確率密度関数(probability density function)とは、実数値の確率変数 $X$ について、すべての Borel 集合 $B$ で $P(X\in B)=\int_Bf(x)\,dx$ となる $0$ 以上の Borel 可測関数 $f$ のことであり、確率を密度のグラフの下の面積として与える。密度であることは分布関数が $\int_{-\infty}^xf$ に等しいことだけで確かめられ、密度はほとんど至る所で一意に決まる。密度が存在することは、分布が Lebesgue 測度に対して絶対連続であること、分布関数が絶対連続関数であることと同値で、このとき分布関数の導関数が密度になる。期待値は $E[g(X)]=\int g(x)f(x)\,dx$ で計算でき、単調な変換による密度の変化や、独立な確率変数の和の密度が畳み込みになることもこの形から導かれる。
前提知識: 確率空間, 確率変数, Lebesgue積分
確率密度関数は、実数値の確率変数 $X$ について、$X$ が集合 $B$ に入る確率を
$$
P(X\in B)=\int_Bf(x)\,dx
$$
と積分で表す $0$ 以上の関数 $f$ である。確率が「密度のグラフの下の面積」で与えられるので、とびとびの値をとる確率変数の確率関数 $P(X=x)$ に当たる役割を、連続的な値をとる確率変数では $f$ が担う。正規分布・指数分布・$t$ 分布・Cauchy 分布など、統計で使う連続的な分布の多くは密度で与えられる。
高校数学の 確率密度関数と連続型確率変数 では、区間の確率を Riemann 積分で与える密度を扱った。大学では積分を Lebesgue積分 とし、区間だけでなくすべての Borel 集合 $B$ について上の式を求める。この記事では、分布関数による言い換え、密度がほとんど至る所で一意に決まること、密度が存在する条件、期待値の公式、変数変換、独立な確率変数の和の密度(畳み込み)を証明する。
以下、$(\Omega,\mathcal{F},P)$ を確率空間、$\lambda$ を $\mathbb{R}$ 上の Lebesgue測度、$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ を Borel集合 全体とする。$\int_Bf(x)\,dx$ は $\lambda$ による Lebesgue 積分 $\int_Bf\,d\lambda$ を表す。実数値の確率変数 $X$ の分布とは、$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ 上の確率測度 $P_X(B):=P(X\in B)$ のことであり、$F_X(x):=P(X\le x)$ をその分布関数という(確率変数 の定義「分布と分布関数」)。
$X$ を実数値の確率変数とする。Borel 可測な関数 $f\colon\mathbb{R}\to[0,\infty)$ が、すべての $B\in\mathcal{B}(\mathbb{R})$ について
$$
P(X\in B)=\int_Bf(x)\,dx
$$
を満たすとき、$f$ を $X$ の(または分布 $P_X$ の)確率密度関数(probability density function)、略して密度という。このような $f$ があるとき、$X$ は密度をもつという。
同様に、$\mathbb{R}^d$ に値をとる確率ベクトル $(X_1,\dots,X_d)$ について、Borel 可測な $f\colon\mathbb{R}^d\to[0,\infty)$ がすべての Borel 集合 $B\subset\mathbb{R}^d$ について $P((X_1,\dots,X_d)\in B)=\int_Bf\,d\lambda_d$ を満たすとき($\lambda_d$ は $d$ 次元 Lebesgue 測度)、$f$ を同時密度という。
$B=\mathbb{R}$ とおくと $\int_{\mathbb{R}}f(x)\,dx=1$ である。逆に、Borel 可測な $f\ge0$ で $\int f=1$ となるものは、$\mu(B):=\int_Bf$ によって $\mathbb{R}$ 上の確率測度を定める(Radon–Nikodymの定理 の命題「密度で定まる測度」)。このとき $f$ を確率測度 $\mu$ の密度ともいう。
密度の値 $f(x)$ は確率ではない。$[0,\frac12]$ 上で $2$、それ以外で $0$ となる関数は密度であり、値 $2$ は $1$ を超える。また、密度をもつ $X$ では $P(X=x)=\int_{\{x\}}f=0$ がすべての $x$ で成り立つ($\lambda(\{x\})=0$ による)。
密度の定義はすべての Borel 集合についての条件だが、実際に確かめるのは半直線 $(-\infty,x]$ についての条件だけでよい。
