Weylの部屋

同義語:Weyl部屋Weyl chamber

概要

Weylの部屋(Weyl chamber)とは、ルート系 $R$ の各ルートに直交する超平面をすべて取り除いた残りの連結成分のことであり、開いた凸錐である。部屋は正系・基と一対一に対応し、基 $\Delta$ に対応する部屋は $\Delta$ の元との内積が正という $\dim V$ 個の不等式で切り出され、その壁は単純ルートに直交する超平面である。Weyl 群は部屋の全体に単純推移的に作用し、元 $w$ の長さは基本部屋 $C$ と $wC$ を隔てる超平面の枚数に等しい。$C$ の閉包は各軌道とちょうど 1 点で交わり、その点の安定化群は点を含む壁の鏡映で生成される放物型部分群である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ルート系, 群の作用, 凸集合

何を捉える概念か

ルート系 $R$ の各ルート $\alpha$ には、$\alpha$ に直交する超平面 $H_\alpha$ が付随する。これらの超平面をすべて取り除くと、空間は有限個の開いた凸錐に分かれる。その一片が Weyl の部屋 である。平面の $A_2$ 型では 3 本の直線が平面を 6 つの扇形に分け、Weyl 群 $W\cong S_3$ の 6 個の元が扇形に 1 つずつ対応する。
部屋は、ルート系の代数的なデータ(正系・基・Weyl 群の長さ)を図形として見る道具である。この記事では次のことを示す。

問い答え
部屋はどんな形か部屋は正系・基と一対一に対応する。基 $\Delta$ に対応する部屋は $\Delta$ の元との内積が正という $\dim V$ 個の不等式で切り出され、その壁は $H_\alpha$($\alpha\in\Delta$)である(thm-weyl-chamber-shape)
Weyl 群はどう作用するか部屋の全体に単純推移的に作用し、元 $w$ の長さは基本部屋 $C$ と $wC$ を隔てる超平面の個数に等しい(thm-weyl-chamber-main の 1・2)
軌道の代表はどう取れるか基本部屋の閉包は各軌道とちょうど 1 点で交わり、その点の安定化群は、その点を含む壁の鏡映で生成される(同 3)

一般の有限鏡映群についての同じ形の定理は 有限鏡映群 の定理「有限鏡映群の基本定理」にある。この記事では、ルート系の正系と基の言葉を使い、部屋・正系・基の三つを結びつける形で示す。
以下、記号は ルート系 の記事にそろえる。$V$ は正定値内積 $(\ ,\ )$ をもつ有限次元の実ベクトル空間、$R$ は $V$ におけるルート系、$W=W(R)$ はその Weyl 群、$H_\alpha=\{x\in V\mid(x,\alpha)=0\}$、$s_\alpha$ は $\alpha$ に関する鏡映である。$v\in V$ が正則であるとは、すべての $\alpha\in R$ について $(\alpha,v)\neq0$ となることであり、正則な $v$ について $R^+(v)=\{\alpha\in R\mid(\alpha,v)>0\}$ である(ルート系 の定義「正則ベクトルと正系」)。

定義

Weylの部屋

正則ベクトルの全体 $V^{\circ}:=V\setminus\bigcup_{\alpha\in R}H_\alpha$ の 連結成分 を、$R$ の Weyl の部屋(Weyl chamber)、または単に 部屋 という。

$R$ は有限集合なので $V^{\circ}$ は空でない(ルート系 の補題「正則ベクトルと正系の性質」の 1)。文献によっては、ここでいう部屋の閉包を部屋と呼び、ここでいう部屋を開いた部屋(open chamber)と呼ぶ(Dav07 §6.6、p. 88)。

基本部屋と壁

$R$ の基 $\Delta$ に対し
$$ C(\Delta):=\{x\in V\mid(\alpha,x)>0\ (\alpha\in\Delta)\} $$
とおき、$\Delta$ に関する 基本部屋(fundamental chamber)という。部屋 $D$ と $\beta\in R$ について、$H_\beta\cap\overline{D}$ が $H_\beta$ の空でない開集合を含むとき、$H_\beta$ を $D$ の 壁(wall)という。

