース形式の行列は底変換で変わらないので、非退化性は $F$ と $\bar F$ で同じである。$F$ が分離拡大体 $L_1,\dots,L_r$ の直積なら、各 $L_i\otimes_\kappa\bar\kappa\cong\bar\kappa^{[L_i:\kappa]}$(分離多項式は $\bar\kappa$ で相異なる根に分解し、中国剰余定理を使う)なので $\bar F\cong\bar\kappa^n$ で、トレース形式は $\sum_ix_iy_i$ となり非退化である。逆に非退化とする。$\bar F$ の冪零元 $x$ について、任意の $y$ で $xy$ は冪零なので、掛け算の写像も冪零でトレースは $0$ である。非退化性から $x=0$、すなわち $\bar F$ は被約である。$F=\prod_iF_i$($F_i$ は局所 Artin 環)と分けると各 $F_i\otimes_\kappa\bar\kappa$ も被約なので $F_i$ は被約、したがって体である。体 $F_i$ が $\kappa$ 上分離的でないなら、分離的でない元 $\alpha$ の最小多項式 $g$ は $\bar\kappa$ で重根をもち、$\kappa(\alpha)\otimes_\kappa\bar\kappa=\bar\kappa[t]/(g)$ は冪零元をもつ。$\bar\kappa$ は $\kappa$ 上平坦なので $\kappa(\alpha)\otimes\bar\kappa\subset F_i\otimes\bar\kappa$ であり、被約性に反する。$\square$

主定理:局所形

Zariski–永田の純性定理(局所形)

$(A,\mathfrak{m})$ を次元 $d\ge2$ の正則局所環、$B$ を有限 $A$ 代数で、正規環であり、$A$ 加群として捩れをもたないものとする。$A\to B$ が $\mathfrak{m}$ 以外のすべての素イデアルの上でエタールならば、$A\to B$ はエタールである。

$d=2$ の場合を次に証明する。$d\ge3$ の場合はこの記事では証明しない。SGA2 Exposé X, Théorème 3.4 (i)(主張は p. 94、証明は p. 97)は cor-zn-purity-pure と同じ純性の形で述べられ、$d=2$ の場合を下と同じ筋で示し、$d\ge3$ は完備化に移ったうえで正則パラメータ系の 1 元で割った超平面切断に帰着させて次元に関する帰納法で示している。Stacks Étale Fundamental Groups, Lemma 58.21.3(Tag 0BMA、pp. 4738–4739)は局所形と純性の形の両方を述べ、$d=2$ を平坦性と判別式で、$d\ge3$ を超平面切断による次元の帰納法で示している。