$X$ を実数値の確率変数、$f\colon\mathbb{R}\to[0,\infty)$ を Borel 可測関数とする。次は同値である。
1 ⇒ 2。 $B=(-\infty,x]$ とおけばよい。
2 ⇒ 3。 $P(a< X\le b)=F_X(b)-F_X(a)$ であり、$\int_{-\infty}^af\le F_X(a)\le1$ は有限なので、右辺は $\int_{-\infty}^bf-\int_{-\infty}^af=\int_{(a,b]}f$ に等しい。
3 ⇒ 1。 3 で $a=-n$ とし $n\to\infty$ とすると、左辺は 確率空間 の命題「確率の連続性」により $F_X(b)$ に、右辺は 単調収束定理 により $\int_{-\infty}^bf$ に近づく。さらに $b\to\infty$ として $\int_{\mathbb{R}}f=1$ を得る。よって $\mu(B):=\int_Bf$ は $\mathcal{B}(\mathbb{R})$ 上の確率測度である(Radon–Nikodymの定理 の命題「密度で定まる測度」)。2 つの確率測度 $P_X$ と $\mu$ は、半直線の族 $\mathcal{P}:=\{(-\infty,x]\mid x\in\mathbb{R}\}$ の上で一致する。$\mathcal{P}$ は共通部分について閉じており($(-\infty,x]\cap(-\infty,y]=(-\infty,\min\{x,y\}]$)、$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ を生成する。よって Dynkinのπ-λ定理 の定理「π系の上で一致する測度の一意性」により $P_X=\mu$ であり、これは 1 そのものである。$\square$
とくに、分布関数が同じ 2 つの確率変数は同じ分布をもつので、密度をもつかどうか、どの関数が密度かは分布関数だけで決まる。
$f$ を $X$ の密度とし、$g\colon\mathbb{R}\to[0,\infty)$ を Borel 可測関数とする。$g$ が $X$ の密度であることと、$f=g$ が $\lambda$ についてほとんど至る所で成り立つことは同値である。
$f=g$ がほとんど至る所で成り立てば、すべての Borel 集合 $B$ で $\int_Bf=\int_Bg$ なので、$g$ も密度である。
逆に $g$ も密度であるとする。$n\ge1$ について $B_n:=\{x\mid f(x)>g(x)\}\cap[-n,n]$ とおく。$B_n$ は Borel 集合で、$\int_{B_n}f=P(X\in B_n)=\int_{B_n}g\le1$ はどちらも有限なので、$\int_{B_n}(f-g)=0$ である。$B_n$ の上で $f-g>0$ だから、$\lambda(B_n)=0$ である($\lambda(B_n)>0$ なら、ある $k$ で $\lambda(B_n\cap\{f-g>1/k\})>0$ となり、積分は $0$ より大きくなる)。$n\to\infty$ として $\lambda(\{f>g\})=0$、$f$ と $g$ を入れ替えて $\lambda(\{f< g\})=0$ を得る。$\square$
したがって密度は「関数」としてではなく「ほとんど至る所で等しい関数の類」として決まる。有限個の点や可算個の点で値を変えても密度のままであり、確率密度関数と連続型確率変数 の一様分布の密度で端点の値を $0$ にしても $1$ にしてもよいのはこのためである。
1 点の確率がすべて $0$ でも、密度をもつとは限らない(反例の表の 1 行目)。密度をもつことは、分布が Lebesgue 測度に対して絶対連続であること、分布関数が絶対連続関数であることと同じである。
$X$ を実数値の確率変数とする。次は同値である。
要点:1 ⇔ 2 は Radon–Nikodymの定理、1 ⇔ 3 は 絶対連続関数 の定理「絶対連続関数と不定積分」による。
1 ⇒ 2。 $\lambda(N)=0$ なら $P(X\in N)=\int_Nf=0$ である。
2 ⇒ 1。 $\lambda$ は σ-有限、$P_X$ は有限なので、Radon–Nikodymの定理 の定理「Radon–Nikodymの定理」の 1 により、可測関数 $h\colon\mathbb{R}\to[0,\infty)$ で $P_X(B)=\int_Bh\,d\lambda$ がすべての Borel 集合 $B$ で成り立つものがある。$h$ は Lebesgue 可測だが、Borel 可測な関数で $h$ とほとんど至る所で等しいものに取り替えても積分は変わらないので、Borel 可測としてよい。
