集積点(accumulation point)とは、集合 $A$ に対して、その点のどの近傍にも $A$ の自分以外の点が含まれるような点のことである。たとえば $\{1,\frac{1}{2},\frac{1}{3},\dots\}$ の集積点は $0$ だけで、$0$ はこの集合に属さない。集合の閉包はその集合と集積点全体の和に等しく、集合が閉集合であることは集積点をすべて含むことと同値である。$\mathbb{R}^n$ の有界な無限部分集合はつねに集積点をもつが(集合の形の Bolzano–Weierstrass の定理)、有界でない $\mathbb{Z}$ は集積点をもたない。
数直線上に集合 $A=\{1,\tfrac12,\tfrac13,\tfrac14,\dots\}$ の点を打つと、点は $0$ に向かっていくらでも詰まっていく。$0$ のまわりにどれほど小さい区間 $(-\varepsilon,\varepsilon)$ をとっても、$\tfrac1n<\varepsilon$ となる $n$ をとれば、点 $\tfrac1n$ がその区間に入る。このように「どれほど近くにも集合の(自分以外の)点がある」点を、その集合の 集積点 という。$0$ 自身は $A$ に属さないことに注意する。逆に $A$ の点 $\tfrac12$ は、区間 $(\tfrac12-\tfrac1{10},\tfrac12+\tfrac1{10})$ の中に $A$ の点が $\tfrac12$ しかないので、集積点でない。ほかの例では、区間 $[0,1]$ に含まれる有理数全体の集積点は $[0,1]$ のすべての点であり、整数全体 $\mathbb{Z}$ には集積点が 1 つもない。
集積点は、集合の点が「いくらでも近くに集まってくる場所」を表す。関数の極限 $\lim_{x\to c}f(x)$ は定義域の集積点 $c$ で考えるものであり、集合が閉じているかどうかは集積点をすべて含むかどうかで判定できる。本記事では、集積点を実数直線・距離空間・位相空間の順に定義し、閉包・閉集合との関係、距離空間での点列による特徴づけ、有界な無限集合が集積点をもつこと(集合の形の Bolzano–Weierstrass の定理)を証明する。
$A\subset\mathbb{R}$ を実数の部分集合とし、$x\in\mathbb{R}$ とする。任意の $\varepsilon>0$ について
$$
(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\cap(A\setminus\{x\})\neq\emptyset
$$
が成り立つとき、すなわち $|y-x|<\varepsilon$ かつ $y\neq x$ を満たす $y\in A$ がつねに存在するとき、$x$ を $A$ の 集積点(accumulation point)という。
$x$ は $A$ に属していても属していなくてもよい。条件の「$y\neq x$」が要点であり、これを外すと $A$ のすべての点が条件を満たしてしまう。この定義は Leb の Definition 3.1.1(p. 113。そこでは cluster point と呼ぶ)と同じである。
同じ定義は、区間 $(x-\varepsilon,x+\varepsilon)$ を開球に取り替えれば距離空間で、開近傍に取り替えれば位相空間でできる。
距離空間 $X$ に距離から定まる位相を入れると、1 と 2 の定義は一致する。$x$ を含む開集合はある開球 $B(x,\varepsilon)$ を含み、開球はそれ自身 $x$ を含む開集合だからである。$\mathbb{R}$ に通常の距離 $|x-y|$ を入れれば、1 は def-accpt-real そのものである($B(x,\varepsilon)=(x-\varepsilon,x+\varepsilon)$)。開集合の代わりに $x$ の近傍($x$ を含む開集合を含む集合)を使っても同じ定義になる。
$a\in A$ が $A$ の孤立点であることは、$A\cap U=\{a\}$ となる開集合 $U$ があることと同じであり、これは $A$ に相対位相を入れた空間で $\{a\}$ が開集合であること、すなわち 離散空間 の記事の定義「点が孤立していること」の意味で $a$ が空間 $A$ の孤立点であることと同じである。
英語では accumulation point のほか、limit point、cluster point も同じ意味で使われる。ただし「点列の集積点」は、点列の値の集合の集積点とは別の概念である(ex-accpt-sequence-values)。