$d=2$ の場合

$B=0$ なら明らかなので $B\neq0$ とする。$\mathfrak{m}=(x,y)$ を正則パラメータ系とする(正則局所環 の定義「正則局所環と正則パラメータ系」)。
第 1 段:$x,y$ は $B$ 正則列である。 $B$ は捩れをもたないので $x$ は $B$ の非零因子である。$y$ が $B/xB$ の零因子だとすると、$y$ はある $\mathfrak{P}\in\operatorname{Ass}_B(B/xB)$ に属する。$\mathfrak{P}\ni x,y$ なので $\mathfrak{P}\cap A=\mathfrak{m}$ であり、$B$ は $A$ 上整なので $\mathfrak{P}$ は $B$ の極大イデアルである。正規環 の定理「正規 Noether 環の成分分解」により $B$ は整閉 Noether 整域 $B_1,\dots,B_r$ の直積で、捩れをもたないので各 $B_i$ は $A$ を含む整拡大である。$\mathfrak{P}$ がある $B_i$ の極大イデアル $\mathfrak{P}_i$ から来るとすると、$A$ は整閉で $B_i$ は整域なので上昇定理 の定理「整拡大の上昇定理」と 下降定理 の系「整閉整域の上の整拡大と高さ」により $\operatorname{ht}\mathfrak{P}_i=\operatorname{ht}\mathfrak{m}=2$ である。$B_{\mathfrak{P}}=(B_i)_{\mathfrak{P}_i}$ は次元 $2$ の整閉 Noether 局所整域なので、Serre条件 の補題「整閉性から深さと低高さの正則性」により深さは $2$ 以上である。一方 $\mathfrak{P}B_{\mathfrak{P}}\in\operatorname{Ass}(B_{\mathfrak{P}}/xB_{\mathfrak{P}})$ なので、非零因子 $x$ の後に正則元が続かず、$B_{\mathfrak{P}}$ の深さは $1$ である。これは矛盾である。また $B/\mathfrak{m}B\neq0$(Nakayamaの補題)なので、$B$ は $A$ 加群として深さ $2$ をもつ。
第 2 段:$B$ は自由 $A$ 加群である。 $A$ は正則なので、大域次元 の定理「正則局所環の全加群上界」により $\operatorname{pd}_AB\le2<\infty$ である。Auslander–Buchsbaum公式 により $\operatorname{pd}_AB=\operatorname{depth}A-\operatorname{depth}_AB=2-2=0$ なので、$B$ は射影加群であり、局所環上の有限生成射影加群なので自由である。
第 3 段:$A\to B$ はエタールである。 $\delta:=\operatorname{disc}(B/A)$ とおく。仮定と lem-zn-purity-discriminant により、$\mathfrak{m}$ 以外の素イデアル $\mathfrak{p}$ について $\delta\notin\mathfrak{p}$ である。とくに $\delta\notin(0)$ なので $\delta\neq0$ である。$\delta$ が単元でないとすると、$\delta$ を含む極小な素イデアルは、Krullの単項イデアル定理 の定理「Krullの一般高さ定理」により高さ $1$ 以下である。しかし $\delta$ を含む素イデアルは高さ $2$ の $\mathfrak{m}$ だけなので矛盾する。よって $\delta$ は単元であり、lem-zn-purity-discriminant により $A\to B$ は $\mathfrak{m}$ の上でもエタールである。$\square$

第 1 段と第 2 段で使ったのは「$A$ が次元 $2$ の正則局所環で、$B$ が正規で捩れをもたない」ということだけであり、エタール性は第 3 段だけで使う。SGA1 Exposé X, §3(p. 212)も、次元 $2$ の場合をこの 3 段で述べている。

分岐跡の形

Zariski–永田の純性定理(分岐跡の形)

$X$ を正則な局所 Noether スキーム、$Y$ を正規スキーム、$f\colon Y\to X$ を有限射とし、$Y$ の各既約成分の生成点は $X$ の既約成分の生成点に写り、$f$ はそこでエタールであるとする。このとき分岐因子 $f(R_f)$ は空であるか、またはその各既約成分の生成点 $w$ について $\dim\mathcal{O}_{X,w}=1$ である。

$w$ を $f(R_f)$ の既約成分 $W$ の生成点とし、$A:=\mathcal{O}_{X,w}$、$B:=(f_*\mathcal{O}_Y)_w$ とおく。$\operatorname{Spec}B=Y\times_X\operatorname{Spec}A$ であり、$B$ は有限 $A$ 代数、正規環の局所化なので正規環である(正規環 の定理「局所化による保存」)。$B$ の極小素イデアルは $Y$ の既約成分の生成点に対応し、仮定によりそれらは正則局所環 $A$ の生成点 $(0)$ の上にある。正規 Noether 環の随伴素イデアルは極小素イデアルだけなので、$A$ の $0$ でない元は $B$ の非零因子であり、$B$ は捩れをもたない。
$w$ の一般化 $w'\neq w$ は $f(R_f)$ に属さない。属するなら $\overline{\{w'\}}\subset f(R_f)$ はある既約成分に含まれ、それは $W=\overline{\{w\}}$ を真に含むことになり、$W$ が既約成分であることに反する。$\operatorname{Spec}A$ の点は $w$ の一般化なので、$A\to B$ は $\mathfrak{m}_A$ 以外の素イデアルの上でエタールである。
$\dim A=0$ なら $w$ は $X$ の既約成分の生成点で、その上の $Y$ の点は $Y$ の既約成分の生成点だけである(ファイバーは $0$ 次元で、その点の生成点もまた $w$ の上にある)。仮定から $f$ はそこでエタールなので $w\notin f(R_f)$ となり矛盾する。$\dim A\ge2$ なら thm-zn-purity-local により $A\to B$ はエタール、すなわち $f$ は $w$ の上の点でエタールで、やはり矛盾する。よって $\dim A=1$ である。$\square$