$C(\Delta)$ が実際に部屋であることは thm-weyl-chamber-shape で示す。

部屋と正系の対応

部屋の記述
  1. 正則ベクトル $v$ を含む部屋は
    $$ C(v):=\{x\in V\mid (\alpha,x)(\alpha,v)>0\ (\alpha\in R)\} $$
    である。とくに部屋は凸な開集合であり、部屋 $D$ の点 $x$ について正系 $R^+(x)$ は $x$ によらない。これを $R^+(D)$ と書く。
  2. $\beta\in R$ と部屋 $D$ について、$(\beta,x)$ の符号は $x\in D$ によらない。
  3. $D\mapsto R^+(D)$ は、部屋の全体から正系の全体への全単射である。

要点:$C(v)$ は開半空間の有限個の共通部分で凸、連続関数 $(\alpha,\cdot)$ は連結集合の上で符号を変えない。

詳しい証明を開く

1:$C(v)$ は開半空間 $\{x\mid(\alpha,x)(\alpha,v)>0\}$($\alpha\in R$)の有限個の共通部分なので凸な開集合で、とくに連結であり、$v$ を含み、その点はすべて正則である。よって $v$ を含む部屋 $D$ は $C(v)$ を含む。逆に $x\in D$ とする。$\alpha\in R$ について、連続関数 $y\mapsto(\alpha,y)$ の $D$ 上の像は $\mathbb{R}\setminus\{0\}$ の連結部分集合なので、$(\alpha,x)$ と $(\alpha,v)$ は同符号である。よって $x\in C(v)$ で、$D=C(v)$ である。$x\in C(v)$ なら定義から $R^+(x)=R^+(v)$ である。

2:1 の証明の符号の議論そのものである。

3:正系 $R^+=R^+(v)$ に対し、$v$ を含む部屋 $D$ は $R^+(D)=R^+$ を満たすので全射である。$R^+(D)=R^+(D')$、$v\in D$、$v'\in D'$ とすると、各 $\alpha\in R$ について $(\alpha,v)$ と $(\alpha,v')$ は同符号なので $v'\in C(v)=D$、よって $D'=D$ である。$\square$

2 により、部屋 $D,D'$ と $\beta\in R$ について、$(\beta,\cdot)$ の符号が $D$ と $D'$ で異なるとき、$H_\beta$ は $D$ と $D'$ を 隔てる という。$H_{-\beta}=H_\beta$ なので、隔てる超平面は $\beta\in R^+$ だけで数えればよい。
ルート系 の定理「正系と基の一対一対応」により、正系 $R^+$ はただ一つの基 $\Delta\subset R^+$ を含み、$R^+=R^+(\Delta)$ である。次の定理は、部屋がこの基だけで切り出されることを示す。

部屋の形

$D$ を部屋、$\Delta$ を正系 $R^+(D)$ の基とする。

  1. $D=C(\Delta)$ である。したがって部屋・正系・基は $D\mapsto R^+(D)\mapsto\Delta$ により互いに一対一に対応する。
  2. $\overline{D}=\{x\in V\mid(\alpha,x)\ge0\ (\alpha\in\Delta)\}$ である。
  3. $D$ の壁は $H_\alpha$($\alpha\in\Delta$)でちょうど尽くされる。とくに $D$ の壁はちょうど $\dim V$ 枚である。