集積点は「集合の点が、自分以外の点として、いくらでも近くに寄ってくる場所」である。$A$ の外にある集積点は、$A$ の点を使って近づくことはできるが $A$ の中にはない「縁」の点であり、$A$ の中にある集積点は、まわりにも $A$ の点がびっしりある点である。孤立点はその反対で、まわりの小さな範囲に仲間がいない点である。数直線や距離空間では、有限集合は点と点の間にすき間があるので集積点をもたず、無限集合でも $\mathbb{Z}$ のように遠くへ散らばっていれば集積点をもたない。有界な範囲に無限個の点を詰め込むと、どこかに点が集まる場所ができる。これが thm-accpt-bolzano-weierstrass である。
1 と 2 で見たように、集積点は集合に属するとは限らず($0\notin A$、$1\notin(0,1)$)、集合の点は集積点とは限らない($\tfrac1n$、$2$)。一般に $A'\subset A$ も $A\subset A'$ も成り立たない。
2 点集合 $X=\{a,b\}$ に密着位相(開集合は $\emptyset$ と $X$ だけ)を入れ、$A=\{b\}$ とする。$a$ を含む開集合は $X$ だけで、これは $a$ と異なる $A$ の点 $b$ を含むので、$a$ は $A$ の集積点である(T1空間 の記事の例「反例:$T_1$ でない空間の集積点」)。距離空間では有限集合は集積点をもたない(cor-accpt-finite)が、この空間は $T_1$ 空間でなく、1 点からなる有限集合 $A$ が集積点をもつ。この例は「有限集合は集積点をもたない」という含意が一般の位相空間では破れることを示す。
位相空間 $X$ の点列 $(x_n)_{n\ge1}$ について、点 $p$ の任意の近傍が無限個の番号 $n$ について $x_n$ を含むとき、$p$ を点列 $(x_n)$ の集積点という(第1可算公理 の記事の命題「点列の集積点は部分列の極限」の用法)。これは値の集合 $S=\{x_n\mid n\ge1\}$ の集積点とは別の概念である。
条件を 1 つ外した反例を表にまとめる。各行の確認は上の反例の箱にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 有界(thm-accpt-bolzano-weierstrass) | $\mathbb{Z}\subset\mathbb{R}$ | 無限集合は集積点をもつ |
| 空間の完備性($\mathbb{R}$ を $\mathbb{Q}$ に替える) | $\sqrt2$ の小数切り捨て全体 $S\subset\mathbb{Q}$ | 有界な無限集合は集積点をもつ |
| $T_1$(距離空間であること) | 密着位相の $\{a,b\}$ と $A=\{b\}$ | 有限集合は集積点をもたない |
| 値の集合をとること(点列の集積点に替える) | $x_n=(-1)^n$ | 点列の集積点は値の集合の集積点である |
$X$ を位相空間、$A\subset X$ とする。
閉包 の記事の命題「触点による特徴づけ」により、$x\in\overline B$ であることは、$x$ を含む任意の開集合 $U$ が $B$ と交わることと同値である。
1:$B=A\setminus\{x\}$ にこの判定を使うと、$x\in\overline{A\setminus\{x\}}$ は「$x$ を含む任意の開集合が $A\setminus\{x\}$ と交わる」ことと同値であり、これは集積点の定義そのものである。
2:$A\subset\overline A$ である。$x\in A'$ なら、$x$ を含む任意の開集合は $A\setminus\{x\}\subset A$ と交わるので、判定により $x\in\overline A$ である。よって $A\cup A'\subset\overline A$ である。逆に $x\in\overline A$ で $x\notin A$ とすると、$A\setminus\{x\}=A$ なので、$x$ を含む任意の開集合は $A\setminus\{x\}$ と交わり、$x\in A'$ である。よって $\overline A\subset A\cup A'$ である。
3:$A$ が閉集合であることは $A=\overline A$ と同値である($\overline A$ は $A$ を含む最小の閉集合)。2 により $\overline A=A\cup A'$ なので、$A=\overline A$ は $A'\subset A$ と同値である。$\square$
2 と 3 は 閉集合 の記事の注意「集積点と境界による言い換え」でも述べる内容であり、1 は Leb の Exercise 7.5.13(p. 295。距離空間の場合)にある。例えば $A=\{\tfrac1n\mid n\ge1\}$ は $A'=\{0\}\not\subset A$ なので閉集合でなく、$\overline A=A\cup\{0\}$ である。$\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}'=\emptyset\subset\mathbb{Z}$ なので $\mathbb{R}$ の閉集合である。