この証明で局所形を使うのは $\dim\mathcal{O}_{X,w}\ge2$ の点だけなので、$X$ の局所環の次元がすべて $2$ 以下なら(たとえば $X$ が正則な曲面なら)、上の定理はこの記事の中で完全に証明されている。
分岐跡 $R_f$ そのものが $Y$ において純余次元 $1$ であるという $Y$ の側の形もある。SGA1 Exposé X, Théorème 3.1(p. 212)は、整スキームの間の準有限で支配的な射 $f\colon Y\to X$($Y$ は正規、$X$ は正則で局所 Noether)について、$f$ がエタールでない点の集合が $Y$ 全体でなければ、その各既約成分の生成点 $z$ で $\dim\mathcal{O}_{Y,z}=1$ であると述べ、局所化によって局所形(同 Corollaire 3.2)と同値であると注意している。点ごとの形の証明は Stacks Étale Fundamental Groups, Lemma 58.21.4(Tag 0BMB、pp. 4739–4740)にある。この $Y$ の側の形はこの記事では証明しない。

被覆の延長の形

正則局所環の純性

$\dim A\ge2$ の正則局所環 $A$ は純である。すなわち、$U_A$ 上の有限エタールスキームはすべて $A$ 上の有限エタール代数の制限であり、そのような延長は同型を除いて一意である。

$\dim A=2$ の場合を次に証明する。$\dim A\ge3$ の場合は、$d\ge3$ の局所形を使う同じ議論で得られるが、その局所形をこの記事では証明しないので、ここでも証明しない(SGA2 Exposé X, Théorème 3.4 (i)、SGA1 Exposé X, Corollaire 3.3、p. 213)。正則スキームから余次元 $2$ 以上の閉集合を除いても有限エタール被覆が変わらないという大域的な形は、純性 の定理「余次元2以上の閉集合を除いてもエタール被覆は変わらない」が扱う。

$\dim A=2$ の場合

要点:$U_A$ 上の連結な被覆の関数体で $A$ の整閉包をとると、局所形の仮定を満たす有限代数が得られる。

詳しい証明を開く

$X:=\operatorname{Spec}A$、$U:=U_A$ とおく。$A$ は正規なので、純性 の命題「正規スキーム上の関数の延長」により $\Gamma(U,\mathcal{O}_U)=A$ である。

充満忠実性:$A$ 上の有限エタール代数 $B_1,B_2$ は有限自由加群である(有限平坦で局所環上の有限表示なので)。基底をとれば $\Gamma(U,\widetilde{B_j})=B_j\otimes_A\Gamma(U,\mathcal{O}_U)=B_j$ である。$U$ 上の代数の射 $\widetilde{B_2}|_U\to\widetilde{B_1}|_U$ は大域切断をとって $A$ 代数の射 $B_2\to B_1$ を与え、逆に $A$ 代数の射は制限で得られるので、$\operatorname{Hom}_A(B_2,B_1)\to\operatorname{Hom}_U$ は全単射である。