$R^+:=R^+(D)$ とおく。$R^+$ の元は $\Delta$ の元の $0$ 以上の係数の線形結合で $0$ でない(ルート系 の定義「基と単純ルート」)。
1:$x\in C(\Delta)$ なら、各 $\beta\in R^+$ について $(\beta,x)$ は $0$ 以上の係数で $(\alpha,x)>0$($\alpha\in\Delta$)を足したもので正である。$R=R^+\sqcup(-R^+)$ なので $x$ は正則で $R^+(x)=R^+$、prop-weyl-chamber-describe の 1 により $x$ は $D$ の点 $v$ と同じ部屋 $C(v)=D$ に属する。逆に $x\in D$ なら $\Delta\subset R^+=R^+(x)$ なので $x\in C(\Delta)$ である。後半は prop-weyl-chamber-describe の 3 と、ルート系 の定理「正系と基の一対一対応」による。
2:右辺を $P$ とする。$P$ は閉集合で $D$ を含むので $\overline{D}\subset P$ である。$x\in P$ と $v\in D$ について、$t>0$ なら $(\alpha,x+tv)>0$($\alpha\in\Delta$)なので $x+tv\in D$ であり、$t\to0$ として $x\in\overline{D}$ である。
3:$\alpha\in\Delta$ とする。$\Delta$ は $V$ の基底なので、$(\alpha,x_0)=0$、$(\delta,x_0)=1$($\delta\in\Delta\setminus\{\alpha\}$)となる $x_0$ がある。$H_\alpha$ の中で $x_0$ に十分近い $y$ は $(\delta,y)>0$($\delta\neq\alpha$)を満たし、2 により $\overline{D}$ に属する。よって $H_\alpha$ は $D$ の壁である。
次に $\beta\in R^+\setminus\Delta$ とし、$\beta=\sum_{\delta\in\Delta}c_\delta\delta$($c_\delta\ge0$)と書く。$c_\delta>0$ となる $\delta$ がただ一つなら $\beta=c_\delta\delta$ となり、ルート系 の定義の (RS4) により $\beta=\delta\in\Delta$ となって矛盾するので、$c_{\delta_1},c_{\delta_2}>0$ となる $\delta_1\neq\delta_2$ がある。$x\in H_\beta\cap\overline{D}$ なら、2 により各項 $c_\delta(\delta,x)$ は $0$ 以上で和 $(\beta,x)$ が $0$ なので、$(\delta_1,x)=0$ である。よって $H_\beta\cap\overline{D}\subset H_\beta\cap H_{\delta_1}$ である。$\delta_1\neq\pm\beta$ なので $\beta,\delta_1$ は線形独立で(ルート系 の補題「二つのルートのなす角」)、$H_\beta\cap H_{\delta_1}$ は $H_\beta$ の真の部分空間であり、$H_\beta$ の空でない開集合を含まない。よって $H_\beta$ は壁でない。負のルート $-\beta$ については $H_{-\beta}=H_\beta$ である。壁の枚数は $|\Delta|=\dim V$ である。$\square$

$A_2$ 型では、正ルート $e_1-e_3=(e_1-e_2)+(e_2-e_3)$ の超平面は基本部屋の閉包と原点でしか交わらず、壁にならない(ex-weyl-chamber-a)。

主定理:Weyl 群の作用

以下、基 $\Delta$ を一つ固定し、$R^+:=R^+(\Delta)$、$C:=C(\Delta)$ とする。$w\in W$ の長さ $\ell(w)$ は、$w$ を単純鏡映 $s_\alpha$($\alpha\in\Delta$)の積で書くときの最短の長さである(ルート系 の定義「Weyl群の長さ関数」)。$w\in W$ に対し、$w$ が負のルートに写す正ルートの集合を
$$ R(w):=\{\beta\in R^+\mid w(\beta)\in-R^+\} $$
とおく。次の 2 つの事実を ルート系 の記事から使う。

  • $\ell(w)=|R(w)|$(同記事の定理「簡約表示による負に写る正ルートの記述」)。
  • $\alpha\in\Delta$ について、$w(\alpha)\in-R^+$ なら $\ell(ws_\alpha)=\ell(w)-1$(同記事の系「長さの増減の判定」)。
    $x\in V$ に対し、$x$ を含む壁の単純鏡映が生成する部分群を
    $$ W_x':=\langle s_\alpha\mid\alpha\in\Delta,\ (\alpha,x)=0\rangle $$
    と書く。これは 放物型部分群(Coxeter群) の意味の放物型部分群である。
Weyl群と部屋
  1. $w\in W$ と部屋 $D$ について $wD$ は部屋で、$R^+(wD)=w(R^+(D))$ である。$W$ は部屋の全体に単純推移的に作用する。とくに部屋の個数は $|W|$ に等しい。
  2. $w\in W$ について、$C$ と $wC$ を隔てる超平面は $H_\beta$($\beta\in R(w^{-1})$)であり、その枚数は $\ell(w)$ に等しい。
  3. $x,y\in\overline{C}$、$w\in W$、$wx=y$ ならば、$x=y$ かつ $w\in W_x'$ である。また、どの $x\in V$ についても $wx\in\overline{C}$ となる $w\in W$ がある。したがって $\overline{C}$ は各 $W$ 軌道とちょうど 1 点で交わり、$x\in\overline{C}$ の安定化群は $W_x'$ である。