1 ⇒ 3。 thm-pdf-cdf により $F_X(x)-F_X(a)=\int_a^xf$($a\le x\le b$)であり、$f$ は $[a,b]$ 上で可積分だから、絶対連続関数 の定理「絶対連続関数と不定積分」(2 ⇒ 1)により $F_X$ は $[a,b]$ 上で絶対連続である。
3 ⇒ 1 と最後の主張。 同じ定理(1 ⇒ 2 と最後の段落)により、各 $[-n,n]$ の上で $F_X$ はほとんど至る所で微分可能で、$-n\le x\le n$ について $F_X(x)=F_X(-n)+\int_{-n}^xF_X'(t)\,dt$ である。$n$ を動かしたときの例外集合の和も零集合なので、$F_X$ は $\mathbb{R}$ のほとんど至る所で微分可能である。$F_X$ は非減少なので、微分可能な点では $F_X'\ge0$ であり、$f:=F_X'$(微分可能でない点では $0$)は $0$ 以上の Borel 可測関数としてよい。$x$ を固定して $n\to\infty$ とすると、$F_X(-n)\to0$ と 単調収束定理 により $F_X(x)=\int_{-\infty}^xf$ を得る。thm-pdf-cdf により $f$ は密度である。$\square$
実際の計算では、次の形がよく使われる。
有限個の点 $t_1< \cdots< t_m$ があり、$F_X$ は $\mathbb{R}$ 上で連続、各開区間 $(-\infty,t_1),(t_1,t_2),\dots,(t_m,\infty)$ の上で連続微分可能であるとする。このとき、$t_i$ 以外では $F_X'$、$t_i$ では $0$ とおいた関数 $f$ は $X$ の密度である。
要点:各開区間の内側の閉区間で微分積分学の基本定理を使い、端点へは $F_X$ の連続性と単調収束定理で延ばす。
$t_0:=-\infty$、$t_{m+1}:=\infty$ とする。$F_X$ は非減少なので、各区間 $(t_{i},t_{i+1})$ の上で $f=F_X'\ge0$ である。$t_i< c< d< t_{i+1}$ なら、$F_X'$ は $[c,d]$ 上で連続なので、微分積分学の基本定理 により $F_X(d)-F_X(c)=\int_c^df$ である。$c\downarrow t_i$、$d\uparrow t_{i+1}$ とすると、左辺は $F_X$ の連続性($t_0=-\infty$ では $F_X(c)\to0$、$t_{m+1}=\infty$ では $F_X(d)\to1$)により $F_X(t_{i+1})-F_X(t_i)$ に、右辺は 単調収束定理 により $\int_{t_i}^{t_{i+1}}f$ に近づく($F_X(\pm\infty)$ はそれぞれ $1,0$ と読む)。$x\in(t_j,t_{j+1}]$ について、$i< j$ の区間と $(t_j,x]$ でこれを足し合わせると $F_X(x)=\int_{-\infty}^xf$ となる。thm-pdf-cdf により $f$ は密度である。$\square$
確率密度関数と連続型確率変数 の定理「分布関数と密度関数」の 2 は、この系で $m=2$、$t_1=\alpha$、$t_2=\beta$ とし、$F_X$ が $[t_1,t_2]$ の外で定数である場合にあたる($t_1,t_2$ での $f$ の値の決め方は違うが、2 点での値は積分を変えない)。逆向きの関係として、$f$ が点 $x$ で連続なら $F_X'(x)=f(x)$、すなわち $f(x)=\lim_{h\to0}P(x< X\le x+h)/h$ である(微分積分学の基本定理)。
密度をもつ確率変数の関数の期待値は、確率空間 $\Omega$ に戻らずに $\mathbb{R}$ 上の積分で計算できる。
$X$ が密度 $f$ をもち、$g\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が Borel 可測関数であるとする。
段 1(指示関数)。 $g=\mathbf{1}_B$($B$ は Borel 集合)なら、$E[\mathbf{1}_B(X)]=P(X\in B)=\int_Bf=\int\mathbf{1}_Bf$ であり、これは密度の定義そのものである。
段 2(単関数)。 $g=\sum_{k=1}^mc_k\mathbf{1}_{B_k}$($c_k\ge0$)なら、期待値と積分の線形性と段 1 により両辺は $\sum_kc_kP(X\in B_k)$ に等しい。
段 3($0$ 以上の関数)。 $g\ge0$ なら、$0$ 以上の Borel 可測な単関数の増加列 $g_n\uparrow g$ がとれる。$g_n(X)\uparrow g(X)$、$g_nf\uparrow gf$ なので、両辺に 単調収束定理 を使い、段 2 から 1 を得る。