本質的全射性:$V\to U$ を有限エタールとする。$V$ は有限個の連結成分に分かれ、各成分も $U$ 上有限エタールなので、$V$ は連結としてよい。正規スキーム上の滑らかなスキームは正規なので(Stacks Algebra, Lemma 10.163.9、Tag 033C、p. 890)、$V$ は正規で連結、したがって整スキームである。$U$ は既約な $X$ の空でない開集合なので連結であり、$V\to U$ の像は開かつ閉で空でないから $U$ 全体である。よって $V$ の関数体 $L$ は $A$ の商体 $K$ の有限分離拡大である(生成点でのファイバーがエタール)。$C$ を $A$ の $L$ における整閉包とすると、整閉包の有限性 の定理「分離拡大における整閉包の有限性」により $C$ は有限 $A$ 代数で、正規な整域、とくに捩れをもたない。$a\in\mathfrak{m}$ について $V$ の $D(a)$ 上の部分は有限 $A_a$ 代数 $E$ のスペクトルで、$E$ は商体 $L$ の正規な整域である。$E$ は $A_a$ 上整なので $C_a\supset E$、逆に $C_a$ の元は $A_a\subset E$ 上整で $E$ は整閉なので $C_a\subset E$、すなわち $E=C_a$ である。$\mathfrak{m}=(x,y)$ について $U=D(x)\cup D(y)$ なので、$\operatorname{Spec}C$ の $U$ 上の部分は $V$ に一致し、$A\to C$ は $\mathfrak{m}$ 以外の素イデアルの上でエタールである。thm-zn-purity-local($d=2$)により $A\to C$ はエタールで、$C$ が求める延長である。$\square$

例

Kummer被覆

$k$ を体、$n\ge2$ を $k$ の標数で割れない整数、$A=k[x,y]_{(x,y)}$、$B=A[t]/(t^n-x)$ とする。$B$ は基底 $1,t,\dots,t^{n-1}$ の自由 $A$ 加群で、$k[t,y]$ の局所化と同型なので正則、とくに正規である。判別式は
$$ \operatorname{disc}(B/A)=\pm n^nx^{n-1} $$
であり、lem-zn-purity-discriminant により $A\to B$ がエタールでない素イデアルは $x$ を含むもの、すなわち分岐因子は直線 $x=0$ の全体で、余次元 $1$ である。分岐が原点だけに起こることはない、という thm-zn-purity-local の主張どおりである。

判別式の計算を開く

$f=t^n-x$ とおき、$f$ の根 $\theta_1,\dots,\theta_n$ を $A$ の商体の代数閉包の中にとる($n$ が可逆なので相異なる)。$t^j$ の掛け算のトレースは $\sum_i\theta_i^j$ なので、$V=(\theta_i^{\,j})_{i,j}$($0\le j\le n-1$)とおけば $(\operatorname{Tr}(t^jt^l))_{j,l}={}^tVV$ であり、判別式は Vandermonde 行列式の平方 $\prod_{i< j}(\theta_i-\theta_j)^2=(-1)^{n(n-1)/2}\prod_if'(\theta_i)$ である。$f'(\theta_i)=n\theta_i^{n-1}$ と $\prod_i\theta_i=(-1)^nf(0)=(-1)^{n+1}x$ から $\prod_if'(\theta_i)=n^n(\prod_i\theta_i)^{n-1}=\pm n^nx^{n-1}$ である。

2 本の直線で分岐する 2 重被覆

$k$ を標数 $2$ でない体、$A=k[x,y]_{(x,y)}$、$B=A[t]/(t^2-xy)$ とする。$B$ は $k[u,v,w]/(uw-v^2)$($u=x$、$v=t$、$w=y$)の局所化であり、この環は正規である(純性 の例「反例:正則でないスキームでは分岐跡が余次元2になる」で整閉性が示されている)。基底 $1,t$ について $\operatorname{Tr}(1)=2$、$\operatorname{Tr}(t)=0$、$\operatorname{Tr}(t^2)=2xy$ なので $\operatorname{disc}(B/A)=4xy$ であり、分岐因子は 2 本の直線 $xy=0$ である。分岐因子は原点で特異な曲線でもよいが、余次元 $1$ であることは変わらない。$B$ 自身は原点で正則でないが、thm-zn-purity-local が仮定するのは $B$ の正規性だけである。