1:$w$ は $V$ の線形な等長写像で $R$ を保つ(ルート系 の補題「Weyl群の有限性」)。$\beta\in R$ について $w(H_\beta)=H_{w(\beta)}$ なので、$w$ は $V^{\circ}$ をそれ自身に写す同相写像であり、連結成分を連結成分に写す。$x\in D$ について $R^+(wx)=w(R^+(x))$ である(同記事の補題「正則ベクトルと正系の性質」の 3)。よって prop-weyl-chamber-describe の 3 の全単射 $D\mapsto R^+(D)$ は $W$ の作用と両立する。$W$ は正系の全体に単純推移的に作用する(同記事の命題「Weyl群の正系への推移性」と系「Weyl群の単純推移性」)ので、部屋の全体にも単純推移的に作用する。
2:$x,x'\in C$ とし、$y:=wx'\in wC$ とおく。$\beta\in R^+$ について $(\beta,x)>0$ である。一方 $(\beta,y)=(w^{-1}(\beta),x')$ であり、$x'\in C$ は $R^+(x')=R^+$ を満たすので、$(\beta,y)<0$ は $w^{-1}(\beta)\in-R^+$、すなわち $\beta\in R(w^{-1})$ と同値である。よって $C$ と $wC$ を隔てる超平面は $H_\beta$($\beta\in R(w^{-1})$)で、異なる正ルートは異なる超平面を与える((RS4))から、その枚数は $|R(w^{-1})|=\ell(w^{-1})=\ell(w)$ である。
3:前半を $\ell(w)$ についての帰納法で示す。$\ell(w)=0$ なら $w=1$ で明らかである。$\ell(w)\ge1$ とする。すべての $\alpha\in\Delta$ について $w(\alpha)\in R^+$ なら、各 $\beta\in R^+$ は $\Delta$ の元の $0$ 以上の係数の線形結合なので $w(\beta)$ の $\Delta$ に関する係数はすべて $0$ 以上となり、$w(\beta)\in R^+$、$R(w)=\emptyset$、$\ell(w)=0$ となって矛盾する。よって $w(\alpha)\in-R^+$ となる $\alpha\in\Delta$ がある。$y\in\overline{C}$ で $w(\alpha)$ は $\Delta$ の元の $0$ 以下の係数の線形結合なので、thm-weyl-chamber-shape の 2 により $(y,w(\alpha))\le0$ である。一方 $w$ は内積を保つので $(y,w(\alpha))=(wx,w(\alpha))=(x,\alpha)\ge0$ である。よって $(x,\alpha)=0$、$s_\alpha x=x$ であり、$s_\alpha\in W_x'$ である。$w':=ws_\alpha$ は $w'x=y$ と $\ell(w')=\ell(w)-1$ を満たすので、帰納法の仮定から $x=y$、$w'\in W_x'$ であり、$w=w's_\alpha\in W_x'$ である。
後半:$v\in C$ を一つとる。$W$ は有限なので(ルート系 の補題「Weyl群の有限性」)、$(wx,v)$ を最大にする $w\in W$ がある。$(wx,\alpha)<0$ となる $\alpha\in\Delta$ があれば、
$$ (s_\alpha wx,v)=(wx,v)-\frac{2(wx,\alpha)}{(\alpha,\alpha)}(\alpha,v)>(wx,v) $$
($(\alpha,v)>0$ による)となって最大性に反する。よって $wx\in\overline{C}$ である(thm-weyl-chamber-shape の 2)。
最後の主張:$x\in\overline{C}$ と $wx=x$ について前半から $w\in W_x'$ であり、逆に $W_x'$ の生成元は $x$ を固定する。$\square$

3 の後半の証明は、点 $x$ の軌道の中で「$v$ の方向にいちばん進んだ点」を選ぶと、それが基本部屋の閉包に入ることを示している。$A_{n-1}$ 型ではこれは、ベクトルの座標を大きい順に並べ替える操作にあたる(ex-weyl-chamber-a)。3 は、基本領域 の言葉では $\overline{C}$ が $W$ の作用の強い基本領域(各軌道とちょうど 1 点で交わる閉集合)であることを述べている(Dav07 Lemma 6.6.8・Corollary 6.6.9、pp. 90–91 に、有限鏡映群の一般の場合の証明がある)。