$(X,d)$ を距離空間、$A\subset X$、$x\in X$ とする。次の 3 条件は同値である。
1 ⇒ 3:$r_1:=1$ とし、$a_1\in B(x,r_1)\cap(A\setminus\{x\})$ をとる。$a_1,\dots,a_k$ まで定まったとき、$r_{k+1}:=\min\{\tfrac1{k+1},\,d(a_k,x)\}$ とおく。$a_k\neq x$ なので $r_{k+1}>0$ であり、1 により $B(x,r_{k+1})\cap(A\setminus\{x\})$ は空でないので、その点を $a_{k+1}$ とする。こうして帰納的に点列 $(a_k)$ が定まる。作り方から $d(a_{k+1},x)< r_{k+1}\le d(a_k,x)$ なので、$d(a_k,x)$ は $k$ について真に減少し、項は互いに相異なる。また $0< d(a_k,x)< r_k\le\tfrac1k$ なので $a_k\to x$ である。
3 ⇒ 2:$\varepsilon>0$ とする。$a_k\to x$ なので、ある $K$ があって $k\ge K$ ならば $a_k\in B(x,\varepsilon)$ である。$a_K,a_{K+1},\dots$ は相異なる $A$ の点なので、$B(x,\varepsilon)$ は $A$ の点を無限個含む。
2 ⇒ 1:$B(x,\varepsilon)$ は $A$ の点を無限個含むので、その中には $x$ と異なるものがある。$\square$
1 ⇔ 3 から「項が互いに相異なる」を除いた形は Leb の Proposition 3.1.2(pp. 113–114。実数の場合)と Definition 7.5.14 の後の注意(p. 292。距離空間の場合)にある。条件 3 で「項が $x$ と異なる」を外すと、定数列 $x,x,\dots$ が $x$ に収束するので、$A$ のすべての点が条件を満たしてしまう。
距離空間の有限部分集合は集積点をもたない。
$A$ が有限集合なら、どの開球も $A$ の点を有限個しか含まないので、prop-accpt-metric の条件 2 が成り立たず、どの点も $A$ の集積点でない。$\square$
より一般に、T1空間 の記事の命題「集積点の近傍にある点の個数」は、$T_1$ 空間(1 点集合が閉集合である位相空間。距離空間はこれに含まれる)で prop-accpt-metric の 1 ⇔ 2 と同じことを示している。$T_1$ でない空間では成り立たないことは ex-accpt-non-t1 のとおりである。
距離空間 $X$ の任意の部分集合 $A$ について、導集合 $A'$ は $X$ の閉集合である。
$A'\subset\overline{A'}$ はつねに成り立つので、$\overline{A'}\subset A'$ を示せば $\overline{A'}=A'$ となり、$A'$ は閉集合である。$x\in\overline{A'}$、$\varepsilon>0$ とする。$B(x,\varepsilon)$ は $x$ を含む開集合なので、閉包 の判定により $A'$ の点 $y$ を含む。$\delta:=\varepsilon-d(x,y)>0$ とおくと、三角不等式により $B(y,\delta)\subset B(x,\varepsilon)$ である。$y\in A'$ なので、prop-accpt-metric により $B(y,\delta)$ は $A$ の点を無限個含み、したがって $B(x,\varepsilon)$ も $A$ の点を無限個含む。$\varepsilon$ は任意なので、再び prop-accpt-metric により $x\in A'$ である。$\square$
ex-accpt-non-t1 の空間では $A'=\{a\}$ の閉包が $X$ 全体になるので、この命題も一般の位相空間では成り立たない。$T_1$ 空間では成り立つ(T1空間 の記事の同じ命題の 2)。
$n\ge1$ とする。$n$ 次元 Euclid空間 $\mathbb{R}^n$(通常の距離 $\|x-y\|$ を入れる)の有界な無限部分集合は、$\mathbb{R}^n$ の中に集積点をもつ。とくに実数の有界な無限部分集合は集積点をもつ。
$A\subset\mathbb{R}^n$ を有界な無限集合とする。有界なので、ある $M>0$ について $A\subset Q_0:=[-M,M]^n$ である。