段 4(一般の関数)。 $g=g^+-g^-$($g^\pm\ge0$)と分ける。1 を $\lvert g\rvert$ に使うと前半の同値が分かり、そのとき 1 を $g^+$ と $g^-$ に使って引けば後半を得る。$\square$
とくに $\int\lvert x\rvert f(x)\,dx< \infty$ のとき $E[X]=\int xf(x)\,dx$、$\int x^2f(x)\,dx< \infty$ のとき $V[X]=\int(x-E[X])^2f(x)\,dx$ である。確率密度関数と連続型確率変数 の定義「連続型確率変数の期待値と分散」は、この公式を定義として先に置いたものである。この 4 段の論法は Dur19 Theorem 1.6.9(p. 32)の証明と同じである。
$X$ が密度 $f$ をもち、開区間 $I$ について $P(X\in I)=1$ であるとする。$\varphi\colon I\to\mathbb{R}$ は $I$ 上で連続微分可能で、すべての $x\in I$ について $\varphi'(x)\ne0$ を満たすとする。このとき $J:=\varphi(I)$ は開区間で、$\varphi\colon I\to J$ は全単射である。$\psi:=\varphi^{-1}$ とおく。このとき $Y:=\varphi(X)$ は密度
$$
f_Y(y)=\begin{cases}f(\psi(y))\,\lvert\psi'(y)\rvert & (y\in J)\\ 0 & (y\notin J)\end{cases}
$$
をもつ。
要点:$\varphi$ は狭義単調なので、$Y\le y$ を $X$ の範囲に読み替えて分布関数を計算し、Lebesgue 積分の置換 $x=\psi(u)$ を、区間の上で一致する 2 つの測度が一致することから確かめる。
$\varphi'$ は $I$ 上で連続で $0$ にならないので、中間値の定理により $\varphi'>0$ が $I$ 全体で成り立つか、$\varphi'< 0$ が $I$ 全体で成り立つ。よって $\varphi$ は狭義単調で連続であり、$J=\varphi(I)$ は開区間、$\varphi\colon I\to J$ は全単射である。$\psi$ も $J$ 上で連続微分可能で、$\psi'(y)=1/\varphi'(\psi(y))$ である(逆関数の微分)。$\varphi'>0$ の場合を示す($\varphi'< 0$ の場合は不等号の向きを変えれば同じである)。$J=(\alpha,\beta)$($-\infty\le\alpha< \beta\le\infty$)と書く。
$y\in J$ を固定する。$\alpha< c< y$ について、$X\in I$ のもとで $c< Y\le y$ と $\psi(c)< X\le\psi(y)$ は同値なので、thm-pdf-cdf と、$f$ が $[\psi(c),\psi(y)]$ の上で可積分であることから$$P(c< Y\le y)=\int_{\psi(c)}^{\psi(y)}f(x)\,dx=\int_c^yf(\psi(u))\,\psi'(u)\,du$$である。2 つめの等号は置換 $x=\psi(u)$ である。$f$ が連続とは限らないので、この置換は Lebesgue 積分の置換として、次のように確かめる。区間 $(c,y]$ の Borel 集合の上の 2 つの有限測度 $\mu_1(A):=\lambda(\psi(A))$ と $\mu_2(A):=\int_A\psi'(u)\,du$ は、$A=(s,t]$($c\le s< t\le y$)のとき、微分積分学の基本定理 によってどちらも $\psi(t)-\psi(s)$ に等しい。よって Dynkinのπ-λ定理 の定理「π系の上で一致する測度の一意性」により $\mu_1=\mu_2$ であり、$\int_{\psi((c,y])}h(x)\,dx=\int_{(c,y]}h(\psi(u))\psi'(u)\,du$ が $h=\mathbf{1}_B$ について成り立つ。thm-pdf-expectation の証明と同じく単関数と 単調収束定理 によって、$0$ 以上の Borel 可測関数 $h=f$ についても成り立つ。
$c\downarrow\alpha$ とすると、左辺は $P(Y\le y)$ に($Y\in J$ が確率 $1$ で成り立つことによる)、右辺は単調収束定理により $\int_\alpha^yf(\psi(u))\psi'(u)\,du$ に近づく。$y\le\alpha$ では $P(Y\le y)=0$、$y\ge\beta$ では $1$ である。よって $F_Y(y)=\int_{-\infty}^yf_Y$ がすべての $y$ で成り立ち、thm-pdf-cdf により $f_Y$ は $Y$ の密度である。$\square$