最長元と反対の部屋

$-C$ は部屋であり、$w_0C=-C$ となる $w_0\in W$ がただ一つある。$w_0$ は $w_0(R^+)=-R^+$、$\ell(w_0)=|R^+|$、$w_0^2=1$ を満たし、$W$ の元のうち長さが最大のものはこの $w_0$ だけである。さらに $-w_0$ は $\Delta$ をそれ自身に写す。

要点:$-1$ も部屋を部屋に写すことと、thm-weyl-chamber-main の単純推移性から従う。

詳しい証明を開く

$x\mapsto-x$ は $V^{\circ}$ を保つ同相写像なので $-C$ は部屋で、thm-weyl-chamber-main の 1 により $w_0$ がただ一つある。$R^+(-C)=-R^+$ なので $w_0(R^+)=-R^+$、$R(w_0)=R^+$、$\ell(w_0)=|R^+|$ である。どの $w$ も $\ell(w)=|R(w)|\le|R^+|$ で、等号なら $R(w)=R^+$、$w(R^+)=-R^+=R^+(-C)$ となり単純推移性から $w=w_0$ である。$w_0^2C=w_0(-C)=-w_0C=C$ なので $w_0^2=1$ である。$-w_0$ は $R$ を保つ線形な等長写像で $C$ を $C$ に写すので $R^+$ を保ち、$R^+$ に含まれる基 $\Delta$($R^+$ の二つの元の和として書けない元の全体、ルート系 の定理「正系と基の一対一対応」)を保つ。$\square$

例

$A_{n-1}$ 型:座標の大小の並び

ルート系 の例「$A_{n-1}$ 型」のとおり、$V=\{x\in\mathbb{R}^n\mid x_1+\cdots+x_n=0\}$、$R=\{e_i-e_j\mid i\neq j\}$、$\Delta=\{e_i-e_{i+1}\mid1\le i\le n-1\}$ とし、$W\cong S_n$ を座標の置換で作用させる($\sigma\in S_n$ は $e_i$ を $e_{\sigma(i)}$ に写すので、$(\sigma x)_{\sigma(i)}=x_i$)。

  • $H_{e_i-e_j}$ は $x_i=x_j$ であり、正則ベクトルは座標がすべて異なるベクトルである。基本部屋は $C=\{x_1>x_2>\cdots>x_n\}$、その閉包は $\{x_1\ge\cdots\ge x_n\}$ である。
  • $\sigma C=\{y\mid y_{\sigma(1)}>y_{\sigma(2)}>\cdots>y_{\sigma(n)}\}$ であり、部屋は座標の大小の並び方と一対一に対応する。部屋は $n!$ 個で $|S_n|$ に等しい(thm-weyl-chamber-main の 1)。
  • $C$ と $\sigma C$ を隔てるのは、$i< j$ かつ $\sigma^{-1}(i)>\sigma^{-1}(j)$ となる $x_i=x_j$ である。その個数は $\sigma^{-1}$ の転倒数、すなわち $\sigma$ の転倒数で、主定理の 2 は「長さ=転倒数」を与える(有限鏡映群 の例「座標の置換 $A_{n-1}$」と同じ結論)。
  • 主定理の 3 は、ベクトルの座標を大きい順に並べ替えた形がただ一つであることにあたる。$x\in\overline{C}$ の座標が $x_1=\cdots=x_{n_1}>x_{n_1+1}=\cdots=x_{n_1+n_2}>\cdots$ と $n_1,n_2,\dots$ 個ずつ等しいとき、安定化群は等しい座標の区画の中での置換の全体 $S_{n_1}\times S_{n_2}\times\cdots$ であり、隣接互換 $s_{e_i-e_{i+1}}$($x_i=x_{i+1}$)で生成される。
  • $n=3$ のとき、平面 $V$ は 3 本の直線 $x_1=x_2$、$x_2=x_3$、$x_1=x_3$ で 6 つの扇形に分かれる。$C$ の壁は $x_1=x_2$ と $x_2=x_3$ で、$x_1=x_3$ と $\overline{C}$ の共通部分は $x_1=x_2=x_3$、すなわち原点だけである。
  • 最長元 $w_0$ は $i\mapsto n+1-i$ で、$-w_0$ は $e_i-e_{i+1}$ を $e_{n-i}-e_{n+1-i}$ に写す(cor-weyl-chamber-longest)。
$B_2$ 型