閉立方体の列 $Q_0\supset Q_1\supset Q_2\supset\cdots$ で、$Q_k$ は 1 辺の長さ $2M/2^k$ の閉立方体 $\prod_{i=1}^n[u_k^{(i)},v_k^{(i)}]$ であり、$A\cap Q_k$ が無限集合であるものを帰納的に作る。$Q_0$ はこれを満たす。$Q_k$ が定まったとき、各座標の区間 $[u_k^{(i)},v_k^{(i)}]$ を中点で左半分と右半分に分けると、$Q_k$ は 1 辺の長さが半分の $2^n$ 個の閉立方体の和になる。$A\cap Q_k$ は無限集合であり、有限個の有限集合の和は有限集合なので、この $2^n$ 個のうち少なくとも 1 つ $Q$ について $A\cap Q$ は無限集合である。各座標で左半分を右半分より先に並べる辞書式の順で、そのような $Q$ のうち最初のものを $Q_{k+1}$ とする。選び方は規則で一通りに決まる。
各座標 $i$ について、閉区間の列 $[u_k^{(i)},v_k^{(i)}]$($k=0,1,2,\dots$)は減少しているので、区間 の記事の定理「区間縮小法」により共通の点 $p_i$ がある。$p:=(p_1,\dots,p_n)$ はすべての $Q_k$ に属する。
$p$ が $A$ の集積点であることを示す。$\varepsilon>0$ とし、$\sqrt n\cdot2M/2^k<\varepsilon$ となる $k$ をとる。$q\in Q_k$ なら、$p$ と $q$ はともに $Q_k$ に属するので各座標で $|q_i-p_i|\le2M/2^k$ であり、
$$
\|q-p\|=\Bigl(\sum_{i=1}^n(q_i-p_i)^2\Bigr)^{1/2}\le\sqrt n\cdot\frac{2M}{2^k}<\varepsilon
$$
である。よって $Q_k\subset B(p,\varepsilon)$ であり、$B(p,\varepsilon)$ は無限集合 $A\cap Q_k$ を含むので $A$ の点を無限個含む。prop-accpt-metric により $p$ は $A$ の集積点である。$\square$
$n=1$ の場合は Leb の Exercise 2.3.9(p. 81)で、点列の形の Bolzano–Weierstrass の定理(同書 Theorem 2.3.8、p. 78。点列 の記事の系「有界列は収束する部分列をもつ」)の「集合の形」として述べられている。点列の形から導くには、無限集合から相異なる点の列を取り出す必要がある。上の証明はその代わりに、無限個の点を含む小立方体を決まった規則で選んでいる。
仮定はどちらも外せない。$\mathbb{Z}$ は有界でない無限集合で集積点をもたず、$\mathbb{Q}$ の中では有界な無限集合が集積点をもたないことがある(ex-accpt-bw-counterexamples)。証明では、有界性を $Q_0$ をとるところで、$\mathbb{R}$ の完備性を区間縮小法のところで使っている。
def-accpt-general により、集合 $A$ の点は、$A$ の集積点であるか $A$ の孤立点であるかのちょうど一方である。したがって $A$ は $A\cap A'$ と孤立点全体の集合との交わらない和に分かれる。両極端として、次の 2 種類の集合がある。
$S\subset\mathbb{R}$、$f\colon S\to\mathbb{R}$、$c\in\mathbb{R}$ とする。$f(x)\to L$($x\to c$)とは、任意の $\varepsilon>0$ に対し $\delta>0$ があって、$x\in S\setminus\{c\}$ かつ $|x-c|<\delta$ ならば $|f(x)-L|<\varepsilon$ となることをいう。Leb の Definition 3.1.3(p. 114)はこれを $c$ が $S$ の集積点である場合に定めている。$c$ が $S$ の集積点でなければ、ある $\delta>0$ について $S\setminus\{c\}$ の点で $|x-c|<\delta$ を満たすものがないので、上の条件はどの $L$ についても空虚に成り立ち、極限が一つに定まらない(同書 Exercise 3.1.15、p. 121)。$c$ が集積点なら極限は高々 1 つである(同書 Proposition 3.1.4、p. 114)。また $c\in S$ が $S$ の孤立点なら、$S$ 上のどの関数も $c$ で連続である(同書 Proposition 3.2.2、p. 122)。
複素解析の 一致の定理 は、領域上の 2 つの正則関数が一致する点の集合がその領域に集積点をもてば、2 つの関数は全体で一致することを述べる。ここでも「集積点をもつ」という条件は、一致する点が 1 点に集まってくることを表している。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する