$\varphi(x)=ax+b$($a\ne0$)なら、$aX+b$ は密度 $\frac1{\lvert a\rvert}f\bigl(\frac{y-b}a\bigr)$ をもつ。$\varphi$ が単調でないときは、逆像の各点からの寄与を足す。たとえば $Y=X^2$ は、$y>0$ について $P(Y\le y)=F_X(\sqrt y)-F_X(-\sqrt y)$ であり、$f$ が連続なら cor-pdf-piecewise により密度 $\frac{f(\sqrt y)+f(-\sqrt y)}{2\sqrt y}$($y>0$)をもつ。この主張は Dur19 では演習(Exercise 1.2.5、1.2.7、p. 14)として扱われている。
$X,Y$ が独立で、それぞれ密度 $f,g$ をもつとする。
1。 独立性により、$(X,Y)$ の分布は $P_X$ と $P_Y$ の積測度 $P_X\otimes P_Y$ である(Dur19 Theorem 2.1.11、p. 48)。Borel 集合 $B\subset\mathbb{R}^2$ について、Fubiniの定理($0$ 以上の関数についての Tonelli の形)と thm-pdf-expectation の 1 を内側・外側の積分に順に使うと
$$
P((X,Y)\in B)=\int\Bigl(\int\mathbf{1}_B(x,y)\,P_X(dx)\Bigr)P_Y(dy)=\int\Bigl(\int\mathbf{1}_B(x,y)f(x)\,dx\Bigr)g(y)\,dy=\iint_Bf(x)g(y)\,dx\,dy
$$
である。
2。 実数 $t$ を固定し、1 を $B=\{(x,y)\mid x+y\le t\}$ に使う。内側の積分で $x=z-y$ と置換し(平行移動で Lebesgue 積分は変わらない)、Tonelli の形の Fubiniの定理 で積分の順序を入れ替えると
$$
P(X+Y\le t)=\int\Bigl(\int_{-\infty}^{t-y}f(x)\,dx\Bigr)g(y)\,dy=\int\Bigl(\int_{-\infty}^{t}f(z-y)\,dz\Bigr)g(y)\,dy=\int_{-\infty}^t(f*g)(z)\,dz
$$
である。$t\to\infty$ として $\int(f*g)=1$ なので、$f*g$ はほとんど至る所で有限である。有限でない点で値を $0$ に替えても積分は変わらないので、thm-pdf-cdf により $f*g$ は $X+Y$ の密度である。$\square$
畳み込み の記事が述べる「確率密度なら独立な確率変数の和の密度に対応する」は、この定理の 2 である。Dur19 Theorem 2.1.16(p. 50)は $Y$ に密度を仮定しない形で述べている。
よく使う密度を並べる($\lambda>0$、$\sigma>0$、$\gamma>0$、$\mu$ は実数。書いていない範囲では密度は $0$)。
| 分布 | 密度 $f(x)$ | 分布関数 $F(x)$ | 平均 |
|---|---|---|---|
| $[a,b]$ 上の一様分布 | $\frac1{b-a}$($a\le x\le b$) | $\frac{x-a}{b-a}$($a\le x\le b$) | $\frac{a+b}2$ |
| 指数分布 | $\lambda e^{-\lambda x}$($x\ge0$) | $1-e^{-\lambda x}$($x\ge0$) | $\frac1\lambda$ |
| 正規分布 $N(\mu,\sigma^2)$ | $\frac1{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-(x-\mu)^2/(2\sigma^2)}$ | 初等関数では書けない | $\mu$ |
| Cauchy 分布 | $\frac{\gamma}{\pi(\gamma^2+(x-\mu)^2)}$ | $\frac12+\frac1\pi\arctan\frac{x-\mu}\gamma$ | もたない |
正規分布は 正規分布、Cauchy 分布は Cauchy分布、自由度 $\nu$ の $t$ 分布とカイ二乗分布は t分布 と カイ二乗分布 で扱う。
$U$ が $(0,1)$ 上の一様分布に従うとき、$\varphi(x)=x^2$ は $(0,1)$ 上で $\varphi'(x)=2x>0$ を満たし $\varphi((0,1))=(0,1)$ なので、thm-pdf-transform により $U^2$ は $(0,1)$ 上で密度 $1\cdot\frac{d}{dy}\sqrt y=\frac1{2\sqrt y}$ をもつ。この密度は $y\to0$ で有界でない。密度は有界でなくてもよい。