$V=\mathbb{R}^2$、$R=\{\pm e_1,\pm e_2,\pm e_1\pm e_2\}$、$\Delta=\{e_1-e_2,\ e_2\}$ とする(ルート系 の例「$B_{n}$ 型」)。超平面は $x_1=0$、$x_2=0$、$x_1=x_2$、$x_1=-x_2$ の 4 本で、平面を中心角 $\pi/4$ の 8 つの扇形に分ける。部屋の個数 $8$ は $|W|=2^2\cdot2!$ に等しい。基本部屋は $C=\{x_1>x_2>0\}$ で、壁は $x_1=x_2$ と $x_2=0$ である。$-1$ は符号付き置換として $W$ に属し、$-C$ に $C$ を写すので $w_0=-1$、$\ell(w_0)=|R^+|=4$ であり、$-w_0=1$ は $\Delta$ の各元を固定する。

反例:条件を外すと

thm-weyl-chamber-main の条件を 1 つずつ外す。どの行も $R$ は $A_2$ 型(ex-weyl-chamber-a の $n=3$)とする。

外す条件反例成り立たなくなること
作用する群が Weyl 群 $W$$W$ と $-1$ が生成する位数 $12$ の群 $\widetilde W$部屋の全体に単純推移的に作用する(1)
部屋を $\overline{C}$ と閉包でとる開いた部屋 $C$ そのものどの軌道とも交わる(3)
超平面をすべての $\alpha\in R$ についてとる単純ルートの $H_\alpha$($\alpha\in\Delta$)の 2 本だけを除いた補集合の連結成分連結成分の個数が $\lvert W\rvert$ に等しい(1)
反例の確かめ

各行は左の列の条件だけを替えている。

確かめを開く

1 行目:$W\cong S_3$ の平面 $V$ への作用では、回転は位数 $3$ のものと恒等写像だけなので $-1\notin W$ であり、$-1$ は $W$ の元と可換で $R$ を保つから $\widetilde W=W\times\{\pm1\}$ は位数 $12$ で部屋の全体を置換する。$-w_0\in\widetilde W$ は $C$ を $C$ に写すが(cor-weyl-chamber-longest)、$w_0\neq-1$($w_0$ は鏡映 $s_{e_1-e_3}$)なので $-w_0\neq1$ である。部屋は $6$ 個で $\lvert\widetilde W\rvert=12$ と一致しない。

2 行目:$x=(1,1,-2)\in\overline{C}$ は $x_1=x_2$ を満たし、その軌道の点はどれも 2 つの座標が等しいので正則でなく、$C$ の点でない。

3 行目:$x_1=x_2$ と $x_2=x_3$ の 2 本の直線は平面 $V$ を 4 つの領域に分け、$4\neq6=\lvert W\rvert$ である。$s_{e_1-e_2}$ は直線 $x_2=x_3$ を直線 $x_1=x_3$ に写すので、$W$ はこれらの領域の全体を保たない。

補足

  • 半単純 Lie 環の表現論では、Cartan 部分環の双対の実形を内積で $V$ と見ると、最高ウェイト の定義「整ウェイトと支配的整ウェイト」の支配的という条件は、ウェイトが基本部屋の閉包に入ることにあたる。主定理の 3 は、どのウェイトも Weyl 群でただ一つの支配的なウェイトに移せることを意味する。
  • $\Theta\subset\Delta$ について $F_\Theta:=\{x\in\overline{C}\mid(\alpha,x)=0\ (\alpha\in\Theta),\ (\alpha,x)>0\ (\alpha\in\Delta\setminus\Theta)\}$ とおくと、thm-weyl-chamber-shape の 2 により $\overline{C}$ はこれらの互いに交わらない合併であり、主定理の 3 により $F_\Theta$ の点の安定化群はどれも放物型部分群 $\langle s_\alpha\mid\alpha\in\Theta\rangle$ である。この見方は、Weyl 群の Coxeter複体 を鏡映超平面による球面の分割として実現するときの基礎になる(有限鏡映群 の節「分類と Coxeter 群との対応」)。

関連項目

参考文献

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