反例:条件を外すと

外す条件反例成り立たなくなること
$A$ が正則2 次錐 $A=k[x^2,xy,y^2]_{\mathfrak{m}}$ と $B=k[x,y]$ の対応する局所化($k$ の標数は $2$ でない)$B$ は正規で、$\mathfrak{m}$ 以外の上でエタールだが、$\mathfrak{m}$ の上でエタールでない。分岐因子は余次元 $2$ の 1 点
$B$ が正規$A=k[x,y]_{(x,y)}$、$B=\{(g,h)\in A\times A\mid g(0,0)=h(0,0)\}$2 枚の平面を原点で貼り合わせた被覆は、原点以外でエタールだが原点でエタールでない
$B$ が捩れをもたない$A=k[x,y]_{(x,y)}$、$B=A\times k$($k=A/\mathfrak{m}$)$B$ は正規で $\mathfrak{m}$ 以外の上でエタールだが、$\mathfrak{m}$ の上で平坦でなく、エタールでない
$\dim A\ge2$$A=k[t]_{(t)}$、$B=A[s]/(s^2-t)$($k$ の標数は $2$ でない)$B$ は正規で生成点の上でエタールだが、閉点の上でエタールでない

各行は左の列の条件だけを外している。

確かめを開く

1 行目:純性 の例「反例:正則でないスキームでは分岐跡が余次元2になる」で、$A$ が正規だが正則でないこと、$B=k[x,y]$ が $A$ 上有限で、原点以外でエタール、原点でエタールでないことが示されている。局所化しても同じである。

2 行目:$B\subset A\times A$ で $A\times A$ は有限 $A$ 加群なので $B$ も有限で、捩れをもたない。$a\in\mathfrak{m}$ について $(a,0)\in B$ なので冪等元 $(1,0)=(a,0)/a$ が $B_a$ に属し、$B_a=A_a\times A_a$ は $A_a$ 上エタールである。$B$ の $\mathfrak{m}$ の上の素イデアルは $\{(g,h)\mid g(0,0)=h(0,0)=0\}$ だけで、$B$ は局所環である。$A\to B$ がエタールなら $B$ は正則局所環(Stacks More on Algebra, Lemma 15.45.3、Tag 0AH0、p. 1303)、とくに整域になるが、$(x,0)(0,x)=0$ なので矛盾する。$B$ は整域でない局所環なので正規でない。

3 行目:$B$ は整閉整域 $A$ と体 $k$ の直積なので正規である(正規環 の定理「有限直積」)。$\mathfrak{p}\neq\mathfrak{m}$ なら $k\otimes_AA_{\mathfrak{p}}=0$ なので $B_{\mathfrak{p}}=A_{\mathfrak{p}}$ である。$k$ は $x$ で消されるので平坦 $A$ 加群でなく、$B$ も平坦でない。

4 行目:$B\otimes_A\kappa((0))=k(t)[s]/(s^2-t)$ は分離的な 2 次拡大体なので生成点の上でエタールであり、閉点の上のファイバー $k[s]/(s^2)$ は被約でないのでエタールでない。$B$ は $k[s]$ の局所化と同型なので正規で、捩れをもたない。分岐因子は閉点で、$\dim A=1$ なので余次元 $1$ であり、thm-zn-purity-branch とは矛盾しない。

補足

  • エタール基本群:cor-zn-purity-pure により、正則局所環 $A$($\dim A\ge2$)について、穴あきスペクトル $U_A$ のエタール基本群は $\operatorname{Spec}A$ のエタール基本群に一致する。とくに $A$ が狭義 Hensel なら、$A$ 上の有限エタール代数は $A$ の有限個の直積に限る(狭義Hensel局所環 の定理「狭義Hensel局所環上のエタール被覆の自明性」)ので、$U_A$ の連結な有限エタール被覆は自明なものだけである。
  • 局所完全交叉への拡張:SGA2 Exposé X, Théorème 3.4 (ii)(p. 94)は、次元 $3$ 以上の局所完全交叉環も純であることを示している。次元 $2$ の局所完全交叉では一般に成り立たない。1 行目の反例の 2 次錐はその例である($uw-v^2$ の 1 つの式で定まる)。
  • Hartogs との対応:純性 の命題「正規スキーム上の関数の延長」(関数の延長)と cor-zn-purity-pure(有限エタール被覆の延長)は、余次元 $2$ 以上の閉集合が「低い次数の不変量からは見えない」という同じ型の主張である。

関連項目

参考文献

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