$X,Y$ が独立で、どちらも密度 $f(x)=\lambda e^{-\lambda x}$($x\ge0$)の指数分布に従うとする。thm-pdf-convolution により、$z>0$ で
$$
(f*f)(z)=\int_0^z\lambda e^{-\lambda(z-y)}\,\lambda e^{-\lambda y}\,dy=\lambda^2ze^{-\lambda z}
$$
($y< 0$ または $y>z$ では被積分関数は $0$)、$z\le0$ で $0$ である。よって $X+Y$ は密度 $\lambda^2ze^{-\lambda z}$($z>0$)をもつ。これは形のパラメータ $2$ のガンマ分布であり、$2\lambda(X+Y)$ は自由度 $4$ の カイ二乗分布 に従う(thm-pdf-transform を $\varphi(z)=2\lambda z$ に使う)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $F_X$ が絶対連続(thm-pdf-existence の 3)。連続性だけを残す | Cantor 集合の上の分布(ex-pdf-cantor) | $X$ が密度をもつ |
| $\varphi'\ne0$(thm-pdf-transform) | $X$ が $(-1,1)$ 上の一様分布、$\varphi(x)=\operatorname{sgn}(x)\max\{\lvert x\rvert-\frac12,0\}^2$ | $\varphi(X)$ が密度をもつ |
| $X,Y$ が独立(thm-pdf-convolution) | $X$ が $(0,1)$ 上の一様分布、$Y=-X$ | $X+Y$ が密度 $f*g$ をもつ |
| $\int\lvert g\rvert f< \infty$(thm-pdf-expectation の 2) | 標準 Cauchy 分布、$g(x)=x$ | $E[X]$ が定まり $\int xf(x)\,dx$ に等しい |
2 行目:$\varphi$ は連続微分可能で非減少だが、$[-\frac12,\frac12]$ の上で $\varphi=0$、$\varphi'=0$ である。よって $P(\varphi(X)=0)=P(\lvert X\rvert\le\frac12)=\frac12>0$ であり、$\varphi(X)$ は密度をもたない(密度をもてば 1 点の確率は $0$)。$X$ は密度をもち、$\varphi$ は連続微分可能なので、壊れたのは $\varphi'\ne0$ の条件だけである。なお、$\varphi$ が狭義単調で $\varphi'$ が有限個の点で $0$ になるだけなら($\varphi(x)=x^3$ など)、その点を除いた区間に分けて同じ式が得られる(この記事では証明しない)。また $\varphi(x)=x^2$ のように単調でない変換では、逆像の各点からの寄与を足す必要がある(節「変数変換」の最後の段落)。
3 行目:$X+Y=0$ が確率 $1$ で成り立つので、$P(X+Y=0)=1$ であり、密度をもたない(密度をもてば 1 点の確率は $0$)。一方 $f*g$ は $g(y)=f(-y)$ として $(-1,1)$ 上の三角形の密度 $1-\lvert z\rvert$ である。$X$ と $Y$ はどちらも密度をもつ。
4 行目:$f(x)=\frac1{\pi(1+x^2)}$ について $\int_0^R\frac{x}{\pi(1+x^2)}dx=\frac{\log(1+R^2)}{2\pi}\to\infty$ なので $E[\lvert X\rvert]=\infty$ である。$\int_{-R}^Rxf(x)\,dx=0$ がすべての $R$ で成り立つが、これは $E[X]$ を定めない(Cauchy分布 の命題「積率」)。
$\xi_1,\xi_2,\dots$ を独立で、それぞれ確率 $\frac12$ ずつで $0,1$ をとる確率変数とし($[0,1]$ 上の一様分布に従う $U$ の 2 進展開の各桁としてとれる。2 進展開が 2 通りある点の全体は確率 $0$ なので、そこでは有限で終わるほうをとる。最初の $k$ 桁が指定の $0,1$ の列になる事象は、端点を除けば長さ $2^{-k}$ の区間 1 つなので、その確率は $2^{-k}=(\frac12)^k$ であり、ここから各桁が確率 $\frac12$ ずつで $0,1$ をとり、互いに独立であることが従う)、$X:=\sum_{k\ge1}2\xi_k/3^k$ とおく。$X$ は 3 進展開の桁が $0$ か $2$ だけの数なので、Cantor集合 $C$ に値をとる。
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